(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028455
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】導電性積層体及び導電性粘着テープ
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240226BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20240226BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240226BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240226BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240226BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20240226BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240226BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240226BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240226BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240226BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20240226BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B32B15/08 N
B32B27/06
B32B7/027
B32B7/12
B32B27/40
B32B15/20
B32B27/20 A
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J9/02
C09D11/00
H05K9/00 T
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002431
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2020214828の分割
【原出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】白石 奈々
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃
(72)【発明者】
【氏名】今井 克明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 義彦
(57)【要約】
【課題】最表面の耐アルコール性及び表面絶縁性が良好であり、更に生産性に優れる導電性積層体及び導電性粘着テープを提供する。
【解決手段】導電層と、上記導電層の一方の面上に設けられた粘着剤又は接着剤層と、上記粘着剤層又は接着剤層の上記導電層とは反対側の面上に設けられた着色フィルム層と、を有し、上記導電層は金属箔であり、上記着色フィルム層は、樹脂フィルム層と、上記樹脂フィルム層の少なくとも上記導電層とは反対側の面に接する着色層と、を有し、上記着色層は、樹脂硬化物と着色材料とを含み、上記着色層のガラス転移温度が43℃~70℃の範囲内である導電性積層体等を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層と、前記導電層の一方の面上に設けられた粘着剤又は接着剤層と、前記粘着剤層又は接着剤層の前記導電層とは反対側の面上に設けられた着色フィルム層と、を有し、
前記導電層は金属箔であり、
前記着色フィルム層は、樹脂フィルム層と前記樹脂フィルム層の少なくとも前記導電層とは反対側の面に接する着色層とを有し、
前記着色層は、樹脂硬化物と着色材料とを含み、前記着色層のガラス転移温度が43℃~70℃の範囲内である導電性積層体。
【請求項2】
前記導電性積層体の前記着色フィルム層側表面の、CIE L*a*b*表色系で規定される明度L*が20以上27以下であり、色度a*が-2以上2以下であり、色度b*が-2以上2以下である請求項1に記載の導電性積層体。
【請求項3】
前記着色インキ層に含有される前記樹脂硬化物が、ポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分と、多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とを含む樹脂組成物の硬化物である、請求項1又は2に記載の導電性積層体。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオールの質量平均分子量が1,000~400,000の範囲内である請求項3に記載の導電性積層体。
【請求項5】
前記金属箔が銅箔である請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項6】
前記着色材料としてガーボンブラックを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項7】
前記粘着剤又は接着剤層は、着色材料を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項8】
電気又は電子機器の内部及び外部の電磁波シールド用又はアース用に用いられる請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性積層体と、前記導電性積層体の導電層側の表面に設けられた導電性粘着剤層とを有する導電性粘着テープ。
【請求項10】
電気又は電子機器の内部及び外部の電磁波シールド用又はアース用に用いられる請求項9に記載の導電性粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性積層体及び導電性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性積層体、及び該積層体に導電性粘着剤層を設けた導電性粘着テープ(以下、導電性積層体及び導電性粘着テープのことを、総じて導電性積層体等と称する場合がある。)は、その取扱いの容易さから、電気・電子機器等から輻射する不要な漏洩電磁波のシールド用、他の電気、電子機器より発生する有害な空間電磁波のシールド用、静電気帯電防止の接地用などに用いられている。
【0003】
導電性積層体等は、電気・電子機器の小型化及び薄型化に伴い、総厚が小さく薄型であることが求められている。また、導電性積層体等は、高導電性であることに加えて、他の部材との接触によるショートの発生等を防ぐために、一方の表面(導電性を発揮する面とは反対側の面)に絶縁性を有することが求められている。
【0004】
さらに近年、電気・電子機器は、外観及び内部の意匠性、表示画像の品質、画像視認性等の向上が図られており、特に該機器の内部に内蔵される電子部品の色を黒色に統一させて、内部意匠性の向上を図る試みがなされている。このため、このような内部意匠性が要求される部分に用いられる導電性積層体は、黒色電子部品の黒色と同調して一体感が出るように、漆黒性やマット感等の黒色意匠性や隠蔽性等の表面黒色性が高いことが求められている。なお、本明細書において、導電性積層体等の意匠性や黒色性とは、主に導電性積層体等の絶縁性を有する面側から視認される物性である。
【0005】
例えば特許文献1には、樹脂フィルムの両面に導電層として金属層が形成されたベース基材と、該ベース基材の第1の主面に設けられた遮光性絶縁層と、該ベース基材の第2の主面に設けられた導電性粘着層と、を有する導電性シートが開示されている。特許文献1に開示される導電性シートは、遮光性絶縁層として、黒色着色剤で着色された絶縁性樹脂で形成された黒色着色層が用いられている。
【0006】
また、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートフィルムをベース基材として、上記ベース基材の一方の面に着色層を有し他方の面に透明粘着剤層を有する粘着テープを用い、導電層としての軟質アルミニウム基材の第1の主面に該粘着テープが貼合され、軟質アルミニウム基材の第2の主面に別の透明粘着剤層が設けられたシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-58108号公報
【特許文献2】特開2017-8262号公報
【特許文献3】特開2012-92281号
【0008】
ところで、電気・電子機器等の内部に異物が混入するのを防ぐために、導電性積層体等の導電層側とは反対側の表面は、異物除去のためのアルコールによる拭き上げが行われる場合がある。このとき、拭き上げにより外観上の欠点が発生しないよう、導電性積層体等の導電層側とは反対側の最表面に位置する着色層の耐アルコール性が求められる。
【0009】
着色層の耐アルコール性を向上させる方法として、例えば着色層を構成する樹脂の硬さを高める方法が一般的に知られている(例えば特許文献3参照)。しかし、ベース基材となる樹脂フィルムの表面に着色層を設けた着色フィルムを形成する際に、硬度の高い樹脂を含む着色インキを薄膜のベース基材に印刷すると、上記着色フィルムが大きくカールしやすく、導電性積層体等の製造において導電層、特に薄厚の金属層との貼合においてはシワの発生等により良品収率が低くなる等の生産性の不具合が生じやすくなる。上記の不具合は、特に導電性積層体をライン上で連続製造する場合や大判の導電性積層体を製造する場合に顕著化する。
【0010】
また、硬い樹脂を含む着色層を導電層表面に直接形成する方法では、着色層単体で絶縁性を発揮する必要があり、薄厚の着色層では十分な表面絶縁性を担保することが困難である。また、着色層として機能させるためには、着色剤の添加量を多くする必要があり、着色剤が有する導電性により着色層の絶縁性が低下する場合がある。
【0011】
そのため、導電性積層体等においては、良好な耐アルコール性及び表面絶縁性、並びに導電性積層体等の生産性向上を両立することが困難であるという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、導電層とは反対側の最表面において良好な耐アルコール性及び表面絶縁性を示し、更に生産性に優れる導電性積層体及び導電性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のガラス転移温度を有する着色層を備えた着色フィルム層を有する導電性積層体、及び該導電性積層体に粘着剤層を設けた導電性粘着テープによれば、本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、導電層と、上記導電層の一方の面上に設けられた粘着剤又は接着剤層と、上記粘着剤層又は接着剤層の上記導電層とは反対側の面上に設けられた着色フィルム層と、を有し、上記導電層は金属箔であり、上記着色フィルム層は樹脂フィルム層と、上記樹脂フィルム層の少なくとも上記導電層とは反対側の面に接する着色層とを有し、上記着色層は、樹脂硬化物と着色材料とを含み、上記着色層のガラス転移温度が43℃~70℃の範囲内である導電性積層体を提供する。
【0015】
また、本発明は、上述の導電性積層体と、上記導電性積層体の導電層側表面に設けられた導電性粘着剤層とを有する導電性粘着テープ。
を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電性積層体及び該導電性積層体を備えた導電性粘着テープは、導電層とは反対側の最表面において良好な耐アルコール性及び表面絶縁性を示すことができ、さらに生産性に優れる。このため、本発明の導電性積層体及び導電性粘着テープは、小型化や薄型化の要請、耐アルコール性および表面絶縁性の要請が高い携帯電子機器の回路部品の保護用途に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の導電性積層体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の導電性粘着テープの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の導電性積層体及び導電性粘着テープについて、それぞれ説明する。
【0019】
I.導電性積層体
本発明の導電性積層体は、導電層と、上記導電層の一方の面上に設けられた粘着剤又は接着剤層と、上記粘着剤層又は接着剤層の上記導電層とは反対側の面上に設けられた着色フィルム層と、を有し、上記導電層は金属箔であり、上記着色フィルム層は樹脂フィルム層と、上記樹脂フィルム層の少なくとも上記導電層とは反対側の面に接する着色層と、を有し、上記着色層は、樹脂硬化物と着色材料とを含み、上記着色層のガラス転移温度が43℃~70℃の範囲内である。
【0020】
図1は、本発明の導電性積層体の一例を表す概略断面図である。
図1に例示する本発明の導電性積層体10は、金属箔である導電層1と、導電層1の一方の面(第1の主面)上に設けられた粘着剤層又接着剤層2と、粘着剤層又は接着剤層2上に設けられた着色フィルム層3と、を有する。着色フィルム層3は、樹脂フィルム層4と、樹脂フィルム層4の導電層1とは反対側の面に接する着色層5と、を有する。着色層5は、樹脂硬化物及び着色剤を含有し、所定の範囲内にガラス転移温度を有する。樹脂フィルム層4は、本発明の導電性積層体10における一方の最表面(着色フィルム層側表面)層となる。
【0021】
本発明の導電性積層体は、金属箔で形成された導電層と粘着剤又は接着剤層と所望の構成の着色フィルム層と、がこの順に積層された層構成を有し、且つ、着色層が所定の範囲内にガラス転移温度を有することにより、着色フィルム層側表面において良好な耐アルコール性と高い表面絶縁性を示すことができる。また、本発明の導電性積層体は、その製造過程において着色フィルム層と金属箔とを貼り合わせる際にシワ等が生じにくく、高い生産性をもって製造することができる。
【0022】
本発明の導電性積層体は、導電層である金属箔の一方の面(第1の主面)に、粘着剤層又は接着剤層を介して着色フィルム層が設けられた構成を有する。本発明の導電性積層体の表面のうち、導電層の上記一方の面(粘着剤層又は接着剤層を介して着色フィルム層が設けられる面)側に位置する表面のことを、導電性積層体の着色フィルム側表面と称し、上記導電層の上記一方の面とは反対側の面(第2の主面)側に位置する表面のことを、導電性積層体の導電層側表面と称する場合がある。また、本発明の導電性積層体は、通常、一方の最表面層が着色フィルム層であり他方の最表面層が導電層となる。
【0023】
以下、本発明の導電性積層体の詳細について説明する。
【0024】
1.導電層
