(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028220
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】集束粒子ビームを使用してサンプルを結像(image)および処理するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
H01J 37/18 20060101AFI20240222BHJP
H01J 37/16 20060101ALI20240222BHJP
H01J 37/04 20060101ALI20240222BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20240222BHJP
H01J 37/05 20060101ALI20240222BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20240222BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240222BHJP
G03F 1/74 20120101ALI20240222BHJP
【FI】
H01J37/18
H01J37/16
H01J37/04 Z
H01J37/09 A
H01J37/05
H01J37/317 D
H01J37/28 B
H01J37/28 Z
G03F1/74
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023133289
(22)【出願日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】10 2022 208 597.3
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】512158505
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコーピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Microscopy GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト レムレ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュネル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベック
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ノイベルガー
【テーマコード(参考)】
2H195
5C101
【Fターム(参考)】
2H195BD36
5C101AA03
5C101AA07
5C101AA32
5C101BB01
5C101CC05
5C101CC17
5C101EE04
5C101EE38
5C101EE51
5C101EE57
5C101EE68
5C101EE70
5C101EE75
5C101FF02
5C101FF19
5C101FF22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】集束粒子ビームを使用してサンプルを結像および処理するためのデバイスを提供すること。
【解決手段】本願は、(a)超高真空環境において構成された粒子源と、(b)高真空環境においてサンプルを結像し、中真空環境においてサンプルを処理するように構成されたサンプルチャンバと、(c)高真空環境に配置された粒子光学構成要素を有するカラムと、(d)カラム内に配置された検出ユニットと、(e)カラムの出口で終端し、集束粒子ビームとサンプルの局所的な化学反応を誘起できるようなプロセスガスを局所的に提供するように構成された、ガスラインシステムと、(f)粒子ビームと、サンプルから発する粒子とが通過し、検出ユニットにおいて生じる圧力上昇を、10倍以下、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下、最も好ましくは2倍以下に制限するように構成された圧力調整ユニットと、をそれぞれ少なくとも1つ備えるデバイスに関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束粒子ビーム(250)を使用してサンプル(190)を結像および処理するためのデバイス(400、800)であって、
a. 超高真空環境において粒子ビームを生成するように構成された少なくとも1つの粒子源(110)と、
b. 前記サンプル(190)を収容するのに役立ち、高真空環境において前記サンプル(190)を結像し、中真空環境において前記サンプル(190)を処理するように構成された少なくとも1つのサンプルチャンバ(170)と、
c. 高真空環境に配置され、前記粒子ビームから集束粒子ビーム(250)を成形し、前記集束粒子ビームを前記サンプル(190)に向けるように構成された少なくとも1つの粒子光学構成要素(175)を有する少なくとも1つのカラム(430、830)と、
d. 前記少なくとも1つのカラム(430、830)内に配置され、前記サンプル(190)から発する粒子(390)を検出するように構成された少なくとも1つの検出ユニット(350)と、
e. 前記カラム(430、830)からの前記集束粒子ビーム(250)の出口で終端し、前記集束粒子ビーム(190)が前記サンプル(190)を処理するために粒子ビーム誘起の局所的な化学反応を誘起できるような圧力を有する少なくとも1つのプロセスガス(870)を前記サンプル(190)において局所的に提供するように構成された少なくとも1つのガスラインシステム(180)と、
f. 前記粒子ビームと、前記サンプル(190)から発する前記粒子(390)とが通過し、前記サンプル(250)の処理の結果として前記少なくとも1つの検出ユニット(350)において生じる圧力上昇を、前記サンプル(190)から発する前記粒子(390)の前記少なくとも1つの検出ユニット(350)へのアクセスを妨げることなく、10倍以下、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下、最も好ましくは2倍以下に制限するように構成された少なくとも1つの圧力調整ユニット(450、810)とを備える、
デバイス(400、800)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出ユニット(350)の領域において、前記少なくとも1つのカラム(430、830)は、<10-5ミリバール、好ましくは<3・10-6ミリバール、より好ましくは<10-6ミリバール、最も好ましくは<3・10-7ミリバールの圧力を有する、請求項1に記載のデバイス(400、800)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカラム(430、830)は、真空ポンプポート(155)、および/または、前記サンプルチャンバ(170)への少なくとも1つの圧力タイプのバイパスポート(155)を備える、請求項1または2に記載のデバイス(400、800)。
【請求項4】
前記サンプル(190)は、フォトリソグラフィマスクを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガスラインシステム(180)は、1ミリバールから0.001ミリバール、好ましくは0.6ミリバールから0.003ミリバール、より好ましくは0.3ミリバールから0.006ミリバール、最も好ましくは0.1ミリバールから0.01ミリバールの範囲の圧力で、前記少なくとも1つのプロセスガス(870)を前記サンプル(190)において局所的に提供するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの検出ユニット(350)は、シンチレーションカウンタ、特にエバーハートソーンリー検出器、および/または半導体検出器、特に直接電子検出器を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項7】
以下のグループ、すなわち、磁気プリズム(310)、磁気シケイン、およびウィーンフィルタからの少なくとも1つの要素をさらに備え、前記少なくとも1つの要素は、前記少なくとも1つのカラム(430、830)に配置され、前記サンプル(190)から発する前記粒子(390)を、前記少なくとも1つの検出ユニット(350)に誘導するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの圧力調整ユニット(450、810)は、以下のグループ、すなわち、前記少なくとも1つのカラム(430、830)に配置された差動ポンプ圧力ステージ(450)と、前記少なくとも1つのカラム(430、830)からの前記集束粒子ビーム(250)の前記出口において前記少なくとも1つのガスラインシステム(180)の上に配置された少なくとも1つの絞り(810)とからの少なくとも1つの要素を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項9】
前記粒子ビーム(250)のビーム方向において、前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)は、前記少なくとも1つのカラム(430、830)における対物レンズ(175)の裏側焦点面の領域に配置される、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)のチャンバ(410)の真空ポート(465)をポンピングするためのターボ分子ポンプをさらに備える、請求項8または9に記載のデバイス(400、800)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)のチャンバ(410)は、前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)の前記チャンバ(410)をポンピングするための前記サンプルチャンバ(170)への圧力タイプのバイパスポート(465)を備える、請求項8または9に記載のデバイス(400、800)。
【請求項12】
