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特開2024-27894吸収性物品包装体、及び、吸収性物品包装体のパッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027894
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】吸収性物品包装体、及び、吸収性物品包装体のパッケージ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61F13/15 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131068
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智之
(72)【発明者】
【氏名】森澤 高至
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼阪 翔士
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA07
3B200BA16
3B200BB17
3B200BB21
3B200BB24
3B200BB25
3B200CA11
3B200DF09
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】吸水性樹脂を含む吸収性物品の包装体において、吸収性物品の吸収性能を確保しつつ、吸収性物品包装体の膨張を抑制すること。
【解決手段】吸水性樹脂を含み、保水量を吸水量で除した値が0.55以上である吸収性物品(10)と包装材(20)とを備える吸収性物品包装体(1)であって、包装材(20)の透湿度は、2000g/m・24h以下であり、包装材(20)は、横方向に沿う包装材20の開封端部が包装材(20)上に位置するように、吸収性物品(10)を内包して折り畳まれており、吸収性物品包装体(1)の内部には、揮発性物質(71,72)が含まれており、横方向における一対の側縁部に設けられた一対の溶着領域(R50)の少なくとも一方は、包装材(20)を間欠的に接合する複数の溶着部(50)と、溶着領域(R50)の横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで連続する非溶着領域(R51)と有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂を含み、保水量を吸水量で除した値が0.55以上である吸収性物品と、
包装材と、を備え、
横方向、縦方向、及び、厚さ方向を有する吸収性物品包装体であって、
前記包装材の透湿度は、2000g/m・24h以下であり、
前記包装材は、前記横方向に沿う前記包装材の開封端部が前記包装材上に位置するように、前記吸収性物品を内包して折り畳まれており、
前記吸収性物品包装体の内部には、揮発性物質が含まれており、
前記横方向における一対の側縁部には、一対の溶着領域が設けられており、
前記一対の溶着領域の少なくとも一方は、
前記包装材を間欠的に接合する複数の溶着部と、
前記溶着領域の前記横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで連続する非溶着領域と、を有すること、
を特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品包装体であって、
前記一対の溶着領域の間において、前記包装材の開封端部は、対向する前記包装材に接着された接着領域を有することを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装材の開封端部は、前記接着領域よりも前記縦方向における開封端側に、非接着領域を有し、
前記吸収性物品包装体は、前記非接着領域を前記包装材に止着する止着テープを有することを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の吸収性物品包装体であって、
前記一対の溶着領域の少なくとも一方は、前記接着領域と前記厚さ方向において重なる領域を有することを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項5】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記揮発性物質は、前記吸収性物品を構成する資材、及び、前記包装材の内側面のうちの、少なくとも一方に、塗工されていることを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項6】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記一対の溶着領域の少なくとも一方は、前記横方向に沿って連続する前記非溶着領域を有することを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品包装体であって、
前記非溶着領域の前記縦方向の長さは、前記非溶着領域と前記縦方向の一方側に隣接する前記溶着部の前記縦方向の長さの1/2の長さよりも長いことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項8】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記揮発性物質は、メントングリセリンアセタールよりも揮発性が高いことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項9】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記揮発性物質は、メントングリセリンアセタールよりも揮発性が低いことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項10】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装材は、その厚さ方向の酸素透過度が、23℃において100cc/m/24h/atm以下であることを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項11】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記吸収性物品は、吸収性コアを有し、
前記吸収性物品において、前記吸収性コアよりも肌側に、油剤が配置されていることを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項12】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装材の外側面の方が、前記包装材の内側面に比べて、平滑性が低いことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項13】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装材の内側面の方が、前記包装材の外側面に比べて、平滑性が低いことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項14】
請求項1~3の何れかに記載の吸収性物品包装体を、袋体に収容した吸収性物品包装体のパッケージであって、
前記袋体の内部の前記吸収性物品包装体の前記厚さ方向に対応する所定方向を有し、
自然状態の前記パッケージの前記所定方向の長さをT1とし、
前記パッケージを前記所定方向に1000N/mの力で加圧したときとの前記パッケージの前記所定方向の長さをT2とし、
自然状態の前記吸収性物品包装体の前記厚さ方向の長さをt1とし、
前記吸収性物品包装体を前記厚さ方向に1000N/mの力で加圧したときの前記吸収性物品包装体の前記厚さ方向の長さをt2としたとき、
(T1-T2)/T1<(t1-t2)/t1であること、
