(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002793
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231228BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20231228BHJP
H05B 3/68 20060101ALI20231228BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05B3/10 C
H05B3/68
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102210
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内山 彩
【テーマコード(参考)】
3K092
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB31
3K092QB43
3K092RF03
3K092RF09
3K092RF17
3K092RF22
3K092SS12
3K092SS14
3K092VV31
5F004BB22
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA02
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】絶縁層の剥離を抑制可能な基板固定装置を提供すること。
【解決手段】本基板固定装置は、ベースプレートと、接着層を介して前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、前記発熱部上に設けられ、吸着対象物を吸着保持する静電チャックと、を有し、前記発熱部は、一方の面が前記静電チャックと接する第1絶縁層と、前記第1絶縁層の他方の面に配置された発熱体と、前記第1絶縁層の他方の面に積層され、前記発熱体を被覆する第2絶縁層と、を含み、前記ベースプレート、前記接着層、及び前記第2絶縁層を貫通し、前記発熱体の一部を露出する貫通孔が設けられ、前記第2絶縁層のガラス転移温度は、前記第1絶縁層のガラス転移温度よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
接着層を介して前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられ、吸着対象物を吸着保持する静電チャックと、を有し、
前記発熱部は、
一方の面が前記静電チャックと接する第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の他方の面に配置された発熱体と、
前記第1絶縁層の他方の面に積層され、前記発熱体を被覆する第2絶縁層と、を含み、
前記ベースプレート、前記接着層、及び前記第2絶縁層を貫通し、前記発熱体の一部を露出する貫通孔が設けられ、
前記第2絶縁層のガラス転移温度は、前記第1絶縁層のガラス転移温度よりも高い、基板固定装置。
【請求項2】
前記第2絶縁層のガラス転移温度は、300℃以上である、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記第2絶縁層の材料は、ポリイミド系樹脂又はシリコーン系樹脂である、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記第1絶縁層の材料は、エポキシ系樹脂である、請求項3に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記第2絶縁層の厚さは、前記第1絶縁層の厚さよりも厚い、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の少なくとも一方に伝熱シートが内蔵された、請求項1乃至5の何れか一項に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記伝熱シートはグラファイトシートである、請求項6に記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体装置を製造する際に使用される成膜装置(例えば、CVD装置やPVD装置等)やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックにより吸着対象物であるウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。基板固定装置は、例えば、ウェハの温度調節をするための発熱体と、発熱体を被覆する絶縁層とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発熱体を被覆する絶縁層が300℃程度の高温にさらされる場合があり、その場合、絶縁層が劣化して剥離するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、絶縁層の剥離を抑制可能な基板固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本基板固定装置は、ベースプレートと、接着層を介して前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、前記発熱部上に設けられ、吸着対象物を吸着保持する静電チャックと、を有し、前記発熱部は、一方の面が前記静電チャックと接する第1絶縁層と、前記第1絶縁層の他方の面に配置された発熱体と、前記第1絶縁層の他方の面に積層され、前記発熱体を被覆する第2絶縁層と、を含み、前記ベースプレート、前記接着層、及び前記第2絶縁層を貫通し、前記発熱体の一部を露出する貫通孔が設けられ、前記第2絶縁層のガラス転移温度は、前記第1絶縁層のガラス転移温度よりも高い。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、絶縁層の剥離を抑制可能な基板固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図4】第2実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図6】第2実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[基板固定装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、発熱部30と、静電チャック40とを有している。
