(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027718
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20240222BHJP
G01B 11/16 20060101ALI20240222BHJP
E21D 11/00 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
G01B11/16 Z
E21D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130764
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】涌井 一清
(72)【発明者】
【氏名】泉 俊光
(72)【発明者】
【氏名】玉松 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】倉本 龍
(72)【発明者】
【氏名】與猶 竜
【テーマコード(参考)】
2D155
2F065
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155LA13
2D155LA17
2D155LA18
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA09
2F065AA53
2F065AA65
2F065CC14
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF11
2F065FF32
2F065FF41
2F065GG04
2F065LL61
2F065MM16
2F065MM26
2F065MM28
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ23
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065RR09
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】構造物の内部空間の2時点の点群データから、構造物の内面のミリメートル単位の小さな変位を面的に求める。
【解決手段】解析装置(1)は、構造物の内部空間の点群データを取得する点群データ計測部(11)と、構造物の内面の3次元モデルを作成するメッシュデータ作成部(12)と、全メッシュ節点と各時刻における点群データとの間で、座標の位置合わせを行う座標変換部(13)と、3次元モデルを、変換後の点群データと、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割し、各領域における節点の座標を始点とし、各領域に対応付けられた変換後の各点群データの座標を終点とする、変位ベクトルを算出する変位ベクトル算出部(14)と、第1の時刻における変位ベクトルと、第2時刻における変位ベクトルとの差分を各節点の変位として算出する変位解析部(15)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の内部空間の点群データを用いて、構造物の内面の変位を解析する解析装置であって、
第1の時刻及び第2の時刻の各時刻における前記構造物の内部空間の点群データを取得する点群データ計測部と、
前記構造物の設計データを入力して、前記構造物の内面の3次元モデルを作成するメッシュデータ作成部と、
前記3次元モデルをメッシュ化し、全メッシュ節点と前記各時刻における点群データとの間で、座標の位置合わせを行う座標変換部と、
前記3次元モデルを、前記各時刻における変換後の点群データと、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割し、各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の各点群データの座標を終点とする第1のベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出する変位ベクトル算出部と、
前記第1の時刻における変位ベクトルと、前記第2の時刻における変位ベクトルとの差分を各メッシュ節点の変位として算出する変位解析部と、
を備える解析装置。
【請求項2】
前記変位ベクトル算出部は、前記各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の点群データの重心の座標を終点とする第2のベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出する、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記変位ベクトル算出部は、前記変位ベクトルの前記各領域における法線方向成分を求め、前記法線方向成分を有する法線ベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出する、請求項1又は2に記載の解析装置。
【請求項4】
構造物の内部空間の点群データを用いて、構造物の内面の変位を解析する解析方法であって、
