(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027969
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電圧発生装置、センサー及びアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20240222BHJP
G01L 1/16 20060101ALI20240222BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240222BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20240222BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240222BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
G01L1/16 Z
H01L41/09
H01L41/193
H01L41/113
H01L41/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131206
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】赤井 日出子
(72)【発明者】
【氏名】小川 光敏
(72)【発明者】
【氏名】小川 直記
(57)【要約】
【課題】外力に対し発生する電圧が高い電圧発生装置と、この電圧発生装置を用いたアクチュエータ及びセンサーを提供する。
【解決手段】電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有する電圧発生装置であって、前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、前記誘電体の変形により前記電極Aと前記電極Bの間に電圧が発生する電圧発生装置。電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有するセンサー及びアクチュエータ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有する電圧発生装置であって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記誘電体の変形により前記電極Aと前記電極Bの間に電圧が発生する電圧発生装置。
【請求項2】
前記電極Aと前記電極Bが、異なる原子を含む金属である、請求項1記載の電圧発生装置。
【請求項3】
前記電極Aと前記電極Bの両方が、純度98%以上の金属である、請求項1又は2に記載の電圧発生装置。
【請求項4】
前記電極Aと電極Bの組合せが、金と亜鉛、金とクロム、クロムとアルミニウム、チタンとアルミニウム、錫とアルミニウム、金と黄銅、又は金とステンレス鋼である請求項1又は2の電圧発生装置。
【請求項5】
前記誘電体が、ポリ塩化ビニルを含む請求項1又は2に記載の電圧発生装置。
【請求項6】
電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有するセンサーであって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記電極Aと前記電極Bの間に発生する電圧により、前記誘電体の変形を検出するセンサー。
【請求項7】
電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有するセンサーであって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記電極Aと前記電極Bの間に発生する電圧により、加えられる力又は圧力を検出するセンサー。
【請求項8】
電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有するアクチュエータであって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記電極Aと電極Bとの間に電圧を印加して前記誘電体を変形させるアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体の変形により電圧が発生する電圧発生装置と、この電圧発生装置を用いたセンサー、アクチュエータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体の電気特性を利用した装置として、電極と誘電体からなる装置の電極間に電圧をかけることにより生じる誘電体の変形を利用したアクチュエータ(特許文献1,3)や、外力(荷重)が作用した際の誘電体の変形による電気特性の変化を利用したセンサー(特許文献2,4)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-23843号公報
【特許文献2】特開2014-32162号公報
【特許文献3】特開2020-184815号公報
