(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002795
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】角栓除去補助剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20231228BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231228BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231228BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/00
A61K8/37
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102213
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山本 航平
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC332
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC401
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC792
4C083AD041
4C083BB05
4C083BB51
4C083CC07
4C083CC22
4C083DD27
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】本発明は、スクラブ剤等の研磨剤も粘着性シートも用いることなく、優れた毛穴洗浄効果が得られる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)アミノ酸系界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有する、角栓除去補助剤、及び、(A)アミノ酸系界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有する角栓除去補助剤を肌に適用する工程と、洗顔料で洗顔する工程と、を含む角栓除去方法により、角栓除去効果を向上できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミノ酸系界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有する、角栓除去補助剤。
【請求項2】
洗顔料による洗顔の前に用いる、請求項1に記載の角栓除去補助剤。
【請求項3】
容器内にためて、前記容器内で直接皮膚を浸漬する形態で用いられる、請求項1に記載の角栓除去補助剤。
【請求項4】
吸液性基材に含浸させた湿潤パックの形態で用いられる、請求項1に記載の角栓除去補助剤。
【請求項5】
前記(A)成分の含有量が0.025~5重量%である、請求項1に記載の角栓除去補助剤。
【請求項6】
前記(B)成分が、ジカルボン酸ビス(オキシアルキレンアルキルエーテル)エステル、ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステル、モノカルボン酸(オキシアルキレンアルキルエーテル)エステル、及びモノカルボン酸(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルよりなる群から選ばれる、請求項1に記載の角栓除去補助剤。
【請求項7】
前記ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルが、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び/又はコハク酸ビスエトキシジグリコールである、請求項6に記載の角栓除去補助剤。
【請求項8】
(A)アミノ酸系界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有する角栓除去補助剤を肌に適用する工程と、洗顔料で洗顔する工程と、を含む、角栓除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角栓除去補助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛穴に詰まった角栓は除去が容易でないため、美容上の大きな問題となっている。毛穴を洗浄又は角栓除去するための方法としては、一般的に、洗顔料の洗浄力を強める方法、及び粘着性シートを用いる方法に大別される。
【0003】
洗顔料の洗浄力を強める方法では、スクラブ剤等の研磨剤を配合した洗浄剤が用いられており、例えば、活性化ゼオライトと特定のアルコール類及びノニオン界面活性剤を組合わせて用いることで、水と混合したときに発熱する作用を利用して毛穴の中の皮脂を洗い流す技術(特許文献1)が挙げられる。
【0004】
粘着性シートを用いる方法の例としては、角栓除去用パック剤を、ポリビニルアルコール、炭素数4~18のアルキル基を有するアクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョンおよび水を含有するように構成する技術(特許文献2)、粘着シートを、所定厚の粘着剤層を備えさせ所定のモジュラス特性を有するように構成する技術(特許文献3)等が挙げられる。
【0005】
洗顔料の洗浄力を強める方法及び粘着性シートを用いる方法のいずれも皮膚への物理的刺激を与えるものであり、皮膚の負担が大きい。このため、肌への負担を考慮した毛穴洗浄剤についても検討されている。このような洗浄剤として、例えば、所定の多価アルコールの組み合わせと、多価アルコールの総量に対して所定量の水と、非イオン性界面活性剤とを皮膚洗浄料に配合する製剤技術(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-59455号公報
【特許文献2】特開平8-109119号公報
【特許文献3】特開平9-194325号公報
