(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027845
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240222BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240222BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20240222BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240222BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
H01L21/78 B
B23K26/00 P
B23K26/067
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130986
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】岩城 智
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AD18
4E168CA03
4E168CA05
4E168CA06
4E168CB22
4E168DA13
4E168DA60
4E168EA08
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4E168KA15
5F063AA26
5F063AA28
5F063AA43
5F063AA48
5F063BA07
5F063BA38
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5F063CB25
5F063CC53
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5F063DE02
5F063DE11
5F063DE12
5F063DE13
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE33
(57)【要約】
【課題】レーザ加工中に加工溝が正常に形成されているか否かを低コスト且つ短時間且つ省スペースで評価可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】レーザ加工中に、レーザヘッド24からストリートCに照射されるレーザ光(第1レーザ光L1、第2レーザ光L2)の第1加工点(加工点SP1,SP2)を撮影する撮影手段(カメラ45,46A,46B)と、撮影手段が撮影した第1加工点の第1撮影画像(撮影画像D1,D2A,D2B)から第1加工点で発生するプラズマ68,69の形状であるプラズマ形状を取得するプラズマ形状取得部56と、プラズマ形状取得部56が取得したプラズマ形状を評価するプラズマ形状評価部58と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハに対してレーザヘッドを前記ウェーハのストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつ前記レーザヘッドからレーザ光を前記ストリートに照射することで、前記ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドから前記ストリートに照射される前記レーザ光の第1加工点を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段が撮影した前記第1加工点の第1撮影画像から前記第1加工点で発生するプラズマのプラズマ形状を取得するプラズマ形状取得部と、
前記プラズマ形状取得部が取得した前記プラズマ形状を評価するプラズマ形状評価部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザヘッドが、前記プラズマ形状評価部により前記プラズマ形状が異常であると評価された前記第1加工点の前記プラズマ形状が正常になるよう前記レーザ光の形状を補正する形状補正部を備える請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1撮影画像から前記プラズマの明るさを取得する明るさ取得部と、
前記明るさ取得部が取得した前記プラズマの明るさを評価する明るさ評価部と、
を備える請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記レーザヘッドが同一の前記ストリートに対して前記レーザ加工を繰り返し行い、
前記撮影手段が、前記レーザ加工ごとに、前記第1加工点を互いに異なる撮影条件であって且つ予め定められた前記プラズマの明るさが得られる撮影条件で撮影する請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザヘッドが同一の前記ストリートに対して前記レーザ加工を繰り返し行い、
前記第1撮影画像に対して画像処理を施す画像処理部を備え、
前記画像処理部が、前記レーザ加工ごとに、互いに異なる画像処理条件であって且つ予め定められた前記プラズマの明るさが得られる画像処理条件で前記第1撮影画像に対して前記画像処理を施す請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザヘッドが、前記レーザ光を複数に分岐させる第1分岐光学素子を備え、前記第1分岐光学素子により分岐された複数の前記レーザ光を前記ストリートに集光し、
前記撮影手段が、前記レーザ光ごとの前記第1加工点を撮影し、
前記プラズマ形状取得部が、前記第1撮影画像から前記第1加工点ごとの前記プラズマ形状を取得し、
前記プラズマ形状評価部が、前記第1加工点ごとに前記プラズマ形状の評価を行う請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記プラズマ形状評価部が、前記第1加工点ごとの前記プラズマ形状、及び前記第1加工点ごとの前記プラズマの大きさのバランスを評価する請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記レーザヘッドが、前記プラズマ形状評価部により異常であると評価された前記第1加工点の前記プラズマ形状及び前記大きさのバランスを補正する形状補正部を備える請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記第1撮影画像から前記第1加工点ごとの前記プラズマの明るさを取得する明るさ取得部と、
前記明るさ取得部が取得した前記第1加工点ごとの前記プラズマの明るさ、及び前記第1加工点ごとの前記プラズマの明るさのバランスを評価する明るさ評価部と、
を備える請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記第1撮影画像から前記第1加工点ごとの前記プラズマの位置を取得する位置取得部と、
前記位置取得部が取得した前記第1加工点ごとの前記プラズマの位置関係を評価する位置関係評価部と、
を備える請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記レーザ加工により前記ストリートに正常な加工溝が形成される場合の前記プラズマ形状を示す基準形状情報を予め取得する形状情報取得部を備え、
前記プラズマ形状評価部が、前記プラズマ形状取得部により取得された前記プラズマ形状と、前記形状情報取得部により取得された前記基準形状情報と、の一致度に基づき、前記プラズマ形状の評価を行う請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記レーザ光がガウシンアンビームであり、前記加工送り方向及び前記レーザヘッドの光軸の双方に対して垂直な方向を垂直方向とした場合に、前記プラズマ形状評価部が、前記プラズマの真円度、及び前記レーザ加工の加工予定ラインに対する前記プラズマの前記垂直方向の対称性に基づき、前記プラズマ形状の評価を行う請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記レーザ光がラインビームであり、前記加工送り方向及び前記レーザヘッドの光軸の双方に対して垂直な方向を垂直方向とした場合に、前記プラズマ形状評価部が、前記プラズマの長手方向及び短手方向の長さと、前記プラズマの長手方向の一端部及び他端部から前記レーザ加工の加工予定ラインまでの前記垂直方向の長さと、に基づき前記プラズマ形状の評価を行う請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記レーザヘッドが、前記レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を前記ストリートに集光する集光レンズと、を備え、
前記撮影手段が、前記集光レンズを通して前記レーザヘッドの光軸と同軸で前記第1加工点の撮影を行う請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記レーザ光源から前記集光レンズに至る主光路と、
前記主光路の途中から分岐して前記撮影手段に至る分岐光路と、
前記分岐光路と前記主光路の途中に設けられ、前記分岐光路に分岐させる第2分岐光学素子と、
前記分岐光路の途中に設けられ、前記プラズマの波長域の光のみを透過するフィルタと、
を備える請求項14に記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
前記レーザヘッドが、前記ストリートの前記レーザ加工を行うタイミング以外のタイミングで、安定した前記レーザ加工が可能な被加工物に対する前記レーザ加工を実行し、
前記被加工物の前記レーザ加工中に、前記撮影手段が、前記レーザヘッドから前記被加工物に照射される前記レーザ光の第2加工点を撮影し、
前記プラズマ形状取得部が、前記撮影手段により撮影された前記第2加工点の第2撮影画像から前記第2加工点で発生する前記プラズマの前記プラズマ形状を取得し、
前記プラズマ形状評価部が、前記プラズマ形状取得部により取得された前記第2加工点の前記プラズマ形状を評価する請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項17】
前記プラズマ形状取得部が取得した前記プラズマ形状に基づき、前記レーザ加工で前記ストリートに形成される加工溝の形状を推定する形状推定部を備える請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項18】
ウェーハに対してレーザヘッドを前記ウェーハのストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつ前記レーザヘッドからレーザ光を前記ストリートに照射することで、前記ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工方法において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドから前記ストリートに照射される前記レーザ光の第1加工点を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップで撮影された前記第1加工点の第1撮影画像から前記第1加工点で発生するプラズマ形状を取得するプラズマ形状取得ステップと、
前記プラズマ形状取得ステップで取得された前記プラズマ形状が正常であるか否かを評価するプラズマ形状評価ステップと、
を有するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハのレーザ加工を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの製造分野では、シリコン等の基板の表面にガラス質材料からなる低誘電率絶縁体被膜(Low-k膜)と回路を形成する機能膜とを積層した積層体により複数のデバイスを形成しているウェーハ(半導体ウェーハ)が知られている。このようなウェーハは、複数のデバイスが格子状のストリートによって格子状に区画されており、ウェーハをストリートに沿って分割することにより個々のデバイスが製造される。
【0003】
ウェーハを複数のデバイス(チップ)に分割する方法として、高速回転するブレードを用いる方法、ウェーハの内部にストリートに沿ってレーザ加工領域を形成すると共に強度が低下したストリートに沿って外力を加える方法が知られている。しかしながら、Low-k膜が適用されたウェーハの場合、Low-k膜の素材とウェーハの素材とが異なるため、前者の方法ではブレードによりLow-k膜と基板とを同時に切削することが困難である。また、後者の方法ではストリート上にLow-k膜が存在する場合に良好な品質で個々のデバイスに分割することが困難である。
【0004】
そこで、特許文献1及び特許文献2には、ウェーハに対してレーザ光学系をストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザ光学系からレーザ光をストリートに照射することでストリートに沿って加工溝を形成するレーザ加工(アブレーション溝加工)を行うレーザ加工装置が開示されている。このレーザ加工装置によれば、ストリートに沿って加工溝を形成することでストリート上からLow-k膜等を除去することができる。
【0005】
また、特許文献2に記載のレーザ加工装置は、レーザ光学系によるレーザ加工中にレーザ光の加工点を撮影し、この加工点の撮影画像から加工点で発生するプラズマを検出し、このプラズマの位置と所定の加工予定位置との位置関係を計測する。これにより、特許文献2に記載のレーザ加工装置は、レーザ加工の加工位置を修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-093460号公報
