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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028656
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】呈味と香りが向上した飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/20 20160101AFI20240226BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240226BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20240226BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240226BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20240226BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20240226BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20240226BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20240226BHJP
【FI】
A23L27/20 D
A23L27/00 D
A23L23/00
A23L17/00 A
A23J3/16 501
A23J3/00 501
A23L27/60 A
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010318
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2023532685の分割
【原出願日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2021121841
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(71)【出願人】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 万優
(57)【要約】
【課題】本発明は、口に入れた瞬間に呈味と香りが強く感じられ、かつその後も持続する飲食品を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明によれば、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上と呈味成分を含有する、呈味と香りが向上した飲食品が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上と呈味成分を含有する、呈味と香りが向上した飲食品。
【請求項2】
酢酸テルピニルの含有量が0.00000001ppm以上10ppm以下である、請求項1に記載の飲食品。
【請求項3】
アピゲニンの含有量が0.00001ppm以上10ppm以下である、請求項1に記載の飲食品。
【請求項4】
ルテオリンの含有量が0.00001ppm以上100ppm以下である、請求項1に記載の飲食品。
【請求項5】
前記呈味成分が、うま味成分、塩味成分、甘味成分、及び酸味成分から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項6】
前記呈味成分が、うま味成分であって、該うま味成分が、グルタミン酸、イノシン酸、及びコハク酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項7】
前記呈味成分が、グルタミン酸又はイノシン酸のいずれか1種又は2種のうま味成分であって、以下の(a1)及び(a2)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の飲食品。
(a1) 飲食品中のグルタミン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))が、5.0×10-12~1×10-2
(a2) 飲食品中のイノシン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))が6.0×10-11~0.2
【請求項8】
前記呈味成分が、グルタミン酸又はイノシン酸のいずれか1種又は2種のうま味成分であって、以下の(b1)及び(b2)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の飲食品。
(b1) 飲食品中のグルタミン酸の含有量に対するアピゲニンの含有量の比率(アピゲニンの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))が、5.0×10-9~1×10-2
(b2) 飲食品中のイノシン酸の含有量に対するアピゲニンの含有量の比率(アピゲニンの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))が5.0×10-10~1.0×10-3
【請求項9】
前記呈味成分が、グルタミン酸又はイノシン酸のいずれか1種又は2種のうま味成分であって、以下の(c1)及び(c2)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の飲食品。
(c1) 飲食品中のグルタミン酸の含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))が、5.0×10-9~1.0×10-1
(c2) 飲食品中のイノシン酸の含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))が5.0×10-10~1.0×10-2
【請求項10】
前記飲食品が、調味料である、請求項1~9のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項11】
前記調味料が、液状調味料である、請求項10に記載の飲食品。
【請求項12】
前記調味料が、つゆ類、たれ類、だし類、エキス類、ソース類、又はドレッシング類である、請求項10又は11に記載の飲食品。
【請求項13】
前記飲食品が、植物性蛋白質含有食品である、請求項1~9のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項14】
酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を、呈味成分を含む飲食品又はその原料に添加することを含む、飲食品の呈味と香りを向上させる方法。
【請求項15】
下記の段階(i)~(iii)を含む方法で植物素材抽出物を調製することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の呈味と香りが向上した飲食品の製造方法。
(i) 酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材を抽出溶媒に添加する段階
(ii) 植物素材から抽出溶媒にて成分抽出し、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材抽出物を得る工程
(iii) (ii)で得られた植物素材抽出物のpHを相対的に酸性側に調整する段階
【請求項16】
前記段階(ii)の後、植物素材抽出物のpHを6.5以上12.0以下に調整する段階をさらに含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
調製した植物素材抽出物のpHが1.5以上7.0未満である、請求項15又は16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味と香りが向上した飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品の呈味は、甘味、塩味、酸味、苦味、及びうま味の5つの基本味で構成されており、これらの基本味の組み合わせと強弱は、飲食品の美味しさを決定する重要な要素となっている。一方、コクは、味の複雑さ、広がり、持続性で構成されており、これらの要素の強弱は、上記の基本味、特にうま味と関連性がある。
【0003】
基本味のなかでもうま味がないと、味にメリハリがなく、物足りなく感じるため、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなどのうま味成分を飲食品に添加することが行われている。例えば、うま味成分を含む原料として、酵母エキスやたん白加水分解物が使用されている。しかしながら、いずれも原料由来の独特の風味があるため、使用量によっては異味や雑味が生じることがあり、飲食品本来の風味を変化させるという問題がある。
【0004】
一方、飲食品のうま味を増強させる別のアプローチとして、特許文献1には、メチオナールと、特定の低級脂肪酸エステルの組み合わせを含む旨味増強剤が開示されている。しかしながら、飲食品には、うま味の増強だけなく、口に含んだ瞬間の風味(呈味と香り)のインパクトが求められており、従来より、飲食品の先味における呈味を増強させる方法が検討されている。例えば、特許文献2には、γ-グルタミルペプチドとともにフマル酸及びクエン酸を飲食品に添加することによって、飲食品の先味が増強されることが記載されている。また、特許文献3には、(A)ステロール等、(B)タンパク質加水分解物、(C)カリウム塩、(D)スパイス(オールスパイス、メース、コリアンダー、セロリシード、カルダモン、シナモン、タイム及びフェンネル)を特定の割合で含む組成物が、食塩の使用量を減じても、先味のインパクトと後味の持続性を維持できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-131560号公報
【特許文献2】特開2020-74702号公報
【特許文献3】特開2017-70217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑み、口に入れた瞬間に風味(呈味と香り)のインパクトが強く感じられる飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、呈味成分とともに、酢酸テルピニル、アピゲニンまたはルテオリンのいずれか一つ以上を飲食品に一定量配合することによって、風味(呈味と香り)のインパクトが強く感じられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上と呈味成分を含有する、呈味と香りが向上した飲食品。
(2)酢酸テルピニルの含有量が0.00000001ppm以上10ppm以下である、(1)に記載の飲食品。
(3)アピゲニンの含有量が0.00001ppm以上10ppm以下である、(1)に記載の飲食品。
(4)ルテオリンの含有量が0.00001ppm以上100ppm以下である、(1)に記載の飲食品。
(5)前記呈味成分が、うま味成分、塩味成分、甘味成分、及び酸味成分から選ばれる少なくとも1種である、(1)~(4)のいずれかに記載の飲食品。
(6)前記呈味成分が、うま味成分であって、該うま味成分が、グルタミン酸、イノシン酸、及びコハク酸から選ばれる少なくとも1種である、(1)~(5)のいずれかに記載の飲食品。
