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特開2024-28043情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028043
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240222BHJP
   A61B 6/58 20240101ALI20240222BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240222BHJP
【FI】
A61B6/00 350D
A61B6/00 390A
A61B6/00 350A
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131366
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 哲矢
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA03
4C093AA26
4C093CA13
4C093CA35
4C093EB17
4C093FC17
4C093FD02
4C093FD03
4C093FD05
4C093FD12
4C093FF01
4C093FF09
4C093FF16
4C093FF21
4C093FF22
5L096BA03
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA01
5L096EA39
5L096FA06
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA02
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】エッジ上に存在する欠陥画素を精度よく補正することを可能とする情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置は、放射線撮影することにより得られた放射線画像の欠陥画素を補正する処理を行う情報処理装置であって、プロセッサを備え、プロセッサは、放射線画像に含まれる1つの欠陥画素を補正対象画素として選択し、選択した補正対象画素の周辺のエッジの有無を検出し、エッジがある場合には、補正対象画素を中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、補正対象画素からの正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度と、補正対象画素から正常画素までの距離とに応じた第1の重みを付けて補正対象画素を補正する第1補正処理を行い、エッジがない場合には、正常画素の各々に、差分角度に依存せず、距離にのみ依存する第2の重みを付けて補正対象画素を補正する第2補正処理を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮影することにより得られた放射線画像の欠陥画素を補正する処理を行う情報処理装置であって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記放射線画像に含まれる1つの欠陥画素を補正対象画素として選択し、選択した前記補正対象画素の周辺のエッジの有無を検出し、
前記エッジがある場合には、前記補正対象画素を中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、前記補正対象画素からの前記正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度と、前記補正対象画素から前記正常画素までの距離とに応じた第1の重みを付けて前記補正対象画素を補正する第1補正処理を行い、
前記エッジがない場合には、前記正常画素の各々に、前記差分角度に依存せず、前記距離にのみ依存する第2の重みを付けて前記補正対象画素を補正する第2補正処理を行う、
情報処理装置。
【請求項2】
前記差分角度は、0°から180°の範囲内の値を取り、
前記第1の重みは、前記差分角度が0°及び180°の場合に最大となり、かつ前記差分角度が90°の場合に最小となる、90°を中心として対称な関数を含んで表される、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記関数は、前記差分角度の余弦の絶対値を取った値のべき乗で表される、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1の重みは、前記第2の重みよりも前記距離に対する依存性が小さい、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
微分方向が異なる2つの微分フィルタを用いて2つの微分値を算出し、
前記2つの微分値に基づいてエッジ強度を算出し、