解析装置により、
第1の時刻及び第2の時刻の各時刻における前記構造物の内部空間の点群データを取得するステップと、
前記構造物の設計データを入力して、前記構造物の内面の3次元モデルを作成するステップと、
前記3次元モデルをメッシュ化し、全メッシュ節点と前記各時刻における点群データとの間で、座標の位置合わせを行うステップと、
前記3次元モデルを、前記各時刻における変換後の点群データと、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割し、各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の各点群データの座標を終点とする第1のベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出するステップと、
前記第1の時刻における変位ベクトルと、前記第2における時刻の変位ベクトルとの差分を各メッシュ節点の変位として算出するステップと、
を実行する解析方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1又は2のいずれか一項に記載の解析装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物の内部空間の点群データを用いて、構造物の内面の変位を解析する、解析装置、解析方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル(構造物)の内部空間の変位は、大きな外力(地震・地下水位、地盤の変動、トンネル近接の大規模工事等によるもの)がトンネルにかかる際に、トンネルの構造体としてのゆがみの程度を定量的に捉えるために測定されている。しかし、従来、トンネルの内部空間の変位は、局所的に計測されており、トンネルの内部空間のゆがみを三次元に連続した範囲で捉えるには、多くの計測機器が必要とされ、機器のコストも高額となる。また、トンネルの内部空間の構造を効率的に計測できる三次元点群データを用いて、内部空間の変位を解析し、トンネル構造体にかかる応力を評価する技術がこれまでなかった。
【0003】
非特許文献1には、海底地形の変状を具体的かつ定量的に表現するICP(Iterative Closest Point)アルゴリズム等を用いた変位量解析技術が記載されている。
【0004】
非特許文献2には、河川に面した急斜面の崩壊地を対象に三次元点群データを取得し、ICPアルゴリズム等を用いて、変動解析を行う技術が記載されている。
【0005】
従来の2時点における斜面変動評価技術では、ICPアルゴリズムにより2時点の点群データを重ね合わせ、対応する点群データを結んだベクトルを変位としている。また、解析効率化のため、正方形のメッシュごとに変位量が算出されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】酒井多樹、他5名、「海底地形モニタリングに向けた差分解析手法の検討」、第71回 (2019年度) 土木学会中国支部研究発表会
【非特許文献2】菊地輝行、他3名、「三次元点群データを用いた急斜面の維持管理における変動解析」、日本地すべり学会誌/55 巻 (2018) 2 号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、2時点の点群データにより変位量を算出する方法を用いてトンネルの変位を解析した事例はない。トンネル以外の斜面変動評価では2時点の点群データにより変位量を算出しているが、メートル単位の変位を対象としているため、変位の誤差が数10センチメートル単位となる。一方、トンネルのようなミリメートル単位の小さな変位を面的に解析するためのトンネル内部空間のメッシュ化及び変位算出方法はない。さらに、従来のFEM(Finite Element Method)解析による応力評価では、トンネル周辺地盤及びトンネル部材の物性の不確実性、ばらつき等を考慮できていないという課題がある。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、構造物の内部空間の2時点の点群データから、構造物の内面のミリメートル単位の小さな変位を面的に求めることを可能とする、解析装置、解析方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本実施形態に係る解析装置は、構造物の内部空間の点群データを用いて、構造物の内面の変位を解析する解析装置であって、第1の時刻及び第2の時刻の各時刻における前記構造物の内部空間の点群データを取得する点群データ計測部と、前記構造物の設計データを入力して、前記構造物の内面の3次元モデルを作成するメッシュデータ作成部と、前記3次元モデルをメッシュ化し、全メッシュ節点と前記各時刻における点群データとの間で、座標の位置合わせを行う座標変換部と、前記3次元モデルを、前記各時刻における変換後の点群データと、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割し、各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の各点群データの座標を終点とする第1のベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出する変位ベクトル算出部と、前記第1の時刻における変位ベクトルと、前記第2の時刻における変位ベクトルとの差分を各メッシュ節点の変位として算出する変位解析部と、