を特徴とする吸収性物品包装体のパッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品包装体、及び、吸収性物品包装体のパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品を包装材(包装シート)で包んだ吸収性物品包装体が知られている。特許文献1には、気密層と気密層よりも融点の低い融着層を含む包装シートと一緒に、吸収性物品が折り畳まれ、包装シートの両側部に一対のシール部が設けられた吸収性物品の包装体が開示されている。特許文献1では、包装シートが折り畳まれた際に隣接する融着層同士を融着させることにより、包装体の気密性を高め、折り畳まれた吸収性物品の復元力を抑えている。一方で、シール部の剥離強度を25mm当たり10N以下とすることで、開封し易さを確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6227592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、折り畳まれた吸収性物品が復元力により展開してしまうことを問題視し、包装体の気密性を高めている。しかし、包装体の気密性を高めると、包装体の内部から気体が放出され難く、包装体が膨張し、破裂してしまう恐れがある。
一方、吸収性物品包装体の中には、軽失禁パッドや使い捨ておむつ等、着用者からの排泄量が比較的に多く、排泄液を吸収保持する吸水性樹脂を含む吸収性物品の包装体がある。このような吸収性物品包装体では、気密性を低くしてしまうと、外部から湿った空気が流入し易く、吸水性樹脂が湿った空気により膨潤し、吸収性物品の吸収性能が使用前に低下してしまう。
このように、吸水性樹脂を含む吸収性物品の包装体では、包装体の気密性に関して、特許文献1では開示されていない両立の難しい課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであって、吸水性樹脂を含む吸収性物品の包装体において、吸収性物品の吸収性能を確保しつつ、吸収性物品包装体の膨張を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、吸水性樹脂を含み、保水量を吸水量で除した値が0.55以上である吸収性物品と、包装材と、を備え、横方向、縦方向、及び、厚さ方向を有する吸収性物品包装体であって、前記包装材の透湿度は、2000g/m・24h以下であり、前記包装材は、前記横方向に沿う前記包装材の開封端部が前記包装材上に位置するように、前記吸収性物品を内包して折り畳まれており、前記吸収性物品包装体の内部には、揮発性物質が含まれており、前記横方向における一対の側縁部には、一対の溶着領域が設けられており、前記一対の溶着領域の少なくとも一方は、前記包装材を間欠的に接合する複数の溶着部と、前記溶着領域の前記横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで連続する非溶着領域と、を有すること、を特徴とする吸収性物品包装体。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸水性樹脂を含む吸収性物品の包装体において、吸収性物品の吸収性能を確保しつつ、吸収性物品包装体の膨張を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】吸収性物品包装体1の平面図である。
図2】吸収性物品包装体1の断面模式図である。
図3】展開状態の吸収性物品包装体1を内側から見た平面図である。
図4】展開状態の吸収性物品包装体1を外側から見た平面図である。
図5】軽失禁パッド10の断面模式図である。
図6図6Aは溶着領域R50の説明図であり、図6Bは変形例の溶着領域R50の説明図である。
図7】変形例の個包装体1の説明図である。
図8】変形例のパッド10の断面模式図である。
図9図9A及び図9Bは個包装体1の厚みの変化の測定方法の説明図である。
図10図10A図10Cはパッケージ90の厚みの変化の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
吸水性樹脂を含み、保水量を吸水量で除した値が0.55以上である吸収性物品と、包装材と、を備え、横方向、縦方向、及び、厚さ方向を有する吸収性物品包装体であって、前記包装材の透湿度は、2000g/m・24h以下であり、前記包装材は、前記横方向に沿う前記包装材の開封端部が前記包装材上に位置するように、前記吸収性物品を内包して折り畳まれており、前記吸収性物品包装体の内部には、揮発性物質が含まれており、前記横方向における一対の側縁部には、一対の溶着領域が設けられており、前記一対の溶着領域の少なくとも一方は、前記包装材を間欠的に接合する複数の溶着部と、前記溶着領域の前記横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで連続する非溶着領域と、を有すること、を特徴とする吸収性物品包装体。
【0010】
態様1によれば、包装材の透湿度が2000g/m・24hよりも大きい場合に比べて、外部の湿った空気が包装材を透過し難くなる。また、溶着領域によって、包装材の開封端部とそれに対向する包装材との間に隙間が生じ難くなり、包装材の開封端部から外部の湿った空気が流入し難くなる。また、揮発性物質により包装体の内圧が高まるため、包装体の内部に湿った空気が流入し難くなる。よって、吸水性樹脂が湿った空気を吸収し、吸収性物品の吸収性能が使用前に低下してしまうことを抑制できる。また、溶着領域において横方向に連続する非溶着領域から、包装体の内部の気体(揮発性物質等)が流出できるため、気体による包装体の膨張を抑制できる。
【0011】
(態様2)
前記一対の溶着領域の間において、前記包装材の開封端部は、対向する前記包装材に接着された接着領域を有することを特徴とする、態様1に記載の吸収性物品包装体。
【0012】
態様2によれば、包装材の開封端部が対向する包装材に接着されることで、包装材の開封端部の密閉性が高まる。よって、包装材の開封端部から外部の湿った空気が流入し難くなり、吸収性物品の吸収性能が確保される。
【0013】
(態様3)
前記包装材の開封端部は、前記接着領域よりも前記縦方向における開封端側に、非接着領域を有し、前記吸収性物品包装体は、前記非接着領域を前記包装材に止着する止着テープを有することを特徴とする、態様2に記載の吸収性物品包装体。
【0014】
態様3によれば、止着テープによって非接着領域のめくれを抑制でき、接着領域や溶着部の剥がれを抑制できる。よって、包装材の開封端部の密閉性が確保され、外部からの湿った空気の流入を抑制でき、吸収性物品の吸収性能が確保される。
【0015】
(態様4)
前記一対の溶着領域の少なくとも一方は、前記接着領域と前記厚さ方向において重なる領域を有することを特徴とする、態様2又は態様3に記載の吸収性物品包装体。
【0016】
態様4によれば、溶着部と接着領域によって、溶着領域の接合強度が高まるため、包装材の開封端部の密閉性が高まり、かつ、意図しない開封が生じてしまうことを抑制できる。よって、包装材の開封端部の密閉性が確保され、外部からの湿った空気の流入を抑制でき、吸収性物品の吸収性能が確保される。
【0017】
(態様5)
前記揮発性物質は、前記吸収性物品を構成する資材、及び、前記包装材の内側面のうちの、少なくとも一方に、塗工されていることを特徴とする、態様1~態様4の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0018】
態様5によれば、吸収性物品や包装材を構成する資材から揮発性物質が徐々に揮発し、揮発性物質の持続性が高まる。よって、揮発性物質により包装体の内圧が高い期間が長くなり、非溶着領域からの外部の湿った空気の流入を抑制する効果も持続しやすくなる。
【0019】
(態様6)
前記一対の溶着領域の少なくとも一方は、前記横方向に沿って連続する前記非溶着領域を有することを特徴とする、態様1~態様5の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0020】
態様6によれば、横方向に沿って直線的に連続する非溶着領域を通って、揮発性物質がスムーズに外部に流出しやすくなる。包装体から適度に揮発性物質を逃がすことで、揮発性物質による包装体の膨張を抑制できる。
【0021】
(態様7)
前記非溶着領域の前記縦方向の長さは、前記非溶着領域と前記縦方向の一方側に隣接する前記溶着部の前記縦方向の長さの1/2の長さよりも長いことを特徴とする、態様6に記載の吸収性物品包装体。
【0022】
態様7によれば、非溶着領域の縦方向の長さを確保でき、非溶着領域から揮発性物質を適度に逃がすことができ、揮発性物質による包装体の膨張を抑制できる。
【0023】
(態様8)
前記揮発性物質は、メントングリセリンアセタールよりも揮発性が高いことを特徴とする、態様1~態様7の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0024】
態様8によれば、揮発性物質がメントングリセリンアセタールである場合に比べて、早い段階から、揮発性物質によって包装体の内圧を高めることができ、外部からの湿った空気の流入を抑制できる。
