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特開2024-29569感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法
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  • 特開-感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法 図1
  • 特開-感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029569
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20240228BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C07F7/18 L
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131901
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山口 和夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 倫子
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ38
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS35
4H049VU21
4H049VU22
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】感光性表面処理剤の提供。
【解決手段】下記式(M1)で表される化合物を含む、感光性表面処理剤。式(M1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、n0は0以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(M1)で表される化合物を含む、感光性表面処理剤。
【化1】
(式(M1)中、Rは直鎖状又、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、n0は0以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【請求項2】
下記式(P1)で表される高分子化合物を含む、感光性表面処理剤。
【化2】
(式(P1)中、Rは直鎖状又、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合、Yは、炭素数6~15の芳香環から2個の水素原子を除いた基、である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、n0、n1,n2はそれぞれ独立に0以上の整数であり、mは自然数である。)
【請求項3】
ケトン系溶剤を更に含む、請求項2に記載の感光性表面処理剤。
【請求項4】
前記高分子化合物は数平均分子量が2000~40000である、請求項2または3に記載の感光性表面処理剤。
【請求項5】
前記高分子化合物の少なくとも1つの末端が、下記一般式(1x)で表される置換基である、請求項2~4のいずれか一項に記載の感光性表面処理剤。
【化3】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性表面処理剤を含む積層体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性表面処理剤を用いて化学修飾された表面を有するパターン形成用基板。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性表面処理剤を含むトランジスタ。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射する工程と、
前記所定のパターン光の照射領域の少なくとも一部の領域に対して無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射する工程と、
前記所定のパターン光の照射領域の少なくとも一部の領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、
前記アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載のパターン形成方法により、ソース電極、ドレイン電極、またはゲート電極のうちいずれか1以上の電極を形成する工程を含む、トランジスタの製造方法。
【請求項13】
下記式(M1)で表される化合物又は下記式(P1)で表される高分子化合物を含む、トランジスタ。
【化4】
(式(M1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、n0は0以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【化5】
(式(P1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合、Yは、炭素数6~15の芳香環から2個の水素原子を除いた基、である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、n0、n1,n2はそれぞれ独立に0以上の整数であり、mは自然数である。)
【請求項14】
前記化合物又は高分子化合物は、少なくとも一部のニトロベンジル基が脱離してアミノ基が発生した部分を有する、請求項13に記載のトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、集積回路、有機ELディスプレイ用デバイス等の微細デバイス等の製造において、基板上に、表面特性の異なるパターンを形成し、その表面特性の違いを利用して微細デバイスを作成する方法が提案されている。
【0003】
基板上の表面特性の違いを利用したパターン形成方法としては、たとえば、基板の一部に化学的に活性な置換基を発生させた領域を形成する方法がある。この方法により基板の一部に金属材料、有機材料又は無機材料を密着させることができる。
【0004】
基板上に金属材料を密着させ、金属膜を形成する技術として無電解めっき処理がある。例えば特許文献1は、無電解めっき処理による微細な配線を形成する技術を開示している。具体的には、特許文献1は、触媒活性化層とフォトレジストを用い、一面にめっきした状態からエッチング、またはリフトオフによる光パターニングを行うことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-2201号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、下記式(M1)で表される化合物を含む感光性表面処理剤である。
【0007】
【化1】
(式(M1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、n0は0以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のパターン形成方法を説明するための模式図である。
図2】本実施形態のトランジスタの製造方法を説明するための模式図である。