(7)前記呈味成分が、グルタミン酸又はイノシン酸のいずれか1種又は2種のうま味成分であって、以下の(a1)及び(a2)を満たす、(1)~(6)のいずれか1項に記載の飲食品。
(a1) 飲食品中のグルタミン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))が、5.0×10-12~1×10-2
(a2) 飲食品中のイノシン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))が6.0×10-11~0.2
(8)前記呈味成分が、グルタミン酸又はイノシン酸のいずれか1種又は2種のうま味成分であって、以下の(b1)及び(b2)を満たす、(1)~(6)のいずれかに記載の飲食品。
(b1) 飲食品中のグルタミン酸の含有量に対するアピゲニンの含有量の比率(アピゲニンの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))が、5.0×10-9~1×10-2
(b2) 飲食品中のイノシン酸の含有量に対するアピゲニンの含有量の比率(アピゲニンの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))が5.0×10-10~1.0×10-3
(9)前記呈味成分が、グルタミン酸又はイノシン酸のいずれか1種又は2種のうま味成分であって、以下の(c1)及び(c2)を満たす、(1)~(6)のいずれかに記載の飲食品。
(c1) 飲食品中のグルタミン酸の含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))が、5.0×10-9~1.0×10-1
(c2) 飲食品中のイノシン酸の含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))が5.0×10-10~1.0×10-2
(10)前記飲食品が、調味料である、(1)~(9)のいずれかに記載の飲食品。
(11)前記調味料が、液状調味料である、(10)に記載の飲食品。
(12)前記調味料が、つゆ類、たれ類、だし類、エキス類、ソース類、又はドレッシング類である、(10)又は(11)に記載の飲食品。
(13)前記飲食品が、植物性蛋白質含有食品である、(1)~(9)のいずれかに記載の飲食品。
(14)酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を、呈味成分を含む飲食品又はその原料に添加することを含む、飲食品の呈味と香りを向上させる方法。
(15)下記の段階(i)~(iii)を含む方法で植物素材抽出物を調製することを含む、(1)~(13)のいずれかに記載の呈味と香りが向上した飲食品の製造方法。
(i) 酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材を抽出溶媒に添加する段階
(ii) 植物素材から抽出溶媒にて成分抽出し、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材抽出物を得る工程
(iii) (ii)で得られた植物素材抽出物のpHを相対的に酸性側に調整する段階
(16)前記段階(ii)の後、植物素材抽出物のpHを6.5以上12.0以下に調整する段階をさらに含む、(15)に記載の製造方法。
(17)調製した植物素材抽出物のpHが1.5以上7.0未満である、(15)又は(16)に記載の製造方法。
【0009】
本願は、2021年7月26日に出願された日本国特許出願2021-121841号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、口に入れた瞬間に呈味と香りを共に強く感じられる美味しい飲食品が提供される。本発明の飲食品は、メカニズムは不明だが温度や形態に関わらず、口にいれた瞬間の呈味と香りをシャープに感じることでインパクトが強く、素材本来の風味が良好で、雑味がなく、嗜好性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.呈味と香りが向上した飲食品
本発明の呈味と香りが向上した飲食品は、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上と呈味成分を含有する。ここで、「呈味」とは、主として舌に存在する味蕾と呼ばれる器官の味覚受容体で受容され、互いに明確にできる味をいい、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5基本味が含まれる。「香り」とは、飲食品を口に含んだ時や咀嚼した時に鼻によって検知される香気をいう。また、「風味」とは、呈味と香りによって構成される複合的な感覚をいい、全体的な美味しさにつながる。
【0012】
本発明における「呈味」は、上記の5基本味のうち、主として、うま味、塩味、及び甘味をいうが、好ましくはうま味(umami)である。また、本発明における「呈味」には、飲食品を口に含んだ瞬間(例えば、2秒以内)に感じられる呈味と、飲食品を口に入れた後、飲み込むまでの間や咀嚼している間に口内に広がり、かつ持続する呈味(呈味の広がり)の両方が包含される。本発明における「香り」は、飲食品を口に含んだ瞬間(例えば、2秒以内)に感じられる呈味と連関する香りをいう。
【0013】
(酢酸テルピニル)
本発明の飲食品に用いられる酢酸テルピニル(体系名:4-メチル-1-(1-メチルエチル)-3-シクロヘキセン-1-オールアセタート、英文表記:Terpinyl acetate)は、分子式C1220(分子量:196.29)を有し、CAS登録番号は80-26-2である。
【0014】
(アピゲニン)
本発明の飲食品に用いられるアピゲニン(体系名:5,7-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン、英文表記:Apigenine)は、分子式C1510(分子量:270.24)を有し、CAS登録番号は520-36-5である。
【0015】
(ルテオリン)
本発明の飲食品に用いられるルテオリン(体系名:2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)- 5,7-ジヒドロキシ-4-クロメノン、英文表記:Luteolin)は、分子式C1510(分子量:286.24)を有し、CAS登録番号は491-70-3である。
【0016】
本発明における酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンは、経口摂取できるものであれば制限はなく、合成品であっても、酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンを含む植物素材由来のものであってもよいが、飲食品の風味等への影響の観点から、合成品又は植物素材加工品を用いることが好ましく、合成品又は植物素材抽出物を用いることがより好ましい。ここで、酢酸テルピニルを含む植物素材としては、例えば、セロリ、ローリエ、パセリ、カルダモン、月桂樹などが挙げられ、アピゲニン、ルテオリンを含む植物素材としては、例えば、セロリ、パセリなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。植物素材加工品とは、酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンを含む植物素材の乾燥、粉砕、抽出、精製等の処理品をいう。例えば、加工品の好ましい態様である抽出物は、上記の酢酸テルピニルを含有する植物素材を溶媒に添加し、静置した後、ろ過を行うことによって調製できる。あるいは、上記の酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンを含有する植物素材を添加した溶媒を特定の温度に加熱した後静置する、又は、攪拌しながら一定温度で保持することによっても調製できる。ここで、抽出に用いる溶媒としては、中性の溶媒として、水、エタノール、又は水-エタノールの混合溶媒が挙げられるが、水が好ましい。
【0017】
また、抽出に用いる溶媒のpHを所定の範囲とすることで、酢酸テルピニル、アピゲニン、ルテオリンが抽出しやすくなるため好ましい。具体的には、酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンの少なくとも1種を含有する植物素材を抽出溶媒に添加するとともに、抽出溶媒のpHを室温で6.5以上11.0以下に調整して成分抽出してもよい。抽出溶媒のpHは6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、9.0以上であってもよく、その上限は特に制限されないが、通常11.0以下、10.5以下、10.0以下であってもよい。
【0018】
また、本発明において、酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンの少なくとも1種を含有する植物素材を抽出溶媒に添加した後に抽出溶媒のpHを調整してもよく、予めpHが所定範囲に調整された抽出溶媒に、酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンの少なくとも1種を含有する植物素材を添加してもよい。
【0019】
pHの調整に際しては、抽出溶媒にpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、グルコン酸カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)を溶解させることでpHを調整することができるが、特に炭酸塩である炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0020】
さらに、エタノール以外のアルコール類や超臨界状態の二酸化炭素を用いても抽出可能である。
【0021】
溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えば上記酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンを含む植物素材(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリンの抽出物は、そのまま本発明の飲食品に用いることができるが、必要に応じて濃縮処理、熱風乾燥、蒸気乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理、分離精製処理、脱色処理等に供して、濃縮物や乾燥物等にしたものを用いてもよい。
【0022】
本発明の飲食品における、酢酸テルピニルの含有量(ppm)は、飲食品の種類にもよるが、0.00000001ppm以上、好ましくは0.000001ppm以上、より好ましくは0.0001ppm以上であり、かつ、10ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.01ppm以下である。酢酸テルピニルの含有量(ppm)が0.00000001ppmよりも少ないと、風味のインパクト及び呈味の広がりなく、全体の美味しさがない。酢酸テルピニルの含有量(ppm)が10ppmよりも多いと、風味のインパクト及び呈味の広がりなく、全体の美味しさがない。本発明において、「風味のインパクト」とは、口に入れた瞬間に呈味と香りの向上が強く感じられることを表す。
【0023】