【特許文献4】特開2009-221121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、肌への物理的な負担を軽減するように構成した洗浄剤では、毛穴の洗浄効果は十分に得られない。つまり、これまでの毛穴の洗浄方法や角栓の除去方法では、肌への物理的な負担を軽減することと十分に毛穴を洗浄することとは本質的に両立できない。
【0008】
そこで本発明は、スクラブ剤等の研磨剤も粘着性シートも用いることなく、優れた毛穴洗浄効果が得られる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、アミノ酸系界面活性剤と両親媒性エステルとを組み合わせ、これを角栓除去において補助的に用いることで、スクラブ剤等の研磨剤も粘着性シートも用いることなく、優れた毛穴洗浄効果が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)アミノ酸系界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有する、角栓除去補助剤。
項2. 洗顔料による洗顔の前に用いる、項1に記載の角栓除去補助剤。
項3. 容器内にためて、前記容器内で直接皮膚を浸漬する形態で用いられる、項1又は2に記載の角栓除去補助剤。
項4. 吸液性基材に含浸させた湿潤パックの形態で用いられる、項1又は2に記載の角栓除去補助剤。
項5. 前記(A)成分の含有量が0.025~5重量%である、項1~4のいずれかに記載の角栓除去補助剤。
項6. 前記(B)成分が、ジカルボン酸ビス(オキシアルキレンアルキルエーテル)エステル、ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステル、モノカルボン酸(オキシアルキレンアルキルエーテル)エステル、及びモノカルボン酸(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルよりなる群から選ばれる、項1~5のいずれかに記載の角栓除去補助剤。
項7.前記ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルが、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び/又はコハク酸ビスエトキシジグリコールである、項6に記載の角栓除去補助剤。
項8. (A)アミノ酸系界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有する角栓除去補助剤を肌に適用する工程と、洗顔料で洗顔する工程と、を含む、角栓除去方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スクラブ剤等の研磨剤も粘着性シートも用いることなく、優れた毛穴洗浄効果が得られる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.角栓除去補助剤
本発明の角栓除去補助剤は、(A)アミノ酸系界面活性剤(以下、(A)成分と表記することがある)と(B)両親媒性エステル(以下、(B)成分と表記することがある)とを含有することを特徴とする。以下、本発明の角栓除去補助剤について詳述する。
【0013】
(A)アミノ酸系界面活性剤
本発明の角栓除去補助剤は、(A)成分としてアミノ酸系界面活性剤を含有する。アミノ酸系界面活性剤としては特に限定されないが、皮膚への刺激を抑制する観点から、好ましくはアミノ酸系アニオン性界面活性剤及びアミノ酸系両性界面活性剤が挙げられる。アミノ酸系界面活性剤としては、アミノ酸系アニオン性界面活性剤及びアミノ酸系両性界面活性剤のうちいずれか一方を使用してもよいし、両方を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明に使用されるアミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤及びスルホン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0015】
カルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ココイル基等の炭素数8~24の飽和又は不飽和のN-アシル基を有するN-アシルアミノ酸が挙げられる。カルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤におけるN-アシルアミノ酸としては、N-アシルサルコシン、N-アシルアスパラギン酸、N-アシルグルタミン酸、N-アシル-N-メチル-β-アラニン等が挙げられる。より具体的なカルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、N-ラウロイルサルコシン、ココイルサルコシン、N-ラウロイルアスパラギン酸、ココイルアスパラギン酸、アシル(C12,14)アスパラギン酸、N-ラウロイルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン、ココイルメチルアラニン等が挙げられる。
【0016】
スルホン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ココイル基等の炭素数8~24の飽和又は不飽和のN-アシル基を有するN-アシル-N-メチルタウリンが挙げられる。より具体的なスルホン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、N-ミリストイル-N-メチルタウリン、N-ラウロイル-N-メチルタウリン、ココイルメチルタウリン等が挙げられる。
【0017】
なお、これらのアミノ酸系アニオン性界面活性剤は、塩の形態であってもよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;トリエタノールアミン(TEA)塩;アンモニウム塩等の形態をとることができる。
【0018】
アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、上述のカルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤及びスルホン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤の中から1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
これらのアミノ酸系アニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これらのアミノ酸系アニオン性界面活性剤の中でも、角栓除去補助効果をより一層高める観点から、好ましくはココイルグルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸、ココイルメチルタウリン、アシル(C12,14)アスパラギン酸、及びこれらの塩が挙げられ、より好ましくは、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、アシル(C12,14)アスパラギン酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0021】
本発明に使用されるアミノ酸系両性界面活性剤としては、例えば、アミドベタイン型両性界面活性剤およびアルキルベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0022】
アミドベタイン型両性界面活性剤は、一般式R1CO-NH-(CH2)n-N+(CH3)2CH2CO2
-(式中、R1CO-基は、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ココイル基等の炭素数8~24の飽和又は不飽和のN-アシル基を表し、nは2~8の整数を表す。)で表される化合物であり、具体例として、コカミドプロピルベタイン、ラウリル酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0023】
アルキルベタイン型両性界面活性剤は、一般式R2-N+(CH3)2CH2CO2
-(式中、R2基は、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ヤシ油脂肪酸アルキル基等の炭素数8~24の飽和又は不飽和アルキル基を表す。)で表される化合物であり、角栓除去補助効果をより一層高める観点から、好ましくは、ラウリルジメチル酢酸ベタイン、テトラデセルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0024】
これらのアミノ酸系両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
これらのアミノ酸系両性界面活性剤の中でも、角栓除去補助効果をより一層高める観点から、好ましくはアミドベタイン型両性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、コカミドプロピルベタイン、ラウリル酸アミドプロピルベタイン等が挙げられ、さらに好ましくは、コカミドプロピルベタインが挙げられる。
【0026】
本発明の皮膚洗浄料組成物における(A)成分の含有量は特に限定されず、付与すべき角栓除去補助効果等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.025~5重量%が挙げられる。角栓除去補助効果及び肌の突っ張り感抑制効果を両立する観点から、好ましくは1~4.5重量%、より好ましくは2.1~4重量%、さらに好ましくは2.5~3.5重量%、一層好ましくは2.8~3.2重量%が挙げられる。
【0027】
(B)両親媒性エステル
本発明の角栓除去補助剤は、(B)成分として両親媒性エステルを含有する。(B)成分は単独では角栓除去補助効果を示さないが、(A)成分と共存させることによって、角栓除去補助効果を奏することができる。
【0028】
本発明において、両親媒性エステルは、日本薬局方一般試験法に定められた方法による測定で、導電率70~110μs/mに調整されたイオン交換水に常温で2質量%以上溶解し、かつ、油剤であるイソノナン酸イソトリデシル(日清オイリオグループ社製、サラコス913)にも常温(25℃)で10質量%以上溶解するものであり、エステル系界面活性剤は除かれる。
【0029】
両親媒性エステルとしては特に限定されないが、(B1)ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステル(以下において、「(B1)成分」とも記載する)、(B2)ジカルボン酸ビス(オキシアルキレンアルキルエーテル)エステル(以下において、「(B2)成分」とも記載する)、(B3)モノカルボン酸(オキシアルキレンアルキルエーテル)エステル(以下において、「(B3)成分」とも記載する)、(B4)モノカルボン酸(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステル(以下において、「(B4)成分」とも記載する)、(B5)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10(以下において、「(B5)成分」とも記載する)等が挙げられる。
【0030】
(B1)成分は、ジカルボン酸とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとのジエステル化合物である。(B2)成分は、ジカルボン酸とオキシアルキレンアルキルエーテルとのエステル化合物である。(B3)成分は、モノカルボン酸とオキシアルキレンアルキルエーテルとのエステル化合物である。(B4)成分は、モノカルボン酸とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとのエステル化合物である。(B5)成分は、ポリグリセリンと、エイコサン二酸とテトラデカン二酸の混合物のオリゴマーエステルである。
【0031】
