(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028388
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】新規シリコチタネート組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/10 20060101AFI20240226BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240226BHJP
C01B 33/32 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B01J20/10 C
B01J20/28 Z
C01B33/32
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000433
(22)【出願日】2024-01-05
(62)【分割の表示】P 2020076576の分割
【原出願日】2020-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 宏
(57)【要約】
【課題】 1価、2価の有害イオンを塩分濃度の高い溶液から選択的に吸着除去できる新規シリコチタネート組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも2θ=11.3±0.3°、2θ=14.6±0.3°、2θ=26.5±0.2°、2θ=27.5±0.2°、2θ=28.1±0.2°及び2θ=29.4±0.2°にX線回折ピークを有し、少なくともSi、Ti、ならびにNb、V、Ta、Zr、Mo、およびWから選ばれた1種以上の金属を含有することを特徴とするシリコチタネート組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2θ=28.1±0.2°にX線回折ピークを有し、少なくともSi、Ti、ならびにNbを含有し、Si/Tiのモル比が0.5~1.5であることを特徴とするシリコチタネート組成物。
【請求項2】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有することを特徴とする請求項1に記載のシリコチタネート組成物。
【請求項3】
前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量が、Tiに対するモル比で表してA/Ti≦2.0(Aはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコチタネート組成物。
【請求項4】
前記Nbは、Tiに対するモル比で表してNb/Ti=0.05~1.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコチタネート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規シリコチタネート組成物及びその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
原子力関連施設で発生した放射性汚染水に含まれる放射性元素(例えば、セシウムやストロンチウム)を選択的に吸着処理できる吸着剤が望まれている。
【0003】
放射性元素を吸着できる吸着剤として、特許文献1にニオブを含有したストロンチウム吸着剤が開示されている。特許文献1によれば、このストロンチウム吸着剤はシチナカイト構造を有するシリコチタネートであり、なおかつ、CuKα線を線源とする粉末X線回折において、少なくとも2θ=27.8°、及び2θ=29.4°に回折ピークを有することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射性汚染水には海水が含まれている場合があり、このような汚染水はナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩分を高濃度で含有しており、従来公知の吸着剤による放射性元素の吸着除去が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のX線回折ピークを有する金属組成物(少なくともNb、V、Ta、Zr、Mo、及びWから選ばれた1種以上の金属を含有する)を原料として結晶化された、少なくともNb、V、Ta、Zr、Mo、及びWから選ばれた1種以上の金属を含有するシリコチタネート組成物が選択的なイオン交換能に優れることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、特許文献1のシリコチタネートには無い2θ=28.1±0.2°にX線回折ピークを有し、尚且つ少なくともNb、V、Ta、Zr、Mo、及びWから選ばれた1種以上の金属を含有する、シリコチタネート組成物、その製造方法、及びその用途に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、従来のイオン交換体よりも、高い選択性を有し、海水等の多量のアルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属を含有する汚染水から微量の放射性元素(セシウム及びストロンチウム)を吸着除去することができる。
【0008】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、セシウム、ストロンチウムの他に、1価、2価の有害イオン、特にタリウム、ルビジウム、バリウム、カドミウム、亜鉛などのイオンを、塩分濃度の高い溶液から選択的に吸着除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、1価、又は2価の有害イオン、特にタリウム、セシウム、ルビジウム、バリウム、ストロンチウム、カドミウム、亜鉛などのイオンを塩分濃度の高い溶液から選択的に吸着除去するのに好適である。