前記粒子ビームのビーム方向において、前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)は、前記カラム(430、830)の前記真空ポンプポート(355)の上流に配置される、請求項8~11のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)の入口領域(470)は、1mmから3mm、好ましくは1.3mmから2.7mm、より好ましくは1.6mmから2.4mm、最も好ましくは1.9mmから2.1mmの直径と、5mmから25mm、好ましくは7mmから18mm、より好ましくは8mmから14mm、最も好ましくは9mmから11mmの範囲の長さとを有する圧力ステージ管(480)を備える、請求項8~12のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)の出口領域(370)は、2mmから4mm、好ましくは2.3mmから3.7mm、より好ましくは2.6mmから3.4mm、最も好ましくは2.9mmから3.1mmの直径と、20mmから36mm、好ましくは23mmから33mm、より好ましくは26mmから30mm、最も好ましくは27mmから29mmの範囲の長さとを有する圧力ステージ管(380)を備える、請求項8~13のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの絞り(810)は、調整可能な開口部(820)を有する、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの絞り(810)は、前記開口部(820)を調整するように構成された少なくとも1つの圧電アクチュエータを備える、請求項8または15に記載のデバイス(400、800)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの絞り(810)に静電位を印加するように構成された電圧源をさらに備える、請求項8、15または16に記載のデバイス(400、800)。
【請求項18】
前記絞り(810)の前記開口部(820)は、サンプル表面(197)から前記開口部(820)の距離(830)より大きく、好ましくは1.5倍、より好ましくは1.8倍、最も好ましくは2.0倍大きい、請求項8または15~17のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項19】
前記開口部(820)は、100μmから3000μm、好ましくは130μmから2000μm、より好ましくは160μmから1000μm、最も好ましくは200μmから600μmの範囲を備える、請求項15~18のいずれか1項に記載のデバイス(400、800)。
【請求項20】
電荷補償グリッド(195)は、前記電荷補償グリッド(195)のグリッド穴のサイズの半分である、前記サンプル表面(197)からの距離を有する、請求項19に記載のデバイス(400、800)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本特許出願は、2022年8月18日にドイツ特許商標庁に提出され、参照によりその全体が本出願に組み込まれる「Vorrichtung zum Abbilden und Bearbeiten einer Probe mit einem fokussierten Teilchenstrahl」と題されたドイツ特許出願DE102022208.597.3号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、集束粒子ビーム(focused particle beam)、特に電子ビーム(electron beam)を使用してサンプルを結像および処理するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジの進歩により、構造要素がますます小型化された構成要素を製造できるようになった。マイクロスケールまたはナノスケールの構成要素のチップ構造の表示および処理(processing)には、これらのチップ構造を結像および修正できるツールが必要である。
【0004】
顕微鏡は、ナノ構造を結像するための強力なツールである。顕微鏡では、粒子ビームは通常、分析および/または処理されるサンプルと相互作用する。たとえば電子など、質量を有する粒子を使用してサンプルを走査する顕微鏡は、粒子のドブロイ波長がその粒子ビームにおいて短いため、サンプル上で粒子ビームを走査することによって、ナノ構造を結像するときに、高く回折制限された分解能を有する。例として、電子ビームは、現在、1桁のナノメートル範囲の直径に焦点を合わせることができる。
【0005】
走査型電子顕微鏡は通常、真空、つまり高真空(HV)条件下で動作するため、その電子ビームは、電子源から、サンプルに入射するまでの経路上で、分子との相互作用により散乱され、結果として広がることはない。電子ビームのための電子の生成は、たとえば、ショットキー陰極における電界放出の結果として、超高真空(UHV)環境において実施される。
【0006】
走査型電子顕微鏡(SEM)またはイオンビーム(FIB)顕微鏡または粒子ビーム顕微鏡は、一般に、サンプルの結像のみならず、サンプルの局所的な処理にも使用できるように修正できる。この目的を達成するために、プロセスガスまたは前駆体ガスが、サンプルに適用され、局所的なエッチングまたは堆積反応が起こるように、集束粒子ビームの助けを借りて活性化される。集束粒子ビームが、局所的な化学反応を開始し維持できるように、サンプル表面において、前駆体ガス粒子の最小量または局所的な最小濃度が必要とされる。通常、使用されるプロセスガスに応じて、反応場所における局所ガス濃度が増加すると反応速度が増加するため、プロセスガスの局所濃度は、可能な限り高いことが望ましい。
【0007】
しかしながら、SEMまたはFIB顕微鏡にプロセスガスを導入すると、そのHV環境が損なわれる。その結果、生じるいくつかの困難が、以下に簡潔に触れられる。
【0008】
プロセスガスおよび/またはその反応生成物の一部は、以下、粒子ビームカラムまたはカラムとも略される光学システムまたは粒子光学システムに入り込む可能性があり、そこで、たとえば、粒子ビーム源および/または粒子検出器など、異なる構成要素に、一時的または永久的な損傷を引き起こす可能性がある。SEMは、カラムと略される電子ビームカラムの形態で、粒子ビームカラムを有する。
【0009】
集束粒子ビームは、プロセスガスおよび/またはその反応生成物の粒子で散乱される。その結果、粒子ビームが広がり(「ビームスカート」)、局所的な化学反応の横方向の空間分解能が低下する。さらに、結果として生じるビームスカートにより、局所的な化学反応の制御がより困難になる。
【0010】
さらに、たとえば、サンプル付近の電子光学対物レンズなど、高い電界強度が存在する場所におけるガス放電は、対物レンズおよび/またはその電圧供給に損傷を与える可能性がある。
【0011】
プロセスガスまたは前駆体ガスは、有害なガスを含む場合がある。安全性の観点から、ガスフローが多いためにSEMまたはFIBシステムのガス容器を頻繁に交換することは望ましくない。
【0012】
これらの相反する要求を満たすために、様々なソリューションが開発されてきた。たとえば、米国特許出願公開第2005/0199086号は、処理されるサンプルにおいて荷電粒子ビームの周囲にプロセスガスを対称的に導くことを可能にする特別な形状のガスラインシステムを説明している。米国特許第6872956号は、フォアポンプ、2つのターボ分子ポンプ、およびイオンゲッタポンプを備えたカスケードタイプのポンプ構成を説明している。米国特許第9070533号は、供給を要するプロセスガスの量を最小限に抑えるために、サンプル上に配置され、ガスが供給されるプロセスシュラウドを、SEMの真空チャンバに挿入することを論じている。
【0013】
米国特許第8921811号は、専用のサンプルホルダ、ガス入口およびガス出口、さらに荷電粒子ビームのための穴を備えたプロセスセルを説明している。プロセスセルは、サンプル処理に必要なガスの量を低減する。プロセスセルに関連する追加の出費とは別に、その使用は、小さなサンプルに限定される。
【0014】
カラム内のプロセスガスおよび/またはその反応生成物によって引き起こされる圧力上昇を制限するためのさらなる実施形態では、デバイスのカラムは、顕微鏡のHV環境への1つまたは複数の穴を有する。先行技術では、たとえば、光学構成要素または粒子光学構成要素、絞り、イオンゲッタポンプなどの高感度な部品をさらに保護するために、顕微鏡のカラムを、圧力に関して2つの部分に分割する、圧力ステージ管を使用しており、これらは、高真空を連続的に維持するために非常に重要であり、特に、電界放出のために使用されるショットキー陰極を保護する。圧力ステージ管は、コリメートされた粒子ビームの通過を可能にする、長く(たとえば、15mm)、薄い(たとえば、直径1mm)管である。圧力ステージ管は、分子フロー圧力領域における前駆体ガスおよび/またはその反応生成物の粒子のコンダクタンスを大幅に(たとえば、窒素の場合は0.01l/秒まで)低減する。圧力ステージ管を通過できるプロセスガスの割合は0.1%程度である。この残留成分は、ショットキー陰極の上流に接続されたイオンゲッタポンプを使用してシステムから除去される。
【0015】
しかしながら、このソリューションは、まだいくつかの欠点を有する。圧力ステージ管は、装置の上部からカラムの下部の圧力に関して良好な分離を提供できるように、できるだけ長く、小さい直径を有するべきである。しかしながら、これらの要求は、プロセスガスおよび/またはその反応生成物の粒子の吸着により、またはカラムからの他の汚染物質の堆積により、圧力ステージ管を通過する粒子ビームのビーム品質の低下につながる。例として、これらは、粒子ビームの傷痕および/またはドリフトを引き起こし得る。これらの影響により、顕微鏡のプロセスの安定性を大幅に低下させ得る。
【0016】
圧力ステージ管の直径が小さいため、サンプルの結像のために使用される検出器を、圧力ステージ管の下に取り付ける必要がある。サンプルから発せられ、検出目的に使用される粒子は、サンプルに導かれた一次集束粒子ビームよりも大幅に大きな立体角を有する。検出器は、高濃度の腐食性ガスに対する耐性を有する必要があるので、検出器の配置を顕微鏡内に制限して、使用可能な検出器タイプの数を制限する。さらに、顕微鏡の対物レンズの下の空間に関する問題もあり、対物レンズとサンプルとの間の距離を最小限に抑えることで、分解能を最大化できる。
【0017】
粒子衝突によって引き起こされるサンプルへの損傷を最小限に抑え、局所的な化学反応の横方向の広がりを制限するために、低運動エネルギ粒子のサンプル上への入射が好ましい。しかしながら、特にサンプル上の粒子ビームの粒子の入射エネルギが低い場合には、サンプルから発するすべての粒子、特に、一次粒子ビームのビーム方向に対して、サンプルから小さな極角で発する粒子を検出することが望ましい。しかしながら、この目的のために、粒子ビームに対して実質的に逆平行に移動する粒子を、粒子ビームから空間的に分離する必要がある。長くて、しっかりとした上記の圧力ステージ管は、サンプルから発する粒子のかなりの部分の通過を阻止する。しかしながら、圧力ステージ管の短縮化および/または拡幅は、修正された圧力ステージ管の上の領域の圧力が上昇し、たとえばイオンゲッタポンプがそれ以上動作できなくなるレベルまで上昇する。
【0018】
劣悪なHV条件は、圧力ステージ管の下のカラムの領域で一般的である。これは、粒子ビームがサンプルまでの経路のかなりの部分でガス粒子との相互作用に曝されることを意味する。それによって引き起こされる粒子ビームの粒子の散乱は、その焦点直径の拡幅をもたらす。
【0019】
したがって、本発明は、集束粒子ビームを使用したサンプルの結像および処理を改善することを可能にするデバイスを特定する問題に取り組む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0199086号
【特許文献2】米国特許第6872956号
【特許文献3】米国特許第9070533号
【特許文献4】米国特許第8921811号
【発明の概要】
【0021】