を備える。
【0010】
上記課題を解決するため、本実施形態に係る解析方法は、構造物の内部空間の点群データを用いて、構造物の内面の変位を解析する解析方法であって、解析装置により、第1の時刻及び第2の時刻の各時刻における前記構造物の内部空間の点群データを取得するステップと、前記構造物の設計データを入力して、前記構造物の内面の3次元モデルを作成するステップと、前記3次元モデルをメッシュ化し、全メッシュ節点と前記各時刻における点群データとの間で、座標の位置合わせを行うステップと、前記3次元モデルを、前記各時刻における変換後の点群データと、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割し、各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の各点群データの座標を終点とする第1のベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出するステップと、前記第1の時刻における変位ベクトルと、前記第2における時刻の変位ベクトルとの差分を各メッシュ節点の変位として算出するステップと、を実行する。
【0011】
上記課題を解決するため、本実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、上記解析装置として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、構造物の内部空間の2時点の点群データから、構造物の内面のミリメートル単位の小さな変位を面的に求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る解析装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1の時刻における点群データの位置合わせを説明する概略図である。
【
図3】第2の時刻における点群データの位置合わせを説明する概略図である。
【
図4】第1の時刻における変位ベクトルの算出方法を説明する概略図である。
【
図5】第2の時刻における変位ベクトルの算出方法を説明する概略図である。
【
図6】各メッシュ節点の変位を説明する概略図である。
【
図7】本実施形態に係る解析装置が実行する解析方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】解析装置として機能するコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態が、図面を参照しながら詳細に説明される。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
図1は、本実施形態に係る解析装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、解析装置1は、点群データ計測部11と、メッシュデータ作成部12と、座標変換部13と、変位ベクトル算出部14と、変位解析部15と、を備える。解析装置1は、構造物の内部空間の点群データPを用いて、構造物の内面の変位を解析する。本実施形態において、構造物をトンネルを例として説明する。
【0016】
解析装置1が有するメッシュデータ作成部12、座標変換部13、変位ベクトル算出部14、及び変位解析部15により制御演算回路20(コントローラ20)が構成される。制御演算回路20は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。
【0017】
点群データ計測部11は、レーザースキャナを用いて、第1の時刻及び第2の時刻の各時刻における構造物(トンネル)の内部空間の点群データP(P0,P1)を取得する。点群データ計測部11は、取得した2時点すなわち、第1の時刻におけるトンネルの内部空間の点群データP0、及び第2の時刻におけるトンネルの内部空間の点群データP1から、トンネル本体以外のトンネル内部設備の点群データを削除して、削除後(修正後)の点群データP0及びP1を座標変換部13へ出力する。
【0018】
メッシュデータ作成部12は、構造物(トンネル)の設計データd_dataを入力して、構造物(トンネル)の内面の3次元モデル3Dmを作成する。メッシュデータ作成部12は、3次元モデル3Dmを第1のメッシュサイズにメッシュ化する。第1のメッシュサイズとは、例えば20cm×20cmの正方形のメッシュサイズである。メッシュデータ作成部12は、3次元モデル3Dmを座標変換部13及び変位ベクトル算出部14へ出力する。
【0019】
座標変換部13は、3次元モデル3Dmを第2のメッシュサイズにメッシュ化し、メッシュ化された3次元モデル3Dmの全てのメッシュ節点Qと各時刻における点群データP(P0,P1)と、の間で、座標変換Tにより、座標の位置合わせを行う。
図2は、第1の時刻における点群データP0の位置合わせを説明する概略図である。