【特許文献4】特開2021-164395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外力に対し発生する電圧が高い電圧発生装置と、この電圧発生装置を用いたアクチュエータ及びセンサーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
【0006】
[1] 電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有する電圧発生装置であって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記誘電体の変形により前記電極Aと前記電極Bの間に電圧が発生する電圧発生装置。
【0007】
[2] 前記電極Aと前記電極Bが、異なる原子を含む金属である、[1]記載の電圧発生装置。
【0008】
[3] 前記電極Aと前記電極Bの両方が、純度98%以上の金属である、[1]又は[2]に記載の電圧発生装置。
【0009】
[4] 前記電極Aと電極Bの組合せが、金と亜鉛、金とクロム、クロムとアルミニウム、チタンとアルミニウム、錫とアルミニウム、金と黄銅、又は金とステンレス鋼である[1]又は[2]の電圧発生装置。
【0010】
[5] 前記誘電体が、ポリ塩化ビニルを含む[1]又は[2]に記載の電圧発生装置。
【0011】
[6] 電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有するセンサーであって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記電極Aと前記電極Bの間に発生する電圧により、前記誘電体の変形を検出するセンサー。
【0012】
[7] 電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有するセンサーであって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記電極Aと前記電極Bの間に発生する電圧により、加えられる力又は圧力を検出するセンサー。
【0013】
[8] 電極A、電極B、及び前記電極Aと前記電極Bとの間の誘電体を有するアクチュエータであって、
前記電極Aと前記電極Bの仕事関数の差が0.1eV以上であり、
前記電極Aと電極Bとの間に電圧を印加して前記誘電体を変形させるアクチュエータ。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電圧発生装置は、誘電体の変位量が小さい場合でも大きな電圧を発生させることができ、アクチュエータやセンサーとして使用できる用途が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施例で用いたモールドの凹部の拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電圧発生装置、センサー及びアクチュエータは、電極A、電極B、及び電極Aと電極Bとの間の誘電体を有する。本発明の電圧発生装置、センサー及びアクチュエータは、シート状の誘電体を、電極Aと電極Bで挟んだ構造を有することが好ましい。
【0017】
本発明の電圧発生装置及びセンサーでは、外部から力が加わることにより誘電体が変形すると、誘電体中に分極が生じ、電極Aと電極Bの間に電位差が生じる。誘電体から力が除かれ変形が戻ると、電極間の電位差は0に戻る。本発明のアクチュエータでは、電極Aと電極Bの間に電圧を印加することにより誘電体が変形し、電極Aと電極Bの間の電圧印加を停止することにより誘電体が元形状に復帰する。
【0018】
<電極A、B、及び金属の仕事関数>
本発明では、電極Aの金属と電極Bの金属の仕事関数の差が0.1eV以上であることにより、従来に比べ、100mV以上の大きな電圧を発生できる。電極Aの金属と電極Bの金属の仕事関数の差は、好ましくは0.12eV以上、特に好ましくは0.13eV以上である。また、電極Aの金属と電極Bの金属の仕事関数の差は、好ましくは2.5eV以下、特に好ましくは2.0eV以下である。
【0019】
仕事関数は、電極の表面から1個の電子を取り出すために必要な最小エネルギーである。仕事関数は、例えば光電子法、熱電子放出法、電界放出法、接触電位差法等によって特定できる。
【0020】
電極A及び電極Bに使用できる金属としては、単一の金属元素からなる純金属であってもよく、複数の金属元素あるいは金属元素と非金属元素からなる合金であっても良い。なお、本明細書において、純金属とは、主たる金属元素の含有率が98重量%以上(純度98%以上)の金属を表わす。
【0021】
純金属としては、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、錫、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
合金としては、ステンレス鋼、黄銅等が挙げられる。特に、センサーとして用いる場合、電極に使用する金属としては電気抵抗の低いものが好ましい。
【0023】
仕事関数の差が0.1以上となる電極Aの金属と電極Bの金属との組合せとして、それぞれ異なる金属元素を含むものであることが好ましい。
【0024】