図3A】ポリイミド基板及び石英基板に描画した解像性チャート全体像である。
図3B】石英基板に描画した解像性チャートの光学顕微鏡像である。
図3C】石英基板に描画したL/S=3/3~10/10μmの光学顕微鏡像である。
図3D】石英基板に描画したL/S=1/1~8/8μmの光学顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<感光性表面処理剤>
本実施形態の感光性表面処理剤は、下記式(M1)で表される化合物を含む。
【0010】
【化2】
(式(M1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、n0は0以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【0011】
(R
式(M1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基である。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0012】
(Y
式(M1)中、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基である。Yは、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。また、Yは、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-等が挙げられる。
式(M1)中、Yは、単結合であってもよい。
【0013】
のアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
この場合、RとYが形成する環は、例えばピペリジル基である。
即ち、式(M1)は、下記式(M1)-Aであってもよい。
【0014】
【化3】
(式(M1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Y12は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基である。R12のアルキル基の末端の炭素原子は、Y12のアルキレン基を構成する炭素原子と結合して環を形成している。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、n0は0以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【0015】
(R
式(M1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。中でもイソプロピル基又はシクロヘキシル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0016】
(R及びR
及びRは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0017】
(n0)
式(M1)中、n0は以上の整数であり、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。
【0018】
(X)
式(M1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等を挙げることができる。
【0019】
Xはアルコキシ基であることが好ましい。Xのアルコキシ基としては、-O-(CH)、-O-(CH)n(CH)が挙げられる。nは、1~3の自然数である。
【0020】
式(M1)で表される化合物の具体例を以下に記載する。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
式(M1)で表される化合物を含む感光性表面処理剤を基板上に塗布し光を照射すると、ニトロベンジル基が脱離して、SiXが基板に密着すると同時に基板表面にアミンが発生する。アミンが発生した部分には、金属材料、有機材料又は無機材料を密着させることができる。式(M1)で表される化合物から発生するアミンは、1級アミン(-NH)、又は2級アミン(-NH-)である。
【0027】
式(M1)で表される化合物は、Rが直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基である。このため、Rに相当する基が水素原子である化合物よりもかさ高く、ニトロベンジル基が脱離する光分解速度が向上する。
【0028】
さらに、式(M1)で表される化合物は、Rが上記の構造であるため、光分解後の逆反応が生じにくい。光分解後の逆反応とは、脱離したニトロベンジル基が光分解後に再度結合する反応を意味する。
【0029】
本実施形態の感光性表面処理剤によれば、基板表面に形成したアミン発生部に金属材料を配置することにより、フォトレジスト工程、現像工程、エッチング工程を用いることなく、基板表面に、例えばライン幅が3μm以下の微細な金属パターンを形成することができる。
【0030】
本発明の一態様は、下記式(P1)で表される高分子化合物を含む感光性表面処理剤である。
【0031】
【化9】
(式(P1)中、Rは直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~6のアルキル基であり、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基、又は単結合、Yは、炭素数6~15の芳香環から2個の水素原子を除いた基である。Rのアルキル基の末端の炭素原子は、Yのアルキレン基を構成する炭素原子と結合して、RとYが環を形成していてもよい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、n0、n1,n2はそれぞれ独立に0以上の整数であり、mは自然数である。)
【0032】
式(P1)中、R、R、R、R、R、Y、Y、n0、n1、n2に関する説明は前記同様であり、mは自然数である。
【0033】
式(P1)で表される高分子化合物は、主鎖の末端の少なくとも1つに、下記式(1x)で表される置換基が結合していることが好ましい。下記式(1x)中、*は式(P1)で表される高分子化合物の主鎖の末端との結合箇所を意味する。
【0034】
【化10】
【0035】
式(P1)で表される高分子化合物の、主鎖の末端に上記式(1x)で表される置換基が結合している高分子化合物(P1)-Aを下記に例示する。
【0036】
【化11】
【0037】
式(P1)-Aで表される高分子化合物の他の具体例を以下に記載する。
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
式(P1)で表される高分子化合物の数平均分子量は、300~100,000であることが好ましく、なかでも2,000~40,000であることが好ましい。これらは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)あるはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI-Tof-MS)によって測定可能である。
【0044】
<化合物の製造方法>
式(M1)で表される化合物は、以下の方法により製造できる。
以下の製造方法の説明において、式中の各符号に関する説明は前記同様である。
【0045】
式(M1)で表される化合物は、アルコールから活性中間体を合成し、第一級または第二級アミンと反応させる工程を含むことで製造することができる。