本発明における導電層は、導電性積層体の導電性を担う層である。本発明においては、上記導電層は、金属箔である。ここで金属箔とは、金属で構成された層であり、金属をマイクロレベルの厚みにした箔である。本発明の導電性積層体は、導電層が金属箔であることで、グラファイトシートや金属蒸着膜等と比較して、高い電磁波シールド性を発揮することができる。
【0025】
金属箔は、所望の金属材料で構成される箔であれば特に限定されず、例えば銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、ステンレス箔等が挙げられる。中でも導電性及び電磁波シールド特性に優れる観点から、銅箔が最も好ましい。
【0026】
また銅箔は、電解銅箔であってもよく、圧延銅箔でもよいが、導電層と貼合される粘着剤層又は接着剤層や、後述する導電性粘着テープとしたときに、導電層の着色フィルム層側とは反対側の面(第2の主面)に配置される粘着剤層との接着性に優れることから、電解銅箔が最も優れている。
【0027】
導電層の厚みは、特に限定されるものではないが、厚みは3μm以上が好ましく、5μm以上が好ましく、また、上記厚みは40μm以下が好ましく、20μm以下が好ましい。より具体的には、導電層の厚みは3μm以上40μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下が好ましい。導電層の厚みを上記の範囲内とすることで、導電性積層体の総厚が小さくても、導電性を良好に発揮することができるからである。なお、導電層の厚みが上記の範囲を超過すると、導電性積層体の薄型化が困難になる場合があり、一方上記の範囲に満たないと、導電性や電磁波シールド性が得られにくくなる場合がある。
【0028】
導電層の十点平均表面粗さRzは、2.0μm以下であることが好ましい。導電層の表面粗さRzが上記の範囲内にあることで、導電層と貼合される粘着剤層又は接着剤層や、後述する導電性粘着テープとする際に導電層の第2の主面に貼合される薄膜の導電性粘着剤層や絶縁性粘着剤層に対して接着性を十分に発揮できるからである。導電層の十点平均表面粗さRzとして、より好ましくは、0.01μm以上、0.1μm以上であり、また上記Rzは、2.0μm以下、1.5μm以下、1.3μm以下、1.1μm以下、0.9μm以下である。
【0029】
また、導電層の算術平均粗さRaは、0.01μm以上1.0μm以下が好ましく、0.01μm以上0.7μm以下がより好ましく、0.05μm以上0.3μm以下が更に好ましい。導電層の算術平均粗さRaを上記の範囲内とすることで、導電層と貼合される粘着剤層又は接着剤層や、後述する導電性粘着テープとする際に導電層の着色フィルム層側とは反対側の面(第2の主面)に貼合される薄膜の粘着剤層に対して接着性を十分に発揮できるからである。
【0030】
導電層の十点平均表面粗さRz及び算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013に規定された値をいい、東京精密社製HANDYSURF+を用い、導電層の表面の任意の3箇所(それぞれ縦50μm×横50μmの範囲)に対して表面測定を行い、測定で得られた3点の平均値を導電層の十点平均表面粗さRz及び算術平均粗さRaとする。
【0031】
2.粘着剤層又は接着剤層
本発明における粘着剤又は接着剤層は、導電層と着色フィルム層との間に配置され、導電層と着色フィルム層とを貼合する層であり、粘着剤層であってもよく、接着剤層であってもよい。なお、導電層と着色フィルム層とを接合する粘着剤層又は接着剤層のことを、接合層と称して説明する場合がある。
【0032】
接合層が粘着剤層の場合、粘着剤層の組成は特に制限されず、例えば(メタ)アクリル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤組成物、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤組成物、ポリアミド系粘着剤組成物、フッ素系粘着剤組成物、クリ-プ特性改良型粘着剤組成物、放射線硬化型粘着剤組成物などの公知の粘着剤組成物を適宜選択して用いることができる。粘着剤成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
また、接合層が接着剤層の場合、接着剤層の組成は特に限定されず、例えば、酢酸ビニル樹脂系接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)系接着剤、α-オレフィン(イソブテン-無水マレイン酸樹脂)系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤、塩化ビニル樹脂系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、再生ゴム系接着剤、SBR系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ・変性シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、シリル化ウレタン樹脂系接着剤等の汎用の接着剤を適宜選択して用いることができる。接着剤成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
中でも着色フィルム層と導電層との密着性をより良好にすることが可能となることから、上記接合層が粘着剤層であることが好ましく、上記粘着剤層が粘着剤成分として(メタ)アクリル系粘着剤組成物を含むことが、高い接着信頼性が得られることからより好ましい。上記(メタ)アクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル系共重合体)をベースポリマーとし必須に含み、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの適宜な添加剤を含むことができる。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とするポリマーであり、必要に応じて(メタ)アルキルエステルに対して共重合が可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより調製される。すなわち、アクリル系ポリマーは、単独重合体であってもよく、共重合体であっても良い。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-18アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステル]などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、目的とする粘着性などに応じて適宜選択することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。アクリル酸ブチルを30%以上含有するものが接着性・耐熱性に優れるため好ましい。
【0037】
また、上記(メタ)アルキルエステルに対して共重合可能な共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体の他、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性の共重合性単量体(多官能モノマー)などが挙げられる。共重合性単量体は、1種単独用いても良く、2種以上組み合わせて用いてもよい。共重合性単量体としては、カルボキシル基などの官能基を有する改質用モノマーを好適に用いることができる。アクリル酸を0.5~4.0%含有するものが接着性・耐熱性に優れるため好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万以上、50万以上、60万以上であり、又、上記重量平均分子量(Mw)は、好ましくは120万以下、100万以下、90万以下である。より具体的には、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、30万~120万の範囲内が好ましく、50万~100万の範囲内が更に好ましく、60万~90万の範囲内がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあることで、上記黒色粘着剤層は、薄厚であっても導電層及び絶縁部に対して良好な接着性及び耐熱性を発揮することができる。
【0039】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、GPC測定装置として、東ソー株式会社製「SC8020」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR-H」
・検出器:示差屈折
【0040】
なお、本明細書内における重量平均分子量(Mw)は、特筆しない限り上記の方法及び条件により測定された値とする。
【0041】
粘着剤層は、粘着力を向上させるため、粘着付与樹脂を含有することも好ましい。粘着剤層が粘着付与樹脂を含有することで、引張強度や引張破断強度を高くできるため、使用する(メタ)アクリル系ポリマーに応じて粘着付与樹脂を適宜添加することで、本発明の導電性積層体の引張強度や引張破断強度を調整できる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジンやロジンのエステル化合物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα-ピネン-フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0042】
なかでも、上記粘着剤層が、n-ブチル(メタ)アクリレート(換言すれば(メタ)アクリル酸n-ブチル)を主たるモノマー成分とする(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、ロジン系樹脂とスチレン系樹脂とを混合して含むことが好ましい。これらの2種類の粘着付与樹脂を併用することで、粘着剤層の薄厚化と粘着力との両立がより達成しやすくなるからである。
【0043】
上記粘着剤層は、初期接着力を上げるため、常温で液状の粘着付与樹脂を含むことが好ましい。常温で液状の粘着付与樹脂としては、例えば、常温で固体の粘着付与樹脂の液状樹脂や、プロセスオイル、ポリエステル系可塑剤、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられる。特にテルペンフェノール樹脂が好ましい。市販品としてはヤスハラケミカル社製YP-90L等がある。粘着付与樹脂の添加量は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して1~20質量部を添加するのが好ましい。
【0044】
上記粘着付与樹脂は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し10質量部~70質量部の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは20質量部~60質量部の範囲である。粘着付与樹脂の量を上記の範囲とすることで、粘着剤層の粘着力を向上させることができる。
【0045】
粘着剤層のゲル分率は特に制限されるものではないが、5~95質量%の範囲であることが好ましい。粘着剤層が薄厚であっても充分な接着性を発現しやすいからである。中でも、粘着剤層のゲル分率は、10~70質量%の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは15~50質量%の範囲である。
【0046】
ゲル分率は、養生後の粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
ゲル分率(質量%)=[(粘着剤層のトルエン浸漬後質量)/(粘着剤層のトルエン浸漬前質量)]×100
【0047】
粘着剤層の、25℃での貯蔵弾性率は、1×104以上5×105Pa以下であることが好ましく、3×104以上1×105Pa以下であることがさらに好ましい。粘着剤層の貯蔵弾性率を上記の範囲とすることで、薄膜であっても濡れ性(初期タック)及び接着性と加工性とを高度に両立しやすくなるからである。
【0048】
粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、粘弾性試験機により測定することができる。より具体的には、粘弾性試験機として、ティ・エイ・インスツルメントジャパン社製粘弾性試験機(アレス2kSTD)を用いて、次の測定条件で測定して求めることができる。
・試験片厚み:2mm
・周波数:1Hz
・圧縮荷重:40~60g
【0049】
なお、本明細書内において、粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、特筆しない限り上記の方法及び条件で測定される値とする。
【0050】
(メタ)アクリル系ポリマーは、溶液重合法、エマルション重合法、紫外線照射重合法等の慣用の重合方法により調製することができる。
【0051】
粘着剤層又は接着剤層は無色透明でも有色でもよいが、導電性積層体の意匠性をより高める観点から有色であることが好ましく、中でも暗色が好ましく、黒色がより好ましい。粘着剤層又は接着剤が有色、中でも黒色を呈することにより、薄厚の導電性積層体においても着色層が呈する色と粘着剤層又は接着剤層が呈する色との相乗効果により、高い意匠性や隠蔽性を発揮することができる。また、着色層単体により意匠性や隠蔽性を発揮するためには、着色層を厚くする必要があるのに対し、粘着剤層又は接着剤層を有色とすることで、意匠性や隠蔽性の向上に伴う導電性積層体の総厚の増大を抑えることができる。
【0052】
粘着剤層又は接着剤層が有色である場合、上記粘着剤層又は接着剤層は着色剤を含む。着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等を用いることができる。粘着剤層又は接着剤層が黒色を呈する場合、粘着剤層又は接着剤層に含有される黒色着色剤としては、有機系黒色顔料、無機系黒色顔料、黒色染料等が挙げられる。黒色着色剤は、1種単独または2種以上を組合せて使用することができる。また、黒色着色剤は、絶縁性又は導電性が低いことが好ましい。粘着剤層又は接着剤層の導電性を低くして、導電性積層体の表面絶縁性を高めることができるからである。
【0053】
無機系黒色顔料としては、例えばカーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブテン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素等が挙げられる。また、有機系黒色顔料としては、例えばアニリンブラック、アゾ系顔料、アントラキノン系有機黒色色素等が挙げられる。中でも、導電性積層体の色が電気・電子機器に使用される部材の色と同化しやすくなり、遮光性及び分散性に優れ、特に黒色の着色層と粘着剤層又は接着剤層との重なりによる高い隠蔽性を発現することが可能となることから、上記黒色着色剤は、カーボンブラックが好ましい。
