(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027783
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】流体抵抗素子、流体制御装置、及び流体抵抗素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20240222BHJP
G01F 1/684 20060101ALI20240222BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20240222BHJP
G01F 1/48 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01F1/00 G
G01F1/684 Z
G05D7/06 Z
G01F1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130880
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠弘
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
5H307
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CF08
2F035EA00
5H307AA02
5H307BB01
5H307DD13
5H307EE02
5H307FF03
5H307FF06
5H307FF12
(57)【要約】
【課題】セラミック製の流体抵抗素子によるメリットを享受しつつ、その流体抵抗素子を流路に固定できるようにする。
【解決手段】1又は複数の抵抗流路10aを有するセラミック製の流路形成部材10と、流路形成部材10の外周面11を覆う金属製の被覆部材20とを備え、被覆部材20の内周面25に、流路形成部材10の外周面11に向かって膨出する膨出部26が設けられているようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の抵抗流路を有するセラミック製の流路形成部材と、
前記流路形成部材の外周面を覆う金属製の被覆部材とを備え、
前記被覆部材の内周面に、前記流路形成部材の外周面に向かって膨出する膨出部が設けられていることを特徴とする流体抵抗素子。
【請求項2】
前記膨出部が、前記被覆部材の内周面の周方向に沿って形成されている、請求項1記載の流体抵抗素子。
【請求項3】
前記被覆部材の外周面に、前記流路形成部材の外周面に向かって径方向内側に窪む凹部が設けられている、請求項1又は2記載の流体抵抗素子。
【請求項4】
前記被覆部材が、筒状をなすとともに、前記流路形成部材を収容する収容空間を有し、前記収容空間を形成している軸方向に沿った所定領域が、軸方向に沿ったその他の領域に比べて薄肉である、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の流体抵抗素子。
【請求項5】
前記被覆部材が、前記流路形成部材よりも下流側に設けられて、前記抵抗流路を通過した流体が導かれる下流側流路を有し、
前記下流側流路が、前記流路形成部材の外径よりも流路径が小さい小径部を有している、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の流体抵抗素子。
【請求項6】
前記下流側流路が、前記小径部よりも下流側に設けられて、上流側から下流側に向かって流路径が拡がる拡径部を有する、請求項5記載の流体抵抗素子。
【請求項7】
前記被覆部材が、前記流路形成部材よりも上流側に設けられて、上流側から下流側に向かって流路径が縮まる縮径部を有する、請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の流体抵抗素子。
【請求項8】
前記被覆部材の軸方向両端部が、別の管部材に溶接される溶接箇所である、請求項1乃至7のうち何れか一項に記載の流体抵抗素子。
【請求項9】
流体が流れる流路に設けられた請求項1乃至8のうち何れか一項に記載の流体抵抗素子と、
前記流路における前記流体抵抗素子の上流側及び下流側に設けられた上流側圧力センサ及び下流側圧力センサと、
前記流路に設けられた流量調整弁とを備える流体制御装置。
