(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027591
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】光学部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/115 20150101AFI20240222BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240222BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240222BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G02B1/115
G02B1/14
B32B7/023
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130499
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】多田 孝昭
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA07
2K009BB02
2K009CC03
2K009DD03
2K009DD04
2K009DD12
4F100AA19A
4F100AA19B
4F100AA19C
4F100AA19E
4F100AA20C
4F100AA21C
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4F100AR00D
4F100BA03
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4F100JN01A
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4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ベーマイト層の破損を低減できる光学部材の製造方法を提供する。
【解決手段】光学部材の製造方法は、透光性基板の上に、酸化アルミニウムからなり、第1厚さを有する第1層を原子層堆積法により形成する工程と、前記第1層の表層をベーマイト層とする工程と、前記第1厚さより小さい第2厚さを有し、前記ベーマイト層を覆う第2層を原子層堆積法により形成する工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板の上に、酸化アルミニウムからなり、第1厚さを有する第1層を原子層堆積法により形成する工程と、
前記第1層の表層をベーマイト層とする工程と、
前記第1厚さより小さい第2厚さを有し、前記ベーマイト層を覆う第2層を原子層堆積法により形成する工程と、
を有する、光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1層の表層を前記ベーマイト層とする工程は、前記第1層を温度が70℃以上の水に浸漬する工程を有する、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1層を形成する工程の前に、前記透光性基板の上に第3層を形成する工程を有し、
前記第1層は前記第3層の上に形成され、
前記第3層の屈折率は、前記透光性基板の屈折率よりも低く、かつ前記ベーマイト層の屈折率よりも高い、請求項1又は2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項4】
前記第3層を形成する工程の前に、前記透光性基板の上に酸化アルミニウムからなる第4層を形成する工程を有し、
前記第3層は前記第4層の上に形成される、請求項3に記載の光学部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1厚さは、5nm以上100nm以下である、請求項1又は2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項6】
前記第2厚さは、4nm以上15nm以下である、請求項1又は2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項7】
前記第2層は、酸化珪素、酸化アルミニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項8】
前記透光性基板は、サファイア基板である、請求項1又は2に記載の光学部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止機能を有する部材の製造方法として、基材の上に原子層堆積法により酸化アルミニウム膜を形成し、酸化アルミニウム膜の水熱処理を施して微細凹凸構造を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。酸化アルミニウム膜の水熱処理により形成される微細凹凸構造はベーマイトから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベーマイトから構成される微細な凹凸構造は強度が低く、微細な凹凸構造が破損しやすい。微細な凹凸構造は、例えば、指で擦る程度でも破損してしまう。このため、上記の微細な凹凸構造を備えた光学部材においては、安定した光学特性を得ることができない。
【0005】