活性中間体としては、下記反応式(R)-1に示すベンジルアルコールをカルボニルクロライドで活性化させた活性中間体(例えばカルボン酸クロライド)、下記反応式(R)-2に示すベンジルアルコールをカルボニルイミダゾールで活性化させた活性中間体(例えばオキシカルボニルイミダゾール)、下記反応式(R)-4に示すベンジルアルコールをカルボニルオキシスクシンイミドで活性化させた活性中間体(例えばオキシカルボニルオキシスクシンイミド)が挙げられる。下記反応(R)-1、(R)-2、(R)-4では、Rを含む第二級アミン化合物を用い、式(M1)で表される化合物の製造法を示したが、Rを含まない第一級アミン化合物を用いてカルバメートを形成した後、後述の製造法に従い窒素上にRを導入することで式(M1)で表される化合物を製造してもよい。
【0046】
【化17】
【0047】
上記反応(R)-1に示す出発物質としては、例えばCAS No.42855-00-5の化合物(RがH)、CAS No.363135-50-6(RがMe)の化合物が挙げられる。
CAS No.42855-00-5の化合物(RがH)の合成方法は、Chemical Science (2016), 7(3), 1891-1895に開示されている。Chemical Science (2016), 7(3), 1891-1895の開示内容と同様の方法により、Rが所望のアルキル基である化合物を製造できる。
【0048】
【化18】
【0049】
上記反応(R)-2に示す出発物質としては、例えばCAS No.188305-03-5の化合物(RがH)、CAS No.2097130-00-0(RがMe)の化合物が挙げられる。
CAS No.2097130-00-0の化合物(RがMe)の合成方法は、Organic Letters (2017), 19(7), 1618-1621に開示されている。Organic Letters (2017), 19(7), 1618-1621の開示内容と同様の方法により、Rが所望のアルキル基である化合物を製造できる。
【0050】
【化19】
【0051】
また、式(M1)で表される化合物は、ベンジルアルコールをギ酸クロライドやカーボネートなどで活性化させた活性中間体と、末端二重結合を含むアミノ化合物とを反応させ、ニトロベンジルカルバメートを形成した後、金属触媒やトリメトキシヒドロシランなどのトリアルコキシシランとを反応させることにより製造できる。
【0052】
下記反応式(R)-5は、末端二重結合を含むアミノ化合物としてアリル基を含む化合物を使用する例である。
【0053】
【化20】
【0054】
下記反応式(R)-6は、末端二重結合を含むアミノ化合物としてビニル基を含む化合物を使用する例である。
【0055】
【化21】
【0056】
式(M1)で表される化合物は、ベンジルアルコールをギ酸クロライド、カーボネートなどで活性化させた活性中間体と、第一級アミンを含むアミノシラン化合物とを反応させ、ニトロベンジルカルバメートを形成した後、R及びヨウ素や脱離基を含むアルキル化合物とを反応させることにより、製造できる。
【0057】
下記反応式(R)-7は、R及びヨウ素を含む化合物と反応させる例である。
【0058】
【化22】
【0059】
下記反応式(R)-8は、R及びトシルオキシ基を含む化合物と反応させる例である。なお、トシルオキシ基は、反応中に脱離する。
【0060】
【化23】
【0061】
を含まないカルバメート化合物は、ベンジルアルコールと、イソシアネートを含む化合物とを反応させることにより製造できる。下記反応式(R)-10は、ベンジルアルコールと、トリアルコキシシリル基を含むイソシアネート化合物と反応させる例である。このように合成されたRを含まないカルバメート化合物に、上記製造法でRを導入することで、式(M1)で表される化合物を製造することができる。
【0062】
【化24】
【0063】
<高分子化合物の製造方法>
式(P1)で表される化合物は、以下の方法により製造できる。
以下の製造方法の説明において、式中の各符号に関する説明は前記同様である。
【0064】
式(P1)で表される高分子化合物の前駆体であるP1前駆体は、下記反応式(PR)-1に示すベンジルアルコールをカルボニルクロライドで活性化させた活性中間体と、Rを含むアミノメタクリレート化合物とを反応させることにより製造される。
【0065】
式(P1)で表される高分子化合物の前駆体であるP1前駆体は、下記反応式(PR)-2に示すベンジルアルコールをカルボニルオキシイミダゾールで活性化させた活性中間体と、Rを含むアミノメタクリレート化合物とを反応させることにより製造される。
【0066】
式(P1)で表される高分子化合物の前駆体であるP1前駆体は、下記反応式(PR)-4に示すベンジルアルコールをカルボニルオキシスクシンイミドで活性化させた活性中間体と、Rを含むアミノメタクリレート化合物とを反応させることにより製造される。
【0067】
下記反応は、Rを含む第二級アミン化合物を用い、式(P1)で表される化合物の製造法を示した。式(P1)で表される化合物の製造方法はこれに限定されず、Rを含まない第一級アミン化合物を用いてカルバメートを形成した後、後述の製造法に従い窒素上にRを導入することで式(P1)で表される化合物を製造してもよい。
【0068】
【化25】
【0069】
式(P1)で表される高分子化合物の前駆体であるP1前駆体は、下記反応式(PR)-5に示すベンジルアルコールをギ酸クロライド、カーボネートなどで活性化させた活性中間体と、アミノアルコール化合物とを反応させ、ニトロベンジルカルバメートを形成した後、メタクリル酸と反応させることにより製造される。
【0070】
式(P1)で表される高分子化合物の前駆体であるP1前駆体は、下記反応式(PR)-6に示すベンジルアルコールをギ酸クロライド、カーボネートなどで活性化させた活性中間体と、アミノアルコール化合物とを反応させ、ニトロベンジルカルバメートを形成した後、メタクリル酸クロライドと反応させることにより製造される。
【0071】
【化26】
【0072】
式(P1)で表される高分子化合物の前駆体であるP1前駆体は、下記反応式(PR)-7に示すように、ベンジルアルコールをギ酸クロライド、カーボネートなどで活性化させた活性中間体と、Rおよびメタクリレートなどの重合性官能基を含むアミノ化合物とを反応させることにより製造される。
【0073】
式(P1)で表される高分子化合物の前駆体であるP1前駆体は、下記反応式(PR)-8に示すようにアミノ基による求核性などで重合性官能基の安定性が低下する場合にはアミノ基を塩の形成や保護基を導入し、反応系内でアミンを活性化させることでP1前駆体の製造が安定化する。
【0074】
【化27】
【0075】
を含まないカルバメート化合物は、ベンジルアルコールと、イソシアネートを含む化合物とを反応させることにより製造できる。下記反応式(R)-11は、ベンジルアルコールと、トリアルコキシシリル基を含むイソシアネート化合物と反応させる例である。このように合成されたRを含まないカルバメート化合物に、上記製造法でRを導入することで、式(M1)で表される化合物を製造することができる。
【0076】
【化28】
【0077】
重合性官能基を含むP1前駆体とラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤などの各種重合開始剤とを反応させることにより、P1が製造される。
この反応の例を、以下の反応式(PR)-9~(PR)-11に示す。
【0078】
【化29】
【0079】