【0025】
(態様9)
前記揮発性物質は、メントングリセリンアセタールよりも揮発性が低いことを特徴とする、態様1~態様8の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0026】
態様9によれば、揮発性物質がメントングリセリンアセタールである場合に比べて、揮発性物質の持続性が高く、長期間に亘り、揮発性物質によって包装体の内圧を高めることができ、外部からの湿った空気の流入を抑制できる。
【0027】
(態様10)
前記包装材は、その厚さ方向の酸素透過度が、23℃において100cc/m/24h/atm以下であることを特徴とする、態様1~態様9の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0028】
態様10によれば、包装材の酸素透過度が23℃において100cc/m/24h/atmよりも大きい場合に比べて、外部から湿った空気が包装材を透過して流入し難くなる。よって、吸収性物品の吸収性能が確保される。
【0029】
(態様11)
前記吸収性物品は、吸収性コアを有し、前記吸収性物品において、前記吸収性コアよりも肌側に、油剤が配置されていることを特徴とする、態様1~態様10の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0030】
態様11によれば、包装体の内部に流入した湿った空気が、油剤によって吸収性コアの内部に流入し難くなる。よって、吸収性物品の吸収性能が確保される。
【0031】
(態様12)
前記包装材の外側面の方が、前記包装材の内側面に比べて、平滑性が低いことを特徴とする、態様1~態様11の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0032】
態様12によれば、包装材の外側面の平滑性が低く、摩擦係数が高いことで、流通時や使用者の持ち運び時等に、包装体の動きを軽減できる。よって、包装体の意図しない開封を抑制でき、包装体の外部から湿った空気が流入し難くなり、吸収性物品の吸収性能が確保される。
【0033】
(態様13)
前記包装材の内側面の方が、前記包装材の外側面に比べて、平滑性が低いことを特徴とする、態様1~態様11の何れかに記載の吸収性物品包装体。
【0034】
態様13によれば、包装材の内側面の平滑性が低く、凹凸が大きいと、その凹み部に揮発性物質が充満しやすくなる。よって、包装体の外部から湿った空気が流入し難くなり、吸収性物品の吸収性能が確保される。
【0035】
(態様14)
態様1~態様13の何れかに記載の吸収性物品包装体を、袋体に収容した吸収性物品包装体のパッケージであって、前記袋体の内部の前記吸収性物品包装体の前記厚さ方向に対応する所定方向を有し、自然状態の前記パッケージの前記所定方向の長さをT1とし、前記パッケージを前記所定方向に1000N/mの力で加圧したときとの前記パッケージの前記所定方向の長さをT2とし、自然状態の前記吸収性物品包装体の前記厚さ方向の長さをt1とし、前記吸収性物品包装体を前記厚さ方向に1000N/mの力で加圧したときの前記吸収性物品包装体の前記厚さ方向の長さをt2としたとき、(T1-T2)/T1<(t1-t2)/t1であること、を特徴とする吸収性物品包装体のパッケージ。
【0036】
態様14によれば、揮発性物質を直接に含む包装体の方が、厚みの変化率が大きく、気体が放出され易いことで、包装体の膨張をより確実に抑制できる。一方、パッケージでは、厚みの変化率を小さくして、気体が放出され難くして内圧を高めることで、外部から湿った空気が流入し難くなる。その結果、パッケージが収容する吸収性物品の吸収性能の低下をより抑制できる。
【0037】
===実施形態===
以下、本実施形態に係る吸収性物品包装体の一例として、軽失禁パッドの個包装体を例に挙げて説明する。
【0038】
<<吸収性物品包装体1の基本構成>>
図1は、吸収性物品包装体1の平面図である。図2は、吸収性物品包装体1の断面模式図である。図3は、展開状態の吸収性物品包装体1を内側から見た平面図である。図4は、展開状態の吸収性物品包装体1を外側から見た平面図である。図5は、軽失禁パッド10の断面模式図である。
【0039】
吸収性物品包装体1(以下「個包装体1」とも呼ぶ)は、吸収性物品である軽失禁パッド10(以下「パッド10」とも呼ぶ)と、包装材20とを備える。個包装体1は、折り畳まれた状態(図1)において、互いに直交する横方向、縦方向、及び、厚さ方向を有する。
【0040】
包装材20は、図4に示すように、長方形状のシートであり、個包装体1の横方向が包装材20の短手方向に対応し、個包装体1の縦方向が包装材20の長手方向に対応する。包装材20の内側面に剥離シート60を介してパッド10が載置され、個包装体1の横方向に沿う2つの折り部F1,F2にて、包装材20はパッド10と共に折り畳まれている。
【0041】
ただし、上記に限定されず、例えば、包装材20とパッド10が別々に折り畳まれていてもよい。また、1つの包装材20に複数のパッド10が内包されていてもよい。また、包装材20とパッド10が、横方向に沿う3つ以上の折り部にて折り畳まれていてもよいし、横方向に沿う折り部と包装材20の長手方向に沿う折り部の両方向の折り部にて折り畳まれていてもよい。
【0042】
パッド10と共に折り畳まれた包装材20の横方向における一対の側縁部は、複数の溶着部50によって間欠的に接合され、封じられている。溶着部50の形成方法は、超音波溶着や熱溶着等の周知の溶着方法を採用できる。以下の説明では、個包装体1の横方向における一対の側縁部において複数の溶着部50が設けられている領域を「一対の溶着領域R50」と呼ぶ。溶着領域R50は、複数の溶着部50のうち横方向の最も一方側の端を通る縦方向に沿う線と、複数の溶着部50のうち横方向の最も他方側の端を通る縦方向に沿う線と、複数の溶着部50のうち縦方向の最も一方側の端を通る横方向に沿う線と、複数の溶着部50のうち縦方向の最も他方側の端を通る横方向に沿う線と、で囲われる矩形領域とする。
【0043】
剥離シート60は、長方形状のシートであり、パッド10のずれ止め用粘着部18の全域を覆うように、パッド10と包装材20の間に設けられている。剥離シート60は、包装材20の内側面に、例えばホットメルト接着剤が塗布された固定部61によって、剥離不能に固定されている。図4では、3つの固定部61が、包装材20の長手方向に間隔を空けて並んで配置されているが、固定部61の形状や数や配置位置は特に限定されるものではない。また、剥離シート60の内側面(パッド10との対向面)には、シリコン樹脂等による剥離加工が施されており、パッド10のずれ止め用粘着部18が容易に剥離可能となっている。よって、パッド10の使用時には、剥離シート60は、包装材20と共にパッド10から取り外される。
【0044】
<<パッド10の基本構成>>
パッド10は、展開状態において、互いに直交する横方向と長手方向と厚さ方向を有する。パッド10の横方向が個包装体1の横方向に対応し、パッド10の長手方向が個包装体1の縦方向(包装材20の長手方向)に対応している。また、パッド10の厚さ方向において、着用者の肌に当接する側を肌側と呼び、その反対側を非肌側と呼ぶ。本実施形態では、長手方向に対称な構成及び形状であるパッド10を例示するため、パッド10の長手方向の一方側が、着用者の腹側となってもよいし、背側となってもよい。
【0045】
パッド10は、図5に示すように、第1吸収体30と、第1吸収体30よりも非肌側に位置する第2吸収体40と、第1吸収体30よりも肌側に位置する表面シート11と、表面シート11と第1吸収体30の間に位置する中間シート12と、一対の第1サイドシート13と、一対の第2サイドシート15と、第2吸収体40よりも非肌側に位置するバックシート16と、を有する。
【0046】
表面シート11、及び、中間シート12は、液透過性のシートである。液透過性のシートとしては、不織布(例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布等)や、貫通孔を有する合成樹脂フィルム等が挙げられる。バックシート16は、液不透過性のシートである。液不透過性のシートとしては、ポリエチレン(PE)やポリポロピレン(PP)等の合成樹脂フィルムや、合成樹脂フィルムと不織布の複合シート等が挙げられる。第1サイドシート13、及び、第2サイドシート15としては、疎水性シート(疎水性繊維を含む不織布等)を例示できるが、特に限定されるものではない。なお、図面の煩雑さを防ぐために全ては図示しないが、厚さ方向に隣り合う資材は、ホットメルト接着剤等の接着剤で互いに接合されている。