【請求項10】
流体が流れる流路に設けられた請求項1乃至8のうち何れか一項に記載の流体抵抗素子と、
前記流路における上流側及び下流側をつなぐセンサ流路と、
前記センサ流路に設けられた上流側電気抵抗素子及び下流側電気抵抗素子と、
前記流路に設けられた流量調整弁とを備える流体制御装置。
【請求項11】
複数の前記流体抵抗素子が、前記流路に直列又は並列に設けられている、請求項9又は10記載の流体制御装置。
【請求項12】
前記複数の流体抵抗素子が、抵抗値の互いに異なるものである、請求項11記載の流体制御装置。
【請求項13】
1又は複数の抵抗流路を有するセラミック製の流路形成部材の外周面を、金属製の被覆部材により覆うステップと、
前記被覆部材を径方向外側から力をかけてかしめることにより、前記被覆部材に対して流路形成部材を固定するステップとを備えることを特徴とする流体抵抗素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体抵抗素子、この流体抵抗素子を備えた流体制御装置、及び流体抵抗素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体抵抗素子としては、特許文献1に示すように、円柱状のセラミックに非常に細い複数本の抵抗流路を形成したものがある。
【0003】
こうしたセラミック製の流体抵抗素子は、従来の金属製のものに比べて、熱膨張率がゼロに近い、硬度が高い、耐熱性及び耐食性に優れているなどの物性を有しており、特に小流量制御時における流量を精度良く測定することが可能である。
【0004】
しかしながら、セラミックが殆ど変形しないという物性面から、セラミック製の流体抵抗素子を流路に固定することが難しいといった課題がある。なお、特許文献1には、円柱状のセラミックを円筒状の金属に対してしまり嵌めやすきま嵌めなどする態様が挙げられてはいるものの、これらの固定方法はどれも技術的に難しく、現実的に採用するには課題が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2021/095492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、セラミック製の流体抵抗素子によるメリットを享受しつつ、その流体抵抗素子を流路に固定できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る流体抵抗素子は、1又は複数の抵抗流路を有するセラミック製の流路形成部材と、前記流路形成部材の外周面を覆う金属製の被覆部材とを備え、前記被覆部材の内周面に、前記流路形成部材の外周面に向かって膨出する膨出部が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
このように構成された流体抵抗素子によれば、流路形成部材がセラミック製であるので、熱膨張率がゼロに近い、硬度が高い、耐熱性及び耐食性に優れているなどといったセラミックならではのメリットを享受することができる。
しかも、被覆部材の内周面に設けられている膨出部を、金属製の被覆部材を径方向外側から力を加えてかしめることにより形成することで、被覆部材に対して流路形成部材を固定することができ、この金属製の被覆部材を例えば別の管部材に溶接等により固定することで、流体抵抗素子を流路の所望箇所に固定させることができる。
【0009】
前記膨出部が、前記被覆部材の内周面の周方向に沿って形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、被覆部材に対して流路形成部材をより確実に固定させることができる。
【0010】
前記被覆部材の外周面に、前記流路形成部材の外周面に向かって径方向内側に窪む凹部が設けられていることが好ましい。
このように、被覆部材の外周面に凹部を設けることにより、被覆部材の内周面に上述した膨出部を形成することができ、被覆部材に対して流路形成部材を固定させることができる。
【0011】
前記被覆部材が、筒状をなすとともに、前記流路形成部材を収容する収容空間を有し、前記収容空間を形成している軸方向に沿った所定領域が、軸方向に沿ったその他の領域に比べて薄肉であることが好ましい。
