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特開2024-28146硬化性樹脂組成物、樹脂硬化膜、プリント基板、半導体パッケージおよび表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028146
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、樹脂硬化膜、プリント基板、半導体パッケージおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240222BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G03F7/027 515
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119980
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022131166
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 佳佑
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AC33
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC45
2H225AC49
2H225AC54
2H225AC63
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD13
2H225AD15
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AN29P
2H225AN39P
2H225BA11P
2H225BA22P
2H225CA12
2H225CA13
2H225CA21
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】重合開始剤やその分解物による汚染の抑制と、接着強度の確保と、を両立し得る硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)フルオレン骨格を有する特定の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも2個の不飽和基を有する重合性化合物、
(C)フルオレン骨格を有する特定の光重合開始剤、および
(D)溶剤、
を含み、前記(C)光重合開始剤の含有量は、前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と前記(B)重合性化合物の合計100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも2個の不飽和基を有する重合性化合物、
(C)下記一般式(9)で表される光重合開始剤、および
(D)溶剤、
を含み、
前記(C)光重合開始剤の含有量は、前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と前記(B)重合性化合物の合計100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部は炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して0以上3以下の数である。Gは、それぞれ独立して(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1以上20以下の数である。)
【化2】
【化3】
(式(2)、(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2以上10以下の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2以上20以下の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0以上10以下の数である。*は一般式(1)に示す化合物との結合部位を示す。)
【化4】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。*は一般式(1)に示す化合物との結合部位を示す。)
【化5】
(一般式(9)中、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のシクロアルキルアルキル基、-N(R、-COR10、または-CO-CRで表される置換基である。なお、これらの置換基が有するメチレン基(-CH-)はO、N、SまたはC(=O)で置換されてもよい。
は独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキルアルキル基、または炭素数2以上20以下のアルケニル基を表す。なお、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、-N-、-Sまたは-C(=O)-で置換されてもよい。また、2つのRが互いに結合して環を形成してもよい。
およびRは独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数4以上20以下のシクロアルキルアルキル基、炭素数4以上20以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはニトロ基で置換されてもよい。また、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、-N-、-S-または-C(=O)-で置換されてもよい。RおよびRが互いに結合して環を形成してもよい。
あるいは、Rが、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、または炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基であって、Rが、下記一般式(10)~(12)で表される官能基のうちいずれかであってもよい。
【化6】
(一般式(10)中、R13は、水素、炭素数1以上8以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、またはフェニル基を表し、R14、R15およびR16は独立して、水素原子、または炭素数1以上4以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基を表す。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。)
【化7】
(一般式(11)中、sは、0以上4以下の数である。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。)
【化8】
(一般式(12)中、Arは、いずれも置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基またはピリジル基を表す。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。)
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基またはN-ジアルキル基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、ハロゲン原子、またはヒドロキシ基で置換されてもよい。
は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはニトロ基で置換されてもよい。また、これらの置換基が有するメチレン基(-CH-)はOで置換されてもよい。また、2つのRが互いに結合して環を形成してもよく、このとき、上記環は、-O-、-S-、-NH-を介して形成された五員環または六員環であってもよい。
10は、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、または-S-で置換されてもよい。これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-SR11、または-OR12で置換されてもよい。
11およびR12は独立して、水素原子、または炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が1000以上40000以下であり、酸価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(E)増感剤を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)増感剤は、ベンゾフェノン誘導体またはチオキサントン誘導体を含む、請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(F)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂硬化膜を絶縁膜として含む、プリント基板。
【請求項8】
請求項6に記載の樹脂硬化膜を絶縁膜として含む、半導体パッケージ。
【請求項9】
請求項6に記載の樹脂硬化膜を絶縁膜として含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、樹脂硬化膜、プリント基板、半導体パッケージおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、半導体パッケージおよび表示装置などの製造時には、各種材料を接着させるための接着剤が用いられる。このような接着剤には、微細な部品同士を接着させるために微細にパターン化することが要求されることがあり、そのためアルカリ現像可能な樹脂、硬化性を付与する重合性化合物、および重合性化合物を硬化させるための重合開始剤を含む組成物が用いられることがある(特許文献1)。