【特許文献2】特開2017-120820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記各特許文献に記載のレーザ加工装置によりストリートのレーザ加工を行う場合において、レーザヘッドのビームポインティングの振れが発生したり、レーザヘッドに設けられている光学素子の組付け誤差及び温度変化による光学素子の位置姿勢の変動が発生したりすると、レーザ光のビームプロファイルが崩れてしまう。この場合にはレーザ加工による加工溝の加工形状が悪化する虞があるが、上記各特許文献に記載のレーザ加工装置はレーザ光のビームプロファイルの崩れを検出する機能を備えてはいない。
【0008】
そこで、レーザ加工装置にビームプロファイラを設け、このビームプロファイラによりレーザ光のビームプロファイル測定を行うことが考えられる。しかしながら、この場合には、ウェーハのレーザ加工中にビームプロファイル測定を行うことができない。また、ビームプロファイラは高価であり、複数のレーザ加工装置ごとにビームプロファイラを設けるとコストが高くなると共に、ビームプロファイラの設置スペースを新たに確保する必要が生じる。さらに、レーザヘッドにより複数の加工点で同時にレーザ加工を行う場合には、1台のビームプロファイルでは加工点ごとのビームプロファイル測定に時間がかかる。
【0009】
また、レーザヘッド内のレーザ光の光路途中にPSD(Position Sensitive Detector)を設け、PSDによりレーザヘッド内の光学素子に対するレーザ光の位置ずれを測定する方法も考えられる。しかしながら、この方法は、レーザ光のビームプロファイルを直接評価するものではなく、さらにPSDよりも下流側の光路で発生したビームプロファイルの崩れを測定することができない。
【0010】
さらにレーザ加工装置に三次元計測装置(顕微鏡)を設け、レーザ加工により形成された加工溝の形状を三次元計測装置により測定することが考えられる。しかしながら、この場合には、ウェーハのレーザ加工中に加工溝の形状測定を行うことができない。また、三次元計測装置は高価であり、その設置スペースを新たに確保する必要もある。さらに、三次元計測装置による加工溝の形状測定には時間がかかるという問題もある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、レーザ加工中に加工溝が正常に形成されているか否かを低コスト且つ短時間且つ省スペースで評価可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工装置は、ウェーハに対してレーザヘッドをウェーハのストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザヘッドからレーザ光をストリートに照射することで、ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置において、レーザ加工中に、レーザヘッドからストリートに照射されるレーザ光の第1加工点を撮影する撮影手段と、撮影手段が撮影した第1加工点の第1撮影画像から第1加工点で発生するプラズマのプラズマ形状を取得するプラズマ形状取得部と、プラズマ形状取得部が取得したプラズマ形状を評価するプラズマ形状評価部と、を備える。
【0013】
このレーザ加工装置によれば、第1加工点でのプラズマ形状を評価することで、レーザ加工中に加工溝が正常に形成されているかを評価することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、プラズマ形状評価部によりプラズマ形状が異常であると評価された第1加工点のプラズマ形状が正常になるようレーザ光の形状を補正する形状補正部を備える。これにより、レーザ加工により正常な加工溝を形成することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、第1撮影画像からプラズマの明るさを取得する明るさ取得部と、明るさ取得部が取得したプラズマの明るさを評価する明るさ評価部と、を備える。これにより、加工溝の加工形状(加工深さ等)が正常であるか否かを評価することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが同一のストリートに対してレーザ加工を繰り返し行い、撮影手段が、レーザ加工ごとに、第1加工点を互いに異なる撮影条件であって且つ予め定められたプラズマの明るさが得られる撮影条件で撮影する。これにより、同一のストリートに対してレーザ加工が繰り返されることに起因したプラズマの明るさの差異を補正可能である。
【0017】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが同一のストリートに対してレーザ加工を繰り返し行い、第1撮影画像に対して画像処理を施す画像処理部を備え、画像処理部が、レーザ加工ごとに、互いに異なる画像処理条件であって且つ予め定められたプラズマの明るさが得られる画像処理条件で第1撮影画像に対して画像処理を施す。これにより、同一のストリートに対してレーザ加工が繰り返されることに起因したプラズマの明るさの差異を補正可能である。
【0018】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、レーザ光を複数に分岐させる第1分岐光学素子を備え、第1分岐光学素子により分岐された複数のレーザ光をストリートに集光し、撮影手段が、レーザ光ごとの第1加工点を撮影し、プラズマ形状取得部が、第1撮影画像から第1加工点ごとのプラズマ形状を取得し、プラズマ形状評価部が、第1加工点ごとにプラズマ形状の評価を行う。これにより、第1加工点ごとに加工溝が正常に形成されているかを評価することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、プラズマ形状評価部が、第1加工点ごとのプラズマ形状、及び第1加工点ごとのプラズマの大きさのバランスを評価する。これにより、第1加工点ごとに加工溝の加工形状が均等であるか否かを評価することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、プラズマ形状評価部により異常であると評価された第1加工点のプラズマ形状及び大きさのバランスを補正する形状補正部を備える。これにより、レーザ加工により正常な加工溝を形成することができる。
【0021】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、第1撮影画像から第1加工点ごとのプラズマの明るさを取得する明るさ取得部と、明るさ取得部が取得した第1加工点ごとのプラズマの明るさ、及び第1加工点ごとのプラズマの明るさのバランスを評価する明るさ評価部と、を備える。これにより、第1加工点ごとに加工溝の加工形状が均等であるか否かを評価することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、第1撮影画像から第1加工点ごとのプラズマの位置を取得する位置取得部と、位置取得部が取得した第1加工点ごとのプラズマの位置関係を評価する位置関係評価部と、を備える。これにより、第1加工点ごとの加工溝の形成位置が適正であるか否かを評価することができる。
【0023】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ加工によりストリートに正常な加工溝が形成される場合のプラズマ形状を示す基準形状情報を予め取得する形状情報取得部を備え、プラズマ形状評価部が、プラズマ形状取得部により取得されたプラズマ形状と、形状情報取得部により取得された基準形状情報と、の一致度に基づき、プラズマ形状の評価を行う。
【0024】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ光がガウシンアンビームであり、加工送り方向及びレーザヘッドの光軸の双方に対して垂直な方向を垂直方向とした場合に、プラズマ形状評価部が、プラズマの真円度、及びレーザ加工の加工予定ラインに対するプラズマの垂直方向の対称性に基づき、プラズマ形状の評価を行う。これにより、加工溝が正常に形成されているか否かを評価することができる。
【0025】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ光がラインビームであり、加工送り方向及びレーザヘッドの光軸の双方に対して垂直な方向を垂直方向とした場合に、プラズマ形状評価部が、プラズマの長手方向及び短手方向の長さと、プラズマの長手方向の一端部及び他端部からレーザ加工の加工予定ラインまでの垂直方向の長さと、に基づきプラズマ形状の評価を行う。これにより、加工溝が正常に形成されているか否かを評価することができる。
【0026】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光をストリートに集光する集光レンズと、を備え、撮影手段が、集光レンズを通してレーザヘッドの光軸と同軸で第1加工点の撮影を行う。
【0027】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ光源から集光レンズに至る主光路と、主光路の途中から分岐して撮影手段に至る分岐光路と、分岐光路と主光路の途中に設けられ、分岐光路に分岐させる第2分岐光学素子と、分岐光路の途中に設けられ、プラズマの波長域の光のみを透過するフィルタと、を備える。これにより、第1撮影画像からプラズマ形状をより正確に取得することができる。
【0028】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、ストリートのレーザ加工を行うタイミング以外のタイミングで、安定したレーザ加工が可能な被加工物に対するレーザ加工を実行し、被加工物のレーザ加工中に、撮影手段が、レーザヘッドから被加工物に照射されるレーザ光の第2加工点を撮影し、プラズマ形状取得部が、撮影手段により撮影された第2加工点の第2撮影画像から第2加工点で発生するプラズマのプラズマ形状を取得し、プラズマ形状評価部が、プラズマ形状取得部により取得された第2加工点のプラズマ形状を評価する。これにより、レーザヘッドに問題があるか否かを判定することができるので、ストリートのレーザ加工中にプラズマ形状に異常が発生した場合にはその原因(ウェーハの加工性に問題あり)を特定可能である。
【0029】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、プラズマ形状取得部が取得したプラズマ形状に基づき、レーザ加工でストリートに形成される加工溝の形状を推定する形状推定部を備える。これにより、加工溝の形状測定のために高価な三次元計測装置(顕微鏡)をレーザ加工装置に設ける必要がなくなるので、レーザ加工装置のコストを低減することができる。
【0030】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工方法は、ウェーハに対してレーザヘッドをウェーハのストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザヘッドからレーザ光をストリートに照射することで、ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工方法において、レーザ加工中に、レーザヘッドからストリートに照射されるレーザ光の第1加工点を撮影する撮影ステップと、撮影ステップで撮影された第1加工点の第1撮影画像から第1加工点で発生するプラズマの形状であるプラズマ形状を取得する形状取得ステップと、形状取得ステップで取得されたプラズマ形状が正常であるか否かを評価する形状評価ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、レーザ加工中に加工溝が正常に形成されているか否かを低コスト且つ短時間且つ省スペースで評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
【
図3】奇数番目のストリートに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。
【
図4】偶数番目のストリートに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。
【
図5】ウェーハに対して往路方向側に相対移動されるレーザヘッドによる縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点の撮影と、を説明するための説明図である。
【
図6】ウェーハに対して復路方向側に相対移動されるレーザヘッドによる縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点の撮影と、を説明するための説明図である。
【
図7】第1実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【
図8】縁切り加工の一対の加工点の撮影画像の一例を示した図である。
【
図9】中抜き加工の各加工点の撮影画像の一例を示した図である。
【
図10】第2評価部による加工点ごとの第1プラズマ形状の評価を説明するための説明図である。
【
図11】第2評価部による加工点ごとの第2プラズマ形状の評価を説明するための説明図である。
【
図12】第1実施形態のレーザ加工装置によるウェーハの各ストリートのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】
図12中のプラズマ形状評価処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】第2実施形態のレーザ加工装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図15】第4実施形態のレーザ加工装置を示したブロック図である。
【
図16】第5実施形態のレーザ加工装置のレーザヘッドの要部を示した概略図である。
【
図17】第6実施形態のレーザ加工装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図18】基準加工モードの処理の流れを示したフローチャートである。
【
図19】第7実施形態のレーザ加工装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図20】縁切り加工及び中抜き加工で共通のレーザ光源を用いるレーザヘッドの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態のレーザ加工装置の全体構成]