本開示は、ベーマイト層の破損を低減できる光学部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一態様によれば、光学部材の製造方法は、透光性基板の上に、酸化アルミニウムからなり、第1厚さを有する第1層を原子層堆積法により形成する工程と、前記第1層の表層をベーマイト層とする工程と、前記第1厚さより小さい第2厚さを有し、前記ベーマイト層を覆う第2層を原子層堆積法により形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ベーマイト層の破損を低減できる光学部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図(その1)である。
【
図2】第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図(その2)である。
【
図3】第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図(その3)である。
【
図4】第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図(その4)である。
【
図5】ベーマイト層の表面の形状の一例を説明するための模式図である。
【
図6】ベーマイト層の表面の走査型電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
【
図7】酸化珪素層の表面の走査型電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図(その1)である。
【
図9】第2実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図(その2)である。
【
図10】第2実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図(その4)である。
【
図11】光学部材を含む発光装置の例を説明するための図である。
【
図12】酸化珪素層の厚さと反射率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための実施形態を説明する。以下の説明は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下の記載に限定するものではない。
【0010】
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後に示す実施形態では、先に示した実施形態との異なる事項について主に説明し、先に示した実施形態と共通の事柄について重複する説明を省略することがある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は光学部材の製造方法に関する。
図1~
図4は、第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図である。第1実施形態の光学部材1は、透光性基板10と、酸化珪素(SiO
2)層11と、酸化アルミニウム層12と、酸化珪素層13とを含む。なお、光学部材1は、酸化珪素層11を含まなくてよい。
【0012】
第1実施形態では、まず、
図1に示すように、透光性基板10の上に第3層として酸化珪素層11を形成する工程を行う。酸化珪素層11は、例えばスパッタリング法又は化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成することができる。透光性基板10は、例えばサファイア基板である。波長が510nmの光に対するサファイアの屈折率は1.76程度であり、酸化珪素の屈折率は1.46程度であり、酸化珪素の屈折率はサファイア基板の屈折率よりも低い。酸化珪素層11の厚さは、例えば5nm以上100nm以下である。次いで、酸化珪素層11の上に第1層として酸化アルミニウム(Al
2O
3)層12を原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法により形成する工程を行う。酸化アルミニウム層12は第1厚さを有する。第1厚さは、例えば5nm以上100nm以下である。波長が510nmの光に対する酸化アルミニウムの屈折率は1.65程度である。
【0013】
次いで、酸化アルミニウム層12の表層をベーマイト(AlOOH)層とする工程を行う。具体的には、
図2に示すように、ホットプレート23の上に容器21を載置し、容器21に、純水22と、透光性基板10、酸化珪素層11及び酸化アルミニウム層12の積層体とを、酸化アルミニウム層12の表面が純水22により覆われるようにして入れる。そして、ホットプレート23により純水22を加熱する。この時、例えば、純水22の温度は70℃以上とし、加熱時間は1分間以上とする。つまり、酸化アルミニウム層12を温度が70℃以上の水に1分間以上浸漬する。このような温水浸漬処理の結果、
図3に示すように、酸化アルミニウム層12の少なくとも表層がベーマイト層12Aとなる。なお、酸化アルミニウム層12の全体がベーマイト層12Aとなってもよい。波長が510nmの光に対するベーマイトの屈折率は1.1以上1.2以下程度であり、ベーマイトの屈折率は酸化珪素の屈折率よりも低い。
【0014】
次いで、
図4に示すように、第2層として、ベーマイト層12Aを覆う酸化珪素(SiO
2)層13をALD法により形成する工程を行う。酸化珪素層13は第1厚さより小さい第2厚さを有する。第2厚さは、例えば4nm以上15nm以下である。
【0015】
このようにして、光学部材1を製造することができる。
【0016】
