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  • 特開-真空処理装置及び真空処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027761
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】真空処理装置及び真空処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20240222BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C23C14/00 B
C23C14/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130843
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木本 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌敏
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA02
4K029CA01
4K029DA09
4K029DA10
4K029DB03
4K029DB18
4K029DB19
4K029DB21
4K029HA01
4K029JA10
4K029KA03
(57)【要約】
【課題】基材の損傷または基材の皺を抑制する。
【解決手段】真空処理装置は、巻出ローラと、巻取ローラと、主ローラと、成膜源と、除去機構とを具備する。巻出ローラは、成膜面と上記成膜面とは反対側の非成膜面とを有する基材を繰り出す。上記巻取ローラは、上記基材を巻き取る。上記主ローラは、上記基材が搬送される方向において、上記巻出ローラと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記非成膜面に当接する外周面を有する。上記成膜源は、上記非成膜面に当接する上記主ローラの上記外周面に対向する。上記除去機構は、上記基材から露出された上記外周面に付着した上記成膜源からの成膜材料を除去する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜面と前記成膜面とは反対側の非成膜面とを有する基材を繰り出す巻出ローラと、
前記基材を巻き取る巻取ローラと、
前記基材が搬送される方向において、前記巻出ローラと前記巻取ローラとの間に設けられ、前記非成膜面に当接する外周面を有する主ローラと、
前記非成膜面に当接する前記主ローラの前記外周面に対向する成膜源と、
前記基材から露出された前記外周面に付着した前記成膜源からの成膜材料を除去する除去機構と
を具備する真空処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された真空処理装置であって、
前記主ローラは、前記成膜源と前記除去機構との間に配置された
真空処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された真空処理装置であって、
前記除去機構は、前記外周面から飛遊する前記成膜材料を捕捉する捕捉機構を含む
真空処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載された真空処理装置であって、
前記除去機構は、前記外周面に付着した前記成膜材料を加熱する加熱部または前記外周面に付着した前記成膜材料を研削する研削部を含む
真空処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載された真空処理装置であって、
前記加熱部は、レーザ加熱またはランプ加熱によって前記成膜材料を加熱する
真空処理装置。
【請求項6】
成膜面と前記成膜面とは反対側の非成膜面とを有する基材を繰り出す巻出ローラと、前記基材を巻き取る巻取ローラと、前記基材が搬送される方向において、前記巻出ローラと前記巻取ローラとの間に設けられ、前記非成膜面に当接する外周面を有する主ローラと、前記非成膜面に当接する前記主ローラの前記外周面に対向する成膜源とを用いて前記成膜面に前記成膜源の成膜材料を成膜し、
前記基材から露出された前記外周面に付着した前記成膜材料を除去する
真空処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載された真空処理方法であって、
前記主ローラが回転する1回転ごとに、前記外周面に付着した前記成膜材料を除去する
真空処理方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載された真空処理方法であって、
前記外周面から飛遊する前記成膜材料を捕捉機構を用いて捕捉する
真空処理方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載された真空処理方法であって、