図1は、第1実施形態のレーザ加工装置10の概略図である。
図1に示すように、レーザ加工装置10は、ブレード加工によりウェーハ12を複数のチップ14(
図2参照)に分割する前の前工程として、ウェーハ12に対してレーザ加工(アブレーション溝加工)を施す。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は上下方向である。ここで、X方向は本発明の加工送り方向に相当し、Y方向は本発明の垂直方向に相当する。
【0034】
図2は、ウェーハ12の平面図である。
図2に示すように、ウェーハ12は、シリコン等の基板の表面にLow-k膜と回路を形成する機能膜とを積層した積層体である。ウェーハ12は格子状に配列された複数のストリートCによって複数の領域に区画されている。この区画された各領域にはチップ14を構成するデバイス16が設けられている。
【0035】
レーザ加工装置10は、図中の括弧付き数字(1)~(4)、・・・に示すように、互いに交差する方向の一方向に沿ったストリートCごとにストリートCに沿って基板上のLow-k膜等を除去するレーザ加工を行う。また、レーザ加工装置10は、一方向に平行な全てのストリートCのレーザ加工が完了すると、ウェーハ12を90°回転させて、他方向に沿ったストリートCごとにストリートCに沿ってLow-k膜等を除去するレーザ加工を行う。
【0036】
この際にレーザ加工装置10は、ウェーハ12のレーザ加工に要するタクトタイムを低減するために、ウェーハ12に対して後述のレーザヘッド24をX方向に相対移動させる際の加工送り方向(相対移動方向)をストリートCごとに交互に切り替える。
【0037】
例えば、図中の括弧付き数字(1),(3)等に示す奇数番目のストリートCに沿ってレーザ加工を行う場合には、ウェーハ12に対して後述のレーザヘッド24をX方向の一方向側である往路方向側XA(
図5参照)に相対移動させる。また、図中の括弧付き数字(2),(4)等に示す偶数番目のストリートCに沿ってレーザ加工を行う場合には、ウェーハ12に対してレーザヘッド24をX方向の他方向側である復路方向側XB(
図6参照)に相対移動させる。
【0038】
図3は、奇数番目のストリートCに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。
図4は、偶数番目のストリートCに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。
【0039】
図3及び
図4に示すように、レーザ加工装置10は、レーザ加工として縁切り加工及び中抜き加工を同時に(並行して)実行する。縁切り加工は、ストリートCに沿って互いに平行な2条(2本)の縁切り溝18(本発明の加工溝に相当)を形成するレーザ加工である。この縁切り加工は、スプリットビームである2条の第1レーザ光L1を用いて行う。なお、2条の第1レーザ光L1はそれぞれが所謂ガウシンアンビームである。
【0040】
中抜き加工は、縁切り加工で形成された2条の縁切り溝18の間に中抜き溝19(本発明の加工溝に相当)を形成するレーザ加工である。この中抜き加工は、加工送り方向(X方向)に複数分岐されたラインビームである第2レーザ光L2を用いて行う。なお、図中では図面の煩雑化を防止するために、第2レーザ光L2の分岐数が2つであるが3つ以上に分岐させてもよい。
【0041】
なお、縁切り加工(2条の縁切り溝18)及び中抜き加工(中抜き溝19)については公知技術(特許文献1参照)であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0042】
このようにレーザ加工装置10では、ウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XA(
図5参照)に相対移動させたり或いは復路方向側XB(
図6参照)に相対移動させたりする場合のいずれにおいても、縁切り加工を中抜き加工よりも先行して行う。
【0043】
図1に戻って、レーザ加工装置10は、ストリートCのレーザ加工と並行して、2条の第1レーザ光L1の加工点SP1の撮影と、各第2レーザ光L2の加工点SP2の撮影と、を行う。なお、各加工点SP1,SP2は本発明の第1加工点に相当する。
【0044】
レーザ加工装置10は、テーブル20と、レーザヘッド24と、顕微鏡26と、相対移動機構28と、制御装置30と、を備える。
【0045】
テーブル20はウェーハ12を保持する。このテーブル20は、相対移動機構28により加工対象のストリートCに平行な加工送り方向であるX方向に移動されると共に、Z方向に平行なテーブル20の中心軸(回転軸)を中心として回転される。
【0046】
レーザヘッド24(レーザ光学系又はレーザユニットともいう)は、第1レーザ光源22Aと、第2レーザ光源22Bと、第1集光レンズ38と、2個の第2集光レンズ40A,40Bと、を備える。このレーザヘッド24は、2条の第1レーザ光L1を第1集光レンズ38からストリートCに向けて照射する。また、レーザヘッド24は、各第2レーザ光L2を2個の第2集光レンズ40A,40Bから選択的にストリートCに向けて照射する。なお、レーザヘッド24は、後述の相対移動機構28によりY方向及びZ方向に移動される。
【0047】
顕微鏡26は、レーザヘッド24に固定されており、レーザヘッド24と一体に移動する。顕微鏡26は、ウェーハ12に対する縁切り加工及び中抜き加工の前に、ウェーハ12に形成されているアライメント基準を撮影する。なお、アライメント基準は、ストリートC上の各種構造物、デバイス16、或いは公知のアライメントマークが用いられる。
【0048】
相対移動機構28は、不図示のXYZアクチュエータ及びモータ等から構成されており、制御装置30の制御の下、テーブル20のX方向の移動及び回転軸を中心とする回転と、レーザヘッド24のY方向及びZ方向の移動と、を行う。これにより、相対移動機構28は、テーブル20及びウェーハ12に対してレーザヘッド24及び顕微鏡26を相対移動させることができる。
【0049】
相対移動機構28を駆動することで、加工対象のストリートCの一端である加工開始位置に対するレーザヘッド24の位置合わせ(アライメント)と、ストリートCに沿った加工送り方向(X方向)のレーザヘッド24の相対移動と、を実行することができる。また、相対移動機構28を駆動して、テーブル20を90°回転させることで、互いに交差する各ストリートCを選択的に加工送り方向(X方向)に平行にすることができる。
【0050】
制御装置30は、レーザヘッド24、顕微鏡26、及び相対移動機構28等のレーザ加工装置10の各部の動作を統括的に制御して、レーザヘッド24のアライメント、ストリートCごとのレーザ加工、各加工点SP1,SP2の撮影、及び加工点SP1,SP2ごとの後述の各プラズマ形状の評価等を行う。
【0051】
[レーザヘッド]
図5は、ウェーハ12に対して往路方向側XAに相対移動されるレーザヘッド24による縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点SP1,SP2の撮影と、を説明するための説明図である。
図6は、ウェーハ12に対して復路方向側XBに相対移動されるレーザヘッド24による縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点SP1,SP2の撮影と、を説明するための説明図である。
【0052】
図5及び
図6に示すように、レーザヘッド24は、第1レーザ光源22Aと、第2レーザ光源22Bと、第1光形成素子32と、ビームスプリッタ33と、第2光形成素子34と、ビームスプリッタ35と、分岐光学素子35Aと、接続切替素子36と、ビームスプリッタ37と、第1集光レンズ38と、第2集光レンズ40A,40Bと、照明光源41と、ビームスプリッタ42,43A,43Bと、撮影手段としてのカメラ45,46A,46Bと、第1結像レンズ47と、第2結像レンズ48A,48Bと、ステアリングミラー機構M1A,M1Bと、を備える。
【0053】
第1レーザ光源22Aは、制御装置30の制御の下、縁切り加工に適した条件(波長、パルス幅、及び繰り返し周波数等)のレーザ光LAを第1光形成素子32へ出射する。第2レーザ光源22Bは、中抜き加工に適した条件(波長、パルス幅、及び繰り返し周波数等)のレーザ光LBを第2光形成素子34へ出射する。なお、本実施形態では、レーザ光LA,LBの波長は例えば355nmである。
【0054】
第1光形成素子32は、本発明の第1分岐光学素子として機能するものであり、例えば回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)が用いられる。この第1光形成素子32は、第1レーザ光源22Aより入射したレーザ光LAを分岐(分割)して縁切り加工に対応する2条の第1レーザ光L1を形成し、2条の第1レーザ光L1をビームスプリッタ33に向けて出射する。これにより、2条の第1レーザ光L1の一部がビームスプリッタ33により第1集光レンズ38に向けて反射される。その結果、ストリートC(往路及び復路)上に第1集光レンズ38により2条の第1レーザ光L1が集光され、ストリートC上においてY方向に離間した一対の加工点SP1が形成される。
【0055】
第2光形成素子34は、例えば回折光学素子及びマスク等が用いられる。第2光形成素子34は、第2レーザ光源22Bより入射したレーザ光LBから中抜き加工に対応する第2レーザ光L2を形成する。第2レーザ光L2は、ウェーハ12上において2条の縁切り溝18の間にライン状(円形状等の他の形状でも可)の加工点SP2を形成する。この加工点SP2のY方向の幅は、2条の縁切り溝18の間隔に合わせて調整されている。そして、第2光形成素子34から出射された第2レーザ光L2は、その一部がビームスプリッタ35により分岐光学素子35Aに向けて反射される。
【0056】
なお、第1光形成素子32をその光軸の軸周り方向に回転させることで一対の加工点SP1のY方向の間隔を調整可能であり、第2光形成素子34をその光軸の軸周り方向に回転させることで加工点SP2のY方向の幅を調整可能である(上記特許文献1参照)。
【0057】
分岐光学素子35Aは、既述の第1光形成素子32と同様に本発明の第1分岐光学素子として機能するものであり、第2光形成素子34から入射した第2レーザ光L2をX方向(加工送り方向)に沿って複数に分岐させる。この分岐光学素子35Aとしては、例えば、回折光学素子、屈折光学素子、プリズム、及びこれらの組み合わせ等が用いられる。そして、分岐光学素子35Aは、分岐した各第2レーザ光L2を接続切替素子36へ出射する。
【0058】
接続切替素子36は、例えば公知の光スイッチである。なお、λ/2板、偏光ビームスプリッタ、ハーフミラー(ビームスプリッタ)、及びシャッタ等を適宜組み合わせて接続切替素子36を構成してもよい。接続切替素子36は、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を第2集光レンズ40A及び第2集光レンズ40Bのいずれか一方に選択的に導く。
【0059】
ビームスプリッタ37は、接続切替素子36から入射した各第2レーザ光L2の一部を第2集光レンズ40Bに向けて反射する。
【0060】
第1集光レンズ38及び第2集光レンズ40A,40Bは、X方向(加工送り方向)に沿って一列に配置されている。第1集光レンズ38は、第2集光レンズ40Aと第2集光レンズ40Bとの間に配置されている。第2集光レンズ40Aは、第1集光レンズ38に対して復路方向側XBに配置されている。第2集光レンズ40Bは、第1集光レンズ38に対して往路方向側XAに配置されている。
【0061】
第1集光レンズ38は、第1光形成素子32から入射した2条の第1レーザ光L1をストリートC(往路及び復路)上に集光させる。第2集光レンズ40Aは、接続切替素子36から入射した各第2レーザ光L2をストリートC(往路)上に集光させる。第2集光レンズ40Bは、接続切替素子36からビームスプリッタ37を介して入射した各第2レーザ光L2をストリートC(復路)上に集光させる。
【0062】
接続切替素子36は、レーザヘッド24がウェーハ12に対して往路方向側XA及び復路方向側XBのいずれか一方向側に相対移動される場合に、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を、第2集光レンズ40A,40Bのうちで第1集光レンズ38に対して往路方向側XA及び復路方向側XBの他方向側に位置するレンズに導く。
【0063】
具体的には接続切替素子36は、レーザヘッド24がウェーハ12に対して往路方向側XAに相対移動される場合には、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Aに導く(
図5参照)。これにより、第2集光レンズ40Aにより各第2レーザ光L2がストリートC(往路)上に集光される。その結果、レーザヘッド24の往路方向側XAへの相対移動によりストリートC(往路)に沿って縁切り加工が先行して実行されることで2条の縁切り溝18が形成され、続いて中抜き加工が実行されることで2条の縁切り溝18の間に中抜き溝19が形成される。
【0064】
また、接続切替素子36は、レーザヘッド24がウェーハ12に対して復路方向側XBに相対移動される場合には、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Bに導く(
図6参照)。これにより、第2集光レンズ40BによりストリートC(復路)上に各第2レーザ光L2が集光される。その結果、レーザヘッド24の復路方向側XBへの相対移動によりストリートC(復路)に沿って縁切り加工が先行して実行されることで2条の縁切り溝18が形成され、続いて中抜き加工が実行されることで2条の縁切り溝18の間に中抜き溝19が形成される。
【0065】
照明光源41は、レーザ加工中のストリートC(2条の縁切り溝18及び中抜き溝19)を照明する照明光L3を出射する。なお、照明光L3は、第1集光レンズ38及び第2集光レンズ40A,40Bでの収差の影響を抑えるために、レーザ光LA,LBの波長域(約355nm)に近い波長域(約430nm)の光が用いられる。