【0047】
第1吸収体30は、第1吸収性コア31と、第1肌側コアラップ32と、第1非肌側コアラップ33とを有する。第1吸収性コア31は、高吸収性ポリマー(SAP)で構成されており、図3に示すように平面視長方形状を成している。第1肌側コアラップ32及び第1非肌側コアラップ33は、液透過性のシートであり、不織布等を採用できる。第1肌側コアラップ32の横方向の両端部は、第1吸収性コア31及び第1非肌側コアラップ33の横方向の両端縁を巻き込むようにして、第1非肌側コアラップ33の非肌側面上の一部に折り返されている。
【0048】
一対の第1サイドシート13は、それぞれ、第1吸収体30の非肌側面の横方向の両端部から、第1吸収体30と中間シート12と表面シート11の横方向の両端縁を巻き込むようにして肌側に折り返され、表面シート11の肌側面上にホットメルト接着剤HMA1で固定されている。第1サイドシート13の横方向の端縁には、長手方向に伸縮する1本の糸ゴム14が配置されている。糸ゴム14の収縮により、第1サイドシート13等の横方向の両端部は、肌側に起立し易い。詳しくは、第1サイドシート13が第2サイドシート15にホットメルト接着剤HMA2で固定されている部位を起点とし起立し易く、排泄物の横漏れを抑制できる。
【0049】
第2吸収体40は、第2吸収性コア41と、第2肌側コアラップ42と、第2非肌側コアラップ43とを有する。第2吸収性コア41は、パルプ繊維等の液体吸収性繊維が所定の形状に成形されたものに、高吸収性ポリマー(SAP)が加えられたものである。第2吸収性コア41は、図3に示すように長手方向の両端部が湾曲した略長方形状を成し、第1吸収性コア31よりも長手方向の長さが長い。第2肌側コアラップ42及び第2非肌側コアラップ43は、液透過性のシートであり、ティッシュや不織布等を採用できる。第2肌側コアラップ42の横方向の両端部は、第2吸収性コア41の横方向の両端縁を巻き込むようにして、第2非肌側コアラップ43の肌側面上の一部に折り返されている。
【0050】
一対の第2サイドシート15は、それぞれ、第1サイドシート13と第2吸収体40の間に位置し、第2吸収体40の横方向の端部から横方向の外側に延出している。その延出した部分は、不図示の接着剤により、バックシート16と接合されており、第2吸収体40が吸収した排泄液の滲み出しを抑制している。
【0051】
パッド10の非肌側面(バックシート16の非肌側面)には、ホットメルト接着剤が塗布される等したずれ止め用粘着部18が設けられている。ずれ止め用粘着部18は、着用者の下着の肌側面に貼付され、パッド10は下着に固定された状態で使用される。図4では、パッド10の長手方向に長い長方形状のずれ止め用粘着部18が横方向に間隔を空けて2つ配置されているが、ずれ止め用粘着部18の形状、数、配置位置は、特に限定されるものではない。
【0052】
以上、パッド10の基本構成を説明したが、上記のパッド10の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、パッド10は、長手方向に非対称な構成や形状であってもよい。また、パッド10は、厚さ方向に複数の吸収体が重ねられていない単層の吸収体を有していてもよい。
また、以下の説明では、第1吸収体30と第2吸収体40を合わせて吸収体30,40と呼んだり、第1吸収性コア31と第2吸収性コア41を合わせて吸収性コア31,41と呼んだりする。
【0053】
===パッド10の吸収性能と個包装体1の膨張について===
図6Aは、溶着領域R50の説明図であり、図6Bは、変形例の溶着領域R50の説明図である。図7は、変形例の個包装体1の説明図である。図8は、変形例のパッド10の断面模式図である。
【0054】
パッド10が備える吸収性コア31,41には、吸収した液体を保持する吸水性樹脂(高吸収性ポリマー)が含まれている。なお、吸水性樹脂としては、高吸収性ポリマー(SAP)の他に、吸収ファイバー等を例示できる。吸水性樹脂を含むパッド10では、「吸水量」(吸収性物品が吸収可能な水量)に対する「保水量」(吸収性物品が吸収した水分を保持できる水量)の比率が高まる。そのため、生理用の吸収性物品に比べて排泄量の多い、本実施形態の軽失禁パッド10や使い捨ておむつ等では、吸水性樹脂によって、吸収した排泄液の漏出を抑制できる。
【0055】
ただし、保水量の高い吸収性物品の個包装体では、個包装体の気密性が低く、外部から湿った空気が流入しやすいと、吸水性樹脂が、湿った空気の水分を吸収保持してしまい、吸収性物品の吸収性能(保水性能)が使用前に低下してしまう問題がある。特に、個包装体が、湿度の高い地域を長期間に亘り流通したり、浴室等の高湿度の環境下で保管されたりする場合に、吸収性能低下の問題が顕著となる。
一方、個包装体の気密性を高め過ぎてしまうと、個包装体の内部から気体が放出され難く、個包装体が膨張し、破裂してしまう恐れがある。
【0056】
そこで、本実施形態では、吸水性樹脂を含み、保水量の高いパッド10、具体的には、保水量を吸水量で除した値が0.55以上(保水量/吸水量≧0.55)であるパッド10の個包装体1において、次のようにする。なお、保水量の高い吸収性物品は、軽失禁パッドに限らず、例えば、尿とりパッドや使い捨ておむつ等であってもよい。
【0057】
先ず、包装材20の透湿度を2000g/m・24h以下とする。そうすることで、包装材の透湿度が2000g/m・24hよりも大きい場合に比べて、包装材20は、外部の湿った空気を、その厚さ方向に透過し難くなる。よって、個包装体1の内部に湿った空気が流入し難く、パッド10が備える高吸収性ポリマーが湿った空気の水分を吸収保持して、パッド10の吸収性能が使用前に低下してしまうことを抑制できる。
【0058】
また、包装材20の長手方向の一方側の端部20aは、横方向に沿う2つの折り部F1,F2によって折り畳まれた状態において、個包装体1の外面に位置し、個包装体1の開封の起点となる開封端部20aとなる。また、図2に示すように、包装材20が折り畳まれた状態において、包装材20の長手方向の一方側の端部20a(開封端部)は、包装材20の長手方向の他方側の端部20bと厚さ方向に重なり、その間にパッド10は介在されない。つまり、横方向に沿う包装材20の開封端部20aが包装材20上に位置するように、包装材20はパッド10を内包して折り畳まれている。
【0059】
この場合、パッド10は、包装材20の開封端部20aに面さないので、開封端部20aにおいて外部の湿った空気と接触し難い。さらに、包装材20の横方向の一対の側縁部は、一対の溶着領域R50(複数の溶着部50)によって接合されている。そのため、一対の溶着領域R50の間においても、包装材20の開封端部20aは、対向する包装材20の部位(20b)と接触し易く、隙間が生じ難くなる。よって、包装材20の開封端部20aから外部の湿った空気が流入し難くなる。その結果、パッド10が備える高吸収性ポリマーが、湿った空気の水分を吸収保持して、パッド10の吸収性能が使用前に低下してしまうことを抑制できる。
【0060】
また、図6Aに示すように、一対の溶着領域R50は、包装材20を間欠的に接合する複数の溶着部50と、溶着領域R50の横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで連続する非溶着領域R51と、を有する。つまり、溶着領域R50は、溶着領域R50の横方向の内側から外側へと気体の通り道となる非溶着領域R51を有し、個包装体1の縦方向の全域に亘り連続する溶着部50を有さない。よって、個包装体1の内部の気体は、非溶着領域R51を通って溶着領域R50を通り抜け、個包装体1の外部に流出できる。ゆえに、個包装体1の膨張を抑制でき、個包装体1の破裂を防ぐことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、一対の溶着領域R50の溶着パターンを同じとするが、これに限らない。一対の溶着領域R50で溶着パターンが異なり、例えば、一方の溶着領域R50のみが横方向に連続する非溶着領域R51を有していてもよく、この場合にも、個包装体1の内部の気体を外部に放出できる。ただし、本実施形態のように、一対の溶着領域R50の両方が横方向に連続する非溶着領域R51を有する方が、個包装体1の内部の気体が外部に流出しやすく、より確実に個包装体1の膨張を抑制できる。
また、溶着領域R50は、横方向に連続する非溶着領域R51を少なくとも1つ有していればよい。ただし、図6Aに示すように、横方向に連続する非溶着領域R51が縦方向に間欠に複数設けられることで、個包装体1の内部の気体が外部に流出しやすく、より確実に個包装体1の膨張を抑制できる。
【0062】