図3は、第2の時刻における点群データP1の位置合わせを説明する概略図である。
図2及び
図3に示すように、座標変換部13は、各時刻の点群データP(P0,P1)と、第2のメッシュサイズにメッシュ化された3次元モデル3Dmの全てのメッシュ節点Qとの間の位置合わせを行うために、各時刻の点群データP(P0,P1)の座標(x,y,z)に座標変換Tを行い、変換後の点群データP’(P0’,P1’)の座標(x’,y’,z’) を取得する。
図2及び
図3に示すように、第2のメッシュサイズとは、例えば5cm×5cmの正方形のメッシュサイズである。座標変換部13は、変換後の点群データP’(P0’,P1’)を変位ベクトル算出部14へ出力する。
【0020】
座標変換部13は、第1の時刻における点群データP0と、全てのメッシュ節点Qとの間でICPアルゴリズムを利用して座標変換Tを行ってもよい。同様に、座標変換部13は、第2の時刻における点群データP1と、全てのメッシュ節点Qとの間でICPアルゴリズムを利用して座標変換Tを行ってもよい。
【0021】
ICPアルゴリズムとは、異なる位置から撮影した3次元点群同士の位置関係を推定することにより、点群の合成を行う位置合わせアルゴリズムの一つである。ICPアルゴリズムは、異なる位置から撮影された2つの3次元点群データが与えられた時、一方の点群データを他方の点群データに位置合わせする回転行列と平行移動行列とを推定して求める。
【0022】
ICPアルゴリズムによる座標変換Tは、以下の式(1)により行われる。該座標変換Tは、点群データPの座標(x,y,z)に対して、平行移動を1回行い、その後回転移動を1回行うことにより、座標変換後の点群データP’の座標(x’,y’,z’)が求められる。式(1)中、右辺左側の行列は回転行列であり、右辺中央の行列は、平行移動行列である。
【数1】
【0023】
変位ベクトル算出部14は、3次元モデル3Dmを、第3のメッシュサイズにメッシュ化して、各時刻における変換後の点群データP’ik(P0’ik,P1’ik)と、1つのメッシュ節点Qiとが含まれる局所的な領域Viに分割し、各領域Viにおけるメッシュ節点Qiの座標qiを始点とし、各領域Viに対応付けられた変換後の各点群データP’ikの座標p’ikを終点とする第1のベクトルを、各時刻における各領域Viのメッシュ節点Qiの変位ベクトルdiとして算出する。
【0024】
図4は、第1の時刻における変位ベクトルd
iの算出方法を説明する概略図である。また、
図5は、第2の時刻における変位ベクトルd
iの算出方法を説明する概略図である。
図4及び
図5において、P0’は第1の時刻における変換後の点群データP’を、P1’は第1の時刻における変換後の点群データP’を、iはメッシュ化された3次元モデル3Dmの各メッシュ節点の番号を、kは各メッシュ節点Q
iを中心とした各領域V
iに含まれる点群データP’(P0’,P1’)の番号を、P
iは後述する点群データP’(P0’,P1’)の重心を、それぞれ表す。第3のメッシュサイズは、トンネルの内部空間の1辺を分割した応力度を捉えるために十分なサイズとする。例えばトンネルの内部空間の1辺を12分割した応力度を捉える場合、第3のメッシュサイズを20cm×20cmとする。かかる第3のメッシュサイズに基づいて、メッシュ節点Q
iを中心とする20cm×20cm×24cmの領域を局所的な領域V
iとする。変位ベクトル算出部14は、算出された各時刻における各領域V
iのメッシュ節点Q
iの変位ベクトルd
iを変位解析部15へ出力する。なお、各領域V
iに対応付けられた変換後の各点群データP’
ikが複数存在する場合、メッシュ節点Qiの変位ベクトルd
iの数は複数となる。
【0025】
しかし、各領域V
iに対応付けられた変換後の各点群データP’
ikが複数存在する場合、各メッシュ節点Q
iを中心とした領域V
iに含まれる全ての点群データP’
ikについて変位ベクトルd
iを算出すると、変位算出の計算量の増大を引き起こす。そこで、変位ベクトル算出部14は、変換後の点群データP’
ik(P0’
ik,P1’
ik)の重心P
iを求め、各領域V
iにおけるメッシュ節点Q
iの座標q
iを始点とし、各領域V
iに対応付けられた該重心P
iの座標p
iを終点とする第2のベクトルを、各時刻における各領域のメッシュ節点Q
iの変位ベクトルd
iとして算出する。これにより、変位算出の計算量を削減することが可能となる。点群データP’
ikの重心の座標p
iは、以下の式(2)より算出される。式(2)において、iはメッシュ節点の番号を、kは各領域に含まれる各点群データの番号を、N
iは各領域における点群データの数を、p
ikは領域V
iに含まれる各点群データP’
ik(P0’
ik,P1’
ik)の座標を、それぞれ表す。
【数2】
【0026】
変位ベクトル算出部14は、上述のように各領域V
iにおけるメッシュ節点Q
iの座標q
iを始点とし、各領域V
iに対応付けられた変換後の点群データP’
ikの重心P
iの座標p
iを終点とする第2のベクトルを、各時刻における各領域V
iのメッシュ節点Q
iの変位ベクトルd
iとして算出してもよい。メッシュ節点Q
iの座標q
iを始点とし、変換後の点群データP’
ikの重心P