前記外周面に付着した前記成膜材料を加熱または研削で除去する
真空処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載された真空処理方法であって、
前記加熱をレーザ加熱またはランプ加熱によって行う
真空処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置及び真空処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状のフィルム(成膜用の基材)を減圧雰囲気で主ローラに巻回しながらフィルムに被膜を形成する、所謂ロール・トゥ・ロール方式の成膜装置がある。このような成膜装置では、成膜源と、主ローラに巻回されたフィルムとの間に、例えば、主ローラの両側部を覆うマスクを配置することがある(例えば、特許文献1参照)。マスクを用いることにより、フィルムの所定の部分に被膜が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-019246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスクは、主ローラまたはフィルムと接触しないように主ローラから所定の距離を隔てて配置される。マスクが主ローラから所定の距離を隔てて配置されると、マスクと主ローラとの間には必然的に空隙が形成される。このため、成膜源から放出された成膜材料がマスクと基材であるフィルムとの間に回り込む場合がある。このような回り込んだ成膜材料が主ローラ上に堆積すると、主ローラに巻回された基材が堆積膜によって損傷を受けたり、主ローラに巻回された基材に皺が発生したりする。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、基材の損傷または基材の皺を抑制する真空処理装置及び真空処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空処理装置は、巻出ローラと、巻取ローラと、主ローラと、成膜源と、除去機構とを具備する。
巻出ローラは、成膜面と上記成膜面とは反対側の非成膜面とを有する基材を繰り出す。
上記巻取ローラは、上記基材を巻き取る。
上記主ローラは、上記基材が搬送される方向において、上記巻出ローラと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記非成膜面に当接する外周面を有する。
上記成膜源は、上記非成膜面に当接する上記主ローラの上記外周面に対向する。
上記除去機構は、上記基材から露出された上記外周面に付着した上記成膜源からの成膜材料を除去する。
【0007】
このような真空処理装置によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0008】
上記真空処理装置においては、上記主ローラは、上記成膜源と上記除去機構との間に配置されてもよい。
【0009】
このような真空処理装置によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0010】
上記真空処理装置においては、上記除去機構は、上記外周面から飛遊する上記成膜材料を捕捉する捕捉機構を含んでもよい。
【0011】
このような真空処理装置によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0012】
上記真空処理装置においては、上記除去機構は、上記外周面に付着した上記成膜材料を加熱する加熱部または上記外周面に付着した上記成膜材料を研削する研削部を含んでもよい。
【0013】
このような真空処理装置によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0014】
上記真空処理装置においては、上記加熱部は、レーザ加熱またはランプ加熱によって上記成膜材料を加熱してもよい。
【0015】
このような真空処理装置によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空処理方法では、成膜面と上記成膜面とは反対側の非成膜面とを有する基材を繰り出す巻出ローラと、上記基材を巻き取る巻取ローラと、上記基材が搬送される方向において、上記巻出ローラと上記巻取ローラとの間に設けられ、上記非成膜面に当接する外周面を有する主ローラと、上記非成膜面に当接する上記主ローラの上記外周面に対向する成膜源とを用いて上記成膜面に上記成膜源の成膜材料を成膜し、
上記基材から露出された上記外周面に付着した上記成膜材料を除去する。
【0017】
このような真空処理方法によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0018】
上記真空処理方法においては、上記主ローラが回転する1回転ごとに、上記外周面に付着した上記成膜材料を除去してもよい。
【0019】
このような真空処理方法によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0020】