また、個包装体1の内部には、揮発性物質が含まれている。例えば、本実施形態のパッド10では、図5に示すように、表面シート11の非肌側面に、揮発性物質である冷感剤71が塗工されている。また、第1肌側コアラップ32の非肌側への折り返し部の内側面に、揮発性物質である香料72が塗工されている。また、包装材20に剥離シート60を固定したり、パッド10を構成する資材同士を接合したりするホットメルト接着剤に含まれる溶剤も揮発性物質である。
【0063】
この場合、個包装体1の内部において揮発性物質(揮発した気体)が充満し、個包装体1の内圧が高まり、外部から湿った空気が流入し難くなる。一方、個包装体1の内部に揮発性物質が含まれていると、順次揮発した気体によって個包装体1が膨張し易くなる。しかし、本実施形態のパッド10では、非溶着領域R51(気体の通り道)から揮発性物質を放出できる。つまり、個包装体1の内部の揮発性物質が非溶着領域R51から放出されることにより、個包装体1の膨張を抑制しつつ、外部の湿った空気が非溶着領域51を通って個包装体1の内部に流入し難くなる。その結果、個包装体1の破裂を防ぎ、かつ、パッド10が備える高吸収性ポリマーが、湿った空気の水分を吸収保持して、パッド10の吸収性能が使用前に低下してしまうことを抑制できる。
以上のように、本実施形態の個包装体1によれば、パッド10の吸収性能を確保しつつ、個包装体1の膨張を抑制することができる。
【0064】
ここで、パッド10の「吸水量」と「保水量」の測定方法について説明する。本実施形態では、パッド10を150Gで脱水した場合であっても保持できる水量を「保水量」とする。
測定方法としては、先ず、測定対象のパッド10の重量A0(g)を測定する。その後、パッド10の肌側面を下に向けた状態で、約20Lの生理食塩水(0.9%NaCl溶液)中にパッド10を手で押しながら浸漬させる。なお、生理食塩水は、6枚のパッド10の測定まで使用可能であるが、それ以上は濃度が変化してしまうため、交換が必要である。パッド10を浸漬させた後、その状態で30分間放置する。30分経過後、パッド10を取り出し、肌側面を下にして網上に置き、その上にアクリル板と5kgの錘2個を置いて20分間放置する。20分後、パッド10の重量A1(g)を測定し、初期の重量との差を「吸水量」(A1(g)-A0(g))とする。
次に、上記の処置を施して吸水量を求めたパッド10を、脱水機内に入れ、パッド10の肌側面が外に向くようにセットし、90秒間、150Gの脱水を行う。なお、脱水機に同時にセットするパッド10の数は3枚までとし、パッド同士が重ならないように並べる。脱水後、パッド10の重量A2(g)を測定し、初期の重量との差を「保水量」(A2(g)-A0(g))とする。
なお、複数のパッド10に関して吸水量と保水量を測定することが好ましく、その場合には、複数のパッド10の吸水量の平均値と保水量の平均値を採用する。
【0065】
また、包装材20の透湿度は、JIS Z 0208:1976の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠して測定する。透湿カップに、塩化カルシウムの代わりに20ccの水を充填し、対象の包装材20で蓋をして、温度40℃及び相対湿度60%の雰囲気条件下で24時間自然放置させた後の、単位面積(m)あたりの水分の透過量(排出量)を測定する。
【0066】
また、本実施形態の溶着部50は、その全域が溶着されている。そのため、溶着部50における包装材20同士の接合強度が高い。よって、本実施形態の個包装体1では、揮発性物質によって内圧を高めるが、個包装体1の使用前の意図しない溶着部50(溶着領域R50)の剥がれを防止でき、個包装体1の密閉性が確保される。なお、溶着部50内において、溶着の強度が一定であってもよいし、溶着の強度が異なる部位が混在していてもよい。
ただし、溶着部50には、実際に溶着されている部位だけでなく、隣接する溶着された部位の影響によって包装材20同士が接合(一体化)している部位や、溶着された部位によって外周の大部分が囲まれた部位も、溶着部50に含むものとする。それらの部位は、気体の通り抜けが難しいため、それらの部位を含む領域を溶着部50とし、その溶着部50以外の非溶着領域R51を気体の通り道として確保することで、個包装体1の膨張を抑制できる。
【0067】
また、本実施形態の個包装体1の内部に含まれる揮発性物質として、冷感剤71(例えば、メントールや乳酸メンチル等)と、香料72と、ホットメルト接着剤を例示したが、揮発性物質は特に限定されるものではない。例えば、温感剤、虫除け剤、漢方薬剤、皮膚収斂剤、抗炎症剤、抗菌剤、pH調整剤、保湿剤等であってもよい。また、パッド10(吸収性物品)に所定の機能(例えば冷感や香り等)を付加する揮発性物質であってもよいし、ホットメルト接着剤のように個包装体1を構成するために含まれる揮発性物質であってもよい。パッド10に所定の機能を付加する揮発性物質が個包装体1に含まれている場合、前述のように、包装材20の透湿度を抑えたり、包装材20の開封端部20aの密閉性を高めたりすることで、揮発性物質の揮発(揮発した気体の流出)を適度に抑制できる。よって、パッド10の使用中に揮発性物質の機能が発揮される。
【0068】
また、包装材20は、好ましくは、その厚さ方向の酸素透過度が、23℃において100cc/m/24h/atm以下であることよい。好ましくは60cc/m/day/atm以下、より好ましくは40cc/m/24h/atm以下、さらに好ましくは30cc/m/24h/atm以下であるとよい。
上記酸素透過度は、クーロメトリック法に従い、23℃,0%RHの条件下で測定される。
【0069】
上記の場合、酸素透過度が、23℃において100cc/m/24h/atmよりも大きい包装材20を適用する場合に比べて、個包装体1の気密性が高まり、湿った空気が包装材20を透過し難くなり、パッド10の吸収性能の低下を抑制できる。また、パッド10に所定の機能(例えば冷感や香り等)を付加する揮発性物質が個包装体1に含まれている場合、揮発性物質の揮発(揮発した気体の流出)を適度に抑制でき、パッド10の使用中に揮発性物質の機能が発揮される。
【0070】
酸素透過度が23℃において100cc/m/24h/atm以下である包装材20としては、包装材20同士の溶着を可能とする溶着物質を含有する溶着層の間に、気密層が設けられたシートを例示できる。
気密層の素材は、厚さ方向の気密性を保持できるものであれば、当技術分野で公知の素材を制限なく採用することができ、例えば、エチレンビニルアルコールコポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、例えば、塩化ビニリデンメチルアクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール、ナイロン、例えば、ナイロン6、アルミ箔、基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート等)上にアルミナ、シリカ等が蒸着されたものが挙げられる。
溶着層の素材は、溶着部50を形成できるものであれば、当技術分野で公知の素材を制限なく採用することができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等が挙げられる。
ただし、上記に限定されず、溶着部50を形成可能な材料を含み、透湿度が2000g/m・24h以下である包装材20であればよく、例えば、気密層を有さないポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等であってもよい。
【0071】
また、図1図2に示すように、一対の溶着領域R50の間において、包装材20の開封端部20aは、対向する包装材20(長手方向の他方側の端部20b)に接着された接着領域2を有することが好ましい。つまり、包装材20の開封端部20aの内側面が、対向する包装材20の部位20bの外側面と、ホットメルト接着剤等の接着剤により接着されているとよい。
【0072】
そうすることで、包装材20の開封端部20aの密閉性が高まり、開封端部20aから外部の湿った空気が流入してしまうことを抑制できる。よって、パッド10が備える高吸収性ポリマーが、湿った空気の水分を吸収保持して、パッド10の吸収性能が低下してしまうことを抑制できる。また、パッド10に所定の機能(例えば冷感や香り等)を付加する揮発性物質が個包装体1に含まれている場合、揮発性物質の揮発(揮発した気体の流出)を適度に抑制でき、パッド10の使用中に揮発性物質の機能が発揮される。
【0073】
好ましくは、一対の溶着領域R50の少なくとも一方は、接着領域2と厚さ方向において重なる領域を有することが好ましい。