【0011】
ベースプレート10は、発熱部30や静電チャック40を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~50mm程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック40上に吸着されたウェハに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0012】
ベースプレート10の内部に、冷媒流路15が設けられていてもよい。冷媒流路15は、一端に冷媒導入部15aを備え、他端に冷媒排出部15bを備えている。冷媒流路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷媒制御装置(図示せず)に接続されている。冷媒制御装置(図示せず)は、冷媒導入部15aから冷媒流路15に冷媒(例えば、冷却水やガルデン等)を導入し、冷媒排出部15bから冷媒を排出する。冷媒流路15に冷媒を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック40上に吸着されたウェハを冷却することができる。
【0013】
ベースプレート10の内部に、静電チャック40に吸着保持されるウェハを冷却するガスを供給するガス供給部が設けられていてもよい。ガス供給部は、例えば、ベースプレート10の内部に形成された孔である。ガス供給部に、例えば、基板固定装置1の外部から不活性ガス(例えば、HeやAr等)を導入することで、静電チャック40に吸着保持されるウェハを冷却できる。
【0014】
発熱部30は、接着層20を介して、ベースプレート10上に設けられている。接着層20は、例えば、第1層21及び第2層22の2層構造とすることができる。第1層21及び第2層22としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。第1層21及び第2層22のそれぞれの厚さは、例えば、1mm程度とすることができる。第1層21及び第2層22の熱伝導率は2W/mK以上とすることが好ましい。接着層20は、1層から形成してもよいが、熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることで、アルミニウム製のベースプレートとの熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。
【0015】
発熱部30は、第1絶縁層31と、発熱体32と、第2絶縁層33とを有している。第1絶縁層31は、上面が静電チャック40の基体41の下面と接するように配置されている。発熱体32は、第1絶縁層31の下面に配置されており、第1絶縁層31により基体41の下面に接着されている。第2絶縁層33は、第1絶縁層31の下面に積層され、発熱体32の下面及び側面を被覆している。なお、基板固定装置1には、ベースプレート10、接着層20、及び発熱部30の第2絶縁層33を貫通し、発熱部30の発熱体32の下面の一部を露出する複数の貫通孔10xが設けられている。各々の貫通孔10xは、貫通孔10x内に露出する発熱体32に、線材をはんだ付けする際に、線材の通路として用いることができる。
【0016】
第1絶縁層31としては、発熱体32と基体41との接着性に優れた絶縁樹脂を用いることが好ましい。具体的には、第1絶縁層31の材料として、例えば、エポキシ系樹脂を用いることができる。また、第1絶縁層31の熱伝導率は、3W/mK以上とすることが好ましい。第1絶縁層31にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、第1絶縁層31の熱伝導率を向上させることができる。第1絶縁層31のガラス転移温度(Tg)は、例えば、150~200℃程度とすることができる。また、第1絶縁層31の厚さは、例えば、60~100μm程度とすることが好ましく、第1絶縁層31の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0017】
発熱体32としては、圧延合金を用いることが好ましい。圧延合金を用いることにより、発熱体32の厚さのばらつきを低減することが可能となり、発熱分布を改善することができる。なお、発熱体32は、必ずしも発熱部30の厚さ方向の中央部に内蔵される必要はなく、要求仕様に応じて発熱部30の厚さ方向の中央部よりもベースプレート10側又は静電チャック40側に偏在してもよい。
【0018】
発熱体32の比抵抗は、10~70μΩ・cmであることが好ましく、10~50μΩ・cmであることが更に好ましい。従来の基板固定装置では、比抵抗が100μΩ・cm程度であるNiCr系の発熱体を使用していたため、20~50Ωの配線設計をした場合、配線幅1~2mm、厚さ50μm程度となり、発熱体のパターンのファイン化が困難であった。発熱体32の比抵抗をNiCr系の発熱体の比抵抗よりも低い10~70μΩ・cmとすることにより、上記と同様の20~50Ωの配線設計をした場合、従来よりも発熱体32のパターンのファイン化が可能となる。なお、比抵抗が10μΩ・cmよりも小さいと発熱性が低下するため好ましくない。
【0019】
発熱体32に用いると好適な具体的な圧延合金としては、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン (Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等を挙げることができる。なお、CN49(コンスタンタン)の比抵抗は約50μΩ・cm、ゼラニンの比抵抗は約29μΩ・cm、マンガニンの比抵抗は約44μΩ・cmである。発熱体32の厚さは、エッチングによる配線形成性を考慮し、60μm以下とすることが好ましい。
【0020】
なお、発熱体32と第1絶縁層31との高温下での密着性を向上するため、発熱体32の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)が粗化されていることが好ましい。もちろん、発熱体32の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、発熱体32の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0021】