【0066】
照明光源41から出射された照明光L3は、ビームスプリッタ42,33を介して第1集光レンズ38に入射し、第1集光レンズ38によりウェーハ12の表面上に集光される。これにより、照明光L3によりウェーハ12の表面が照明される。
【0067】
また、照明光源41から出射された照明光L3は、ビームスプリッタ43A,35及び接続切替素子36を介して第2集光レンズ40Aに入射し、第2集光レンズ40Aによりウェーハ12の表面上に集光される。さらに、照明光L3は、ビームスプリッタ43B,37を介して第2集光レンズ40Bに入射し、第2集光レンズ40Bによりウェーハ12の表面上に集光される。これにより、照明光L3によってウェーハ12の表面が照明される。
【0068】
なお、照明光源41は、ストリートC(2条の縁切り溝18及び中抜き溝19)のレーザ加工中には照明光L3の出射を停止する。
【0069】
第1レーザ光源22Aから第1集光レンズ38に至る光路と、照明光源41から第1集光レンズ38に至る光路とによって主光路OP1が構成される。主光路OP1は、ストリートCのレーザ加工中には第1レーザ光L1を第1集光レンズ38まで導く。また、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工中において主光路OP1には、第1レーザ光L1によるレーザ加工により一対の加工点SP1ごとに発生したプラズマ68(
図8参照)の発光であるプラズマ発光R1Aと、第1レーザ光L1の反射光である第1レーザ反射光R1Bと、が第1集光レンズ38から入射する。第1レーザ反射光R1Bは、上述のレーザ加工により一対の加工点SP1において発生するプルーム(蒸気)に対して第1レーザ光L1が反射した光である。主光路OP1に入射したプラズマ発光R1A及び第1レーザ反射光R1Bの一部は、ビームスプリッタ33を透過してビームスプリッタ42に入射する。
【0070】
第2レーザ光源22Bから第2集光レンズ40Aに至る光路と、照明光源41から第2集光レンズ40Aに至る光路とによって、主光路OP2が構成される。主光路OP2は、ストリートC(往路)のレーザ加工中には第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Aまで導く。また、ストリートC(往路)のレーザ加工中において主光路OP2には、第2レーザ光L2によるレーザ加工により加工点SP2ごとに発生したプラズマ69(
図9参照)の発光であるプラズマ発光R2Aと、第2レーザ光L2の反射光である第2レーザ反射光R2Bと、が第2集光レンズ40Aから入射する。第2レーザ反射光R2Bは、上述のレーザ加工により加工点SP2において発生するプルームに対して第2レーザ光L2が反射した光である。主光路OP2に入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部は、接続切替素子36、分岐光学素子35A、及びビームスプリッタ35を透過してビームスプリッタ43Aに入射する。
【0071】
第2レーザ光源22Bから第2集光レンズ40Bに至る光路と、照明光源41から第2集光レンズ40Bに至る光路とによって、主光路OP3が構成される。主光路OP3は、ストリートC(復路)のレーザ加工中には第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Bまで導く。また、ストリートC(復路)のレーザ加工中において主光路OP3には、上述のプラズマ発光R2Aと第2レーザ反射光R2Bとが第2集光レンズ40Bから入射する。主光路OP3に入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部は、ビームスプリッタ37を透過してビームスプリッタ43Bに入射する。
【0072】
ビームスプリッタ42,43A,43Bは、本発明の第2分岐光学素子として機能する。ビームスプリッタ42は、分岐光路BP1を主光路OP1から分岐させる。このビームスプリッタ42は、ビームスプリッタ33から入射したプラズマ発光R1A及び第1レーザ反射光R1Bの一部を分岐光路BP1に向けて反射する。なお、分岐光路BP1に反射された第1レーザ反射光R1Bは、例えばマルチバンドパスフィルタ(後述の
図16に示すフィルタ75)により遮光される。
【0073】
ビームスプリッタ43Aは、分岐光路BP2を主光路OP2から分岐させる。このビームスプリッタ43Aは、ビームスプリッタ35から入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部を分岐光路BP2に向けて反射する。なお、分岐光路BP2に反射された第2レーザ反射光R2Bは、例えばマルチバンドパスフィルタ(後述の
図16に示すフィルタ76A)により遮光される。
【0074】
ビームスプリッタ43Bは、分岐光路BP3を主光路OP3から分岐させる。このビームスプリッタ43Bは、ビームスプリッタ37から入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部を分岐光路BP3に向けて反射する。なお、分岐光路BP3に反射された第2レーザ反射光R2Bは、例えばマルチバンドパスフィルタ(後述の
図16に示すフィルタ76B)により遮光される。
【0075】
第1結像レンズ47は、分岐光路BP1上に配置されており、ビームスプリッタ42から入射したプラズマ発光R1Aをカメラ45に結像させる。第2結像レンズ48Aは、分岐光路BP2上に配置されており、ビームスプリッタ43Aから入射したプラズマ発光R2Aをカメラ46Aに結像させる。第2結像レンズ48Bは、分岐光路BP3上に配置されており、ビームスプリッタ43Bから入射したプラズマ発光R2Aをカメラ46Bに結像させる。
【0076】
カメラ45,46A,46Bは、不図示の撮影光学系及び撮像素子を備える電子カメラである。カメラ45,46A,46Bは、レーザヘッド24(第1集光レンズ38、第2集光レンズ40A,40B)の同軸で各加工点SP1,SP2の撮影を行う。
【0077】
カメラ45は、分岐光路BP1上に配置されており、第1結像レンズ47を通してプラズマ発光R1Aを撮像する。これにより、カメラ45は、ストリートC(往路及び復路)の縁切り加工が行われている間、第1集光レンズ38を通して、一対の加工点SP1で発生しているプラズマ68(
図8参照)を撮影する。カメラ45により撮影された一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影画像D1(画像データ)は、カメラ45から制御装置30へ出力される。
【0078】
カメラ46Aは、分岐光路BP2上に配置されており、第2結像レンズ48Aを通してプラズマ発光R2Aを撮像する。これにより、カメラ46Aは、ストリートC(往路)の中抜き加工が行われている間、第2集光レンズ40Aを通して各加工点SP2で発生しているプラズマ69(
図9参照)を撮影する。カメラ46Aにより撮影された各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2A(画像データ)は、カメラ46Aから制御装置30へ出力される。
【0079】
カメラ46Bは、分岐光路BP3上に配置されており、第2結像レンズ48Bを通してプラズマ発光R2Aを撮像する。これにより、カメラ46Bは、ストリートC(復路)の中抜き加工が行われている間、第2集光レンズ40Bを通して各加工点SP2で発生しているプラズマ69(
図9参照)を撮影する。カメラ46Bにより撮影された各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2B(画像データ)は、カメラ46Bから制御装置30へ出力される。なお、撮影画像D1,D2A,D2Bは、本発明の第1撮影画像に相当する。
【0080】
ステアリングミラー機構M1A,M1Bは、本発明の形状補正部に相当する。ステアリングミラー機構M1Aは、第1レーザ光源22Aと第1光形成素子32との間に設けられており、2以上の複数のステアリングミラー102により構成されている。ステアリングミラー機構M1Aは、各ステアリングミラー102の角度調整を行うことで、第1レーザ光源22Aから出射されるレーザ光LAの出射方向を調整(光軸調整)する。これにより、一対の加工点SP1の位置ずれを補正したり、或いは加工点SP1ごとに発生する後述のプラズマ68(
図8参照)の形状の崩れを補正したりする。
【0081】
ステアリングミラー機構M1Bは、第2レーザ光源22Bと第2光形成素子34との間に設けられており、ステアリングミラー機構M1Aと同様に複数のステアリングミラー102により構成されている。ステアリングミラー機構M1Bは、各ステアリングミラー102の角度調整を行うことで、第2レーザ光源22Bから出射されるレーザ光LBの出射方向を調整(光軸調整)する。これにより、各加工点SP2の位置ずれを補正したり、或いは加工点SP2ごとに発生する後述のプラズマ69(
図9参照)の形状の崩れを補正したりする。
【0082】
なお、ステアリングミラー機構M1Aに代えて或いはステアリングミラー機構M1Aと共に、ステアリングミラー機構M2Aを設けてもよい。ステアリングミラー機構M2Aは、第1光形成素子32とビームスプリッタ33との間に設けられており、ステアリングミラー機構M1A,M1Bと同様の構成を有している。これにより、各加工点SP1の位置ずれを補正したり、或いはプラズマ68(
図8参照)の形状の崩れを補正したりすることができる。
【0083】
また、ステアリングミラー機構M1Bに代えて或いはステアリングミラー機構M1Bと共に、ステアリングミラー機構M2Bを設けてもよい。ステアリングミラー機構M2Bは、第2光形成素子34とビームスプリッタ35との間に設けられており、ステアリングミラー機構M1A,M1Bと同様の構成を有している。これにより、各加工点SP2の位置ずれを補正したり、或いはプラズマ69(
図9参照)の形状の崩れを補正したりすることができる。
【0084】
さらに、接続切替素子36とビームスプリッタ37との間にステアリングミラー機構M3を設けてもよい。ステアリングミラー機構M3は、ステアリングミラー機構M1A,M1Bと同様の構成を有しており、各加工点SP2(復路方向側XB)の位置ずれを補正したり、加工点SP2(復路方向側XB)ごとに発生する後述のプラズマ69(
図9参照)の形状の崩れを補正したりする。
【0085】
ステアリングミラー機構M1A,M1B,M2A,M2B,M3については適宜組み合わせて設けてもよい。また、ステアリングミラー機構M1A,M1B,M2A,M2B,M3以外のステアリングミラー機構を設けてもよい。さらに、分岐光学素子35Aにより分岐される複数のレーザ光L2の光路ごとにステアリングミラー機構を設けてもよい。
【0086】
[第1実施形態の制御装置]
図7は、第1実施形態の制御装置30の機能ブロック図である。
図7に示すように、制御装置30は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置30の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0087】
制御装置30には、既述の第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、顕微鏡26、相対移動機構28、照明光源41、カメラ45,46A,46B、及びステアリングミラー機構M1A,M1B(ステアリングミラー機構M2A,M2B,M3)の他に、記憶部31及び操作部49が接続されている。記憶部31には、制御装置30の制御プログラム(図示は省略)の他に、後述の基準形状情報70が記憶されている。操作部49は、キーボード、マウス、操作パネル、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。
【0088】
制御装置30は、記憶部31に記憶されている不図示の制御プログラムを実行することで、アライメント検出部50、レーザ加工制御部52、撮影制御部54、プラズマ形状取得部56、形状情報取得部58、プラズマ形状評価部60、補正部62、停止制御部64、及び報知部66として機能する。なお、制御装置30の「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0089】
アライメント検出部50は、顕微鏡26及び相対移動機構28を制御することで、ウェーハ12上での各ストリートCの位置を検出するアライメント検出を行う。例えばアライメント検出部50は、最初に相対移動機構28を駆動して、ウェーハ12の所定のアライメント基準に対する顕微鏡26の位置調整を実行する。次いで、アライメント検出部50は、顕微鏡26による所定のアライメント基準の撮影を実行させることで、顕微鏡26からアライメント基準の撮影画像を取得する。そして、アライメント検出部50は、アライメント基準の撮影画像に基づき、公知の方法で各ストリートCの位置の検出、すなわちアライメント検出を行う。
【0090】
レーザ加工制御部52は、アライメント検出部50によるアライメント検出結果に基づき、第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、相対移動機構28、及び接続切替素子36を制御して、ストリートCごとのレーザ加工(縁切り加工、中抜き加工)を実行する。
【0091】
具体的にはレーザ加工制御部52は、アライメント検出部50の検出結果に基づき、相対移動機構28を駆動してストリートC(往路及び復路)の加工開始位置に対するレーザヘッド24の第1集光レンズ38の光軸の位置合わせ(アライメント)を行う。
【0092】
次いで、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して、ストリートC(往路)のレーザ加工を行う場合には第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Aに切り替え、逆にストリートC(復路)のレーザ加工を行う場合には第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Bに切り替える。