そうすることで、個包装体1の横方向の側縁部では、溶着部50と接着領域2によって包装材20がより強固に接合され、個包装体1の密閉性が高まる。また、パッド10の使用前に、意図しない開封が生じてしまうことを抑制でき、包装材20の開封端部20aの密閉性が確保される。
【0074】
また、包装材20の開封端部20aは、接着領域2よりも縦方向における開封端20a1側(図1図2では下側)に、非接着領域N20を有する。非接着領域N20の包装材20は、対向する包装材20に接着されていないため、流通時や使用者が持ち運ぶ際等に、めくれやすい。
そこで、図7に示す変形例の個包装体1のように、個包装体1は、非接着領域N20を包装材20に止着する止着テープ3を有してもよい。そうすることで、止着テープ3によって、非接着領域N20のめくれを抑制でき、そのめくれによる包装材20の開封端部20aの意図しない開封を防止できる。
【0075】
なお、一対の溶着領域R50の間の一部に、接着領域2が設けられていればよく、そうすることで、個包装体1の密閉性が高まる。しかし、好ましくは、図1に示すように、一対の溶着領域R50の間の横方向の全域に亘り連続して接着領域2が設けられているとよい。また、図7に示すように、止着テープ3が設けられている場合にも、一対の溶着領域R50の間の横方向の全域に亘り連続して接着領域2が設けられているとよい。
そうすることで、個包装体の密閉性がより高まり、湿った空気によるパッド10の吸収性能の低下を抑制できる。また、パッド10に所定の機能(例えば冷感や香り等)を付加する揮発性物質の揮発(流出)を適度に抑制でき、パッド10の使用中に揮発性物質の機能が発揮される。
【0076】
同様に、接着領域2は、一対の溶着領域R50の一方とだけ重なっていたり、溶着領域R50の横方向の一部とだけ重なっていたりしてもよい。しかし、好ましくは、一対の溶着領域R50の両方において、溶着領域R50の横方向の全域に亘り連続して接着領域2が設けられているとよい。
そうすることで、溶着領域R50において包装材20がより強固に接合され、個包装体1の密閉性が高まり、また、意図しない開封が生じてしまうことを抑制できる。
【0077】
また、図示しないが、溶着領域R50や止着テープ3の位置に応じて接着領域2を断続的に形成する場合、それらの位置を考慮して(例えば、カメラ等で観察したり、タイミングを図ったりする等して)、接着領域2を包装材20に形成する必要がある。それに比べて、図1に示すように、個包装体1の横方向の一方側端から他方側端に亘り連続して接着領域2を形成する場合には、溶着領域R50等の位置を考慮する必要がなく、個包装体1の製造工程を容易にすることができる。
【0078】
ただし、上記に限定されることなく、例えば、個包装体1は、接着領域2を有さずに、止着テープ3が設けられているだけでもよいし、接着領域2と止着テープ3の両方を有さなくてもよい。
【0079】
また、個包装体1が内部に備える揮発性物質は、パッド10を構成する資材、及び、包装材20の内側面のうちの、少なくとも一方に、塗工されていることが好ましい。本実施形態では、パッド10を構成する資材に、冷感剤71及び香料72が塗工されている。また、パッド10を構成する資材を接着したり、ずれ止め用粘着部18を形成したり、包装材20に剥離シート60を固定する固定部61を形成したりするホットメルト接着剤も各資材に塗工されている。
【0080】
このように、揮発性物質がパッド10や包装材20に塗工されていることで、例えば個包装体1が折り畳まれる際等に揮発性物質が封入されるだけの場合に比べて、パッド10や包装材20から徐々に揮発性物質が揮発するため、揮発性物質の持続性が高まる。よって、揮発性物質が個包装体1の内圧を高めることによる、湿った空気の流入を抑制する効果も持続する。その結果、個包装体1の流通期間や保管期間が長い場合にも、パッド10の吸収性能の低下を抑制できる。
【0081】
また、冷感剤として、メントングリセリンアセタールが知られている。本実施形態では、個包装体1の内部に含まれる揮発性物質として、メントングリセリンアセタール(MGA)よりも揮発性が高い冷感剤71(例えば、メンソール、乳酸メンチル等)を採用する。
そうすることで、個包装体1がMGAを含む場合に比べて、比較的に早い段階から揮発性物質の揮発が進み、個包装体1の内圧を高めることができ、湿った空気の流入を抑制できる。よって、パッド10の使用前に吸収性能が低下してしまうことを抑制できる。
【0082】
しかし、上記とは逆に、個包装体1の内部に含まれる揮発性物質として、メントングリセリンアセタール(MGA)よりも揮発性が低い物質(例えば、温感剤として利用されるバニリルブチルエーテル(VBE)等)を採用してもよい。
そうすることで、個包装体1がMGAを含む場合に比べて、揮発性物質の持続性が高まり、湿った空気の流入を抑制する効果も持続する。その結果、個包装体1の流通期間や保管期間が長い場合にも、パッド10の吸収性能の低下を抑制できる。
【0083】
なお、個包装体1の内部に含まれる揮発性物質であり、MGAよりも揮発性が低い又は高い物質は、冷感剤であってもよいし、別の機能を有する物質(例えば香料や接着剤等)であってもよい。また、MGAよりも揮発性が高い物質と揮発性が低い物質の両方を採用してもよい。
【0084】
また、個包装体1の内部に含まれる揮発性物質は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。複数種類である場合、別の機能を発揮する物質(例えば冷感剤と香料)であってもよいし、同じ機能を発揮する物質(例えば2種類の冷感剤)であってもよい。好ましくは、個包装体1の内部に、揮発性の異なる2種類の揮発性物質(別の機能を発揮する2種類であっても、同じ機能を発揮する2種類であってもよい)が含まれているとよい。そうすることで、揮発性の高い物質によって、比較的に早い段階から個包装体1の内圧を高めて湿った空気の流入を抑制でき、揮発性の低い物質によって、個包装体1の内圧を高めて湿った空気の流入を抑制する効果を持続させることができる。
【0085】
また、既述の通り、溶着領域R50は、溶着領域R50の横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで連続する非溶着領域R51を有するが、その非溶着領域R51は、図6Aに示すように、横方向に沿って(直線的に)連続していることが好ましい。
【0086】
つまり、溶着領域R50の横方向の全域に亘り、縦方向の位置が揃った非溶着領域R51が存在することが好ましい。そうすることで、個包装体1の内部の気体、特に揮発性物質(冷感剤71や香料72等)が、溶着部50に衝突せずに横方向にスムーズに流出できる。よって、個包装体1の内部の気体(揮発性物質)を適度に放出させることができ、個包装体1の膨張及び破裂を抑制できる。
【0087】
ただし、上記に限定されることなく、例えば、図6Bに示すように、個包装体1の横方向に並ぶ溶着部50の縦方向の位置がずれて、千鳥状に配置されていてもよい。この場合にも、気体(揮発性物質71,72)は、非溶着領域R51を通って横方向に移動する際に、溶着部50に衝突したら、その溶着部50の縦方向の両側の非溶着領域R51を通過しながら、外部に流出できる。つまり、非溶着領域R51は、縦方向に蛇行しながら、溶着領域R50の横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで連続していてもよい。その場合にも、個包装体1の膨張及び破裂を抑制できる。
【0088】
また、図6Aに示すように、横方向に沿って連続する非溶着領域R51の縦方向の長さL2(すなわち溶着部50が縦方向に並ぶ間隔L2)は、その非溶着領域R51と縦方向の一方側(上側又は下側)に隣接する溶着部50の縦方向の長さL1の1/2の長さよりも長いことが好ましい(L2>L1/2)。より好ましくは、非溶着領域R51の縦方向の長さL2は、溶着部50の縦方向の長さL1以上であるとよい(L2≧L1)。
そうすることで、非溶着領域R51(気体の通り道)の縦方向の長さL2が小さくなり過ぎて、気体(揮発性物質71,72)が流出し難くなってしまうことを防止できる。つまり、気体を個包装体1の外部に適度に流出させることができ、個包装体1の膨張及び破裂を抑制できる。ただし、上記に限定されない。例えば、非溶着領域R51の縦方向の長さL2は、溶着領域R50が有する複数の溶着部50の中の最小の縦方向の長さL1の1/2の長さよりも長くてもよい。
【0089】
一方で、非溶着領域R51の縦方向の長さL2は、その非溶着領域R51と縦方向の一方側(上側又は下側)に隣接する溶着部50の縦方向の長さL1の3倍以下であることが好ましく、より好ましくは長さL1の2倍以下であるとよい。