例えば、電極Aと電極Bの両方が純金属である組合せや、一方の電極が純金属で他方の電極が合金である組合せ等が挙げられる。
【0025】
一方の電極と他方の電極の金属の組合せとしては、金と亜鉛、金とクロム、クロムとアルミニウム、チタンとアルミニウム、錫とアルミニウム、金と黄銅、金とステンレス鋼等が挙げられる。
【0026】
電極は、板状、薄膜状、メッシュ状などのいずれであってもよい。板状、薄膜状の場合、厚さ方向に貫通する孔やスリットが設けられていてもよい。薄膜状の電極の場合、合成樹脂等のフィルム又はシート上に成膜されたものであってもよい。
【0027】
<誘電体>
本発明では、誘電体は、変形により分極が生じる物質であればよく、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、シリコーンゴム等の公知の誘電性を有する高分子材料を用いることができる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0028】
これらの中でも、変位量に対する発生電位差を大きくできる点から、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラールが好ましく、ポリ塩化ビニルが特に好ましい。
【0029】
また、前記誘電体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が7万以上20万以下のポリ塩化ビニルを含むことが好ましい。
【0030】
誘電体は、上記高分子材料のゲルであることが好ましい。
【0031】
ゲル中の誘電性高分子材料の含有量は、通常5重量%以上であり、好ましくは8重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは12重量%以上であり、特に好ましくは15重量%以上であり、また、好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下であり、さらに好ましくは45重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下である。
【0032】
本発明では、誘電体は、可塑剤や電荷補足剤、熱安定剤等を含んでいてもよい。
【0033】
可塑剤としては、ジオールジエステル、ジカルボン酸ジエステル、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエタノールアミン(DEA)等が挙げられる。
【0034】
ジカルボン酸ジエステルとしては、例えばアジピン酸ジブチル(DBA)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、コハク酸ジエチル(DESuc)、アジピン酸ジメチル(DMA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジブチル(DBSeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらの中でも、比較的取扱いやすく、安定なゲルが得られる点から、ジオールジエステル及びジカルボン酸ジエステルが好ましい
【0036】
誘電体中の可塑剤の含有量は、良好な変位長の発現とゲル表面のべたつき抑制の観点から、55重量%以上、90重量%以下が好ましい。
【0037】
電荷補足剤としては、テトラシアノキノジメタン、2,4,7-トリニトロフルオレン-9-オン等が挙げられる。前記電荷補足剤の含有量は、0.01重量%以上、10重量%以下が好ましい。
【0038】
熱安定剤としては、燐系熱安定剤、フェノール系熱安定剤、アミン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、Mg、Ba、Zn、Sn等の無機化合物等が挙げられる。前記熱安定剤の含有量は、2重量%以下が好ましく、特に1重量%以下が好ましい。
【0039】
本発明では、誘電体は、ゲルシートであることが好ましい。このゲルシートは、両面とも平坦面であってもよく、少なくとも一方の面に凸部が形成されたものであってもよい。
【0040】
ゲルシート表面の凸部は、加温したゲルシートの平坦面に、凹部を有するモールド(型)を押し付けた後、冷却することで形成できる。凸部の形状は、特に制限されないが、高さは、1μm以上、1000μm以下が好ましい。凸部の数は、1個/mm2~20000個/mm2が好ましい。
【0041】
<ゲルシートの製造方法>
両面が平坦なゲルシートは、次の第一及び第二工程で製造することができる。また、一方の面に凸部又は凹凸が形成されたゲルシートは、次の第一工程~第三工程により製造することができる。
【0042】
第一工程:誘電性高分子材料を含む組成物を加熱によりゲル化させてゲルを得る。
【0043】
第二工程:該ゲルを型に仕込み、加熱及び加圧することによりゲルシートを得る。
【0044】
第三工程:該ゲルシートを加熱した後、凸部を形成するための凹型の型を該ゲルシートに圧着し、冷却することにより、ゲルシートに凸部を形成する。
【0045】
第一工程(ゲル化工程)では、誘電性高分子材料を含む組成物を混合し、加熱することにより、該組成物をゲル化してゲルを得る。
【0046】
