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特開2024-29570感光性表面処理剤、パターン形成用基板、積層体、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029570
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】感光性表面処理剤、パターン形成用基板、積層体、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240228BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240228BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20240228BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20240228BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G03F7/004 521
H01L29/78 627C
H01L21/288 E
C07F7/18 S
G03F7/004
G03F7/38 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131902
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山口 和夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 倫子
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4H049
4M104
5F110
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA16
2H196EA03
2H196HA27
2H225BA05P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC05
4H049VN01
4H049VP01
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS38
4H049VS58
4H049VU24
4H049VW01
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB09
4M104DD47
4M104DD53
4M104GG08
5F110AA16
5F110CC03
5F110EE02
5F110EE41
5F110FF01
5F110FF21
5F110GG05
5F110GG41
5F110HK02
5F110HK21
5F110HK31
5F110QQ01
(57)【要約】
【課題】感光性表面処理剤の提供。
【解決手段】下記式(M1)で表される化合物を含む、感光性表面処理剤。(式(M1)中、Rは水素原子又はtert-ブトキシカルボニル基又はエステル系保護基であり、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、mは1以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(M1)で表される化合物を含む、感光性表面処理剤。
【化1】
(式(M1)中、Rは水素原子又はtert-ブトキシカルボニル基又はエステル系保護基であり、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、mは1以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を用いて化学修飾された表面を有するパターン形成用基板。
【請求項3】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を含む積層体。
【請求項4】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を含むトランジスタ。
【請求項5】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、樹脂膜を成膜する工程と、
前記樹脂膜を脱保護し、感光性樹脂膜にする工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射する工程と、
前記所定のパターン光の照射領域の少なくとも一部の領域に対して無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項6】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、樹脂膜を成膜する工程と、
前記樹脂膜を脱保護し、感光性樹脂膜にする工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射する工程と、
前記所定のパターン光の照射領域の少なくとも一部の領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項7】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、樹脂膜を成膜する工程と、
前記樹脂膜を脱保護し、感光性樹脂膜にする工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、