【0054】
粘着剤層又は接着剤層中の着色剤の含有量は特に限定されず、着色層との重なりにより所望の表面意匠性や隠蔽性を発揮可能な量とすることができ、例えば粘着剤層又は接着剤層の全量(100質量%)中、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。粘着剤層又は接着剤層中の着色剤の含有量が上記範囲にあることで、薄厚であっても粘着剤層又は接着剤層の絶縁性、着色フィルム層や導電層に対する接着性を発揮でき、更に着色層との重なりによる表面意匠性や隠蔽性を高めることができる。
【0055】
粘着剤層又は接着剤層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上であり、また、上記厚みは、好ましくは5μm以下、3μm以下、2.5μm以下である。より具体的には、粘着剤層又は接着剤層の厚みは、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることが好ましく、1.5μm以上2.5μm以下であることが最も好ましい。粘着剤層又は接着剤層の厚みを上記の範囲内とすることで、導電性積層体としての接着強度と薄さとを両立しやすくなるからである。特に本発明の導電性積層体を、電子部品用電磁波シールド用として用いる際に、要求される接着強度と薄さを両立しやすくなる。また、粘着剤層又は接着剤層が着色剤を含有する場合に、粘着剤層又は接着剤層単体での色の濃度が向上し、着色層との重なりによる表面意匠性や隠蔽性を高めることができる。
【0056】
粘着剤層又は接着剤層は、導電性が低い、若しくは、絶縁性を示すことが好ましい。粘着剤層又は接着剤層の導電性を低くすることで、導電性積層体の着色フィルム層側表面の絶縁性を高めることができるからである。具体的には、粘着剤層又は接着剤層の表面抵抗率が、1×109Ω/□以上であることが好ましく、1×1010Ω/□以上であることがさらに好ましく、1×1011Ω/□以上であることがより好ましい。粘着剤層又は接着剤層の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、粘着剤層又は接着剤層が高い絶縁性を示すことができ、着色フィルム層により発揮される絶縁性を更に高めることができる。これにより、本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面においてより高い絶縁性を示すことが可能となる。なお、粘着剤層又は接着剤層の表面抵抗率は大きいほどよいが、一般的に1×1018Ω/□以下、1×1016Ω/□以下、1×1014Ω/□以下、1×1012Ω/□以下とすることができる。
【0057】
粘着剤層又は接着剤層の表面抵抗率は、JIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(アドバンテスト製 デジタル超高抵抗/微小電流計R8340、TR42ボックス)を用いて、粘着剤層又は接着剤層に500Vの電圧をかけて測定することができる。
【0058】
粘着剤層又は接着剤層が有色である場合、粘着剤層又は接着剤層の隠蔽率は、後述する着色層との重なりにより、所望の表面着色性を発揮できる大きさであれば特に限定されないが、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることがより好ましい。また、粘着剤層又は接着剤層の上記隠蔽率は、高いほど好ましく、その上限は100%とすることできる。粘着剤層又は接着剤層の隠蔽率を上記の範囲とすることで、導電層の色目の影響による導電性積層体の着色フィルム層側表面の意匠性や隠蔽性、特に着色層として黒色インキ層を用いる場合に、導電層の色目の影響による導電性積層体表面の黒色性及び隠蔽性が低下することを抑制できるためである。
【0059】
粘着剤層又は接着剤層の隠蔽率は下記の方法で測定することができる。粘着剤層又は接着剤層を隠蔽率試験紙(日本テストパネル工業社製)の白色面および黒色面に貼付し、JIS-Z-8722に規定される色の測定方法で、白色面および黒色面に貼付した粘着剤層又は接着剤層の三刺激値のうち明るさを示すY値をそれぞれ測定する。測色光沢計「CM-3500d」(ミノルタ社製)を使用し、2度視野における標準光Cについて測定する。測定したY値を下記式に当てはめ、隠蔽率を測定することができる。
隠蔽率(%)=(黒色面に貼付した粘着剤層又は接着剤層のY値/白色面に貼付した粘着剤層又は接着剤層のY値)×100%
【0060】
粘着剤層又は接着剤層は、導電層または着色フィルム層の樹脂フィルム層上に、粘着剤又は接着剤を塗工することで形成することができる。塗工方法としては、グラビアコーティング、コンマコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、リップコーティング、スクリーンコーティング等を挙げることができる。中でも薄膜の塗工をするために好ましいのはグラビアコーティングであり、その中でもマイクログラビアコーティングが最も好ましい。
【0061】
3.着色フィルム層
本発明における着色フィルム層は、粘着剤層又は接着剤層を介して導電層の一方の面(第1の主面)上に設けられる層である。本発明における着色フィルム層は、樹脂フィルム層と、上記樹脂フィルム層の少なくとも上記導電層とは反対側の面に接するように設けられた着色層と、を有する。すなわち、着色フィルム層において着色層は、上記樹脂フィルム層の少なくとも上記導電層とは反対側の面に、他の層を介在せずに直接形成されている。上記着色フィルム層における着色層は、樹脂硬化物と着色材料とを含み、上記着色層のガラス転移温度が所定の範囲内にある。
【0062】
本発明の導電性積層体は、上述の特徴を有する着色フィルム層を最表面に有することで、着色フィルム層側表面の耐アルコール性を良好とすることができる。また、着色フィルム層が、樹脂フィルム層と着色層との積層構造を有することで、着色層による意匠性や隠蔽性を発現しつつ、薄型であっても着色フィルム層全体で良好な絶縁性を発現することができる。
【0063】
着色フィルム層は、樹脂フィルム層の少なくとも上記導電層とは反対側の面上に着色層が直接配置されていればよいが、樹脂フィルム層の両面にそれぞれ着色層が直接配置されていてもよい。すなわち、上記着色フィルム層が、樹脂フィルム層の導電層とは反対側の面(以下、樹脂フィルム層の第1面とする。)に接する第一の着色層と、導電層側の面(樹脂フィルム層の第2面とする。)に接する第二の着色層と、を有していてもよい。
【0064】
また、着色フィルム層において、樹脂フィルム層の第1面に配置される着色層は、単層であってもよく、多色刷り等により2層以上の多層構造を有する多層体であってもよい。樹脂フィルム層の第2面においても同様である。着色層が多層体である場合、多層体を構成する各層は他の層を介在せずに直接接触して積層される。
【0065】
(1)樹脂フィルム層
本発明における着色フィルム層を構成する樹脂フィルム層としては、特に限定されるものではないが、公知の絶縁性を示す樹脂フィルムがあげられる。具体的には、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリオレフィンフィルム等があげられる。そのなかでも、薄厚で絶縁性を維持しながら、破れにくく強度が発揮しやすいことから、ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムが好ましく、より薄厚化が可能であり絶縁性に優れることからポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0066】
樹脂フィルム層の厚みは、所望の絶縁性を発揮できる大きさであれば特に限定されるものではないが、好ましくは1μm以上、1.5μm以上、2μm以上とすることができる。また、上記厚みは、好ましくは16μm以下、13μm以下、6μm以下、4.5μm以下、3μm以下、2.5μm以下とすることができる。より具体的には、上記樹脂フィルム層の厚みは1μm以上13μm以下が好ましく、なかでも1μm以上6μm以下が更に好ましく、1.5μm以上2.5μm以下が最も好ましい。樹脂フィルム層の厚みを上記範囲内にあることで、高い絶縁性を発揮しやすいからである。また、樹脂フィルム層の厚みを上記範囲内にあることで、着色フィルム層の厚さ及び導電性積層体の総厚みを小さくすることができ、耐アルコール性、表面絶縁性及び生産性の向上に加えて導電性積層体の薄型化を実現することができるからである。
【0067】
樹脂フィルム層は、着色層との密着性を高めるために易接着処理がされていても良い。易接着処理の種類は特に限定されず、公知の処理を適用することができ、例えばコロナ処理等の表面処理や、プライマー層等を設けても良い。
【0068】
(2)着色層
本発明における着色フィルム層を構成する着色層は、樹脂硬化物と着色材料とを含み、ガラス転移温度が所定の範囲内にある層である。着色層は、樹脂フィルム層の表面と直接接する。本発明の導電性積層体は、通常、着色フィルム層の、上記樹脂フィルム層の導電層側とは反対側の面に設けられた着色層が、導電性積層体の着色フィルム側表面の最表に位置することができる。
【0069】
本発明における着色層は、ガラス転移温度が43℃~70℃の範囲内である。着色層のガラス転移温度が上記の所定の範囲内にあることで、良好な耐アルコール性及び表面絶縁性を両立できる。また、粘着剤層又は接着剤層を介して着色フィルム層と導電層とを貼合する際に、着色フィルム層のカール等に起因したシワ等の発生を抑えることができ、生産性を高めることができる。
【0070】
なお、表面の耐アルコール性を高めるために、硬度の高い樹脂を含む着色インキを薄膜の樹脂フィルムに印刷して着色層を形成する場合、着色層と樹脂フィルムとの密着性が十分に得られず、樹脂層と樹脂フィルム層との間で層間剥離が生じやすくなる傾向にある。しかし本発明によれば、樹脂フィルム層上に形成される着色層の樹脂の硬度を高める代わりに所定のガラス転移温度に設定することで、耐アルコール性の向上と共に樹脂フィルム層と着色層との密着性を高めることも可能となる。これにより、層間密着性の高い導電性積層体とすることができる。
【0071】
着色層のガラス転移温度は43℃~70℃の範囲内であればよいが、中でも着色層のガラス転移温度は、好ましくは45~68℃の範囲内であり、特に好ましくは50℃~65℃の範囲内である。耐エタノール性をより高くすることができるとともに、着色フィルムの形成において着色インクを薄い樹脂フィルム層にコートして着色層を形成する場合に、着色フィルムのカールの発生をより効果的に抑制することができ、導電性積層体の生産性をより高めることができ、耐エタノール性と生産性との両立がより優れるからである。加えて、上記の製造方法により着色フィルム層を薄型にすることが可能となるため、導電性積層体の薄型化も達成することができるからである。ガラス転移温度は、ISO 3146に従い、DSCを用いて測定を行って測定される値である。
【0072】
着色層のガラス転移温度は、着色層に含有される樹脂硬化物のガラス転移温度や、樹脂硬化物と着色材料との配合割合等により調整されるが、中でも樹脂硬化物のガラス転移温度が着色層のガラス転移温度に大きく寄与することから、主に樹脂硬化物のガラス転移温度により調整することが可能である。
【0073】
<着色層の組成>
着色層は、樹脂硬化物と着色材料とを含む。着色層は、例えば、主剤及び硬化剤を含む2液硬化型樹脂と着色材料とを含む着色インキを、樹脂フィルム層の一方の面に塗工し、乾燥させて形成することができる。着色層は、すなわち着色インキの硬化物により形成される層であり、主剤及び硬化剤を含む2液硬化型樹脂の硬化物が、着色層中の樹脂硬化物に相当する。
【0074】
-樹脂硬化物-
上記着色層に含まれる樹脂硬化物は、着色層のガラス転移温度を所定の範囲とすることが可能な樹脂であればよい。樹脂硬化物のガラス転移温度は、43℃~70℃の範囲内が好ましく、45~68℃の範囲内がより好ましく、50℃~65℃の範囲内が特に好ましい。ガラス転移温度は、ISO 3146に従い、DSCを用いて測定を行って測定される値である。樹脂硬化物のガラス転移温度は、例えば、樹脂硬化物の前駆体である2液硬化型樹脂の主剤と硬化剤との配合比率や、架橋度を調整することにより適宜調整が可能である。樹脂硬化物としては、絶縁性を示し、ガラス転移温度が上記の範囲内に入る樹脂硬化物であれば特に限定されず、汎用樹脂の硬化物を用いることができ、例えばポリエステル系樹脂の硬化物が挙げられる。中でも、樹脂硬化物が、ポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分と、多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とを含む樹脂組成物の硬化物(上記ポリオール成分とイソシアネート成分を含むポリエステル系樹脂の硬化物であることが、着色層と樹脂フィルム層とを組み合わせることによる良好な耐アルコール性及び表面絶縁性、並びに導電性積層体の生産性向上を達成することができるからである。また、上記組成の樹脂硬化物を含む着色層は、特にポリエステル系樹脂硬化物を含む樹脂フィルム層への密着性が良好となるからである。なお、主成分とは、含有される成分のうち最も含有比率の高い成分をいい、例えばポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分とは、ポリオール成分中にポリエステルポリオールが最も多く含まれることを意味する。多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分についても同様である。中でも樹脂硬化物がポリオール成分及びイソシアネート成分との反応硬化物であり、ポリオール成分がポリエステルポリオールであり、イソシアネート成分が多官能イソシアネートである、ポリエステル系樹脂の硬化物であることが好ましい。
【0075】
着色層の樹脂硬化物が、ポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分と多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とを含む樹脂組成物の硬化物である場合、上記着色層は、ポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分を主剤とし、多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分を硬化剤とし、上記主剤及び硬化剤を含む2液硬化型樹脂及び着色材料を含む着色インキを用いて形成することができる。
【0076】
(ポリオール成分)
