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特開2024-29326テクスチャ生成装置、テクスチャ生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029326
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】テクスチャ生成装置、テクスチャ生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240228BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240228BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131524
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】栗田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】金本 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】今岡 恭司
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC03
5B146EA15
(57)【要約】
【課題】所望の触感を有するテクスチャを効率よく生成することができるテクスチャ生成装置、テクスチャ生成方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】テクスチャ生成装置1は、所望の触感を表す目標触感データを取得する目標触感取得部101と、触感データを入力とし、入力された触感データを実現する、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャの特徴量を出力する特徴量推定モデルEMfに基づいて、目標触感データから、目標特徴量を推定する特徴量推定部102と、目標特徴量に基づいてテクスチャを合成するテクスチャ合成部103と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の触感を表す目標触感データを取得する目標触感取得部と、
触感データを入力とし、入力された触感データを実現する、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャの特徴量を出力する特徴量推定モデルに基づいて、前記目標触感データから目標特徴量を推定する特徴量推定部と、
前記目標特徴量に基づいて前記テクスチャを合成するテクスチャ合成部と、を備える、
ことを特徴とするテクスチャ生成装置。
【請求項2】
前記触感データは、複数の形容詞、名詞又は動詞で表現される、
ことを特徴とする請求項1に記載のテクスチャ生成装置。
【請求項3】
前記特徴量推定モデルは、前記テクスチャの特徴量を入力として、前記テクスチャの触感を推定するように学習された特徴量推定モデルの逆解析モデルである、
ことを特徴とする請求項1に記載のテクスチャ生成装置。
【請求項4】
触感に影響を与える複数の触感評価条件で行われた触感調査の結果に基づいて作成された、複数の前記特徴量推定モデルを備え、
特徴量推定部は、設定された触感評価条件に対応する前記特徴量推定モデルに基づいて、目標特徴量を推定する、
ことを特徴とする請求項3に記載のテクスチャ生成装置。
【請求項5】
生成される前記テクスチャについて重視される粗さ感のスケールに基づいて作成された、複数の前記特徴量推定モデルを備え、
特徴量推定部は、設定された粗さ感のスケールに対応する前記特徴量推定モデルに基づいて、目標特徴量を推定する、
ことを特徴とする請求項3に記載のテクスチャ生成装置。
【請求項6】
前記テクスチャを入力とし、入力された前記テクスチャの前記触感データを推定するテクスチャ触感推定モデルを備え、
前記目標触感取得部は、
入力された前記テクスチャ及び前記テクスチャ触感推定モデルに基づいて、前記目標触感データを取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載のテクスチャ生成装置。
【請求項7】
所望の触感を表す目標触感データを取得し、
触感データを入力とし、入力された触感データを実現する、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャの特徴量を出力する特徴量推定モデルに基づいて、前記目標触感データから目標特徴量を推定し、
前記目標特徴量に基づいて前記テクスチャを合成する、
ことを特徴とするテクスチャ生成方法。
【請求項8】
コンピュータを、
所望の触感を表す目標触感データを取得する目標触感取得部、
触感データを入力とし、入力された触感データを実現する、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャの特徴量を出力する特徴量推定モデルに基づいて、前記目標触感データから目標特徴量を推定する特徴量推定部、