前記アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項8】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、樹脂膜を成膜する工程と、
前記樹脂膜を脱保護し、感光性樹脂膜にする工程と、
前記感光性樹脂膜を塩基性溶液に浸漬する工程と、
前記塩基性溶液に浸漬した後、前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、
前記アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項9】
請求項1に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、樹脂膜を成膜する工程と、
前記樹脂膜を脱保護し、感光性樹脂膜にする工程と、
前記感光性樹脂膜を塩基性溶液に浸漬する工程と、
前記塩基性溶液に浸漬しながら、前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、
前記アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項10】
前記塩基性溶液は、水酸化テトラブチラムモニウム(TBAH)水溶液である、請求項8または9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
請求項5又は6に記載のパターン形成方法により、ソース電極、ドレイン電極、またはゲート電極のうちいずれか1以上の電極を形成する工程を含む、トランジスタの製造方法。
【請求項12】
下記式(M1)で表される化合物を含む、トランジスタ。
【化2】
(式(M1)中、Rは水素原子又はtert-ブトキシカルボニル基又はエステル系保護基であり、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、mは1以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【請求項13】
前記化合物は、少なくとも一部のニトロベンジル基が脱離してアミノ基が発生した部分を有する、請求項12に記載のトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性表面処理剤、パターン形成用基板、積層体、トランジスタ、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、集積回路、有機ELディスプレイ用デバイス等の微細デバイス等の製造において、基板上に、表面特性の異なるパターンを形成し、その表面特性の違いを利用して微細デバイスを作成する方法が提案されている。
【0003】
基板上の表面特性の違いを利用したパターン形成方法としては、たとえば、基板の一部に化学的に活性な置換基を発生させた領域を形成する方法がある。この方法により基板の一部に金属材料、有機材料又は無機材料を密着させることができる。
【0004】
基板上に金属材料を密着させ、金属膜を形成する技術として無電解めっき処理がある。例えば特許文献1は、無電解めっき処理による微細な配線を形成する技術を開示している。具体的には、特許文献1は、触媒活性化層とフォトレジストを用い、一面にめっきした状態からエッチング、またはリフトオフによる光パターニングを行うことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-2201号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、下記式(M1)で表される化合物を含む、感光性表面処理剤である。
【0007】
【化1】
(式(M1)中、Rは水素原子又はtert-ブトキシカルボニル基又はエステル系保護基であり、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、mは1以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のパターン形成方法を説明するための模式図である。
図2】本実施形態のトランジスタの製造方法を説明するための模式図である。
図3A】PET基板に上記めっき配線の製造1~4で加工したL/S=100/100、5/5の光学顕微鏡像である。
図3B】PET基板に上記めっき配線の製造3で加工したL/S=1/1~9/9umの光学顕微鏡像である。
図4A】PET基板上の樹脂膜の分子構造である。
図4B】上記めっき配線の製造5で加工したPET基板の全体像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<感光性表面処理剤>
本発明の感光性表面処理剤は、下記式(M1)で表される化合物を含む。
【0010】
【化2】
(式(M1)中、Rは水素原子又はtert-ブトキシカルボニル基又はエステル系保護基であり、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、mは1以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【0011】
式(M1)中、Rは水素原子又はtert-ブトキシカルボニル基又はエステル系保護基である。
【0012】
エステル系保護基としては、例えば、アセチル(Ac)基、ピバロイル(Pv)基、プロポキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基が挙げられる。