前記エッジ強度を閾値と比較することにより前記エッジの有無を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記エッジ強度は、前記2つの微分値の二乗和の平方根、又は前記2つの微分値の絶対値和である、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記2つの微分値に基づいて前記エッジ方向を算出する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記エッジ方向は、前記2つの微分値の比を、逆正接関数に適用することにより算出した角度により表される、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記微分フィルタの各々は、Prewittフィルタ又はSobelフィルタである、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記補正対象画素に関して点対称となる一対の正常画素の画素値の差分絶対値を複数の方向について算出し、算出した複数の差分絶対値の最大値、加算値、又は二乗和平方根に基づいてエッジ強度を算出し、
前記エッジ強度を閾値と比較することにより前記エッジの有無を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記複数の差分絶対値の最小値が得られる方向を、前記エッジ方向として検出する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記一対の正常画素として選択する一対の画素のいずれかが欠陥画素である場合に、前記一対の画素の角度を維持しつつ、前記補正対象画素から離れる方向に正常画素を探索し、探索の結果見つかった正常画素を選択する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記放射線画像に対してLOG変換処理を行い、LOG変換後の前記放射線画像を用いて前記エッジの有無を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記放射線画像に対して散乱線除去グリッドによるグリッド縞を除去するグリッド縞除去処理を行い、グリッド縞除去後の前記放射線画像を用いて前記エッジの有無の検出と前記補正対象画素の補正とを行う、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
放射線撮影することにより得られた放射線画像の欠陥画素を補正する処理を行う情報処理方法であって、
前記放射線画像に含まれる1つの欠陥画素を補正対象画素として選択し、選択した前記補正対象画素の周辺のエッジの有無を検出すること、
前記エッジがある場合には、前記補正対象画素を中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、前記補正対象画素からの前記正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度と、前記補正対象画素から前記正常画素までの距離とに応じた第1の重みを付けて前記補正対象画素を補正する第1補正処理を行うこと、
前記エッジがない場合には、前記正常画素の各々に、前記差分角度に依存せず、前記距離にのみ依存する第2の重みを付けて前記補正対象画素を補正する第2補正処理を行うこと、
を含む情報処理方法。
【請求項16】
放射線撮影することにより得られた放射線画像の欠陥画素を補正する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記放射線画像に含まれる1つの欠陥画素を補正対象画素として選択し、選択した前記補正対象画素の周辺のエッジの有無を検出すること、
前記エッジがある場合には、前記補正対象画素を中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、前記補正対象画素からの前記正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度と、前記補正対象画素から前記正常画素までの距離とに応じた第1の重みを付けて前記補正対象画素を補正する第1補正処理を行うこと、
前記エッジがない場合には、前記正常画素の各々に、前記差分角度に依存せず、前記距離にのみ依存する第2の重みを付けて前記補正対象画素を補正する第2補正処理を行うこと、
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を用いて被写体を撮影する放射線撮影システムには、FPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が用いられている。放射線検出器には、放射線の入射線量に応じた信号電荷を発生して蓄積する複数の画素が2次元アレイ状に配列されている。
【0003】
放射線検出器に設けられた複数の画素には、欠陥画素が存在する場合がある。欠陥画素は、適正な信号電荷を得ることができないため、周辺の正常画素の画素値を用いて補間処理等により補正を行う必要がある。
【0004】
特許文献1は、線欠陥が存在する場合の補正方法を開示している。具体的には、特許文献1では、欠陥画素の周囲の複数の正常画素を用いて回帰分析を行い、回帰分析の結果得られた回帰曲線に基づいて欠陥画素を補正することが提案されている。
【0005】
特許文献2では、欠陥画素に対して点対称に存在する一対の正常画素のうち、差分量が最も小さな値となる一対の正常画素の画素値の平均値を用いて欠陥画素を補正することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-170959号公報