そうすることで、非溶着領域R51の縦方向の長さL2が溶着部50の縦方向の長さL1の3倍よりも大きい場合に比べて、非溶着領域R51(気体の通り道)の縦方向の長さL2が大きくなり過ぎることがなく、外部から湿った空気が流入しやすくなってしまうことを防止でき、パッド10の吸収性能を確保できる。また、パッド10に所定の機能を付加する揮発性物質(例えば冷感剤71や香料72等)の揮発(揮発した気体の流出)を適度に抑制でき、パッド10の使用中に揮発性物質を機能させることができる。ただし、上記に限定されない。例えば、非溶着領域R51の縦方向の長さL2は、溶着領域R50が有する複数の溶着部50の中の最大の縦方向の長さL1の3倍以下であってもよい。
【0090】
また、一対の溶着領域R50の少なくとも一方にて、当該溶着領域R50に設けられている溶着部50の合計面積は、当該溶着領域R50の面積の1/2の面積よりも小さいことが好ましい。つまり、溶着領域R50の半分以上の領域が、非溶着領域(溶着部50以外の領域)であるとよい。そうすることで、非溶着領域が溶着領域R50の半分未満である場合に比べて、非溶着領域から気体(揮発性物質71,72)を外部に適度に流出させることができ、個包装体1の膨張及び破裂を抑制することができる。
【0091】
具体的に、本実施形態では、溶着部50の縦方向の長さL1を0.3mm~0.7mm程度とし、非溶着領域R51の縦方向の長さL2を0.5mm~1.4mm程度とする。ただし、溶着部50や非溶着領域R51のサイズは特に限定されるものではない。
また、図6A及び図6Bに例示する溶着部50の形状、数、配置位置は一例であり、これに限定されない。例えば、溶着部50の形状は正方形に限らず、円形、楕円形、長方形等の種々の形状を採用できる。また、縦方向に複数の溶着部50が並ぶ溶着部50の列の数は5つに限らず、1つ以上であればよい。
【0092】
また、図6Aでは、溶着領域R50内において、同一の形状及びサイズである溶着部50が、所定の間隔おきに並んでいるが、これに限らない。例えば、溶着領域R50が複数種類の形状やサイズである溶着部50を有していてもよいし、溶着部50の配置間隔(すなわち非溶着領域R51の縦方向の長さ)が一定でなくてもよい。
そのため、溶着領域R50の横方向の一方側の端縁から他方側の端縁まで横方向に沿って連続する非溶着領域R51が、溶着領域R50内に少なくとも1つ設けられていればよく、その場合には、上記の効果が得られる。
また、溶着領域R50の中に、隣接する溶着部50の縦方向の長さL1の1/2の長さよりも縦方向の長さL2が長い非溶着領域R51や、隣接する溶着部50の縦方向の長さL1の2~3倍以下の縦方向の長さL2である非溶着領域R51が、少なくとも1つ設けられていればよく、その場合には、上記の効果が得られる。
【0093】
また、パッド10において、吸収性コア(第1吸収性コア31及び第2吸収性コア41)よりも肌側に、油剤が配置されていることが好ましい。例えば、図8に示す変形例のパッド10では、表面シート11を介して視認可能な図柄が、中間シート12に印刷されており、中間シート12に油剤として印刷用インクPIが設けられている。その他、吸収性コア31,41よりも肌側の表面シート11や中間シート12に、液透過性を制御する油剤を塗工して油剤の層を形成してもよい。そのような油剤としては、モノ・ジ・トリーグリセリド、脂肪酸等のエステル、ワセリン等の炭化水素、ステアリルアルコール等の高級アルコール等の油剤を例示できる。
【0094】
吸収性コア31,41よりも肌側に油剤が設けられていることで、個包装体1の内部に流入した湿った空気が、油剤の層を透過し難くなり、吸収性コア31,41まで到達し難くなる。よって、吸収性コア31,41が含有する吸水性樹脂が、湿った空気の水分を吸収してしまうことを抑制でき、パッド10の吸収性能を確保できる。また、油剤の層によって、冷感剤71等の揮発性物質が直接的に着用者に接触し難くなり、着用者への刺激を軽減できる。
【0095】
また、包装材20の外側面の方が、包装材20の内側面に比べて、平滑性が低いとよい。この場合、包装材20の外側面の凹凸が大きく、摩擦係数が高くなる。そのため、個包装体1の流通時や使用者が持ち運ぶ際に、個包装体1の動きを軽減できる。その結果、包装材20の開封端部20aのめくれや意図しない開封を防ぎ、個包装体1の内部への湿った空気の流入を抑制できるため、パッド10の吸収性能が確保される。
【0096】
しかし、上記とは逆に、包装材20の内側面の方が、包装材20の外側面に比べて、平滑性が低くてもよい(摩擦係数が高くてもよい)。この場合、包装材20の内側面の凹凸が大きくなるため、その凹み部に揮発性物質(揮発した気体)が充満しやすくなる。このように個包装体1の外部に近い空間において揮発性物質が充満していることで、個包装体1の内部への湿度の流入をより抑制でき、パッド10の吸収性能が確保される。
【0097】
なお、包装材20の平滑性の大小は、包装材20の両面の静摩擦係数に基づいて判断できる。静摩擦係数は、JIS P8147 (b)水平法に従って測定することができる。静摩擦係数の測定に当たっては、水平板用の試験片としてJIS L0803で規定される摩擦用綿布「交織3号(かなきん3号)」を用い、おもり用試験片として低摩擦部材を用いる。
【0098】
また、パッド10は、その厚さ方向の少なくとも一部が凹んだ凹み部を有することが好ましい。本実施形態のパッド10は、図3に示すように、パッド10が厚さ方向に圧搾された圧搾部19を有する。圧搾部19は、少なくとも吸収性コア31,41の一部が圧搾されていればよく、本実施形態の圧搾部19は、表面シート11から第2吸収体40にかけて肌側から圧搾されている。そうすることで、吸収性コア31,41のヨレを抑制でき、排泄液の拡散性が高まる。
また、凹み部は、圧搾部19に限らず、吸収性コア31,41を構成する資材の坪量(g/m)が周囲に比べて低い低坪量部やスリットであってもよい。本実施形態のパッド10は、図5に示すように、第1吸収性コア31がスリット34を有する。
【0099】
パッド10が凹み部(圧搾部19やスリット34)を有することで、その凹み部に揮発性物質が充満しやすく、吸収性コア31,41の周囲が揮発性物質で満たされることにより、吸収性コア31,41の周囲に湿った空気が流入し難くなる。その結果、吸収性パッド10の吸収性能が確保される。
【0100】
また、図3に示すように、パッド10が有する凹み部は、本実施形態の圧搾部191のように、長手方向に延存し、横方向におけるパッド10の両側部にそれぞれ設けられていることが好ましい。
そうすることで、パッド10の横方向の両側部の圧搾部191に揮発性物質が充満しやすく、パッド10の横方向の中央部に湿った空気が流入し難くなる。その結果、排泄液が最も排泄されるパッド10の横方向の中央部において、その吸収性能が確保される。
さらに、パッド10は、長手方向の両端部において、横方向に延在する一対の圧搾部192が設けられている。そのため、圧搾部192に揮発性物質が充満しやすく、パッド10の縦方向の中央部に湿った空気が流入し難くなる。その結果、排泄液が最も排泄されるパッド10の縦方向の中央部においても、その吸収性能が確保される。
ただし、圧搾部19等の凹み部の形状は、上記に限定されない。
【0101】
また、パッド10は、吸水性樹脂(ここでは高吸収性ポリマー)を備える吸収性コア31,41よりも肌側、及び、非肌側のうちの、少なくとも一方側において、セルロース系繊維(例えばパルプ繊維等)を含有する資材を有することが好ましい。例えば、本実施形態のパッド10では、第2肌側コアラップ42及び第2非肌側コアラップ43が、セルロース系繊維を含有するティッシュとする。
セルロース系繊維は、吸水性樹脂に比べて、吸水量や保水量は劣るが、液体の吸収速度が速い。そのため、吸収性コア31,41よりも厚さ方向の外側に、セルロース系繊維が設けられていることで、そのセルロース系繊維が湿った空気の水分を吸収しやすくなる。よって、吸収性コア31,41に湿った空気が流入し難くなり、パッド10の吸収性能が確保される。
【0102】
また、図3に示すように、パッド10の外周縁部の少なくとも一部において、吸収性コア31,41よりも肌側に位置する肌側シート(ここでは表面シート11や第1サイドシート13等)と、吸収性コア31,41よりも非肌側に位置する非肌側シート(ここではバックシート16等)が溶着されて、ラウンドシール部1Rが形成されていることが好ましい。
ラウンドシール部1Rでは、周囲に比べて、パッド10の厚みが薄くなり、包装材20との間に空間が形成されやすい。その空間、すなわち個包装体1の外部に近い、パッド10の周囲の空間に、揮発性物質が充満しやすく、パッド10の内部に湿った空気が流入し難くなる。その結果、パッド10の吸収性能が確保される。