【0013】
水酸基を保護するための構造であれば、これらに特に限定されず、例えばメトキシメチル(MOM)、メトキシエトキシメチル(MEM)、2-テトラヒドロピラニル(THP)などのアセタール系保護基、メチル、tert-ブチル(tBu)トリチル(Tr)、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)などのエーテル系保護基、ほかにもGreene’s Protective Groups in Organic Synthesis 5th Edition(2014,John Wiley & Sons, Inc.出版)に記載の任意の保護基、および任意の脱保護条件を適用できる。
【0014】
これらの中でも安定性と、保護・脱保護の反応性の高さ、合成の簡便さなどの観点から、Rはtert-ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0015】
式(M1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0016】
式(M1)中、mは1以上の整数であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等を挙げることができる。
【0017】
Xはアルコキシ基であることが好ましい。Xのアルコキシ基としては、-O-(CH)、-O-(CH)n(CH)が挙げられる。nは、1~3の自然数である。
【0018】
式(M1)中、Rがtert-ブトキシカルボニル基である化合物を含む感光性表面処理剤を基板に塗布すると、下記に示すように、SiXが基板に密着し、樹脂膜が形成される。この樹脂膜は、ヒドロキシ基がtert-ブトキシカルボニル基(以降、式中では「Boc」と記載する場合がある。)により保護されているため、感光性が抑制されている。
【0019】
【化3】
【0020】
樹脂膜を脱保護処理することで、下記に示すようにtert-ブトキシカルボニル基が脱離し、ヒドロキシ基が発生し、感光性樹脂膜となる。
【0021】
【化4】
【0022】
得られた感光性樹脂膜に光照射すると、ニトロベンジル基が脱離して、基板表面にアミンが発生する。アミンが発生した部分には、金属材料、有機材料又は無機材料を密着させることができる。
【0023】
本実施形態の感光性表面処理剤によれば、基板表面に形成したアミン発生部に金属材料を配置することにより、フォトレジスト工程、現像工程、エッチング工程を用いることなく、基板表面に、ライン幅が5μm以下の金属パターンを形成することができる。
【0024】
【化5】
【0025】
樹脂膜の状態では感光性が抑制されているため、感光性表面処理剤を基板に塗布した後、光分解が進行することなく安定して保管することができる。本発明によれば、感光性表面処理剤を基板に塗布して保管しておき、パターン形成の直前に脱保護して使用することが可能となる。
【0026】
式(M1)中、Rがtert-ブトキシカルボニル基である化合物を含む感光性表面処理剤を使用する場合、脱保護する方法は、具体的には、塩酸、あるいはトリフルオロ酢酸などによる酸性条件下での加水分解を用いた脱保護である。
【0027】
式(M1)中、Rがエステル系保護基である化合物を含む感光性表面処理剤を使用する場合、脱保護する方法は、具体的には、酸性条件下、あるいは塩基性条件下での加水分解、あるいはヒドリド還元を用いた脱保護である。
【0028】
式(M1)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0029】
【化6】
【0030】
<化合物の製造方法>
式(M1)で表される化合物は、以下の方法により製造できる。
まず、実施例に記載の方法により、6-ブロモ-4-ヒドロキシメチル-7-ヒドロキシクマリンを合成する。
【0031】
式(M1)で表される化合物が、Rが水素原子である化合物である場合、6-ブロモ-4-ヒドロキシメチル-7-ヒドロキシクマリンにアミノシラン化合物を反応させることで、Rは水素原子である式(M1)で表される化合物を合成できる。
【0032】
式(M1)で表される化合物が、Rがtert-ブトキシカルボニル基である化合物である場合、まず、6-ブロモ-4-ヒドロキシメチル-7-ヒドロキシクマリンとtert-ブトキシカルボニル基を含む化合物とを反応させ、6-ブロモ-7-tert-ブトキシカルボニルオキシ-4-ヒドロキシメチルクマリンを合成する。
【0033】
tert-ブトキシカルボニル基を含む化合物は、例えば1-tert-ブトキシ-2-tert-ブトキシカルボニル-1,2-ジヒドロイソキノリン、ジ-tert-ブチルジカーボネート、1-tert-ブトキシカルボニル-1,2,4-トリアゾール、N-(タルト-ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、N-タルト-ブトキシカルボニリイミダゾール、tert-ブチルフェニルカーボネートである。
【0034】
6-ブロモ-7-tert-ブトキシカルボニルオキシ-4-ヒドロキシメチルクマリンにアミノシラン化合物を反応させることで、Rはtert-ブトキシカルボニル基である式(M1)で表される化合物を合成できる。
【0035】
式(M1)で表される化合物が、Rがエステル系保護基である化合物である場合、まず、6-ブロモ-4-ヒドロキシメチル-7-ヒドロキシクマリンとエステル系保護基前駆体を含む化合物とを反応させ、中間体を合成する。