【特許文献2】特開2002-197450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放射線画像には、手指の骨の輪郭や、ペースメーカー等の細い金属線等で、高コントラストのエッジが存在する場合がある。特許文献1に記載の補正方法では、図17に示すように、幅が1画素程度の細い線が線欠陥に対して斜め方向に交わっている場合に、線欠陥に隣接する横方向の正常画素のみを用いて補間処理を行うので、補正精度が十分でなく補正残差が生じる。このような場合は、斜め方向の正常画素を用いた補間処理を行うことが必要である。
【0008】
特許文献2に記載の補正方法では、エッジ方向に沿った画素を選択して欠陥画素を補正するため、高周波パターン上に欠陥が存在した場合であってもある程度は対応できる。しかしながら、特許文献2に記載の補正方法では、欠陥画素を中心とした離散的な角度の画素ペアを用いて補正するため、精度よく補正することはできない。
【0009】
本開示の技術は、エッジ上に存在する欠陥画素を精度よく補正することを可能とする情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の情報処理装置は、放射線撮影することにより得られた放射線画像の欠陥画素を補正する処理を行う情報処理装置であって、プロセッサを備え、プロセッサは、放射線画像に含まれる1つの欠陥画素を補正対象画素として選択し、選択した補正対象画素の周辺のエッジの有無を検出し、エッジがある場合には、補正対象画素を中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、補正対象画素からの正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度と、補正対象画素から正常画素までの距離とに応じた第1の重みを付けて補正対象画素を補正する第1補正処理を行い、エッジがない場合には、正常画素の各々に、差分角度に依存せず、距離にのみ依存する第2の重みを付けて補正対象画素を補正する第2補正処理を行う。
【0011】
差分角度は、0°から180°の範囲内の値を取り、第1の重みは、差分角度が0°及び180°の場合に最大となり、かつ差分角度が90°の場合に最小となる、90°を中心として対称な関数を含んで表されることが好ましい。
【0012】
関数は、差分角度の余弦の絶対値を取った値のべき乗で表されることが好ましい。
【0013】
第1の重みは、第2の重みよりも距離に対する依存性が小さいことが好ましい。
【0014】
プロセッサは、微分方向が異なる2つの微分フィルタを用いて2つの微分値を算出し、2つの微分値に基づいてエッジ強度を算出し、エッジ強度を閾値と比較することによりエッジの有無を検出することが好ましい。
【0015】
エッジ強度は、2つの微分値の二乗和の平方根、又は2つの微分値の絶対値和であることが好ましい。
【0016】
プロセッサは、2つの微分値に基づいてエッジ方向を算出することが好ましい。
【0017】
エッジ方向は、2つの微分値の比を、逆正接関数に適用することにより算出した角度により表されることが好ましい。
【0018】
微分フィルタの各々は、Prewittフィルタ又はSobelフィルタであることが好ましい。
【0019】
プロセッサは、補正対象画素に関して点対称となる一対の正常画素の画素値の差分絶対値を複数の方向について算出し、算出した複数の差分絶対値の最大値、加算値、又は二乗和平方根に基づいてエッジ強度を算出し、エッジ強度を閾値と比較することによりエッジの有無を検出してもよい。
【0020】
プロセッサは、複数の差分絶対値の最小値が得られる方向を、エッジ方向として検出することが好ましい。
【0021】
プロセッサは、一対の正常画素として選択する一対の画素のいずれかが欠陥画素である場合に、一対の画素の角度を維持しつつ、補正対象画素から離れる方向に正常画素を探索し、探索の結果見つかった正常画素を選択することが好ましい。
【0022】
プロセッサは、放射線画像に対してLOG変換処理を行い、LOG変換後の放射線画像を用いてエッジの有無を検出することが好ましい。
【0023】
プロセッサは、放射線画像に対して散乱線除去グリッドによるグリッド縞を除去するグリッド縞除去処理を行い、グリッド縞除去後の放射線画像を用いてエッジの有無の検出と補正対象画素の補正とを行うことが好ましい。
【0024】
本開示の情報処理方法は、放射線撮影することにより得られた放射線画像の欠陥画素を補正する処理を行う情報処理方法であって、放射線画像に含まれる1つの欠陥画素を補正対象画素として選択し、選択した補正対象画素の周辺のエッジの有無を検出すること、エッジがある場合には、補正対象画素を中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、補正対象画素からの正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度と、補正対象画素から正常画素までの距離とに応じた第1の重みを付けて補正対象画素を補正する第1補正処理を行うこと、エッジがない場合には、正常画素の各々に、差分角度に依存せず、距離にのみ依存する第2の重みを付けて補正対象画素を補正する第2補正処理を行うこと、を含む。
【0025】