このような構成であれば、収容空間を形成している所定領域をその他の領域よりも薄肉にしてあるので、どの辺りに流路形成部材が収容されているかを一見して把握することができるし、薄肉にすることで、この所定領域をかしめ易くすることができ、作業性の向上を図れる。
【0012】
前記被覆部材が、前記流路形成部材よりも下流側に設けられて、前記抵抗流路を通過した流体が導かれる下流側流路を有し、前記下流側流路が、前記流路形成部材の外径よりも流路径が小さい小径部を有していることが好ましい。
これならば、被覆部材に挿入した流路形成部材が小径部に閊えるので、流路形成部材の下流側への抜け等を防ぐことができる。
【0013】
前記下流側流路が、前記小径部よりも下流側に設けられて、上流側から下流側に向かって流路径が拡がる拡径部を有することが好ましい。
これならば、抵抗流路を通過した流体の圧力を拡径部で一様にしてから下流に導くことができるので、流量をより精度良く測定することができる。
【0014】
前記被覆部材が、前記流路形成部材よりも上流側に設けられて、上流側から下流側に向かって流路径が縮まる縮径部を有することが好ましい。
これならば、縮径部が流路形成部材を挿入する際のガイドとして機能するので、作業性の向上を図れる。
【0015】
流体抵抗素子を流路の所望箇所に固定するためには、前記被覆部材の軸方向両端部が、別の管部材に溶接される溶接箇所であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る流体制御装置は、流体が流れる流路に設けられた上述の流体抵抗素子と、前記流路における前記流体抵抗素子の上流側及び下流側に設けられた上流側圧力センサ及び下流側圧力センサと、前記流路に設けられた流量調整弁とを備えることを特徴とするものである。
さらに、本発明に係る別の流体制御装置は、流体が流れる流路に設けられた上述の流体抵抗素子と、前記流路における上流側及び下流側をつなぐセンサ流路と、前記センサ流路に設けられた上流側電気抵抗素子及び下流側電気抵抗素子と、前記流路に設けられた流量調整弁とを備えることを特徴とするものである。
このように構成された差圧式の流体制御装置や熱式の流体制御装置であれば、上述した流体抵抗素子を備えているので、本発明に係る流体抵抗素子と同様の作用効果を奏し得る。
【0017】
より具体的な実施としては、複数の前記流体抵抗素子が、前記流路に直列又は並列に設けられている態様を挙げることができる。
【0018】
前記複数の流体抵抗素子が、抵抗値の互いに異なるものであることが好ましい。
これならば、複数の流体抵抗素子を用いて種々の抵抗値を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係る流体抵抗素子の製造方法は、1又は複数の抵抗流路を有するセラミック製の流路形成部材の外周面を、金属製の被覆部材により覆うステップと、前記被覆部材を径方向外側から力をかけてかしめることにより、前記被覆部材に対して流路形成部材を固定するステップとを備えることを特徴とする方法である。
このような製造方法であれば、上述した流体抵抗素子と同様の作用効果を得ることができ、セラミック製の流体抵抗素子によるメリットを享受しつつ、その流体抵抗素子を流路の所望箇所に固定させることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、流路形成部材がセラミック製であることによる種々のメリットを享受しつつ、流体抵抗素子を流路の所望箇所に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態における流体制御装置の流体回路図。
【
図2】同実施形態の流体制御装置の内部構造の一部を示す断面図。
【
図3】同実施形態の流体抵抗素子の構成を示す模式図。
【
図4】同実施形態の流体抵抗素子の構成を示す模式図。
【
図5】同実施形態のかしめることを説明するための模式図。
【
図6】その他の実施形態における流体抵抗素子の配置を示す模式図。
【
図7】その他の実施形態における流体抵抗素子の配置を示す模式図。
【
図8】その他の実施形態における保持ブロックの構成を示す模式図。
【
図9】その他の実施形態における流体制御装置の流体回路図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る流体抵抗素子の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態の流体抵抗素子は、例えば半導体製造に用いる材料ガス等の質量流量を制御する流体制御装置の構成要素の1つである。