以下、ポリ塩化ビニル及びエステル系可塑剤を用いたゲルシートの製造に好適な条件ついて述べる。これらの材料を用いた場合、材料の乾燥収縮が非常に小さいため、所望の形状が得やすくなる。
【0047】
加熱することで、エステル系可塑剤がポリ塩化ビニルに含浸し、一体化する。加熱温度は、エステル系可塑剤の種類によって異なるが、概ね80℃~200℃の範囲である。80℃より低いと、エステル系可塑剤がポリ塩化ビニルに含浸しにくくなる。また、加熱温度は、200℃より高いとポリ塩化ビニルが熱分解しやすくなり好ましくない。より好ましくは90℃以上であり、さらに好ましくは100℃以上である。また、より好ましくは190℃以下であり、さらに好ましくは180℃以下である。
【0048】
混合時間は1分~5時間程度である。混合時間が1分より短いと、エステル系可塑剤の含浸が不十分となり、後の工程で、エステル系可塑剤がしみ出る可能性がある。混合時間が5時間より長いとポリ塩化ビニルが熱分解しやすくなり好ましくない。
【0049】
第一工程では、バッチ式の容器にポリ塩化ビニルとエステル系可塑剤を仕込み、混合しながら加熱してもよいし、連続式の混練機等に、定量的にポリ塩化ビニルとエステル系可塑剤投入しながら、加熱混練してもよい。
【0050】
第二工程(シート成型工程)では、第一工程で得られた高分子ゲルを型に仕込み、加熱及び加圧することにより高分子ゲルシートを得る。加熱温度は、エステル系可塑剤の種類によって異なるが、概ね130℃~200℃の範囲である。130℃より低いと、高分子ゲルが可塑化せず、シート状に成形することが困難になる。また、200℃より高いとポリ塩化ビニルが熱分解しやすくなり好ましくない。
【0051】
加圧はエステル系可塑剤の種類によって異なるが、一般的な圧力の範囲でよく、例えば0.1MPa以上であり、20MPa以下である。
【0052】
また、成型に際し、スペーサー等を用い、適当な大きさ、厚さに加工することが可能である。加熱、加圧により適当なシートに成形した後は、冷却により再度ゲル化させる。
【0053】
第三工程(凸部形成工程)では、第二工程で得られた高分子ゲルシートを加熱した後、凸部を形成するための凹部を有したモールドを該高分子ゲルシートに押し付け、冷却することで、高分子ゲルシート表面に凸部を形成(賦形)する。
【0054】
<センサー>
本発明のセンサーは、上記の電圧発生装置と同一構成の装置をセンサーとして利用するものである。
【0055】
本発明のセンサーでは、誘電体の変形による電圧の変化を検出でき、加えられる力又は圧力を検出するセンサーとして使用できる。すなわち、電極間の誘電体に変位が生じていない状態では、電極Aと電極Bの間の電位差(電圧)は0であるが、外部からの力が加わり前記誘電体が変形すると、前記電極の間に電位差が生じる。そして、外部からの力を取り除き、誘電体の変形がもとに戻ると。電極間の電位差は0に戻る。これにより、外部からの力又は圧力を量電圧間の電位差として検知することができる。
【0056】
センサーの電極材料以外の構成は、公知(例えば特許文献4)の構成とすればよいが、これに限定されない。特許文献4のセンサーは、誘電性高分子材料を含み、かつ、頂部と底面とを有する突部、を備えるゲル層と、該突部の頂部に接して配される第一電極と、該第一電極とともに該ゲル層を挟持する第二電極とを備えるものである。また、このゲルセンサーが複数個積層された積層型ゲルセンサーである。
【0057】
本発明のセンサーは、圧力センサー、重量センサーとして用いることができる。これを利用して、商品の在庫管理を行うセンサーや、ロボットハンドなどの把持センサー、物の有り無しを判定するセンサーなどに使用できる。
【0058】
<アクチュエータ>
本発明のアクチュエータは、上記の電圧発生装置と同一構成の装置をアクチュエータとして利用するものである。すなわち、本発明のアクチュエータにあっては、電極Aと電極Bの間に電圧をかけると電極間の誘電体が変形し、電圧を除くと元の形に戻る。
【0059】
本発明のアクチュエータの電極材料以外の構成は、公知の構成(例えば特許文献3)とすればよいが、これに限定されない。特許文献3のアクチュエータは、誘電性高分子材料を含むゲル部を複数備えるゲル層と、前記ゲル層を厚さ方向に挟む陽極及び陰極とからなる単位構造を備え、電圧印加により前記ゲル層を変形させ、前記陽極と前記陰極との間隔を変化させるゲルアクチュエータである。
【0060】
本発明のアクチュエータは、スイッチ、バルブ等に使用できる。
【0061】
なお、本発明のセンサー及びアクチュエータにあっては、電極A、電極B、及び電極Aと電極Bとの間の誘電体よりなる単位構造を複数個組み合せて(例えば積層する等して)構成してもよい。
【実施例0062】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。
【0063】
<実施例及び比較例の概要>
以下のように作成したゲルシート状誘電体の下面に電極Aを配置し、上面に電極Bを配置し、電極Bの上に200gの荷重をかけ、発生する電圧を測定した。
【0064】
<電圧測定>
前記電極Aと前記電極Bを、マルチ入力データ収集システムNR-600(株式会社キーエンス)及び高電圧測定ユニットNR-HV04(株式会社キーエンス)に接続し、電圧を測定した。
【0065】