第2絶縁層33としては、耐熱性に優れた絶縁樹脂を用いることが好ましい。基板固定装置1を使用する際の温度条件が高温側にシフトする傾向があると共に、貫通孔10xを介して発熱体32に線材をはんだ付けする際の温度が300℃以上になることもあるためである。具体的には、第2絶縁層33の材料として、例えば、ポリイミド系樹脂やシリコーン系樹脂を用いることができる。第2絶縁層33のガラス転移温度は、第1絶縁層31のガラス転移温度よりも高い。第2絶縁層33のガラス転移温度は、300℃以上とすることが好ましい。第2絶縁層33のガラス転移温度が300℃以上であれば、基板固定装置1を300℃以下の高温環境下で使用でき、かつ発熱体32に線材をはんだ付けする際の温度にも耐えられる。そのため、基板固定装置1において、高温により第2絶縁層33が劣化して第1絶縁層31から剥離することを抑制可能となる。
【0022】
なお、第1絶縁層31のガラス転移温度が第2絶縁層33のガラス転移温度より低くてよい理由は、第1絶縁層31は300℃程度の高温に直接さらされることがないからである。そのため、第1絶縁層31の材料は、耐熱性よりも基体41との接着性を優先して選択することが好ましい。また、応力緩和の機能を持たせるため、第1絶縁層31の材料として、第2絶縁層33よりも弾性率の低い材料を選択することが好ましい。
【0023】
第2絶縁層33の熱伝導率は、3W/mK以上とすることが好ましい。第2絶縁層33にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、第2絶縁層33の熱伝導率を向上させることができる。また、第2絶縁層33の厚さは、発熱体32の埋め込み性を向上する観点から、第1絶縁層31よりも厚いことが好ましい。第2絶縁層33の厚さは、例えば、100~200μm程度とすることが好ましく、第2絶縁層33の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0024】
静電チャック40は、発熱部30上に設けられている。静電チャック40は、吸着対象物であるウェハを吸着保持する部分である。静電チャック40の平面形状は、例えば、円形である。静電チャック40の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチである。なお、平面視とは対象物を基体41の上面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基体41の上面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0025】
静電チャック40は、発熱部30上に設けられている。静電チャック40は、基体41と、静電電極42とを有している。静電チャック40は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック40は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0026】
基体41は誘電体であり、基体41としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体41の厚さは、例えば、1~10mm程度、基体41の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度とすることができる。静電チャック40と発熱部30の第1絶縁層31とは直接接合されている。発熱部30と静電チャック40とを接着剤を介すことなく直接接合することにより、基板固定装置1の耐熱温度を向上することができる。発熱部30と静電チャック40とを接着剤で接合する従来の基板固定装置の耐熱温度は150℃程度であるが、基板固定装置1では耐熱温度を200℃程度とすることができる。
【0027】
静電電極42は、薄膜電極であり、基体41に内蔵されている。静電電極42は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力が発生し、静電チャック40上にウェハを吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極42に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極42は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極42の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0028】
[基板固定装置の製造方法]
図2及び
図3は、第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図である。
図2及び
図3を参照しながら、基板固定装置1の製造工程について、発熱部30の形成工程を中心に説明する。なお、
図2(a)~
図3(b)は、
図1とは上下を反転した状態で描いている。
【0029】
まず、
図2(a)に示す工程では、グリーンシートにビア加工を行う工程、ビアに導電ペーストを充填する工程、静電電極となるパターンを形成する工程、他のグリーンシートを積層して焼成する工程、表面を平坦化する工程等を含む周知の製造方法により、基体41に静電電極42を内蔵する静電チャック40を作製する。なお、絶縁樹脂フィルム311との密着性を向上するために、静電チャック40の絶縁樹脂フィルム311がラミネートされる面にブラスト処理等を施し、粗化してもよい。
【0030】
次に、
図2(b)に示す工程では、静電チャック40上に、絶縁樹脂フィルム311を直接ラミネートする。絶縁樹脂フィルム311は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム311は、硬化させずに、半硬化状態(B-ステージ)としておく。半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311は静電チャック40上に仮固定される。絶縁樹脂フィルム311の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂を用いることができる。
【0031】
次に、
図2(c)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311上に金属箔321を配置する。金属箔321の材料としては、発熱体32の材料として例示した圧延合金を用いることができる。金属箔321の厚さは、エッチングによる配線形成性を考慮し、60μm以下とすることが好ましい。金属箔321は、半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311上に仮固定される。