【0024】
具体的にこの流体制御装置100は、
図1に流体回路図を、
図2に内部構造の一部を示すように、制御対象である流体を流す内部流路Lと、内部流路L上に設けられた流量調整弁Vと、この流量調整弁Vよりも下流側に設けられ、当該内部流路Lを流れる流体の流量を測定する流量測定機構Xと、この流量測定機構Xによる測定流量が予め定めた目標流量になるように流量調整弁Vを制御する制御回路C1とを備えている。
【0025】
流量測定機構Xは、差圧式のものであり、
図1に示すように、内部流路Lの上流側に設けられた上流側圧力センサPaと、上流側圧力センサPaよりも下流側に設けられた下流側圧力センサPbと、内部流路Lにおける上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbとの間に設けられ圧力差を生じさせる流体抵抗素子Rと、上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbによる圧力計測値と流体抵抗素子Rの抵抗値とに基づいて、内部流路Lを流れる流体の流量を算出する流量算出回路C2とを具備している。
【0026】
本実施形態では、流体抵抗素子Rが特徴的であるので、以下に詳述する。
【0027】
流体抵抗素子Rは、
図2~
図4に示すように、流体が流れる時の抵抗となるものであり、具体的には抵抗となる流路10a(以下、抵抗流路10aとも言う。)を有するセラミック製の流路形成部材10と、この流路形成部材10の外周面11を覆う金属製の被覆部材20とを備えている。
【0028】
この流路形成部材10は、例えば石英、アルミナ、ジルコニア、又は窒化ケイ素などのセラミックから成形されたものであり、具体的には円柱状をなし、軸方向に沿って一乃至数百本程度の抵抗流路10aが形成されている。ここでの流路形成部材10は、数mm程度(例えば1.5mm)の径寸法(外径)であり、数mm~数十mm程度(例えば7mm)の長さ寸法(軸方向に沿った寸法)であるが、これらの寸法は適宜変更して構わない。
【0029】
抵抗流路10aは、流路形成部材10を軸方向に貫通してなり、横断面円形状の直線状のものであって、例えば流路形成部材10の管軸上に形成されたものや、管軸周りに規則的に配置された複数のものなどを挙げることができる。ここでの抵抗流路10aは、1mm未満であって数十μm程度(例えば30μm)の径寸法(内径)であり、長さ寸法(軸方向に沿った寸法)は流路形成部材10と同じ数mm~数十mm程度(例えば7mm)であるが、これらの寸法は適宜変更して構わない。
【0030】
本実施形態では、抵抗流路10aの径寸法に対する長さ寸法の比率であるアスペクト比が200以上であり、より好ましくは300以上である。なお、本流体抵抗素子Rの抵抗値は、このアスペクト比や抵抗流路10aの本数に基づいて定まる。
【0031】
被覆部材20は、例えばステンレスやニッケル系合金などの少なくともセラミックよりも硬度の低い金属からなるものである。
【0032】
この被覆部材20は、
図3及び
図4に示すように、筒状をなし、流路形成部材10の外周面11の全体を覆うものであり、言い換えれば、流路形成部材10を収容するものである。
【0033】
より具体的に説明すると、被覆部材20は、
図4に示すように、流路形成部材10を収容する収容空間21と、収容空間21よりも上流側の上流側流路22と、収容空間21よりも下流側の下流側流路23とを有している。
【0034】
収容空間21は、流路形成部材10の少なくとも一部を収容する空間であり、流路形成部材10の外径よりも若干大きい内径を有する。
【0035】
本実施形態の収容空間21は、流路形成部材10の中央部から下流側端部10bまでを収容空間21に収容させるとともに、流路形成部材10の上流側端部10cを収容空間21から上流側にはみ出させている。
【0036】
ただし、流路形成部材10の中央部から上流側端部10cまでを収容空間21に収容させるとともに、流路形成部材10の下流側端部10bを収容空間21から下流側にはみ出させても良いし、流路形成部材10の中央部のみを収容空間21に収容させるとともに、流路形成部材10の上流側端部10c及び下流側端部10bを収容空間21からはみ出させても良い。また、収容空間21としては、流路形成部材10の全体を収容する空間であっても良い。