【0011】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、少なくとも2θ=11.3±0.3°、2θ=14.6±0.3°、2θ=26.5±0.2°、2θ=27.5±0.2°、2θ=28.1±0.2°及び2θ=29.4±0.2°にX線回折ピークを有するものである。本発明のシリコチタネート組成物のX線回折ピークについては、2θ=11.3±0.3°ピークのピーク強度を100とした時、その他のピークの相対強度が下記表1に示す範囲に含まれることが好ましい。X線回折ピークは、CuKα線(λ=1.5405Å)を線源とする一般的な粉末X線回折装置により測定されたものである。
【0012】
【0013】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、SiおよびTiを含有し、その他に、さらにNb、V、Ta、Zr、Mo、およびWから選ばれた1種以上の金属を含有することを特徴とする。該金属は周期表上の第5属の金属であることが好ましく、NbまたはVであることがさらに好ましく、Nbであることが特に好ましい。該金属はTiに対するモル比で表してM/Ti=0.05~1.0(Mは、Nb、V、Ta、Zr、Mo、およびWから選ばれた1種以上の金属を表す。)であることが好ましく、0.1~0.8であることがさらに好ましい。M/Tiモル比を小さくすることにより、1価の有害金属に対する選択性を高めることができ、M/Tiモル比を大きくすることにより2価の有害金属に対する選択性を高めることができる。
【0014】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、そのSi/Tiのモル比が、Si/Ti=0.5~1.5であることが好ましく、Si/Ti=0.5~1.2であることがより好ましい。
【0015】
さらに、本発明の新規シリコチタネート組成物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有していてもよい。ここに、アルカリ金属とは、例えば、ナトリウム、カリウム等があげられ、アルカリ土類金属とは、例えば、マグネシウム、カルシウム等があげられる。当該アルカリ金属またはアルカリ土類金属については、ナトリウムまたはカリウムであることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量は、Tiに対するモル比で表してA/Ti≦2.0(Aはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。)であることが好ましく、A/Ti≦1.5であることがより好ましい。含有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の一部または全てがイオン交換可能であるため、A/Tiの下限は0であるが、吸着剤として優れる点で、A/Tiは0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがより好ましい。
【0016】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、含有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の一部を、プロトンなどイオン交換し易いイオンに予めイオン交換して使用することもできる。
【0017】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、少なくとも、アルカリ源、シリコン源、チタン源、ならびにNb、V、Ta、Zr、Mo、およびWから選ばれた1種以上の金属源を含み、以下の組成(いずれも元素のモル比を表す)条件を満たす反応混合物を80℃以上220℃以下、好ましくは100℃以上200℃以下の温度を保持することにより製造することができる。
【0018】
A/Ti=2以上、7以下(Aはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。)
Si/Ti=0.5以上、2以下
M/Ti=0.05以上、1以下(MはNb、V、Ta、Zr、Mo、およびWから選ばれた1種以上の金属を表す。)
H2O/Ti=30以上、300以下
反応混合物において、好ましいA/Tiは2.5以上、6以下である。
【0019】
反応混合物において、好ましいSi/Tiは0.8以上、1.8以下である。
【0020】
反応混合物において、好ましいM/Tiは0.1以上、0.9以下である。
【0021】
反応混合物において、好ましいH2O/Tiは50以上、200以下である。
【0022】
上記の金属源については、Nb、V、Ta、Zr、Mo、およびWから選ばれた1種以上の金属を含有するパイロクロア構造の水和酸化物を使用することが必須である。
【0023】
なお、本発明における金属源については、2価の有害金属に対する選択性を高めることができる点で、Nb、V、Ta、Zr、Mo、およびWから選ばれた1種以上の金属を含有するパイロクロア構造の水和酸化物であることが好ましく、Nbを含有するパイロクロア構造の水和酸化物であることがより好ましい。
【0024】
上記のアルカリ源の原料は、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物であることが好ましく、特に限定されないが、Nb、V、Ta、Zr、Mo、Wの原料を溶解するために、少なくともその一部は水に可溶性の水酸化物であることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。また、これらアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と塩化物、炭酸塩等を併用することができる。
【0025】
シリコン源については、特に限定されないが、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の水溶性珪酸塩、水ガラス、反応性の高い無定形シリカ等が使用できる。
【0026】