本発明の例示的な実施形態によれば、この問題は、本出願の独立請求項1の主題によって少なくとも部分的に解決される。例示的な実施形態は、従属請求項に説明されている。
【0022】
実施形態では、集束粒子ビームを使用してサンプルを結像および処理するためのデバイスは、(a)超高真空環境(ultrahigh vacuum environment)において粒子ビームを生成するように構成された少なくとも1つの粒子源(particle source)と、(b)サンプルを収容するのに役立ち(serve)、高真空環境においてサンプルを結像し、中真空環境においてサンプルを処理するように構成された少なくとも1つのサンプルチャンバと、(c)高真空環境に配置され、粒子ビームから集束粒子ビームを成形し(shape)、前記集束粒子ビームをサンプルに向ける(direct)ように構成された少なくとも1つの粒子光学構成要素(particle-optical component)を有する少なくとも1つのカラム(column)と、(d)少なくとも1つのカラム内に配置され、サンプルから発する(emanating)粒子を検出するように構成された少なくとも1つの検出ユニットと、(e)カラムからの集束粒子ビームの出口で終端し、集束粒子ビームが、サンプルを処理するために粒子ビーム誘起の局所的な化学反応(particle beam-induced local chemical reaction)を誘起できるような圧力を有する少なくとも1つのプロセスガス(process gas)をサンプルにおいて局所的に提供するように構成された、少なくとも1つのガスラインシステムと、(f)粒子ビームと、サンプルから発する粒子とが通過し、サンプルの処理の結果として少なくとも1つの検出ユニットにおいて生じる圧力上昇を、サンプルから発する粒子の少なくとも1つの検出ユニットへのアクセスを妨げることなく、10倍以下、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下、最も好ましくは2倍以下に制限するように構成された少なくとも1つの圧力調整ユニットとを備えている。
【0023】
検出ユニットは(少なくとも)高真空(HV)環境で連続的に使用されるため、サンプルの処理時に発生する可能性のある腐食性ガスの作用に曝されることはほとんどない。この境界条件を排除した結果、サンプルの結像に使用できる検出器の範囲が増加した。さらに、たとえば検出器表面へのガス粒子の吸着による検出ユニットの汚染が、効果的に阻止される。さらに、カラムの感度の高い光学構成要素または粒子光学構成要素は、変化しないHV条件の結果として、生じる可能性のある汚染から、あるいは損傷からさえも保護される。
【0024】
同時に、本発明による圧力調整ユニットは、サンプルから発する実質的にすべての粒子が、検出ユニットに妨げられずにアクセスできるようにする。これにより、サンプルの現実的な結像が可能になる。さらに、集束粒子ビームのビーム品質は、圧力調整ユニットを通過する間に損なわれない。これにより、プロセス安定性の低下を回避できる。したがって、本発明によるデバイスは、サンプルを、高い局所プロセスガス濃度で処理することを可能にし、同時に、感度の高い粒子光学構成要素の汚染、あるいは損傷さえも阻止し、したがって、サンプルの高品質での結像を可能にする。
【0025】
中真空(微真空;FV)は、1ミリバールすなわち100Paから、10-3ミリバールすなわち0.1Paまでの圧力範囲を含む。HV領域は、FV領域に隣接しており、10-3ミリバールから10-8ミリバールまでの圧力範囲を含む。超高真空(UHV)ではさらに低い圧力、具体的には10-8ミリバールから10-11ミリバールが発生する。大気圧または常圧および標準条件(1013.25ミリバール、298K)から進むと、FV領域におけるガス粒子の平均自由行程長は、典型的な真空容器の寸法を超える数値に達し、最初は、粘性のあるガスフローが、クヌーセンフローを介して、分子ガスフローの領域に移行する。分子フロー領域では、ガス粒子はもはや互いに相互作用せず、真空容器の壁とのみ相互作用する。本発明によるデバイスでは、ガス粒子の分子フローが形成される圧力条件は、サンプルが処理される場所を除いて、どこでも一般的である。
【0026】
粒子ビームの粒子は、たとえばフォトンの場合、静止質量(m0=0kg)のない粒子であり得るか、または、たとえば、電子、イオン、原子、または分子などの静止質量(m0>0kg)を有する粒子を備え得る。現在、電子ビームが好適である。一方、電子は、静止質量が低いためドブロイ波長が短く、小さなスポット直径に焦点を合わせることができる一方、たとえば、イオン衝撃とは異なり、電子をサンプルに照射することによって、サンプルに損傷をもたらさないか、または非常にわずかな損傷しかもたらさない。粒子光学構成要素という用語は、静止質量のない粒子、たとえば光子を、および/または、静止質量を有する粒子、たとえば電子を、整形して集束粒子ビームを形成できる構成要素を備えている。
【0027】
サンプルから発する粒子は、光子、電子、および/またはイオンである可能性がある。サンプルから発する粒子は、二次電子(SE)、および/または、サンプルから後方散乱された電子(BE;後方散乱電子)を含むことが好ましい。それに加えて、必要に応じて、サンプルによって放射される光子を使用して、サンプルを分析することができる。
【0028】
サンプルに入射する粒子のタイプは、検出ユニットによって検出される粒子のタイプと同じであり得る。しかしながら、第1および第2の粒子タイプは、異なる粒子タイプを示す場合に、第1の粒子タイプがサンプルに入射し、第2の粒子タイプが検出ユニットによって検出されることも可能である。例として、第1の粒子タイプは、光子および/またはイオンを含むことができ、第2の粒子タイプは、電子を含むことができる。
【0029】
少なくとも1つの検出ユニットの領域において、処理プロセスが実行されない場合、少なくとも1つのカラムは、<10-5ミリバール、好ましくは<3・10-6ミリバール、より好ましくは<10-6ミリバール、最も好ましくは<3・10-7ミリバールの圧力を有し得る。
【0030】
本発明によるデバイスは、検出ユニットがHV環境において連続的に動作することを可能にする。これにより、検出ユニットにおいて使用できる検出器の範囲が広がる。
【0031】
少なくとも1つのカラムの少なくとも1つの粒子源の領域では、サンプルの処理の結果としての圧力上昇は、<10-8ミリバール、好ましくは<5・10-9ミリバール、より好ましくは<10-9ミリバール、最も好ましくは<10-10ミリバールに留まり得る。
【0032】
少なくとも1つのカラムは、真空ポンプポートを備え得るか、および/または、サンプルチャンバへの少なくとも1つの圧力タイプのバイパスポート(pressure-type bypass port)を備え得る。
【0033】
サンプルチャンバは、真空ポンプのための少なくとも1つのポートを備える。プロセスガスを導入せずに、真空ポンプは、サンプルチャンバ内の圧力を、HV領域における圧力、通常は、約10-5ミリバールから10-7ミリバールまで下げる。プロセスガスを導入し、プロセスガスとサンプルとの反応生成物を生成する局所的な化学反応を開始した結果、サンプルチャンバ内の局所的な圧力が上昇する。未反応のプロセスガスと、生成された反応生成物の一部は、サンプルチャンバの真空ポンプポートを介してサンプルチャンバから除去される。
【0034】
少なくとも1つの真空ポンプポート、および/または、サンプルチャンバへの少なくとも1つの圧力タイプのバイパスポートは、少なくとも1つのカラムの下部に配置できる。
【0035】
局所的な化学反応は、カラムからの集束粒子ビームのビーム出口のすぐ近くで発生するため、プロセスガスおよび生成された反応生成物の一部が、デバイスのカラムに入り込む可能性がある。反応性のある、または非常に反応性の高い、プロセスガスの粒子や、腐食作用のある反応生成物は、カラムに配置されている高感度の粒子光学構成要素の汚染や、損傷さえも避けるために、できるだけ迅速にカラムから除去する必要がある。この目的のために、カラムは、真空ポンプのための少なくとも1つのポートを備える。この真空ポンプポートは、プロセスガスおよび/またはその反応生成物が、カラムの上部に進入するのを阻止するために、カラムからの粒子ビームの出口にできるだけ近く配置される。専用の真空ポンプの代わりに、カラムの真空ポンプポートを、サンプルチャンバの圧力タイプのバイパスポート(バイパス)に接続し、サンプルチャンバの真空ポンプによってポンピングすることができる。
【0036】
以下において、カラムの下部について言及する場合、これは、集束粒子ビームがカラムから出るカラムの部分を意味する。カラムの上部は、粒子ビーム源の粒子がカラムに入る部分を示す。この規則を使用すると、粒子ビームのビーム方向は、デバイスのカラムを上から下に通過する。
【0037】
このデバイスはまた、少なくとも1つのサンプルチャンバにポンピングする(pump)少なくとも1つのターボ分子ポンプ(turbomolecular pump)を備え得る。同様に、ターボ分子ポンプを、サンプルチャンバの真空ポンプポートに接続してもよい。入口領域では、ターボ分子ポンプは、ガス粒子がすでに分子フローを示す圧力を必要とする。この真空ポンプのタイプは、UHV領域において圧力を生成できる。
【0038】
サンプルは、フォトリソグラフィマスクを備え得る。
【0039】
現在のフォトリソグラフィマスクは通常、横方向の寸法が152mm×152mmである。フォトマスクを処理できるようにするために、本発明によるデバイスのサンプルチャンバは、マスクを収容できるように十分な大きさである必要がある。さらに、サンプルチャンバにおけるサンプルホルダは、通常142mm×142mmの活性領域上でフォトマスクを変位させることができる変位要素を備える。
【0040】
フォトマスク、またはより一般的にはサンプルの処理は、材料の局所的な除去を含み得る。この場合、プロセスガスは、少なくとも1つのエッチングガス、たとえば、二フッ化キセノン(XeF2)または塩化ニトロシル(NOCl)を含む。サンプルの処理は、サンプル上への材料の局所的な堆積も含み得る。この目的のために、プロセスガスは、少なくとも1つの前駆体ガスを含む。前駆体ガスは、金属カルボニル、たとえばジコバルトオクタカルボニル(Co2(CO)8)またはTEOS(オルトケイ酸テトラエチル、C8H2004Si)を備え得る。プロセスガスはまた、サンプルのエッチング、および/または、サンプル上への材料の堆積を助ける添加ガスを備え得る。例として、添加ガスは、酸素(O2)またはアンモニア(NH3)を備え得る。
【0041】
少なくとも1つのガスラインシステムは、1ミリバールから0.001ミリバール、好ましくは0.6ミリバールから0.003ミリバール、より好ましくは0.3ミリバールから0.006ミリバール、最も好ましくは0.1ミリバールから0.01ミリバールの範囲の圧力で、少なくとも1つのプロセスガスをサンプルにおいて局所的に提供するように構成され得る。
【0042】
集束粒子ビームが、局所的な化学反応を引き起こすために必要なプロセスガスの最小局所圧力は、特定の反応に依存する。局所的な化学反応は、反応特有の最小ガス濃度を下回ると停止する。対照的に、可能な限り高いプロセスガスの局所圧力は、化学反応を加速するため、プロセス経済上の理由から有利である。しかしながら、プロセスガスと、それに関連するその反応生成物の高い局所圧力は、カラムにおけるHV条件の一時的なブレークダウンと、カラムにおける感度の高い光学または粒子光学構成要素の汚染または劣化の前述した付随する不利な影響とに至る。