【0003】
たとえば特許文献1には、アルカリ可溶性のポリマー、重合性化合物および重合開始剤を含む、接着剤組成物が記載されている。特許文献1では、重合開始剤としてイルガキュア907が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-176343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によると、特許文献1に記載のような接着剤を用いて各種部材を接着しようとすると、重合開始剤やその分解物により、接着された装置等が汚染されることがあった。一方で、分解物による汚染が生じにくい重合開始剤を用いると接着強度が十分ではなく、分解物による汚染の抑制と、接着強度の確保と、を両立することは非常に困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、重合開始剤やその分解物による汚染の抑制と、接着強度の確保と、を両立し得る硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化膜、ならびに、当該樹脂組成物を接着剤として使用したプリント基板、半導体パッケージおよび表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態は、下記[1]~[5]の硬化性樹脂組成物に関する。
[1](A)下記一般式(1)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも2個の不飽和基を有する重合性化合物、
(C)下記一般式(9)で表される光重合開始剤、および
(D)溶剤、
を含み、前記(C)光重合開始剤の含有量は、前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と前記(B)重合性化合物の合計100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、硬化性樹脂組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
式(1)中、Arは、それぞれ独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部は炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して0以上3以下の数である。Gは、それぞれ独立して(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1以上20以下の数である。
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
式(2)、(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2以上10以下の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2以上20以下の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0以上10以下の数である。*は一般式(1)に示す化合物との結合部位を示す。
【0013】
【化4】
【0014】
式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。*は一般式(1)に示す化合物との結合部位を示す。
【0015】
【化5】
【0016】
一般式(9)中、
Aは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のシクロアルキルアルキル基、-N(R、-COR10、または-CO-CRで表される置換基である。なお、これらの置換基が有するメチレン基(-CH-)はO、N、SまたはC(=O)で置換されてもよい。
は独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキルアルキル基、または炭素数2以上20以下のアルケニル基を表す。なお、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、-N-、-Sまたは-C(=O)-で置換されてもよい。また、2つのRが互いに結合して環を形成してもよい。
およびRは独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数4以上20以下のシクロアルキルアルキル基、炭素数4以上20以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはニトロ基で置換されてもよい。また、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、-N-、-S-または-C(=O)-で置換されてもよい。RおよびRが互いに結合して環を形成してもよい。
あるいは、Rが、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、または炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基であって、Rが、下記一般式(10)~(12)で表される官能基のうちいずれかであってもよい。
【0017】
【化6】
【0018】
一般式(10)中、R13は、水素、炭素数1以上8以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、またはフェニル基を表し、R14、R15およびR16は独立して、水素原子、または炭素数1以上4以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基を表す。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。
【0019】
【化7】
【0020】
一般式(11)中、sは、0以上4以下の数である。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。
【0021】
【化8】
【0022】
一般式(12)中、Arは、いずれも置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基またはピリジル基を表す。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。
【0023】
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基またはN-ジアルキル基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、ハロゲン原子、またはヒドロキシ基で置換されてもよい。
は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数4以上20以下のシクロアルキル基、炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはニトロ基で置換されてもよい。また、これらの置換基が有するメチレン基(-CH-)はOで置換されてもよい。また、2つのRが互いに結合して環を形成してもよく、このとき、上記環は、-O-、-S-、-NH-を介して形成された五員環または六員環であってもよい。
10は、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数4以上20以下のシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、または-S-で置換されてもよい。これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-SR11、または-OR12で置換されてもよい。
11およびR12は独立して、水素原子、または炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基を表す。
【0024】
[2]前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が1000以上40000以下であり、酸価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3](E)増感剤を含む、[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記(E)増感剤は、ベンゾフェノン誘導体またはチオキサントン誘導体を含む、[3]に記載の硬化性樹脂組成物。
[5](F)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0025】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態は、下記[6]の樹脂硬化膜に関する。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
【0026】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態は、下記[7]~[9]のプリント基板、半導体パッケージおよび表示装置に関する。
[7][6]に記載の樹脂硬化膜を絶縁膜として含む、プリント基板。
[8][6]に記載の樹脂硬化膜を絶縁膜として含む、半導体パッケージ。