上記真空処理方法においては、上記外周面から飛遊する上記成膜材料を捕捉機構を用いて捕捉してもよい。
【0021】
このような真空処理方法によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0022】
上記真空処理方法においては、上記外周面に付着した上記成膜材料を加熱または研削で除去してもよい。
【0023】
このような真空処理方法によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【0024】
上記真空処理方法においては、上記加熱をレーザ加熱またはランプ加熱によって行ってもよい。
【0025】
このような真空処理方法によれば、基材の損傷または基材の皺が抑制される。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように、本発明によれば、基材の損傷または基材の皺を抑制する真空処理装置及び真空処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態に係る真空処理装置の一例を示す模式図である。
図2】図(a)は、図1に示す一点鎖線C1に沿って基材、被膜、マスク、及び主ローラを切断した場合の模式的断面、図(b)は、図1に示す一点鎖線C2に沿って主ローラ及び余剰膜を切断した場合の模式的断面、図(c)は、図1に示す一点鎖線C3に沿って主ローラを切断した場合の模式的断面、図(d)は、図1に示す一点鎖線C4に沿って主ローラを切断した場合の模式的断面である。
図3】図(a)は、除去機構の変形例を示す模式図である。図(b)は、除去機構の別の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0029】
図1は、本実施形態に係る真空処理装置の一例を示す模式図である。図1に例示された真空処理装置1は、大気圧未満の減圧雰囲気の条件下で長尺状の基材90に被膜を形成するロール・トゥ・ロール方式の真空処理装置である。また、真空処理装置1は、基材90から露出された主ローラ40に付着した余剰の被膜を除去することができる。図1では、主ローラ40の中心軸40cの方向がY軸方向とされ、成膜源20から主ローラ40に向かう方向がZ軸方向とされる。Y軸方向とZ軸方向とに直交する方向がX軸方向とされる。
【0030】
真空処理装置1は、真空槽10と、成膜源20と、マスク30と、主ローラ40と、巻出ローラ41と、巻取ローラ42と、除去機構(除膜機構)50と、排気機構70とを具備する。主ローラ40と巻出ローラ41との間、または、主ローラ40と巻取ローラ42との間には、基材90をガイドするガイドローラ(不図示)が設けられてもよい。真空処理装置1は、主ローラ40、巻出ローラ41、巻取ローラ42、及びガイドローラのそれぞれを回転する回転駆動機構(不図示)を備える。また、真空処理装置1は、真空槽10にガスを供給するガス供給機構を備えてもよい。
【0031】
基材90は、真空槽10内で巻出ローラ41から主ローラ40、主ローラ40から巻取ローラ42に所定の搬送速度で搬送される。例えば、基材90は、巻出ローラ41に巻かれ、巻出ローラ41から主ローラ40に繰り出される。巻出ローラ41から主ローラ40に繰り出された基材90は、主ローラ40によって巻回搬送され、巻取ローラ42によって巻き取られる。主ローラ40によって巻回搬送された基材90には、成膜源20から放出された成膜材料が堆積して、基材90に被膜が形成される。
【0032】
真空槽10は、密閉構造を有する。真空槽10は、真空ポンプP1を有する排気機構70によって、所定の減圧雰囲気に維持可能となる。真空処理装置1は、例えば、成膜室11と、処理室12とを有する。成膜室11と処理室12とは、仕切壁13によって区分けされる。真空槽10は、図1の例では、成膜源20と、マスク30と、主ローラ40と、巻出ローラ41と、巻取ローラ42と、除去機構50とを収容する。
【0033】
仕切壁13には、主ローラ40が仕切壁13に接触せずに処理室12から、主ローラ40の一部が成膜室11に入り込めるように開口14が設けられている。また、仕切壁13に開口14が設けられることによって、主ローラ40と仕切壁13との間に隙間が形成される。主ローラ40に巻回搬送された基材90は、この隙間を通じて、処理室12と成膜室11との間を通過する。
【0034】
成膜源20は、成膜室11に設けられる。成膜源20は、例えば、蒸発源を含む。成膜源20は、主ローラ40の外周面401に対向する。成膜源20は、抵抗加熱式蒸発源、誘導加熱式蒸発源、または電子ビーム加熱式蒸発源等で構成される。成膜源20からは、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の成膜材料が主ローラ40に向けて蒸発する。成膜材料は、例えば、Li、Na等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属等を含む。基材90に形成される被膜の厚みは、20μm以下である。この被膜がLi膜の場合、この被膜は、例えば、リチウム電池の負極に適用される。