【0036】
エステル系保護基を含む化合物としては、例えば塩化アセチル、無水酢酸、塩化ピバロイル、ピバル酸無水物、塩化ベンゾイル、無水安息香酸が挙げられる。
【0037】
得られた中間体にアミノシラン化合物を反応させることで、Rがエステル系保護基である式(M1)で表される化合物を合成できる。
【0038】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(M1)で表される化合物からなる。
【0039】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は溶剤を含んでいてもよい。アルコール系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系芳香族溶剤、アミン系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エーテル系溶剤など一般的な有機溶剤に溶かすことで、好適な表面処理剤として用いることができる。
【0040】
アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、n-ブチルアルコール(n-ブタノール)などが挙げられる。
【0041】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル(EAC)、酢酸ブチル(NBAC)、酢酸n-プロピル(NPAC)、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテートなどが挙げられる。
【0042】
炭化水素系芳香族溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどが挙げられる。
【0043】
アミン系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAC)が挙げられる。
【0044】
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘプタノン、アセトンなどが挙げられる。
【0045】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、メチセロソルブ、ブチセロソルブ、エチレングリコールモノt-ブチルエーテル(ETB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロエーテル系溶剤ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)などが挙げられる。
【0046】
その他の溶剤としては、塩素やフッ素を含むハロゲン系溶剤が挙げられ、例えば、クロロホルム、クロロベンゼン、フルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
有機溶剤は、公害性、溶解性、揮発性、基板や下地へのアタック性、成膜装置や成膜手法などの条件に応じて適宜選択することができる。
【0048】
下地剤と感光性表面処理剤、あるいは感光性表面処理剤の分子間での反応性を高める観点から、含まれる溶剤としてはアルコール系、エーテル系、炭化水素系溶媒が好ましく、特に炭化水素系溶媒、なかでもトルエンが好ましい。
【0049】
さらに反応性を高める観点から、成膜の際に任意の酸性あるいは塩基性化合物を含んでもよい。成膜条件に応じて適宜選択でき、とくに塩酸、酢酸、硝酸などの酸性化合物が好ましく、なかでもBocを維持したまま成膜が可能な酢酸が好ましい。
【0050】
<パターン形成方法>
本実施形態のパターン形成方法は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、樹脂膜を成膜する工程と、樹脂膜を脱保護し、感光性樹脂膜する工程と、感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える。
以下、各工程について図面を参照して説明する。
【0051】
図1(a)に示すように、基板11の上に前記本実施形態の感光性表面処理剤を塗布し、樹脂膜10aを得る。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ロールコート法、マイクログラビア法、リップコート法、インクジェット法、アプリケーター塗布、刷毛塗り等の塗布方法使用できる。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷法により塗布してもよい。
【0052】
なお、本工程においては、図1(a)に示すように、例えば熱や減圧等によって溶剤を乾燥させる処理を加えてもよい。
【0053】
樹脂膜を脱保護処理し、感光性樹脂層10を形成する。脱保護処理は、具体的には塩酸、硫酸、フッ酸、6フッ化アンチモネートあるいはトリフルオロ酢酸などによる酸性条件下での加水分解処理である。脱保護処理は液相で行ってもよく、ゲルやフィルムなどを接触させるなどして固相で処理してもよい。ゲルやフィルムなどは枚葉あるいはロール状の形態をとってもよい。
これにより、図1(b)に示すように基板11の上に感光性表面処理剤層10が形成される。
樹脂膜の成膜直後に脱保護処理してもよく、樹脂膜の保管安定性を高めるために露光直前に脱保護してもよい。
【0054】