[9][6]に記載の樹脂硬化膜を絶縁膜として含む、表示装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、重合開始剤やその分解物による汚染の抑制と、接着強度の確保と、を両立し得る硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化膜、ならびに、当該樹脂組成物を接着剤として使用したプリント基板、半導体パッケージおよび表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。また、これ以降に例示する化合物または官能基もしくは構造は、特に言及されない限り、例示されたもののうち1種類のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0029】
1.硬化性樹脂組成物
上記第1の課題を解決するための、本発明の一実施形態は、
(A)一般式(1)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも2個の不飽和基を有する重合性化合物、
(C)一般式(9)で表される光重合開始剤、および
(D)溶剤
を含み、前記(C)光重合開始剤の含有量は、前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と前記(B)重合性化合物の合計100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、硬化性樹脂組成物に関する。
【0030】
1-1.一般式(1)で表される(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂
(A)一般式(1)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(以下、単に「(A)成分」ともいう。)は、重合性不飽和基とアルカリ可溶性を発現するための酸性基とを分子中に有し、光または熱の刺激により重合性不飽和基が重合反応を生じて硬化する化合物である。
【0031】
【化9】
【0032】
一般式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。
【0033】
なお、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、いずれもこれらの一方又は両方を意味する。
【0034】
【化10】
【0035】
【化11】
【0036】
一般式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は一般式(1)に示す化合物との結合部位を示す。
【0037】
【化12】
【0038】
一般式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。*は一般式(1)に示す化合物との結合部位を示す。
【0039】
一般式(1)で表される樹脂は、以下の方法で合成することができる。
【0040】
まず、下記一般式(5)で表される、1分子内にいくつかのアルキレンオキサイド変性基を有してもよい、ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a-1)(以下、単に「エポキシ化合物(a-1)」ともいう。)に、(メタ)アクリル酸、下記一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸誘導体、および下記一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体の少なくとも1種を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートであるジオール化合物を得る。なお、上記ビスアリールフルオレン骨格は、ビスナフトールフルオレン骨格またはビスフェノールフルオレン骨格であることが好ましい。
【0041】
【化13】
【0042】
一般式(5)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
一般式(6)、(7)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。
【0046】
上記エポキシ化合物(a-1)と(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本実施形態において、上記反応で得られる化合物は、下記一般式(8)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「ジオール(d)」ともいう。)である。
【0047】
【化16】
【0048】
一般式(8)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であり、Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0049】
【化17】
【0050】
【化18】
【0051】
一般式(2)および一般式(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は一般式(1)に示す化合物との結合部位を示す。
【0052】
次に、上記得られるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(1)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する不飽和基含有硬化性樹脂を得ることができる。
【0053】
上記酸成分は、ジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分である。一般式(1)で表される樹脂を得るためには、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)と、を併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基などのヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0054】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、およびこれらの酸一無水物などが含まれる。
【0055】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、およびジグリコール酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0056】
上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸およびノルボルナンジカルボン酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0057】
上記芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、およびトリメリット酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸が含まれる。
【0058】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸は、これらのうち、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、およびトリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、およびテトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0059】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸は、その酸一無水物を用いることが好ましい。
【0060】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、およびこれらの酸二無水物などが含まれる。
【0061】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、ならびに、脂環式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの鎖式炭化水素テトラカルボン酸などが含まれる。
【0062】
上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、およびノルボルナンテトラカルボン酸、ならびに、鎖式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの脂環式テトラカルボン酸などが含まれる。
【0063】
上記芳香族炭化水素テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、およびナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸などが含まれる。
【0064】
上記テトラカルボン酸は、これらのうち、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸が好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸がより好ましい。
【0065】
上記テトラカルボン酸は、その酸二無水物を用いることが好ましい。
【0066】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)のかわりに、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、たとえば国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、およびターフェニルジオールなど)の2個のヒドロキシル基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基がそれぞれ反応してエステル結合した形の酸二無水物である。