本開示のプログラムは、放射線撮影することにより得られた放射線画像の欠陥画素を補正する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、放射線画像に含まれる1つの欠陥画素を補正対象画素として選択し、選択した補正対象画素の周辺のエッジの有無を検出すること、エッジがある場合には、補正対象画素を中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、補正対象画素からの正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度と、補正対象画素から正常画素までの距離とに応じた第1の重みを付けて補正対象画素を補正する第1補正処理を行うこと、エッジがない場合には、正常画素の各々に、差分角度に依存せず、距離にのみ依存する第2の重みを付けて補正対象画素を補正する第2補正処理を行うこと、を含む処理をコンピュータに実行させる。
【0026】
本開示の技術によれば、エッジ上に存在する欠陥画素を精度よく補正することを可能とする情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】放射線撮影システムの構成例を示す図である。
図2】エッジ方向について説明する図である。
図3】検出部が用いる2つの微分フィルタの一例を示す図である。
図4】微分フィルタの係数の位置に欠陥画素が存在させる場合に、係数を移動させる例を示す図である。
図5】エッジ上に存在する点欠陥の補正処理について説明する図である。
図6】エッジ上に存在する欠陥画素を含む線欠陥の補正処理について説明する図である。
図7】式(4)で表される重みの差分角度に対する依存性を示す図である。
図8】式(4A)で表される重みの差分角度に対する依存性を示す図である。
図9】画像処理部による画像処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】Prewittフィルタを示す図である。
図11】Sobelフィルタを示す図である。
図12】斜め方向に微分を行う微分フィルタの例を示す図である。
図13】エッジ検出に用いる複数のマスクの一例を示す図である。
図14】エッジ検出に用いる複数のマスクの他の例を示す図である。
図15】一対の画素の角度を維持しつつ正常画素を探索する例を示す図である。
図16】変形例に係る画像処理部による画像処理の流れを示すフローチャートである。
図17】従来の補正方法による問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面に従って本開示の技術に係る実施形態の一例について説明する。
【0029】
[実施形態]
図1は、放射線撮影システム2の構成例を示す。放射線撮影システム2は、放射線発生装置3、放射線管4、FPD5、及び情報処理装置6を有する。
【0030】
放射線発生装置3は、ユーザが不図示の曝射スイッチを操作することに応じて、放射線管4に高電圧パルスを与えて放射線Rを発生させる。例えば、放射線RはX線である。放射線管4が発生した放射線Rは、被写体Hに照射される。放射線Rは、その一部が被写体Hを透過してFPD5に到達する。
【0031】
FPD5は、カセッテホルダ7に着脱可能に収容されている。被写体Hを透過した放射線Rは、カセッテホルダ7の検出面7Aを透過してFPD5に入射する。また、カセッテホルダ7には、散乱線除去グリッド8が着脱自在に装着可能となっている。散乱線除去グリッド8は、FPD5の検出面7A側に挿入される。カセッテホルダ7に散乱線除去グリッド8が装着されている場合には、検出面7Aに入射した放射線Rは、散乱線除去グリッド8を介してFPD5に入射する。放射線Rは、散乱線除去グリッド8を通過する際に散乱線が除去される。
【0032】
FPD5は、放射線Rの入射線量に応じた信号電荷を発生して蓄積する複数の画素が2次元アレイ状に配列された画素アレイを有する。各画素には、光電変換素子が含まれる。光電変換素子は、蛍光体により可視光に変換された放射線Rを信号電荷に変換して蓄積する。FPD5は、画素ごとの信号電荷に応じた放射線画像を生成し、生成した放射線画像を無線又は有線で情報処理装置6に送信する。なお、FPD5は、放射線Rを一旦可視光に変換し、その可視光を信号電荷に変換する間接型の放射線検出器に限られず、放射線Rの照射を直接信号電荷に変換する直接型の放射線検出器であってもよい。
【0033】
情報処理装置6は、制御部10、ディスプレイ11、操作部12、記憶部13、及び画像処理部14を有する。情報処理装置6は、FPD5から受信した放射線画像に基づく処理を行う。
【0034】
制御部10は、不図示の1つ又は複数のプロセッサを備え、記憶部13に記憶されているプログラム15を実行することにより各種機能を実現する。記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。記憶部13は、制御部10がFPD5から受信した放射線画像、画像処理部14により画像処理された後の画像、画像処理部14が画像処理に用いる各種データ等を記憶している。
【0035】
また、記憶部13は、欠陥画素データ16を記憶している。欠陥画素データ16は、FPD5の画素アレイにおける欠陥画素の位置、種類等を表す情報である。欠陥画素の種類には、点欠陥と線欠陥とが含まれる。点欠陥は、孤立した欠陥画素である。線欠陥は、線状に連続した欠陥画素である。線欠陥は、画素アレイの行方向又は列方向に生じる。欠陥画素データ16は、通常の放射線撮影の他に行われるキャリブレーション用の放射線撮影により取得される。キャリブレーションは、製品出荷時、設置時に加えて、定期メインテナンス時に実行される。
【0036】
画像処理部14は、制御部10がFPD5から受信した放射線画像に対して画像処理を行う。本開示では、画像処理部14は、放射線画像に対して欠陥画素補正を行う。