着色層が、ポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分と多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とを含む樹脂組成物の硬化物を含む場合、ポリオール成分に含まれるポリエステルポリオールの分子量は、特に限定されないが、質量平均分子量が1,000~400,000の範囲内であることが好ましい。ポリエステルポリオールの質量平均分子量が1,000以上であると、得られる硬化樹脂の印刷適性やコーティング適正、及び耐アルコール性が好適になりやすく、40,0000以下とすることで、乾燥性、耐ブロッキング性が向上しやすくなる。ポリエステルポリオールの質量平均分子量は、更に2,000~350,000の範囲内が好ましく、より好ましくは3,000~300,000の範囲内である。
【0077】
上記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件として、カラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いる。
【0078】
ポリエステルポリオールは、水酸基を2つ以上有する化合物である。このようなポリエステルポリオールとしては、1種以上の多塩基酸と1種以上の多価アルコールとを反応して得られるポリエステルポリオール、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール、これらを共重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0079】
ポリエステルポリオールを調製するための多塩基酸としては、公知の原料をいずれも使用することが出来る。多塩基酸として例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3―シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸を単独であるいは二種以上の混合物で使用することが出来る。上記のダイマー酸とはオレイン酸、リノール酸などのC18の不飽和脂肪酸ディールスアルダー型2量化反応による生成物であり、不飽和結合に水素を添加し飽和させたものなど種々のものが市販されている。代表的なものは、C18のモノカルボン酸0~5質量%、C36ダイマー酸70~98%およびC54のトリマー酸0~30質量%からなるものである。
【0080】
ポリエステルポリオールを調製するための多価アルコールとしては、公知の原料をいずれをも使用することができる。多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-10-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のグリコール類;プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物の1種または2種以上と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種または2種以上とを常法により付加重合したポリエーテル類等の多価アルコールが挙げられる。これらの各種多価アルコールは、単独であるいは二種以上の混合物として使用できる。
【0081】
ポリオール成分は、ポリエステルポリオールを主成分として含むものであればよく、ポリエステルポリオールのみを含んでいても良く、着色層のガラス転移温度を所定の範囲内にすることが可能であれば、ポリエステルポリオールに加えて、ポリエステルポリオール以外の1種又は2種以上のポリオールとを含んでいてもよい。
【0082】
(イソシアネート成分)
着色層が、ポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分と多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とを含む樹脂組成物の硬化物を含む場合、イソシアネート成分は、上述したポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分と反応する成分であり、多官能イソシアネートを主成分とする。
【0083】
多官能イソシアネートは、一つの分子の中にイソシアネート基を2つ以上有するものであればよいが、中でもイソシアネート基を2つ有するジイソシアネートを好適に用いることができる。多官能イソシアネートとして具体的には、芳香族ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、低分子グリコール類と上記芳香族ジイソシアネートとのプレポリマー等)、脂肪族ジイソシアネート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子グリコール類と上記脂肪族ジイソシアネートとのプレポリマー等)、脂環族ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、水添化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルー4,4’-ジイソシアネート、低分子グリコール類と上記脂環族ジイソシアネートとのプレポリマー等)及びこれらの二種以上の混合物、上記ジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、ビウレット体、アロファネート体等が挙げられる。なかでも脂肪族または脂環族ジイソシアネート、並びにそれらのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体、またはアロファネート体は、硬化収縮によるカールが少なく、薄膜フィルムに使用するのに適している。
【0084】
イソシアネート成分は1種の多官能イソシアネートを含有していてもよく、2種以上の多官能イソシアネートを含有していてもよい。また、イソシアネート成分は、多官能イソシアネートを主成分として含むものであればよく、着色層のガラス転移温度を所定の範囲内にすることが可能であれば、他のイソシアネートを含有していても良い。
【0085】
樹脂硬化物のガラス転移温度は、ポリオール成分及びイソシアネート成分の配合比等を適宜組み合わせることで実現可能であり、ポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分(主剤)と多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分(硬化剤)との配合割合は、主剤の主成分であるポリエステルポリオールの水酸基価や多官能イソシアネートが有するイソシアネート基の数に応じて適宜調整することができる。例えば、ポリオール成分が有する水酸基とイソシアネート成分が有するイソシアネート基との比(水酸基/イソシアネート基)が1/0.5~1/10(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは1/0.6~1/5である。
【0086】
(その他)
着色層中の樹脂硬化物の含有量は、用途等に応じて適宜調整すればよく、着色層中の30~90質量%が好ましく、40~80質量%が好ましく、50~65質量%が好ましい。ガラス転移温度が所定の範囲内にすることができ、耐アルコール性が良好となるからである。なお、着色層中の含有量とは、すなわち着色層を形成する着色インキの固形分中の含有量と同義である。また、着色層中の樹脂硬化物は1種でもよく、2種以上含有されていても良い。
【0087】
-着色材料-
着色材料としては、ハロゲンを含まない公知慣用の顔料や染料を使用することができ、着色層が呈する色に応じて適宜選択することができる。例えば黒の場合は上述の接着剤層又は粘着剤層の項目で説明した黒色着色剤、中でもカーボンブラック、白の場合は酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黄色の場合は黄色酸化鉄、赤の場合はべんがら、青の場合はシアニンブルー、銀の場合はアルミニウム粉、パールの場合は雲母チタン粉が、耐候性・耐熱性・インキ樹脂に対する分散性から好ましい。なかでも、カーボンブラックが、導電性積層体の色が電気・電子機器に使用される部材の色と同化しやすくなり、隠蔽性に優れるため好ましい。
【0088】
着色材料の添加量としては、用途等に応じて適宜調整すればよく、着色層中に10~70質量%の範囲内で含有されること好ましい。着色層中の着色材料の含有量としてより好ましくは20~60質量%の範囲内、さらに好ましくは35~50質量%の範囲内である。10質量%以上あれば、好適に隠蔽性を実現でき、70質量%以下であれば、好適な分散性及び樹脂フィルムとの密着性を実現できる。なお、着色層中の含有量とは、すなわち着色層を形成する着色インキの固形分中の含有量と同意である。
【0089】
-任意の成分-
着色層及び該着色層を形成する着色インキは、任意の材料を含有していても良い。上記任意の材料としては、例えば、セルロース系樹脂等の分散剤、ブロッキング剤、ジブチルチン等の架橋促進剤等の、汎用のインキに含有される添加剤が挙げられる。
【0090】
また、着色層は、本発明の効果を損なわない範囲で上述した樹脂硬化物以外の樹脂を含んでいても良い。着色層中に含まれる着色材料以外の樹脂のうち、樹脂硬化物の割合が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、実質的に上述の樹脂硬化物以外の樹脂を含有しないことが特に好ましい。
【0091】
<着色層の構成>
着色層の厚さは特に限定されないが、1.0~4.0μmの範囲内であることが好ましく、1.5~3.5μmの範囲内であることが中でも好ましく、2.0~3.0μmの範囲内であることが更に好ましい。厚さを1μm以上とすることで、着色層による好適な意匠性を実現できる。また、着色層がコロナ処理等の易接着処理が困難な薄い樹脂フィルムにも強固に密着できるため、着色フィルム層及び導電性積層体全体での層間密着性を高めることができる。一方、厚さ4μm以下とすることで、着色フィルム層のカールの発生をより効果的に抑えることができ、導電性積層体の生産性をより高めることができる。また、本発明の導電性積層体が、耐アルコール性、表面絶縁性及び生産性の向上に加えて薄型化を実現できる。着色層が多層体である場合、着色層の厚さとは多層体の総厚さをいう。
【0092】
着色層の鉛筆硬度は、HB~2Hが好ましく、更に好ましくはF~Hである。HB以上とすることで好適な耐アルコールを実現でき、2H以下とすることで、。着色フィルム層のカールの程度が抑えられ導電性積層体の生産性を高めることができる。また、着色層と樹脂フィルム層との密着性を高めることができ、導電性積層体全体での層間密着性を更に良好とすることができる。着色層の硬度は、JIS K5600のひっかき硬度(鉛筆法)に基づいて測定することができる。
【0093】
着色層が多層体である場合、多層体を構成する各層は、各層が上述した所定のガラス転移温度を示すことが可能であれば、組成等は同一であってもよく異なってもよい。各層に含有される樹脂硬化物は、上述した所定のガラス転移温度を示すことが好ましい。
【0094】
(3)任意の構成
着色フィルム層は、上述した着色層及び樹脂フィルム層の他に、艶消し層を構成に含むことができる。艶消し層は、通常、樹脂フィルム層の導電層とは反対側の面(樹脂フィルム層の第1面)に配置される着色層の表面に配置される。換言すれば、着色フィルム層が艶消し層を構成に含む場合、上記着色フィルム層は、艶消し層、着色層及び樹脂フィルム層が少なくともこの順に積層された構成とすることができ、上記艶消し層が、導電性積層体の着色フィルム側表面の最表に位置する。なお、艶消し層が着色層上に配置される場合は、上記艶消し層は、他の層を介在せずに着色層表面に直接接して配置される。
【0095】
上記着色フィルム層が樹脂フィルム層の導電層側とは反対側の面に設けられた着色層上に艶消し層を更に有することで、着色フィルム層側表面の耐アルコール性及び表面絶縁性を良好にすることに加え、着色フィルム層の明度L*、色度a*、及び色度b*、ならびに60°グロス値の各物性を調整することができ、導電性積層体全体での意匠性や隠蔽性を高めることできる。特に60°グロス値を調整するうえで艶消し層を設けることが好ましい。
【0096】
本発明においては、艶消し層は、所定の範囲のガラス転移温度を示す。艶消し層のガラス転移温度は、上述した着色層のガラス転移温度の範囲と同じく、43℃~70℃の範囲内であればよく、好ましくは45~68℃であり、さらに好ましくは50℃~65℃である。これにより艶消し層の耐アルコール性を高めることができる。ガラス転移温度は、ISO 3146に従い、DSCを用いて測定を行って測定される値である。
【0097】
艶消し層は、樹脂バインダー及び微粒子を含む層である。微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の汎用の微粒子が挙げられる。また、艶消し層のガラス転移温度は、主に樹脂バインダーのガラス転移温度に起因することから、樹脂バインダーとしては、艶消し層に汎用される樹脂の中から、上述した所定のガラス転移温度の範囲内にある樹脂を適宜選択して用いることができる。中でも上記艶消し層は、ウレタン系樹脂にシリカ粒子を分散させたものが好ましい。
【0098】
艶消し層の厚みは、所望の機能を発揮することが可能な大きさであれば特に限定されず、好ましくは0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上である。また、艶消し層の厚みは、導電性積層体の総厚に大きく影響しない大きさであればよく、好ましくは3μm以下、2μm以下、1.5μm以下である。より具体的には、艶消し層の厚みは0.3μm以上3μm以下が好ましく、なかでも0.5μm以上1.5μm以下が好ましい。
【0099】
艶消し層は、樹脂バインダー中に微粒子を分散させたマット剤(すなわち、艶消し剤)を含有する公知の表面処理剤を、着色層の樹脂フィルム層側とは反対側の表面に塗工することで、形成することができる。
【0100】
(3)その他
本発明における着色フィルム層は、上述した樹脂フィルム層及び上述した着色層を適宜組み合わせて構成され、その組み合わせは限定されないが、中でも樹脂フィルム層がポリエステルフィルムであり、着色層がポリエステルポリオールを主成分とするポリオール成分と多官能イソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とを含む樹脂組成物の硬化物を含む層である組合せは、樹脂フィルム層と着色層との密着性がより高まり、着色フィルム層内での層間密着性及び導電性積層体全体での層間密着性の向上を図ることができる点で、より好ましい。
【0101】
本発明における着色フィルム層は、表面抵抗率が1×109Ω/□以上であることが好ましく、1×1010Ω/□以上であることがさらに好ましく、1×1011Ω/□以上であることがより好ましい。着色フィルム層の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面においてより高い絶縁性を維持することが可能となる。なお、着色フィルム層の表面抵抗率は大きいほどよいが、一般的に1×1018Ω/□以下、1×1016Ω/□以下、1×1014Ω/□以上、1×1012Ω/□以下とすることができる。
【0102】