【0067】
ジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0068】
このとき、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(ジオール(d))、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸二無水物(c)のモル比が、(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0069】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、ジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[〔(b)/2+(c)〕/(d)]が0.5より大きく1.0以下となるように反応させることが好ましい。上記モル比が1.0以下だと、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大するのを抑制して、それぞれの組成物の経時安定性を高めることができる。また、上記モル比が0.5より大きいと、重合性不飽和基を含有するジオール(d)のうち未反応の成分の残存量が増大するのを抑制して、それぞれの組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比を、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0070】
なお、ジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の反応は、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて行う。
【0071】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、およびブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒、ならびに、シクロヘキサノン、およびジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、たとえば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0072】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応は、触媒を使用して行うことが好ましい。上記触媒として、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、およびトリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン類などが記載されている。
【0073】
(A)成分は、酸価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が50mgKOH/g以上であると、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなり、200mgKOH/g以下であると、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。なお、酸価は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0074】
(A)成分は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1000以上40000以下であることが好ましく、1500以上30000以下であることがより好ましく、2000以上15000以下であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が1000以上であると、支持体と被着体との密着性を向上させることができる。また、重量平均分子量(Mw)が40000以下であると、塗布に好適な組成物の溶液粘度に調整しやすく、支持体または被着体の表面への塗布に時間を要しすぎることがなく、被着体への接着性がより高まりやすい。接着強度を重視する場合には、重量平均分子量(Mw)は1000以上5000以下であることが好ましい。
【0075】
(A)成分は、それ自体が熱分解しにくく、他の樹脂と比較して分解物の揮発が生じにくい。また、(A)成分は、後述する(C)成分と同じフルオレン骨格を有するため、(C)成分またはその分解物の揮発を抑制することができる。また、(A)成分は、硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化膜のガラス転移温度を高め、熱による接着性の低下を抑制する。
【0076】
(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、パターニング特性を重視する場合には40質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。(A)成分の上記含有量が10質量%以上であると、(C)成分またはその分解物の揮発を十分に抑制することが可能となり、かつ、高解像度のパターンを形成することが可能となる。
【0077】
1-2.(B)少なくとも2個の不飽和基を有する重合性化合物
(B)少なくとも2個の不飽和基を有する重合性化合物(以下、単に「(B)成分」ともいう。)は、2個以上の重合性不飽和基を有し、光または熱の刺激により重合反応を生じる、アルカリ可溶性基を有さない化合物である。
【0078】
(B)成分は、それぞれの組成物を硬化してなる硬化膜の、被着体または基材への接着強度および耐溶剤性を高めるほか、硬化時の感度および現像性を良好なものとすることができる。
【0079】
(B)成分は、(A)成分が有する重合性不飽和基と反応(重合)し得る重合性不飽和基を少なくとも2個以上有すればよい。上記重合性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。なお、(B)成分は、モノマーであってもよいし、オリゴマー、ポリマーであってもよい。
【0080】
(B)成分の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。これらの重合性化合物の1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。(B)成分は、(A)成分の分子同士を架橋する役割を果たすことができればよく、この機能をより十分に発揮させる観点からは、不飽和結合を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、重合性化合物の分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50以上300以下であることが好ましく、80以上200以下であることがより好ましい。なお、(B)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0081】
また、(B)成分は、アルキレンオキシド変性物であることが好ましい。アルキレンオキシ変性物である(B)成分は、樹脂硬化膜に適度な柔軟性を付与し、被着体への接着性や、パターン形成したときの基板への密着性をより高めることができる。
【0082】
(A)成分と(B)成分との配合割合は、質量比(A)/(B)で、30/70~90/10であることが好ましく、40/60~80/20であることがより好ましい。(A)成分の配合割合が30/70以上であると、所望の硬度を有する樹脂硬化膜を作製したときの(C)成分またはその分解物の揮発が生じにくく、硬化後の硬化物が脆くなりにくく、また、未硬化部において塗膜の酸価が低くなりにくいためにアルカリ現像液に対する溶解性の低下を抑制できる。よって、パターンエッジがギザつくことや、シャープにならないといった不具合が生じにくい。また、(A)成分の配合割合が90/10以下であると、樹脂に占める重合性官能基の割合が十分なので、所望する架橋構造の形成を行うことができる。また、樹脂成分における酸価度が高過ぎないので、硬化部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなりにくいことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0083】
1-3.(C)一般式(9)で表される光重合開始剤
(C)一般式(9)で表される光重合開始剤(以下、単に「(C)成分」ともいう。)は、光を照射されたときに(A)成分および(B)成分の重合を開始させ、現像時の硬化した部分の溶解性を低下させて所望する微細なパターンを形成させる。
【0084】
【化19】
【0085】
一般式(9)中、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のシクロアルキルアルキル基、-N(R、-COR10、または-CO-CRで表される置換基である。なお、これらの置換基が有するメチレン基(-CH-)はO、N、SまたはC(=O)で置換されてもよい。
【0086】
は独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキルアルキル基、または炭素数2以上20以下のアルケニル基を表す。なお、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、-N-、-Sまたは-C(=O)-で置換されてもよい。また、2つのRが互いに結合して環を形成してもよい。これらのうち、炭素数1以上8以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基が好ましい。