【0043】
少なくとも1つの粒子源は、0.1pAから10nA、好ましくは0.3pAから3nA、より好ましくは1pAから1nA、最も好ましくは3pAから0.3nAの電流強度を有する粒子ビームを生成するように構成され得る。
【0044】
少なくとも1つの粒子光学構成要素は、粒子ビームを、<5nm、好ましくは<2nm、より好ましくは<1nm、最も好ましくは<0.8nmのスポット直径に集束させるように構成され得る。
【0045】
スポット直径は、R50として定義され、これは、ビーム強度の50%が収まる半径である。粒子ビーム誘起の化学反応を引き起こした結果、集束粒子ビームがサンプルを処理できる最小領域の半径は、約3から4倍大きくなる。
【0046】
少なくとも1つの検出ユニットは、シンチレーションカウンタ(scintillation counter)、特にエバーハートソーンリー検出器(Everhart-Thornley detector)、および/または半導体検出器、特に直接電子検出器(direct electron detector)を備え得る。
【0047】
本発明によるデバイスは、以下のグループ、すなわち、磁気プリズム、磁気シケイン(magnetic chicane)、およびウィーンフィルタ(Wien filter)からの少なくとも1つの要素をさらに備えることができ、少なくとも1つの要素は、少なくとも1つのカラムに配置され、サンプルから発する粒子を、少なくとも1つの検出ユニットに誘導する(steer)ように構成される。
【0048】
サンプルから発する粒子を、検出ユニットに誘導するために磁気プリズムを使用すると、特に、その軌道が、粒子ビームの方向に対して実質的に逆平行に進む粒子の検出が可能になる。サンプルから発する粒子のこの部分は、たとえば、レンズ内検出器は、サンプルに導かれた粒子ビームの通過のための穴を有するので、レンズ内検出器によって検出することができない。粒子ビーム、特に電子ビームの横方向の分解能を高めるために、粒子の着地エネルギ、つまり、粒子がサンプル表面に衝突するときの運動エネルギが、可能な限り低減される。これは、粒子がサンプルから発する立体角を減少させる。しかしながら、これは、集束粒子ビームに対して逆平行にサンプルから離れる粒子の部分が増加することも意味する。サンプルの記録された像の結像品質は、これらの粒子を検出できる本発明によるデバイスの検出ユニットによって向上する。
【0049】
本発明によるデバイスは、少なくとも1つのカラムの出口に配置され、サンプル上で集束粒子ビームを走査するように構成された少なくとも1つの電極をさらに備え得る。少なくとも1つの電極は、八極子電極を備え得る。
【0050】
さらに、本発明によるデバイスは、少なくとも1つのカラムの出口においてガスラインシステムの下に配置された電荷補償グリッドを備え得る。
【0051】
さらに、本発明によるデバイスのカラムは、ライナ管(ビーム案内管)を含み得、ライナ管の下部は、粒子ビーム出口の領域に挿入され、プロセスガスとその反応生成物による光学構成要素の汚染を阻止または低減するように構成されている。放射線管は、通常、金属管、たとえばアルミニウム管の形態で具体化され、数ミリメートル、たとえば4mmから5mmの直径を有し得る。静電位を、金属管に印加することができ、前記静電位は、電荷補償グリッドと組み合わせて、集束粒子ビームの粒子がサンプルに入射する運動エネルギを減少させる電場を生成する。金属管に電圧を印加することにより、集束粒子ビームの粒子は、100eVから1200eV、好ましくは130eVから1000eV、より好ましくは160eVから800eV、より好ましくは200eVから600eVの範囲の運動エネルギまで減速できる。
【0052】
一方、集束粒子ビームの粒子の着地エネルギを減少させると、粒子が局所的な化学反応を引き起こす領域が減少する。他方、運動エネルギを減少させると、プロセスガスを導入した結果として、大きな圧力または大きな粒子密度が生成される領域で、集束粒子ビームの粒子が、プロセスガスまたはその反応生成物の分子上で散乱する確率が増加する。これにより、局所的な化学反応の(側方)制御が損なわれる。
【0053】
直径が大きいため、ライナ管は、圧力ステージのように機能するのは、ほんのわずかであり、通常、圧力を、約1倍に下げることができる。
【0054】
少なくとも1つの圧力調整ユニットは、以下のグループ、すなわち、少なくとも1つのカラムに配置された差動ポンプ圧力ステージ(differentially pumped pressure stage)と、少なくとも1つのカラムからの集束粒子ビームの出口において少なくとも1つのガスラインシステムの上に配置された少なくとも1つの絞り(stop)とからの少なくとも1つの要素を備え得る。
【0055】
圧力調整ユニットの両実施形態は、カラムにおける検出ユニットの位置においてHV条件の顕著なブレークダウンがないことを可能にする。すなわち、その上のカラムの一部における検出ユニットおよびさらなる光学構成要素が、腐食性ガス粒子から大部分保護される。同時に、サンプルから発する粒子は、検出ユニットへの経路に沿って実質的に妨げられず、それにより、集束粒子ビームによるサンプルの結像の品質が向上する。
【0056】
この場合、「実質的に」という表現は、個々の粒子が、電荷補償グリッドで粒子ビームのビーム軸から離れて大きな角度で散乱され、したがって、これらが、カラムの穴に入ることができないことを意味する。さらに、電荷補償グリッドに負の静電位(たとえば、20Vから200V)を印加すると、運動エネルギがこの電位障壁を乗り越えるのに十分ではない荷電粒子が、サンプルから離れることを阻止することができる。
【0057】
粒子ビームのビーム方向において、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージは、少なくとも1つのカラムにおける対物レンズの裏側焦点面(back-side focal plane)の領域に配置され得る。
【0058】
差動ポンプ圧力ステージを、このビーム位置に配置することは、サンプルから発する粒子のビームエンベロープのビームウエストが、対物レンズまたはデバイスの対物レンズによってこの位置に生成されるため、有利である。差動ポンプ圧力ステージにより、カラムの上層部分に入るプロセスガスとその反応生成物の割合を、約2桁低下させる。差動ポンプ圧力ステージがないと、下からカラムに入り込むガス粒子の1から2パーセントが、カラムの上部に到達する可能性がある。差動ポンプ圧力ステージにより、この割合は、約0.02%に低下する。
【0059】
本発明によるデバイスはさらに、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージのチャンバをポンピングするためのターボ分子ポンプを備え得る。
【0060】
さらに、カラムは、カラムの上部に配置された真空ポンプポートを有し得る。本発明によるデバイスは、カラムの上部における真空ポンプポートをポンピングするためのイオンゲッタポンプを備え得る。
【0061】
差動ポンプ圧力ステージがないと、カラムのこの位置における圧力は、イオンゲッタポンプにとって高すぎるであろう。イオンゲッタポンプは、熱くなり、故障する。複雑なカラム構造により、および、ターボ分子ポンプの振動分離の問題により、カラムの上部をポンピングするために、イオンゲッタポンプではなく、ターボ分子ポンプが使用されるのであれば、カラムの上部において必要な圧力レベルである<10-6ミリバールを確保することはできない。
【0062】
少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージのチャンバは、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージのチャンバの入口領域をポンピングするためのサンプルチャンバへの圧力タイプのバイパスポートを備え得る。
【0063】
この構成により、真空ポンプを1つ節約することができ、その結果、本発明によるデバイスの設計を簡素化する。
【0064】
粒子ビームのビーム方向において、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージは、カラムの真空ポンプポートの上流に配置され得る。
【0065】
この配置により、カラムに入り込むプロセスガスと、その反応生成物との大部分が、カラムの真空ポンプポートによってカラムからすでに除去されていることが保証される。
【0066】
少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージの入口領域は、1mmから3mm、好ましくは1.3mmから2.7mm、より好ましくは1.6mmから2.4mm、最も好ましくは1.9mmから2.1mmの直径と、5mmから25mm、好ましくは7mmから183mm、より好ましくは8mmから14mm、最も好ましくは9mmから11mmの範囲の長さとを有する圧力ステージ管を備え得る。
【0067】
この寸法の結果、圧力ステージ管は、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージの入口領域において、0.10l/秒の分子コンダクタンスを有する。
【0068】
少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージの出口領域は、2mmから4mm、好ましくは2.3mmから3.7mm、より好ましくは2.6mmから3.4mm、最も好ましくは2.9mmから3.1mmの直径と、20mmから36mm、好ましくは23mmから33mm、より好ましくは26mmから30mm、最も好ましくは27mmから29mmの範囲の長さとを有する圧力ステージ管を備え得る。
【0069】
この寸法の結果として、圧力ステージ管は、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージの出口領域において、0.12l/秒の分子コンダクタンスを有する。この数値および本願で指定されるさらなるコンダクタンス値は、窒素ガスに関する。デバイスにおける圧力関連条件を調べるために他のガスが使用される場合、分子コンダクタンス値は、窒素の質量数に関連して使用されるガスの質量数に比例して変化する。
【0070】
少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージのチャンバは、5mmから30mm、好ましくは6mmから20mm、より好ましくは7mmから15mm、最も好ましくは8mmから12mmの範囲の高さを有し得る。さらに、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージのチャンバは、10mmから30mm、好ましくは13mmから27mm、より好ましくは16mmから24mm、最も好ましくは19mmから21mmの幅を有し得る。さらに、チャンバは、50mmから200mm、好ましくは70mmから150mm、より好ましくは90mmから120mm、最も好ましくは95mmから110mmの長さを有し得る。
【0071】