着色フィルム層の表面抵抗率は、JIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(アドバンテスト製 デジタル超高抵抗/微小電流計R8340、TR42ボックス)を用いて、着色フィルム層に500Vの電圧をかけて測定することができる。
【0103】
本発明における着色フィルムは、意匠性、隠蔽性や遮光性を確保する観点から、その全光線透過率が10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下であり、最も好ましくは1%以下である。全光線透過率はJIS K7105に従い測定される全光線透過率Ttである。
【0104】
(4)着色フィルム層の製造方法
着色フィルム層は、上述した着色材料、並びに樹脂硬化物の前駆体である主剤及び硬化剤を含む樹脂組成物を有機溶媒に溶解・分散させた着色インキを用い、所望の印刷方法により樹脂フィルム層の表面に印刷し、乾燥させて着色層を形成することにより得られる。着色インキの印刷方法としては、ダイレクトグラビア印刷、リバースグラビア印刷、小径グラビア印刷等の公知の印刷方法が挙げられるが、なかでも薄型の樹脂フィルム層でも破れにくく、印刷適性に優れるダイレクトグラビア印刷が好ましい。
【0105】
着色層を形成する着色インキに用いられる有機溶媒は特に限定されないが、着色材料をポリエステルポリオールに分散する際及び希釈の目的で水酸基を有しない有機溶剤を含有することが好ましい。水酸基を有しない有機溶剤としては、公知のものをいずれも使用することが出来る。例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル計、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。好ましくは、酢酸エチル、メチルエチルケトンである。
【0106】
4.導電性積層体
本発明の導電性積層体は、総厚が6μm以上であることが好ましく、10μm以上が更に好ましく、15μm以上がより好ましい。また上記総厚は45μm未満であることが好ましく、38μm未満であることが更に好ましく、25μm未満であることがより好ましい。より具体的には、本発明の導電性積層体は、総厚が10μm以上45μm未満であることが好ましく、15μm以上45μm未満であることが更に好ましく、15μm以上25μm未満であることがより好ましい。導電性積層体の総厚を上記の範囲内とすることで、総厚が小さく薄型でありながら、着色フィルム層側表面において良好な耐アルコール性及び表面絶縁性を発揮でき、更に生産性に優れた導電性積層体とすることができる。また、薄型でありながら、導電性や電磁波シールド性、層間密着性、並びに意匠性及び隠蔽性等の各特性の両立を達成することができる。
【0107】
本発明の導電性積層体は、上述の層構成を有し、上記着色フィルム層側表面の、CIE L*a*b*表色系で規定される明度L*、色度a*、及び色度b*がそれぞれ所定の値を示すことが好ましい。導電層の色目が抑えられ、導電性積層体の着色フィルム層側表面において色濃度及び色相に優れ、質感の高い黒色を呈することができる。これにより、本発明の導電性積層体は、耐アルコール性、表面絶縁性、及び生産性の効果に加えて、薄型でありながら優れた表面意匠性及び隠蔽性を発揮することができる。
【0108】
詳述すると、本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面の、CIE L*a*b*表色系で規定される明度L*が20以上であることが好ましく、中でも21以上であることが好ましく、21.5以上であることが好ましく、22以上であることが好ましく、22.5以上であることが好ましい。また、明度L*は27以下であることが好ましく、中でも25以下であることが好ましく、24以下であることが好ましく、23以下であることが好ましい。より具体的には、明度L*は20以上27以下であることが好ましく、中でも21以上25以下が好ましく、21.5以上24以下が更に好ましく、22以上23以下がより好ましい。本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面から測定される明度L*が上記の範囲内にあることで、導電性積層体として漆黒性に優れた意匠性を発現でき、電気・電子機器内において他の着色部品と併用した際に他の部品が呈する色と一体感を出すことができる。特に、少なくとも着色層が黒色である場合に、電気・電子機器内において他の黒色部品と一体感を出すことができ、黒色意匠性がより高まる。
【0109】
本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面の、CIE L*a*b*表色系で規定される色度a*が-2以上であることが好ましく、中でも-1.5以上であることが好ましく、-1以上であることが好ましく、-0.5以上であることが好ましく、0以上であることが好ましい。また、色度a*は2以下であることが好ましく、中でも1.5以下であることが好ましく、1以下であることが好ましく、0.5以下であることが好ましい。より具体的には、色度a*は-2以上2以下であることが好ましく、中でも-1以上1以下であることが好ましく、-0.5以上0.5以下であることがより好ましい。本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面から測定される色度a*が上記の範囲内にあることで、導電性積層体としての優れた着色意匠性を発現でき、電気・電子機器内において他の着色部品と併用した際に他の部品が呈する色と一体感を出すことができる。特に、少なくとも着色層が黒色である場合に、電気・電子機器内において他の黒色部品と一体感を出すことができる。
【0110】
本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面の、CIE L*a*b*表色系で規定される色度b*が-2以上であることが好ましく、好ましくは-1.5以上、-1以上である。また、色度b*は2以下であることが好ましく、好ましくは1.5以下、1以下、0.5以下、0以下である。より具体的には、色度b*が-2以上2以下であることが好ましく、中でも-2以上0以下であることが好ましく、-1.5以上0.5以下であることが好ましく、-1.5以上0以下であることが好ましく、-1以上0以下であることが好ましい。本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面から測定される色度b*が上記の範囲内にあることで、導電性積層体としての優れた着色意匠性を発現でき、電気・電子機器内において他の着色部品と併用した際に他の部品が呈する色と一体感を出すことができる。特に、少なくとも着色層が黒色である場合に、電気・電子機器内において他の黒色部品と一体感を出すことができる。
【0111】
本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面の、CIE L*a*b*表色系で規定される明度L*が20以上27以下であり、色度a*が-2以上2以下であり、色度b*が-2以上2以下であることが好ましい。中でも明度L*が21以上25以下であり、色度a*が-1以上1以下であり、色度b*が-1.5以上0.5以下であることが好ましく、明度L*が21.5以上24以下であり、色度a*が-0.5以上0.5以下であり、色度b*が-1以上0以下であることがより好ましい。
【0112】
本発明の導電性積層体の着色フィルム層側表面のCIEカラー値(L*、a*、b*)は、それぞれJIS Z 8722に従って測定することができる。具体的には、KONICA MINOLTA製 SPECTROPHOTOMETER CM-5を使用して、Cスペクトルが2°の測定基準JIS Z 8722に従って、導電性積層体の着色フィルム層側表面から測定した値とする。
【0113】
また、本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面の60°グロス値が、1以上5以下であることが好ましく、1以上4以下であることが好ましく、さらに好ましくは1以上3以下である。本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面から測定される60℃グロス値が上記範囲内にあることで、光沢感が抑えられ導電性積層体としてマット調の優れた意匠性を発現でき、電気・電子機器内において他の着色部品と併用した際に、光沢感による導電性積層体の目立ちを抑え、他の部品が呈する色と一体感を出すことができる。特に、少なくとも着色層が黒色である場合に、黒色マット調の優れた意匠性を発現でき、電気・電子機器内において他の黒色部品と一体感を出すことができる。
【0114】
60°グロス値は、導電性積層体の着色フィルム層側表面に対し、JIS Z 8741に従って60°の設定角度で測定される光沢度である。測定は、市販の測定装置(例えば、BYK社製 Cat No.4563マイクロ-TRI-グロスメーター)を用いて測定することができる。
【0115】
本発明の導電性積層体は、上述の層構成を有することで、薄型でありながら、着色フィルム層側表面においては高い絶縁性を示し、一方、導電層側表面においては高い導電性を示すことができる。
【0116】
本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面の表面抵抗率が1×108Ω/□以上であることが好ましく、1×109Ω/□以上であることが好ましく、1×1010Ω/□以上であることがさらに好ましく、1×1011Ω/□以上であることがより好ましい。本発明の導電性積層体は、着色フィルム層側表面の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、着色フィルム層側表面においてより高い絶縁性を発揮することが可能となる。なお、導電性積層体の着色フィルム層側表面の表面抵抗率は大きいほど好ましいが、一般的に1×1018Ω/□以下、1×1016Ω/□以下、1×1014Ω/□以下、1×1012Ω/□以下とすることができる。
【0117】
また、本発明の導電性積層体は、導電層側表面の表面抵抗率が10mΩ/□以下であることが好ましく、1mΩ/□以下であることがさらに好ましく、0.6mΩ/□以下であることがより好ましい。本発明の導電性積層体は、導電層側表面の表面抵抗率が上記の範囲にあることで、導電層側表面においてより高い導電性を発揮することが可能となる。なお、導電性積層体の導電層側表面の表面抵抗率は、小さいほど好ましいが、一般に、0.001mΩ/□以上とすることができる。
【0118】
導電性積層体の着色フィルム層側表面および導電層側表面の表面抵抗率は、それぞれJIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、導電性積層体の着色フィルム層側表面又は導電層側表面に4端子のプローブを当てて測定することができる。
【0119】
5.導電性積層体の製造方法
本発明の導電性積層体の製造方法は、特に限定されるものではない。中でも樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に、硬化後のガラス転移温度が所定の範囲に有することが可能な着色インキを塗工して、着色層及び樹脂フィルム層を有する着色フィルム層を形成する着色フィルム層形成工程と、上記着色フィルム層の上記樹脂フィルム層側の面に粘着剤又は接着剤を塗工して、粘着剤層又は接着剤層を形成する粘着剤層又は接着剤層形成工程と、上記粘着剤層又は接着剤層上に導電層として金属箔を貼合する導電層形成工程と、を有する製造方法は、カールや皺の発生を抑えて導電性積層体を製造することができるため生産性に優れ、また、層間剥離が生じにくい積層構成とすることができるために好ましい。
【0120】
着色フィルム層形成工程において、樹脂フィルム層に着色インキを塗工する方法は、乾燥後の着色層の厚みが所望の大きさとなれば特に限定されず、例えばグラビアコート法等を用いることができる。
【0121】
また、粘着剤層又は接着剤層形成工程において、粘着剤又は接着剤を塗工する方法は、乾燥後の粘着剤層又は接着剤層の厚みが所望の大きさとなれば特に限定されず、例えばマイクログラビアコート法、ダイコート法、リップコート法等の公知の方法を用いることができる。
【0122】
6.導電性積層体の用途
本発明の導電性積層体は、単体若しくは後述するように導電性積層体の導電層側表面に粘着剤層を設けることで、表面の耐アルコール性や絶縁性が高く求められる用途に広く適用することができる。中でも、小型化や薄型化の要請、耐アルコール性の要請が高い携帯電子機器の回路部品の保護用途、薄型のモバイル機器等の電気又は電子機器の内部及び外部の電磁波シールド用又はアース用として好適に使用することができる。
【0123】
II.導電性粘着テープ
本発明の導電性粘着テープは、上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体と、前記導電性積層体の導電層側の表面に設けられた導電性粘着剤層とを有する。
図2は本発明の導電性粘着テープの一例を示す概略断面図であり、導電性粘着テープ20は、導電性積層体10の導電層1側の表面に導電性粘着剤層11が設けられている。
【0124】
本発明の導電性粘着テープは、着色フィルム層側表面において良好な耐アルコール性及び表面絶縁性を示すことができ、さらに生産性に優れる。
【0125】
また、本発明の導電性粘着テープは、上述の機能に加えて、総厚が小さい薄型化を達成することができ、更に導電性、電磁波シールド性、層間密着性、意匠性、遮蔽性等の各特性の両立を達成することが可能である。
【0126】
1.導電性積層体
本発明における導電性積層体については、上記「I.導電性積層体」の項で説明した詳細と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0127】
2.導電性粘着剤層
本発明における導電性粘着剤層は、粘着剤成分及び導電フィラーを含有する。
【0128】
導電フィラーとしては、ニッケル粉、銅粉、銀粉、金粉、導電性カーボンブラック、金属メッキしたガラスや樹脂粉等が使用できる。そのなかでも、ニッケル粉は、導電性積層体における導電層である金属箔に対する導電性、特に銅箔やステンレス箔に対する導電性に優れるため、より好ましい。
【0129】
導電性粘着剤層中の導電フィラーの含有量としては、所望の導電性を発揮可能な量とすることができ、特に限定されるものではないが、導電性粘着剤層の全量(100質量%)中、0.1質量%~80質量%の範囲内であることが好ましく、0.5質量%~40質量%の範囲内が好ましく、0.8質量%~10質量%の範囲内が最も好ましい。導電フィラーの含有量が上記範囲内であると、薄型であっても導電性と接着性とを両立しやすいからである。
【0130】
導電性粘着剤層を構成する粘着剤成分としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤、クリ-プ特性改良型粘着剤、放射線硬化型粘着剤などの公知の粘着剤から適宜選択して用いることができる。粘着剤成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0131】