【0087】
およびRは独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数4以上20以下のシクロアルキルアルキル基、炭素数4以上20以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはニトロ基で置換されてもよい。また、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、-N-、-S-または-C(=O)-で置換されてもよい。RおよびRが互いに結合して環を形成してもよい。
【0088】
あるいは、Rが、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、または炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基であって、Rが、下記式(10)~(12)で表される官能基のうちいずれかであってもよい。
【0089】
【化20】
【0090】
一般式(10)中、R13は、水素、炭素数1以上8以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、またはフェニル基を表し、R14、R15およびR16は独立して、水素原子、または炭素数1以上4以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基を表す。*は一般式(9)で表される化合物との結合部位を示す。
【0091】
【化21】
【0092】
一般式(11)中、sは、0以上4以下の数である。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。
【0093】
【化22】
【0094】
一般式(12)中、Arは、いずれも置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基またはピリジル基を表す。*は一般式(9)に示す化合物との結合部位を示す。
【0095】
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基またはN-ジアルキル基を表す。これらのうち、N-モルホリニル基が好ましい。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、ハロゲン原子、またはヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0096】
は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはニトロ基で置換されてもよい。また、これらの置換基が有するメチレン基(-CH-)はOで置換されてもよい。また、2つのRが互いに結合して環を形成してもよく、このとき、上記環は、-O-、-S-、-NH-を介して形成された五員環または六員環であってもよい。
【0097】
10は、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数4以上10以下のアルキルシクロアルキル基、炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルケニル基、炭素数6以上20以下のアリール基、または炭素数7以上20以下のアルキルアリール基を表す。なお、これらの官能基が有するメチレン基(-CH-)は、-O-、または-S-で置換されてもよい。これらの官能基が有する水素原子のうち1つまたは複数は独立して、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、SR11、またはOR12で置換されてもよい。
【0098】
11およびR12は独立して、水素原子、または炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよいアルキル基を表す。
【0099】
(C)成分の具体例には、特表2020-507664号公報に記載の各化合物が含まれる。
【0100】
(C)成分は、フルオレン構造を有するため、それ自体が揮発にくく、またその分解物も揮発しにくい。本実施形態では、(A)成分として同様にフルオレン構造を有する樹脂を使用するため、(A)成分と(C)成分の分解物との親和性により、分解物の揮発が生じにくくすることができる。そのため、(C)成分は、本実施形態において接着剤に用いたときに被着体等の汚染を生じにくい。なお、本発明者らの検討によると、オキシムエステル系の開始剤等に、同様に揮発しにくい光重合開始剤は存在するが、そのような開始剤は硬化性が高すぎるため硬化性樹脂組成物を硬化させすぎてしまい、接着剤に用いたときに接着性が十分に高まらない。これに対し、(C)成分は、適度な硬化性を有するため、接着剤に用いたときの接着性も十分に高めることができる。
【0101】
(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下であり、2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であると、適度な光重合の速度を有するので、十分な感度を担保できる。また、(C)成分の含有量が上記上限値以下であると、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0102】
1-4.(D)溶剤
(D)溶剤(以下、単に「(D)成分」ともいう。)は、硬化性樹脂組成物に含まれる各成分を溶解または分散させ、それぞれの組成物の塗布性を高める。
【0103】
(D)成分の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、およびジアセトンアルコールなどのアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオールなどのテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、およびN-メチル-2-ピロリドンなどのケトン類;トルエン、キシレン、およびテトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、およびトリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類などが含まれる。
【0104】
(D)成分の含有量は、目標とする粘度によって変化するが、硬化性樹脂組成物の全質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。(D)成分の含有量が30質量%以上であると、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布しやすい粘度とすることができ、90質量%以下であると、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布した後の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0105】
1-5.(E)増感剤
硬化性樹脂組成物は、(E)増感剤(以下、単に「(E)成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0106】
(E)成分は、(C)成分をより効率的に開裂させて重合反応を効率的に進行させ、これにより樹脂硬化膜の基板への密着性をより高めることができる。
【0107】
(E)成分の例には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のチオキサントン系、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。なお、これら増感剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
(E)成分は、ベンゾフェノン誘導体またはチオキサントン誘導体を含むことが好ましい。これらの増感剤は、(C)成分をさらに効率的に開裂させることができるため、樹脂硬化膜の基板への密着性を高める効果が顕著である。
【0109】
(E)成分の含有量は、(C)成分の全質量を100質量部としたときに0.5質量部以上400質量部以下であることが好ましく、1質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。増感剤の上記含有量が0.5質量部以上であると、光重合開始剤の感度を向上させて、光重合の速度を速めることができる。また、光増感剤の上記含有量が400質量部以下であると、感度の過剰な高まりを抑制して、光の照射により組成物を硬化する際に、焦げ、剥離カスなどを生じにくくすることができる。
【0110】
1-6.(F)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物
硬化性樹脂組成物は、(F)エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(以下、単に「(F)成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0111】
(F)成分は、樹脂硬化膜に適度な柔軟性を付与し、被着体への接着性や、パターン形成したときの基板への密着性をより高めることができる。また、(F)成分は、硬化膜からの(C)成分またはその分解物の揮発量を低減することもできる。
【0112】