なお、本発明の飲食品に含まれる酢酸テルピニルは、飲食品の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の飲食品の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の飲食品の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来による酢酸テルピニルが合計された結果として、前記の所定の含有量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の飲食品の製造時に外部から酢酸テルピニルを添加する場合、精製抽出された高純度の酢酸テルピニル試薬を添加してもよく、酢酸テルピニルを含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該飲食品に含有される酢酸テルピニルの過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、食用植物由来であることがより好ましい。
【0024】
本発明の飲食品における、アピゲニンの含有量(ppm)は、飲食品の種類にもよるが、0.00001ppm以上、好ましくは0.0001ppm以上、より好ましくは0.001ppm以上であり、かつ、10ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下である。アピゲニンの含有量(ppm)が0.00001ppmよりも少ないと、風味のインパクト及び呈味の広がりなく、全体の美味しさがない。アピゲニンの含有量(ppm)が10ppmよりも多いと、風味のインパクト及び呈味の広がりなく、全体の美味しさがない。
【0025】
本発明の飲食品に含まれるアピゲニンは、飲食品の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の飲食品の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の飲食品の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来によるアピゲニンが合計された結果として、前記の所定の含有量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の飲食品の製造時に外部からアピゲニンを添加する場合、精製抽出された高純度のアピゲニン試薬を添加してもよく、アピゲニンを含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該飲食品に含有されるアピゲニンの過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、食用植物由来であることがより好ましい。
【0026】
本発明の飲食品における、ルテオリンの含有量(ppm)は、飲食品の種類にもよるが、0.00001ppm以上、好ましくは0.0001ppm以上、より好ましくは0.001ppm以上であり、かつ、100ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下である。ルテオリンの含有量(ppm)が0.00001ppmよりも少ないと、風味のインパクト及び呈味の広がりなく、全体の美味しさがない。ルテオリンの含有量(ppm)が100ppmよりも多いと、風味のインパクト及び呈味の広がりなく、全体の美味しさがない。
【0027】
なお、本発明の飲食品に含まれるルテオリンは、飲食品の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の飲食品の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の飲食品の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来によるルテオリンが合計された結果として、前記の所定の含有量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の飲食品の製造時に外部からルテオリンを添加する場合、精製抽出された高純度のルテオリン試薬を添加してもよく、ルテオリンを含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該飲食品に含有されるルテオリンの過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、食用植物由来であることがより好ましい。
【0028】
本発明の飲食品が酢酸テルピニル及びアピゲニンを含有する場合、酢酸テルピニルの含有量に対するアピゲニンの含有量の比率(アピゲニンの含有量(ppm)/酢酸テルピニルの含有量(ppm)は、例えば0.01~100,000、0.1~100,000、0.1~10,000、1~10,000、1~5,000、又は1~1,000である。
【0029】
本発明の飲食品が酢酸テルピニル及びルテオリンを含有する場合、酢酸テルピニルの含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/酢酸テルピニルの含有量(ppm)は、例えば0.0001~100,000、0.001~100,000、0.001~10,000、0.01~10,000、0.01~5,000、又は0.01~1,000である。
【0030】
本発明の飲食品がアピゲニン及びルテオリンを含有する場合、アピゲニンの含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/アピゲニンの含有量(ppm)は、例えば0.0001~100、0.001~100、0.001~10、0.005~10、0.005~5、0.01~1である。
【0031】
また本発明の飲食品が酢酸テルピニル、アピゲニン及びルテオリンを含有する場合、酢酸テルピニルの含有量に対するアピゲニンとルテオリンの合計含有量の比率(アピゲニン+ルテオリンの含有量(ppm)/酢酸テルピニルの含有量(ppm)は、例えば0.01~100,000、0.1~100,000、0.1~10,000、1~10,000、1~5,000、1~2,000である。
【0032】
(呈味成分)
本発明の飲食品に用いられる「呈味成分」には、アミノ酸や核酸などのうま味成分、糖類などの甘味成分、有機酸などの酸味成分、及び食塩その他の塩類などの塩味成分が包含されるが、うま味成分が好ましい。うま味成分としては、アミノ酸系、核酸系、又は有機酸系のいずれのうまみ成分でよい。例えば、アミノ酸系うま味成分としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、オキシグルタミン酸、リジン、ヒスチジン、タウリン、ベタイン、グリシン、クレアチン、アラニン、アルギニン等又はそれらの塩が挙げられ、核酸系うま味成分としては、イノシン酸、グアニル酸、又はそれらの塩が挙げられ、有機酸系うま味成分としては、コハク酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸又はそれらの塩が挙げられる。また、うま味成分は、上記の各成分を含む食材又はその加工品を使用してもよい。例えば、うま味成分を含む食品又はその加工品としては、野菜類(例えば、ニンジン、タマネギ、セロリ、ハクサイ、キャベツ等)の粉末及びそれらのエキス、海藻類(例えば、コンブ、ワカメ等)の粉末及びそれらのエキス、キノコ類(例えば、シイタケ、シメジ等)の粉末及びそれらのエキス、魚介類(例えば、カツオ、サバ、アジ、イワシ、エビ、ホタテ、カキ等)の粉末及びそれらのエキス、畜肉(例えば、牛肉、豚肉、鶏肉等)の粉末及びそれらのエキス等が挙げられる。
【0033】
本発明の飲食品における、グルタミン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))は、風味のインパクト及び呈味の広がりの十分な効果の観点等から、通常5.0×10-12~1×10-2であり、好ましくは5.0×10-10~6.0×10-3、より好ましくは5.0×10-9~6.0×10-4である。
【0034】
本発明の飲食品中のグルタミン酸の含有量は、本発明の効果を発揮できる限りにおいて、特に制限されないが、500ppm以上、好ましくは750ppm以上、より好ましくは1000ppm以上であり、上限は通常20000ppm以下、好ましくは15000ppm以下、より好ましくは12000m以下、さらに好ましくは5000ppm以下、又は4000ppm以下、又は3000ppm以下である。
【0035】
本発明の飲食品における、イノシン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))は、風味のインパクト及び呈味の広がりの十分な効果の観点等から、通常6.0×10-11~0.2であり、好ましくは6.0×10-9~0.1であり、より好ましくは6.0×10-8~0.01である。
【0036】
本発明の飲食品中のイノシン酸の含有量は、本発明の効果を発揮できる限りにおいて、特に制限されないが、10ppm以上、好ましくは15ppm以上、より好ましくは100ppm以上であり、上限は通常2000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1200ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、又は400ppm以下、又は300ppm以下である。
【0037】
本発明の飲食品における、グルタミン酸の含有量に対するアピゲニンの含有量の比率(アピゲニンの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))は、風味のインパクト及び呈味の広がりの十分な効果の観点等から、通常5.0×10-9~1.0×10-2であり、好ましくは4.0×10-8~1.0×10-3である。
【0038】
本発明の飲食品における、イノシン酸の含有量に対するアピゲニンの含有量の比率(アピゲニンの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))は、風味のインパクト及び呈味の広がりの十分な効果の観点等から、通常5.0×10-10~1.0×10-3であり、好ましくは5.0×10-8~1.0×10-4である。
【0039】
本発明の飲食品における、グルタミン酸の含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))は、風味のインパクト及び呈味の広がりの十分な効果の観点等から、通常5.0×10-9~1.0×10-1であり、好ましくは5.0×10-7~1.0×10-2である。
【0040】
本発明の飲食品における、イノシン酸の含有量に対するルテオリンの含有量の比率(ルテオリンの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))は、風味のインパクト及び呈味の広がりの十分な効果の観点等から、通常5.0×10-10~1.0×10-2であり、好ましくは5.0×10-8~1.0×10-3である。
【0041】
本発明の飲食品中の酢酸テルピニル、アピゲニン、ルテオリン、グルタミン酸、イノシン酸の各成分の濃度は、その成分の配合量が明らかである場合(例えば、飲食品が精製された各成分を混合することにより得られたものである場合等)はその配合量及び飲食品の容量から算出することができ、その成分の配合量が不明である場合は、後述の参考例に記載の方法に従って又は準じて算出することができる。なお、本明細書中の「ppm」は、質量濃度(w/w)を意味する。