<金属の仕事関数の出典>
純金属(Au、Cr、Ti、Sn、Al)の仕事関数は、静電気ハンドブック(静電気協会、(株)オーム社、1998年)の値を用いた。SUS304の仕事関数は静電気学会誌、31、1、(2007年)P14-19の値を用いた。黄銅の仕事関数は、ナノコート・ティーエス株式会社ホームページの値を用いた。(https://www.nanocoat-ts.com/node/290)
【0066】
<ゲルシート状の誘電体の製造方法>
セパラブルフラスコにポリ塩化ビニル(新第一塩ビ社製1700Z)20重量部、ジブチルアジぺート(東京化成社製)80重量部を測り取った。このセパラブルフラスコに攪拌翼をセットし、90rpmで攪拌しながら、120℃の油浴中で30分加熱し、高分子ゲルを得た。
【0067】
前記高分子ゲルを冷却後に取り出し、東洋精機製作所製油圧加熱プレス機を用いて、100mm角×0.7mm厚のスペーサー中に10gの高分子ゲルを仕込み、150℃で、スペーサー圧力5MPaで加圧し、冷却して、厚さ0.63mmの高分子ゲルシートを得た。
【0068】
前記高分子ゲルシート上に、
図1、2に示すモールド10を当て、真空加熱プレス機にセットし、真空下、135℃、0.1MPaでプレスを行った。これにより、
図3の通り、表面に凸部21が形成されたゲルシート20よりなる誘電体を得た。
【0069】
モールド10としては、
図1及び
図2に示す通り、1辺約250μm(
図1中のw)、高さ約180μm(
図2に記入)、先端断面(頂面)の1辺約20μm(
図2に記入)、頂角65°の切頭四角錐形の凹部(空洞部)11を100個×100個並べた構成(1辺の長さL=25000μm)の光硬化性アクリル樹脂製のものを用いた。
【0070】
レーザー顕微鏡で観察した結果、
図3の通り、ゲルシート20の表面に形成された凸部21の高さは152μmであった。
【0071】
<実施例1>
上記により製造したゲルシート状の誘電体を直径22.2mmに切り出し、厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルム上に、直径20mm厚さ100nmに金を蒸着した電極(電極A)の上に、凸部21が上向きとなるように置いた。この誘電体の上に、厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルム上に直径20mm、厚さ100nmにクロムを蒸着した電極(電極B)を置いた。電極Aを有するフィルムは電極Aが上面側となるように配置し、電極Bを有するフィルムは電極Bが下面側となるように配置した。
【0072】
電極Bを有するフィルムの上に、直径48mmのSUS304製の円板(重量200g)を載せることにより200gの荷重をかけ、電極A、B間に発生する電圧を測定したところ280mVであった。
【0073】
<実施例2>
電極Aの金属膜を厚さ100nmのクロムとし、電極Bの金属膜を厚さ100nmのアルミニウムとしたこと以外は、実施例1と同様とした。電極A、B間に発生する電圧は490mVであった。
【0074】
<実施例3>
電極Aとして直径35mm、厚さ0.2mmのチタン箔を使用し、電極Bとして直径20mm、厚さ0.2mmのアルミニウム箔を使用したこと以外は、実施例1と同様とした。電極A、B間に発生する電圧は525mVであった。
【0075】
<実施例4>
電極Aとして直径35mm、厚さ0.2mmの錫箔を使用し、電極Bとして直径20mm、厚さ0.2mmのアルミニウム箔を使用したこと以外は、実施例1と同様とした。電極A、B間に発生する電圧は205mVであった。
【0076】
<比較例1>
電極Aとして直径35mm、厚さ0.2mmのSUS箔を使用し、電極Bとして直径20mm、厚さ0.1mmの黄銅箔を使用したこと以外は、実施例1と同様とした。電極A,B間に発生する電圧は65mVであった。
【0077】
<比較例2>
電極Aとして直径35mm、厚さ0.2mmのSUS箔を使用し、電極Bとして直径20mm、厚さ0.5mmのSUS箔を使用したこと以外は、実施例1と同様とした。電極A,B間に発生する電圧は80mVであった。
【0078】
<比較例3>
電極A、電極Bとしてポリエチレンナフタレートフィルム上に直径20mm、厚さ100nmにアルミを蒸着した電極を使用したこと以外は、実施例1と同様とした。電極A,B間に発生する電圧は35mVであった。
【0079】
<比較例4>
電極A、電極Bとしてポリエチレンナフタレートフィルム上に直径20mm厚さ100nmにクロムを蒸着した電極を使用したこと以外は、実施例1と同様とした。電極A,B間に発生する電圧は60mVであった。
【0080】
以上の結果と、各金属の仕事関数及び仕事関数の差とを表1、2に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
[考察]
電極Aと電極Bの仕事関数の差が0.1eVよりも大きい実施例1~4では、電極間に発生する電圧がいずれも200mV以上である。これに対し、電極Aと電極Bの仕事関数の差が0.1eVよりも小さい比較例1~4では、電極間に発生する電圧が80mV以下であり、外力に対し発生する電圧が十分ではなく、アクチュエータやセンサーとして使用できる用途が限られる。