【0093】
そして、レーザ加工制御部52は、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからレーザ光LA,LBを出射させる。また、レーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動して、ストリートC(往路)のレーザ加工を行う場合にはウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XAに相対移動させ、ストリートC(復路)のレーザ加工を行う場合にはウェーハ12に対してレーザヘッド24を復路方向側XBに相対移動させる。これにより、縁切り加工による2条の縁切り溝18の形成と中抜き加工による中抜き溝19の形成とが間隔を空けて同時に実行される(
図5及び
図6参照)。以下、レーザ加工制御部52は、ストリートCごとに上述の処理を繰り返し実行する。
【0094】
撮影制御部54は、照明光源41及びカメラ45,46A,46Bを制御して、一対の加工点SP1(プラズマ68、
図8参照)及び各加工点SP2(プラズマ69、
図9参照)の撮影を制御する。具体的には、撮影制御部54は、ストリートC(往路)のレーザ加工中に、カメラ45によるプラズマ発光R1Aの撮像と、カメラ46Aによるプラズマ発光R2Aの撮像とを繰り返し行う。これにより、ストリートC(往路)のレーザ加工中に、カメラ45による一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影画像D1の出力と、カメラ46Aによる各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2Aの出力と、が繰り返し実行される。
【0095】
さらに、撮影制御部54は、ストリートC(復路)のレーザ加工中に、カメラ45によるプラズマ発光R1Aの撮像と、カメラ46Bによるプラズマ発光R2Aの撮像とを継続して行う。これにより、ストリートC(復路)のレーザ加工中に、カメラ45による一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影画像D1の出力と、カメラ46Bによる各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2Bの出力と、が繰り返し実行される。
【0096】
図8は、一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影画像D1の一例を示した図である。
図9は、各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2A,D2Bの一例を示した図である。
図8に示すように、撮影画像D1には、加工点SP1ごとに発生するプラズマ68の像が含まれる。プラズマ68は、レーザ加工により加工点SP1ごとに発生するプルーム(蒸気)が第1レーザ光L1により加熱されることで発生する。このため、加工点SP1ごとのプラズマ68の形状である第1プラズマ形状は、2条の第1レーザ光L1のビームプロファイルが正常であるのか否かを示す指標となる。
【0097】
図9に示すように、撮影画像D2A,D2Bには、複数の加工点SP2ごとに発生するプラズマ69の像が複数含まれる。各プラズマ69は、レーザ加工により加工点SP2ごとに発生するプルームが第2レーザ光L2により加熱されることで発生する。このため、加工点SP2ごとのプラズマ69の形状である第2プラズマ形状は、各第2レーザ光L2のビームプロファイルが正常であるのか否かを示すものである。
【0098】
図7に戻って、プラズマ形状取得部56は、ストリートC(往路)のレーザ加工中には、カメラ45から撮影画像D1が出力されるごとに撮影画像D1から各加工点SP1の第1プラズマ形状を取得する。また同時にプラズマ形状取得部56は、カメラ46Aから撮影画像D2Aが出力されるごとに撮影画像D2Aから各加工点SP2の第2プラズマ形状を取得する。
【0099】
具体的にはプラズマ形状取得部56は、撮影画像D1,D2A内の各画素の輝度値を比較して輝度値が所定閾値以上の画素を選択することで撮影画像D1,D2A内からプラズマ68,69の領域を検出する。次いで、プラズマ形状取得部56は、検出したプラズマ68,69の領域の輪郭に基づき各プラズマ形状を決定する。
【0100】
プラズマ形状取得部56は、ストリートC(復路)のレーザ加工中には、カメラ45から撮影画像D1が出力されるごとに撮影画像D1から各加工点SP1の第1プラズマ形状を取得する。また同時にプラズマ形状取得部56は、カメラ46Bから撮影画像D2Bが出力されるごとに撮影画像D2Bから各加工点SP2の第2プラズマ形状を取得する。
【0101】
そして、プラズマ形状取得部56は、撮影画像D1,D2A又は撮影画像D1,D2Bから各プラズマ形状を取得するごとに、各プラズマ形状の情報をプラズマ形状評価部60に逐次出力する。
【0102】
形状情報取得部58は、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工の開始前であって且つ後述の第1評価部60Aが各プラズマ形状の評価を行う場合に、記憶部31から基準形状情報70を予め取得して、この基準形状情報70を第1評価部60Aへ出力する。
【0103】
基準形状情報70は、レーザ加工(縁切り加工、中抜き加工)により正常な2条の縁切り溝18及び中抜き溝19が形成される場合の第1プラズマ形状及び第2プラズマ形状(以下、基準形状という)を示す情報である。この基準形状情報70は、ウェーハ12のレーザ加工前に予め生成されて記憶部31に格納される。基準形状情報70を生成する場合には、例えば、公知のビームプロファイラ等を用いてレーザヘッド24のビームプロファイルが正常であることを確認し、この確認済みのレーザヘッド24によりウェーハ12又は加工性が安定している被加工物(シリンコン等)をレーザ加工する基準加工を行う。そして、この基準加工中に各加工点SP1,SP2で発生する各プラズマ形状を観測することで基準形状情報70を生成する。なお、レーザ加工の対象となるウェーハ12の種類(品種)が複数である場合には、ウェーハ12の種類ごとに基準形状情報70を生成してもよい。
【0104】
プラズマ形状評価部60は、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工中に各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状が正常(適正)であるのか、或いは各プラズマ形状が崩れているか、すなわち異常であるのかを評価する。このプラズマ形状評価部60は、基準形状情報70を用いて各プラズマ形状の評価を行う第1評価部60Aと、基準形状情報70を用いることなく各プラズマ形状の評価を行う第2評価部60Bと、を備える。第1評価部60A及び第2評価部60Bは、例えば、操作部49での選択操作に応じて選択的に作動する。
【0105】
最初に、第1評価部60Aによる各プラズマ形状の評価について説明する。第1評価部60Aは、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工開始前に形状情報取得部58から基準形状情報70を取得する。そして、第1評価部60Aは、レーザ加工中にプラズマ形状取得部56から各加工点SP1の第1プラズマ形状が入力されるごとに、入力された第1プラズマ形状と、基準形状情報70が示すプラズマ68の基準形状との一致度を演算し、この一致度に基づき第1プラズマ形状を評価する。具体的には第1評価部60Aは、第1プラズマ形状と基準形状との一致度が所定閾値以上である場合には第1プラズマ形状が正常であると評価し、逆に一致度が所定閾値未満である場合には第1プラズマ形状が異常であると評価する。
【0106】
また、第1評価部60Aは、レーザ加工中にプラズマ形状取得部56から各加工点SP2の第2プラズマ形状が入力されるごとに、入力された第2プラズマ形状と、基準形状情報70が示すプラズマ69の基準形状との一致度を演算し、この一致度が所定閾値以上であるのか否かに基づき第2プラズマ形状が正常であるのか或いは異常であるのかを評価する。
【0107】
次に、
図10及び
図11を用いて、第2評価部60Bによる各プラズマ形状の評価について説明を行う。
【0108】
図10は、第2評価部60Bによる加工点SP1ごとの第1プラズマ形状の評価を説明するための説明図である。なお、図中の符号A1,A2は、各加工点SP1の第1プラズマ形状が正常である場合の撮影画像D1(符号A1参照)と、各加工点SP1の第1プラズマ形状が異常である場合の撮影画像D1(符号A2参照)と、を示したものである。また、図中の符号B1は、符号A1で示した各加工点SP1で形成される2条の縁切り溝18をX方向から見た断面図である。図中の符号B2は、符号A2で示した各加工点SP1で形成される2条の縁切り溝18をX方向から見た断面図である。
【0109】
さらに、図中の符号J1は2条の縁切り溝18の加工予定ラインであり、符号J2は中抜き溝19の加工予定ラインである。
【0110】
図10に示すように、第2評価部60Bは、プラズマ形状取得部56から加工点SP1ごとの第1プラズマ形状が入力されるごとに、入力された第1プラズマ形状の評価を行う。ここで、縁切り加工にはスプリットビームである2条の第1レーザ光L1が用いられ、個々の第1レーザ光L1はガウシンアンビームである。このため、第2評価部60Bは、ガウシンアンビームに対応した第1プラズマ形状の評価と、スプリットビームに対応した第1プラズマ形状の評価と、を行う。
【0111】
ガウシンアンビームに対応した第1プラズマ形状の評価とは、個々の加工点SP1の第1プラズマ形状が円形(略円形を含む)であるのか否かを評価することである。例えば第1評価部60Aは、個々の第1プラズマ形状の真円度、及び加工予定ラインJ1に対するプラズマ68のY方向対称性(図中の矢印E参照)等の評価項目を公知の方法で演算する。そして、第1評価部60Aは、個々の第1プラズマ形状の評価項目(真円度及びY方向対称性)が所定閾値を満たしているか否かに基づき、個々の第1プラズマ形状が正常であるのか或いは異常であるのかを評価する。
【0112】
スプリットビームに対応した第1プラズマ形状の評価とは、加工点SP1ごとの第1プラズマ形状の大きさのバランスを評価することである。例えば第2評価部60Bは、加工点SP1ごとの第1プラズマ形状の面積を比較して、両者の面積の差が所定の閾値以下であるのか否かに基づき、加工点SP1ごとの第1プラズマ形状の大きさのバランスが正常であるのか或いは異常であるのかを評価する。
【0113】
図11は、第2評価部60Bによる加工点SP2ごとの第2プラズマ形状の評価を説明するための説明図である。なお、各加工点SP2の第2プラズマ形状が正常である場合の撮影画像D2A,D2B(符号A1参照)と、各加工点SP2の第2プラズマ形状が異常である場合の撮影画像D2A,D2B(符号A2参照)と、を示したものである。また、図中の符号B1は、符号A1で示した各加工点SP2で形成される中抜き溝19をX方向から見た断面図であり、図中の符号B2は、符号A2で示した各加工点SP2で形成される中抜き溝19をX方向から見た断面図である。
【0114】
図11に示すように、第2評価部60Bは、プラズマ形状取得部56から加工点SP2ごとの第2プラズマ形状が入力されるごとに、入力された第2プラズマ形状の評価を行う。ここで、中抜き加工にはスプリットビームである複数の第2レーザ光L2が用いられ、個々の第2レーザ光L2はラインビームである。このため、第2評価部60Bは、ラインビームに対応した第2プラズマ形状の評価と、スプリットビームに対応した第2プラズマ形状の評価と、を行う。
【0115】
ラインビームに対応したプラズマ形状の評価とは、個々の加工点SP2の第2プラズマ形状が所定のライン形状を満たすのか否かを評価することである。例えば第2評価部60Bは、個々の第2プラズマ形状について、長手方向の長さW1(その均一性を含む)と、短手方向の長さW2(その均一性を含む)と、X方向に対する長手方向の角度θと、長手方向の一端部及び他端部から加工予定ラインJ2までのY方向長さd1,d2の対称性と、を含む各種評価項目を公知の方法で演算する。そして、第2評価部60Bは、個々の第2プラズマ形状の評価項目(幅W1,W2の均一性、角度θ、及び対称性)がそれぞれ所定の閾値範囲内であるのか否かに基づき、個々の第2プラズマ形状が正常であるのか或いは異常であるのかを評価する。
【0116】
スプリットビームに対応した第2プラズマ形状の評価とは、加工点SP2ごとの第2プラズマ形状の大きさのバランスを評価することである。例えば第2評価部60Bは、加工点SP2ごとの第2プラズマ形状の面積を比較して、個々の面積の差が所定の閾値以下であるのか否かに基づき、加工点SP2ごとの第2プラズマ形状の大きさのバランスが正常であるのか或いは異常であるのかを評価する。
【0117】
図7に戻って、補正部62は、本発明の形状補正部に相当する。補正部62は、第1評価部60A又は第2評価部60Bにより加工点SP1,SP2ごとの各プラズマ形状の少なくともいずれか1つが異常であるとの評価がなされた場合に、ステアリングミラー機構M1A,M1B等を駆動して各レーザ光L1,L2の光軸を修正することで、異常評価がなされたプラズマ形状の補正を行う。すなわち、補正部62は、異常であると評価されたプラズマ形状が正常になるようにビーム(第1レーザ光L1、第2レーザ光L2)の形状(位置、バランス)を補正する。
【0118】
例えば補正部62は、第1プラズマ形状が異常である場合には、第1プラズマ形状と基準形状情報70が示すプラズマ68の基準形状との差分が低減するように(好ましくは最小になるように)、ステアリングミラー機構M1A等を駆動して2条の第1レーザ光L1の光軸を修正することで、第1プラズマ形状の補正を行う。或いは補正部62は、第1プラズマ形状の評価項目(真円度、Y方向対称性、及びバランス等)が所定の閾値を満たすように、ステアリングミラー機構M1A等を駆動して第1プラズマ形状の補正を行う。
【0119】