(F)成分の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jER YX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB JP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物であることが好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物であることがより好ましい。ビフェニル型のエポキシ化合物を用いることにより、要求特性に合わせた硬化物の機械的強度や耐薬品性と、硬化時の硬化性樹脂組成物のパターニング性を両立することができるとともに、硬化性樹脂組成物を設計する自由度を大きくできる。
【0114】
(F)成分のエポキシ当量は100g/eq以上300g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上250g/eq以下であることがより好ましい。また、(F)成分の数平均分子量(Mn)は100以上5000以下であることが好ましい。上記エポキシ当量が100g/eq以上であり、上記エポキシ化合物の数平均分子量(Mn)が100以上であると、良好な耐溶剤性を有する硬化膜となり得、エポキシ当量が300g/eq以下であり、数平均分子量(Mn)が5000以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。
【0115】
なお、(F)成分のエポキシ当量は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めることができる。また、(F)成分の数平均分子量(Mn)は、例えば、上述のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)で求めることができる。
【0116】
(F)成分を使用する際には、硬化剤および硬化促進剤を併用してもよい。
【0117】
上記硬化剤の例には、アミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、およびルイス酸錯化合物などが含まれる。
【0118】
上記硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、およびイミダゾール類などが含まれる。上記熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、およびヒンダードフェノール系化合物などが含まれる。上記可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、およびリン酸トリクレジルなどが含まれる。上記充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、およびアルミナなどが含まれる。上記消泡剤およびレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、およびアクリル系の化合物が含まれる。上記界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤などが含まれる。上記カップリング剤の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが含まれる。
【0119】
(F)成分の含有量は、固形分の全質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。(F)成分の上記含有量を1質量%以上とすると、樹脂硬化膜の耐薬品性および耐湿密着性をより高めることができる。(F)成分の上記含有量を30質量%以下とすると、基板への樹脂硬化膜の密着性をより高めることができる。
【0120】
1-7.その他の成分
硬化性樹脂組成物は、一般式(1)で表される化合物以外の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、一般式(9)で表される化合物以外の光重合開始剤、熱重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、顔料および染料、消泡剤、界面活性剤、およびカップリング剤などを配合することができる。
【0121】
重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0122】
連鎖移動剤の例には、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、β-メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、3,3’-チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸、ラウリルチオプロピオン酸等のチオール化合物などが含まれる。
【0123】
可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0124】
消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。
【0125】
界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。
【0126】
カップリング剤の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0127】
1-8.硬化性樹脂組成物の製造
硬化性樹脂組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。
【0128】
2.用途
上述の硬化性樹脂組成物は、放射線の照射により樹脂硬化膜を形成する、絶縁材、接着剤、および保護膜などを含む各種用途に用いることができる。また、硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含むことにより露光後または加熱後の現像が可能であるため、細線パターンを形成する用途にも好適に用いることができる。
【0129】
接着剤用途として、特には、パターン形成後も高い接着強度を有するため、MEMSパッケージやLED等の半導体パッケージの作製に好適における、各種部材の接着に用いることができる。
【0130】
絶縁材用途として、特には、高い密着性、耐湿性および耐酸性を有するため、プリント配線基板および半導体パッケージ用の絶縁膜、たとえばソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、バッファーコート層、再配線層、層間絶縁層などの作製に好適に用いることができる。本願においては、半導体パッケージは、フリップチップパッケージ、ウエハレベルパッケージ等に加えて、例えば、フリップチップパッケージをインターポーザー上に積層したもの等のように、半導体チップを含みプリント基板上に実装できるような形態にしたものを含めたものを意味する。その他、塗料やインキのトップコート、プラスチック類のハードコート、および金属類の防錆膜等の作製に用いてもよい。
【0131】
たとえば多層プリント配線とするときは、たとえば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、およびスクリーン印刷法などの方法により、あらかじめ導体配線(第1の導体配線)が形成された基板の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。その後、60~120℃程度で(D)成分(溶剤)を揮発させ、湿潤塗膜を乾燥させる。なお、ポリエステルなどの支持体の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して乾燥させてドライフィルムを形成し、このドライフィルムから基板に乾燥した塗膜を転写してもよい。
【0132】
その後、ネガマスクを介して塗膜を露光し、部分的に光硬化させる。露光は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などの公知の放射線の照射により行えばよい。これらの放射線のうち、紫外線が好ましい。照射する放射線の波長は、250nm以上400nm以下であることが好ましい。放射線の露光量は、25mJ/cm以上3000mJ/cm以下であることが好ましい。なお、ドライフィルムを用いるときは、転写前にドライフィルムで塗膜を露光してもよい。
【0133】
次に、塗膜をアルカリ現像して、露光されていない部分を除去する。現像方法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。また、現像に用いる現像液の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン、および1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕-5-ノナンなどのアルカリ(塩基性化合物)の水溶液などが含まれる。現像条件は、硬化性樹脂組成物により異なるが、20~30℃の温度で、10~120秒行うことが好ましい。なお、上記現像は、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて行うことができる。
【0134】
この露光および現像は、多層プリント配線のうち、スルーホールが形成される位置の塗膜を除去するように行う。
【0135】
その後、現像後の露光部を熱処理して、硬化性樹脂組成物を本硬化(ポストベーク)する。ポストベークは、公知の方法(オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせ)などの公知の方法により行うことができる。加熱条件は、樹脂硬化膜が本硬化(ポストベーク)する温度であれば特に制限されないが、180~250℃の温度で20~120分間行われることが好ましい。
【0136】
その後、アディティブ法などの公知の方法で、樹脂硬化膜の表面に形成された導体配線(第2の導体配線)と、スルーホールのない表面を被覆して第1の導体配線と第2の導体配線とを接続するホールめっきと、を作製して、多層プリント配線が形成されたプリント配線基板を得ることができる。