P1の重合は特に限定されないが、ラジカル重合、アニオン重合などにより重合してもよい。なかでも制御の容易性等の観点からラジカル重合法が好ましい。分子量を制御することで任意の溶解性を得るという観点からは、ラジカル重合の中でも、制御ラジカル重合がより好ましい。
【0080】
制御ラジカル重合法としては、連鎖移動剤法、リビング重合の一種であるリビングラジカル重合法等が挙げられるが、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましい。なお、リビングラジカル重合法としては、ニトロキシラジカル重合法(NMP)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)、可逆的付加解裂連鎖移動法(RAFT)等があるが、温度や汎用性の観点から、特に原子移動ラジカル重合法(ATRP)が好ましい。
【0081】
低分子から高分子にかけて分子量分布を広くさせ任意の成膜性を得るという観点に加え、生産性と経済性の観点からは、古典的な連鎖移動反応を伴うラジカル重合が好ましい。
なお、ラジカル重合を用いる場合には、従来公知の重合開始剤を適宜用いることができる。また、ラジカル重合開始剤は、単独又は二種以上を使用してもよく、また、市販されているものをそのまま使用してもよい。
【0082】
例えば、アゾ基(-N=N-)を有し、N2とラジカルを発生する化合物であるアゾ重合開始剤を用いることができる。具体的には、アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアミジン、アゾイミダゾリン等が挙げられる。さらに具体的には、例えば、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、4,4’-アゾビス(4-シアノヴァレリックアシド)、2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)-2,2’-アゾプロパンジハイドロクロライド、2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)-2,2’-アゾプロパン、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ヂメチルバレロニトリル)(ADBN)が挙げられる。この中でも好ましくは2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ヂメチルバレロニトリル)(ADBN)であり、特に好ましくは2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0083】
このようにして合成される高分子化合物の数平均分子量は、めっき浴などへの溶解・剥離のリスクを下げ、成膜時の溶解性を担保するという観点からは、湿式成膜できる程度の300以上100,000以下であるのが好ましく、より好ましくは1,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは2,000以上40,000以下である。また同様の理由から、分子量分布のピークは、1,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは2,000以上40,000以下の範囲である。これらは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定可能である。
【0084】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(M1)で表される化合物からなる。
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(P1)で表される高分子化合物からなる。
【0085】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(M1)で表される化合物と、上記式(P1)で表される高分子化合物とからなる。
【0086】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は溶剤を含んでいてもよい。溶剤としてアルコール系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系芳香族溶剤、アミン系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エーテル系溶剤など一般的な有機溶剤に溶かすことで、好適な表面処理剤として用いることができる。
【0087】
アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、n-ブチルアルコール(n-ブタノール)などが挙げられる。
【0088】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル(EAC)、酢酸ブチル(NBAC)、酢酸n-プロピル(NPAC)、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテートなどが挙げられる。
【0089】
炭化水素系芳香族溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどが挙げられる。
【0090】
アミン系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAC)が挙げられる。
【0091】
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘプタノン、アセトンなどが挙げられる。
【0092】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノt-ブチルエーテル(ETB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロエーテル系溶剤ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)などが挙げられる。
【0093】
その他の溶剤としては、塩素やフッ素を含むハロゲン系溶剤が挙げられ、例えば、クロロホルム、クロロベンゼン、フルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤は、公害性、溶解性、揮発性、基板や下地へのアタック性、成膜装置や成膜手法などの条件に応じて適宜選択することができる。
【0094】
本発明において、感光性表面処理層を難溶性にすることで、洗浄液やめっき液、多層成膜に用いられる溶剤などに不溶となり、配線及び積層工程において耐洗浄性やプロセス耐性などを向上できる。
【0095】
上記式(M1)で表される化合物からなる感光性表面処理剤の場合、下地剤と感光性表面処理剤、感光性表面処理剤の分子間での反応性を向上させる観点から、含まれる溶剤としてはアルコール系、エーテル系、炭化水素系溶媒が好ましく、特に炭化水素系溶媒、なかでもトルエンが好ましい。
さらに上記の反応性を高める観点から、成膜の際に任意の酸性あるいは塩基性化合物を含んでもよい。成膜条件に応じて適宜選択でき、とくに塩酸、酢酸、硝酸などの酸性化合物が好ましく、なかでも酢酸が好ましい。
【0096】
上記式(P1)で表される化合物からなる感光性表面処理剤の場合、溶解性と成膜性の観点から、含まれる溶剤としてはエステル系、ケトン系溶媒が好ましく、特にケトン系溶媒、なかでもシクロペンタノンが好ましい。