(B1)成分及び(B2)成分を構成するジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、ペメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アセトンジカルボン酸、フタル酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸等が挙げられる。(B3)成分及び(B4)成分を構成するモノカルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。また、(B2)成分及び(B3)成分を構成するオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばオキシエチレンモノアルキルエーテル等が挙げられ、より具体的には、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエチルエーテルが挙げられる。(B1)成分及び(B4)成分を構成するポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンモノアルキルエーテル等が挙げられ、より具体的には、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジグリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のトリグリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0032】
これらの両親媒性エステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
これらの両親媒性エステルの中でも、角栓除去補助効果をより一層高める観点から、好ましくは(B1)成分、(B2)成分、(B3)成分、及び(B4)成分が挙げられ、(B1)成分として好ましくはコハク酸ビスエトキシジグリコール及びシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、より好ましくはコハク酸ビスエトキシジエチレングリコール(コハク酸とジエチレングリコールモノエチルエーテルとのジエステル化合物)及びシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジエチレングルリコール(シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸とジエチレングリコールモノエチルエーテルとのジエステル化合物)が挙げられ、(B2)成分として好ましくはコハク酸ジエトキシエチルが挙げられ、(B3)成分として好ましくは酢酸エトキシエチルが挙げられ、(B4)成分として好ましくは酢酸エトキシジグリコール、より好ましくは酢酸エトキシジエチレングリコールが挙げられる。
【0034】
上記の両親媒性エステルの市販品としては、クローダ社製「クロダモルDES」(コハク酸ジエトキシエチル)、高級アルコール工業社製「ハイアクオスターDCS」(コハク酸ビスエトキシジエチレングリコール)、日本精化株式会社製「Neosolue-Aqulio」(シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジエチレングリコール)、ダイセル株式会社製「エチルジグリコールアセテート」(酢酸エトキシジエチレングリコール)、日本精化株式会社製「Neosolue-Aqua」((エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10)が挙げられる。
【0035】
本発明の角栓除去補助剤における(B)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば0.1重量%以上が挙げられる。角栓除去補助効果をより一層高める観点から、(B)成分の含有量としては好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上が挙げられる。(B)成分の含有量の範囲の上限は特に限定されないが、角栓除去補助剤の安定性等の観点から、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1.6重量%以下、一層好ましくは0.6重量%以下が挙げられる。
【0036】
本発明の角栓除去補助剤において、(A)成分と(B)成分との比率は特に限定されず、上記の各含有量により定まるが、角栓除去補助効果を効率的に得る観点から、(A)成分1重量部に対する(B)成分の量として、好ましくは0.01~65重量部が挙げられる。特に、(A)成分の含有量が2.1~4重量%、好ましくは2.5~3.5重量%、より好ましくは2.8~3.2重量%である場合、角栓除去補助効果をより一層高める観点から、効率的に得る観点から、(A)成分1重量部に対する(B)成分の量として、好ましくは0.03~1重量部、より好ましくは0.05~0.7重量部、さらに好ましくは0.07~0.5重量部、一層好ましくは0.08~0.2重量部又は0.08~0.13重量部が挙げ得られる。
【0037】
他の成分
本発明の角栓除去補助剤には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤化等に必要とされる他の基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、炭素数1~5の低級アルコール及び多価アルコール等の水性基剤;防腐剤、着香剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。これらの基材や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの基材や添加剤の含有量は、角栓除去補助剤の製剤形態等に応じて適宜設定することができる。
【0038】
本発明の角栓除去補助剤には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ビタミン類、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、血行促進成分、清涼化剤、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの薬理成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