【0037】
上流側流路22は、被覆部材20の上流側開口20aと収容空間21とを連通しており、この上流側流路22を介して流路形成部材10が収容空間21に挿入される。
【0038】
この上流側流路22は、収容空間21の内径よりも大きい流路径を有し、ここでは収容空間21の軸方向に沿った長さよりも長い流路長を有している。
【0039】
本実施形態の上流側流路22は、上流側から下流側に向かって流路径が縮まる縮径部221を有しており、この縮径部221の下流端が収容空間21に開口している。つまり、被覆部材20の内周面25のうち、縮径部221を形成する部分は、上流側から収容空間21に向かって徐々に拡径するテーパ状をなす。
【0040】
下流側流路23は、被覆部材20の下流側開口20bと収容空間21を連通しており、流路形成部材10の抵抗流路10aを通過した流体が導かれる。
【0041】
この下流側流路23は、上流端が収容空間21に開口する小径部231を有しており、この小径部231は、流路形成部材10の外径よりも小さい流路径を有する。
【0042】
かかる構成により、小径部231の上流側開口の径方向外側には、収容空間21に収容された流路形成部材10の下流側端面が当接する当接面24が形成される。
【0043】
そして、この当接面24に流路形成部材10が閊えることにより、流路形成部材10が収容空間21から下流側流路23への抜けてしまうことを防ぐことができる。
【0044】
さらに、本実施形態の下流側流路23は、小径部231よりも下流側に設けられて、上流側から下流側に向かって流路径が拡がる拡径部232を有する。つまり、被覆部材20の内周面25のうち、拡径部232を形成する部分は、小径部231から下流側に向かって徐々に拡径するテーパ状をなす。
【0045】
本実施形態では、上述した上流側流路22の流路長と下流側流路23の流路長とは互いに等しく、本実施形態の被覆部材20の外観形状は、軸方向の中心を対称軸とした対称形状をなす。ただし、上流側流路22の流路長や下流側流路23の流路長は、これに限らず適宜変更して構わないし、被覆部材20の外観形状も、非対称形状にするなど、適宜変更して構わない。
【0046】
然して、この被覆部材20をかしめることにより、被覆部材20の内周面25には、流路形成部材10の外周面11に向かって膨出する膨出部26が設けられるとともに、被覆部材20の外周面27には、流路形成部材10の外周面11に向かって径方向内側に窪む凹部28が設けられている。なお、かしめるとは、
図5に示すように、被覆部材20に半径方向から力をかけて変形させることである。
【0047】
より詳細に説明すると、本実施形態の被覆部材20は、
図3及び
図4に示すように、上述した収容空間21を形成している軸方向に沿った所定領域Xが、軸方向に沿ったその他の領域に比べて薄肉である。これにより、収容空間21が軸方向のどの辺りに形成されているか、言い換えれば、流路形成部材10がどの辺りに収容されているかを把握することができる。
【0048】
本実施形態では、所定領域Xの全周が薄肉であり、言い換えれば、所定領域Xが周方向の全周に亘り、他の領域に比べて径方向内側に窪ませた窪み部29として形成されている。
【0049】
かかる構成において、本実施形態では、被覆部材20の周方向における全周をかしめており、これにより、膨出部26が、被覆部材20の内周面25の周方向における全周に亘り形成されるとともに、凹部28が、被覆部材20の外周面27の周方向における全周に亘り形成させれている。
【0050】
より具体的には、上述した薄肉の所定領域Xの全周をかしめており、これにより、膨出部26が、収容空間21を形成する内周面に形成されるとともに、凹部28が、上述した所定領域Xに形成されている。
この膨出部26は、流路形成部材10の外周面11に密着するとともに、流路形成部材10を径方向外側から締め付けるようにして保持するものである。
【0051】
すなわち、本実施形態の流体抵抗素子Rは、抵抗流路10aを有するセラミック製の流路形成部材10の外周面11を、金属製の被覆部材20により覆い、この被覆部材20を径方向外側から力をかけてかしめることにより、被覆部材20に対して流路形成部材10を固定することで製造されたものである。
【0052】
かかる構成において、本実施形態の被覆部材20は、