【0103】
また、図1に示すように、横方向の一方側の溶着領域R50の内側端から、横方向の一方側におけるパッド10の端までの横方向の長さX1と、横方向の他方側の溶着領域R50の内側端から、横方向の他方側におけるパッド10の端までの横方向の長さX2と、の合計値を「X1+X2」とする。この合計値X1+X2は、横方向におけるパッド10の最大長さX3よりも短いことが好ましい(X1+X2<X3)。
そうすることで、パッド10と溶着領域R50の間の空間が大きくなり過ぎず、その空間に揮発性物質が充満しやすくなる。その結果、個包装体20の内部に湿った空気が流入し難くなり、パッド10の吸収性能が確保される。
【0104】
また、本実施形態の個包装体1では、図4に示すように、パッド10と包装材20の間に、剥離シート60が設けられ、パッド10は、肌側面を内側にして、すなわち剥離シート60が外側となるように、折り畳まれている。
そのため、剥離シート60によってパッド10の内部への湿った空気の流入を抑制でき、パッド10の内部の吸水性樹脂が湿った空気の水分を吸収し難くなり、パッド10の吸収性能を確保できる。ただし、上記に限らず、包装材20の内側面に剥離加工を施す等して包装材20にパッド10を直接貼り付けてもよい。
【0105】
また、個包装体1の内部に含まれる揮発性物質の一部は、マイクロカプセルに内包されていることが好ましい。マイクロカプセルは、直径1~1,000μmの大きさを有し、芯材に揮発性物質(例えば冷感剤71や香料72等)を内包する空間を有するカプセルである。マイクロカプセルは、水(汗や尿等の液体)と接することにより崩壊して揮発性物質を放出するものであってもよいし、物理的な圧力(衝撃、摩擦)により揮発性物質を放出するものであってもよい。なお、カプセルの外観形状は特に制限されず、例えば、球形、不定形等の外観形状が挙げられる。また、カプセルは、芯材を保持する空間を1つ有する単核型であっても、芯材を保持する空間を複数有する多核型であってもよい。
【0106】
マイクロカプセルに揮発性物質の一部が内包されていることで、マイクロカプセルに内包されていない揮発性物質が、比較的に早い段階から揮発して、個包装体1の内圧を高めることができ、湿った空気の流入を抑制できる。一方、マイクロカプセルに内包されている揮発性物質は、比較的に遅い段階で揮発し、個包装体1の内圧を高めることができるので、湿った空気の流入を抑制する効果が持続する。ただし、上記に限定されず、揮発性物質はマイクロカプセルに内包されていなくてもよい。
【0107】
===個包装体1のパッケージ90について===
図9A及び図9Bは、個包装体1の厚みの変化の測定方法の説明図である。図10A図10Cは、パッケージ90の厚みの変化の測定方法の説明図である。個包装体1は、図10Aに示すように、1個又は複数個毎に袋体91に収容された個包装体1のパッケージ90として流通してもよい。パッケージ90では、袋体91の内部において、複数の個包装体1は、その厚さ方向に積層されて収容されている。パッケージ90において、複数の個包装体1が並ぶ方向を積層方向(所定方向)と呼ぶ。なお、図10Aに示す個包装体1の積層の仕方は一例であり、これに限定されず、例えば、個包装体が積層したものが2列ではなく、1列であってもよい。
【0108】
個包装体1の内部には揮発性物質が含まれるため、個包装体1から流出した揮発性物質は、パッケージ90の袋体91の内部に充満する。そのため、袋体91の内圧が高まり、袋体91の内部に湿った空気が流入し難く、その結果、個包装体1の内部にも湿った空気が流入し難く、パッド10の吸収性能が確保される。ただし、袋体91の内部に揮発性物質が充満し過ぎると、袋体91が膨張し、破裂してしまうので、袋体91は、揮発性物質を放出する開口部を有するとよい。例えば、使用者が袋体91を開封するためのミシン目92(間欠的な開口部)を有するとよい。そうすることで、使用者が袋体91を開封し易くなるだけではなく、ミシン目92の開口部から揮発性物質を袋体91の外部に放出でき、袋体91の膨張を抑制できる。なお、揮発性物質を外部に放出する開口部は、ミシン目92に限らず、例えば、袋体91の開封のきっかけとなる切欠き部等であってもよいし、袋体91の開封のきっかけとなる部位とは別に設けられた開口部であってもよい。
【0109】
さらに、個包装体1とパッケージ90について、自然状態のときと加圧したときの厚みの変化率を比較した場合に、パッケージ90よりも個包装体1の方が厚みの変化率が大きいことが好ましい。
具体的には、図9Aに示すように、自然状態(加圧されていない状態)の個包装体1の厚さ方向の長さをt1とし、図9Bに示すように、個包装体1を積層方向に1000N/mの力で加圧したときとの個包装体1の厚さ方向の長さをt2とする。この場合、厚みの変化を自然状態(初期状態)での厚みで除した値「(t1-t2)/t1」を、個包装体1の厚みの変化率とする。
同様に、図10Bに示すように、自然状態(加圧されていない状態)のパッケージ90の積層方向の長さをT1とし、図10Cに示すように、パッケージ90を積層方向に1000N/mの力で加圧したときとのパッケージ90の積層方向の長さをT2とする。この場合、厚みの変化を自然状態(初期状態)での厚みで除した値「(T1-T2)/T1」を、パッケージ90の厚みの変化率とする。
【0110】
パッケージ90の厚みの変化率よりも、個包装体1の厚みの変化率の方が大きい、つまり、「(T1-T2)/T1<(t1-t2)/t1」であるということは、個包装体1の方が、パッケージ90よりも、内部の気体が流出しやすいといえる。揮発性物質を直接含む個包装体1の方が、パッケージ90よりも、揮発性物質により膨張して破裂する恐れが高い。そのため、個包装体1の方が、パッケージ90よりも、揮発性物質を外部に逃がし易くすることで、個包装体1の膨張をより確実に抑制できる。逆に、パッケージ90では、不要にミシン目92の開口部を大きくする等しなくとも、パッケージ90の膨張の恐れが少ない。そのため、ミシン目92の開口部を出来る限り小さくでき、その結果、外部から湿った空気が流入し難くなり、パッド10の吸収性能がより確保される。
【0111】
個包装体1とパッケージ90の厚みの測定方法は以下とする。
まず、個包装体1の厚さ方向に直交する平面、及び、パッケージ90の積層方向に直交する平面よりも大きいアクリル板80と重り81を準備する。アクリル板80と重り81の重さの合計で、個包装体1及びパッケージ90に1000N/mの力が加わるように調整する。
次に、図9Aに示すように、水平な試験台の上に、個包装体1の平面が沿うように個包装体1を載置する。自然状態の個包装体1の厚み(最大厚み)t1を、定規等を用いて測定する。その後、図9Bに示すように、個包装体1の上面にアクリル板80を載せ、アクリル板80の上に重り81を載せる。そうして、個包装体1の平面全域に力が掛かるようにしてから10秒後に、個包装体1の厚み(最大厚み)t2を測定する。測定した厚みt1,t2に基づいて、個包装体1の厚みの変化率を算出する。
同様に、図10Bに示すように、水平な試験台の上に、パッケージ90の積層方向が鉛直方向となるようにパッケージ90を載置し、自然状態のパッケージ90の厚み(最大厚み)T1を測定する。なお、パッケージ90の厚みは、個包装体1が配置されている部分の厚みとする。その後、図10Cに示すように、パッケージ90の上面にアクリル板80と重り81を載せてから10秒後に、パッケージ90の厚み(最大厚み)T2を測定する。測定した厚みT1,T2に基づいて、パッケージ90の厚みの変化率を算出する。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
1 個包装体(吸収性物品包装体)、
2 接着領域、3 止着テープ、
10 パッド(吸収性物品)
11 表面シート、12 中間シート、13 第1サイドシート、
14 糸ゴム、15 第2サイドシート、16 バックシート、
18 ずれ止め用粘着部、
20 包装材、
30 第1吸収体、31 第1吸収性コア、
32 第1肌側コアラップ、33 第1非肌側コアラップ、
40 第2吸収体、41 第2吸収性コア、
42 第2肌側コアラップ、43 第2非肌側コアラップ、
50 溶着部、
R50 溶着領域、R51 非溶着領域、
60 剥離シート、61 固定部、
71 冷感剤(揮発性物質)、72 香料(揮発性物質)、
80 アクリル板、81 重り、
90 (吸収性物品包装体の)パッケージ、
91 袋体
PI 印刷用インク(油剤)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10