形態
本発明の角栓除去補助剤の形態については特に制限されず、液状、クリーム状、ジェル状等が挙げられるが、好ましくは常温(25℃)で液状である。また、本発明の角栓除去補助剤は、液状の角栓除去補助剤がコットンや不織布等の吸液性基材に含浸させられた形態であってもよい。
【0040】
製造方法
本発明の角栓除去補助剤は、前述する(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される他の成分等を混合して、所定の形態に調製することによって製造される。
【0041】
用途
本発明の角栓除去補助剤は、角栓の除去の補助を目的として用いられるものであり、化粧落とし(クレンジング)として用いられるものではない。角栓の除去の補助とは、通常の洗顔と併用することで、当該洗顔による角栓の除去を助けることをいう。また、補助対象である角栓の除去とは、目に見えるほど大きくなった角栓自体を除去することと、一度角栓を除去した後に再度毛穴の中に溜まり始めた、後に角栓に成長する汚れを除去することで、角栓詰まりを予防することとを含む。
【0042】
本発明の角栓除去補助剤と併用される洗顔料としては特に限定されないが、角栓除去効果をより一層高める観点から、好ましくは角栓除去補助剤に含まれる(A)成分と近い界面活性剤を含む洗顔料が挙げられる。洗顔料に用いられる、角栓除去補助剤に含まれる(A)成分と近い界面活性剤の例としては、例えば角栓除去補助剤に含まれる(A)成分が、N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン等のようにカルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤に包含されるいずれかの成分である場合を挙げると、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはカルボン酸型の界面活性剤、さらに好ましくはカルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤(角栓除去補助剤に含まれるカルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤と同一であることまでは要しない)が挙げられる。
【0043】
本発明の角栓除去補助剤は、洗顔料で洗顔する工程の前に用いられることが好ましい。この場合、本発明の角栓除去補助剤を適用した後、洗顔前に、角栓除去補助剤を洗い流してもよいし、角栓除去補助剤を洗い流さずにそのまま洗顔料を適用してもよい。
【0044】
また、本発明の角栓除去補助剤は、水で薄めることなく、泡立てずにそのまま皮膚に接触させることで適用することができる。
【0045】
本発明の角栓除去補助剤が毛穴と接触させておく時間としては特に限定されないが、例えば1~5分が挙げられ、角栓除去効果をより一層高める観点から、好ましくは2~5分、さらに好ましくは2.5~5分が挙げられ、洗顔後の皮膚のつっぱりを抑制する観点から、好ましくは1~4分、より好ましくは1~3.5分が挙げられる。
【0046】
本発明の角栓除去補助剤を皮膚に接触させる形態としては特に限定されないが、一例として、本発明の角栓除去補助剤を容器内にためて、当該容器内で直接皮膚を浸漬する形態が挙げられる。この場合、例えば鼻の大きさに対応する大きさ、つまり鼻がちょうど入る程度の開口部と深さと有する大きさの容器に、1回分の角栓除去補助剤を注ぎ入れ、容器内の開口部を鼻まわりに押し当てる等により、容器内の角栓除去補助剤に鼻を浸漬することができる。
【0047】
本発明の角栓除去補助剤を皮膚に接触させる形態の別の例として、吸液性基材に含浸させた湿潤パックの形態が挙げられる。吸液性基材としては、コットン、不織布等が挙げられる。湿潤パックとは、終始湿潤状態でパックするパック剤であり、粘着シートのパック及びピールオフパック等の、乾かした後に剥離するパック剤は除外される。より具体的には、鼻の表面積および表面形状に対応する大きさ及び形状の吸液性基材に角栓除去補助剤を含浸させ、鼻表面をパックすることができる。
【0048】
本発明の角栓除去補助剤が適用できる皮膚の場所としては、角栓が形成されている場所であれば特に限定されず、上記の例であげた鼻のみならず、頬、眉間、顎等も挙げられる。また、本発明の角栓除去補助剤が適用できる皮膚の場所としては、鼻、頬、眉間、顎を含む顔全体であってもよい。
【0049】
本発明の角栓除去補助剤の1回当たりの使用量としては、本発明の角栓除去補助剤を皮膚に接触させる形態、本発明の角栓除去補助剤を適用する皮膚の場所などにより異なりうるが、例えば、1~5gが挙げられる。
【0050】
本発明の角栓除去補助剤は、ピールオフパックや粘着シート剤のような皮膚への強い物理的刺激を与えないため、複数回連続使用することができる。たとえば、角栓除去補助剤を用いた洗顔を、洗顔を行う毎に1回ずつ行うこともでき、1回の洗顔で毛穴が気になる部分だけを複数回洗浄する(つまり、1回の洗顔で角栓除去補助剤の適用及び洗顔を複数セット、例えば2~3回行う)こともできる。なお、本発明の角栓除去補助剤は、2~7日又は2~5日に1回のペースで行ってもよい。
【0051】
2.角栓除去方法
前述の角栓除去補助剤は、界面活性剤と両親媒性エステルとの組み合わせにより角栓除去を補助することができ、好ましくは、洗顔料による洗顔の前に用いる。従って、本発明は、更に、(A)アミノ酸系界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有する角栓除去補助剤を肌に適用する工程と、洗顔する工程と、を含む、角栓除去方法も提供する。
【0052】
本発明の角栓除去方法は、エステサロンや美容院における施術に用いることができる。
【0053】
前記角栓除去方法において、使用する角栓除去補助剤における成分の種類、使用量、使用方法、角栓除去補助剤の形態、使用方法、及び併用する洗顔料等については、前記「1.角栓除去補助剤」の欄に示す通りである。
【実施例0054】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