前記目標特徴量に基づいて前記テクスチャを合成するテクスチャ合成部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テクスチャ生成装置、テクスチャ生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
机、椅子等の家具、スマートフォン、ノートパソコン、自動車の内装等ユーザが直接手で触れる商品では、その触感が使用の満足度等、商品価値に影響を与える。したがって、これらの商品の開発においては、触感の評価が重要とされている。物体の触感は、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャによって変化するので、望ましい触感が得られるようにシボ加工等によるテクスチャの設計が行われる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-323940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テクスチャによって得られる触感を予測することは難しく、一般的に商品開発におけるテクスチャの設計は、試作と検証を繰り返すことによって試行錯誤的に行われている。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、所望の触感を有するテクスチャを効率よく生成することができるテクスチャ生成装置、テクスチャ生成方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係るテクスチャ生成装置は、
所望の触感を表す目標触感データを取得する目標触感取得部と、
触感データを入力とし、入力された触感データを実現する、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャの特徴量を出力する特徴量推定モデルに基づいて、前記目標触感データから目標特徴量を推定する特徴量推定部と、
前記目標特徴量に基づいて前記テクスチャを合成するテクスチャ合成部と、を備える。
【0007】
また、前記触感データは、複数の形容詞、名詞又は動詞で表現される、
こととしてもよい。
【0008】
また、前記特徴量推定モデルは、前記テクスチャの特徴量を入力として、前記テクスチャの触感を推定するように学習された特徴量推定モデルの逆解析モデルである、
こととしてもよい。
【0009】
また、テクスチャ生成装置は、触感に影響を与える複数の触感評価条件で行われた触感調査の結果に基づいて作成された、複数の前記特徴量推定モデルを備え、
特徴量推定部は、設定された触感評価条件に対応する前記特徴量推定モデルに基づいて、目標特徴量を推定する、
こととしてもよい。
【0010】
また、テクスチャ生成装置は、生成される前記テクスチャについて重視される粗さ感のスケールに基づいて作成された、複数の前記特徴量推定モデルを備え、
特徴量推定部は、設定された粗さ感のスケールに対応する前記特徴量推定モデルに基づいて、目標特徴量を推定する、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記テクスチャを入力とし、入力された前記テクスチャの前記触感データを推定するテクスチャ触感推定モデルを備え、
前記目標触感取得部は、
入力された前記テクスチャ及び前記テクスチャ触感推定モデルに基づいて、前記目標触感データを取得する、
こととしてもよい。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係るテクスチャ生成方法では、
所望の触感を表す目標触感データを取得し、
触感データを入力とし、入力された触感データを実現する、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャの特徴量を出力する特徴量推定モデルに基づいて、前記目標触感データから目標特徴量を推定し、
前記目標特徴量に基づいて前記テクスチャを合成する。
【0013】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
所望の触感を表す目標触感データを取得する目標触感取得部、
触感データを入力とし、入力された触感データを実現する、物体表面の3次元形状として表現されるテクスチャの特徴量を出力する特徴量推定モデルに基づいて、前記目標触感データから目標特徴量を推定する特徴量推定部、
前記目標特徴量に基づいて前記テクスチャを合成するテクスチャ合成部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のテクスチャ生成装置、テクスチャ生成方法及びプログラムによれば、所望の触感を実現する特徴量を推定し、推定された特徴量に基づいてテクスチャを生成するので、所望の触感を有するテクスチャを効率よく生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係るテクスチャ生成装置の機能ブロック図である。
図2】特徴量推定モデルの作成の流れを示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る触感データの評価尺度を示す図である。