【0097】
感光性表面処理剤に含まれる上記式(M1)で表される化合物または上記式(P1)で表される高分子化合物の濃度としては、成膜条件に応じて適宜選択できるが、保管安定性や経済性の観点から、0.001~10質量%が好ましく、より好ましくは0.01~2質量%であり、なかでも0.1~0.3質量%が好ましい。
【0098】
<パターン形成方法>
本実施形態のパターン形成方法は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える。
以下、各工程について図面を参照して説明する。
【0099】
図1(a)に示すように、基板11の上に前記本実施形態の感光性表面処理剤10aを塗布する。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ロールコート法、マイクログラビア法、リップコート法、インクジェット法、アプリケーター塗布、刷毛塗り等の塗布方法使用できる。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷法により塗布してもよい。またSAM膜、LB膜としてもよい。
【0100】
なお、本工程においては、図1(a)に示すように、例えば熱や減圧等によって溶剤を乾燥させる処理を加えてもよい。
【0101】
これにより、図1(b)に示すように基板11の上に感光性表面処理剤層10が形成される。
【0102】
次に、図1(c)に示すように、所定のパターンの露光領域を有するフォトマスク13を用意する。露光方法としては、フォトマスクを用いる手段に限られず、レンズやミラーなどの光学系を用いたプロジェクション露光、空間光変調素子、レーザービームなどを用いたマスクレス露光等の手段を用いることができる。なお、フォトマスク13は、感光性表面処理剤層10と接触するよう設けてもよいし、非接触となるよう設けてもよい。
【0103】
その後、図1(c)に示すように、フォトマスク13を介して感光性表面処理剤層10にUV光を照射する。これにより、フォトマスク13の露光領域において感光性表面処理剤層10が露光される。
【0104】
その結果、図1(d)に示すように、露光部にはアミン発生部14が、未露光部にはアミン未発生部12が形成される。
【0105】
UV光は例えば、波長が365nmのi線が挙げられる。また、その露光量や露光時間は、必ずしも完全に脱保護が進行する必要はなく、一部のアミンが発生する程度でよい。
【0106】
次に、図1(e)に示すように、表面に無電解めっき用触媒を付与し、触媒層15を形成する。無電解めっき用触媒は、無電解めっき用のめっき液に含まれる金属イオンを還元する触媒であり、銀やパラジウムが挙げられる。
【0107】
アミン発生部14の表面にはアミノ基が露出している。アミノ基は、上述の無電解めっき用触媒を捕捉・還元することが可能である。そのため、アミン発生部14上のみに無電解用めっき用触媒が捕捉され、触媒層15が形成される。また、無電解めっき用触媒はアミノ基が担持可能なものを用いることができる。
【0108】
図1(f)に示すように、無電解めっき処理を行い、めっき層16を形成する。なお、めっき層16の材料としては、ニッケル-リン(NiP)や、金(Au)、銅(Cu)が挙げられる。
【0109】
本工程では、基板11を無電解めっき浴に浸漬して触媒表面に金属イオンを還元し、めっき層16を析出させる。その際、アミン発生部14表面には十分な量の触媒を担持する触媒層15が形成されているため、アミン発生部14上にのみ選択的にめっき層16を析出させることができる。
【0110】
以上の工程により、前記本実施形態の感光性表面処理剤を用いて所定の基板に配線パターンを形成することが可能である。
【0111】
<トランジスタの製造方法>
さらに、上記<パターン形成方法>で得られためっき層16をゲート電極とするトランジスタの製造方法について図2を用いて説明する。
【0112】
図2(a)に示すように、上述したパターン形成方法により形成した無電解めっきパターンのめっき層16とアミン未発生部12とを覆うように、公知の方法により絶縁体層17を形成する。絶縁体層17は、例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、シリコーン樹脂等の1つ以上の樹脂を有機溶媒に溶解させた塗布液を用い、当該塗布液を塗布することにより形成してもよい。絶縁体層17を形成する領域に対応して開口部が設けられたマスクを介して塗膜に紫外線を照射することで、絶縁体層17を所望のパターンに形成することが可能である。なお、絶縁体層17を形成する前に、アミン未発生部12を必要に応じて除去してもよい。
【0113】
図2(b)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法と同様にして絶縁体層17上に感光性表面処理剤層10を形成し、ソース電極及びドレイン電極が形成される部分にアミン発生部14を形成する。
【0114】
図2(c)に示すように、上述したパターン形成方法と同様にして、アミン発生部14上に無電解めっき用触媒を担持させ、触媒層15を形成した後、無電解めっきを行うことによりめっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)を形成する。なお、めっき層18及び19の材料としてもニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられるが、めっき層16(ゲート電極)と異なる材料で形成してもよく、ニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)の表面に異なる金属、例えば無電解金めっきを行うことで、金(Au)を析出させてもよい
【0115】
図2(d)に示すように、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に半導体層21を形成する。
【0116】
半導体層21は、例えば、TIPSペンタセン(6,13-Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)のような有機溶媒に可溶な有機半導体材料を当該有機溶媒に溶解させた溶液を作製し、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に塗布、乾燥させることにより形成してもよい。
【0117】
また、半導体層21は、上記溶液にPS(ポリスチレン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの絶縁性ポリマーを1種類以上添加し、当該絶縁性ポリマーを含む溶液を塗布、乾燥することにより形成してもよい。
【0118】
このようにして半導体層21を形成すると、半導体層21の下方(絶縁体層17側)に絶縁性ポリマーが集中して形成される。有機半導体と絶縁体層との界面にアミノ基などの極性基が存在する場合、トランジスタ特性の低下を生じる傾向にあるが、上述の絶縁性ポリマーを介して有機半導体を設ける構成とすることにより、トランジスタ特性の低下を抑制することができる。以上のようにして、トランジスタを製造することが可能である。
【0119】
上記のような方法によれば、UV露光工程において別途化学的なレジスト等を設ける必要がなく、フォトマスクのみによる簡素な工程とすることができる。従って当然ながら、レジスト層を除去する工程についても必要としない。また、アミノ基の触媒還元能により、通常必要となる触媒の活性化処理工程も省略することができ、大幅な低コスト化と時間短縮を実現しながら、高精細なパターニングが可能となる。また、ディップコート法を用いることができるため、ロール・ツー・ロール工程でも非常に相性良く利用することができる。