第1実施形態では、酸化珪素層13がベーマイト層12Aに対する保護層として機能し、外力からベーマイト層12Aを保護する。このため、ベーマイト層12Aの破損を低減することができる。ベーマイト層12Aの表面は複雑な凹凸形状を有しているが、酸化珪素層13をALD法により形成しているため、ベーマイト層12Aの表面の全体を酸化珪素層13により被覆しやすくすることができる。従って、ベーマイト層12Aを強固に保護することができる。
【0017】
図5は、ベーマイト層12Aの表面の形状の一例を説明するための模式図である。
図5に示す例では、酸化アルミニウム層12の全体がベーマイト層12Aとなっている。酸化アルミニウム層12の表面は略平坦であるが、
図5に示すように、ベーマイト層12Aの表面は無秩序に粗くなっている。このため、ベーマイト層12Aの表面には、上方を向く部分だけでなく、側方を向く部分及び下方を向く部分も存在する。酸化珪素層13をALD法により形成した場合、ベーマイト層12Aの表面のうちで側方を向く部分及び下方を向く部分にも酸化珪素層13が形成されやすいため、ベーマイト層12Aの表面の全体を酸化珪素層13により被覆しやすくすることができる。
【0018】
図6は、ベーマイト層12Aの表面の走査型電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図7は、ベーマイト層12Aの表面に形成した酸化珪素層13の表面の走査型電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6及び
図7の倍率は互いに等しく、
図6及び
図7中のスケールバー31は共通の長さを示す。
図6に示すように、ベーマイト層12Aの表面は複雑な凹凸形状を有している。また、
図7に示すように、酸化珪素層13の表面も複雑な凹凸形状を有している。これは、ALD法により形成された酸化珪素層13がベーマイト層12Aの複雑な凹凸形状に追従して形成され、ベーマイト層12Aの表面の全体を被覆しているためであると推測される。
【0019】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は光学部材の製造方法に関する。
図8~
図10は、第2実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための断面図である。
【0020】
第2実施形態では、まず、
図8に示すように、透光性基板10の上に第4層として酸化アルミニウム(Al
2O
3)層15を形成する工程を行う。酸化アルミニウム層15は、例えばALD法、スパッタリング法又はCVD法により形成することができる。酸化アルミニウム層15の厚さは、例えば30nm以上50nm以下である。次いで、酸化アルミニウム層15の上に第3層として酸化珪素層11を形成する工程を行う。次いで、酸化珪素層11の上に第1層として酸化アルミニウム層12をALD法により形成する工程を行う。
【0021】
次いで、
図9に示すように、酸化アルミニウム層12の表層をベーマイト層12Aとする工程を行う。この工程では、例えば、第1実施形態と同様の温水浸漬処理を行う(
図2参照)。次いで、
図10に示すように、第2層として、ベーマイト層12Aを覆う酸化珪素層13をALD法により形成する工程を行う。
【0022】
このようにして、光学部材2を製造することができる。
【0023】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、酸化アルミニウム層15を形成しているため、光学部材2の全体の屈折率をより細かく調整することもできる。
【0024】
なお、ベーマイト層12Aを形成する方法は、温水浸漬処理に限定されない。例えば、水蒸気を含む雰囲気中での酸化アルミニウム層12の加熱によってベーマイト層12Aを形成してもよい。
【0025】
また、第2層は酸化珪素層に限定されない。第2層が酸化珪素、酸化アルミニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0026】
ここで、光学部材を含む発光装置の例について説明する。
図11は、光学部材を含む発光装置の例を説明するための図である。
【0027】
図11に示すように、発光装置40は、基体41と、発光素子42と、光学部材43とを有する。基体41は、底部51と、壁部52とを有する。発光素子42は、基体41の底部51の一方の面51Aの上に配置されている。壁部52は、基体41の面51Aの上に配置され、発光素子42を包囲している。底部51及び壁部52は一体である。面51Aを基準として、壁部52の高さは、発光素子42の高さよりも高い。発光素子42は、例えば紫外光を発する発光ダイオードである。基体41には、例えば、窒化アルミニウムを用いることができる。
【0028】
光学部材43は、第1実施形態の光学部材1又は第2実施形態の光学部材2を含む。光学部材43は、透光性基板10が発光素子42に対向し、酸化珪素層13が発光装置40の外側に位置するようにして、壁部52の上面に固定されている。光源である発光素子42が出射した光Lは、光学部材43を透過する。
【0029】
次に、本願発明者が行った光学部材の強度に関する第1試験及び光学性能に関する第2試験について説明する。
【0030】
(第1試験)
第1試験では、次のようにして5種類の光学部材の試料を作製した。サファイア基板の上に厚さが52.5nmの酸化珪素層を形成し、酸化珪素層の上に厚さが17.5nmの酸化アルミニウム層をALD法により形成した。次いで、沸騰した純水中で5分間の浸漬処理を行い、酸化アルミニウム層の表層をベーマイト層とした。次いで、ベーマイト層を覆う酸化珪素層を試料毎に異なる厚さでALD法により形成した。このようにして試料を作製した。ALD法による酸化珪素層の形成では、各試料において、成膜サイクル数を25回、50回、75回、100回、150回とした。25回、50回、75回、100回、150回の成膜サイクル数で形成される酸化珪素層の厚さは、それぞれ0.7nm、4.2nm、6.7nm、9.2nm、14.5nm程度である。