iの座標p
iを終点とする変位ベクトルd
iは以下の式(3)より算出される。式(3)において、p
iは、点群データの重心座標を、q
iは、メッシュ節点Q
iの座標を、それぞれ表す。
【数3】
【0027】
また、変位ベクトル算出部14は、第1の時刻及び第2の時刻におけるトンネル内面の変形は、メッシュの法線方向の変位に比べ接線方向の変位が十分に小さい変形であり、その変形による応力の程度をとらえるため、トンネル内面(メッシュ面)に対して法線方向の変位を算出する。
【0028】
変位ベクトル算出部14は、上述した変位ベクトルd
iの各領域V
iにおける法線方向成分を求め、該法線方向成分を有する法線ベクトルを、各時刻における各領域V
iのメッシュ節点Q
iの変位ベクトルd
in(d0
in,d1
in)として算出してもよい。第1の時刻における変位ベクトル(該法線方向成分を有する法線ベクトル)d0
inは、以下の(式)4より算出される。第2の時刻における変位ベクトル(該法線方向成分を有する法線ベクトル)d1
inは、以下の(式)5より算出される。式(4)及び式(5)において、n
iは、メッシュの法線方向の単位ベクトルを、d0
inは第1の時刻におけるメッシュの法線方向の変位ベクトルを、d1
inは、第2の時刻におけるメッシュの法線方向の変位ベクトルをそれぞれ表す。変位ベクトル算出部14は、各時刻における変位ベクトルd0
in及びd1
inの算出を全ての領域V
iにおいて繰り返し行う。
【数4】
【0029】
変位解析部15は、第1の時刻における変位ベクトルd0
inと、第2の時刻における変位ベクトルd1
inとの差分を各メッシュ節点Q
iの変位dR
iとして算出する。
図6は、各メッシュ節点の変位を説明する概略図である。たとえば、
図6に示す各メッシュ節点Q
iの変位dR
iは、
図4に示す第1の時刻における変位ベクトルd
in(d0
in)の終点の座標を始点とし、
図5に示す第2の時刻における変位ベクトルd
in(d1
in)の終点の座標を終点とするベクトルとして表現される。各メッシュ節点Q
iの変位dR
iは、以下の式(6)により算出される。変位解析部15は、各メッシュ節点Q
iの変位dR
iの算出を全ての領域V
iにおいて繰り返し行う。
【数5】
【0030】
図7は、本実施形態に係る解析装置1が実行する解析方法の一例を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS101では、点群データ計測部11が、レーザースキャナを用いて、第1の時刻及び第2の時刻の各時刻におけるトンネルの内部空間の点群データP(P0,P1)を取得する。
【0032】
ステップS102では、点群データ計測部11が、取得した点群データPを修正する。具体的には、点群データ計測部11は、点群データPを、点群データPに含まれるトンネル本体以外のトンネル内部設備の点群データを削除した点群データPに修正する。
【0033】
ステップS103では、メッシュデータ作成部12が、トンネルの設計データd_dataを入力して、第1のメッシュサイズにメッシュ化されたトンネルの内面の3次元モデル3Dmを作成する。
【0034】
ステップS104では、座標変換部13が、各時刻の点群データPと、第2のメッシュサイズにメッシュ化された3次元モデル3Dmの全メッシュ節点との間で、座標変換により、座標の位置合わせを行う。
【0035】
ステップS105では、変位ベクトル算出部14が、3次元モデル3Dmを第3のメッシュサイズによりメッシュ化して、各時刻における変換後の点群データ(複数の点群データが含まれてもよい。)と、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割する。
【0036】
ステップS106では、変位ベクトル算出部14が、各領域Viにおけるメッシュ節点Qiの座標qiを始点とし、各領域Viに対応付けられた変換後の各点群データP’ikの座標p’ikを終点とする第1のベクトル(複数の点群データを対象とする複数のベクトルが算出されてもよい。)を、各時刻における各領域Viのメッシュ節点Qiの変位ベクトルdiとして算出する。
【0037】
ステップS107では、変位解析部15が、第1の時刻における変位ベクトルd0inと、第2の時刻における変位ベクトルd1inとの差分を各メッシュ節点Qiの変位dRiとして算出する。
【0038】
本開示に係る解析装置1によれば、構造物(トンネル)の内部空間の2時点の点群データから、構造物(トンネル)の内面のミリメートル単位の小さな変位を面的に求めることが可能となる。
【0039】
また、上記の解析装置1を機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。
図8は、解析装置1として機能するコンピュータの概略構成を示すブロック図である。ここで、コンピュータ100は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0040】
図8に示すように、コンピュータ100は、プロセッサ110と、記憶部としてROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130、及びストレージ140と、入力部150と、出力部160と、通信インターフェース(I/F)170と、を備える。各構成は、バス180を介して相互に通信可能に接続されている。