【0037】
画像処理部14は、機能構成として、取得部20、検出部21、及び補正部22を有している。詳しくは後述するが、取得部20は、制御部10がFPD5から受信した放射線画像を取得する。検出部21は、放射線画像に写る被写体Hのエッジを検出する。補正部22は、欠陥画素データ16と、検出部21によるエッジ検出の結果とに基づいて欠陥画素補正を行う。本開示では、エッジ検出とは、欠陥画素の周辺のエッジの有無を検出することと、エッジがある場合にエッジ方向を検出することをいう。
【0038】
これらの機能構成は、制御部10のプロセッサがプログラム15に基づいて処理を実行することで実現されてもよい。また、これらの機能構成は、画像処理部14が備える一つ又は複数のプロセッサが記憶部13から読み込んだプログラム15に基づいて処理を実行することにより実現されてもよい。
【0039】
制御部10及び画像処理部14のプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成される。画像処理部14の各部は、同様の機能を果たすのであれば、集積回路などで構成されてもよい。
【0040】
ディスプレイ11は、制御部10がFPD5から受信した放射線画像、画像処理部14で画像処理された画像等を表示する。操作部12は、制御部10、FPD5等に対する指示を入力することを可能とし、不図示のユーザーインターフェイスを介してFPD5に対する指示の入力を受け付ける。
【0041】
図2は、エッジ方向について説明する。放射線画像を構成する画素が、X方向及びY方向に平行に配列されているとする。X方向とY方向とは、互いに直交している。本開示では、X方向とエッジ方向とのなす角度をαとする。以下、角度αを、エッジ角度αという。エッジ方向は、エッジ角度αにより表される。
【0042】
検出部21は、微分方向が異なる2つの微分フィルタを用いて2つの微分値を算出することによりエッジ検出を行う。本実施形態では、検出部21は、放射線画像に対してLOG変換処理を行い、LOG変換後の放射線画像に対してエッジ検出を行う。LOG変換は階調変換の一種である。画素値が放射線量にリニアに依存する放射線画像に対してLOG変換を行うことにより、コントラストが線量に依存しない画像が生成される。但し、補正部22は、LOG変換前の放射線画像に対して補正処理を行ってもよい。
【0043】
図3は、検出部21が用いる2つの微分フィルタの一例を示す。微分フィルタFx及びFyは、それぞれ3×3画素のサイズを有する一次微分フィルタである。微分フィルタFxは、X方向への微分値を取得する一次微分フィルタである。微分フィルタFyは、Y方向への微分値を取得する一次微分フィルタである。以下、放射線画像に含まれる1つの画素の画素値をQL(X,Y)と表す。また、微分フィルタFxによるX方向への微分値をΔQL(X,Y)と表す。微分フィルタFyによるY方向への微分値をΔQL(X,Y)と表す。
【0044】
検出部21は、補正対象画素Psを中心として、微分フィルタFx及びFyをそれぞれ適用することにより、微分値ΔQL(X,Y)及びΔQL(X,Y)を算出する。補正対象画素Psは、放射線画像に含まれる1つの欠陥画素である。補正対象画素Psに対応する微分フィルタFx及びFyの中央の係数は0である。微分値ΔQL(X,Y)は、補正対象画素Psに対してX方向に隣接する正常画素の画素値の差である。微分値ΔQL(X,Y)は、補正対象画素Psに対してY方向に隣接する正常画素の画素値の差である。
【0045】
検出部21は、微分値ΔQL(X,Y)及びΔQL(X,Y)を算出した後、下式(1)を用いてエッジ強度Eiを算出する。下式(1)は、微分値ΔQL(X,Y)及びΔQL(X,Y)の二乗和の平方根をエッジ強度Eとすることを表す。
【数1】
【0046】
検出部21は、上式(1)に代えて、下式(1A)を用いてエッジ強度Eを算出してもよい。下式(1A)は、微分値ΔQL(X,Y)及びΔQL(X,Y)の絶対値和をエッジ強度Eとすることを表す。
【数2】
【0047】
検出部21は、算出したエッジ強度Eを閾値と比較することにより、補正対象画素Psの周辺のエッジの有無を判定する。検出部21は、エッジ強度Eが閾値以上である場合にエッジがあると判定し、エッジ強度Eが閾値未満である場合にエッジがないと判定する。
【0048】
また、検出部21は、微分値ΔQL(X,Y)及びΔQL(X,Y)を算出した後、下式(2)を用いて上述のエッジ角度αを算出する。下式(2)は、微分値ΔQL(X,Y)及びΔQL(X,Y)の比を、逆正接関数に適用することによりエッジ角度αを算出することを表す。
【数3】
【0049】
検出部21は、エッジの検出結果(すなわち、エッジの有無、及びエッジがある場合におけるエッジ角度α)を補正部22に供給する。
【0050】
なお、検出部21は、微分フィルタFx及びFyを適用する際に、係数が非ゼロの位置に対応する画素が欠陥画素である場合には、補正対象画素Psから当該係数への方向を保ったまま、当該係数の位置を少なくとも1画素分だけ外側に移動させる。すなわち、検出部21は、係数の位置が正常画素となるまで、係数を外側に移動させる。例えば、図4に示すように、検出部21は、微分フィルタFxの係数「-1」の位置が欠陥画素である場合に、係数「-1」の位置を補正対象画素Psから-X方向に離れる方向に移動させる。
【0051】