【0032】
なお、絶縁樹脂フィルム311上に配置する前に、金属箔321の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)を粗化しておくことが好ましい。もちろん、金属箔321の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、金属箔321の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0033】
又、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の必要な領域を選択的に粗化することができる。そこで、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の全領域に対して粗化を行う必要はなく、最低限、発熱体32として残す領域に対して粗化を行えば足りる(つまり、エッチングで除去される領域に対してまで粗化を行う必要はない)。
【0034】
次に、
図2(d)に示す工程では、金属箔321をパターニングし、発熱体32を形成する。具体的には、例えば、金属箔321上の全面にレジストを形成し、レジストを露光及び現像し、発熱体32として残す部分のみを被覆するレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンに被覆されていない部分の金属箔321をエッチングにより除去する。金属箔321を除去するエッチング液としては、例えば、塩化第二銅エッチング液や塩化第二鉄エッチング液等を用いることができる。
【0035】
その後、レジストパターンを剥離液により剥離ことにより、絶縁樹脂フィルム311上の所定位置に発熱体32が形成される(フォトリソグラフィ法)。フォトリソグラフィ法により発熱体32を形成することにより、発熱体32の幅方向の寸法のばらつきを低減することが可能となり、発熱分布を改善することができる。なお、エッチングにより形成された発熱体32の断面形状は、例えば、略台形状とすることができる。この場合、絶縁樹脂フィルム311に接する面と、その反対面との配線幅の差は、例えば、10~50μm程度とすることができる。発熱体32の断面形状をシンプルな略台形状とすることにより、発熱分布を改善することができる。
【0036】
次に、
図3(a)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311上に、発熱体32を被覆する絶縁樹脂フィルム331をラミネートする。絶縁樹脂フィルム331は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム331の材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂やシリコーン系樹脂を用いることができる絶縁樹脂フィルム331の厚さは、発熱体32の埋め込み性を向上する観点から、絶縁樹脂フィルム311よりも厚いことが好ましい。
【0037】
次に、
図3(b)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311及び331を静電チャック40側に押圧しながら、絶縁樹脂フィルム311及び331を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより、発熱体32の周囲が第1絶縁層31及び第2絶縁層33に被覆された発熱部30が形成され、発熱部30の第1絶縁層31と静電チャック40とが直接接合される。常温に戻った時のストレスを考慮し、絶縁樹脂フィルム311及び331の加熱温度は、200℃以下とすることが好ましい。
【0038】
なお、絶縁樹脂フィルム311及び331を静電チャック40側に押圧しながら加熱硬化させることにより、発熱体32の有無の影響による第2絶縁層33の接着層20と接する側の面の凹凸を低減して平坦化することができる。第2絶縁層33の接着層20と接する側の面の凹凸は、7μm以下とすることが好ましい。第2絶縁層33の接着層20と接する側の面の凹凸を7μm以下とすることにより、次工程で第2絶縁層33と接着層20(第2層22)との間に気泡を巻き込むことを防止できる。つまり、第2絶縁層33と接着層20(第2層22)との間の接着性が低下することを防止できる。
【0039】
次に、
図3(c)に示す工程では、予め冷媒流路15等を形成したベースプレート10を準備し、ベースプレート10上に第1層21及び第2層22を順次積層して接着層20(未硬化)を形成する。そして、
図3(b)に示す構造体を上下反転させ、接着層20を介して、ベースプレート10上に配置し、接着層20を硬化させる。さらに、ベースプレート10、接着層20、及び発熱部30の第2絶縁層33を貫通し、発熱部30の発熱体32の下面の一部を露出する複数の貫通孔10xを形成する。これにより、ベースプレート10上に接着層20を介して発熱部30及び静電チャック40が順次積層された基板固定装置1が完成する。
【0040】
このように、第1実施形態に係る基板固定装置1では、発熱部30の絶縁層を接着性に優れた第1絶縁層31と耐熱性に優れた第2絶縁層33の積層構造としている。はんだ付け時に貫通孔10xを介して300℃程度の熱に直接さらされる部分となる第2絶縁層33を耐熱性の高い絶縁樹脂から構成することで、高温により第2絶縁層33が劣化して第1絶縁層31から剥離することを抑制できる。
【0041】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、発熱部に伝熱シートを内蔵する例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0042】
[基板固定装置の構造]
図4は、第2実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。なお、
図4では、ベースプレート10の上面と平行な平面に含まれる互いに直交する方向をX方向及びY方向、X方向及びY方向に垂直な方向(基板固定装置2の厚さ方向)をZ方向とする。
【0043】
図4を参照すると、基板固定装置2は、発熱部30が発熱部30Aに置換された点が基板固定装置1(
図1参照)と相違する。
【0044】