図2に示すように、軸方向両端部20xに別の管部材Z1、Z2が連結されるとともに、これらの管部材Z1、Z2に対して固定されるものであり、これらの管部材Z1、Z2とともに、内部流路Lを形成する。
【0053】
より具体的に説明すると、被覆部材20の軸方向両端部20xは、別の管部材Z1、Z2に溶接される溶接箇所であり、これらの溶接箇所それぞれに別の管部材Z1、Z2を溶接することで、被覆部材20の上流側開口20aが別の管部材Z1の下流側開口と連通するとともに、被覆部材20の下流側開口20bがさらに別の管部材Z2の上流側開口と連通して、内部流路Lが形成される。
【0054】
本実施形態の被覆部材20は、
図2に示すように、熱伝導率の良いアルミニウム等の伝熱部材30で覆われており、上述した抵抗流路10aを流れる流体の温度を周囲に伝わりやすくしてある。そして、この被覆部材20の近傍には、抵抗流路10aを流れる流体の温度を検出する温度センサTが設けられている。
【0055】
このように構成された本実施形態の流体抵抗素子Rによれば、流路形成部材10がセラミック製であるので、高い寸法精度で加工することができ、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子Rを安定して製作することが可能となる。具体的には、例えば内部に抵抗流路10aを形成した長尺な(例えば1m)セラミックを同じ長さ(例えば数mm程度)に切断した1つ1つを流路形成部材10とすることで、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子Rをいくつも製作することができる。一方で、切断する長さを変えれば、種々の抵抗特性を有する流体抵抗素子Rを簡単に製作することができるので、例えば種々のモデル設計に資する。しかも、流路形成部材10がセラミック製であるので、抵抗流路10aを潰すことなく内部流路Lに挿入することができ、さらに金属製のものに比べて、低熱膨張率、高耐食性、及び低価格といったメリットもある。なおかつ、抵抗流路10aの本数を変えることにより抵抗特性を変えることができるので、例えば超低流量測定にも用いることができる。加えて、抵抗流路10aを円管状に加工することができるので、流体の流れが理想的な流れとなり、種々のシミュレーションを簡素化できる。
【0056】
このように、セラミックを用いて抵抗流路10aを形成することによる種々のメリットを享受しつつも、被覆部材20の内周面25に設けられている膨出部26を、金属製の被覆部材20を径方向外側から力を加えてかしめることにより形成しているので、被覆部材20に対して流路形成部材10を固定することができ、この金属製の被覆部材20を例えば別の管部材Z1、Z2に溶接等により固定することで、流体抵抗素子Rを流路の所望箇所に固定させることができる。
【0057】
また、膨出部26が被覆部材20の内周面25の周方向における全周に亘り形成されているので、被覆部材20に対して流路形成部材10を確実に固定させることができる。
【0058】
さらに、被覆部材20の収容空間21を形成している軸方向に沿った所定領域Xが、軸方向に沿ったその他の領域に比べて薄肉であるので、どの辺りに流路形成部材10が収容されているかを一見して把握することができるし、薄肉にすることで、この所定領域Xをかしめ易くすることができ、作業性の向上を図れる。
【0059】
そのうえ、下流側流路23が、流路形成部材10の外径よりも流路径が小さい小径部231を有しているので、被覆部材20に挿入した流路形成部材10が小径部231に支え、流路形成部材10の下流側への抜け等を防ぐことができる。
【0060】
加えて、下流側流路23が拡径部232を有するので、抵抗流路10aを通過した流体の圧力を拡径部232で一様にしてから下流に導くことができ、流量をより精度良く測定することができる。
【0061】
さらに加えて、上流側流路22が縮径部221を有するので、縮径部221が流路形成部材10を挿入する際のガイドとして機能するので、作業性の向上を図れる。
【0062】
また、流体抵抗素子Rの製造中や持ち運び中などの取り扱い時には、流路形成部材10が被覆部材20で被覆されているので、流路形成部材10の汚染や損傷等のリスクを低減させることができる。
【0063】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0064】