次に、補正部22による補正処理について説明する。補正部22は、補正対象画素Psを中心としたマスクを設定し、マスク内に含まれる正常画素の画素値を重み付け加算した値を用いて補正対象画素Psを補正する。
【0052】
図5は、エッジ上に存在する点欠陥の補正処理について説明する。図5に示すマスクのサイズは、5×5画素である。θ(X,Y)は、マスク内の1つの画素と補正対象画素Psとを結ぶ線がX方向に対してなす角度を表している。D(X,Y)は、当該画素と補正対象画素Psとの距離を表している。本例では、エッジ上の1つの欠陥画素(点欠陥)を補正対象画素Psとして選択し、補正対象画素Psの座標を原点としている。
【0053】
補正部22は、補正対象画素Psの画素値を、下式(3)~(5)に基づいて算出したQL(0,0)に置換する。下式(3)中のΣは、-2≦X≦2及び-2≦Y≦2(但し、原点は除く)の範囲内でX,Yを変更して加算を行うことを意味している。
【数4】
【0054】
また、上式(3)中の重みW(X,Y)は、下式(4)で表される。下式(4)中のn,mは、パラメータであり、例えば正の整数に設定される。
【数5】
【0055】
また、上式(4)中の差分角度δ(X,Y)は、下式(5)で表される。差分角度δ(X,Y)は、補正対象画素Psからの補正に用いる正常画素の方向と、エッジ方向とのなす角度である。差分角度δ(X,Y)は、0°から180°の範囲内の値を取る。
【数6】
【0056】
上式(4)は、差分角度δ(X,Y)の余弦の絶対値を取った値のべき乗で表される関数を含む。すなわち、重みW(X,Y)は、差分角度δ(X,Y)が0°及び180°の場合に最大となり、かつ差分角度δ(X,Y)が90°の場合に最小となる、90°を中心として対称な関数を含んで表されている。
【0057】
上式(3)~(5)は、マスク内の正常画素の各々に、差分角度δ(X,Y)と距離D(X,Y)とに応じた重みW(X,Y)を付けて補正対象画素Psを補正することを表している。重みW(X,Y)は、差分角度δ(X,Y)が小さいほど重みW(X,Y)が大きくなる。すなわち、補正対象画素Psからエッジ方向に存在する正常画素の重みW(X,Y)が最も大きくなる。これにより、エッジにまたがった欠陥画素であっても補正残差の少ない良好な補正結果が得られる。
【0058】
図6は、エッジ上に存在する欠陥画素を含む線欠陥の補正処理について説明する。線欠陥の補正処理は、点欠陥の補正処理と同様であり、マスクに含まれる画素から欠陥画素を除外してQL(0,0)を算出する。
【0059】
補正部22は、点欠陥と線欠陥とのいずれの場合においても、エッジ上に存在する欠陥画素を補正する場合に、上式(4)に代えて、下式(4A)を用いてもよい。
【数7】
【0060】
図7は、上式(4)で表される重みW(X,Y)の差分角度δ(X,Y)に対する依存性を示す。図8は、上式(4A)で表される重みW(X,Y)の差分角度δ(X,Y)に対する依存性を示す。図7及び図8に示すように、パラメータnを変更することで、エッジ方向に沿った画素(δ(X,Y)=0°又はδ(X,Y)=180°付近の画素)の重みを調整することができる。
【0061】
例えば、放射線画像が解像度チャートなどの高コントラストかつ高周波のパターンを含む場合に、エッジ方向に沿った画素の重みW(X,Y)を大きくすることで欠陥画素の補正精度が向上させることができる。このため、放射線画像から解像度チャートのパターン領域を検出し、パターン領域内の欠陥画素を補正する場合に、パラメータnを大きくするなどの調整を行うことも好ましい。
【0062】
上式(4)又は上式(4A)で表される重みW(X,Y)は、距離D(X,Y)が大きいほど小さくなる。但し、解像度チャートのように、距離D(X,Y)が大きくても差分角度δ(X,Y)がほぼ0の画素の重みW(X,Y)を大きくすべき場合には、パラメータmを0又は0に近い値に設定すべきである。
【0063】
以下、上式(4)又は上式(4A)で表される重みW(X,Y)を用いた補正処理(すなわエッジ方向を考慮した補正処理)を、第1補正処理という。上式(4)又は上式(4A)で表される重みW(X,Y)は、本開示の技術に係る「第1の重み」の一例である。
【0064】
補正部22は、エッジ強度Eが閾値未満である場合、すなわちエッジがない場合には、補正部22は、上式(4)に代えて、下式(4B)を用いて補正処理を行う。
【数8】
【0065】
上式(4B)は、上式(4)又は上式(4A)においてδ(X,Y)=0としたものである。すなわち、上式(4B)で表される重みW(X,Y)は、差分角度δ(X,Y)に依存せず、距離D(X,Y)にのみ依存する等方的な重みである。上式(4B)で表される重みW(X,Y)は、本開示の技術に係る「第2の重み」の一例である。以下、等方的な第2の重みを用いた補正処理を、第2補正処理という。
【0066】
以下において、第1補正処理と第2補正処理とを区別する必要がない場合には、単に補正処理という。
【0067】
第2補正処理において、パラメータmの値は、第1補正処理の場合とは異なる値であってもよい。エッジがない場合には、エッジがある場合に行われる上述のようにパラメータmを0又は0に近い値に設定することは不要となる。このため、エッジがない場合には、単に距離D(X,Y)が小さいほど重みW(X,Y)を大きくするようにパラメータmを設定することが好ましい。すなわち、第1の重みは、第2の重みよりも距離D(X,Y)に対する依存性が小さくてもよい。
【0068】