基板固定装置2の発熱部30Aにおいて、第1絶縁層31は伝熱シート34を内蔵し、第2絶縁層33は伝熱シート35を内蔵している。伝熱シート34及び35は、所定の間隙を空けて発熱体32を上下から挟むようにXY平面に略平行に配置されている。伝熱シート34と発熱体32との間隙には第1絶縁層31が充填され、伝熱シート35と発熱体32との間隙には第2絶縁層33が充填されている。
【0045】
伝熱シート34及び35としては、発熱部30Aの発する熱を均一化して拡散する(不均一な発熱状態の緩和を行う)素材であれば特に限定されないが、例えば、XY方向の熱伝導率:Z方向の熱伝導率=100以上:1のグラファイトシートを用いることができる。例えば、XY方向の熱伝導率を300W/mK以上、Z方向の熱伝導率を3W/mKとすることができる。単層のグラファイトシートの厚さは、例えば、40~50μm程度とすることができる。伝熱シート34及び35として、グラファイトシートに代えてグラフェンシート等の炭素シートを用いてもよい。
【0046】
なお、伝熱シート34及び35は、何れか一方のみを設けてもよい。すなわち、発熱部30Aにおいて、第1絶縁層31及び第2絶縁層33の少なくとも一方に伝熱シートが内蔵されていてもよい。
【0047】
[基板固定装置の製造方法]
図5及び
図6は、第2実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図である。
図5及び
図6を参照しながら、基板固定装置2の製造工程について、発熱部30Aの形成工程を中心に説明する。なお、
図5(a)~
図6(a)は、
図4とは上下を反転した状態で描いている。
【0048】
まず、
図5(a)に示す工程では、
図2(a)に示す工程と同様にして静電チャック40を作製後、静電チャック40上に、絶縁樹脂フィルム311、伝熱シート34、及び絶縁樹脂フィルム312を順次ラミネートする。絶縁樹脂フィルム311及び312は、硬化させずに、半硬化状態(B-ステージ)としておく。半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311は静電チャック40上に仮固定される。絶縁樹脂フィルム311及び312の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂を用いることができる。
【0049】
次に、
図5(b)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム312上に金属箔321を配置する。半硬化状態である絶縁樹脂フィルム312の粘着力により、金属箔321は絶縁樹脂フィルム312上に仮固定される。なお、必要に応じ、絶縁樹脂フィルム312上に配置する前に、金属箔321に粗化等の表面処理を施しておく。
【0050】
次に、
図5(c)に示す工程では、
図2(d)に示す工程と同様にして、金属箔321をパターニングし、発熱体32を形成する。
【0051】
次に、
図5(d)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム312上に、発熱体32を被覆する絶縁樹脂フィルム331、伝熱シート35、及び絶縁樹脂フィルム332を順次ラミネートする。絶縁樹脂フィルム331及び332の材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂やシリコーン系樹脂を用いることができる。
【0052】
次に、
図6(a)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311、312、331、及び332を静電チャック40側に押圧しながら、絶縁樹脂フィルム311、312、331、及び332を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより、発熱体32並びに伝熱シート34及び35の周囲が第1絶縁層31及び第2絶縁層33に被覆された発熱部30Aが形成され、発熱部30Aの第1絶縁層31と静電チャック40とが直接接合される。常温に戻った時のストレスを考慮し、絶縁樹脂フィルム311、312、331、及び332の加熱温度は、200℃以下とすることが好ましい。
【0053】
次に、
図6(b)に示す工程では、予め冷媒流路15等を形成したベースプレート10を準備し、ベースプレート10上に第1層21及び第2層22を順次積層して接着層20(未硬化)を形成する。そして、
図6(a)に示す構造体を上下反転させ、接着層20を介して、ベースプレート10上に配置し、接着層20を硬化させる。さらに、ベースプレート10、接着層20、並びに発熱部30の第2絶縁層33及び伝熱シート35を貫通し、発熱部30の発熱体32の下面の一部を露出する複数の貫通孔10xを形成する。これにより、ベースプレート10上に接着層20を介して発熱部30A及び静電チャック40が順次積層された、基板固定装置2が完成する。
【0054】
このように、第2実施形態に係る基板固定装置2では、平面方向(XY方向)に熱拡散性の高い伝熱シート34及び35を発熱部30Aに内蔵している。これにより、平面方向(XY方向)の熱拡散性を向上させ、発熱体32の断面積のばらつきによる影響を減らし、均熱性を向上することができる。
【0055】
なお、伝熱シート34及び35それぞれとして、複数枚のグラファイトシートの積層体を用いてもよい。例えば、含浸性を有し縦方向及び横方向への熱伝導性を阻害しない樹脂(例えば、ビスマレイミドトリアジン樹脂等)を介して、真空ホットプレス等により数層~数十層のグラファイトシートを積層し、グラファイトシートの積層体を形成することができる。グラファイトシートの積層体は、例えば、XY方向の熱伝導率を1500W/mK以上、Z方向の熱伝導率を8W/mKとすることができるため、単層のグラファイトシートを用いる場合と比べて、熱拡散を促進する効果を大幅に向上することができる。
【0056】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0057】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、2 基板固定装置
10 ベースプレート
10x 貫通孔
15 冷媒流路
15a 冷媒導入部
15b 冷媒排出部
20 接着層
21 第1層
22 第2層
30、30A 発熱部
31 第1絶縁層
32 発熱体
33 第2絶縁層
34、35 伝熱シート
40 静電チャック
41 基体
42 静電電極
50 シール部材
311、312、331、332 絶縁樹脂フィルム