中でも粘着剤成分としては、特にアクリル系粘着剤が、接着信頼性が高いことから好適に用いることができる。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを粘着性成分又は主剤とし、これに必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの適宜な添加剤が含まれている。(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするポリマーであり、必要に応じて(メタ)アルキルエステルに対して共重合が可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより調製されている。
【0132】
アクリル系共重合体としては、炭素数1~14の(メタ)アクリレートモノマーを主たるモノマー成分とするアクリル系共重合体を好ましく使用でき、炭素数1~14の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のモノマーがあげられ、これらの1種または2種以上が用いられる。なかでも、アルキル基の炭素数が4~12の(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4~9の直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリレートが更に好ましい。なかでもn-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを好ましく使用でき、これらは各々単独で使用しても併用してもよい。
【0133】
アクリル系共重合体中の炭素数1~14の(メタ)アクリレートの含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の80質量%~98.5質量%であることが好ましく、90質量%~98.5質量%であることがより好ましい。
【0134】
また、アクリル系共重合体は、高極性ビニルモノマーを共重合することも好ましく、高極性ビニルモノマーとしては、カルボキシル基を有するビニルモノマー、水酸基を有するビニルモノマー、アミド基を有するビニルモノマー等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。なかでもカルボキシル基含有モノマーは粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすいため好ましく使用できる。
【0135】
カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等を使用でき、なかでもアクリル酸を共重合成分として使用することが好ましい。
【0136】
カルボキシル基を有するビニルモノマーを使用する場合には、その含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の0.2質量%~15質量%であることが好ましく、0.4質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~6質量%であることが更に好ましい。当該範囲で含有することにより、粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすい。
【0137】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等などの水酸基含有(メタ)アクリレートを使用できる。
【0138】
また、アミド基を有するモノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、等が挙げられる。
【0139】
その他の高極性ビニルモノマーとして、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の末端アルコキシ変性(メタ)アクリレートがあげられる。
【0140】
高極性ビニルモノマーの含有量は、その総量がアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の0.2質量%~15質量%であることが好ましく、0.4質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~6質量%であることが更に好ましい。当該範囲で含有することにより、粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすい。
【0141】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50万以上、60万以上、70万以上である。また、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200万以下であり、180万以下であり、160万以下であり、120万以下であり、100万以下である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることで、導電性粘着剤層は、導電性積層体における導電層に対し、良好な初期接着性を有することができる。より具体的には、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、50万~120万の範囲内が好ましく、50万~100万の範囲内がより好ましい。
【0142】
(メタ)アクリル系ポリマーは、溶液重合法、エマルション重合法、紫外線照射重合法等の慣用の重合方法により調製することができる。
【0143】
導電性粘着剤層は、粘着力を向上させるため、粘着付与樹脂を添加しても良い。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジンやロジンのエステル化合物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα-ピネン-フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン樹脂;メタクリル系樹脂等が挙げられる。そのなかでも薄型で粘着力を向上させるために、ロジン系樹脂を含むことが好ましく、中でも重合ロジン系樹脂を含むことがより好ましい。また、ロジン系樹脂に加えてスチレン系樹脂を混合して含んでいても良い。
【0144】
また初期接着力を上げるため、常温で液状の粘着付与樹脂を混合して使用することが好ましい。常温で液状の粘着付与樹脂としては、例えば、上述した粘着付与樹脂の液状樹脂や、プロセスオイル、ポリエステル系可塑剤、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられる。特にテルペンフェノール樹脂が好ましい。市販品としてはヤスハラケミカル社製YP-90L等がある。
【0145】
粘着付与樹脂の添加量としては、アクリル系共重合体100質量部に対し10質量部~70質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは20質量部~60質量部の範囲内である。粘着付与樹脂を上記の範囲内で添加することにより粘着力を向上させることができる。
【0146】
導電性粘着剤層のゲル分率は、特に制限されるものではないが、10~60質量%であることが薄厚であっても充分な接着性を発現しやすいため好ましく、20~50質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは25~45質量%である。
【0147】
導電性粘着剤層のゲル分率は、養生後の導電性粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
ゲル分率(質量%)=[(導電性粘着剤層のトルエン浸漬後質量)/(導電性粘着剤層のトルエン浸漬前質量)]×100
【0148】
導電性粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、1×104以上5×105Pa以下であることが好ましく、2×104以上1×105Pa以下であることがさらに好ましい。導電性粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率が上記範囲にあることで、薄膜の導電性粘着剤層であっても接着性と加工性を高度に両立しやすいからである。なお、導電性粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、上述の粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率の測定方法と同じ方法及び条件により測定される値である。
【0149】
上記導電性粘着剤層は、単層構造であってもよく、導電性基材の両面にそれぞれ導電性粘着剤層が設けられた多層構造であってもよい。導電性粘着剤層が多層構造である場合の上記導電性基材としては、金属箔基材や湿式のポリエステル系不織布基材にメッキが施された基材等が挙げられる。金属箔の材質としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫やこれらの合金が挙げられる。また、上記湿式のポリエステル系不織布基材にメッキが施された基材としては、当該メッキとして無電解金属メッキを使用したものが挙げられる。メッキする金属としては、銅、ニッケル、銀、白金、アルミニウムが挙げられるが、そのなかでも、導電性やコストの点から銅又はニッケルが好ましい。なお、上記導電性基材の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上~50μm以下とすることができる。
【0150】
導電性粘着剤層の厚みは、導電性及び粘着剤を発揮できる大きさとすることができ、2μm以上60μm以下が好ましく、そのなかでも3μm以上10μm以下が好ましい。導電性粘着剤層の厚みを上記の範囲内とすることで、本発明の導電性粘着テープの総厚を小さくしながら、導電性を更に高めることができる。
【0151】
また、導電性粘着剤層が多層構造である場合、多層構造全体の厚みが、3μm以上60μm以下であることが好ましく、そのなかでも5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0152】
本発明の導電性粘着テープにおいて、導電性粘着剤層は、導電性積層体の導電層側表面上の全域に設けられても良く、導電性積層体の導電層側表面上にパターン状に設けられてもよい。導電性粘着剤層がパターン状に設けられる場合、導電性積層体の導電層側表面上の導電性粘着剤層が配置されていない領域では、導電層の表面が露出していてもよく、上記領域に絶縁性粘着剤層が配置されており導電性粘着剤層と絶縁性粘着剤層とがそれぞれ交互にパターン状に配置されていてもよい。導電性粘着剤層と絶縁性粘着剤層とが交互にパターン状に配置された態様は、接着性を向上できるため好ましい。
【0153】
導電性積層体の導電層側表面上に、導電性粘着剤層と絶縁性粘着剤層とがそれぞれ交互にパターン状に配置されている場合、上記絶縁性粘着剤層は、導電性粘着剤層の導電フィラーを含まないこと以外は、導電性粘着剤層と同様とすることができる。
【0154】
3.任意の構成
本発明の導電性粘着テープは、上述した導電性積層体及び導電性粘着剤層を少なくとも構成に含むが、他の構成を含んでいても良い。例えば、導電性粘着剤層の上記導電性積層体とは反対側の面に、更に剥離層が設けられていても良い。剥離層を設けることで、導電性粘着テープを保護することができるからである。
【0155】
剥離層としては、公知の剥離層を適宜選択して使用すればよい。樹脂フィルムに離形処理したものが平滑性に優れ、好ましい。そのなかでも耐熱性に優れる観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0156】
剥離層は、易剥離性を付与するために、表面が剥離処理されていることが好ましい。具体的には、剥離層の表面は、剥離処理層が設けられていることが好ましい。剥離処理層としては、両面粘着テープの剥離層用に使用される汎用の剥離処理剤により形成することができる。このような剥離処理剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系剥離処理剤等が挙げられる。剥離処理層は、ラミネートやコーティングにより形成されていてもよい。
【0157】
剥離層の剥離力は、使用態様等に応じて適宜調整すればよいが、導電性粘着テープに対する剥離力が0.01N/20mm~2N/20mm、好ましくは0.05N/20mm~0.15N/20mmとすることができる。剥離層を剥離する際に、導電性粘着テープの変形を抑制しやすくなるからである。剥離力は、導電性粘着テープの導電性粘着剤層の露出面に、剥離層として50μm厚みのPETフィルムを裏打ちして、0.3m/min~10m/minの速度で180°方向に剥離して測定することができる。
【0158】
4.導電性粘着テープ
本発明の導電性粘着テープは、総厚が10μm以上50μm以下であることが好ましく、15μm以上45μm以下であることが更に好ましく、20μm以上40μm以下であることがより好ましい。導電性粘着テープの総厚を上記の範囲内とすることで、総厚が小さく薄型でありながら、良好な耐アルコール性及び表面絶縁性を発揮することができ、加えて導電性や電磁波シールド性、層間密着性、意匠性や隠蔽性等の機能も良好に発揮することができる。そして、このような導電性粘着テープを高い生産性で得ることができる。なお、本明細書内でいう導電性粘着テープの総厚みには、剥離層の厚みは含まないものとする。
【0159】
本発明の導電性粘着テープは、導電性積層体側表面から測定される、CIE L*a*b*表色系で規定される明度L*、色度a*、色度b*が、それぞれ上記「I.導電性積層体」の項で説明した、導電性積層体の着色フィルム層側表面から測定されるCIE L*a*b*表色系で規定される明度L*、色度a*、色度b*の範囲内にあることが好ましい。CIE L*a*b*表色系で規定される明度L*、色度a*及び色度b*のバランスが良好となり、本発明の導電性粘着テープが、良好な着色意匠性や隠蔽性を発揮することができるからである。このとき、着色フィルム層と導電層との間に介する粘着剤層又は接着剤層が、有色、特に黒色の粘着剤層又は接着剤層であることがより好ましい。
【0160】
また、本発明の導電性粘着テープは、導電性積層体側表面から測定される60°グロス値が、上記「I.導電性積層体」の項で説明した、導電性積層体の着色フィルム層側表面から測定される60°グロス値の範囲内にあることが好ましい。
【0161】
本発明の導電性粘着テープの導電性積層体側表面のCIEカラー値(L*、a*、b*)及び、60°グロス値は、それぞれ上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体の着色フィルム層側表面のCIEカラー値(L*、a*、b*)及び、60°グロス値の測定方法と同じ方法及び条件で測定される値である。