なお、マスクのサイズは5×5画素に限られず、3×3画素、7×7画素、9×9画素などであってもよい。例えば、2画素の幅を有する線欠陥上の画素を補正する場合には、補間に用いる正常画素の数を多くするために、7×7画素、9×9画素などのサイズの大きいマスクを用いることで補正精度が向上する。一方で、サイズの大きいマスクを用いると、補正対象画素Psから距離が離れた正常画素を補正に用いるため、補正精度劣化のリスクも増える。このため、補正対象のパターンに応じてマスクのサイズを調整することが好ましい。
【0069】
図9は、画像処理部14による画像処理の流れの一例を示す。まず、取得部20は、制御部10がFPD5から受信した放射線画像を取得する(ステップS10)。次に、検出部21は、放射線画像に対してLOG変換処理を行う(ステップS11)。次に、検出部21は、記憶部13に記憶された欠陥画素データ16に基づいて、1つの欠陥画素を補正対象画素Psとして選択する(ステップS12)。
【0070】
次に、検出部21は、補正対象画素Psを中心として微分フィルタFx及びFyをそれぞれ適用することにより、エッジ検出処理を行う(ステップS13)。具体的には、検出部21は、エッジ強度E及びエッジ角度αを算出する。
【0071】
次に、検出部21は、補正対象画素Psの周辺にエッジがあるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、検出部21は、エッジ強度Eが閾値以上である場合にエッジがあると判定し、エッジ強度Eが閾値未満である場合にエッジがないと判定する。
【0072】
エッジがある場合には(ステップS14:YES)、補正部22は、エッジ方向を考慮した第1補正処理を行う(ステップS15)。一方、エッジがない場合には(ステップS14:NO)、補正部22は、エッジ方向を考慮しない等方的な第2補正処理を行う(ステップS16)。
【0073】
補正部22は、第1補正処理又は第2補正処理を行った後、全ての欠陥画素の補正が終了したか否かを判定する(ステップS17)。補正部22は、全ての欠陥画素の補正が終了していないと判定した場合には(ステップS17:NO)、処理をステップS12に戻す。ステップS12において、検出部21は、補正が行われていない欠陥画素を補正対象画素Psとして選択する。そして、補正部22は、全ての欠陥画素の補正が終了したと判定した場合には(ステップS17:YES)、処理を終了する。
【0074】
従来の補正方法では、高コントラストのエッジ上に欠陥画素が存在すると、補正後の放射線画像には補正残差が視認される。特に、高コントラストかつ高周波のパターンでは、補正残差が顕著となる。これに対して、本開示に係る補正方法では、放射線画像から補正対象画素Psとして選択された欠陥画素の周辺にエッジがある場合には、補正対象画素Psを中心として設定したマスク内の正常画素の各々に、補正対象画素Psからの正常画素の方向とエッジ方向とのなす角度である差分角度δ(X,Y)と、補正対象画素Psから正常画素までの距離D(X,Y)とに応じた第1の重みW(X,Y)を付けて補正対象画素Psを補正する。これにより、エッジ上に存在する欠陥画素を精度よく補正することができる。特に、エッジにまたがった線欠陥についても補正残差のない良好な補正結果を得ることができる。
【0075】
[変形例]
次に、上記実施形態の各種の変形例について説明する。上記実施形態では、検出部21は、図3に示す微分フィルタFx及びFyを用いて微分値を算出しているが、これに代えて、図10又は図11に示す微分フィルタFx及びFyを用いてもよい。図10に示す微分フィルタFx及びFyは、Prewittフィルタと称される。図11に示す微分フィルタFx及びFyは、Sobelフィルタと称される。Prewittフィルタ又はSobelフィルタを用いることにより、ノイズの影響を低減することができる。
【0076】
また、検出部21は、図3に示す微分フィルタFx及びFyに代えて、図12に示す斜め方向に微分を行う微分フィルタFx及びFyを用いてもよい。図12に示す微分フィルタFx及びFyでは、係数「1」及び「-1」が斜め方向に配置されている。すなわち、図12に示す微分フィルタFx及びFyは、X方向に対して45°をなす方向の微分値と、Y方向に対して45°をなす方向の微分値とを取得することを可能とする。なお、Prewittフィルタ又はSobelフィルタを用いる場合においても、同様の変形が可能である。
【0077】
また、検出部21は、微分フィルタを用いた検出処理に代えて、補正対象画素Psに関して点対称となる一対の正常画素の画素値の差分絶対値を複数の方向について算出することにより、エッジ検出を行ってもよい。例えば、検出部21は、図13に示す8種類のマスクを、補正対象画素Psを中心とする領域に適用する。図13に示す8種類のマスクは、マスクサイズが5×5画素であり、補正対象画素Psに関して点対称となる一対の正常画素Piが設定されている。各マスクは、一対の正常画素Piの方向が異なる。図13では、斜線のハッチングを施した画素が、エッジ検出処理に用いる正常画素Piである。
【0078】
検出部21は、全マスクを用いて差分絶対値を算出し、算出した複数の差分絶対値の最大値及び最小値を求める。検出部21は、最大値を閾値と比較することによりエッジの有無を検出する。具体的には、検出部21は、最大値が閾値以上である場合にはエッジがあると判定し、最大値が閾値未満である場合にはエッジがないと判定する。なお、検出部21は、複数の差分絶対値の最大値に代えて、複数の差分絶対値の加算値、又は複数の差分絶対値の二乗和平方根を閾値と比較することによりエッジの有無を検出してもよい。