差動ポンプ圧力ステージのチャンバの高さが大きいと、ポンプの方向の分子コンダクタンスが増加し、その結果、ポンプ断面積が直接的に大きくなる。その結果、カラムの上部は、圧力の観点で、下部から十分に分離される。他方、チャンバの高さが大きいと、サンプルから発する粒子の検出ユニットまでの経路と、これに伴うビームの拡張とが増加する。
【0072】
差動ポンプ圧力ステージのチャンバは、差動ポンプ圧力ステージの出口部分の分子コンダクタンスよりも10倍、好ましくは15倍、より好ましくは18倍、最も好ましくは20倍大きい分子コンダクタンスを有し得る。
【0073】
さらに、少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージのチャンバは、ビーム出口でカラムに挿入される金属管の電位にあり得る。
【0074】
少なくとも1つの絞りは、調整可能な開口部(adjustable aperture)を有し得る。
【0075】
ガス入口の領域の真上に絞りを取り付けることにより、局所的な化学反応を実行するためにプロセスガスで満たす必要がある体積を大幅に減少させることが可能となる。これは、必要なプロセスガスの量を最小限に抑える。これは、本発明によるデバイスの1つまたは複数のガス容器が、交換をほとんど必要としないという点で有利である。さらに、プロセスガスで満たされる体積が減少すると、反応場所において必要な圧力の蓄積および低下のために必要な時間が短縮される。さらに、ガスラインシステムの真上に取り付けられた絞りにより、デバイスのカラムに入り込み、カラムからポンプアウトする必要があるプロセスガスおよびその反応生成物の部分が減少する。
【0076】
さらに、開口部を調整することにより、まず、サンプルから発する実質的にすべての粒子が絞りを通過できるようになり、同時に、カラムに入ることができる、プロセスガスおよびその反応生成物の割合を、最小限に抑えることができる。また、絞りの穴を調整することにより、絞りの開口幅を、絞りとサンプル表面との間の距離に適合させることができる。最後に、カラムの出口における絞りは、集束粒子ビームが通過しなければならない高濃度のガスの経路の長さを短縮する。したがって、その粒子がガス粒子において散乱する確率は低く、サンプル表面上の焦点の拡大はない。
【0077】
少なくとも1つの絞りは、開口部を調整するように構成された少なくとも1つの圧電アクチュエータ(piezo actuator)を備え得る。
【0078】
絞りの穴は、いかなる形状であってもよい。単純な幾何学的形状、たとえば長方形または正方形であり、その穴が、単純な圧電アクチュエータ構成によって変更できることが好ましい。
【0079】
少なくとも1つの圧電アクチュエータは、開口部の面積を、1.1倍、好ましくは1.2倍、より好ましくは1.5倍、最も好ましくは2.0倍、変化させることができる。
【0080】
本発明によるデバイスは、少なくとも1つの絞りに静電位を印加するように構成された電圧源をさらに備え得る。
【0081】
絞りに静電位を印加することにより、ライナ管と電荷補償グリッド(charge compensating grid)との間の電場の歪みを除去または少なくとも低減することが可能である。電圧源は、20Vから1000V、好ましくは50Vから600V、より好ましくは100Vから400V、最も好ましくは150Vから300Vの範囲の静電位を、少なくとも1つの絞りに印加し得る。
【0082】
絞りの開口部は、サンプル表面から開口部までの距離よりも大きくてもよく、好ましくは1.5倍、より好ましくは1.8倍、最も好ましくは2.0倍大きい。
【0083】
開口部は、100μmから3000μm、好ましくは130μmから2000μm、より好ましくは160μmから1000μm、最も好ましくは200μmから600μmの範囲であり得る。
【0084】
絞りの直径と、サンプル表面からの距離との商が2倍である場合、絞りとサンプル表面との間の距離が小さければ、カラムに入るプロセスガスの成分を、10分の1に低減することができる。これにより、カラムの上部をポンピングするイオンゲッタポンプが、過負荷になることを、確実に阻止することができる。
【0085】
開口部とサンプル表面との間の距離は、80μmから1000μm、好ましくは100μmから800μm、より好ましくは150μmから700μm、最も好ましくは200μmから600μmの範囲であり得る。
【0086】
電荷補償グリッドは、10μmから50μm、好ましくは15μmから45μm、より好ましくは20μmから40μm、最も好ましくは25μmから35μmのグリッド穴(grid opening)を有し得る。
【0087】
電荷補償グリッドとサンプル表面との間の距離は、電荷補償グリッドにおけるグリッド穴のサイズの半分であり得る。
【0088】
このデバイスはさらに、少なくとも1つの不揮発性記憶媒体を有するコンピュータシステムを備え得る。コンピュータシステムは、サンプルの結像中および/またはサンプルの処理中にデバイスを制御するように構成され得る。
【0089】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムに対してサンプルの結像および/またはサンプルの処理を促す命令を備え得る。特に、コンピュータシステムは、サンプルからカラムの作動距離を調整する、および/または、絞りにおける穴の調整を制御する、命令を備え得る。
【0090】
以下の詳細な説明では、図面を参照しながら、本発明の現時点で好ましい例示的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】
図1は、電子ビームを使用して結像を行い、電子ビームおよび少なくとも1つのプロセスガスを使用してサンプルを処理するための、先行技術によるデバイスの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のデバイスのカラムの一部の拡大断面の再現図である。
【
図3】
図3は、検出器または検出ユニットがカラムの上部の圧力ステージの後方、すなわち上流に配置されているデバイスの概略断面図である。
【
図4】
図4は、差動ポンプ圧力ステージの設置後の
図3のデバイスを示す図である。
【
図5】
図5は、
図4のデバイスのカラムに沿った、ほとんど運動エネルギを有さずにサンプル表面に入射する電子ビームによって生成される、サンプルから発する電子のビームエンベロープのシミュレーションを示す図である。
【
図6】
図6は、
図3からのデバイスの圧力ステージ上の分子ガスフローを、上側の部分像で概略的に示し、
図4からのデバイスにおける差動ポンプ圧力ステージへの、および差動ポンプ圧力ステージからの分子ガスフローを、下側の部分像で概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、
図3からのカラムの下部を、上側の部分像において再現し、プロセスガスをサンプルチャンバに導入する粒子における散乱の結果としての集束粒子ビームの電子のビーム広がりを、下側の部分像において再現する図である。
【
図8】
図8は、
図2からのデバイスのカラムの出口への絞りの取り付けを上側において示し、結果として生じた一次集束粒子ビームのビーム広がりの減少を下側の部分像において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明によるデバイスの現時点で好ましい実施形態が、以下に説明される。本発明によるデバイスの2つの実施形態が、走査型電子顕微鏡(SEM)の例を使用して詳細に説明される。しかしながら、本発明によるデバイスは、電子ビームの形態で、質量を有する粒子のビームの使用に限定されない。代わりに、ボソンまたはフェルミオンの形態で粒子を使用する任意の粒子ビームを、これらのデバイスで使用できる。さらに、本発明によるデバイスの使用は、フォトリソグラフィマスクの結像および処理の例を用いて説明される。しかしながら、これは、いかなる限定をも意味するものではない。むしろ、本発明によるデバイスは、任意の所望のサンプルを結像および処理するために使用することができる。例として、本願で説明されるデバイスは、粒子ビームによって、または粒子ビーム誘起の処理プロセスによって、ウェハ上のチップ構造または半導体構造、MEMS(微小電気機械システム)および/またはPIC(光集積回路)を、結像および修正するために使用できる。
【0093】
図1は、集束粒子ビームの例として、集束電子ビームを使用してサンプル190を結像および処理するためのデバイス100の概略断面図を表す。粒子源110または電子源110は、ショットキー電界エミッタ105を備えており、ショットキー電界エミッタ105から、超高真空(UHV)環境(1・10
-10ミリバール≦p≦3・10
-9ミリバール)における強電場において電子が放たれる。電子源110は、真空ポート115を備えており、通常は真空ポート115に(
図1に示されていない)イオンゲッタポンプを接続することができる。電子ビームは、絞り120を通過し、デバイス100のカラム130の上部125に入る。
【0094】
図1および後続するすべての図において、粒子源110は、上部125の上端の頂部でカラム130にフランジ付けされている。粒子ビームは、上端においてカラム130に入り、下部出口187において前記カラムを出る。この規則を使用すると、粒子ビームのビーム方向は、上から下に進む。上流とは、ビーム方向と反対の方向、すなわち上方を意味し、下流とは、粒子ビームのビーム方向、すなわち下方を意味する。
【0095】
図1の例では、カラム130の上部125および下部135は、電子ビームをサンプル190に集束させて方向付けるための電子光学構成要素を含む。カラム130の上部125および下部135は、圧力ステージ管140によって互いに分離されている。圧力ステージ管140は、電子ビームが、圧力ステージ管140を通過できるが、カラム130の上部125が、カラム130の下部135の圧力変動から大部分が遮られるように設計されている。この目的のために、長くて薄い圧力ステージ管140が有利である。ガス粒子は、長くて薄い圧力ステージ管140の内壁に吸着される可能性がある。これにより、圧力ステージ管140を通過する電子ビームのビーム品質の低下をもたらし得る。これは、デバイス100の電子ビームの結像挙動に悪影響を与え得る。さらに、集束電子ビームのビームプロファイルの乱れは、処理プロセスの品質に悪影響を与え得る。
【0096】
カラム130の上部125における圧力は、典型的には、真空ポート145に接続されているが、
図1に示されていないイオンゲッタポンプの助けを借りて、約1・10
-7ミリバール(通常は、5・10
-8ミリバールから5・10
-7ミリバール)の値まで低減される。
【0097】
しかしながら、圧力ステージ管140の穴は、サンプル190から出現する電子192の大部分が通過できるほど大きくない。したがって、
図1のデバイス100は、カラム130の下部135に配置された2つのいわゆるレンズ内検出器150、160を有する。しかしながら、圧力ステージ管140の下のカラム130では、変動する圧力条件が優勢となる。これらは、ガスラインシステム180を経由してプロセスガスをプロセスチャンバ170に導入することによって引き起こされる。ガスラインシステム180を経由してプロセスガスを導入しないと、カラム130の下部135における圧力レベルは、10
-5ミリバールから10
-6ミリバールの範囲、すなわち、安定したHV条件が優勢となる。
【0098】