また、補正部62は、第2プラズマ形状が異常である場合には、第2プラズマ形状と基準形状情報70が示すプラズマ69の基準形状との差分が低減するように(好ましくは最小になるように)、ステアリングミラー機構M1B等を駆動して各第2レーザ光L2の光軸を修正することで、第2プラズマ形状の補正を行う。或いは補正部62は、第2プラズマ形状の評価項目(幅W1,W2の均一性、角度θ、対称性、及びバランス等)が所定の閾値を満たすように、ステアリングミラー機構M1B等を駆動して第2プラズマ形状の補正を行う。
【0120】
停止制御部64は、第1評価部60A又は第2評価部60Bにより各プラズマ形状のいずれかが異常であると判定された場合であって且つ補正部62による補正ができない場合に、レーザ加工制御部52を制御して、ストリートCのレーザ加工を停止させる。なお、補正部62による補正ができない場合とは、例えば、各プラズマ形状と基準形状との差分が所定の上限値よりも大きい場合、
図10及び
図11に示した各プラズマ形状の評価項目が所定範囲内にない場合、或いは補正部62による補正が一定時間経過しても完了しない場合などである。
【0121】
報知部66は、停止制御部64がストリートCのレーザ加工を停止させた場合に、不図示のモニタに警告情報を表示、不図示のスピーカからの警告情報の音声出力、或いはこれらの組み合わせを実行することで、オペレータに対して警告情報を報知する。
【0122】
[第1実施形態のレーザ加工装置の作用]
図12は、第1実施形態のレーザ加工装置10によるウェーハ12の各ストリートCのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
図13は、本発明のレーザ加工方法に係る、
図12中のプラズマ形状評価処理の流れを示すフローチャートである。なお、基準形状情報70については事前に既述の基準加工を行うことで記憶部31に記憶されているものとする。
【0123】
図12に示すように、レーザ加工装置10の電源ON後に加工対象のウェーハ12がテーブル20に保持されると、アライメント検出部50が相対移動機構28を駆動して、ウェーハ12に対して顕微鏡26をウェーハ12のアライメント基準(図示は省略)を撮影可能な位置まで相対移動させた後、顕微鏡26によるアライメント基準の撮影を実行させる。そして、アライメント検出部50は、顕微鏡26により撮影されたアライメント基準の撮影画像に基づき、ウェーハ12の各ストリートCの位置を検出するアライメント検出を行う(ステップS1)。
【0124】
アライメント検出が完了すると、レーザ加工制御部52が、アライメント検出部50の検出結果に基づき相対移動機構28を駆動して、ストリートC(往路)の加工開始位置に対するレーザヘッド24の第1集光レンズ38の光軸の位置合わせ(アライメント)を行う(ステップS2)。
【0125】
また、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して、第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Aに切り替える(ステップS3)。なお、ステップS2及びステップS3については逆の順番で実行或いは同時に実行してもよい。
【0126】
ステップS3が完了すると、レーザ加工制御部52は、ストリートC(往路)のレーザ加工を開始する(ステップS4)。最初にレーザ加工制御部52は、第1レーザ光源22Aからレーザ光LAを出射させる。これにより、第1光形成素子32を経て第1集光レンズ38から2条の第1レーザ光L1が出射され、2条の第1レーザ光L1がストリートC(往路)上の加工開始位置に集光される。
【0127】
次いで、レーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動してウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XAに相対移動させると共に、第2集光レンズ40Aの光軸が上述の加工開始位置に到達するのに応じて第2レーザ光源22Bからレーザ光LBを出射させる。これにより、第2光形成素子34、分岐光学素子35A、及び接続切替素子36を経て第2集光レンズ40Aから各第2レーザ光L2が出射され、各第2レーザ光L2が加工開始位置に集光される。
【0128】
引き続きレーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動して、ウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XAに相対移動させる(ステップS5)。これにより、
図3及び
図5に示したように、ストリートC(往路)に沿って、縁切り加工による2条の縁切り溝18の形成と中抜き加工による中抜き溝19の形成とが間隔を空けて同時に実行される。
【0129】
また、レーザ加工開始に合わせてプラズマ形状評価処理が開始される(ステップS6)。
【0130】
図13に示すように、撮影制御部54が、カメラ45によるプラズマ発光R1Aの撮像と、カメラ46Aによるプラズマ発光R2Aの撮像と、を開始させる。これにより、レーザ加工中に、カメラ45による一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影と、カメラ46Aによる各加工点SP2の撮影(プラズマ69)と、が実行される(ステップS6A、本発明の撮影ステップに相当)。
【0131】
次いで、プラズマ形状取得部56が、カメラ45からの撮影画像D1の取得と、カメラ46Aからの撮影画像D2Aの取得と、を実行する(ステップS6B)。そして、プラズマ形状取得部56が、撮影画像D1から加工点SP1ごとに第1プラズマ形状を取得すると共に、撮影画像D2Aから加工点SP2ごとに第2プラズマ形状を取得して、各プラズマ形状をプラズマ形状評価部60へ出力する(ステップS6C、本発明の形状取得ステップに相当)。
【0132】
各プラズマ形状の情報の入力を受けたプラズマ形状評価部60(第1評価部60A、第2評価部60B)は、各プラズマ形状がそれぞれ正常であるのか否かを評価する(ステップS6D、本発明の形状評価ステップに相当)。
【0133】
例えば第1評価部60Aにより評価を行う場合には、最初に形状情報取得部58が記憶部31から基準形状情報70を取得してこの基準形状情報70を第1評価部60Aへ出力する。そして、第1評価部60Aは、各プラズマ形状と、基準形状情報70が示すプラズマ68,69の基準形状との一致度を演算し、この一致度が所定閾値以上であるのか否かに基づき各プラズマ形状がそれぞれ正常であるのか否かを評価する。
【0134】
また、第2評価部60Bにより評価を行う場合には、第2評価部60Bが、既述の
図10及び
図11に示したような各プラズマ形状にそれぞれ対応した複数の評価項目を演算し、各評価項目がそれぞれ所定閾値を満たしているか否かに基づき、各プラズマ形状がそれぞれ正常であるのか否かを評価する。
【0135】
このように各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状の評価を行うことで、レーザ加工装置10にビームプロファイラを設けることなく、既存の設備を利用して、レーザ加工中に各加工点SP1,SP2での各レーザ光L1,L2のビームプロファイルが正常であるのか否かを判別可能である。さらに、レーザ加工中の各プラズマ形状が正常(各レーザ光L1,L2のビームプロファイルが正常)であれば2条の縁切り溝18及び中抜き溝19が正常に形成されている可能性が高い。その結果、レーザ加工装置10にビームプロファイラ及び三次元計測装置(顕微鏡)等を設けることなく、各プラズマ形状に基づき2条の縁切り溝18及び中抜き溝19が正常に形成されているのか否かを評価可能である。
【0136】
各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状の全てが正常である場合(ステップS6EでYES)、
図12に示したステップS7に移行する(ステップS6F)。
【0137】
一方、各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状のいずれかが異常である場合(ステップS6EでNO)、補正部62がステアリングミラー機構M1A,M1B等を駆動して異常なプラズマ形状の補正を行う(ステップS6GでYES、ステップS6H)。これにより、レーザ加工の加工不良の発生が防止される。そして、
図12に示したステップS7に移行する(ステップS6F)。
【0138】
各プラズマ形状のいずれかが異常である場合であって且つ補正部62による補正が不可能な場合に(ステップS6EでNO、ステップS6GでNO)、停止制御部64が、レーザ加工制御部52を制御してストリートC(往路)のレーザ加工を停止させる(ステップS6I)。これにより、レーザ加工の加工不良の発生が防止される。
【0139】
次いで、報知部66が、不図示のモニタ及びスピーカ等を利用して警告情報の報知を行う(ステップS6J)。これにより、オペレータに対してレーザヘッド24の調整、又はレーザ加工の加工条件の見直し等を促すことができるので、ウェーハ12の全体での加工不良の発生を防止可能である。
【0140】
図12に戻って、ステップS7に移行すると、ストリートC(往路)のレーザ加工が完了するまで既述のステップS6及びステップS7の処理が繰り返し実行される(ステップS7でNO)。これにより、ストリートC(往路)のレーザ加工の間、カメラ45,46Aによる各加工点SP1,SP2(プラズマ68,69)の撮影と、プラズマ形状取得部56による各プラズマ形状の取得と、プラズマ形状評価部60による各プラズマ形状の評価と、が繰り返し実行される。また、プラズマ形状評価部60により各プラズマ形状のいずれかが異常であると評価された場合には、「補正部62による補正」、或いは「停止制御部64によるレーザ加工停止及び報知部66による警告情報の報知」が実行される。
【0141】
レーザ加工制御部52は、一対の加工点SP1がストリートC(往路)の加工終了位置に到達するのに応じて第1レーザ光源22Aからのレーザ光LAの出射を停止させ、次いで各加工点SP2が加工終了位置に到達するのに応じて第2レーザ光源22Bからのレーザ光LBの出射を停止させると共に相対移動機構28の駆動を停止させる。これにより、ストリートC(往路)のレーザ加工が完了する(ステップS7でYES)。
【0142】
レーザ加工制御部52は、ストリートC(往路)のレーザ加工が完了すると、相対移動機構28を駆動して、第1集光レンズ38の光軸と、次のストリートC(復路)の加工開始位置との位置合わせを行う(ステップS8でYES、ステップS2)。また、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Bに切り替える(ステップS3)。
【0143】
そして、既述のステップS5からステップS7の処理が繰り返し実行される。これにより、ストリートC(復路)のレーザ加工が行われる間、カメラ45,46Bによる各加工点SP1,SP2(プラズマ68,69)の撮影と、プラズマ形状取得部56による各プラズマ形状の取得と、プラズマ形状評価部60による各プラズマ形状の評価と、が繰り返し実行される。また、プラズマ形状評価部60により各プラズマ形状のいずれかが異常であると評価された場合には、「補正」、或いは「レーザ加工停止及び警告情報の報知」が実行される。
【0144】
以下同様に、X方向に平行な全てのストリートC(往路及び復路)ごとに、既述のステップS2からステップS8までの処理が繰り返し実行される。次いで、レーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動してテーブル20を90°回転させることにより、ウェーハ12上でY方向に平行な残りの各ストリートCをX方向に平行にする。そして、上述の一連の処理が繰り返し実行される。これにより、格子状の各ストリートCに沿ってレーザ加工が実行される(ステップS8でNO)。
【0145】
以上のように第1実施形態では、レーザ加工中に撮影した各加工点SP1,SP2の撮影画像D1,D2A,D2Bから各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状を取得して評価することで、2条の縁切り溝18及び中抜き溝19が正常に形成されているか否かを評価することができる。その結果、ビームプロファイラ或いは三次元計測装置(顕微鏡)を用いる必要がなくなるので、レーザ加工中に2条の縁切り溝18及び中抜き溝19が正常に形成されているか否かを低コスト且つ短時間且つ省スペースで評価可能である。
【0146】
なお、上記第1実施形態では、補正部62がステアリングミラー機構M1A,M1B等を駆動して異常なプラズマ形状の補正を行っているが、他の方法でプラズマ形状の補正(各レーザ光L1,L2の光軸補正等)を行ってもよい。例えば、ステアリングミラー機構M1A,M1Bに代えてシフトミラー機構を配置してもよい。
【0147】
また、ステアリングミラー機構M1A,M1Bに代えて各レーザ光L1,L2の光路上に配置された複数のミラーと、複数のミラーの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整する調整機構とを含む構成を採用可能である。この場合には、各レーザ光L1,L2の光路ごとに2個のPSD等の位置検出センサを設け、光路ごとに、各位置検出センサによる各レーザ光L1,L2の位置検出結果に基づき、調整機構を駆動して各レーザ光L1,L2の光軸補正、すなわちプラズマ形状の補正を行ってもよい。
【0148】
[第2実施形態]
図14は、第2実施形態のレーザ加工装置10の制御装置30の機能ブロック図である。上記第1実施形態のレーザ加工装置10では各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状が正常であるのか否かの評価を行っているが、第2実施形態のレーザ加工装置10では各プラズマ形状の評価に加えて、各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の明るさ及び位置関係が正常であるのか否かの評価を行う。
【0149】