【0079】
また、検出部21は、エッジがある場合には、複数の差分絶対値の最小値が得られる方向をエッジ方向として検出する。
【0080】
検出部21は、5×5画素よりも大きなサイズのマスクを用いてもよい。例えば、検出部21は、図14に示す7×7画素のサイズを有するマスクを用いてもよい。サイズを7×7画素とすると、一対の正常画素Piの方向をより細かく設定することができるので、マスクの種類は16種類となる。このように大きなサイズのマスクを用いることで、エッジ方向をより精度よく検出することができる。
【0081】
一対の正常画素Piの方向は、一対の正常画素Piを結ぶ線の角度、又は、1つの正常画素Piと補正対象画素Psとを結ぶ線の角度で定義することができる。具体的には、当該画素間のX方向に関する距離をΔXとし、当該画素間のY方向に関する距離をΔYとした場合、角度は、tan-1(ΔY/ΔX)で定義される。
【0082】
なお、補正対象画素Psを補正するには、上述の一対の正常画素Piとして選択する一対の画素がともに欠陥画素ではない必要がある。このため、もし一対の画素のいずれかが欠陥画素である場合には、一対の画素の角度を維持しつつ、補正対象画素Psから離れる方向に正常画素Piを探索し、探索の結果見つかった正常画素Piを選択すればよい。図15は、角度が26.6°の一対の画素の一方が欠陥画素である場合に、角度を26.6°に維持したまま正常画素Piを探索する処理を示している。但し、この結果選択された一対の正常画素Piは、各正常画素Piの補正対象画素Psからの距離が異なることになるため、補正対象画素Psに対して点対称ではなくなる。
【0083】
また、補正対象画素Psから一定値以上離れた一対の正常画素Piを用いてエッジ検出処理を行うと検出精度が低下することが考えられるので、補正対象画素Psからの一対の正常画素Piの距離を一定値未満とするように上記探索の範囲を制限することが好ましい。この場合、補正対象画素Psから一定値内で一対の正常画素Piが見つからなければ、その角度を無視してエッジ検出処理を行えばよい。
【0084】
なお、本変形例においても、検出部21は、LOG変換後の放射線画像に対してエッジ検出処理を行うことが好ましい。但し、補正部22は、LOG変換前の放射線画像に対して補正処理を行ってもよい。
【0085】
また、画像処理部14は、カセッテホルダ7に散乱線除去グリッド8が装着されている場合に、放射線画像からグリッド縞を除去する処理を行うグリッド縞除去処理部を備えることも好ましい。グリッド縞除去処理部は、散乱線除去グリッド8の装着の有無と、装着されている場合におけるグリッドの方向及び本数を検出し、高周波成分であるグリッド縞を除去する。例えば、グリッド縞除去処理部は、放射線画像からグリッド縞を除去し、グリッド縞が除去された低周波成分を有する放射線画像を作成する。この場合、検出部21は、グリッド縞除去後の放射線画像に対してエッジ検出処理と欠陥画素の補正処理とを行う。
【0086】
図16は、変形例に係る画像処理部14による画像処理の流れを示す。図16に示すフローチャートは、ステップS10とステップS11との間に、ステップS20及びS21を含む点のみが、図9に示すフローチャートと異なる。グリッド縞除去処理部は、ステップS10の後、散乱線除去グリッド8が装着されているか否かを判定する(ステップS20)。グリッド縞除去処理部は、散乱線除去グリッド8が装着されていると判定した場合には(ステップS20:YES)、ステップS10で取得された放射線画像に対して上述のグリッド縞除去処理を行う(ステップS21)。グリッド縞除去処理部は、散乱線除去グリッド8が装着されていないと判定した場合には(ステップS20:NO)、処理をステップS11に移行させる。
【0087】
なお、グリッド縞除去処理部は、ステップS11でLOG変換処理が行われた後にグリッド縞除去処理を行ってもよい。
【0088】
上記実施形態において、例えば、取得部20、検出部21、補正部22、及びグリッド縞除去処理部といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるPLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0089】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、及び/又は、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0090】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0091】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0092】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0093】
2 放射線撮影システム
3 放射線発生装置
4 放射線管
6 情報処理装置
7 カセッテホルダ
7A 検出面
8 散乱線除去グリッド
10 制御部
11 ディスプレイ
12 操作部
13 記憶部
14 画像処理部
15 プログラム
16 欠陥画素データ
20 取得部
21 検出部
22 補正部
α エッジ角度
Fx,Fy 微分フィルタ
H 被写体
Pi 正常画素
Ps 補正対象画素
R 放射線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17