次に、図1(c)に示すように、所定のパターンの露光領域を有するフォトマスク13を用意する。露光方法としては、フォトマスクを用いる手段に限られず、レンズやミラーなどの光学系を用いたプロジェクション露光、空間光変調素子、レーザービームなどを用いたマスクレス露光等の手段を用いることができる。なお、フォトマスク13は、感光性表面処理剤層10と接触するよう設けてもよいし、非接触となるよう設けてもよい。
【0055】
露光の際に感光性樹脂層の表面を任意の液体に浸漬しながら露光してもよく、浸漬後に露光してもよい。液体の種類は特に限定されないが、水あるいはアルコール系溶媒、ケトン系溶媒を選択できる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
酸解離定数(Ka)を高めるため塩基性化合物を添加し、任意の塩基性溶液にしてもよい。塩基性化合物の種類としては炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウム、テトラ水素化ホウ素ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、水酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)などの4級アンモニウム塩、ナトリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシドなどの金属アルコキシド、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)などの金属アミド、アルキルリチウム、アルキルアルミニウムなどの金属アルキル、ピリジン、テトラエチルアミン、DBU、DBN、イミダゾールなどの含窒素脂肪族化合物、含窒素複素環式化合物などから選択できる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
液体は、基板や下地、感光性表面処理剤層の剥離や分解・溶解が生じず、洗浄除去性が良好であり、より高いpKaが得られる液体組成が好ましく、なかでも水、アルコール系溶媒に4級アンモニウムを添加した液体が好ましい。特に水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)水溶液が好ましい。
【0058】
pKaを高める目的としては、ヒドロキシクマリンに含まれるヒドロキシ基の活性化であり、モル吸光係数の増加と光反応速度の向上である。適度な塩基性条件にすることで、感光性表面処理剤層へのダメージを与えることなく、光反応性を向上することが可能となる。
【0059】
その後、図1(c)に示すように、フォトマスク13を介して感光性表面処理剤層10にUV光を照射する。これにより、フォトマスク13の露光領域において感光性表面処理剤層10が露光される。
【0060】
その結果、図1(d)に示すように、露光部にはアミン発生部14が、未露光部にはアミン未発生部12が形成される。
【0061】
UV光は例えば、波長が365nmのi線が挙げられる。また、その露光量や露光時間は、必ずしも完全に脱保護が進行する必要はなく、一部のアミンが発生する程度でよい。
【0062】
次に、図1(e)に示すように、表面に無電解めっき用触媒を付与し、触媒層15を形成する。無電解めっき用触媒は、無電解めっき用のめっき液に含まれる金属イオンを還元する触媒であり、銀やパラジウムが挙げられる。
【0063】
アミン発生部14の表面にはアミノ基が露出している。アミノ基は、上述の無電解めっき用触媒を捕捉・還元することが可能である。そのため、アミン発生部14上のみに無電解用めっき用触媒が捕捉され、触媒層15が形成される。また、無電解めっき用触媒はアミノ基が担持可能なものを用いることができる。
【0064】
図1(f)に示すように、無電解めっき処理を行い、めっき層16を形成する。なお、めっき層16の材料としては、ニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられる。
【0065】
本工程では、基板11を無電解めっき浴に浸漬して触媒表面に金属イオンを還元し、めっき層16を析出させる。その際、アミン発生部14表面には十分な量の触媒を担持する触媒層15が形成されているため、アミン発生部14上にのみ選択的にめっき層16を析出させることができる。
【0066】
以上の工程により、前記本実施形態の感光性表面処理剤を用いて所定の基板に配線パターンを形成することが可能である。
【0067】
<トランジスタの製造方法>
さらに、上記<パターン形成方法>で得られためっき層16をゲート電極とするトランジスタの製造方法について図2を用いて説明する。
【0068】
図2(a)に示すように、上述したパターン形成方法により形成した無電解めっきパターンのめっき層16とアミン未発生部12とを覆うように、公知の方法により絶縁体層17を形成する。絶縁体層17は、例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、シリコーン樹脂等の1つ以上の樹脂を有機溶媒に溶解させた塗布液を用い、当該塗布液を塗布することにより形成してもよい。絶縁体層17を形成する領域に対応して開口部が設けられたマスクを介して塗膜に紫外線を照射することで、絶縁体層17を所望のパターンに形成することが可能である。なお、絶縁体層17を形成する前に、アミン未発生部12を必要に応じて除去してもよい。
【0069】
図2(b)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法と同様にして絶縁体層17上に感光性表面処理剤層10を形成し、ソース電極及びドレイン電極が形成される部分にアミン発生部14を形成する。