【0042】
(飲食品)
本発明において「飲食品」とは、そのまま喫食に供される飲食品、及び喫食に供される飲食品を調製するための組成物(すなわち、そのまま喫食に供される飲食品の調製に使用するための組成物)の両方を意味する。
【0043】
「そのまま喫食に供される飲食品」には、何らの成分も添加されずに喫食される飲食品のほか、喫食者が喫食時に必要に応じて調味料を適宜添加して喫食される飲食品も包含される。
【0044】
「そのまま喫食に供される飲食品」としては、呈味と香りの向上が求められる飲食品であれば、特に限定はされないが、例えば飲料、菓子類、米飯類、麺類、惣菜、汁物(スープ)、パン類、ピザ、シリアル類、弁当、植物性蛋白質含有食品等が挙げられる。
【0045】
飲料としては、例えば果汁含有飲料[例えば柑橘類(みかん、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、柚子、カボス、スダチ、ベルガモット、ピンクグレープフルーツ、八朔、カラマンシー等)、熱帯果実(パイナップル、バナナ、グアバ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ等)、ライチ、イチゴ、リンゴ、モモ、ブドウ、白ブドウ、カシス、ラズベリー、ザクロ、ウメ、梨、杏、スモモ、キウイフルーツ、メロン、ブルーベリー、アサイー等のフルーツジュース、レモネード等のエード、美容系飲料、スムージー等];乳製品含有飲料(例えば乳等の乳及びその加工品である脱脂粉乳や全脂粉乳、濃縮乳、ヨーグルト、生クリーム、練乳、バター、脱脂乳、クリームパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等の乳成分を含む飲料);野菜飲料(例えばトマト、ニンジン、かぼちゃ等のジュース、スムージー、青汁等);清涼飲料水(例えばスポーツドリンク、ニアウォーター、果実風味ドリンク)、炭酸飲料;ゼリー飲料;穀物飲料(例えば米、豆乳、アーモンド等を主原料とする穀物飲料);茶系飲料[例えば紅茶、ウーロン茶、緑茶、黒茶、抹茶、ジャスミン茶、ローズヒップ茶、カモミール茶、ほうじ茶、ブレンド茶(はと麦、大麦、玄米、大豆、とうもろこし等の穀物、柿の葉、びわの葉、クマ笹、アマチャヅル、アシタバ、ドクダミ等の葉、昆布、ベニバナ、しいたけ、レイシ等をブレンドした茶)];コーヒー飲料;粉末飲料(例えばココア、青汁等);酒(例えばビール、発泡酒等のビールテイスト飲料、果実酒、日本酒等の醸造酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ等の蒸留酒、蒸留酒に糖類等の副原料を混合するリキュール等の混成酒、さらにこれら酒類に果汁やフレーバー、炭酸ガス等を加えたカクテル、フィズ、チューハイ等)等が挙げられる。
【0046】
菓子類としては、例えば、ゼリー、プディング、チョコレート、バー(スナックバー)、冷菓(アイスクリーム、シャーベット等)等が挙げられ、これらの中でも、ゼリー、冷菓(アイスクリーム、シャーベット等)が好ましい。
【0047】
米飯類としては、例えば、白飯、塩飯、赤飯、おこわ、炊き込み御飯、混ぜ込みご飯、おにぎり、寿司飯、餅、団子等が挙げられる。なお、「米」は、粳米、もち米や、精米度の異なる無洗米や、玄米等が挙げられる。また、これらの米飯類と他の食材との調理品でもよく、例えば寿司、ちらし寿司、カレーライス、丼物、チャーハン、天津飯等が挙げられる。
【0048】
麺類とは、小麦粉、米粉、そば粉、マメ等の穀類の粉を主原料とし、麺状や板状やリボン状等に成形、加工したものを、茹でたり、煮たり、蒸煮したりすることで調理される食品をいう。麺類としては、例えば、そば、うどん、きしめん、ラーメン、中華麺、パスタ、マカロニ、素麺、フォー、韓国冷麺、春雨等が挙げられる。
【0049】
惣菜とは、肉類、魚介類、卵、乳、野菜、果物、ハーブ、海藻等の具材を適当な方法で調理して得られた食品をいう。惣菜としては、例えば、漬物、煮物、焼き物、揚げ物、炒め物、蒸し物、和え物等が挙げられる。
【0050】
汁物(スープ)とは、肉類、魚介類、卵、乳、野菜、果物、ハーブ、海藻等の具材を適当な方法で調理して得られる、水を多く含む食品をいう。汁物(スープ)としては、例えば、味噌汁、お吸い物、ポタージュ、コンソメスープ、カレースープ、ワカメスープ、卵スープ等が挙げられる。
【0051】
パン類とは、小麦粉又はこれに穀粉類を加えたものを主原料とし、これにイーストを加えたもの又はこれらに水、食塩、ぶどう等の果実、野菜、卵及びその加工品、砂糖類、食用油脂、乳及び乳製品等を加えたものを練り合わせ、発酵させたもの(以下「パン生地」という。)を焼いた、水分が10%以上の食品である。
【0052】
ピザとは、小麦粉、水、塩、イースト、砂糖、少量のオリーブ油をこねた後に発酵させて作った生地を丸く薄くのばし、その上に具を乗せ、オーブンや専用の窯などで焼いた食品である。
【0053】
植物性蛋白質含有食品とは、植物性蛋白質を豊富に含む原料から作られる飲食品を指し、特に豆類加工品が好適である。原料となる豆類としては、例えば大豆、エンドウ、緑豆、ヒヨコ豆、落花生、ルピナス、キマメ、ナタ豆、ツル豆、インゲン豆、小豆、ササゲ、レンズ豆、ソラ豆、イナゴ豆などの全粒物やその粉砕物が挙げられ、これらから油脂や澱粉を工業的に抽出した粕を用いることもできる。飲食品がこれらの植物性蛋白質含有食品である場合、本発明の具体的な植物性蛋白質含有食品として、大豆ミート又は納豆等が挙げられる。植物性蛋白質含有食品に含まれる蛋白質含有量は特に制限されないが、3質量%以上50質量%以下であってもよい。より具体的にはその下限は3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上あってもよく、その上限は50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下であってもよい。
【0054】
また、「喫食に供される飲食品を調製する組成物」としては、特に限定はされないが、例えば、調味料、レトルト食品、飲料を調製するための組成物、スープを調製するための組成物、トッピング材等が挙げられる。これらの中でも、調味料、レトルト食品が好ましく、調味料がより好ましい。
【0055】
調味料としては、例えば、つゆ類(めんつゆ、鍋つゆ等)、たれ類(ゴマだれ等のゴマ含有調味料、焼肉だれ等)、だし類(例えば野菜類のだし、魚介類のだし、肉類のだし)、エキス類(例えば野菜類のエキス、魚介類のエキス、肉類のエキス)、ソース類(パスタソース、ピザソース、ウスターソース、ケチャップソース、オイスターソース、サルサソース、サンバルソース、チリソース、デミグラスソース、ホワイトソース(ベシャメルソース)等)、ドレッシング類(ノンオイルドレッシング、分離ドレッシング、乳化ドレッシング等)、食酢、調味酢(例えば汎用性調味酢、酢の物用調味酢、すし飯用調味酢、酢漬け(例えばピクルス等)用調味液、甘酢等)、米飯用調味料、しょうゆ(日本農林規格(平成16年9月13日農林水産省告示第1703号)に記載されているつけ醤油、かけ醤油及び調理用の用途で利用される醤油、あるいは、上記用途に使用される醤油に類似の調味料を含む)、ぽん酢調味料(ぽん酢、ぽん酢醤油)、納豆用調味料、漬物用調味料、肉用調味料、スパイス含有調味料、チャツネ、マスタード、マヨネーズ等が挙げられる。これらの調味料のなかでも、つゆ類、たれ類、だし類、エキス類、ドレッシング類、ソース類、醤油、ぽん酢調味料が好ましい。
【0056】
レトルト食品とは、レトルトパウチ又は缶内に調理済み又は半調理済みの食品が詰められ、レトルト加熱(最も一般的には120℃、30~60分の加圧加熱)される食品をいう。ここで、調理済み又は半調理済みの食品としては、例えば、上記した食品そのもの、又は簡単な調理(例えば、食材を加えて加熱調理するなど)により上記した食品を得ることができるもの等が挙げられる。
【0057】
飲料を調製するための組成物としては、例えば飲料の濃縮タイプが挙げられる。これは、水又は適当な飲料(例えば、上記で例示された飲料)で希釈してから、飲用に供される。推奨される希釈倍率は、例えば1.1~50倍、好ましくは2~20倍、より好ましくは3~12倍、さらに好ましくは4~8倍である。
【0058】
スープを調製するための組成物とは、野菜類、肉類、魚介類、乳製品、米飯類、又は麺類と共に加熱したり、上記食材を調理後合わせてスープ等の食品に調製したりするスープの素が挙げられる。スープの素は、そのまま使用することができる形態(ストレートタイプ)のもの、又は、冷水、温水、だしその他の液状物と混合(希釈)して使用する濃縮タイプ、あるいは、粉末タイプが挙げられる。
【0059】
トッピング材としては、例えば、米飯食品用トッピング材、麺用トッピング材、パン食用トッピング材、サラダ用トッピング材が挙げられる。具体的には、米飯食品用トッピング材としては、ふりかけ、おむすびの素、お粥の素、お茶漬けの素、雑炊の素、混ぜご飯の素、又は炊き込みご飯の素が挙げられる。
【0060】
本発明の対象となる飲食品としては、上記のような一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、ならびに科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。ここで、飲食品に付される特定の保健の効果や栄養成分の機能等の表示は、製品の容器、包装、説明書、添付文書などの表示物、製品のチラシやパンフレット、新聞や雑誌等の製品の広告などにすることができる。
【0061】
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。特に、上記の健康食品等の場合の形状としては、例えば、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)、タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状等が好ましい。
【0062】
本発明の飲食品は、飲食品の種類に応じて、他の原料や添加剤を含有することができる。他の原料や添加剤としては、油脂類、酒類、甘味料、酸味料、香辛料又は香辛料抽出物、粘度調整剤、色素類、安定剤、酸化防止剤、pH調節剤等が挙げられる。これら他の原料や添加剤の組み合わせ及び含有量は、特に限定はされず、飲食品の種類に応じて適宜設定することができる。
【0063】
2.飲食品の呈味と香りの向上方法
本発明によればまた、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を、呈味成分を含む飲食品又はその原料に添加することを特徴とする、飲食品の呈味と香りの向上方法が提供される。
【0064】
酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を、呈味成分を含む飲食品又はその原料に添加するタイミングは、特に限定されない。該タイミングとしては、例えば飲食品の製造時、飲食品の製造後、喫食前等が挙げられる。
【0065】
3.呈味と香りが向上した飲食品の製造方法
本発明によればまた、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を、呈味成分を含む飲食品又はその原料に添加することを特徴とする、呈味と香りが向上した飲食品の製造方法が提供される。
【0066】
本発明の飲食品の製造方法の好ましい一実施態様は、下記の段階(i)~(iii)を含む方法で植物素材抽出物を調製することを含む。
(i) 酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材を抽出溶媒に添加する段階