例えば、膨出部26は、前記実施形態では被覆部材20の内周面25の全周に設けられていたが、内周面25の周方向における一部に設けられていても良い。具体的に膨出部26は、内周面25の周方向における半周以上に設けられていることが好ましく、内周面25の周方向における3/4周以上に設けられていることがより好ましい。
【0065】
また、前記実施形態では、被覆部材20の外周面27に凹部28が設けられていたが、かしめる部分を予め厚肉にしておくなどして、被覆部材20の外周面27に凹部28が設けられていなくても良い。
【0066】
前記実施形態では、被覆部材20の収容空間21を含む軸方向に沿った所定領域Xを薄肉にしていたが、この薄肉箇所は必ずしも設ける必要はなく、被覆部材20としては、例えば一端開口から他端開口に亘り同じ外径であっても良い。
【0067】
さらに、被覆部材20としては、
図6に示すように、収容空間21の上流側及び下流側に流路形成部材10の端部が進入可能な空間Sが設けられていても良い。これらの空間Sは、上流側流路22や下流側流路23の一部をなす。
このような構成であれば、流路形成部材10を収容空間21に挿入する際に、上流側又は下流側への流路形成部材10の位置ずれを許容することができる。
【0068】
流体制御装置100としては、前記実施形態では単一の流体抵抗素子Rを備えるものであったが、
図7に示すように、複数の流体抵抗素子Rを備えていても良い。
【0069】
その一例としては、
図7(A)に示すように、複数の流体抵抗素子Rが直列に設けられている態様や、
図7(B)に示すように、複薄の流体抵抗素子Rが並列に設けられている態様を挙げることができる。
なお、かかる構成において、複数の流体抵抗素子Rは、互いに異なる抵抗を有するものであっても良いし、互いに等しい抵抗を有するものであっても良い。
【0070】
このように複数の流体抵抗素子Rを用いる場合、流体制御装置100としては、
図8に示すように、複数の流体抵抗素子を一体的に保持する保持ブロックBを備えていても良い。
この保持ブロックBは、流体抵抗素子Rが挿入される複数の素子挿入孔h1が設けられており、これらの素子挿入孔h1に流体抵抗素子Rを挿入した後、それぞれの被覆部材20に別の管部材(不図示)を溶接などにより連結することで、流体抵抗素子Rが流路の所望箇所に固定される。なお、ここでの保持ブロックBは、温度センサ(不図示)が取り付けられる温度センサ取付孔h2も設けられている。
【0071】
そのうえ、流路形成部材10は、前記実施形態では円柱状のものであったが、仮に流路の横断面が三角形、四角形、又は多角形であれば、これらの形状に対応させて流路形成部材10も横断面が三角形、四角形、又は多角形の柱状のものであっても良い。この場合、被覆部材20も流路の横断面形状に対応させて、横断面が三角形、四角形、又は多角形の筒状のものであっても良い。
【0072】
流体制御装置100としては、流量調整弁Vのないフローメータ(流量測定器)など、他の機器ユニットでも構わない。
【0073】
前記実施形態においては、流体抵抗素子Rとして圧力式の流体制御装置100を構成するものとしていたが、
図9に示すように、内部流路Lに熱式流量センサを設けた熱式の流体制御装置100を構成するものであっても良い。具体的にこの場合の流量測定機構Xは、内部流路Lに設けられた流体抵抗素子Rと、内部流路Lにおける上流側及び下流側をつなぐセンサ流路Lbと、センサ流路Lbに設けられた上流側電気抵抗素子T1及び下流側電気抵抗素子T2と、これらの電気抵抗素子T1、T2から出力される値に基づいて流体の流量を算出する流量算出回路C2とから構成してある。
【0074】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
100・・・流体制御装置
L ・・・内部流路
Pa ・・・上流側圧力センサ
Pb ・・・下流側圧力センサ
R ・・・流体抵抗素子
10 ・・・流路形成部材
11 ・・・外周面
10a・・・抵抗流路
20 ・・・被覆部材
21 ・・・収容空間
22 ・・・上流側流路
221・・・縮径部
23 ・・・下流側流路
231・・・小径部
232・・・拡径部
20a・・・上流側開口
20b・・・下流側開口
24 ・・・当接面
25 ・・・内周面
26 ・・・膨出部
27 ・・・外周面
28 ・・・凹部
29 ・・・窪み部
20x・・・軸方向両端部
X ・・・所定領域