【0162】
本発明の導電性粘着テープは、導電性積層体側表面から測定される表面抵抗率が、上記「I.導電性積層体」の項で説明した、導電性積層体の着色フィルム層側表面から測定される表面抵抗率の範囲内にあることが好ましい。
【0163】
また、本発明の導電性粘着テープは、導電性粘着剤側表面から測定される表面抵抗率が、10mΩ/□以下であることが好ましく、1mΩ/□以下であることがさらに好ましく、0.6mΩ/□以下であることがより好ましい。なお、導電性粘着テープの導電性粘着剤側表面から測定される表面抵抗率は小さいほど好ましいが、一般に0.001mΩ/□以上とすることができる。
【0164】
なお、導電性粘着テープの導電性積層体側表面および導電性粘着剤層側表面の表面抵抗率は、それぞれJIS-K6911に準じて測定された値を指し、抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、導電性粘着テープの導電性積層体側表面又は導電性粘着剤層側表面に4端子のプローブを当てて測定することができる。
【0165】
5.導電性粘着テープの製造方法
本発明の導電性粘着テープの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記「I.導電性積層体」の項で説明した導電性積層体を準備する工程、導電性フィラーおよび粘着剤成分を含む導電性粘着剤を調製する工程、上記導電性積層体の導電層側表面上に、乾燥後厚みが所望の大きさとなるように導電性粘着剤を塗工して、導電性粘着剤層を形成する工程、を有する製造方法を用いて製造することができる。
【0166】
本発明の導電性粘着テープの用途は、上記「I.導電性積層体」の項で説明した用途と同様とすることができる。
【0167】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0168】
以下に、この発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、粘着剤の製造において、材料の配合量を示す「部」とは「質量部」を表す。
【0169】
(粘着剤Aの製造)
n-ブチルアクリレート:97.98部と、アクリル酸:2部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート:0.02部とを、アゾビスイソブチロニトリル:0.2部を重合開始剤として、酢酸エチル溶液中で、80℃で8時間溶液重合を行って、質量平均分子量:90万のアクリル系ポリマーを得た。該アクリル系ポリマー:100部に、重合ロジンエステル(商品名「D-135」荒川化学社製):5部と、不均化ロジンエステル(商品名「KE-100」荒川化学社製):20部、石油樹脂(商品名「FTR6100」:25部)を加えて、酢酸エチルを加え、固形分40%の粘着剤溶液を調製した。上記粘着剤溶液に、さらにイソシアネート系架橋剤(商品名「NC40」DIC社製):0.8部を加えて、均一になるように撹拌して混合することにより、粘着剤Aを調製した。粘着剤Aのゲル分率は20%、25℃の貯蔵弾性率は9×104Paであった。
【0170】
(粘着剤Bの製造)
n-ブチルアクリレート:97.98部と、アクリル酸:2部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート:0.02部とを、アゾビスイソブチロニトリル:0.2部を重合開始剤として、酢酸エチル溶液中で、80℃で8時間溶液重合を行って、質量平均分子量:90万のアクリル系ポリマーを得た。該アクリル系ポリマー:100部に、重合ロジンエステル(商品名「D-135」荒川化学社製):5部と、不均化ロジンエステル(商品名「KE-100」荒川化学社製):20部、石油樹脂(商品名「FTR6100」:25部)を加えて、酢酸エチルを加え、固形分40%の粘着剤溶液を調整した。次に上記粘着剤溶液に、DIC製黒色着色剤「DICTONクロAR8555」(カーボンブラック含有量:45%(固形分比)、樹脂固形分濃度49%)を10部添加し、攪拌機で均一に混合し、さらにイソシアネート系架橋剤(商品名「NC40」DIC社製):1.2部を加えて、均一になるように撹拌して混合することにより、粘着剤Bを調製した。粘着剤Bのゲル分率は20%、25℃の貯蔵弾性率は8×104Paであった。
【0171】
(導電性粘着剤Aの調製)
冷却管、撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレートを75.0質量部と、2-エチルヘキシルアクリレートを19.0質量部と、酢酸ビニルを3.9質量部と、アクリル酸を2.0質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレートを0.1質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリルを0.1質量部と、を酢酸エチル100質量部に溶解し、窒素置換した後、80℃で12時間重合することによって、重量平均分子量60万のアクリル系重合体Bを得た。
【0172】
次にアクリル系重合体Bの固形分100質量部に、重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学工業株式会社製 「ペンセルD-135」、軟化点135℃)を10質量部、及び不均化ロジングリセリンエステル(荒川化学工業株式会社製 「スーパーエステルA-100」、軟化点100℃)を10質量部配合し、酢酸エチルを用いて、アクリル系重合体の固形分濃度を40質量%に調整することによってアクリル系粘着剤溶液Bを得た。
【0173】
アクリル系粘着剤溶液B(固形分濃度40質量%)を100質量部と、ニッケル粉(福田金属箔粉工業社製 「NI255T」数珠状導電性粒子、d50:26.0μm)を0.4質量部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(DIC株式会社製 「バーノックNC40」、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤Aを調製した。
【0174】
(ポリエステルポリオール樹脂Aの製造)
攪拌機,温度計,還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つロフラスコにイソフタル酸50質量部とネオペンチルグリコール50質量部とトルエン60質量部、メチルエチルケトン40室質量部添加し、攪拌攪拌下に80℃で10時間反応させ、樹脂固形分50%、質量平均分子量40,000のポリエステルポリオール樹脂Aを得た。
【0175】
(ポリエステルポリオール樹脂Bの製造)
攪拌機,温度計,還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つロフラスコにイソフタル酸40質量部とネオペンチルグリコール60質量部とトルエン60質量部、メチルエチルケトン40室質量部添加し、攪拌下に80℃で10時間反応させ、樹脂固形分50%、質量平均分子量40,000のポリエステルポリオール樹脂Bを得た。
【0176】
(ポリエステルポリオール樹脂Cの製造)
攪拌機,温度計,還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つロフラスコにイソフタル酸63質量部とネオペンチルグリコール37質量部を添加し、攪拌下に80℃で1時間反応させ、その後トルエン60部、メチルエチルケトン40質量部添加し、攪拌下に80℃で10時間反応させ、樹脂固形分50%、質量平均分子量50,000のポリエステルポリオール樹脂Cを得た。
【0177】
(ポリエステルポリウレタン樹脂Dの製造)
攪拌機,温度計,還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つロフラスコにイソフタル酸50質量部とネオペンチルグリコール50質量部とトルエン80質量部、メチルエチルケトン40質量部添加し、攪拌攪拌下に80℃で4時間反応させ、その後イソホロンジイソシアネート40質量部とメチルエチルケトン20質量部を混合し、100℃で約1時間反応させ、樹脂固形分50%、質量平均分子量40,000のポリエステルポリウレタン樹脂Dを得た。
【0178】
(ポリエステルポリオール樹脂Eの製造)
攪拌機,温度計,還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つロフラスコにイソフタル酸67質量部とネオペンチルグリコール33質量部を添加し、攪拌下に80℃で2時間反応させ、その後トルエン60部、メチルエチルケトン40質量部添加し、攪拌下に80℃で10時間反応させ、樹脂固形分50%、質量平均分子量80,000のポリエステルポリオール樹脂Eを得た。
【0179】
(ポリエステルポリオール樹脂Fの製造)
攪拌機,温度計,還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つロフラスコにイソフタル酸25質量部とネオペンチルグリコール75質量部とトルエン60質量部、メチルエチルケトン40室質量部添加し、攪拌下に80℃で10時間反応させ、樹脂固形分50%、質量平均分子量20,000のポリエステルポリオール樹脂Fを得た。
【0180】
(黒色インキAの製造)
ポリエステルポリオール樹脂A(樹脂固形分50質量%)を100質量部、デグサ社製カーボンブラック「カーボンスペシャル250P」を40質量部、無機フィラー(富士シリシア社製 「サイロホービック704」シランカップリング処理:コールターカウンター法による平均粒子径3.5μm)を5質量部、メチルエチルケトンを23質量部、トルエンを13質量部、酢酸エチルを6質量部、N-プロピルアセテートを3質量部、イソプロピルアルコール3質量部を添加し、サンドミルで約1時間湿式分散した物に、DIC社製硬化剤「KR90」(ヘキサメチレンジジイソシアネートのビウレット体、固形分40質量%)を2部、酢酸エチルを300部添加して黒色インキAを作成した。黒色インキ固形分中のカーボンブラック含有量は42質量%であった。
【0181】
(黒色インキBの製造)
ポリエステルポリオール樹脂B(樹脂固形分50%)を100質量部、デグサ社製カーボンブラック「カーボンスペシャル250P」を40質量部、無機フィラー(富士シリシア社製 「サイロホービック704」シランカップリング処理:コールターカウンター法による平均粒子径3.5μm)を5質量部、メチルエチルケトンを23質量部、トルエンを13質量部、酢酸エチルを6質量部、N-プロピルアセテートを3質量部、イソプロピルアルコール3質量部を添加し、サンドミルで約1時間湿式分散した物に、DIC社製硬化剤「KR90」(ヘキサメチレンジジイソシアネートのビウレット体、固形分40%)を2部、酢酸エチルを300部添加して黒色インキBを作成した。黒色インキ固形分中のカーボンブラック含有量は42%であった。
【0182】
(黒色インキCの製造)
ポリエステルポリオール樹脂C(樹脂固形分50%)を100質量部、デグサ社製カーボンブラック「カーボンスペシャル250P」を40質量部、無機フィラー(富士シリシア社製 「サイロホービック704」シランカップリング処理:コールターカウンター法による平均粒子径3.5μm)を5質量部、メチルエチルケトンを23質量部、トルエンを13質量部、酢酸エチルを6質量部、N-プロピルアセテートを3質量部、イソプロピルアルコール3質量部を添加し、サンドミルで約1時間湿式分散した物に、DIC社製硬化剤「KR90」(ヘキサメチレンジジイソシアネートのビウレット体、固形分40%)を2部、酢酸エチルを300部添加して黒色インキCを作成した。黒色インキ固形分中のカーボンブラック含有量は42%であった。
【0183】
(黒色インキDの製造)
ポリエステルポリウレタン樹脂D(樹脂固形分50%)を100質量部、デグサ社製カーボンブラック「カーボンスペシャル250P」を40質量部、無機フィラー(富士シリシア社製 「サイロホービック704」シランカップリング処理:コールターカウンター法による平均粒子径3.5μm)を5質量部、メチルエチルケトンを23質量部、トルエンを13質量部、酢酸エチルを6質量部、N-プロピルアセテートを3質量部、イソプロピルアルコール3質量部を添加し、サンドミルで約1時間湿式分散した物に、DIC社製硬化剤「KR90」(ヘキサメチレンジジイソシアネートのビウレット体、固形分40%)を2部、酢酸エチルを300部添加して黒色インキDを作成した。黒色インキ固形分中のカーボンブラック含有量は42%であった。
【0184】
(黒色インキEの製造)
ポリエステルポリオール樹脂E(樹脂固形分50%)を100質量部、デグサ社製カーボンブラック「カーボンスペシャル250P」を40質量部、無機フィラー(富士シリシア社製 「サイロホービック704」シランカップリング処理:コールターカウンター法による平均粒子径3.5μm)を5質量部、メチルエチルケトンを23質量部、トルエンを13質量部、酢酸エチルを6質量部、N-プロピルアセテートを3質量部、イソプロピルアルコール3質量部を添加し、サンドミルで約1時間湿式分散した物に、DIC社製硬化剤「KR90」(ヘキサメチレンジジイソシアネートのビウレット体、固形分40%)を2部、酢酸エチルを300部添加して黒色インキFを作成した。黒色インキ固形分中のカーボンブラック含有量は42%であった。
【0185】
(黒色インキFの製造)
ポリエステルポリオール樹脂F(樹脂固形分50%)を100質量部、デグサ社製カーボンブラック「カーボンスペシャル250P」を40質量部、無機フィラー(富士シリシア社製 「サイロホービック704」シランカップリング処理:コールターカウンター法による平均粒子径3.5μm)を5質量部、メチルエチルケトンを23質量部、トルエンを13質量部、酢酸エチルを6質量部、N-プロピルアセテートを3質量部、イソプロピルアルコール3質量部を添加し、サンドミルで約1時間湿式分散した物に、DIC社製硬化剤「KR90」(ヘキサメチレンジジイソシアネートのビウレット体、固形分40%)を2部、酢酸エチルを300部添加して黒色インキGを作成した。黒色インキ固形分中のカーボンブラック含有量は42%であった。
【0186】
1.導電性積層体の製造
[実施例1-1]
東レ製ポリエステルフィルム ルミラー2F51(厚み:2μm)に黒インキAを乾燥厚み2μmとなるようグラビアコートして着色層を形成し、40℃で1日エージングして黒インキコートフィルムA(着色フィルム層A)を得た。黒インキAの硬化物である、着色フィルム層Aの着色層のガラス転移温度は51℃であった。なお、着色層のガラス転移温度はISO 3146に従い、DSCを用いて測定した値である。以下、他の実施例及び比較例における着色層のガラス転移温度の測定についても同様とする。
【0187】
次に黒インキコートフィルムAのポリエステルフィルム側の面に、粘着剤Bを乾燥後厚みが1μmとなるようグラビアコートし、70℃で2分乾燥して黒色の粘着剤層Bを形成した後、導電層として古河電気工業製電解銅箔 NC-WS6μm(厚み:6μm)を粘着剤層B側の面に貼り合わせ、さらに40℃で2日エージングして、導電性積層体Iを得た。