(ii) 植物素材から抽出溶媒にて成分抽出し、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材抽出物を得る工程
(iii) (ii)で得られた植物素材抽出物のpHを相対的に酸性側に調整する段階
【0067】
本発明の飲食品の製造方法の好ましい別の一実施態様は、前記段階(ii)の後、植物素材抽出物のpHを6.5以上12.0以下に調整する段階をさらに含む。
【0068】
段階(i)では、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材を抽出溶媒に添加する。植物素材及び抽出溶媒の種類は前記のとおりである。
【0069】
段階(ii)では、植物素材から抽出溶媒にて成分抽出し、酢酸テルピニル、アピゲニン、及びルテオリンから選ばれる1種又は2種以上を含有する植物素材抽出物を得る。このとき、抽出溶媒のpHを室温において中性からアルカリ性、例えば、6.5以上11.0以下に調整することが好ましい。より具体的には、抽出溶媒のpHは6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、9.0以上、その上限は特に制限されないが、通常11.0以下、10.5以下、10.0以下とすればよい。
【0070】
また、前記段階(ii)の後、植物素材抽出物のpHを6.5以上12.0以下に調整する段階を含む場合には、植物素材抽出物のpHを室温において中性からアルカリ性、例えば、6.5以上12.0以下に調整することが好ましい。より具体的には、植物素材抽出物のpHは6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、9.0以上、その上限は特に制限されないが、通常12.0以下、11.5以下、11.0以下とすればよい。
【0071】
植物素材抽出物のpHの調整の他、外部から酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリン試薬等の少なくとも1種を添加する場合等には、これらの成分を含む溶液に対してpHの調整を行っても良い。pHの調整は、植物素材抽出物や上記溶液にpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、グルコン酸カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)を溶解させることによって行うことができる。上記pH調整剤のなかでも、特に炭酸塩である炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0072】
段階(iii)では、上記抽出により得られた植物素材抽出物のpHを相対的に酸性側に調整する。本段階の技術的意義は、段階(ii)の抽出段階後に得られた植物素材抽出物(単に「段階(ii)抽出物」と称する場合がある)の室温でのpHを、抽出開始段階よりも相対的に酸性側に調整することで、本発明の飲食品の成分(酢酸テルピニル、アピゲニン、又はルテオリン)を固定化することにある。具体的には、段階(ii)抽出物(すなわち段階(ii)の抽出段階後に得られた抽出物)のpHと、段階(i)で用いた抽出溶媒のpHとの低下差分が0.1以上10.0以下となるようにpHを調整することが好ましい。より具体的には、その下限は0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上0.7以上、0.8以上、0.9以上1.0以上であればよく、その上限は10.0以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、4.0以下3.0以下であればよい。
【0073】
また、抽出に用いる溶媒を任意で加熱しても良い。加熱条件は特に限定されないが、加熱温度は例えば50℃以上105℃以下の範囲とすることができ、処理時間は例えば30秒以上30分間未満の範囲とすることができる。より具体的に、加熱温度の下限は、例えば50℃以上、又は55℃以上、又は60℃以上、又は65℃以上、又は70℃以上、又は75℃以上、又は80℃以上、又は85℃以上、又は90℃以上、又は95℃以上、その上限は通常105℃以下、又は100℃以下とすることができ、加熱時間の下限は、例えば30秒以上、又は1分間以上、又は2分間以上、その上限は例えば30分間未満、25分間未満、20分間未満、15分間未満、又は10分間未満、又は5分間未満とすることができる。一般的に加熱温度と加熱時間とは略相互依存の関係にもあり、加熱温度を高くするほど加熱時間は概ね短くて済む一方で、加熱時間を長くするほど加熱温度は概ね低くて済む傾向がある。よって、斯かる加熱温度及び加熱時間の関係を考慮し、それぞれ適切な範囲となるように設定すればよい。具体的には70℃以上105℃以下の範囲で25分間未満の加熱抽出を行ってもよく、80℃以上105℃以下の範囲で20分間未満の加熱抽出を行ってもよく、85℃以上105℃以下の範囲で15分間未満の加熱抽出を行ってもよい。また、植物素材から目的とする成分を効率よく抽出しその他の植物素材由来の成分が可能な限り混入させないために、本工程においては静置、或いは攪拌することが望ましく、ホモジナイゼーション等破砕を行わないことが望ましい。
【0074】
また、段階(iii)において相対的に酸性側に調整された後の抽出物のpHが所定の範囲に調整されていても良い。具体的には、段階(iii)において相対的に酸性側に調整された後の抽出物(植物素材抽出物)のpHが室温において1.5以上7.0未満となるように調整することが好ましい。より具体的には、その下限は1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上であればよく、その上限は特に制限されないが、通常7.0未満、6.5未満、6.0未満、5.5未満、5.0未満、4.6未満、4.0未満であればよい。
【実施例0075】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
(参考例)
下記の試験例において、評価サンプル中の酢酸テルピニル、アピゲニン、ルテオリンの含有量、グルタミン酸の含有量、イノシン酸の含有量の測定は、以下の通り行った。
(1)酢酸テルピニルの定量方法
まず、サンプルを、以下の条件下で固相マイクロ抽出法(SPME)に供することにより、サンプル中の酢酸テルピニルを分離濃縮した。
【0077】
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:StableFlex 50/30μm、DVB/Carboxen/PDMS(SUPELCO社製)
・揮発性成分抽出装置:PAL3 RSI120(CTC Analytics社製)
・予備加熱:40℃15分間
・揮発性成分抽出:80℃、20分間
・吸着:10分間
・脱着時間:10分間
【0078】
次に、固相マイクロ抽出法により分離濃縮されたサンプル中の酢酸テルピニルについて、ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従ってガスクロマトグラフ分析を行った。
【0079】
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7890B GC System(Agilent Technologies社製)
・GCカラム:DB-WAX(Agilent Technologies社製)、長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm
・キャリア:Heガス、ガス流量1.0mL/分間
・温度条件:40℃で3分間保持→250℃まで10℃/分ずつ昇温→250℃で10分間保持
【0080】
<質量分析条件>
・測定機器:Agilent 7000C GC/MS Triple Quad(Agilent Technologies社製)
・イオン化方式:EI(イオン化電圧70eV)
【0081】
酢酸テルピニルの確認イオン(m/z=121)に基づいて酢酸テルピニルのピークを特定し、ピーク面積を求めた。得られた酢酸テルピニルのピーク面積から、各サンプルに含まれる酢酸テルピニルの濃度を算出した。
【0082】
(2)アピゲニン、ルテオリン定量方法
以下の手順で定量用のサンプルを調製した。
標品:
濃度既知のルテオリン、アピゲニン試薬を希釈し、成分濃度0.00025ppm、0.0005ppm、0.005ppm、0.05ppm、0.5ppmの標品としてLCMSに供試した。
【0083】
分析サンプル:
測定対象試料(例えばパセリ2%抽出物)を4倍容量のメタノールで希釈し、ろ過後LCMSに供試した。
【0084】
<LCMS条件>
使用機器:
・LC:SHIMADZU / Nexera XS
・MS:Bruker / impact II
・解析ソフト:Bruker / Compass Data Analysis
・カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm 2.1x50mm Column
【0085】
LC分析条件:
カラム温度:40℃
流速 0.4mL/min
注入量 10μLアプライ
移動相A:0.1%ギ酸 水
移動相B:0.1%ギ酸 アセトニトリル
グラジエント(移動相Aと移動相Bの割合)
0-1min 95%A:5%B
1.5min 90%A:10%B
4.5min 70%A:30%B
5.5min 60%A:40%B
7min 50%A:50%B
9.5min 30%A:70%B
9.5-12.5min 100%B
【0086】
MS条件:イオン源温度:200°C
イオン化方式:ESI(イオン化電圧5.0eV)
MSスキャン:m/z 50~1,500
【0087】
各試料について、ポジティブモードでH+付加イオンについて分析し、定量イオン(ルテオリン定量イオンm/z 287.0484±0.020、アピゲニン定量イオン m/z 271.0537±0.020)に基づいて各試料中の成分ピークを特定し、ピーク面積を求めた。得られた各成分のピーク面積から、溶媒での希釈率を考慮して、各試料に含まれる各成分の濃度を算出した。
【0088】
(3)グルタミン酸の含有量の定量方法
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル」のアミノ酸分析法を用い、以下の条件に従って、グルタミン酸の含有量を測定した。
・測定機器:アミノ酸自動分析計(日本電子製、機種JLC-500/V2)
・カラム:生体分析パックドカラム、内径4.6mm、長さ60mm,ステンレス製
・移動相:生体液分析法用緩衝液 PFセット KANTO(関東化学社製)
・反応液:日立用ニンヒドリン発色溶液キット(富士フィルム和光純薬社製)
・波長:570nm
【0089】
(4)イノシン酸の含有量の定量方法
サンプルは、超純水で希釈し、以下の条件に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、イノシン酸のピーク面積を分析した。また、超純水で希釈した5mg/100mLのイノシン酸を、標準サンプルとして同様に分析し、外部標準法により各サンプルのイノシン酸の含有量を算出した。
【0090】
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件>
・測定機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製)
・移動相:リン酸二水素カリウム 6.8g/L(pH3.5)、1mL/min