【0120】
なお、トランジスタの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トップコンタクト・ボトムゲート型、トップコンタクト・トップゲート型、ボトムコンタクト・トップゲート型のトランジスタも同様にして製造してもよい。
【0121】
<積層体>
本実施形態は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を含む積層体である。
本実施形態の積層体は、基板と金属パターンとが積層された積層体であって、パターンが形成されていない未露光部に感光性表面処理剤を含む。
【0122】
<トランジスタ>
本実施形態は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を含むトランジスタである。
本実施形態の積層体は、基板と金属パターンとが積層された積層体を有するトランジスタであって、パターンが形成されていない未露光部に感光性表面処理剤を含む。
【実施例0123】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
<実施例1>
下記に示す反応により、1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロパノールを合成した。
【0125】
【化30】
【0126】
1Lナスフラスコに、1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロパノン20.0g(79.0mmol,1.0eq)を入れてテトラヒドロフラン(THF)200mLとメタノール100mLに溶解し、0℃(氷水)でテトラ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)4.48g(118mmol,1.5eq)を少しずつ添加し、0℃で30min撹拌、さらに室温で2h撹拌した。エバポレータにて濃縮後、酢酸エチル(300mL)で希釈し、HO(150mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥(湯浴60°C)し、黄色粘体の目的物20.2g(79.0mmol,100%)を得た。
【0127】
Rf=0.50(ヘキサン:酢酸エチル=1:1),UV254、原料Rf=0.57
【0128】
HNMR(CDCl,400MHz)δ=0.96(6H,d,J=6.9Hz)-CH(CH)、21.96-2.09(1H,m)-CH(CH)、22.23(1H,d,J=4.6Hz)-OH3.95(3H,s)-OCH、3.99(3H,s)-OCH、5.27(1H,dd,J=4.6,5.3Hz)Ar-CH、7.21(1H,s)Ar-H(6)、7.56(1H,s)Ar-H(3)
【0129】
次に、以下に示す反応により、1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロピル N-スクシンイミジルカーボネートを合成した。
【0130】
【化31】
【0131】
500mLナスフラスコに、1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロパノール20.2g(79.0mmol,1.0eq)を入れて無水アセトニトリル300mLに溶解し、トリエチルアミン33mL(238mmol,3.0eq)、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)30.3g(118mmol,1.5eq)を加え、窒素雰囲気下、室温で20h撹拌した。エバポレータにて濃縮後、クロロホルム(300mL)で希釈し、0.5NのHCl(150mL×3)、sat.NaClaq.(150mL)で順次洗浄、無水硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、淡黄色粉体31.8gを得た。酢酸エチル(100mL)で懸濁し、吸引ろ過、真空乾燥し、淡黄白色粉体20.1g(53.1mmol,67%)を得た。(ろ液を濃縮後、再度酢酸エチルで懸濁し、吸引ろ過、真空乾燥し、淡茶色固体6.62gを得た。)
【0132】
Rf=0.35(ヘキサン:酢酸エチル=1:1),UV254備考:原料Rf=0.50
【0133】
H NMR(CDCl3、400MHz)δ=1.04(3H,d,J=6.9Hz)-CH(CH)2、1.11(3H,d,J=7.0Hz)-CH(CH)2、2.23-2.33(1H,m)-CH(CH)2、2.79(4H,s)-CHCH-、3.96(3H,s)-OCH、4.06(3H,s)-OCH、6.41(1H,d,J=4.9Hz)Ar-CH、6.98(1H,s)Ar-H(6)、7.67(1H,s)gAr-H(3)
【0134】
次に、以下に示す反応により、1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロピル N-メチル-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)カルバメートを合成した。
【0135】
【化32】
【0136】
100mL二口ナスフラスコに1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロピル N-スクシンイミジルカーボネート1.00g(2.52mmol,1.0eq)、ドライTHF20mL、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン0.50mL(2.52mmol,1.0eq)を加え、窒素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。TLCにて出発原料の活性カルボナートが残っていたためトリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン0.50mL(2.52mmol,1.0eq)を追加で加え、1時間撹拌した。TLCにて反応が進行していたため、反応溶液を濃縮、真空乾燥を行い、粗収量1.785gの淡黄色粘体を得た。淡黄色粘体をクロロホルムに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(φ=4.0cm,h=15cm,ヘキサン:酢酸エチル:アセトン:(MeO)Si=50:25:25:1)で精製した。精製物を濃縮、湯浴上(60℃)で真空乾燥し、(MeO)Siを除去、淡黄色粘体の目的物1.089g(2.29mmol、91%)得た。
【0137】
H-NMR(CDCl)400MHz δ=0.61-0.66(m,2H)、1.01(d,3H,J=6.1Hz)、1.05(d,3H,J=6.9Hz)、1.60-1.72(m,2H)、2.17-2.22(m,1H)、2.87-3.02(m,3H)、3.22-3.39(m,2H)、3.58(s,9H)、3.94(s,3H)、3.95(s,3H)、6.24(d,1H,J=4.9Hz)、6.89(s,1H)、7.62(s,1H)
【0138】
13C-NMR(CDCl)100MHz δ=6.26、17.1、19.6、21.1、33.3、33.8、34.8、50.6、51.5、56.2、56.3、76.3、108.0、108.9、132.3、140.6、147.7、153.0、155.5