図4】Steerable Pyramidによる画像分解の例を示す図である。
図5】Portilla-Simoncelli Staticsに基づく特徴量の例である。
図6】分解画像と特徴量との関係の例を表す概念図である。
図7】実施の形態1に係る触感推定モデルによる触感推定結果の例を示す図である。
図8】実施の形態1に係るテクスチャ生成の流れを示すフローチャートである。
図9】実施の形態1に係るテクスチャ合成の詳細な流れを示すフローチャートである。
図10】実施の形態1に係る触感評価値及び目的関数値の変化を示すグラフと生成されたテクスチャ画像の例である。
図11】実施の形態2に係る触感推定モデルの推定精度の検証結果の例を示すグラフである。
図12】実施の形態2に係る触感評価値及び目的関数値の変化を示すグラフと生成されたテクスチャ画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るテクスチャ生成装置について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1のブロック図に示すように、本実施の形態に係るテクスチャ生成装置1は、制御部10、記憶部11、表示部12、入力部13を備える。
【0018】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されており、テクスチャ生成装置1の動作を制御するとともに、入力された所望の触感を有するテクスチャを生成する。尚、本明細書においてテクスチャとは、ハイトマップのように物体表面の3次元形状として表現されるものをいう。
【0019】
制御部10は、制御部10のROM、記憶部11等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPU、GPU等を動作させることにより、図1に示される制御部10の各機能を実現させる。これにより、制御部10は、目標触感取得部101、特徴量推定部102、テクスチャ合成部103として動作する。
【0020】
目標触感取得部101は、テクスチャ生成の目標となる所望の触感データTd(以下、目標触感データTtという。)を、入力部13等から取得する。触感データTdは、複数の形容詞、名詞又は動詞で表現されるものであり、特に限定されない。例えば、所定の形容詞に対する適合度合いを数値的に表現したもの、反対語の形容詞のいずれに近いかを数値的に表現したもの等である。目標触感データTtを含む、本実施の形態で取り扱う触感データTdは、「すべすべな-ざらざらな」、「やわらかい-かたい」等触感を表す反対語の形容詞の対を複数用いたSD法(Semantic Differential法)によって表現されるものである。
【0021】
特徴量推定部102は、目標触感取得部101で取得した目標触感データTtの触感を実現する特徴量Fv(以下、目標特徴量Ftという。)を推定する。具体的には、触感データTdを入力し、当該触感データTdの触感を実現する特徴量Fvを出力する特徴量推定モデルEMfに、目標触感データTtを入力し、目標特徴量Ftを推定する。また、特徴量推定モデルEMfは、予め準備されたテクスチャデータの特徴量Fvとテクスチャデータの触感データTdに基づいて学習されている。
【0022】
テクスチャ合成部103は、特徴量推定部102で推定された目標特徴量Ftに基づいて、テクスチャを合成する。また、テクスチャ合成部103は、合成されたテクスチャの3次元形状データを生成する。
【0023】
記憶部11は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、触感データTdから特徴量Fvを推定する特徴量推定モデルEMf、テクスチャ合成を行うためのテクスチャデータ等を記憶する。
【0024】
表示部12は、テクスチャ生成装置1に備えられた表示用デバイスであり、例えば液晶パネルである。表示部12は、目標触感データTtの設定値、生成されたテクスチャの画像等を表示する。
【0025】
入力部13は、目標触感データTtの入力、各種設定条件等を入力するための入力デバイスである。入力部13は、テクスチャ生成装置1に備えられたキーボード、タッチパネル、マウス等である。
【0026】
以下、本実施の形態に係るテクスチャ生成方法について説明する。本実施の形態では、予めテクスチャ生成装置1が備える特徴量推定モデルEMfを用いて、所望の触感を実現する特徴量Fvを推定し、推定された特徴量Fvに基づいてテクスチャを生成する。そこで、準備として特徴量推定モデルEMfについて説明する。
【0027】
(特徴量推定モデル)
特徴量推定モデルEMfは、予め作成され、テクスチャ生成装置1の記憶部11に記憶されている。以下、図2のフローチャートを参照しつつ、特徴量推定モデルEMfの作成方法について説明する。
【0028】