・カラム:YMC-Pack Polyamine II(ワイエムシィ社製)
・カラム温度:35℃
・検出:UV260nm
【0091】
(試験例1)酢酸テルピニルの含有量の検討(つゆによる評価)
(1)試験品の調製
酢酸テルピニル(井上香料社製、Specification:100%)を1質量%になるよう水に溶解した。この溶液を更に水にて希釈し、表1の試験品1~7に記載の濃度の酢酸テルピニル溶液を調製した。
【0092】
また、乾燥セロリ(リーフ社製)を70℃の熱湯に対し2質量%となるように加え、65℃で15分間静置した後、ろ紙(No.2)にてろ過し、室温まで放置冷却して抽出液を得た(酢酸テルピニル含有量5.58×10-3ppm)。この溶液を更に水にて希釈し、表1の試験品8、9に記載の濃度の酢酸テルピニル溶液を調製した。
【0093】
表1に示す配合量(質量%)に従い、鰹節だし、濃口醤油、砂糖、本みりん、食塩、酢酸テルピニル溶液、水を混合し、試験品1~9のつゆを調製した。また、鰹節だし、濃口醤油、砂糖、本みりん、食塩の配合量は同じで、酢酸テルピニル溶液を添加せず、水66.5質量%としたつゆをコントロールとした。
【0094】
調製した各試験品における酢酸テルピニルの含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0095】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品をそのまま用いる常温サンプル、及び(1)で調製した各試験品をレトルト用パウチに充填、シールした後70℃5分加温した加温サンプルそれぞれについて、下記分析型官能評価専門パネラー4名により、官能評価を行った。
【0096】
(分析型官能評価専門パネラー)
分析型官能評価専門パネラーは、味や香りに関する判定能力が、下記の識別試験(I)及び識別試験(II)により担保された専門パネラーである。
識別試験(I):味質識別試験
五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、うま味:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
識別試験(II):濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
【0097】
(評価方法)
官能評価は、(i)サンプルの提示、(ii)官能評価項目のすり合わせ、(iii)試し評価・キャリブレーション、(iv)本評価の順に行った。
(i)サンプルの提示
官能評価におけるパネラーのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプル提供を次の通りに設定した。100mL用ペットボトルに充填密閉したサンプルを常温(25℃)にし、評価毎に上記容器から20mLプラスチックカップに計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)程度移し、各パネラーに提示した。その際、サンプルの試験区番号や内容物の情報はパネラーに知らせず、各試験区のサンプルをランダムに提示した。
【0098】
(ii)官能評価項目のすり合わせ
評価を実施するにあたり、パネラー全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネラーが共通認識を持つようにした。総合評価についても、官能評価の結果をもとに基準化できるように、パネラー全体で事前に協議した上で設定した。
【0099】
(iii)試し評価・キャリブレーション
いくつかの酢酸テルピニルの異なるサンプルを用いて、各評価項目について評価基準の訓練を行った。訓練に際しては、パネラー自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。
【0100】
(iv)本評価
上記の訓練により各パネラーの評価基準の妥当性を担保した後、試験品及びコントロールを用いて官能評価を行った。具体的には、サンプルを100mLペットボトルに充填密閉し、上記容器から20mLプラスチックカップに評価毎に計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)分程度液を口に含んだ瞬間、及びその後飲み込むまでの呈味、及び口腔内から鼻腔へと抜ける際の香気を評価した。また、サンプルを口に含んだ後は、蒸留水を口に含み、口内における風味を十分に消した後、次のサンプルの評価を行った。
【0101】
(評価基準)
官能評価は、上記の分析型官能評価専門パネラー4名にて、下記の評価基準により行った。評価項目は、つゆの「風味のインパクト」、「呈味の広がり」、「総合評価(全体の美味しさ)」とした。コントロールの評価を3点とし、各評価項目について下記の5段階で評価した。評価点の算出は、4名の評価を加重平均した。5点評価の3.5点以上を合格とし、4点以上良好な効果があるものとし、4.5点以上をより良好な効果があるものとし、5点が最も良好な効果があるものとした。また、各評価項目の評価点で1項目でも評価点が3点未満となったものは不合格とした。
【0102】
<風味のインパクト>
5点:コントロールと比べ、つゆのだし感と醤油の香りを口に入れた瞬間に強く感じられた。
4点:コントロールと比べ、つゆのだし感と醤油の香りを口に入れた瞬間にやや強く感じられた。
3点:コントロールと比べ、つゆのだし感と醤油の香りを口に入れた瞬間に、同程度に感じられた。
2点:コントロールと比べ、つゆのだし感と醤油の香りを口に入れた瞬間に、やや弱く感じられた。
1点:コントロールと比べ、つゆのだし感と醤油の香りを口に入れた瞬間に、弱く感じられた。
【0103】
<呈味の広がり>
5点:コントロールと比べ、つゆ本来のうま味が口全体に広がった。
4点:コントロールと比べ、つゆ本来のうま味が口に広がった。
3点:コントロールと比べ、つゆ本来のうま味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、つゆ本来のうま味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、つゆ本来のうま味が弱かった。
【0104】
<総合評価(全体の美味しさ)>
5点:コントロールと比べ、全体的につゆの風味がかなり向上した。
4点:コントロールと比べ、全体的につゆの風味が向上した。
3点:コントロールと比べ、全体的につゆの風味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、全体的につゆの風味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、全体的につゆの風味が弱かった。
【0105】
各試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)の各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、及び官能評価結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示されるように、常温及び加温のいずれの試験品についても、酢酸テルピニルの含有量が0.00000001~10ppmの範囲において、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさに優れていた(試験品2~9)。一方、酢酸テルピニルの含有量が100ppmでは、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさが低下した(試験品1)。
【0108】
(試験例2)酢酸テルピニル含有量の検討(ドレッシングによる評価)
(1)試験品の調製
酢酸テルピニル(井上香料社製、Specification:100%)を1質量%になるよう水に溶解した。この溶液を更に水にて希釈し、表2の試験品10~15に記載の濃度の酢酸テルピニル溶液を調製した。
【0109】
ノンオイルドレッシング(Mizkan社製、コクとうまみのノンオイルたっぷり野菜)99質量%に上記酢酸テルピニル溶液1質量%をそれぞれ混合し、試験品10~15のドレッシングを調製した。また、酢酸テルピニル溶液を添加せず、ドレッシング99質量%に水1質量%を混合したものをコントロールとした。
【0110】
調製した各試験品における酢酸テルピニルの含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0111】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、ドレッシングの「風味のインパクト」、「呈味の広がり」、「雑味」、「総合評価(全体の美味しさ)」の各項目の官能評価を、下記の評価基準で行う以外は、試験例1と同様の方法にて行った。
【0112】
<風味のインパクト>
5点:コントロールと比べ、ドレッシングの野菜由来のうま味とフレッシュな香りが、口に入れた瞬間に強く引き立った。
4点:コントロールと比べ、ドレッシングの野菜由来のうま味とフレッシュな香りが、口に入れた瞬間にやや強く引き立った。
3点:コントロールと比べ、ドレッシングの野菜由来のうま味とフレッシュな香りが、口に入れた瞬間に同程度に引き立った。
2点:コントロールと比べ、ドレッシングの野菜由来のうま味とフレッシュな香りが、口に入れた瞬間にやや弱まった。
1点:コントロールと比べ、ドレッシングの野菜由来のうま味とフレッシュな香りが、口に入れた瞬間に弱まった。
【0113】
<呈味の広がり>
5点:コントロールと比べ、ドレッシング本来のうま味が口全体に広がった。
4点:コントロールと比べ、ドレッシング本来のうま味が口に広がった。
3点:コントロールと比べ、ドレッシング本来のうま味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、ドレッシング本来のうま味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、ドレッシング本来のうま味が弱かった。
【0114】
<雑味>
5点:コントロールと比べ、雑味が弱まった。
4点:コントロールと比べ、雑味がやや弱まった。
3点:コントロールと比べ、雑味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、雑味がやや強まった。
1点:コントロールと比べ、雑味が強まった。
【0115】
<総合評価(全体の美味しさ)>
5点:コントロールと比べ、全体的にドレッシングの風味がかなり向上した。
4点:コントロールと比べ、全体的にドレッシングの風味が向上した。
3点:コントロールと比べ、全体的にドレッシングの風味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、全体的にドレッシングの風味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、全体的にドレッシングの風味が弱かった。
【0116】