表1~3に示す組成の角栓除去補助剤を調製した。表1~3に示す各成分の詳細は以下の通りである。
【0056】
(A)成分
・ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン(味の素株式会社製「アミソフトCT-12S(商品名)」)
・N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム材料:N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム液(N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム25重量%含有)(旭化成ファインケミカル株式会社製「アミノフォーマー FLDS-L(商品名)」);表中の含有量は、N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウムの含有量を示す。
・ココイルメチルタウリンナトリウム(日油株式会社製「ダイヤポンK-SF(商品名)」
・アシル(C12,14)アスパラギン酸トリエタノールアミン材料:(アシル(C12,14)アスパラギン酸トリエタノールアミン25重量%含有)(旭化成ファインケミカル株式会社製「アミノフォーマー FCMT-L(商品名)」);表中の含有量は、アシル(C12,14)アスパラギン酸トリエタノールアミンの含有量を示す。
【0057】
(B)成分
・(B1)成分
・・シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール(日本精化株式会社製「Neosolue-Aqulio(商品名)」)
・・コハク酸ビスエトキシジグリコール(高級アルコール工業株式会社製「ハイアクオスター DCS(商品名)」)
・(B2)成分
・・コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社製「クロダモルDES(商品名)」
・(B4)成分
・・酢酸エトキシジエチレングリコール(ダイセル株式会社製「エチルジグリコールアセテート(商品名)」)
【0058】
以下の処方の洗顔料を調製し、ポンプフォーマー容器に充填した。
ココイルメチルアラニンナトリウム 6重量%
クエン酸 0.03重量%
フェノキシエタノール 0.4重量%
水 残分
合計 100重量%
ココイルメチルアラニンナトリウムとしては、川研ファインケミカル株式会社製「アラノン ACE」(商品名)を用いた。
【0059】
<角栓の汚れ落ち効果の評価(マイクロスコープ)>
表1及び2の角栓除去補助剤について、化粧品評価専門パネリスト3名が、洗顔料と併用した場合の角栓の汚れ落ち効果(角栓除去効果)を評価した。具体的には、各角栓除去補助剤1.0gを3.5cm×5cmコットンに含浸させ、鼻の一方側にだけ3分間湿潤パックした。その後水で洗い流し、ポンプフォーマー容器から洗顔料を泡で出して顔全体を洗い、その後、水で流してタオルにて水を拭き取った。角栓除去補助剤のパック、洗顔及び水のふき取りの一連の工程を合計3回行った後、左右の鼻をマイクロスコープ(i-Scope USB2.0 株式会社モリテックス社製、50倍スケール)にて観察し、鼻の左右のうち、角栓除去補助剤を適用した一方側における毛穴の角栓の除去が、角栓除去補助剤を適用しなかった他方側における毛穴の角栓の除去程度(コントロール)と比べてどの程度であったかを下記の指標に基づいて5段階評価した。
【0060】
5点:角栓の汚れ落ちが顕著に認められた
4点:角栓の汚れ落ちが認められた
3点:どちらかというと角栓の汚れ落ちが認められた
2点:どちらかというと角栓の汚れ落ちが認められない
1点:角栓の汚れ落ちが認められない
【0061】
パネリスト3名による評点を合計し、以下の基準に基づいて角栓の汚れ落ち効果を分類した。結果を表1及び2に示す。
◎:13点以上
○:9点以上13点未満
△:6点以上9点未満
×:6点未満
【0062】
<角栓の汚れ落ち効果(官能評価)及びつっぱり抑制効果の評価(官能評価)>
表3の角栓除去補助剤について、化粧品評価専門パネリスト10名が、洗顔料と併用した場合の角栓の汚れ落ち効果(角栓除去効果)及び洗顔後の皮膚のつっぱり抑制効果を官能評価した。具体的には、各角栓除去補助剤5gを顔型のシートマスク(目付50g/m2、コットン素材)に含浸し、顔に5分間湿潤パックした。その後水で洗い流し、ポンプフォーマー容器から洗顔料を泡で出して顔全体を洗い、その後、水で流してタオルにて水を拭き取った。その後、毛穴の角栓の汚れ落ち感を、下記の指標に基づいて5段階評価した。
【0063】
5点:角栓の汚れ落ちがしっかり感じられた
4点:角栓の汚れ落ちが感じられた
3点:どちらでもない
2点:角栓の汚れ落ちがあまり感じられない
1点:角栓の汚れ落ちが全く感じられない
【0064】
パネリスト10名による評点を合計し、以下の基準に基づいて角栓の汚れ落ち効果を分類した。結果を表3に示す。
◎:45点以上
○:40点以上45点未満
△:35点以上40点未満
×:35点未満
【0065】
また、洗顔後の肌のつっぱり抑制感についても下記の指標に基づいて5段階評価した。
5点:肌のつっぱりを全く感じない
4点:肌のつっぱりを感じない
3点:肌のつっぱりをわずかに感じる
2点:肌のつっぱりを感じる
1点:肌のつっぱりを強く感じる
【0066】
パネリストs10名による評点を合計し、以下の基準に基づいて肌のつっぱり抑制効果を分類した。結果を表3に示す。
◎:45点以上
○:40点以上45点未満
△:35点以上40点未満
×:35点未満
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
表2に示される通り、(A)成分及び(B)成分はそれぞれ単独では角栓除去を補助する効果は満足するレベルで得られないが、表1に示される通り、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによって、優れた角栓除去補助効果が認められた。さらに、表3に示される通り、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることにより、優れた角栓除去補助効果を奏しながら、つっぱり感を抑制する効果にも優れていた。