【0137】
なお、上述の製造方法は硬化性樹脂硬化性組成物の用途の一例を示したものに過ぎず、多層構造ではない単層のプリント配線基板としてもよい。
【0138】
また、接着剤用途に使用するときなどには、ネガマスクを介さずに塗膜の全体を露光してもよい。上記のとき、アルカリ現像は不要である。また、パターニングを行わず、半導体素子や異種材料の接着剤として用いる場合には、塗膜を露光により光硬化するかわりに、加熱により熱硬化させてもよい。
【0139】
また、上述のプリント配線基板や半導体パッケージは、他の機能部品等と組み合わせて半導体装置や表示装置としてもよい。
【実施例0140】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
まず、(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0142】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0143】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させて秤量し〔W(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W-W)/(W-W
【0144】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0145】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0146】
合成例で記載する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(1)でArがベンゼン環で、lが0のエポキシ樹脂、エポキシ当量256g/eq)
AA :アクリル酸
TPP :トリフェニルホスフィン
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
DCPMA :ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA :グリシジルメタクリレート
St :スチレン
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP :トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ :ハイドロキノン
SA :無水コハク酸
TEA :トリエチルアミン
【0147】
[合成例1]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え、固形分が50質量%となるように調整した。
【0148】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(14.37g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を加え、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.0質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0149】
[合成例2]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え、固形分が50質量%となるように調整した。
【0150】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(10.06g、0.03mol)およびTHPA(11.89g、0.08mol)を加え、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有硬化性樹脂(A)-2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.0質量%であり、酸価(固形分換算)は98mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2300であった。
【0151】
[合成例3]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え、固形分が50質量%となるように調整した。
【0152】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(19.25g、0.07mol)およびTHPA(0.30g、0.002mol)を加え、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有硬化性樹脂(A)-3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.3質量%であり、酸価(固形分換算)は97mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4700であった。
【0153】
[合成例4]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.09mol)、AA(12.82g、0.20mol)、TPP(0.23g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え、固形分が50質量%となるように調整した。
【0154】
次いで、得られた反応生成物に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(9.67g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を加え、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-4を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.0質量%であり、酸価(固形分換算)は106mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3300であった。
【0155】
[合成例5]
還流冷却機付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA(300g)を入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。フラスコ内にモノマー混合物(DCPMA(77.1g、0.35mol)、GMA(49.8g、0.35mol)、St(31.2g、0.30mol)にAIBN(10g)を溶解した混合物を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間攪拌し、共重合体溶液を得た。
【0156】
次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA(24.0g、グリシジル基の95%)、TDMAMP(0.8g)およびHQ(0.15g)を加え、120℃で6時間攪拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA(30.0g、AA添加モル数の90%)、TEA(0.5g)を加え120℃で4時間反応させ、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂溶液(A)’-5を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46.0質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0157】
表1および表2に記載の配合量(単位は質量%)で実施例1~10、比較例1~8の硬化性樹脂組成物を調製した。表1で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0158】
(不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A)-1:合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.0質量%)
(A)-2:合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.0質量%)
(A)-3:合成例3で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.3質量%)
(A)-4:合成例4で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.0質量%)
(A)’-5:合成例5で得られた樹脂溶液(固形分濃度46.0質量%)
【0159】
(重合性化合物)
(B)-1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製)
(B)-2:トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキサイド6モル付加物(アロニックスM-360、東亞合成株式会社製)
【0160】
(光重合開始剤)
(C)-1:1-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-2-メチル-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン(TRONLY社製、「TR-NPI-20400」(一般式(9)において、2つのRがいずれも直鎖状の炭素数4のアルキル基、RおよびRがいずれもメチル基、RがN-モルホリニル基である化合物))