【0139】
次に、以下に示す反応により、シクロヘキシル(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)メチルメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)カルバメートを合成した。
【0140】
【化33】
【0141】
10mL二口試験管にシクロヘキシル(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)メチル(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)カーボネート0.155g(0.355mmol,1.0eq)、無水THF2mL、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン85.0μL(0.431mmol,1.2eq)を加え、N雰囲気下、室温で3時間攪拌した。TLCにて原料の消失を確認し、反応溶液を濃縮、真空乾燥し、黄褐色粘体の粗生成物0.247gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:アセトン:テトラメトキシシラン=100:20:20:1,φ=2,h=15)により精製し、濃縮、真空乾燥(湯浴60℃)した。ヘキサンでリンス後、濃縮、真空乾燥し、黄色固体の目的物0.074g(0.144mmol、41%)を得た。
【0142】
H-NMR(CDCl)400MHz δ=0.50-0.66(m,2H)、1.00-1.40(m,5H)、1.50-1.85(m,6H)、2.93(d,3H,J=58.0Hz)、3.10-3.45(m,2H)、3.56(d,9H,J=15.6Hz)、3.93(s,3H)、3.95(s,3H)、6.25(s,1H)、6.87(s,1H)、7.60(s,1H)
【0143】
13C-NMR(CDCl)100MHz δ=6.00、6.55、20.7、21.6、26.1、26.3、27.8、29.8、33.9、34.8、43.0、50.6、51.5、51.5、56.3、56.3、76.0、76.1、108.0、109.1、132.0、140.6、147.7、153.0、155.5
【0144】
以下に示す反応により、2-((tert-ブトキシカルボニル)(メチル)アミノ)エチルメタクリレート(Boc-NMe-AEMA)を合成した。
【0145】
【化34】
【0146】
アルゴン雰囲気下、500mLの4口フラスコにtert-ブチル(2-ヒドロキシエチル)(メチル)カルバメート(Boc-NMe-AE-OH)15g(85.6mmol、1.0eq.)、無水ジクロロメタン75ml、トリエチルアミン25.99g(256.8mmol,3.0eq.)を仕込み氷冷した。この反応液に塩化メタクリロイル13.42g(128.4mmol,1.5eq.)と75mlジクロロメタンの混合溶液を内温20°C以下で5分間かけて滴下した。
【0147】
反応液は滴下に伴って無色透明から淡赤色懸濁液に変化した。氷浴を外して室温で1時間撹拌後、TLC(酢酸エチル/ヘプタン=1/1、ニンヒドリン)とGCで原料の消失を確認した。反応液に1MのNaOH水溶液90mL(90 mmol, 1.05 eq.)を注いで反応をクエンチした。
【0148】
有機層を取り出して40℃で減圧濃縮後、ヘプタン300mLで希釈した。ヘプタン溶液を1MのNaOH水溶液90mLで3回、20%食塩水30gで1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水後、40℃で減圧濃縮することで赤橙色オイルの粗体21.7gを得た。
【0149】
本粗体に別途同手法の合成検討で得た粗体(Boc-NMe-AE-OH、5g仕込み)を混合し、ヘプタン100mLで希釈した。希釈液をシリカゲル150gにチャージし、カラム精製(展開:ヘプタンのみ→酢酸エチル/ヘプタン=1/5)を行った。目的物のフラクションにMEHQ 30mg(1000ppm相当)を添加後、減圧濃縮することで微黄色オイルの目的物を得た。
【0150】
収量30.93g、収率97.1%
【0151】
H-NMR(CDCl)400MHz δ=1.45(s,9H),1.95(s,3H),2.92(m,3H),3.52(m,2H),4.25(m,2H),5.59(s,1H),6.13(s,1H)
【0152】
以下に示す反応により、2-(メチルアミノ)エチルメタクリレート トリフルオロ酢酸塩(Boc-NMe-AEMA-TFAsalt)を合成した。
【0153】
【化35】
【0154】
アルゴン雰囲気下、300mLのナスフラスコに室温でBoc-NMe-AEMA30.00g(123.3mmol,1.0eq.)、ジクロロメタン150ml、トリフルオロ酢酸70.29g(616.5mmol,5.0eq.)を仕込み撹拌した。反応液はトリフルオロ酢酸の添加後にかすかに黄色味が濃くなった。
【0155】
室温で終夜撹拌後、TLC(メタノール/ジクロロメタン=1/10、ニンヒドリン)とNMRで原料の消失を確認した。反応液を45°Cで63.0g(粗収率200%)まで減圧濃縮し、ジクロロメタン60mLで希釈した。希釈液をシリカゲル300gにチャージし、カラム精製(展開:ジクロロメタンのみ→メタノール/ジクロロメタン=1/2)を行った。目的物のフラクションにMEHQを30mg(1000ppm相当)を添加後、減圧濃縮することで微黄色オイルの目的物を得た。
【0156】
収量28.16g、収率88.8%
【0157】
H-NMR(CDCl)400MHz δ=1.93(s,3H),2.75(s,3H),3.31(br,2H),4.47(m,2H)、5.64(s,1H)、6.66(s,1H)、9.69(br,2H)
【0158】
以下に示す反応により、2-(((1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロポキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)エチルメタクリレート(NMe-iPrNBC-AEMA)を合成した。
【0159】
【化36】
【0160】
アルゴン雰囲気下、500のml四つ口フラスコにiPrNBC-OSuを8g(20.18mmol)、THFを288ml、TEA3.5ml(25.23mmol,1.25eq)を仕込み、濁りのある薄い黄色溶液とした。そこにBoc-NMe-AEMA-TFAsalt 29.85gのメタノール溶液20重量%を滴下した。滴下とともに、徐々に溶液の濁りが濃くなった。これを室温で撹拌し、3.5時間後にTLCにて原料の消失を確認し、反応終了とした。反応液に蒸留水(280ml)と酢酸エチル(280ml)を加え、撹拌し、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出し、分離した有機層を全て合わせた。有機層を5%のNaCl aq.で2回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、固体成分を除去後、30℃で減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、不溶の固体成分をろ過後、濃縮し、黄色液体(10.2g)を得た。これを酢酸エチル(20ml)で希釈し、シリカゲルカラム(160g)に充填した。ヘプタン/酢酸エチル系の溶離液で3/1→1/1→1/2とグラジエントをかけ精製した。粗体の溶液をヘプタン/酢酸エチル=3/1で展開すると目的物のすぐ上(Rf=0.22)付近に薄いスポットが確認されたため、カラムの流出をヘプタン/酢酸エチルグラジエントとして行った。目的物のフラクションを濃縮し、黄色液体(5.20g)を得た。得られた黄色液体は酢酸エチルで希釈し、MEHQ(0.52mg,100ppm)を添加後、冷蔵保存した。