【0035】
成膜室11は、排気機構70に接続される。成膜室11は、排気機構70によって減圧状態を維持する。処理室12は、開口14を介して成膜室11と連通する。成膜室11が排気されると、開口14を介して処理室12が排気される。図1の例では、処理室12には排気機構70に接続されていない。これにより、成膜室11が排気されると成膜室11よりも処理室12の方が高圧となる圧力差が生じる。この圧力差によって、成膜源20からの蒸気流21(成膜材料)が開口14を通じて処理室12に侵入することが抑制される。なお、必要に応じて、処理室12を排気機構で排気してもよい。
【0036】
成膜源20と、主ローラ40との間には、マスク30が設置される。マスク30は、処理室12から成膜室11に突き出た主ローラ40の外周面401に沿って配置される。マスク30と主ローラ40との間には、主ローラ40によって巻回搬送された基材90が通過する。基材90とマスク30との間は、例えば、1mm~10mmに設定される。
【0037】
主ローラ40は、基材90が搬送される方向(搬送されている基材90に沿った方向)において、巻出ローラ41と巻取ローラ42との間に設けられる。主ローラ40は、成膜源20と除去機構50との間に配置される。主ローラ40の一部は、成膜室11に配置され、残りの部分が処理室12に配置される。主ローラ40は、成膜源20に対向する。主ローラ40は、例えば、反時計回りに回転する。本実施形態では、主ローラ40が回転する方向を回転方向Rとする。
【0038】
主ローラ40は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属材料で筒状に構成される。主ローラ40の内部には、例えば、温調機構(不図示)が設けられてもよい。主ローラ40の中心軸40cの方向の幅は、基材90の幅よりも大きく設定される。主ローラ40は、巻出ローラ41によって巻き出された基材90を巻回搬送し、被膜が形成された基材90を巻取ローラ42に向けて繰り出す。
【0039】
巻出ローラ41は、処理室12に設けられる。巻出ローラ41には、基材90が予め巻回される。巻出ローラ41は、その中心軸周りに所定の回転速度で矢印方向に回転する。巻出ローラ41は、基材90を主ローラ40に向けて繰り出す。
【0040】
巻取ローラ42は、処理室12に設けられる。巻取ローラ42は、その中心軸周りに所定の回転速度で矢印方向に回転する。巻取ローラ42は、主ローラ40によって巻回搬送され、成膜材料が堆積した基材90を巻き取る。
【0041】
基材90は、成膜面901と、成膜面901とは反対側であって主ローラ40の外周面401に当接する非成膜面(裏面)902とを有する。成膜面901は、成膜源20に対向する。成膜面901には、成膜源20から放出される蒸気流21が堆積して、主ローラ40上で基材90の成膜面901に被膜が形成される。
【0042】
基材90は、シート状且つ長尺状のフィルムである(厚み:50μm以下)。基材90は、可撓性を有する。例えば、基材90は、Cu、Al、Ni、SUS鋼等の帯状の金属箔、OPP(延伸ポリプロピレン)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイト)樹脂、PI(ポリイミド)樹脂等の帯状のフィルムである。
【0043】
除去機構50は、処理室12に設けられる。除去機構50は、加熱部51と、捕捉機構52とを含む。除去機構50は、巻出ローラ41と巻取ローラ42との間に設けられる。また、除去機構50は、主ローラ40またはマスク30を挟んで、成膜源20とは反対側に設けられる。除去機構50は、主ローラ40に対向する。除去機構50は、基材90から露出された主ローラ40の外周面401に付着した成膜材料を真空槽10内で除去する。
【0044】
加熱部51は、主ローラ40の外周面401に付着した成膜材料を加熱する。例えば、加熱部51は、レーザ光510を発する。すなわち、加熱部51は、レーザ加熱によって外周面401に付着した成膜材料を加熱する。なお、加熱部51は、真空槽10の内部に限らず、真空槽10の外部に設けられてもよい。この場合、加熱部51から発せられるレーザ光は、真空槽10に設けられた窓部材(不図示)を介して真空槽10の内部に入射される。なお、加熱部51は、複数設けられてもよい。また、レーザ光510は、中心軸40cの方向に走査されてもよい。
【0045】
加熱部51によって加熱され、外周面401から飛遊する成膜材料は、捕捉機構52によって捕捉される。捕捉機構52は、例えば、真空槽10から交換可能な防着板520を含む。外周面401から飛遊する成膜材料が防着板520に付着することにより、該成膜材料が捕捉機構52に捕捉される。処理室12においては、巻出ローラ41から主ローラ40に繰り出された基材90、または、主ローラ40から巻取ローラ42に巻き取られる基材90への成膜材料の付着が防止される。
【0046】
真空処理装置1を用いて、基材90の成膜面901に成膜源20の成膜材料を成膜しながら、基材90から露出された主ローラ40の外周面401に付着した成膜材料を除去する動作について説明する。