チタン源については、特に限定されないが、例えば、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、メタチタン酸ソーダ、または塩化チタンが挙げられ、これらのうち、硫酸チタンまたはオキシ硫酸チタンか好ましく、硫酸チタンがより好ましい。
【0027】
これらの原料を混合した反応混合物をオートクレーブ等の耐熱耐圧容器に密閉し、80℃以上220℃以下、好ましくは100℃以上200℃以下の温度を保持することにより本発明の新規シリコチタネート組成物を製造することができる。反応中は反応系を均一に保つために、内容物の攪拌を行うことが好ましいが、静置であってもかまわない。反応後の生成物は濾過、遠心分離等の一般的な固液分離法を用いて本発明の新規シリコチタネート組成物を回収することができる。ここで回収した本発明の新規シリコチタネート組成物については、さらに、洗浄、乾燥の処理を施してもよい。
【0028】
本発明の新規シリコチタネート組成物は、成形体とすることもできる。成形する方法は特に限定されない。成形にはバインダーを使用することも可能で、使用されるバインダーとしては、例えば、粘土、アルミナ、シリカなどの無機系バインダー等が挙げられる。また成形する時には成形助剤としてセルロースなどの有機系成形助剤、リン酸塩などの無機系成形助剤等を使用することができる。成形体の形状は、特に限定しないが、例えば、粒状、球状、円柱状、三つ葉型、楕円状、俵型、リング状等とすることができる。
【0029】
本発明の新規シリコチタネート組成物を被処理水(例えば、タリウムやセシウムなどの有害金属イオンを含有する水)と接触させることにより、被処理水中の有害金属イオンを吸着除去することができる。このような処理操作を行う際、本発明の新規シリコチタネート組成物を被処理水と接触させる方法は特に限定されない。例えば、本発明の新規シリコチタネート組成物を被処理水に分散し固液分離する方法、粉体のまま、あるいは上述のように成形体とした本発明の新規シリコチタネート組成物をろ過材として被処理水をろ過する方法、成形体とした本発明の新規シリコチタネート組成物をカラムに充填し被処理水を通過させる方法などの一般的な方法が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例1で得た生成物のXRDパターンである。
【
図2】実施例1で原料として用いたパイロクロア構造を有する水和酸化ニオブのXRDパターンである。
【
図3】実施例2で得た生成物のXRDパターンである。
【
図4】実施例3で得た生成物のXRDパターンである。
【
図5】実施例4で得た生成物のXRDパターンである。
【実施例0031】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
実施例中、水和酸化ニオブの純度(%)は600℃の強熱減量分を水または水酸基と見なした酸化ニオブ換算の重量%で記載した。すなわち、実施例中の「65重量%水和酸化ニオブ」とは「600℃の強熱減量が35重量%であった水和酸化ニオブ」を表す。
【0033】
<粉末X線回折測定>
粉末X線回折パターンは、銅Kα線を線源とする粉末X線回折装置(商品名:UltimaIV、Rigaku製)により2θ=5°~60°の範囲で測定した。
【0034】
実施例1
純水、48重量%水酸化ナトリウム溶液、パイロクロア構造の65重量%水和酸化ニオブ、沈降法シリカゲル、30重量%硫酸チタン溶液を混合し、以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0035】
Na/Ti=3.5
Nb/Ti=0.6
Si/Ti=1.5
H2O/Ti=110
この反応混合物56gを容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0036】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、本発明の新規シリコチタネート組成物を得た。
【0037】
得られた本発明のシリコチタネート組成物の組成は、酸化物のモル比で表して以下の通りであった。
【0038】
0.62Na
2O:0.29Nb
2O
5:0.92SiO
2:TiO
2
Na/Ti=1.24
Si/Ti=0.92
Nb/Ti=0.58
得られた本発明の新規シリコチタネート組成物のX線回折パターンを
図1に示す。また、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表2に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。
【0039】
【0040】
原料として用いたパイロクロア構造の水和酸化ニオブのX線回折パターンを
図2に示す。実施例1の本発明の新規シリコチタネート組成物の2θ=28.1°及び2θ=29.4°のX線回折ピークは、原料として用いた水和酸化ニオブのX線回折ピークに比べ、約0.15°高角度側にシフトしており、未反応原料が混合していることに由来するピークではないことが明らかである。
【0041】
実施例2
純水、48重量%水酸化ナトリウム溶液、パイロクロア構造の65重量%水和酸化ニオブ、沈降法シリカゲル、30重量%硫酸チタン溶液を混合し、以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0042】
Na/Ti=3.0
Nb/Ti=0.6
Si/Ti=1.5
H2O/Ti=110
この反応混合物56gを容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0043】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、本発明の新規シリコチタネート組成物を得た。
【0044】
得られた本発明のシリコチタネート組成物の組成は、酸化物のモル比で表して以下の通りであった。
【0045】
0.67Na
2O:0.30Nb
2O
5:1.07SiO
2:TiO
2
Na/Ti=1.34
Si/Ti=1.07