【0188】
[実施例1-2]
黒インキAの代わりに黒インキBを用いて着色層を形成した以外は実施例1-1と同様に黒コートフィルムB(着色フィルム層B)と、導電性積層体IIを得た。黒インキBの硬化物である、着色フィルムBの着色層のガラス転移温度は48℃であった。
【0189】
[実施例1-3]
黒インキAの代わりに黒インキCを用いて着色層を形成した以外は実施例1-1と同様に黒インキコートフィルムC(着色フィルム層C)と、導電性積層体IIIを得た。黒インキCの硬化物である、着色フィルムCの着色層のガラス転移温度は68℃であった。
【0190】
[実施例1-4]
東レ製ポリエステルフィルム ルミラー2F51(厚み:2μm)の代わりに東レ製ポリエステルフィルム ルミラーS10#12(厚み:12μm)を用いた以外は実施例1-1と同様に黒インキコートフィルムA1(着色フィルム層A1)と、導電性積層体IVを得た。黒インキAの硬化物である、着色フィルムA1の着色層のガラス転移温度は51℃であった。
【0191】
[実施例1-5]
東レ製ポリエステルフィルム ルミラー2F51(厚み:2μm)の代わりに東レデュポン製ポリイミドフィルム カプトン20EN(厚み:5μm)を用いた以外は実施例1-1と同様に黒インキコートフィルムA2(着色フィルムA2)と、導電性積層体Vを得た。黒インキAの硬化物である、着色フィルムA2の着色層のガラス転移温度は51℃であった。
【0192】
[実施例1-6]
導電層として、古河電気工業製電解銅箔 NC-WS6μm(厚み:6μm)の代わりに、古河電気工業製電解銅箔 NC-WS15μm(厚み:15μm)用いた以外は実施例1-1と同様に導電性積層体VIを得た。黒インキAの硬化物である、着色フィルムAの着色層のガラス転移温度は51℃であった。
【0193】
[実施例1-7]
導電層として、古河電気工業製電解銅箔 NC-WS6μm(厚み:6μm)の代わりに、古河電気工業製電解銅箔 NC-WS30μm(厚み:30μm)用いた以外は実施例1-1と同様に導電性積層体VIIを得た。黒インキAの硬化物である、着色フィルムAの着色層のガラス転移温度は51℃であった。
【0194】
[比較例1-1]
黒インキAの代わりに黒インキDを用いた以外は実施例1と同様にして、黒インキコートフィルムD(着色フィルムD)及び導電性積層体VIIIを得た。黒インキDの硬化物である、着色フィルムDの着色層のガラス転移温度は-20℃であった。
【0195】
[比較例1-2]
黒インキAの代わりに黒インキEを用いた以外は実施例1と同様にして、黒インキコートフィルムE(着色フィルムE)及び導電性積層体IXを得た。黒インキEの硬化物である、着色フィルムEの着色層のガラス転移温度は72℃であった。
【0196】
[比較例1-3]
黒インキAの代わりに黒インキFを用いた以外は実施例1と同様にして、黒インキコートフィルムF(着色フィルムF)と、導電性積層体Xを得た。黒インキFの硬化物である、着色フィルムFの着色層のガラス転移温度は41℃であった。
【0197】
[比較例1-4]
総厚みが10μmの粘着テープ(DIC株式会社製 「IL-10BMF」、黒色着色層(ウレタン樹脂含有、厚み:1.5μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:4.5μm)/透明粘着剤層(厚み:4μm)の積層構成(「/」は積層界面を示す)を有する。)を、導電層として福田金属箔粉工業製電解銅箔CF-T8G-DK-35(厚さ35μm)の平滑面に貼り合せることによって、導電性積層体XIを作製した。導電性積層XIにおける黒色着色層のガラス転移温度は-20℃であった。
【0198】
[比較例1-5]
厚み5μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)社製 「マイラー」)の片面に、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)社製 「コロネートL」)を使用したポリエステル樹脂(ユニチカ(株)社製 「UE3220」)を3g/m2(乾燥塗布量換算)で塗布し、塗膜上に導電層Aとして厚み7μmの軟質アルミニウム箔(日本製箔(株) 1030N-0材)を積層した。また、上記PETフィルムの他面に、同様の方法で導電層Bとして厚み7μmの軟質アルミニウム箔(1030N-0材、日本製箔(株))を積層し、ベース基材を作成した。
【0199】
続いて、このベース基材の一方の面上に絶縁黒インク(アニリンブラックをポリエステル樹脂に分散させたインク)を、乾燥厚みが3μmとなるように塗布し乾燥し、黒色着色層を形成することによって、導電性積層体XIIを得た。導電性積層体XIIの黒色着色層のガラス転移温度は75℃であった。
【0200】
2.導電性粘着テープの製造
[実施例2-1]
先ず、剥離フィルム(ニッパ社製「PET25×J0L」)に上記導電性粘着剤Aを乾燥厚みが5μmとなるようロールコーターにて塗工し、100℃で1分乾燥し、これを導電性積層体Iの銅箔面に貼り合せ、さらに40℃で2日エージングして、導電性粘着テープを得た。
【0201】
[実施例2-2]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体IIを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0202】
[実施例2-3]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体IIIを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0203】
[実施例2-4]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体IVを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0204】
[実施例2-5]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体Vを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0205】
[実施例2-6]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層VIを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0206】
[実施例2-7]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体VIIを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0207】
[比較例2-1]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体VIIIを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0208】
[比較例2-2]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体IX用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0209】
[比較例2-3]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体Xを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0210】
[比較例2-4]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体XIを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0211】
[比較例2-5]
導電性積層体Iの代わりに導電性積層体XIIを用いた以外、実施例2-1と同様に導電性粘着テープを得た。
【0212】
[評価]
下記の測定方法にて、実施例及び比較例の導電性積層体、ならびに実施例及び比較例の導電性粘着テープの性能を評価した。
【0213】
(厚み)
厚み計(NIKON社製 DIGIMICRO MFC-101)を用いて、実施例及び比較例の導電性積層体及び導電性粘着テープの厚みを測定した。
【0214】
(薄さ)
実施例及び比較例の導電性積層体の厚みについて、下記評価基準で評価した。
◎:25μm未満
〇:25μm以上、45μm未満
×:45μm以上
【0215】
(耐アルコール性)
導電性積層体の着色フィルム層側表面(比較例1-4及び比較例1-5においては、黒色着色層側表面)の同一箇所を、エタノールを染み込ませた綿棒を用いて50回擦り、着色層の色落ち及び綿棒の着色が起きた時の擦った回数を評価した。
◎:回数が50回以上である。
〇:回数が25回以上50回未満である。
×:回数が24回以下である。
【0216】
(生産性)
以下の方法により、実施例1-1~1-7、及び比較例1-1~1-4の導電性積層体の大判サイズを作成した。まず、実施例1-1~1-7、及び比較例1-1~1-3の導電性積層体における着色フィルム層の製造方法と同様の方法により、幅1040mm×長さ1000Mの大判の黒インキコートフィルム(大判の着色フィルム層)を作成した。次に、上記大判の黒インキコートフィルム(大判の着色フィルム層)の樹脂フィルム層側の面に、黒色粘着剤Bをグラビアコーターにて20m/minの速度でグラビアコートし、70℃で30秒乾燥させて、1030mm幅、長さ1000M、乾燥後厚み1μmの粘着剤層を形成した。
【0217】
続いて、大判の黒インキコートフィルムの樹脂フィルム層側の面に形成された粘着剤層に、幅1040mm×長さ1000Mの金属箔と貼り合せて、大判の導電性積層体を作成した。比較例1-4については、幅1040mm×長さ1000M、総厚みが10μmの粘着テープ(DIC株式会社製 「IL-10BMF」)を用い、大判の上記粘着テープの透明粘着剤層側の面に幅1040mm×長さ1000Mの金属箔と貼り合せて、大判の導電性積層体を作成した。
【0218】
上記の方法で大判の導電性積層体を製造する際の、生産性を以下の基準で評価した。尚、グラビアコーターのパスラインは50Mであった。また、収率は、得られた大判の導電性積層体の有効領域(幅1000mm×長さ1000m=1000m2)を分母とし、何m2の良品(シワがなく)が生産できたかで評価した。
◎:問題なく、生産でき、収率が90%以上(良品900m2以上)である。
〇:部分的にシワが混入するが、収率は80%以上90%未満である。
×:金属箔と貼り合せる際に皺が入り、収率が80%未満である。
【0219】
(密着性)
導電性積層体の着色フィルム層側表面(比較例1-4及び比較例1-5においては、黒色着色層側表面)にニチバン社製セロハンテープを貼り付け、親指の腹で5、6回擦って圧着し、圧着後1分ほど放置した後、表裏のセロハンテープの一方の端をもって180°方向に勢いよく引き剥がした(剥離速度:50m/分程度)。剥がした後の導電性積層体の状態を評価した。
〇:着色層が剥がれ落ちていない又は樹脂フィルム層ごと千切れる
×:着色層が樹脂フィルム層から剥がれる。
【0220】
(L*、a*、b*)
分光測色計(KONICA MINOLTA製 SPECTROPHOTOMETER CM-5)を使用して、Cスペクトルが2°の測定基準JIS Z 8722に従って、実施例及び比較例の導電性積層体の着色フィルム層側表面(比較例1-4及び比較例1-5においては、黒色着色層側表面)からCIEカラー値(L*、a*、b*)をそれぞれ測定した。
【0221】
(意匠性)
L*=20~25、a*=-1~1、b*=-2~0にあるかを評価した。
◎:L*、a*、b*の全てが上記範囲に入っている。
〇:L*、a*、b*の2つが上記範囲に入っている。
×:L*、a*、b*の2つ以上が上記範囲から外れている。
【0222】
(絶縁性)
抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、実施例及び比較例の導電性積層体の着色フィルム層側の表面(比較例1-4及び比較例1-5においては、黒色着色層側表面)に4端子のプローブを当て、着色フィルム層側表面の表面抵抗率を測定した。下記評価基準で評価した。
〇:9.9×107Ω/□以上の表面抵抗率(オーバーロード)
×:9.9×107Ω/□未満の表面抵抗率
【0223】
(導電性)
抵抗率計(三菱化学社製 ロレスターMCP-T600)を用いて、実施例1-1~1-7及び比較例1-1~1-5の導電性積層体の導電層側表面に4端子のプローブをあて、導電性積層体の導電層側表面の表面抵抗率を測定した。下記評価基準で評価した。
◎:0.6mΩ/□以下
〇:0.6mΩ/□を超え、10mΩ/□を以下
×:10mΩ/□を超える
【0224】
(導電性粘着テープの接着力)
実施例2-1~2-7及び比較例2-2~2-5のサンプルを25mm幅×100mm長さにカットし、SUS板に貼付し、2kgローラーで1往復加圧後、23℃50%RHで1時間放置し、180°方向に300mm/minの速度で剥がした際の接着力を測定した。
【0225】
結果を表1~4に示す。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
上記表1~4より、実施例の導電性積層体I~VIIは、耐エタノール性及び表面絶縁性が良好であり、更に大判で製造する際の生産性が良好であった。一方で、比較例の導電性積層体VIII~XIIは、耐エタノール性、表面絶縁性及び生産性のうち、少なくとも1つが不良となり、両立を達成することができなかった。
導電性積層体I~VIIは、導電性積層体XIと比較して、総厚が小さいがCIEカラー値がそれぞれ所望の範囲内にあるため黒色による意匠性及び隠蔽性が高かった。
導電性積層体I~VIIは、着色フィルム層における着色層と着色フィルム層における樹脂フィルム層と粘着剤層と金属箔とがこの順に積層される積層構成を有することで、金属箔に直接着色層が設けられた導電性積層体XIIと比較して、表面絶縁性が良好であった。
1…導電層(金属箔)、2…粘着剤層又は接着剤層、3…着色フィルム層、4…樹脂フィルム層、5…着色層、10…導電性積層体、11…導電性粘着剤層、20…導電性粘着テープ
ポリエステルポリオールを調製するための多塩基酸としては、公知の原料をいずれも使用することが出来る。多塩基酸として例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸を単独であるいは二種以上の混合物で使用することが出来る。上記のダイマー酸とはオレイン酸、リノール酸などのC18の不飽和脂肪酸ディールスアルダー型2量化反応による生成物であり、不飽和結合に水素を添加し飽和させたものなど種々のものが市販されている。代表的なものは、C18のモノカルボン酸0~5質量%、C36ダイマー酸70~98%およびC54のトリマー酸0~30質量%からなるものである。