【0070】
図2(c)に示すように、上述したパターン形成方法と同様にして、アミン発生部14上に無電解めっき用触媒を担持させ、触媒層15を形成した後、無電解めっきを行うことによりめっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)を形成する。なお、めっき層18及び19の材料としてもニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられるが、めっき層16(ゲート電極)と異なる材料で形成してもよく、ニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)の表面に異なる金属、例えば無電解金めっきを行うことで、金(Au)を析出させてもよい。
【0071】
図2(d)に示すように、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に半導体層21を形成する。
【0072】
半導体層21は、例えば、TIPSペンタセン(6,13-Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)のような有機溶媒に可溶な有機半導体材料を当該有機溶媒に溶解させた溶液を作製し、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に塗布、乾燥させることにより形成してもよい。
【0073】
また、半導体層21は、上記溶液にPS(ポリスチレン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの絶縁性ポリマーを1種類以上添加し、当該絶縁性ポリマーを含む溶液を塗布、乾燥することにより形成してもよい。
【0074】
このようにして半導体層21を形成すると、半導体層21の下方(絶縁体層17側)に絶縁性ポリマーが集中して形成される。有機半導体と絶縁体層との界面にアミノ基などの極性基が存在する場合、トランジスタ特性の低下を生じる傾向にあるが、上述の絶縁性ポリマーを介して有機半導体を設ける構成とすることにより、トランジスタ特性の低下を抑制することができる。以上のようにして、トランジスタを製造することが可能である。
【0075】
上記のような方法によれば、UV露光工程において別途化学的なレジスト等を設ける必要がなく、フォトマスクのみによる簡素な工程とすることができる。従って当然ながら、レジスト層を除去する工程についても必要としない。また、アミノ基の触媒還元能により、通常必要となる触媒の活性化処理工程も省略することができ、大幅な低コスト化と時間短縮を実現しながら、高精細なパターニングが可能となる。また、ディップコート法を用いることができるため、ロール・ツー・ロール工程でも非常に相性良く利用することができる。
【0076】
またBocで保護された樹脂膜は光に対して極めて安定であり、表面処理剤の状態から成膜作業、成膜後の樹脂膜においても遮光保管やイエロールームでの作業を必要としないため、一般的な感光性材料の取り扱いと比較して大幅な作業性の向上と保管安定性の向上を実現する。感光性は発現させる脱保護処理後に得られるため、光に対して管理が必要な工程を大幅に削減でき、作業者への負担を軽減できる。
【0077】
なお、トランジスタの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トップコンタクト・ボトムゲート型、トップコンタクト・トップゲート型、ボトムコンタクト・トップゲート型のトランジスタも同様にして製造してもよい。
【0078】
<積層体>
本実施形態は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を含む積層体である。
本実施形態の積層体は、基板と金属パターンとが積層された積層体であって、パターンが形成されていない未露光部に感光性表面処理剤を含む。
【0079】
<トランジスタ>
本実施形態は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を含むトランジスタである。
本実施形態の積層体は、基板と金属パターンとが積層された積層体を有するトランジスタであって、パターンが形成されていない未露光部に感光性表面処理剤を含む。
【実施例0080】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
<実施例1>
下記の合成スキームで(M1)-11で表される化合物を得た。
まず、下記に示す反応により、6-ブロモ-4-クロロメチル-7-ヒドロキシクマリンを合成した。
【0082】
【化7】
【0083】
1Lナスフラスコに、20.0gの4-ブロモレソルシノール(106mmol,1.0eq)を入れて160mLのメタンスルホン酸(MsOH)に溶解し、26.1gのエチル4-クロロアセトアセテート(159mmol,1.5eq)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液を氷浴して480mLの冷水(MsOHの3倍)を加え、0℃で1時間撹拌した。メンブレンフィルタにてろ過、HOで洗浄、真空乾燥(湯浴60℃)し、淡茶色粉体の目的物29.5g(102mmol,96%)を得た。
【0084】
H NMR (CDOD,400MHz):δ=4.82(2H,d,J=0.8Hz)、6.42(1H,t,J=0.8Hz)、6.85(1H,s)、7.95(1H,s)
【0085】