特徴量推定モデルEMfの作成にあたり、テクスチャデータを作成する(ステップS11)。本実施の形態では公知のテクスチャデータベースであるPerTex Databaseから35種類のハイトマップ(3次元形状データ)を選択して使用する。さらに、選択した35種類のテクスチャデータについて、それぞれ、ハイトマップの最大高さzmaxが0.1mm、0.2mm、0.3mmとなるように、高さ方向のスケーリングを行う。これにより、触感に大きく影響を与える凹凸の大きさを変化させた105種類のテクスチャデータが作成される。
【0029】
ステップS11で作成したテクスチャデータについて触感調査を行い、テクスチャデータごとの触感データTdを作成する(ステップS12)。具体的には、テクスチャデータに基づいて作成したサンプルを評価者が触って、触感を評価することにより、テクスチャデータに対応する触感を調査する。触感調査は7段階SD法を用いて行うこととし、評価尺度は、図3に示す6対の反対語の触感形容詞とした。また、触感の評価は、触感以外のノイズを抑制するため、評価者の視覚情報を遮断して行う。テクスチャデータごとに、取得した各評価者による触感データTdの平均値を演算し、テクスチャデータごとの触感データTdとして設定する。
【0030】
続いて、テクスチャデータの特徴量Fvを演算する(ステップS13)。特徴量Fvとして取り扱うパラメータは特に限定されない。本実施の形態では、公知のSteerable Pyramidを用いてテクスチャデータの画像分解を行い、公知のPortilla-Simoncelli statics(PSS)に基づいて特徴量Fvを設定する。
【0031】
図4は、Steerable Pyramidによる画像分解の例(分解方向K=4,分解レベルN=4)である。Steerable Pyramidを用いることにより、回転による影響を受けることなく、例えば斜め方向においても適切に特徴量Fvを表現することができる。
【0032】
図5は、Portilla-Simoncelli staticsに基づいて、本実施の形態で取り扱う特徴量Fvの例である。また、図6は、分解画像と特徴量Fvとの関係の例を表す概念図である。このような特徴量Fvを用いることにより、様々なパターンのテクスチャを生成するために十分な制約を設定することができる。
【0033】
ステップS12で設定した触感データTd及びステップS13で設定した特徴量Fvに基づいて、特徴量Fvを入力とし、特徴量Fvを有するテクスチャで実現される触感データTdを推定する触感推定モデルEMtを作成する(ステップS14)。触感推定モデルEMtの推定手法は特に限定されず、Ridge回帰、Losso回帰等の回帰手法、決定木、SVM(Support Vector Machine)、CNN(Convolutional Neural Network)等を用いることができる。本実施の形態に係る推定手法は、部分的最小二乗回帰(PLS:Pratial Least Squares Regression)とする。部分的最小二乗回帰は、潜在変数Tと目的変数yとの共分散(Ty)が最大になるように潜在変数を抽出して行われ、以下の式で表される。
【数1】
ここで、Xは説明変数、Tは潜在変数、yは目的変数、Aは潜在変数の数、nはサンプル数、dは説明変数の数、p,qは係数、fはyの残差、EはXの残差である。
【0034】
また、評価指標として、以下に示す平均二乗誤差(MSE:Mean Squared Error)、決定係数Rを用いる。
【数2】
【0035】
また、本実施の形態では、特徴量Fvのうち,無次元でない特徴量Fvを、以下の式に示すように対数変換して用いる。これにより、実際に感じられる触感と特徴量Fvとの関係をより適切に表現することができる。
【数3】
ただし、aは非無次元の特徴量、Aは入力特徴量である。
【0036】
図7は、触感推定モデルEMtによる触感推定結果の例である。縦軸は触感の推定値、横軸は触感の実測値である。本例の検証手法としてNested Cross-Varidationを用いた。図7に示すように、本実施の形態に係る触感推定モデルEMtにより、高い精度で触感を推定できていることがわかる。
【0037】
テクスチャ生成装置1では、触感推定モデルEMtとは逆に、目標触感データTtから目標特徴量Ftを推定する。そのため、ステップS14で作成した触感推定モデルEMtの逆解析モデルを特徴量推定モデルEMfとして用いる。以上のように、特徴量推定モデルEMfは作成され、記憶部11に記憶される(ステップS15)。
【0038】
(テクスチャ生成)
続いて、上述の特徴量推定モデルEMfを備えるテクスチャ生成装置1を用いたテクスチャ生成方法について、図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0039】
テクスチャ生成装置1の目標触感取得部101は、入力部13から目標触感データTtの入力を受け付ける(ステップS21)。目標触感データTtは、ユーザによって入力部13から入力されるものに限られず、予め記憶部11に記憶されているもの、ネットワーク経由で入力されるもの等であってもよい。目標触感取得部101は、取得した目標触感データTtを特徴量推定部102へ送信する。
【0040】
特徴量推定部102は、記憶部11に記憶されている特徴量推定モデルEMfと、目標触感データTtとに基づいて、目標触感データTtの触感を実現するための目標特徴量Ftを推定する(ステップS22)。