【0031】
そして、酸化珪素層の形成後に各試料の反射率を測定した。次いで、酸化珪素層の表面に対して10往復摩擦を加え、その後に各試料の反射率を測定した。
図12は、酸化アルミニウム層上の酸化珪素層の厚さと反射率との関係を示す図である。
図12中の横軸は酸化アルミニウム層上の酸化珪素層(第2層)の厚さ(第2厚さ)を示し、縦軸は反射率を示す。なお、本試験では酸化珪素層に加える摩擦の回数を変更することで強度を評価したが、例えば、ナノインデンテーション試験、スクラッチ試験、摩擦摩耗評価法等を用いて強度を評価してもよい。
【0032】
図12に示すように、酸化珪素層の厚さが4.2nm以上である場合に、特に摩擦の前後の間での反射率の変化が小さかった。これは、酸化珪素層の厚さが4.2nm以上である場合に、特に優れた強度が得られたことを示している。また、酸化珪素層の厚さが4.2nm以上9.2nm以下である場合に、特に反射率が低かった。この結果は、酸化珪素層の厚さが4.2nm以上9.2nm以下である場合に、高い強度と低い反射率とを有する光学部材が得られたことを示している。
【0033】
第1試験の結果から、第2層としての酸化珪素層の第2厚さは、好ましくは4nm以上15nm以下であり、より好ましくは4nm以上10nm以下である。また、第1層としての酸化アルミニウム層の第1厚さは、光学部材の用途、例えば透過させる光の波長に応じて適宜選択することができる。
【0034】
なお、本願発明者がベーマイト層を被覆する酸化珪素層をスパッタリング法により形成したところ、ALD法により酸化珪素層を形成した場合ほどの強度の向上は見られなかった。これは、スパッタリング法により酸化珪素層を形成した場合には、原料の直進性が高く、複雑な凹凸構造を有するベーマイト層の表面に酸化珪素層により覆われない部分が広く残存したためであると推測される。
【0035】
(第2試験)
第2試験では、次のようにして光学部材の試料A、B及びCを作製した。
【0036】
試料Aでは、サファイア基板の上に厚さが52.0nmの酸化珪素層を形成した。
【0037】
試料Bでは、サファイア基板の上に厚さが52.5nmの酸化珪素層を形成し、酸化珪素層の上に厚さが85.3nmの酸化アルミニウム層をALD法により形成し、温水浸漬処理により酸化アルミニウム層をベーマイト層とした。
【0038】
試料Cでは、サファイア基板の上に厚さが39.1nmの酸化アルミニウム層を形成し、酸化アルミニウム層の上に厚さが10.0nmの酸化珪素層を形成し、酸化珪素層の上に厚さが8.8nmの酸化アルミニウム層をALD法により形成し、温水浸漬処理によりこの酸化アルミニウム層をベーマイト層とした。次いで、ベーマイト層を覆う酸化珪素層を5.0nmの厚さでALD法により形成した。
【0039】
そして、光学部材のサファイア基板側に光源を配置し、各試料を通過する光源からの光の放射束を測定した。
【0040】
ベーマイト層を含む試料Bの放射束は、ベーマイト層を含まない試料Aの放射束に対して、1.3%程度高くなった。また、ベーマイト層に加えて、ベーマイト層を覆う酸化珪素層を含む試料Cの放射束は、試料Aの放射束より1.4%程度高く、試料Cの放射束は試料Bの放射束とほぼ同等であった。この結果は、ベーマイト層を覆う酸化珪素層が設けられても、酸化珪素層が設けられていない場合と同程度の光学性能が得られたことを示している。
【0041】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0042】
本明細書は、下記の実施形態を含む。
1.
透光性基板の上に、酸化アルミニウムからなり、第1厚さを有する第1層を原子層堆積法により形成する工程と、
前記第1層の表層をベーマイト層とする工程と、
前記第1厚さより小さい第2厚さを有し、前記ベーマイト層を覆う第2層を原子層堆積法により形成する工程と、
を有する、光学部材の製造方法。
2.
前記第1層の表層を前記ベーマイト層とする工程は、前記第1層を温度が70℃以上の水に浸漬する工程を有する、上記1に記載の光学部材の製造方法。
3.
前記第1層を形成する工程の前に、前記透光性基板の上に第3層を形成する工程を有し、
前記第1層は前記第3層の上に形成され、
前記第3層の屈折率は、前記透光性基板の屈折率よりも低く、かつ前記第1層の屈折率よりも高い、上記1又は2に記載の光学部材の製造方法。
4.
前記第3層を形成する工程の前に、前記透光性基板の上に酸化アルミニウムからなる第4層を形成する工程を有し、
前記第3層は前記第4層の上に形成される、上記3に記載の光学部材の製造方法。
5.
前記第1厚さは、5nm以上100nm以下である、上記1から4のいずれか1つに記載の光学部材の製造方法。
6.
前記第2厚さは、4nm以上15nm以下である、上記1から5のいずれか1つに記載の光学部材の製造方法。
7.
前記第2層は、酸化珪素、酸化アルミニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選択された少なくとも1種を含む、上記1から6のいずれか1つに記載の光学部材の製造方法。
8.
前記透光性基板は、サファイア基板である、上記1から7のいずれか1つに記載の光学部材の製造方法。
【符号の説明】
【0043】
1、2:光学部材
10:透光性基板
11:酸化珪素層
12:酸化アルミニウム層
12A:ベーマイト層
13:酸化珪素層
15:酸化アルミニウム層