各試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)の各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、及び官能評価結果を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表2に示されるように、ドレッシングについては、酢酸テルピニルの含有量が0.00000001~1ppmの範囲内で、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさに優れ、野菜由来の雑味も感じられなかった(試験品11~15)。コントロールがコクと、呈味成分が相対的に多く、特にうま味が全体的に強いが、風味にシャープさが増し、フレッシュ感も得られた。酢酸テルピニルの含有量が100ppmの場合(試験品10)、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさがやや低下したが、試験例1のつゆによる評価(試験品1)ほど顕著でなく、許容範囲であった。
【0119】
(試験例3)グルタミン酸含有量の影響(つゆによる評価)
(1)試験品の調製
酢酸テルピニル(井上香料社製、Specification:100%)を1質量%になるよう水に溶解した。この溶液を更に水にて希釈し、1ppm酢酸テルピニル溶液を調製した。
【0120】
表3に示す配合量(質量%)に従い、鰹節だし、濃口醤油、砂糖、本みりん、食塩、グルタミン酸ナトリウム、酢酸テルピニル溶液、水を混合し、試験品16~20のつゆを調製した。また、試験品16~20の各つゆに酢酸テルピニル溶液を添加しないつゆをコントロールとした。
【0121】
調製した各試験品における酢酸テルピニルの含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0122】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例1と同様の方法にて行った。
【0123】
各試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)の各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、及び官能評価結果を表3に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
表3に示されるように、飲食品中のグルタミン酸の含有量を変えても、グルタミン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/グルタミン酸の含有量(ppm))が本発明の範囲内であると、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさの向上効果がいずれの試験品でも等しく認められた(試験品16~20)。
【0126】
(試験例4)イノシン酸含有量の検討(つゆによる評価)
(1)試験品の調製
酢酸テルピニル(井上香料社製、Specification:100%)を1質量%になるよう水に溶解した。この溶液を更に水にて希釈し、1ppm酢酸テルピニル溶液を調製した。
【0127】
表4に示す配合量(質量%)に従い、鰹節だし、濃口醤油、砂糖、本みりん、食塩、イノシン酸ナトリウム、酢酸テルピニル溶液、水を混合し、試験品21~26のつゆを調製した。また、試験品21~26の各つゆに酢酸テルピニル溶液を添加しないつゆをコントロールとした。
【0128】
調製した各試験品における酢酸テルピニルの含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0129】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例1と同様の方法にて行った。
【0130】
各試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)の各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、及び官能評価結果を表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
表4に示されるように、飲食品中のイノシン酸の含有量を変えても、イノシン酸の含有量に対する酢酸テルピニルの含有量の比率(酢酸テルピニルの含有量(ppm)/イノシン酸の含有量(ppm))が本発明の範囲内であると、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさの向上効果がいずれの試験品でも等しく認められた(試験品21~26)。
【0133】
(試験例5-1)トマトソースによる評価
(1)試験品の調製
酢酸テルピニル(井上香料社製、Specification:100%)を1質量%になるよう水に溶解した。この溶液を更に水にて希釈し、1ppmの酢酸テルピニル溶液を調製した。
【0134】
熱したフライパンに小さじ2のオリーブオイルを入れ、みじん切りにしたにんにく半かけらを炒めた。完熟あらごしトマト(デルモンテ社製)190g、コンソメ顆粒(味の素社製)大さじ1強を加え、3分間煮込んだ。室温で放冷し、トマトソースを得た。このトマトソース99質量%に上記テルピニル溶液を1質量%混合し、試験品27のトマトソースを調製した。また、酢酸テルピニル溶液を添加しないトマトソースをコントロールとした。
【0135】
調製した試験品における酢酸テルピニルの含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0136】
(2)官能評価試験
(1)で調製した試験品について、トマトソースの「風味のインパクト」、「呈味の広がり」、「総合評価(全体の美味しさ)」の各項目の官能評価を、下記の評価基準で行う以外は、試験例1と同様の方法にて行った。
【0137】
<風味のインパクト>
5点:コントロールと比べ、トマト由来のうま味とフルーティな香りを、口に入れた瞬間に強く感じられた。
4点:コントロールと比べ、トマト由来のうま味とフルーティな香りを口に入れた瞬間にやや強く感じられた。
3点:コントロールと比べ、トマト由来のうま味とフルーティな香りを口に入れた瞬間に、同程度に感じられた。
2点:コントロールと比べ、トマト由来のうま味とフルーティな香りを口に入れた瞬間に、やや弱く感じられた。
1点:コントロールと比べ、トマト由来のうま味とフルーティな香りを口に入れた瞬間に、弱く感じられた。
【0138】
<呈味の広がり>
5点:コントロールと比べ、トマトソース本来のうま味が口全体に広がった。
4点:コントロールと比べ、トマトソース本来のうま味が口に広がった。
3点:コントロールと比べ、トマトソース本来のうま味が同程度であった。
2点:コントロールと比べトマトソース本来のうま味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、トマトソース本来のうま味が弱かった。
【0139】
<総合評価(全体の美味しさ)>
5点:コントロールと比べ、全体的にトマトソースの風味がかなり向上した。
4点:コントロールと比べ、全体的にトマトソースの風味が向上した。
3点:コントロールと比べ、全体的にトマトソースの風味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、全体的にトマトソースの風味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、全体的にトマトソースの風味が弱かった。
【0140】
試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)の各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、及び官能評価結果を表5-1に示す。
【0141】
【表5-1】
【0142】
(試験例5-2)寄せ鍋用つゆによる評価
(1)試験品の調製
酢酸テルピニル(井上香料社製、Specification:100%)を1質量%になるよう水に溶解した。この溶液を更に水にて希釈し、1ppmの酢酸テルピニル溶液を調製した。
【0143】
魚介類だし(かつお節、昆布、ほたて)4質量%、濃口醤油5質量%、砂糖1質量%、食塩1質量%、酢酸テルピニル溶液1質量%、水88質量%を混合し、試験品28の寄せ鍋用つゆを調製した。また、酢酸テルピニル溶液を添加せず、水89質量%とした寄せ鍋用つゆをコントロールとした。
【0144】
調製した試験品における酢酸テルピニルの含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0145】
(2)官能評価試験
(1)で調製した試験品について、寄せ鍋用つゆの「風味のインパクト」、「呈味の広がり」、「総合評価(全体の美味しさ)」の各項目の官能評価を、下記の評価基準で行う
以外は、試験例1と同様の方法にて行った。
【0146】
<風味のインパクト>
5点:コントロールと比べ、醤油感と醤油の香りを、口に入れた瞬間に強く感じられた。
4点:コントロールと比べ、醤油感と醤油の香りを口に入れた瞬間にやや強く感じられた。
3点:コントロールと比べ、醤油感と醤油の香りを口に入れた瞬間に、同程度に感じられた。
2点:コントロールと比べ、醤油感と醤油の香りを口に入れた瞬間に、やや弱く感じられた。
1点:コントロールと比べ、醤油感と醤油の香りを口に入れた瞬間に、弱く感じられた。
【0147】
<呈味の広がり>
5点:コントロールと比べ、寄せ鍋つゆ本来のうま味が口全体に広がった。
4点:コントロールと比べ、寄せ鍋つゆ本来のうま味が口に広がった。
3点:コントロールと比べ、寄せ鍋つゆ本来のうま味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、寄せ鍋つゆ本来のうま味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、寄せ鍋つゆ本来のうま味が弱かった。
【0148】
<総合評価(全体の美味しさ)>
5点:コントロールと比べ、全体的に寄せ鍋つゆの風味がかなり向上した。
4点:コントロールと比べ、全体的に寄せ鍋つゆの風味が向上した。
3点:コントロールと比べ、全体的に寄せ鍋つゆの風味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、全体的に寄せ鍋つゆの風味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、全体的に寄せ鍋つゆの風味が弱かった。
【0149】
試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)の各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、及び官能評価結果を表5-2に示す。
【0150】
【表5-2】
【0151】
表5-1、表5-2に示されるように、飲食品の好ましい態様である液状調味料(トマトソース、寄せ鍋つゆ)において、呈味成分に対して酢酸テルピニルを所定量添加することによって、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさの向上効果が認められた(試験品27、28)。トマトソースは、トマト由来の旨味と香りが高まることで、酸味とのバランスが得られ、まとまりのある風味となった。寄せ鍋用つゆは、醤油風味をシャープに感じることで、フレッシュで雑味が少ない良好な醤油の風味が得られた。
【0152】
(試験例6-1)パスタによる評価
(1)試験品の調製
試験例5-1で調製したトマトソース(試験品27)、及びそのコントロールを60℃に加温した。乾燥パスタ100重量部を茹でた後、当該パスタに上記試験品27のトマトソースを150重量部かけ混ぜ合わせたトマト風味スパゲティを試験品29とした。また、試験品27に対するコントロールを使用して同様に調製したトマト風味スパゲティをコントロールとした。