次に、以下に示す反応により、6-ブロモ-4-ヒドロキシメチル-7-ヒドロキシクマリンを合成した。
【0086】
【化8】
【0087】
1Lナスフラスコに、26.0gの6-ブロモ-4-クロロメチル-7-ヒドロキシクマリン(89.8mmol,1.0eq)、130mLのジメチルホルムアミド(DMF)、130mLの1N HClを入れ、窒素雰囲気下、100℃で15時間撹拌した。反応溶液を氷浴して冷水390mLを加え、0℃で1時間撹拌した。メンブレンフィルタにてろ過、HOで洗浄、真空乾燥(湯浴60℃)し、淡茶色粉体の目的物14.6g(53.8mmol,60%)を得た。
【0088】
H NMR(CDOD,400 MHz):δ=4.77(2H,d,J=1.5Hz)、6.38(1H,t,J=1.5Hz)、6.84(1H,s)、7.81(1H,s)
【0089】
次に、以下に示す反応により、6-ブロモ-7-tert-ブトキシカルボニルオキシ-4-ヒドロキシメチルクマリンを合成した。
【0090】
【化9】
【0091】
100mLナスフラスコに、800mgの6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチルクマリン(2.95mmol,1.0eq)、897mgの1-tert-ブトキシ-2-tert-ブトキシカルボニル-1,2-ジヒドロイソキノリン(BBDI)(2.96mmol,1.0eq)、8mLの無水テトラヒドロフラン(THF)を入れて、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。酢酸エチル(10mL×3)、1N HCl(10mL)を加えて抽出、飽和NaHCO水溶液(10mL×1)、飽和食塩水(10mL×1)で順次洗浄、有機層を無水MgSOで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、茶色固体990mgを得た。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル100cc、直径3.0cm、高さ15cm)にて精製し(展開溶媒に懸濁してチャージ、展開溶媒クロロホルム:酢酸エチル=5:1(Rf0.29,300mL))、濃縮、真空乾燥し、白色固体の目的物835mg(2.25mmol,76%)を得た。
【0092】
H NMR(CDOD,400 MHz):δ= 1.55(9H,s)、4.59(1H,br s)、4.82(2H,d,J=1.6Hz)、6.58(1H,t,J=1.6Hz)、7.37(1H,s)、7.99(1H,s)
【0093】
次に、以下に示す反応により、6-ブロモ-7-tert-ブトキシカルボニルオキシクマリン-4-イルメチル 3-(トリエトキシシリル)プロピルカルバメート((M1)-11)を得た。
【0094】
【化10】
【0095】
200mLナスフラスコに、1.00gの6-ブロモ-7-tert-ブトキシカルボニルオキシ-4-ヒドロキシメチルクマリン(2.69mmol,1.0eq)を入れて10mLの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、0.75mLのトリエチルアミン(5.41mmol,2.0eq)、670μLの3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(2.71mmol,1.0eq)を加え、窒素雰囲気下、55℃で16時間撹拌した。エバポレータで濃縮、真空乾燥し、黄色粘体1.66gを得た。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル100cc、直径3.0cm、高さ15cm)にて精製し(クロロホルムに溶解してチャージ、展開溶媒クロロホルム:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:5:1(200mL))、濃縮、真空乾燥(湯浴50℃)後、ヘキサンでリンス、真空乾燥し、白色粉体の目的物733mg(1.19mmol,44%)を得た。
【0096】
H NMR(CDOD, 400 MHz):δ=0.58-0.66(2H,m)、1.20 (9H,t,J=7.0Hz)1.55(9H,s)、1.55-1.66(2H,m)、3.15 (2H,t,J=7.0Hz)、3.82(6H,q,J=7.0 Hz)、5.32(2H,d,J=1.2Hz)、6.48(1H,br s)、7.38(1H,s)、8.02(1H,s)
【0097】
<実施例2>
以下に示す反応により、6-ブロモ-7-ヒドロキシクマリン-4-イルメチル 3-(トリエトキシシリル)プロピルカルバメート(M1)を合成した。
【0098】
【化11】
【0099】
30 mL二口ナスフラスコに、200mgの6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチルクマリン(0.737mmol,1.0eq,)、4mLのdryTHF、パスツールでジブチル錫ジラウレート(DBTL)2滴(ca.20μL,ca.0.05eq)、365μLの3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(1.48mmol,2.0eq)を入れ、窒素雰囲気下、60℃で4時間撹拌した。エバポレータで濃縮、真空乾燥(湯浴60℃)し、茶色粘体560mgを得た。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル40cc、直径2.0cm、高さ15cm)にて精製し(クロロホルムに溶解してチャージ、展開溶媒クロロホルム:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:5:1(120mL))、濃縮、真空乾燥(湯浴50℃)後、hexaneでリンス、真空乾燥し、黄色ろう状の目的物214mg(0.412mmol,56%)を得た。