【0047】
図2(a)には、図1に示す一点鎖線C1に沿って基材、被膜、マスク、及び主ローラを切断した場合の模式的断面が示されている。
【0048】
一点鎖線C1の位置においては、マスク30は、主ローラ40の一部(例えば、両端部分)を遮蔽し、残りの部分である基材90を成膜源20(図1)に向けて露出させる。これにより、蒸気流21は、マスク30によって遮蔽され、蒸気流21が基材90に優先的に堆積し、基材90に被膜91が形成される。
【0049】
ここで、マスク30と基材90との間には隙間80が形成されている。このため、隙間80を介して主ローラ40に向けて蒸気流21が流れ込み、マスク30から露出された主ローラ40の外周面401に成膜材料が付着する場合がある。マスク30から露出された外周面401に堆積した成膜材料を余剰膜(堆積膜)910とする。
【0050】
図2(b)には、図1に示す一点鎖線C2に沿って主ローラ及び余剰膜を切断した場合の模式的断面が示されている。
【0051】
一点鎖線C2の位置では、基材90と被膜91とが巻取ローラ42によって巻き取られ、基材90と被膜91とが主ローラ40から離れる。これにより、主ローラ40の外周面410には、余剰膜910が残存する。
【0052】
このような状態を放置すると、主ローラ40が一点鎖線C2の位置から1周した後には、余剰膜910の上にさらに成膜材料が堆積して余剰膜910の厚みが増すことになる。そして、この作用が繰り返されると、主ローラ40の外周面410には、厚い余剰膜910が形成されることになる。
【0053】
主ローラ40の外周面410に厚い余剰膜910が形成された状態のまま、主ローラ40が基材90を巻回搬送すると、主ローラ40に巻回された基材90が余剰膜910に乗り上げ、基材90に段差が形成されて基材90が損傷を受けたり、あるいは、主ローラ40で巻回搬送される基材90に皺が発生したりする。
【0054】
図2(c)には、図1に示す一点鎖線C3に沿って主ローラを切断した場合の模式的断面が示されている。
【0055】
本実施形態では、除去機構50によって、余剰膜910を除去する。例えば、一点鎖線C3の位置では、主ローラ40の外周面410に形成された余剰膜910に加熱部51からのレーザ光510が照射される。これにより、余剰膜910が加熱されて、余剰膜910が蒸気流22となって主ローラ40から離れていく。そして、外周面401から飛遊する蒸気流22は、捕捉機構52(図1)によって捕捉される。これにより、余剰膜910は、主ローラ40から除去される。
【0056】
図2(d)には、図1に示す一点鎖線C4に沿って主ローラを切断した場合の模式的断面が示されている。一点鎖線C4の位置では、外周面401に付着した余剰膜910が主ローラ40から除去されている。この後、余剰膜910が除去された主ローラ40によって基材90が巻回搬送され、図2(a)から図2(d)に示す動作が繰り返される。
【0057】
なお、余剰膜910への加熱処理は、主ローラ40が回転する1回転ごとに実行してもよく、主ローラ40が回転する数周回に1回の割合で実行してもよい。
【0058】
このような真空処理方法によれば、主ローラ40の外周面410に余剰膜910が形成されることなく、余剰膜910が除去された主ローラ40によって基材90が巻回搬送されて基材90に被膜91が形成されることになる。この結果、主ローラ40に巻回された基材90が余剰膜910によって損傷を受けたり、主ローラ40で巻回搬送される基材90に皺が発生したりすることが回避される。
【0059】
図3(a)は、除去機構の変形例を示す模式図である。
【0060】
図3(a)に示す除去機構50は、赤外線ランプによる加熱部53と、捕捉機構52とを有する。主ローラ40の外周面410に堆積した余剰膜910は、レーザ加熱に限らず、ランプ加熱によって行ってもよい。また、加熱部53は、赤外線ランプ自らによって加熱されるため、加熱部52に成膜材料が堆積することはない。
【0061】
図3(b)は、除去機構の別の変形例を示す模式図である。
【0062】
図3(b)では、除去機構として主ローラ40の外周面401に付着した成膜材料を研削する研削部54が例示される。主ローラ40の外周面410に堆積した余剰膜910は、レーザ加熱、ランプ加熱に限らず、研削によって除去してもよい。研削部54は、主ローラ40に損傷を与えないように、例えば、樹脂材で構成される。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…真空処理装置
10…真空槽
11…成膜室
12…処理室
13…仕切壁
14…開口
20…成膜源
21…蒸気流
30…マスク
40…主ローラ
40c…中心軸
41…巻出ローラ
42…巻取ローラ
50…除去機構
51、53…加熱部
52…捕捉機構
54…研削部
70…排気機構
80…隙間
90…基材
401…外周面
510…レーザ光
520…防着板
901…成膜面
902…非成膜面
910…余剰膜
図1
図2
図3