集束電子ビームが、サンプル190の表面197上で局所的な化学反応を開始する、処理プロセスが実行されると、カラム130の下部135において、圧力レベルが、10-2ミリバールから10-4ミリバールの間まで増加する。したがって、検出器150、160は、かなりの濃度のガスに曝される。カラム130の下部135におけるガスは、かなりの量の未反応プロセスガスおよびプロセスガスの反応生成物を含む。これらの反応性ガスは、通常、検出器150、160や、カラム130の下部135に収容されるさらなる電子光学構成要素である、たとえば対物レンズ175を、汚染または損傷する可能性がある、顕著な腐食電位を有する。
【0099】
カラム130の下部135は、真空ポンプポート155を備える。真空ポンプポート155を介して、たとえば(
図1aに示されていない)ターボ分子ポンプの助けを借りて、カラム130の下部135を排気することができる。あるいは、
図1に概略的に示すように、真空ポンプポート155は、サンプルチャンバ170への圧力タイプのバイパスポートを形成し得る。水平破線172は、サンプルチャンバ170の上端を示す。サンプルチャンバ170は、真空ポンプポート165を備えており、真空ポンプポート165を介して、前記チャンバをポンピングすることができる。たとえば、ターボ分子ポンプ(
図1には再現されていない)も同様にこの目的に使用され得る。
【0100】
検出器150、160に加えて、デバイス100のカラム130の下部135は、電子ビームをサンプル190上に集束させる少なくとも1つの電子光学対物レンズ175または1つの対物レンズ175を備えている。
図2における
図200には、対物レンズ175が配置されているカラム130の部分が、再度拡大して再現されている。集束粒子ビーム250の例として、カラム130からの集束電子ビーム250の出口において、カラム130は、八極子電極185を備え、この助けを借りて、集束電子ビーム250をサンプル190上で走査することができる。それに加えて、ガスラインシステム180は、八極子電極185で終端する。ガスラインシステム180は、サンプル190上の集束電子ビーム250の入射点260の領域においてプロセスガスを提供する。
【0101】
ガスラインシステム180を開くと、局所的な化学反応が行われる領域の圧力が、10
-1ミリバールと10
-3ミリバールとの間、すなわちFV領域に増加する可能性がある。
図2における概略図は、プロセスガスの未反応粒子および局所的に生成された反応生成物の大部分が、デバイス100のカラム130に入り込むことができることを示している。
【0102】
電子ビームの結像品質を保証するために、特に電子の着地エネルギが低い場合、カラム130における電子ビームのビーム経路に沿った構成要素は、カラム130の出口187まで、カラム130における電子の電位に対応する電位にある。カラム130からの電子ビームの出口187が狭い場合でもこの要件を保証するために、通常、交換可能な金属管220が、カラム130の出口187に挿入される。この金属管は、ライナ管220と呼ばれる。一般に、ライナ管220は、非磁性かつ耐食性の材料から製造され、4mmから5mmの直径を有する。ライナ管220は、規定の方式でカラム出口187の直径を制限し、したがって、カラム130の下部135に収容される電子光学構成要素、または一般に粒子光学構成要素の汚染を防ぐという良い副作用を有する。
【0103】
図1および
図2の例示的なデバイス100のカラム130は、サンプル190の静電気帯電の影響を最小限に抑える役割を担う電荷補償グリッド195を備える。この要件を満たすために、電荷補償グリッド195とサンプル表面197との間の距離は非常に小さくなるように選択される。この距離の一般的な数値は、<70μmである。電気絶縁体の形態のサンプル190、たとえばフォトリソグラフィマスク190は、集束電子ビーム250による照射の結果として帯電し得る。フォトリソグラフィマスクは、多くの場合、電気絶縁性の石英基板を備えている。
【0104】
図3からのデバイス300は、
図1からの検出器150、160と比較して、検出ユニット350または検出器350が、より低い圧力レベルで動作できるカラム330を概略的に示している。検出器350は、シンチレーション検出器350、たとえばエバーハートソーンリー検出器350であり得るか、および/または、半導体検出器、特に直接電子検出器を備え得る。
図1からのサンプルチャンバ170は、簡略化のため、
図3または後続する図に示されていない。
【0105】
カラム330は、その下部335から上部325への移行部に、圧力ステージ管380を備えた圧力ステージ370を有する。反応性ガスへの曝露から検出ユニット350を保護するために、検出ユニット350は、
図1からのデバイス100における検出器150、160とは異なり、上流のカラム330の上部325に取り付けられる。圧力ステージ370の圧力ステージ管380の穴は、サンプル190から発する実質的にすべての電子390が、検出器350に到達できるような寸法とされる。圧力ステージ370の分子コンダクタンスは、0.12l/秒程度(l/秒は、毎秒のリットルを表す)であり、したがって、デバイス100におけるカラム130の圧力ステージ管140の分子コンダクタンスよりも約13倍大きい。
【0106】
図3において、破線は、サンプル190から発する電子ビーム390の、または、サンプルによって生成される電子分布395の、ビームエンベロープ395を示す。
図3に例示的に示されるデバイス300では、圧力ステージ管380は、直径3mmおよび長さ28mmを有する。圧力ステージ管380は、電子源110から発してサンプル190に集束される一次電子ビーム250も、検出ユニット350への経路上で前記サンプルによって生成される電子分布395も妨げない。
【0107】
しかしながら、サンプル190の処理プロセス中に、圧力ステージ370は、その上に位置するカラム330の部分325のHV環境において、真空ポンプポート345に接続されている(
図3に図示されていない)イオンゲッタポンプが処理できない圧力レベル>10
-5ミリバールまでのブレークダウンを可能にする。真空ポンプポート345は、カラム330の上部325を排気するのに役立ち、
図1からのデバイス100の真空ポンプポート145に対応する。
【0108】
これらの圧力レベルに対処できる真空ポンプ、たとえばターボ分子ポンプが、イオンゲッタポンプではなく、真空ポート345に接続されている場合、<10-7ミリバールである必要な残留ガス圧力レベルは、カラム330の上部325では達成されない。しかしながら、これは、第1に、カラム330の上部325における電子光学構成要素または粒子光学構成要素を確実に保護するために、そして第2に、カラム330の上部325における圧力レベルを、電子源110のUHVレベルに適合させるために必要とされる。サンプル190が結像されている間、検出器350は、検出器150、160よりも大幅に低い圧力レベルを「認識」する。しかしながら、前記圧力レベルは、処理プロセス中、許容できないレベルにまで低下する。2%を超える反応性プロセスガスまたはその反応生成物は、圧力ステージ370を越えて、カラム330の上部325に進むことができる。
【0109】
図4からのデバイス400は、差動ポンプ圧力ステージ450が、追加的に設置されているという違いはあるものの、
図3からのデバイス300に対応する。差動ポンプ圧力ステージ450は、デバイス300の圧力ステージ370の下に、カラム330の下流に設置される。これは、差動ポンプ圧力ステージ450の出口領域370が、
図3からのデバイス300における圧力ステージ370に対応することを意味する。差動ポンプ圧力ステージ450の圧力ステージ管380は、
図3からの圧力ステージ370の圧力ステージ管380である。
【0110】
差動ポンプ圧力ステージ450は、圧力ステージ管480によって形成される入口領域470を有する。サンプルから発する電子390のビームエンベロープ395は、一次集束粒子ビーム250のビーム方向と逆方向に拡大するため、圧力ステージ管480の穴は、圧力ステージ管380の穴よりわずかに小さな寸法にすることができる。これは、
図5に基づいて以下に詳細に説明される。
図4に例示的に示されている差圧ステージ450は、穴直径2mm、長さ10mmの圧力ステージ管480を備える。したがって、圧力ステージ管480は、約0.1l/秒の分子コンダクタンスを有する。
【0111】
2つの相反する要求が、差動ポンプ圧力ステージ450のチャンバ410に課せられる。第1に、チャンバ410は、差動ポンプ圧力ステージ450の出口部分370から、圧力に関して、入口部分470を可能な限り広く分離するために、可能な限り大きな分子コンダクタンスを有するべきであり、これによって、入口部分470を介してチャンバ410に流入するガス粒子の可能な最大の割合が、チャンバ410の真空ポンプポート465を介してチャンバ410から出るようになる。この目的のために、チャンバ410は、できるだけ高くなければならない。しかしながら、この要求により、サンプル190から発する電子390の、検出器350までの経路が長くなり、したがって、そのビームエンベロープ395を広げる。シミュレーションにより、良好な妥協点として、チャンバの高さは10mm程度になった。また、チャンバ410は、幅20mmおよび長さ100mmを有する。
【0112】
差動ポンプ圧力ステージ450の真空ポンプポート465は、たとえば、ターボ分子ポンプを使用してポンピングされ得る。たとえば、10l/秒のポンピング能力を有するターボ分子ポンプが真空ポート465に接続されている場合、差動ポンプ圧力ステージ450を越えてカラム430の上部425に進むことができるプロセスガスおよびその反応生成物の割合は、0.02%程度である。この残りの部分は、カラムの上部425の真空ポンプポート345を介して問題なく除去することができる。これは、カラム430の上部425の圧力レベルが非常に低いため、真空ポンプポート345を、たとえばイオンゲッタポンプによって安全にポンピングできることを意味する。
【0113】
差動ポンプ圧力ステージ450の設置後、デバイス400のカラム430は2つの相反する要求を満たす。カラム430の高感度電子光学構成要素、特に検出ユニット350は、真空ブレークダウンに対して、したがって、汚染から、確実に保護される。サンプル190を離れる電子390は、検出ユニット350への経路に沿って妨げられない。
【0114】
図5における
図500は、サンプル表面からの距離(y軸)に対する、サンプル190から発する電子390のビームエンベロープ395の直径(x軸)の変化のシミュレーションを表す。サンプル190から発する電子390は、一次集束電子ビーム250によって生成され、その電子は、サンプル表面197において約200eVの低い運動エネルギを有する。ビームエンベロープ395は、サンプル表面197の約65mm上に、直径約1mmのビームウエスト550を有する。これは、電子光学対物レンズ175の結像効果によって引き起こされる。ビームエンベロープ395のウエスト550は、対物レンズ175の裏側焦点面をマークする。
【0115】