図14に示すように、第2実施形態のレーザ加工装置10は、制御装置30がさらに明るさ取得部71、位置取得部72、明るさ評価部73、及び位置関係評価部74として機能する点を除けば、上記第1実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0150】
明るさ取得部71は、ストリートC(往路)のレーザ加工中には、カメラ45,46Aから撮影画像D1,D2Aが出力されるごとに、撮影画像D1,D2Aからプラズマ68,69の明るさを取得する。具体的には明るさ取得部71は、既述のプラズマ形状取得部56と同様の方法で撮影画像D1,D2A内からプラズマ68,69の領域を検出し、検出したプラズマ68,69の領域内の画素の輝度値に基づき、プラズマ68,69の明るさを取得する。また、明るさ取得部71は、ストリートC(復路)のレーザ加工中には、カメラ45,46Bから撮影画像D1,D2Bが出力されるごとに、撮影画像D1,D2Bからプラズマ68,69の明るさを取得する。
【0151】
そして、明るさ取得部71は、撮影画像D1,D2A又は撮影画像D1,D2Bからプラズマ68,69の明るさを取得するごとに、プラズマ68,69の明るさを示す情報を明るさ評価部73に逐次出力する。
【0152】
位置取得部72は、ストリートC(往路)のレーザ加工中には、カメラ45,46Aから撮影画像D1,D2Aが出力されるごとに、撮影画像D1,D2Aからプラズマ68,69の位置情報を取得する。具体的には位置取得部72は、既述のプラズマ形状取得部56と同様の方法で撮影画像D1,D2A内からプラズマ68,69の領域を検出し、撮影画像D1,D2A内でのプラズマ68,69の位置に基づき、プラズマ68,69の位置情報を取得する。また、位置取得部72は、ストリートC(復路)のレーザ加工中には、カメラ45,46Bから撮影画像D1,D2Bが出力されるごとに、撮影画像D1,D2Bからプラズマ68,69の位置情報を取得する。
【0153】
そして、位置取得部72は、撮影画像D1,D2A又は撮影画像D1,D2Bからプラズマ68,69の位置情報を取得するごとに、プラズマ68,69の位置情報を位置関係評価部74に逐次出力する。
【0154】
明るさ評価部73は、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工中に各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69(既述の
図10及び
図11参照)の明るさが正常であるのか否かを評価する。
【0155】
具体的には明るさ評価部73は、レーザ加工中に明るさ取得部71から各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の明るさを示す情報が入力されるごとに、個々のプラズマ68,69の明るさが所定閾値範囲内であるのか否かに基づき、個々のプラズマ68,69の明るさがそれぞれ正常であるのか否かを評価する。プラズマ68,69の明るさは、レーザ加工の加工形状(加工深さ等)に影響を及ぼすため、個々のプラズマ68,69の明るさの評価結果に基づき、レーザ加工の加工形状が正常であるのか否かを評価することができる。
【0156】
また、明るさ評価部73は、明るさ取得部71から各加工点SP1でのプラズマ68の明るさを示す情報が入力されるごとに、加工点SP1ごとのプラズマ68の明るさのバランスが正常であるのか否かを評価する。例えば明るさ評価部73は、加工点SP1ごとのプラズマ68の明るさの差が所定の閾値以下であるのか否かに基づき、加工点SP1ごとのプラズマ68の明るさのバランス(以下、第1明るさバランスという)が正常であるのか否かを評価する。これにより、加工点SP1ごとの縁切り溝18の加工形状が均等であるのか否かを評価することができる。
【0157】
さらに、明るさ評価部73は、明るさ取得部71から各加工点SP2でのプラズマ69の明るさを示す情報が入力されるごとに、加工点SP2ごとのプラズマ69の明るさの差が所定の閾値以下であるのか否かに基づき、加工点SP2ごとのプラズマ69の明るさのバランス(以下、第2明るさバランスという)が正常であるのか否かを評価する。これにより、加工点SP2ごとの中抜き溝19の加工形状が均等であるのか否かを評価することができる。
【0158】
なお、加工点SP2ごとの中抜き溝19の加工形状(加工深さ)は必ずしも均等である必要はない。この場合には、加工点SP2ごとのプラズマ69の明るさの閾値が互いに異なっており、さらに第2明るさバランスの評価は省略される。
【0159】
位置関係評価部74は、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工中において、加工点SP1ごとのプラズマ68の位置関係(以下、第1位置関係という)が正常であるのか否かを評価すると共に、加工点SP2ごとのプラズマ69の位置関係(以下、第2位置関係という)が正常であるのか否かを評価する。
【0160】
具体的には位置関係評価部74は、位置取得部72から加工点SP1ごとのプラズマ68の位置情報が入力されるごとに、第1位置関係が正常であるのか否かを評価する。例えば、位置関係評価部74は、既述の
図10に示したように一対の加工点SP1ごとのプラズマ68の位置に基づき、加工予定ラインJ2から各プラズマ68までのY方向距離を演算し、これらY方向距離の差分を演算する。そして、位置関係評価部74は、演算した差分が所定閾値内であるのか否かに基づき、第1位置関係が正常であるのか否かを評価する。これにより、各加工点SP1の位置、すなわち2条の縁切り溝18の形成位置が適正であるのか否かを評価することができる。
【0161】
また、位置関係評価部74は、位置取得部72から加工点SP2ごとのプラズマ69の位置情報が入力されるごとに、第2位置関係が正常であるのか否かを評価する。例えば、位置関係評価部74は、既述の
図11に示したように加工点SP2ごとのプラズマ69の位置に基づき、加工点SP2ごとに加工予定ラインJ2からプラズマ69までのY方向距離を演算する。そして、位置関係評価部74は、加工点SP2ごとのY方向距離の差分、すなわち、先行する加工点SP2のプラズマ69に対する後行する加工点SP2のプラズマ69のY方向の位置ずれ量を演算し、この位置ずれ量が所定閾値内であるのか否かに基づき、第2位置関係が正常であるのか否かを評価する。これにより、中抜き加工時の各加工点SP2の位置が適正であるのか否かを評価することができる。
【0162】
第2実施形態の補正部62は、明るさ評価部73によって個々の加工点SP1のプラズマ68の明るさ或いは第1明るさバランスについて異常評価がなされた場合に、各加工点SP1のプラズマ68の明るさを補正する。例えば補正部62は、個々のプラズマ68の明るさ或いは第1明るさバランスが所定基準値(所定基準範囲)を満たすように、第1レーザ光源22Aから出射されるレーザ光LAの光量を調整したり、ステアリングミラー機構M1A等を駆動したりすることで、各加工点SP1のプラズマ68の明るさを補正する。
【0163】
また、補正部62は、明るさ評価部73によって個々の加工点SP2のプラズマ69の明るさ或いは第2明るさバランスについて異常評価がなされた場合に、各加工点SP2のプラズマ69の明るさを補正する。例えば補正部62は、個々のプラズマ69の明るさ或いは第2明るさバランスが所定基準値を満たすように、第2レーザ光源22Bから出射されるレーザ光LBの光量を調整したり、ステアリングミラー機構M1B等を駆動したりすることで、各加工点SP2のプラズマ69の明るさを補正する。
【0164】
さらに、補正部62は、位置関係評価部74によって第1位置関係又は第2位置関係について異常評価がなされた場合に、第1位置関係又は第2位置関係が所定基準値を満たすように、ステアリングミラー機構M1A等或いはステアリングミラー機構M1Bを駆動することで、第1位置関係又は第2位置関係を補正する。
【0165】
以上のように第2実施形態のレーザ加工装置10では、各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の明るさ及び位置関係が正常であるのか否かの評価を行うことで、加工点SP1,SP2ごとの加工形状及び加工点SP1,SP2ごとの位置関係が正常であるのか否かをあわせて評価することができる。
【0166】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のレーザ加工装置10について説明を行う。上記各実施形態では、レーザヘッド24により個々のストリート(往路及び復路)に対してレーザ加工(縁切り加工、中抜き加工)を1回だけ行っているが、同一のストリートCに対するレーザ加工を繰り返し行ってもよい。なお、同一のストリートCに対するレーザ加工を繰り返し行うこと、すなわちレーザ加工済みのストリートCに対してレーザ加工を再度行うことには、上記各実施形態で説明した中抜き加工のように加工送り方向であるX方向に複数分割された第2レーザ光L2により行うレーザ加工も含まれる。
【0167】
このように同一のストリートCに対するレーザ加工を繰り返し行う場合には、レーザ加工が行われるごとに各加工点SP1,SP2で発生するプラズマ68,69の明るさに差異が生じるおそれがある。このため、同一のストリートCに対するレーザ加工の回数の違いがプラズマ68,69の明るさの評価に影響を及ぼすおそれがある。
【0168】
そこで、第3実施形態のレーザ加工装置10では、同一のストリートCに対するレーザ加工が繰り返されることで発生する各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の明るさの差異を補正する。なお、第3実施形態のレーザ加工装置10は、撮影制御部54(カメラ45,46A,46B)の機能が一部異なる点を除けば上記第2実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第2実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0169】
第3実施形態の撮影制御部54は、同一のストリートCに対するレーザ加工が繰り返し行われるごとに、カメラ45,46A,46Bによる各加工点SP1,SP2の撮影条件(例えば露光時間)を異ならせる。レーザ加工ごとの撮影条件は、予め実験又はシミュレーションを行うことで、プラズマ68,69の明るさがそれぞれ予め定められた明るさになるように設定されている。これにより、同一のストリートCに対してレーザ加工が繰り返されることに起因した各加工点SP1,SP2のプラズマ68,69の明るさの差異を補正可能である。
【0170】
なお、加工送り方向(X方向)に複数分割された第2レーザ光L2により中抜き加工を行う場合には、カメラ46A,46Bの撮像素子(COMSセンサ)の撮像面の中で先行する加工点SP2に対応する撮像領域の露光時間と、後行する加工点SP2に対応する撮像領域の露光時間と、を異ならせる。これにより、加工点SP2ごとのプラズマ69の明るさの差異を補正可能である。
【0171】
[第4実施形態]
図15は、第4実施形態のレーザ加工装置10を示したブロック図である。上記第3実施形態では、同一のストリートCに対するレーザ加工を繰り返し行う場合に、レーザ加工ごとカメラ45,46A,46Bの撮影条件を異ならせている。これに対して第4実施形態では同一のストリートCに対するレーザ加工を繰り返し行う場合に、レーザ加工ごとに各加工点SP1,SP2の撮影画像D1,D2A,D2Bの画像処理条件を異ならせる。
【0172】
なお、第4実施形態のレーザ加工装置10は、制御装置30が画像処理部55として機能する点を除けば上記第2実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成であるので、上記第2実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0173】
画像処理部55は、カメラ45,46A,46Bが各加工点SP1,SP2の撮影画像D1,D2A,D2Bを撮影するごとに、撮影画像D1,D2A,D2Bに対して所定の画像処理を施す。
【0174】
また、画像処理部55は、同一のストリートCに対するレーザ加工が繰り返し行われる場合には、レーザ加工ごとに撮影画像D1,D2A,D2Bに対して異なる画像処理条件で画像処理を施す。レーザ加工ごとの画像処理条件は、撮影画像D1内のプラズマ68の明るさ、及び撮影画像D2A,D2B内のプラズマ69の明るさがそれぞれ予め定められた明るさになるように設定されている。これにより、第3実施形態と同様に、同一のストリートCに対してレーザ加工が繰り返されることに起因した各加工点SP1,SP2のプラズマ68,69の明るさの差異を補正可能である。
【0175】
[第5実施形態]
図16は、第5実施形態のレーザ加工装置10のレーザヘッド24の要部を示した概略図である。上記第1実施形態で説明したように、カメラ45はプラズマ発光R1A及び第1レーザ反射光R1Bのうちでプラズマ発光R1Aのみを撮像し、カメラ46A,46Bはプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bのうちでプラズマ発光R2Aのみを撮像することが好ましい。そこで、第5実施形態のレーザ加工装置10では、カメラ45,46A,46Bに入射する光の波長域を制限する。
【0176】
なお、第5実施形態のレーザ加工装置10は、レーザヘッド24の分岐光路BP1の途中にフィルタ75が配置され、分岐光路BP2の途中にフィルタ76Aが配置され、さらに分岐光路BP3の途中にフィルタ76Bが配置されており、上記各実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0177】
フィルタ75,76A,76Bは、ストリートCの材料であるシリコン等をプラズマ化させた場合に発生する波長域の光の中で観察し易い波長域(例えば波長430nm)の光のみを透過するバンドパスフィルタである。各分岐光路BP1~BP3にバンドパスフィルタを設けることで、各集光レンズ38,39A,39Bの色収差の影響を受けることなく、カメラ45,46A,46Bが撮影画像D1,D2A,D2Bの撮影を行うことができる。
【0178】