【0100】
Rf=0.60(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)
Rf=0.25(クロロホルム:酢酸エチル=20:1)
【0101】
H NMR(CDOD,400MHz):δ=0.58-0.66(2H,m)、1.20(9H, t,J=7.1Hz)、1.56-1.66(2H,m)、3.13(2H,t,J=7.0 Hz)、3.81(6H,q,J=7.1Hz)、5.27(2H,d,J=1.2Hz)、6.26(1H,t,J =1.2Hz)、6.84(1H,s)、7.84(1H,s)
【0102】
<評価>
[めっき配線の製造1]
式(M1)-11で表される化合物を含む表面処理剤を用いて基板上に成膜し、めっき配線を製造した。
【0103】
実施例1で合成した式(M1)-11で表される化合物にトルエンを加え、0.1質量%に調整し、さらに酢酸濃度1.0質量%となる割合で酢酸を添加し感光性表面処理剤1を得た。
【0104】
感光性表面処理剤1を、1.4Lガラス容器に入れ、湯浴を用いて60℃に加温した後、基板を90分間浸漬することで表面にSiOを成膜したPET基板(尾池アドバンストフィルム株式会社製、VX-50TUH)上に(M1)-11で表される化合物を化学結合させ、樹脂膜を成膜した。その後、基板をメタノールに浸漬させ28kHzの超音波を3分間照射することで、物理的に付着した化合物の除去を行い、強固な密着性を有する樹脂膜を得た。
【0105】
その後、樹脂膜を35%塩酸水溶液とメタノールの50:50混合溶液に室温30分間浸漬することで脱保護し、感光性表面処理剤層を得た。
樹脂膜を脱保護処理することで、下記に示すように式(M1)-11で表される化合物のtert-ブトキシカルボニル基が脱離し、ヒドロキシ基が発生し、感光性樹脂層を得た。
【0106】
【化12】
【0107】
次に、感光性表面処理剤層を全面成膜した基板にフォトマスクを介して、波長365nm光を250mJ/cm露光して、感光性表面処理剤層を感光させ、露光部にはアミノ基発生部を、未露光部にはアミノ基未発生部を形成した。
【0108】
このとき、基板を水酸化テトラブチラムモニウム(TBAH)0.2質量%水溶液に浸漬させた後に露光を行った。
樹脂膜を浸漬することで、式(M1)-11で表される化合物のヒドロキシ基が塩基により活性化され、モル吸光係数の増加とともに光反応速度が向上し、高感度な感光性表面処理剤層を得た。
【0109】
次いで、水洗後、無電解めっき用の触媒コロイド溶液(メルプレート アクチベーター7331、メルテックス社製)に、室温にて3分間浸漬し、アミン発生部に触媒(Pd)を付着させた。表面を水洗した後、無電解めっき液(メルプレートNI-867、メルテックス社製)に、73℃で1分間浸漬し、触媒上にニッケルリンを析出させて微細めっき配線を作製した。
【0110】
[めっき配線の製造2]
露光量を500mJ/cmに変更した以外は、上記[めっき配線の製造1]に記載の方法と同様にめっき配線を作製した。
【0111】
[めっき配線の製造3]
露光量を1000mJ/cmに変更した以外は、上記[めっき配線の製造1]に記載の方法と同様にめっき配線を作製した。
【0112】
[めっき配線の製造4]
露光量を2000mJ/cmに変更した以外は、上記[めっき配線の製造1]に記載の方法と同様にめっき配線を作製した。
【0113】
[めっき配線の製造5]
樹脂膜を脱保護処理行わず、乾燥基板のまま波長365nm光を2000mJ/cm露光に変更した以外は、上記[めっき配線の製造1]に記載の方法と同様にめっき配線を作製した。
【0114】
[めっき配線の評価]
図3A図3Bに実施例でめっき配線処理を行った、PET基板の光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、VHX-7000)像をそれぞれ示す。
図3Aは、PET基板に上記めっき配線の製造1~4で加工したL/S=100/100、5/5の光学顕微鏡像である。
図3Bは、PET基板に上記めっき配線の製造3で加工したL/S=1/1~9/9umの光学顕微鏡像である。
【0115】
図3A及び図3Bから、高精細の良好なめっき配線が形成されていることが、目視及び顕微鏡によって確認できた。
【0116】
図4A及び図4Bに実施例で樹脂膜に対し露光、めっき配線処理を行った結果を示す。
図4Aは、PET基板上の樹脂膜の分子構造である。
図4Bは、上記めっき配線の製造5で加工したPET基板の全体像である。
図4A及び図4Bから、波長365nm光を2000mJ/cm照射してもなお、脱保護されることなく意図しないアミンの発生を抑制できており、樹脂膜の状態であれば意図せずアミンが生成されることがない。すなわち光安定性に優れ遮光保管する必要がないことが確認できた。
【符号の説明】
【0117】
11:基板、10a:感光性表面処理剤、10:感光性表面処理剤層、13:フォトマスク、14:アミノ基発生部、12:アミノ基未発生部、15:触媒層、16:めっき層、17:絶縁体層、18:めっき層(ソース電極)、19:めっき層(ドレイン電極)、21:半導体層
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B