【0041】
ROM120は、各種プログラム及び各種データを保存する。RAM130は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ140は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを保存する。本開示では、ROM120又はストレージ140に、本開示に係るプログラムが保存されている。
【0042】
プロセッサ110は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサ110は、ROM120又はストレージ140からプログラムを読み出し、RAM130を作業領域としてプログラムを実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。
【0043】
プログラムは、解析装置1が読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、解析装置1にプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0044】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0045】
(付記項1)
構造物の内部空間の点群データを用いて、構造物の内面の変位を解析する解析装置であって、
第1の時刻及び第2の時刻の各時刻における前記構造物の内部空間の点群データを取得するレーザースキャナと、
前記構造物の設計データを入力して、前記構造物の内面の3次元モデルを作成し、前記3次元モデルをメッシュ化し、全メッシュ節点と前記各時刻における点群データとの間で、座標の位置合わせを行い、前記3次元モデルを、前記各時刻における変換後の点群データと、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割し、各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の各点群データの座標を終点とする第1のベクトルを、前記各時刻における前記各領域におけるメッシュ節点の変位ベクトルとして算出し、前記第1の時刻における変位ベクトルと、前記第2の時刻における変位ベクトルとの差分を各メッシュ節点の変位として算出するコントローラと、を備える解析装置。
(付記項2)
前記コントローラは、前記各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の点群データの重心の座標を終点とする第2のベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出する、付記項1に記載の解析装置。
(付記項3)
前記コントローラは、前記変位ベクトルの前記各領域における法線方向成分を求め、前記法線方向成分を有する法線ベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出する、付記項1又は2に記載の解析装置。
(付記項4)
構造物の内部空間の点群データを用いて、構造物の内面の変位を解析する解析方法であって、
解析装置により、
第1の時刻及び第2の時刻の各時刻における前記構造物の内部空間の点群データを取得し、前記構造物の設計データを入力して、前記構造物の内面の3次元モデルを作成し、前記3次元モデルをメッシュ化し、全メッシュ節点と前記各時刻における点群データとの間で、座標の位置合わせを行い、前記3次元モデルを、前記各時刻における変換後の点群データと、1つのメッシュ節点とが含まれる局所的な領域に分割し、各領域におけるメッシュ節点の座標を始点とし、前記各領域に対応付けられた前記変換後の各点群データの座標を終点とする第1のベクトルを、前記各時刻における前記各領域のメッシュ節点の変位ベクトルとして算出し、前記第1の時刻における変位ベクトルと、前記第2の時刻における変位ベクトルとの差分を各メッシュ節点の変位として算出する解析方法。
(付記項5)
コンピュータによって実行可能なプログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、前記コンピュータを付記項1から3のいずれか一項に記載の解析装置として機能させるプログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【0046】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。たとえば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 解析装置
11 点群データ計測部(レーザスキャナ)
12 メッシュデータ作成部
13 座標変換部
14 変位ベクトル算出部
15 変位解析部
20 制御演算回路(コントローラ)
100 コンピュータ
110 プロセッサ
120 ROM
130 RAM
140 ストレージ
150 入力部
160 出力部
170 通信インターフェース(I/F)
180 バス