【0161】
収量5.20g、収率60.7%
【0162】
H-NMR(CDCl)400MHz δ=1.02(m.6H),1.90(s,3H),2.21(m,1H), 3.00(s,3H),3.51(m,3H),3.94(s,6H),4.30(m,2H),5.55(s,1H),6.05(s,1H),6.25(m,1H),6.90(s,1H),7.60(s,1H)
【0163】
以下に示す反応により、ポリ2-(((1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-メチルプロポキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)エチルメタクリレート(P-NMe-iPrNBC-AEMA)を合成した。
【0164】
【化37】
【0165】
50mLのナスフラスコにアルゴン下でNMe-iPrNBC-AEMA 2.45g(5.77 mmol,1.00eq.)と30分脱気処理したDMF4mlを加え、溶解させた(黄色溶液)。ここにアゾビスイソブチロニトリルAIBN 47.5mg(0.289mmol,0.05eq.)を加えた後、30分でバス温65℃まで昇温し、同温で36時間加熱撹拌した。反応の完了はNMR で反応の進行を確認し判断した。反応液を、放冷後、メタノール(60mL)にパストゥールで滴下し、20分間撹拌した。
【0166】
得られたスラリー溶液を遠心分離(10000rpm,10min)した後、上澄みを除去し、そこにメタノール(40mL)を加え、手振り撹拌後、遠心分離(10000rpm,10min)した。同様の操作をもう一度繰り返した後、得られた固体をクロロホルムに溶解した。それをメタノール(60mL)にパストゥールで滴下し、20分間撹拌した。得られたスラリー溶液を遠心分離(10000rpm,10min)した後、上澄みを除去し、そこにメタノール(40mL)を加え、手振り撹拌後、遠心分離(10000rpm,10min)した。同様の操作をもう一度繰り返した後、得られた固体を減圧乾燥(60℃/<1mmHg,16h)し、目的のP-NMe-iPrNBC-AEMAを1.89g得た。
【0167】
H-NMR(CDCl)400MHz δ=0.80-0.99(br.9H),1.79-2.18(br,3H),2.91-3.07(br,3H),3.20-3.95(br,10H),6.22(br,1H),6.94(br,1H),7.54(br,1H)
GPC 数平均分子量 Mn=9041
【0168】
下記に示すポリマー(P1)-A11を合成した。
【0169】
【化38】
【0170】
<評価>
[めっき配線の製造1]
式(P1)-A11で表される高分子化合物を含む表面処理剤を用いて基板上に成膜し、めっき配線を製造した。
【0171】
実施例1で合成した式(P1)-A11で表される高分子化合物にシクロペンタノンを加え、0.2質量%に調整し、感光性表面処理剤1を得た。
【0172】
感光性表面処理剤1を、ポリイミド基板(UBE株式会社製、製品名ユーピレックス)上にスピンコート(ミカサ株式会社製、MS-A150)1000rpm)にて塗布した。その後、100℃で20分乾燥させ、感光性表面処理剤層を成膜した。
【0173】
次に、感光性表面処理剤層を全面成膜した基板にフォトマスクを介して、波長365nm光を2000mJ/cm露光して、感光性表面処理剤層を感光させ、露光部にはアミノ基発生部を、未露光部にはアミノ基未発生部を形成した。
【0174】
次いで、無電解めっき用の触媒コロイド溶液(メルプレート アクチベーター7331、メルテックス社製)に、室温にて3分間浸漬し、アミン発生部に触媒(Pd)を付着させた。表面を水洗した後、無電解めっき液(メルプレートNI-867、メルテックス社製)に、73℃で1分間浸漬し、触媒上にニッケルリンを析出させて微細めっき配線を作製した。
【0175】
[めっき配線の製造2]
基板を石英基板(信越化学工業株式会社製、製品名VIOSIL-SQ)に変更した以外は、上記[めっき配線の製造1]に記載の方法と同様にめっき配線を製造した。
【0176】
[めっき配線の評価]
図3A図3Dに実施例でめっき配線処理を行った、ポリイミド基板及び石英基板の全体写真と、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、VHX-7000)像をそれぞれ示す。
図3Aは、ポリイミド基板及び石英基板に描画した解像性チャート全体像である。
図3Bは、石英基板に描画した解像性チャートの光学顕微鏡像である。
図3Cは、石英基板に描画したL/S=3/3~10/10umの光学顕微鏡像である。
図3Dは、石英基板に描画したL/S=1/1~8/8umの光学顕微鏡像である。
【0177】
図3A図3Dから、式(P1)-A11で表される高分子化合物を含む表面処理剤を用いると、高精細の良好なめっき配線が形成できることが、目視及び顕微鏡によって確認できた。
【0178】
<モデル化合物を用いた光分解速度定数k(s-1)の評価>
下記化合物(1)~(7)を、それぞれアセトニトリルに溶解して0.1mM溶液を調製した。
超高圧水銀灯で365nmバンドパスフィルタ及び水フィルタを介して、波長365nm、照度25mW/cmの光を5、10,15,20,25,30秒間照射し、それぞれHPLC測定した。
【0179】
【化39】
【0180】
【化40】
【0181】
HPLC測定より得られた原料のピーク面積(S:光照射前の面積、S:光照射t秒後の面積)を下記の式に代入して、原料の減少率から光分解速度定数k(s-1)を求めた。その結果を表1に示す。
【0182】
【数1】
【0183】
【表1】
【0184】
(1)~(7)の化合物において、(1)の化合物よりも(2)~(7)の化合物の方は、光分解速度が向上することが確認できた。
(1)の化合物は、式(M1)で表される化合物は、Rに相当する基が水素原子であるモデル化合物である。上記の結果から、Rが直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキル基である場合、Rに相当する基が水素原子である化合物より、ニトロベンジル基が脱離する光分解速度が向上することが確認できた。
【0185】
(2)の化合物は、式(P1)-A11で表される高分子化合物のモデル化合物である。(3)~(7)の化合物は、(2)の化合物と同等の光分解速度定数を有していた。このため、上記に例示した(M1)-1~(M1)-6の化合物や、(P1)-A2~(P1)-A6の高分子化合物を用いた場合にも、式(P1)-A11で表される高分子化合物を用いた場合と同様の効果が奏されることが十分に推察できる。
【符号の説明】
【0186】
11:基板、10a:感光性表面処理剤、10:感光性表面処理剤層、13:フォトマスク、14:アミン発生部、12:アミン未発生部、15:触媒層、16:めっき層、17:絶縁体層、18:めっき層(ソース電極)、19:めっき層(ドレイン電極)、21:半導体層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D