【0041】
続いてステップS22で推定された目標特徴量Ftの最適化を行う(ステップS23)。具体的には、以下に示す目的関数f(x)の最小化を考える。
【数4】
ただし、Vadj(x)は触感形容詞推定モデル、Vtarは所望の触感評価値、x(Im)は各特徴量、xlowは各特徴量の下限値、xupは各特徴量の上限値、Imはテクスチャ画像である。
【0042】
本実施の形態では、ペナルティ関数を用いて上記の制約付き最適化問題を、以下に示す無制約最適化問題に変換して、最適化する。
【数5】
ただし、rは単調減少してr→0となる正の数列である。
また、解の探索には勾配法を用いる。
【0043】
テクスチャ合成部103は、ステップS23で最適化された目標特徴量Ftに基づいて、テクスチャの合成を行う(ステップS24)。本実施の形態では、テクスチャ合成部103は、公知のPortilla-Simoncelliテクスチャ合成を用いてテクスチャの合成を行う。
【0044】
図9は、ステップS24のテクスチャ合成処理の詳細な流れを示すフローチャートである。図9に示すように、テクスチャ合成部103は、初期画像を選択する(ステップS31)。初期画像は、特に限定されず、ホワイトノイズ画像としてもよいし、特徴量推定モデルEMfの作成に用いたテクスチャデータから無作為に選択される画像としてもよい。
【0045】
テクスチャ合成部103は、設定された初期画像をもとに、最急勾配法を用いて目標特徴量を実現するテクスチャの合成を行う。具体的には、テクスチャ合成部103は、Steerable Pyramidの各サブバンドの特徴量Fvを、ステップS23で最適化された特徴量Fvと一致させる(ステップS32)。そして、テクスチャ合成部103は、Pyramidから画像を再構成し、画像の特徴量Fvと一致させる(ステップS33)。テクスチャ合成部103は、ステップS32とステップS33とを交互に行い、目標特徴量Ftを有するテクスチャを合成する。
【0046】
図10は、上記のテクスチャ生成法によってテクスチャ生成を行った場合の生成画像と触感評価値の変化を示すグラフである。本例では、Adam(η=0.001,β1=0.9,β2=0.999)を最適化アルゴリズムとして用い、ペナルティパラメータを{r}:10,(n=2,1,・・・,-6,-7)とした。図10に示すように、目標触感データTtに基づいて、テクスチャを生成できていることがわかる。
【0047】
図8に戻り、制御部10は、生成されたテクスチャを表示部12に表示させるとともに、生成されたテクスチャのハイトマップ(3次元形状データ)を記憶部11に記憶させる(ステップS25)。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態に係るテクスチャ生成装置及びテクスチャ生成方法によれば、目標触感データTtから推定される目標特徴量Ftに基づいてテクスチャを生成するので、所望の触感を実現するテクスチャを効率よく生成することができる。
【0049】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、目標触感データTtから演算した目標特徴量Ftを最適化した後に、テクスチャ生成を行ったが、目標特徴量Ftの最適化を行うことなくテクスチャ生成を行うこともできる。本実施の形態では、目標触感データTtから演算した目標特徴量Ftを最適化せず、目標特徴量Ftに基づいて生成されるテクスチャ画像を最適化するテクスチャ生成方法について説明する。
【0050】
本実施の形態に係るテクスチャ生成方法は、目標特徴量Ftの推定及びテクスチャ生成の方法が上記実施の形態1と異なり、その他、テクスチャ生成装置1の構成等については実施の形態1と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
具体的には、テクスチャ合成部103は、目標触感データTt及び実施の形態1に係るステップS22で推定された目標特徴量Ftに基づいて、上述の目的関数f(x)を最小化するように、画像の各画素について探索を行う。推定モデル、最適化アルゴリズム等は特に限定されないが、本実施の形態では、推定モデルとしてPLS回帰を用い、最適化アルゴリズムとしてAdamを用いる。
【0052】
図11は、本実施の形態に係る触感推定モデルEMtによる触感推定結果の例である。縦軸は触感の推定値、横軸は触感の実測値である。本例の検証手法としてNested Cross-Varidationを用いた。図11に示すように、本実施の形態に係る触感推定モデルEMtにより、高い精度で触感を推定できていることがわかる。
【0053】
図12は、本実施の形態に係るテクスチャ生成法によってテクスチャ生成を行った場合の生成画像と触感評価値の変化を示すグラフである。本例では、Adam(η=0.1,β1=0.9,β2=0.9)を最適化アルゴリズムとして用いている。また、テクスチャ合成に用いる初期画像は、推定モデルの作成に用いたテクスチャデータから無作為に抽出することとした。また、特徴量Fvは、図5に示すPSS(Portilla-Simoncelli statistics)に基づく特徴量から分散及び自己相関に係るもののみを選択して用いることとした。