ビームエンベロープ395の直径は、破線の直線510で示すように、約25mmから105mmの距離において、2mm未満である。サンプル表面197からこの距離内で、差動ポンプ圧力ステージ450の圧力ステージ管480は、サンプル190から発する電子390が、差動ポンプ圧力ステージ450に、妨げられることなくアクセスできるようにする。ビームエンベロープ395の直径は、サンプル表面197から約140mmの距離までは3mm未満である。これは、
図5において、破線の直線520によって表徴されている。これは、サンプル表面197から差動ポンプ圧力ステージ450への距離が140mm未満であれば、サンプル190から発する電子390が、妨げられることなく差動ポンプ圧力ステージ450の圧力ステージ管380を通過できることを意味する。差動ポンプ圧力ステージ450の設計は最適化することができ、デバイス400のカラム430におけるその最適な可能な配置は、サンプル190から発する電子390の軌道のシミュレーションに基づいて決定できる。
【0116】
図6における上側の部分像600は、
図3からのカラム330内の、カラムの下部335から、カラムの上部325までの、圧力ステージ370を介したガス粒子の分子フローを示す。圧力ステージ370を流れて差動ポンプ圧力ステージ450に入る、または差動ポンプ圧力ステージ450から出る分子の流れ、すなわち分子フローを推定するためのいくつかの基本的な式が以下に指定される。分子フロー条件下では、長さL[cm]および直径d[cm]の管内において、l/秒(1秒あたりのリットル)で指定される窒素の分子コンダクタンスは、次の方程式、C=12.1・d
3/L(たとえば、「Handbuch Vakuumtechnik」、ISBN 978-3-658-13386-5を参照)で与えられる。
【0117】
分子フローQ(単位はミリバールl/秒)は、圧力差または圧力勾配Δpによって発生される。比例定数は、上記で導入された分子コンダクタンスCであり、Q=C・Δpである。この式は、基本的な電気方程式であるI=(1/R)・Uと同等である。
【0118】
圧力ステージ370の圧力ステージ管380の分子コンダクタンスは、上記において、C380=0.12l/秒として指定された。カラム330の下部335と上部325との間の10-3ミリバールの圧力差により、Q380=0.12l/秒・10-3ミリバール=1.2・10-4ミリバール・l/秒の分子の流れ、すなわち分子フローが生じる。
【0119】
図6における下側の部分像650は、差動ポンプ圧力ステージ450における分子の流れ、すなわち分子フローを示す。分子ガスフローQ
480は、差動ポンプ圧力ステージ450の圧力ステージ管480を介して、差動ポンプ圧力ステージ450のチャンバ410に流入する。分子ガスフローQ
480は、そこで、分子の流れ、すなわち分子フローQ
465およびQ
380に分岐し、真空ポート465および圧力ステージ管380を介してチャンバ410を出る。分子の流れQ
465、すなわち分子フローQ
465は、差動ポンプ圧力ステージ450のチャンバ410における圧力pにおける真空ポンプの吸引能力S(1/秒)に比例し、Q
465=S・p
410である。
【0120】
差動ポンプ圧力ステージ450の圧力ステージ管480の分子コンダクタンスは、上記でC480=0.1l/秒として指定された。カラム430の下部435と、チャンバ410との間の圧力差が、10-3ミリバールの場合、カラム430の下部435から、差動ポンプ圧力ステージ450のチャンバ410への分子フローQ480、Q480=0.1l/秒・10-3ミリバール=10-4ミリバールl/秒、が存在する。第一近似として、差動ポンプ圧力ステージ450の真空ポート465に接続された真空ポンプの吸引能力S=10l/秒の場合、前記圧力ステージのチャンバ410における圧力設定は、p410=Q480/S=10-4ミリバール・l/秒/(10l/秒)=10-5ミリバールである。
【0121】
上記で指定されたように、圧力ステージ管380は、差動ポンプ圧力ステージ450の出口で、分子コンダクタンスC380=0.12l/秒を有する。10-5ミリバールの圧力差は、分子フローQ480=0.12l/秒・10-5ミリバール=1.2・10-6ミリバール・l/秒を発生させる。これは、差動ポンプ圧力ステージ450が、カラム430の上部425における分子フローを2桁減少させることを意味する。Q380/Q480=1.2・10-4ミリバール・l/秒/(1.2・10-6ミリバール・l/秒)=100。差動ポンプ圧力ステージ450のチャンバ410に流入するガス粒子の約1%だけが、出口領域370を介してチャンバ410を出る。
【0122】
差動ポンプ圧力ステージ450に対する電気的類似物は、分圧器である。負荷抵抗RL(1/C465に相当)が、抵抗R2(1/C480に相当)に比べて小さくされているため、流れ(分子ガスフロー)は、負荷抵抗RLを介して大きく流れ、もはや抵抗R2を介さない。
【0123】
図7における上側の部分像700は、
図3からのデバイス300のカラム330の下部335を再度再現している。点線の円750の詳細は、
図7における下側の部分像755において、拡大して再度再現されている。
図3に関連してすでに説明されたように、ガスラインシステム180を介してサンプル表面197にプロセスガス770を供給すると、カラム330からの集束粒子ビーム250または電子ビーム250の出口領域の圧力が大幅に上昇する。ガス粒子の濃度が局所的に大幅に増加すると、集束電子ビーム250の電子が、プロセスガス770のガス粒子で散乱され、その結果、部分像755における円錐760によって示される、望ましくないビームの広がりが引き起こる。設定されたガス圧力と、集束粒子ビーム250の運動エネルギとに応じて、最大50%の電子が、出口領域750において1回または複数回散乱され得る。散乱の結果として、集束電子ビーム250によってプロセスガス770において開始される局所的な化学反応の横方向の大きさは、予測困難に増大する。プロセスガスの濃度と、電子の濃度とが、局所的な化学反応を維持するのにもはや十分ではなくなる限界は、多くのパラメータに依存する。サンプル190に対して実行される局所的な処理プロセスは、これらの条件下では制御が困難になるだけである。
【0124】
カラム335に入り込む分子ガスフローは、ガスラインシステム180のプロセスガスフロー780に比例する。
図3に示すデバイス300のカラム330の場合、プロセスガス770の粒子、またはプロセスガス770の反応生成物の約1.5%が、カラム330の下部335に入り込むことができる。
【0125】
部分像755は、
図1からの電荷補償グリッド195をさらに示す。電荷補償グリッド195は、通常、デバイス300の動作中、サンプル表面197の数10マイクロメートル上にある。集束電子ビーム250によるサンプル表面197の帯電の影響を最小限に抑えるために、電荷補償グリッド195を接地してもよい。さらに、電荷補償グリッド195の電位は、電子光学対物レンズ175の電位にあるライナ管220の電位と組み合わされて、(
図7に示されていない)電場を生成するように機能し、ここで、集束電子ビーム250は、指定された着地エネルギまで減速される。
【0126】
さらに、-20Vから-200Vの範囲の電圧U2が、電荷補償グリッド195に印加され得る。その結果、電荷補償グリッド195とサンプル表面との間に生成される電場は、サンプル190から発する電子に対するエネルギ障壁またはエネルギフィルタとなる。エネルギ障壁よりも大きな運動エネルギを有する電子のみが、サンプル190を出て、カラム330に入ることができる。
【0127】
図8における上側の部分像800は、
図3からのカラム330の下部335を表す。絞り810が、八極子電極185の領域において、カラム330の出口に追加的に挿入されている。カラム830の出口における領域850は、下側の部分像855に拡大して再度示されている。
【0128】
絞り810は、ガスラインシステム180の終端上の電極185内に挿入されている。絞り810およびサンプル190は、横壁のないタイプの圧力チャンバを形成する。プロセスガス870の体積を両側で制限することにより、必要なプロセスガス870の量を最適化する。集束電子ビーム250が、サンプル表面197に衝突し、サンプル190から発する電子390が、カラム830の下部835にアクセスできるようにするために、絞り810は、直径825を有する穴820を有する。絞り810の穴820は、サンプル190から発する電子390が、サンプル190を出ることができる最大角度を決定する。絞り810の穴直径825は、たとえば200μmから2000μmの範囲であり得る。
【0129】
絞り直径825、すなわち穴直径825は、
図8に示されていない1つまたは複数の圧電アクチュエータの助けを借りて変更することができる。サンプル表面197と絞り810との間の距離840に応じて、絞り810の直径825は、サンプル190から発する電子390のカラム830への入口が妨げられないように、単純に大きく選択することができる。同時に、これは、同様にカラム830に不適切に入り込むプロセスガスフローと、反応生成物の分子フローとの割合が、最小限に抑えられることを保証する。距離840が、穴直径825の半分となるように選択される場合、絞り810は、電子390に対して90°の開口角度を有する。
【0130】
サンプル表面197から絞り810までの距離830は、通常、約1ミリメートル以下である。現在好ましい距離840は、100μmと300μmとの間の範囲である。絞り810とサンプル表面197との間の距離840は、(
図8に示されていない)サンプルホルダの助けを借りて、サンプル190をデバイス800の作動距離内の数値まで上昇または下降させることによって調整することができる。
【0131】
穴直径825が2mmで、距離840が1mmの場合、プロセスガス870またはその反応生成物の約1.5%が、カラム830の下部835に入り込む。この割合は、開口部825が400μmで、距離が200μmである場合には、0.15%まで1桁減少する。2つのサイズが再び半分になると、カラム830に入り込むガスの割合は、約0.05%に減少する。
【0132】
さらに、絞り810は、集束電子ビーム250の電子がサンプル表面197まで移動する高ガス圧力下での経路の長さを、距離<1mmまで効果的に短縮する。これら条件下では、集束電子ビーム250は、ビームの広がり860をほとんど受けない。
【0133】
さらに、静電位を、絞り810に印加することができ、これは、
図8においてU1によって示される。その結果、絞り810による、ライナ管220と電荷補償グリッド195との間の電場の歪みを、大幅に回避することができる。
【0134】
絞り810は、サンプル表面197から前記絞りまでの距離840と、前記絞りの開口幅825とが適切な寸法に設定されている場合、カラム830の上部825におけるサンプル190に対する処理プロセスに起因する圧力レベルの変動を効果的に阻止する。したがって、カラム830の圧力ステージ370と組み合わせて、絞り810は、カラム830の上部825における高感度電子光学構成要素、たとえば検出器350を、プロセスガス870とその反応生成物の反応性粒子の影響から効果的に保護する。絞り810が、プロセスガス870と、その反応生成物との割合を最小限に抑えることにより、前記絞りは同様に、カラム830の下部835に配置された構成要素、たとえば対物レンズ175の、汚染および/または損傷を阻止する。
【0135】