なお、各分岐光路BP1~BP3にバンドパスフィルタであるフィルタ75,76A,76Bを設ける場合には、照明光源41から出射される照明光L3として、バンドパスフィルタの透過波長域と同じ波長域(例えば波長430nm)の光を用いる。
【0179】
このように分岐光路BP1~BP3の途中にフィルタ75,76A,76Bを設けることで、ノイズ光(第1レーザ反射光R1B及び第2レーザ反射光R2B)がフィルタ75,76A,76Bで遮断される。このため、カメラ45,46A,46Bが、プラズマ68,69に対応した特定の波長域の光のみを選択的に撮像することができる。その結果、撮影画像D1,D2A,D2Bから各プラズマ形状をより正確に取得することができる。
【0180】
[第6実施形態]
図17は、第6実施形態のレーザ加工装置10の制御装置30の機能ブロック図である。上記各実施形態では、各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状が正常であるのか或いは異常であるのかを評価しているが、各プラズマ形状が異常となる原因を特定することはできない。各プラズマ形状が異常となる原因としては、各レーザ光L1,L2のビームプロファイルが崩れている等のレーザヘッド24に問題がある場合、或いはウェーハ12のストリートCの加工性に問題がある場合などが例として挙げられる。
【0181】
そこで、第6実施形態のレーザ加工装置10は、ストリートCのレーザ加工のタイミング以外のタイミング、例えばウェーハ12のレーザ加工前に基準加工を行う。この基準加工は、既述の通りレーザ加工装置10により安定したレーザ加工が可能(加工性が安定した)な既知の被加工物、例えば、サブテーブル及び基準ワークなどに対してレーザ加工を行うことである。
【0182】
なお、第6実施形態のレーザ加工装置10は、動作モードとして基準加工を行う基準加工モードを有し、且つ制御装置30が基準情報生成部80として機能する点を除けば、上記各実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0183】
基準加工モードではレーザ加工制御部52が、第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、相対移動機構28、及び接続切替素子36等を制御して、基準加工用の被加工物に対するレーザ加工(縁切り加工、中抜き加工)を実行する。そして、基準加工モードでは、ストリートCに対するレーザ加工時と同様に、撮影制御部54(カメラ45,46A,46B)による加工点SP1,SP2の撮影、プラズマ形状取得部56による各プラズマ形状の取得、及び第2評価部60Bによるプラズマ形状の評価が実行される。
【0184】
なお、基準加工時の加工点SP1,SP2は本発明の第2加工点に相当し、撮影画像D1,D2A,D2Bは本発明の第2撮影画像に相当する。
【0185】
基準情報生成部80は、基準加工モード時において第2評価部60Bにより正常であると評価されたプラズマ形状に基づき、既述の第1実施形態で説明した基準形状情報70を生成して記憶部31に記憶させる。
【0186】
図18は、基準加工モードの処理の流れを示したフローチャートである。
図18に示すように、制御装置30は、例えばウェーハ12のレーザ加工前にレーザ加工装置10の動作モードを基準加工モードに切り替える。
【0187】
最初にレーザ加工制御部52が、相対移動機構28を駆動して基準加工用の被加工物に対するレーザヘッド24の第1集光レンズ38の光軸の位置合わせを行う。また、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して、第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Aに切り替える。
【0188】
そして、レーザ加工制御部52が、第1レーザ光源22Aからレーザ光LAを出射させると共に第2レーザ光源22Bからレーザ光LBを出射させることで、被加工物に対するレーザ加工(縁切り加工及び中抜き加工)を開始する(ステップS11)。次いで、レーザ加工制御部52が、相対移動機構28を駆動して被加工物に対してレーザヘッド24を往路方向側XAに相対移動させる(ステップS12)。
【0189】
被加工物に対するレーザ加工が開始されると、撮影制御部54が、カメラ45,46Aを制御して、カメラ45による各加工点SP1(プラズマ68)の撮影と、カメラ46Aによる各加工点SP2(プラズマ69)の撮影と、を実行させる(ステップS13)。
【0190】
以下、上記各実施形態と同様に、プラズマ形状取得部56によるカメラ45、46Aからの撮影画像D1,D2Aの取得(ステップS14)と、プラズマ形状取得部56による各プラズマ形状の取得と(ステップS15)、第2評価部60Bによる各プラズマ形状の評価と(ステップS16)、が実行される。
【0191】
基準加工用の被加工物は加工性が安定しているので、各プラズマ形状に異常が発生していると第2評価部60Bが評価した場合には(ステップS17でNO)、各レーザ光L1,L2のビームプロファイルが崩れている等のレーザヘッド24に問題がある。この場合には、報知部66が、不図示のモニタ及びスピーカ等を利用して警告情報の報知を行う(ステップS18)。これにより、オペレータに対してレーザヘッド24の異常を報知することができる。
【0192】
一方、各プラズマ形状が正常であると第2評価部60Bが評価した場合(ステップS17でYES)、ステップS12からステップS18までの処理が継続する(ステップS19でNO)。
【0193】
そして、一定量或いは一定時間だけ基準加工が行われると、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Bに切り替えると共に、相対移動機構28を駆動して被加工物に対してレーザヘッド24を復路方向側XBに相対移動させる。以下、再びステップS12からステップS18までの処理が繰り返し実行される(ステップS19でNO)。
【0194】
基準加工が終了すると(ステップS19でYES)、基準情報生成部80が、第2評価部60Bにより正常であると評価された各加工点SP1,SP2のプラズマ形状に基づき、基準形状情報70を生成して記憶部31に記憶させる(ステップS20)。これにより、ストリートCのレーザ加工時において、第1評価部60Aによる各加工点SP1,SP2のプラズマ形状の評価が可能になる。
【0195】
以上のように第6実施形態では、レーザ加工装置10により加工性が安定している被加工物の基準加工を行い、この基準加工中に各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状が正常であるのか否かを評価することで、各レーザ光L1,L2のビームプロファイルが崩れている等のレーザヘッド24に問題があるか否かを判定可能である。これにより、レーザヘッド24に問題が存在しないことを確認した上でストリートCのレーザ加工及び各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状の評価を行うことができる。そのため、プラズマ形状評価部60により各プラズマ形状が異常であると評価された場合にはその原因がウェーハ12側にある。その結果、各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状が異常になる原因を特定可能である。
【0196】
なお、各プラズマ形状が異常になる原因がウェーハ12(ストリートC)側にある場合には、上述の停止制御部64がレーザ加工制御部52を制御してレーザ加工を停止させてもよい。或いは、上述の補正部62が各レーザ光L1,L2の強度及び周期(波長)等を変更することで、各加工点SP1,SP2での各プラズマ形状を安定させる、すなわち安定したレーザ加工が行えるようにしてもよい。
【0197】
[第7実施形態]
図19は、第7実施形態のレーザ加工装置10の制御装置30の機能ブロック図である。上記各実施形態では、プラズマ形状取得部56が取得した各加工点SP1,SP2の各プラズマ形状が正常であるのか否かを評価しているが、第7実施形態ではさらに各プラズマ形状に基づき2条の縁切り溝18及び中抜き溝19の形状を推定する。
【0198】
図19に示すように、第7実施形態のレーザ加工装置10は、記憶部31に第1対応情報82A及び第2対応情報82Bが記憶され、さらに制御装置30が溝形状推定部84として機能する点を除けば上記各実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0199】
第1対応情報82Aは、正常な第1プラズマ形状及び異常な第1プラズマ形状を含む複数種類の第1プラズマ形状と、これら第1プラズマ形状ごとの2条の縁切り溝18の加工形状と、を対応付けたものである。第2対応情報82Bは、正常な第2プラズマ形状及び異常な第2プラズマ形状を含む複数種類の第2プラズマ形状と、これら第2プラズマ形状ごとの中抜き溝19の加工形状と、を対応付けたものである。各対応情報82A,82Bは、予め実験又はシミュレーションを行うことで生成された後に記憶部31に記憶される。
【0200】
溝形状推定部84は、ストリートCのレーザ加工時にプラズマ形状取得部56が取得した各加工点SP1の第1プラズマ形状に基づき、記憶部31内の第1対応情報82Aを参照することで、各加工点SP1に形成される2条の縁切り溝18の加工形状を推定する。また同時に溝形状推定部84は、プラズマ形状取得部56が取得した加工点SP2ごとの第2プラズマ形状に基づき、記憶部31内の第2対応情報82Bを参照して、加工点SP2ごとに形成される中抜き溝19の加工形状を推定する。
【0201】
以上のように第7実施形態では、各加工点SP1,SP2の各プラズマ形状に基づき2条の縁切り溝18及び中抜き溝19の形状を推定可能であるので、2条の縁切り溝18及び中抜き溝19の形状測定のために高価な三次元計測装置(顕微鏡)をレーザ加工装置10に設ける必要がなくなる。
【0202】
[その他]
図20は、縁切り加工及び中抜き加工で共通のレーザ光源22を用いるレーザヘッド24の変形例を示した図である。上記各実施形態のレーザヘッド24には縁切り加工用の第1レーザ光源22A及び中抜き加工用の第2レーザ光源22Bが設けられているが、
図20に示すように、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bの代わりに、レーザ光源22及び分岐素子100をレーザヘッド24に設けてもよい。
【0203】
レーザ光源22は、縁切り加工及び中抜き加工の双方に適した条件(波長、パルス幅、及び繰り返し周波数等)のレーザ光L0を分岐素子100に向けて出射する。
【0204】
分岐素子100は、例えばビームスプリッタ等が用いられる。分岐素子100は、レーザ光源22から出射されたレーザ光L0を2分岐させて、2分岐したレーザ光L0の一方を第1光形成素子32へ出射すると共にレーザ光L0の他方を第2光形成素子34へ出射する。これにより、上記各実施形態と同様に第1光形成素子32から2条の第1レーザ光L1が出射され、且つ第2光形成素子34から第2レーザ光L2が出射される。1種類のレーザ光源22を設けるだけでよいのでレーザヘッド24の小型化及び低コスト化が図れる。
【0205】
上記各実施形態では、第2レーザ光L2のみを加工送り方向(X方向)に複数分岐させているが、2条の第1レーザ光L1も加工送り方向(X方向)に複数分岐させてもよい。この場合にも上記各実施形態と同様に各加工点SP1の撮影、プラズマ形状の取得、及びプラズマ形状の評価、及び補正等が実行される。
【0206】
上記各実施形態では、ストリートC(往路及び復路)に対してレーザヘッド24を加工送り方向に沿って1回だけ相対移動させながらレーザ加工を行っているが、ストリートCに対してレーザヘッド24を相対的に1回以上往復移動させながらレーザ加工を行ってもよい。
【0207】
上記各実施形態では、ストリートCに対するレーザ加工として縁切り加工及び中抜き加工を実施しているが、通常の1種類のレーザ加工を行うレーザ加工装置(上記特許文献2参照)にも本発明を適用可能である。また、本発明のレーザ加工装置は、シリコン等の基板の表面にLow-k膜が形成されているウェーハ12を加工対象とするものに限定されず、公知の各種ウェーハを加工対象とするものに適用可能である。
【符号の説明】
【0208】
10 レーザ加工装置
12 ウェーハ
14 チップ
16 デバイス
18 縁切り溝
19 中抜き溝
20 テーブル
22 レーザ光源
22A 第1レーザ光源
22B 第2レーザ光源
24 レーザヘッド
26 顕微鏡
28 相対移動機構
30 制御装置
31 記憶部
32 第1光形成素子
33 ビームスプリッタ
34 第2光形成素子
35 ビームスプリッタ
35A 分岐光学素子
36 接続切替素子
37 ビームスプリッタ
38 第1集光レンズ
40A,40B 第2集光レンズ
41 照明光源
42,43A,43B ビームスプリッタ
45,46A,46B カメラ(撮影手段)
47 第1結像レンズ
48A,48B 第2結像レンズ
49 操作部
50 アライメント検出部
52 レーザ加工制御部
54 撮影制御部
55 画像処理部
56 プラズマ形状取得部
58 形状情報取得部
60 プラズマ形状評価部
60A 第1評価部
60B 第2評価部
62 補正部
64 停止制御部
66 報知部
68,69 プラズマ
70 基準形状情報
71 明るさ取得部
72 位置取得部
73 明るさ評価部
74 位置関係評価部
75,76A,76B フィルタ
80 基準情報生成部
82A 第1対応情報
82B 第2対応情報
84 溝形状推定部
100 分岐素子
102 ステアリングミラー
BP1 分岐光路
BP2 分岐光路
BP3 分岐光路
C ストリート
D1,D2A,D2B 撮影画像
J1,J2 加工予定ライン
L0 レーザ光
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
L3 照明光
LA,LB レーザ光
M1A,M1B,M2A,M2B,M3 ステアリングミラー機構
OP1,OP2,OP3 主光路
R1A プラズマ発光
R1B 第1レーザ反射光
R2A プラズマ発光
R2B 第2レーザ反射光
SP1,SP2 加工点
XA 往路方向側
XB 復路方向側
θ 角度