【0153】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例5-1と同様の方法にて行った。
【0154】
(試験例6-2)レタスサラダによる評価
(1)試験品の調製
レタス2枚分を3cm角程度に手でちぎり、ミニトマトを半分にカットし混合後、試験例2で調製したノンオイルドレッシング(試験品12)小さじ1/2重量部をかけたレタスサラダを試験品30とした。また、試験品12に対するコントロールを使用して同様に調製したレタスサラダをコントロールとした。
【0155】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例2と同様の方法にて行った。
【0156】
(試験例6-3、6-4)(うどん、そうめんによる評価)
(1)試験品の調製
試験例1で調製したつゆ(試験品4)、及びコントロールをそれぞれ90℃に加熱した。市販のうどん1玉(180g)を茹でた後、上記試験品4のつゆを50重量部かけて混ぜ合わせたかけうどんを試験品31とした。また、試験品4に対するコントロールを使用して同様に調製したかけうどんをコントロールとした。
【0157】
また、試験例1で調製したつゆ(試験品4)、及びコントロールをそれぞれ冷蔵庫で10℃に冷却した。市販のそうめんを茹で、冷水にさらした後、上記の冷却した試験品4のつゆを25mLかけた冷やしそうめんを試験品32とした。また、試験品4に対するコントロールを使用して同様に調製したそうめんをコントロールとした。
【0158】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例1と同様の方法にて行った。
【0159】
(試験例6-5)寄せ鍋による評価
(1)試験品の調製
試験例5-2で調製した寄せ鍋用つゆ(試験品28)、及びコントロールをそれぞれ95℃に加熱した。3cm角にカットした鶏もも肉100g、白菜1/8個、長ネギ1本、しいたけ2つ、水菜2束、豆腐150gを、上記試験品28の寄せ鍋用つゆに加え、蓋をして具材に火が通るまで煮込んだ寄せ鍋を試験品33とした。また、試験品28に対するコントロールを使用して同様に調製した寄せ鍋をコントロールとした。
【0160】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例5-2と同様の方法にて行った。
【0161】
試験例6-1~6-5の官能評価結果を表6に示す。
【0162】
【表6】
【0163】
表6に示されるように、そのまま喫食に供される各種飲食品(パスタ、サラダ、うどん、そうめん、寄せ鍋)においても、呈味成分に対して酢酸テルピニルを所定量添加することによって、風味のインパクト、呈味の広がり、全体の美味しさの向上効果が認められた(試験品29~33)。パスタ、サラダは、料理全体にフレッシュ感が得られた。うどん、そうめん、及び寄せ鍋用つゆは、使用温度に関わらず、醤油の雑味が少なく、フレッシュな醤油風味となった。
【0164】
(試験例7-1)大豆ミートによる評価
(1)試験品の調製
乾燥パセリ(エスビー社製)を65℃の熱湯に対し2質量%となるように加え、65℃で15分間静置した後、ろ紙(No.2)にてろ過し、室温まで放置冷却して抽出液を得た。さらに得られた抽出液を20%炭酸ナトリウムでpH10に調整したアルカリ性の抽出液を得た(酢酸テルピニル含有量46ppb)。市販品の大豆ミート33gを沸騰水で5分間茹でたのち、100gまで水気を絞り上げた。
【0165】
市販品の大豆ミート33gを沸騰水で5分間茹でたのち、100gまで水気を絞り上げた。下記表7-1に示す配合量(質量%)に従い、茹でた大豆ミート、醤油、砂糖、酒、酢酸テルピニル溶液又はパセリ抽出液を混合し、試験品34、35、36の味付け大豆ミートを調製した。また、酢酸テルピニル溶液又はパセリ抽出液を添加せず、水1質量%を添加した大豆ミートをコントロールとした。
【0166】
調製した各試験品における酢酸テルピニル、アピゲニン、ルテオリンの各含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0167】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、大豆ミートの「風味のインパクト」、「呈味の広がり」、「総合評価(全体の美味しさ)」の各項目の官能評価を、下記の評価基準で行う以外は、試験例1と同様の方法にて行った。
【0168】
<風味のインパクト>
5点:コントロールと比べ、大豆ミートの肉っぽさと醤油の香りを口に入れた瞬間に強く感じられた。
4点:コントロールと比べ、大豆ミートの肉っぽさと醤油の香りを口に入れた瞬間にやや強く感じられた。
3点:コントロールと比べ、大豆ミートの肉っぽさと醤油の香りを口に入れた瞬間に、同程度に感じられた。
2点:コントロールと比べ、大豆ミートの肉っぽさと醤油の香りを口に入れた瞬間に、やや弱く感じられた。
1点:コントロールと比べ、大豆ミートの肉っぽさと醤油の香りを口に入れた瞬間に、弱く感じられた。
【0169】
<呈味の広がり>
5点:コントロールと比べ、大豆ミートのうま味が口全体に広がった。
4点:コントロールと比べ、大豆ミートのうま味が口に広がった。
3点:コントロールと比べ、大豆ミートのうま味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、大豆ミートのうま味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、大豆ミートのうま味が弱かった。
【0170】
<総合評価(全体の美味しさ)>
5点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがかなり向上した。
4点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがやや向上した。
3点:コントロールと比べ、全体的に美味しさが同程度であった。
2点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがかなり弱かった。
【0171】
各試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)、アピゲニン、ルテオリンの各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、及び官能評価結果を表7-1に示す。
【0172】
【表7-1】
【0173】
(試験例7-2)冷凍ねぎとろによる評価
(1)試験品の調製
パセリ抽出液は試験例7-1と同じものを使用した。下記表7-2に示す配合量(質量%)に従い、解凍した冷凍ねぎとろ、醤油、パセリ抽出液を混合し、試験品37の味付けねぎとろを調整後、空気に触れないようにして一晩置いた。また、パセリ抽出液を添加せず、水を等量添加した味付けねぎとろをコントロールとした。
【0174】
調製した各試験品における酢酸テルピニル、アピゲニン、ルテオリンの各含有量、グルタミン酸の含有量、及びイノシン酸の含有量を参考例に従って測定した。
【0175】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、味付けねぎとろの「風味のインパクト」、「呈味の広がり」、「総合評価(全体の美味しさ)」の各項目の官能評価を、下記の評価基準で行う以外は、試験例1と同様の方法にて行った。
【0176】
<風味のインパクト>
5点:コントロールと比べ、ねぎとろの魚らしいうま味、醤油の香りを口に入れた瞬間に強く感じられた。
4点:コントロールと比べ、ねぎとろの魚らしいうま味、醤油の香りの香りを口に入れた瞬間にやや強く感じられた。
3点:コントロールと比べ、ねぎとろの魚らしいうま味、醤油の香りの香りを口に入れた瞬間に、同程度に感じられた。
2点:コントロールと比べ、ねぎとろの魚らしいうま味、醤油の香りの香りを口に入れた瞬間に、やや弱く感じられた。
1点:コントロールと比べ、ねぎとろの魚らしいうま味、醤油の香りの香りを口に入れた瞬間に、弱く感じられた。
【0177】
<呈味の広がり>
5点:コントロールと比べ、ねぎとろのうま味が口全体に広がった。
4点:コントロールと比べ、ねぎとろのうま味が口に広がった。
3点:コントロールと比べ、ねぎとろのうま味が同程度であった。
2点:コントロールと比べ、ねぎとろのうま味がやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、ねぎとろのうま味が弱かった。
【0178】
<総合評価(全体の美味しさ)>
5点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがかなり向上した。
4点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがやや向上した。
3点:コントロールと比べ、全体的に美味しさが同程度であった。
2点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがやや弱かった。
1点:コントロールと比べ、全体的に美味しさがかなり弱かった。
【0179】
各試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)、アピゲニン(D)、ルテオリン(E)の各含有量(ppm)、(A)/(B)、(A)/(C)、(D)/(A)、(E)/(A)、(E)/(D)、及び官能評価結果を表7-2に示す。
【0180】
【表7-2】
【0181】
(試験例8)酢酸テルピニル、アピゲニン、ルテオリン含有量の検討(つゆによる評価)
(1)試験品の調製
アピゲニン(Xi’an Natural Field Bio-Technique Co., Ltd、Specification:98%)を1質量%になるよう水に溶解した。この溶液を更に水にて希釈し、表8-1に記載の濃度のアピゲニン溶液を調製した。同様にルテオリン(Xi’an Natural Field Bio-Technique Co., Ltd、Specification:98%)、酢酸テルピニル(井上香料社製、Specification:100%)を1質量%になるよう水に溶解し、更に水にて希釈することで表8-2、表8-3に記載の濃度の各溶液を調製した。
【0182】
表8-1~8-3に示す配合量(質量%)に従い、鰹節だし、濃口醤油、砂糖、本みりん、食塩、アピゲニン溶液、ルテオリン溶液、酢酸テルピニル溶液、水を混合し、試験品38~53のつゆを調製した。また、鰹節だし、濃口醤油、砂糖、本みりん、食塩の配合量は同じで、アピゲニン溶液、ルテオリン溶液、酢酸テルピニル溶液を添加せず、水66.5質量%としたつゆをコントロールとした。
【0183】
(2)官能評価試験
(1)で調製した試験品について、寄せ鍋用つゆの「風味のインパクト」、「呈味の広がり」、「総合評価(全体の美味しさ)」の各項目の官能評価を、試験例5-2と同様の評価基準にて行った。
【0184】
各試験品(評価サンプル)の酢酸テルピニル(A)、グルタミン酸(B)、イノシン酸(C)、アピゲニン(D)、ルテオリン(E)の各含有量(ppm)、(D)/(A)、(E)/(A)、(E)/(D)、及び官能評価結果を表8-1~8-3に示す。
【0185】
【表8-1】
【0186】
【表8-2】
【0187】
【表8-3】
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、調味料などの飲食品の製造分野において利用できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。