当然ながら、デバイス800の絞り810を、デバイス400の差動ポンプ圧力ステージ450と組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0136】
100 デバイス
105 ショットキー電界エミッタ
110 電子源、粒子源
115 真空ポート
120 絞り
125 カラムの上部
130 カラム
135 カラムの下部
140 圧力ステージ管
145 真空ポンプポート
150 検出器
155 真空ポンプポート、バイパスポート
160 検出器
165 真空ポンプポート
170 プロセスチャンバ、サンプルチャンバ
172 サンプルチャンバの上端
175 電子光学対物レンズ、粒子光学構成要素
180 ガスラインシステム
185 八極子電極
187 出口
190 サンプル
192 電子
195 電荷補償グリッド
197 サンプル表面
200 カラム部分
220 ライナ管
250 集束電子ビーム、集束粒子ビーム
260 入射点
300 デバイス
310 磁気プリズム
325 カラムの上部
330 カラム
335 カラムの下部
345 真空ポンプポート
350 検出器、検出ユニット
355 真空ポンプポート
370 圧力ステージ、出口領域、出口部分
380 圧力ステージ管
390 電子、粒子
395 ビームエンベロープ、電子分布
400 デバイス
410 チャンバ
425 カラムの上部
430 カラム
435 カラムの下部
450 差動ポンプ圧力ステージ、圧力調整ユニット、差圧ステージ
465 真空ポート、真空ポンプポート、バイパスポート
470 入口領域、入口部分
480 圧力ステージ管
500 ビームエンベロープの直径(x軸)の変化のシミュレーション
510 約25mmから105mmの距離におけるビームエンベロープの直径
520 サンプル表面から約140mmの距離におけるビームエンベロープの直径
550 ビームウエスト
600 分子フロー
650 分子フロー
700 カラムの下部
750 出口領域
755 カラムの下部の部分像
760 望ましくないビームの広がり
770 プロセスガス
780 プロセスガスフロー
800 デバイス
810 絞り、圧力調整ユニット
820 穴
825 直径、幅
830 カラム
835 カラムの下部
840 距離
850 カラムの出口領域
855 カラムの下部
860 ビームの広がり
870 プロセスガス
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束粒子ビーム(250)を使用してサンプル(190)を結像および処理するためのデバイス(400、800)であって、
a. 超高真空環境において粒子ビームを生成するように構成された少なくとも1つの粒子源(110)と、
b. 前記サンプル(190)を収容するのに役立ち、高真空環境において前記サンプル(190)を結像し、中真空環境において前記サンプル(190)を処理するように構成された少なくとも1つのサンプルチャンバ(170)と、
c. 高真空環境に配置され、前記粒子ビームから集束粒子ビーム(250)を成形し、前記集束粒子ビームを前記サンプル(190)に向けるように構成された少なくとも1つの粒子光学構成要素(175)を有する少なくとも1つのカラム(430、830)と、
d. 前記少なくとも1つのカラム(430、830)内に配置され、前記サンプル(190)から発する粒子(390)を検出するように構成された少なくとも1つの検出ユニット(350)と、
e. 前記カラム(430、830)からの前記集束粒子ビーム(250)の出口で終端し、前記集束粒子ビーム(250)が前記サンプル(190)を処理するために粒子ビーム誘起の局所的な化学反応を誘起できるような圧力を有する少なくとも1つのプロセスガス(870)を前記サンプル(190)において局所的に提供するように構成された少なくとも1つのガスラインシステム(180)と、
f. 前記粒子ビームと、前記サンプル(190)から発する前記粒子(390)とが通過し、前記サンプル(190)の処理の結果として前記少なくとも1つの検出ユニット(350)において生じる圧力上昇を、前記サンプル(190)から発する前記粒子(390)の前記少なくとも1つの検出ユニット(350)へのアクセスを妨げることなく、10倍以下、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下、最も好ましくは2倍以下に制限するように構成された少なくとも1つの圧力調整ユニット(450、810)とを備える、
デバイス(400、800)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出ユニット(350)の領域において、前記少なくとも1つのカラム(430、830)は、<10-5ミリバール、好ましくは<3・10-6ミリバール、より好ましくは<10-6ミリバール、最も好ましくは<3・10-7ミリバールの圧力を有する、請求項1に記載のデバイス(400、800)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカラム(430、830)は、真空ポンプポート(155)、および/または、前記サンプルチャンバ(170)への少なくとも1つの圧力タイプのバイパスポート(155)を備える、請求項1または2に記載のデバイス(400、800)。
【請求項4】
前記サンプル(190)は、フォトリソグラフィマスクを備える、請求項1または2に記載のデバイス(400、800)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガスラインシステム(180)は、1ミリバールから0.001ミリバール、好ましくは0.6ミリバールから0.003ミリバール、より好ましくは0.3ミリバールから0.006ミリバール、最も好ましくは0.1ミリバールから0.01ミリバールの範囲の圧力で、前記少なくとも1つのプロセスガス(870)を前記サンプル(190)において局所的に提供するように構成される、請求項1または2に記載のデバイス(400、800)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの検出ユニット(350)は、シンチレーションカウンタ、特にエバーハートソーンリー検出器、および/または半導体検出器、特に直接電子検出器を備える、請求項1または2に記載のデバイス(400、800)。
【請求項7】
以下のグループ、すなわち、磁気プリズム(310)、磁気シケイン、およびウィーンフィルタからの少なくとも1つの要素をさらに備え、前記少なくとも1つの要素は、前記少なくとも1つのカラム(430、830)に配置され、前記サンプル(190)から発する前記粒子(390)を、前記少なくとも1つの検出ユニット(350)に誘導するように構成される、請求項1または2に記載のデバイス(400、800)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの圧力調整ユニット(450、810)は、以下のグループ、すなわち、前記少なくとも1つのカラム(430、830)に配置された差動ポンプ圧力ステージ(450)と、前記少なくとも1つのカラム(430、830)からの前記集束粒子ビーム(250)の前記出口において前記少なくとも1つのガスラインシステム(180)の上に配置された少なくとも1つの絞り(810)とからの少なくとも1つの要素を備える、請求項1または2に記載のデバイス(400、800)。
【請求項9】
前記粒子ビーム(250)のビーム方向において、前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)は、前記少なくとも1つのカラム(430、830)における対物レンズ(175)の裏側焦点面の領域に配置される、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)のチャンバ(410)の真空ポート(465)をポンピングするためのターボ分子ポンプをさらに備える、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)のチャンバ(410)は、前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)の前記チャンバ(410)をポンピングするための前記サンプルチャンバ(170)への圧力タイプのバイパスポート(465)を備える、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項12】
前記粒子ビームのビーム方向において、前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)は、前記カラム(430、830)の真空ポンプポート(155)の上流に配置される、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)の入口領域(470)は、1mmから3mm、好ましくは1.3mmから2.7mm、より好ましくは1.6mmから2.4mm、最も好ましくは1.9mmから2.1mmの直径と、5mmから25mm、好ましくは7mmから18mm、より好ましくは8mmから14mm、最も好ましくは9mmから11mmの範囲の長さとを有する圧力ステージ管(480)を備える、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの差動ポンプ圧力ステージ(450)の出口領域(370)は、2mmから4mm、好ましくは2.3mmから3.7mm、より好ましくは2.6mmから3.4mm、最も好ましくは2.9mmから3.1mmの直径と、20mmから36mm、好ましくは23mmから33mm、より好ましくは26mmから30mm、最も好ましくは27mmから29mmの範囲の長さとを有する圧力ステージ管(380)を備える、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの絞り(810)は、調整可能な開口部(820)を有する、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの絞り(810)は、前記開口部(820)を調整するように構成された少なくとも1つの圧電アクチュエータを備える、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの絞り(810)に静電位を印加するように構成された電圧源をさらに備える、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項18】
前記絞り(810)の前記開口部(820)は、サンプル表面(197)から前記開口部(820)の距離(830)より大きく、好ましくは1.5倍、より好ましくは1.8倍、最も好ましくは2.0倍大きい、請求項8に記載のデバイス(400、800)。
【請求項19】
前記開口部(820)は、100μmから3000μm、好ましくは130μmから2000μm、より好ましくは160μmから1000μm、最も好ましくは200μmから600μmの範囲を備える、請求項15に記載のデバイス(400、800)。
【請求項20】
電荷補償グリッド(195)は、前記電荷補償グリッド(195)のグリッド穴のサイズの半分である、前記サンプル表面(197)からの距離を有する、請求項19に記載のデバイス(400、800)。
【外国語明細書】