Nb/Ti=0.60
得られた本発明の新規シリコチタネート組成物のX線回折パターンを
図3に示す。また、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表3に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。
【0046】
【0047】
実施例3
純水、48重量%水酸化ナトリウム溶液、パイロクロア構造の65重量%水和酸化ニオブ、沈降法シリカゲル、30重量%硫酸チタン溶液を混合し、以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0048】
Na/Ti=5.5
Nb/Ti=0.6
Si/Ti=1.5
H2O/Ti=110
この反応混合物56gを容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0049】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、本発明の新規シリコチタネート組成物を得た。
【0050】
得られた本発明のシリコチタネート組成物の組成は、酸化物のモル比で表して以下の通りであった。
【0051】
0.61Na
2O:0.29Nb
2O
5:0.89SiO
2:TiO
2
Na/Ti=1.23
Si/Ti=0.89
Nb/Ti=0.58
得られた本発明の新規シリコチタネート組成物のX線回折パターンを
図4に示す。また、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表4に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。
【0052】
【0053】
実施例4
純水、48重量%水酸化ナトリウム溶液、パイロクロア構造の65重量%水和酸化ニオブ、沈降法シリカゲル、30重量%硫酸チタン溶液を混合し、以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0054】
Na/Ti=4.0
Nb/Ti=0.6
Si/Ti=0.8
H2O/Ti=110
この反応混合物56gを容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0055】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、本発明の新規シリコチタネート組成物を得た。
【0056】
得られた本発明のシリコチタネート組成物の組成は、酸化物のモル比で表して以下の通りであった。
【0057】
0.66Na
2O:0.29Nb
2O
5:0.70SiO
2:TiO
2
Na/Ti=1.33
Si/Ti=0.70
Nb/Ti=0.57
得られた本発明の新規シリコチタネート組成物のX線回折パターンを
図5に示す。また、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表5に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。
【0058】
【0059】
実施例5(イオン交換試験)
実施例1で得た本発明の新規シリコチタネート組成物のイオン交換能試験を下記の様に実施した。
<イオン交換試験液の調製>
イオン交換試験液としては、5倍希釈の海水を模して、Na:2120ppm、Mg:254ppm、Ca:80ppm、K:76ppmとなるよう、その各成分の塩化物と、SPEX製ICP標準液XSTC-331をその各元素濃度が1ppmとなる様添加した。この溶液は強酸性であるため、48重量%NaOH溶液を滴下してpHを6.5に調整した。なお、この時、上記のイオン濃度の変動は無視できるほど小さい。この際、析出物が生成したため、孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過した無色透明溶液をイオン交換試験液とした。
<イオン交換試験>
イオン交換試験は、100mlのポリビンに、上記のイオン交換試験液 80mlを入れ、実施例1で得た本発明のシリコチタネート組成物を乾燥重量で0mg(Blank試験)、4mg(試験液に対し50ppm)または8mg(試験液に対し100ppm)添加し、25℃に保持したウォーターバス中で200rpmの振動数で24時間震盪した。
【0060】
試験後の試験液を孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過して吸着剤を分離後、試験液に残存するイオンの濃度をICP-AES(装置名:OPTIMA3000DV、PERKIN-ELMER社製)及びICP-MS(装置名:NExION300S、PERKIN-ELMER社製)を用いて定量した。
【0061】
<イオン交換除去率(%)>
イオン交換除去率(%)は以下の式で算出した。なお、イオン交換除去率(%)測定の対象としたイオン種については、表6に示した。
【0062】
【0063】
本発明のシリコチタネート組成物のイオン交換除去率を表6に示した。
【0064】
【0065】
表6のように、本発明のシリコチタネート組成物は、Na:2120ppm、Mg:254ppm、Ca:80ppm、K:76ppmを含有する高い塩分濃度の溶液から、微量(約1ppm)のTl、Cs、Baについて、非常に選択性良く高い除去率でイオン交換除去することができた。また、本発明のシリコチタネート組成物は、微量(約1ppm)のZn、Sr、Rb、Cdについても、上記のTl、Cs、Baと同様に、選択性良く高い除去率でイオン交換除去することができた。イオン交換試験液に含まれる、表6に記載していないイオンについては、pH調整時に析出除去された、またはICPの感度不足のため、定量できなかった。
本発明の新規シリコチタネート組成物は、例えば、タリウム、カドミウム、亜鉛などの有害金属イオンに汚染された排水や、放射性のセシウムやストロンチウムに汚染された海水、河川水などから有害金属イオンを選択的に吸着して除害する等の用途に有用である。