(C)’-2:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad907」(「Omnirad」は同社の登録商標))
(C)’-3:1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(BASF社製、「IrgacureOXE-01」「Irgacure」は同社の登録商標)
(C)’-4:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製、Irgacure OXE-02)
(C)’-5:1-(ビフェニル-4-イル)-2-メチル-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン(YOUWEI社製、APi-307)
【0161】
(溶剤)
(D):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0162】
(増感剤)
(E)-1:ミヒラーケトン
(E)-2:2,4-ジエチルチオキサントン
(E)-3:9,10-ジブトキシアントラセン
【0163】
(エポキシ化合物)
(F)-1:ビフェニル型エポキシ樹脂(jER YX4000、三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標、エポキシ当量180~192g/eq)
(F)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER 828、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量120~150g/eq)
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
[評価]
上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜を用いて、以下の評価を行った。
【0167】
[発ガス性評価]
(発ガス性評価用の樹脂膜粉末の作製)
表1および表2に示した硬化性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が20.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで1000mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。
【0168】
次いで、露光した上記露光膜に23℃の2.38%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて60秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、実施例1~10、比較例1~8に係る樹脂膜付き基板を得た。その後、得られた樹脂膜を削り出し、発ガス性評価用の樹脂膜粉末を得た。
【0169】
(評価方法)
得られた樹脂膜の粉末を、TG-DTA装置「TG/DTA6200」(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、空気中、30℃から120℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、120℃で5分間静置した後、120℃から230℃まで昇温速度10℃/minで昇温した。次いで、230℃で30分間静置した後、230℃から260℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、最後に260℃で3分間静置した。上記温度プロファイルに沿って、樹脂膜の重量減少率を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0170】
(評価基準)
◎:重量減少率が、96%以上である
○:重量減少率が、94%以上、96%未満である
△:重量減少率が、92%以上、94%未満である
×:重量減少率が、92%未満である
【0171】
[せん断強度(接着強度)評価]
(せん断強度(接着強度)評価用の樹脂硬化膜付き基板の作成)
表1および表2に示した硬化性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜のうちの感光部分の光硬化反応を行った。
【0172】
次いで、露光した上記露光膜に23℃の2.38%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて60秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、露光膜の未露光部分を除去してガラス基板上に2mm×2mmのパターンを形成した。次いで、パターン上に2mm×2mmにカットしたガラス基板「#1737」を置き、110℃のホットプレート上で1分間加熱し仮接着した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、せん断強度(接着強度)評価用の樹脂硬化膜付き基板を得た。
【0173】
(評価方法)
得られた樹脂硬化膜付き基板に接着させた2mm×2mmのガラス基板「#1737」について、ダイシェアテスター(アークテック社製)でせん断強度(接着強度)を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0174】
(評価基準)
◎:せん断強度(接着強度)が、20MPa以上である
○:せん断強度(接着強度)が、18MPa以上、20MPa未満である
△:せん断強度(接着強度)が、16MPa以上、18MPa未満である
×:せん断強度(接着強度)が、16MPa未満である
【0175】
[現像密着性評価]
(現像密着性評価用の樹脂硬化膜付き基板の作製])
表1および表2に示した硬化性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。
【0176】
次いで、露光した上記露光膜に23℃の2.38%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて60秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、未露光部を除去して10μmのドットパターンを形成した。最後に、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、現像密着性評価用の樹脂硬化膜付き基板を得た。
【0177】
(評価方法)
得られた樹脂硬化膜付き基板の樹脂硬化膜の10μmのドットパターンを、光学顕微鏡を用いて観察し、パターンの剥離の有無を判定した。なお、△以上を合格とした。
【0178】
(評価基準)
◎:パターンに剥離が見られない
〇:パターンのごく一部に剥離が見られる
△:パターンの半分が剥離している
×:パターンの大部分が剥離している
【0179】
[ガラス転移温度評価]
(ガラス転移温度評価用の樹脂硬化膜の作製)
表1および表2に示した硬化性樹脂組成物を、離型アルミ箔「セパニウム」(東洋アルミ株式会社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が30.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。
【0180】
次いで、露光した上記露光膜に23℃の2.38%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて60秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、未露光部を除去して100mm×5mmのパターンを形成した。最後に、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間本硬化(ポストベーク)した後、樹脂硬化膜を離型アルミ箔より剥離し、ガラス転移温度評価用の樹脂硬化膜を得た。
【0181】
(評価方法)
動的粘弾性(DMA)測定装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製RSA-G2)を用い、幅5mmの硬化フィルムをチャック間長さ22mmとなるようにセットし、30℃から300℃の温度範囲でガラス転移温度を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0182】
(評価基準)
◎:ガラス転移温度が、180℃以上である
○:ガラス転移温度が、160℃以上、180℃未満である
△:ガラス転移温度が、140℃以上、160℃未満である
×:ガラス転移温度が、140℃未満である
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
表3および表4から明らかなように、(A)一般式(1)で表される不飽和器含有アルカリ可溶性樹脂と、(C)一般式(9)で表される光重合開始剤と、を用いると、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化膜からの発ガス性が低下し、かつ、被着体との接着強度を高めることができた。なお、一般式(9)で表される光重合開始剤を用いたときも、(A)成分としてフルオレン基を有さない不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を使用すると、(A)成分の分解物が揮発しやすく、かつ一般式(9)で表される光重合開始剤の分解物の揮発を(A)成分が抑制できなかったため、発ガス性を十分に高めることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明によれば、樹脂硬化膜からの揮発物による被着体の汚染を抑制することができる。そのため、本発明は、硬化性接着剤の用途をさらに広げ、当分野のさらなる発展に寄与すると期待される。