【0054】
図12に示すように、目標触感データTtに基づいて、所望の触感を有するテクスチャを生成できていることがわかる。より詳細には、本例の結果に係る目的関数の値は、f(Im)=0.283となり、適切なテクスチャを生成できていることがわかる。
【0055】
以上説明したように、特徴量推定部102で推定された目標特徴量Ftの最適化を省略した場合でも、所望の触感を有するテクスチャを高い精度で効率よく生成することができる。したがって、より簡易な方法で、所望の触感を有するテクスチャを生成することが可能である。
【0056】
(変形例)
上記各実施の形態では、目標触感取得部101は、入力として所望の触感データを取得することとしたが、これに限られない。例えば、テクスチャ生成装置1は、テクスチャを入力とし、入力されたテクスチャの触感データを推定するテクスチャ触感推定モデルT-EMを備え、目標触感取得部101は、入力されたテクスチャとテクスチャ触感推定モデルT-EMとに基づいて、目標触感データTtを取得することとしてもよい。これにより、テクスチャ生成装置1は、入力テクスチャと近似する触感を有し、入力テクスチャと異なるテクスチャを生成することができる。
【0057】
また、目標触感取得部101は、入力されたテクスチャから推定した触感データを表示部12に表示し、ユーザから触感の修正を受け付けることにより、目標触感データTtを取得することとしてもよい。これにより、ユーザは既存のテクスチャに基づいて、より容易に所望の触感を入力することができる。
【0058】
また、上記各実施の形態では、テクスチャデータについて行った1つの触感調査の結果を用いて、1つの触感推定モデルEMt及び1つの特徴量推定モデルEMfを作成することとしたが、これに限られない。触感は、テクスチャに触れる際、指に加える力の大きさ、速さ等によって変化する。また、触感は、テクスチャに触れる際の指の動かし方、例えば、所定の方向にのみ動かす、テクスチャを垂直に押し込む等の動作パターンによって変化する。そこで、これらの触感評価条件の異なる複数の触感調査を行い、触感評価条件ごとの触感推定モデルEMt、特徴量推定モデルEMfを作成することとしてもよい。この場合、テクスチャ生成装置1は、触感評価条件ごとに作成された複数の特徴量推定モデルEMfを備える。そして、テクスチャ生成装置1は、所望の触感とともに、触感評価条件を取得することにより触感評価条件を設定して、設定された触感評価条件に対応する特徴量推定モデルEMfに基づいてテクスチャを生成する。これにより、テクスチャ生成装置1は、所望の触感を有するテクスチャを、より精度よく生成することができる。
【0059】
また、上記各実施の形態では、特徴量演算のための画像分解に係るパラメータは、予め設定されていることとしたが、これに限られない。人がテクスチャに触れる際に感じる粗さには、ミクロ粗さ感とマクロ粗さ感とがあり、ミクロ粗さ感は格子間距離0.1μm-1mm程度、マクロ粗さ感は格子間距離100μm-10mm程度のパターンに影響される。そこで、生成されるテクスチャについて重視される粗さ感のスケールごとに、特徴量演算のための画像分解に係るパラメータを設定して特徴量を演算し、粗さ感のスケールごとの触感推定モデルEMt、特徴量推定モデルEMfを作成することとしてもよい。この場合、テクスチャ生成装置1は、粗さ感のスケールごとに作成された複数の特徴量推定モデルEMfを備える。そして、テクスチャ生成装置1は、所望の触感とともに、所望の粗さ感のスケールを取得することにより粗さ感のスケールを設定して、設定された粗さ感のスケールに対応する特徴量推定モデルEMfに基づいてテクスチャを生成する。これにより、テクスチャ生成装置1は、所望の触感を有するテクスチャを、より精度よく生成することができる。
【0060】
また、上記各実施の形態では、テクスチャ生成における最適化アルゴリズムは、導関数を用いる勾配法を利用することとしたが、これに限られない。例えば、遺伝的アルゴリズム等の導関数を用いない方法を用いることもできる。
【0061】
また、本実施の形態に係るテクスチャ生成方法は、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、上記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、USBメモリ、DVD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、コンピュータ装置を上記のテクスチャ生成方法を実行するテクスチャ生成装置として機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、所望の触感を有するテクスチャの設計に好適である。
【符号の説明】
【0063】
1 テクスチャ生成装置、10 制御部、101 目標触感取得部、102 特徴量推定部、103 テクスチャ合成部、11 記憶部、12 表示部、13 入力部
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