(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029733
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】液体処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20240228BHJP
E03F 1/00 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
C02F11/00 A ZAB
E03F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184728
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2022131933
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 登子
【テーマコード(参考)】
2D063
4D059
【Fターム(参考)】
2D063AA15
2D063DB04
2D063DB10
4D059AA09
4D059AA30
4D059BE04
4D059BE14
4D059BE51
4D059CB01
(57)【要約】
【課題】液体を連続的に吸引することができるコンパクトな液体処理装置を提案する。
【解決手段】液体を吸引して収集するための液体処理システムが提案され、前記液体処理システムは、真空発生モジュールと、前記真空発生モジュールに接続され、前記真空発生モジュールによって生じる負圧により液体が吸い込まれる真空タンクと、前記真空発生モジュールから前記真空タンク内に延び、第1位置で前記真空タンク内に開口する第1開口、および、前記第1位置よりも高い位置である第2位置で前記真空タンク内に開口する第2開口を有する吸気吸水管と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸引して収集するための液体処理システムであって、
真空発生モジュールと、
前記真空発生モジュールに接続され、前記真空発生モジュールによって生じる負圧により液体が吸い込まれる真空タンクと、
前記真空発生モジュールから前記真空タンク内に延び、第1位置で前記真空タンク内に開口する第1開口、および、前記第1位置よりも高い位置である第2位置で前記真空タンク内に開口する第2開口を有する吸気吸水管と、
を備える液体処理システム。
【請求項2】
前記第1開口は、第1寸法の開口であり、
前記第2開口は、前記第1寸法よりも小さい第2寸法の開口である、
請求項1に記載の液体処理システム。
【請求項3】
前記第1開口は、水平方向、または水平方向よりも鉛直下方に開口しており、
前記第2開口は、水平方向、または水平方向よりも鉛直上方に開口している、
請求項1に記載の液体処理システム。
【請求項4】
前記第1位置は、前記真空タンクの中央よりも下方であり、
前記第2位置は、前記真空タンクの中央よりも上方である、
請求項1に記載の液体処理システム。
【請求項5】
前記真空発生モジュールは、圧縮された流体をノズルから送出するコンプレッサーと、前記圧縮された流体が流れるディフューザーと、を有し、
前記吸気吸水管は、前記ディフューザーの吸い込み口に連結される、
請求項1に記載の液体処理システム。
【請求項6】
前記ディフューザーの吐き出し口に接続される排水タンクを備える、請求項5に記載の液体処理システム。
【請求項7】
前記排水タンクに溜められた液体を噴射口から噴射可能な噴射装置を備える、請求項6に記載の液体処理システム。
【請求項8】
前記噴射装置は、前記真空発生モジュールによる動力を用いて前記液体を噴射するように構成される、請求項7に記載の液体処理システム。
【請求項9】
圧縮された流体をノズルから送出するコンプレッサーと、
前記圧縮された流体が流れるディフューザーと、
を備え、
前記ディフューザーの吸い込み口は、前記真空タンクの底部または側部に接続される、
請求項1に記載の液体処理システム。
【請求項10】
前記ディフューザーの吐き出し口に接続される排水タンクを備える、請求項9に記載の液体処理システム。
【請求項11】
前記液体に含まれる固体物を回収するための回収タンクと、
前記真空タンクと前記回収タンクとを接続する連結管と、
前記回収タンクに接続され、液体を吸引するための吸引口を有する吸い込み管と、
を備え、
前記吸引口から吸引された液体が、前記回収タンクと前記連結管とを介して前記真空タンクに吸引される、
請求項1から9の何れか1項に記載の液体処理システム。
【請求項12】
前記回収タンクは、第1の回収タンクと第2の回収タンクとを含み、
前記連結管は、前記真空タンクと前記第1の回収タンクとを接続する第1の連結管と、前記真空タンクと前記第2の回収タンクとを接続する第2の連結管と、を含み、
前記第1および第2の連結管のそれぞれには、当該第1および第2の連結管を開閉可能な通水弁が設けられ、
前記吸気吸水管は、前記第2開口を開閉可能な通気弁を有する、
請求項11に記載の液体処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水害時の泥水処理などに好適に使用される、液体を吸引するための液体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲリラ豪雨などの突発的な豪雨または大型台風による河川氾濫によって生じる浸水被害が増加している。河川氾濫では、大量の泥水が住宅地に押し寄せ、その泥水処理が社会問題となっている。河川水位が下がって水が引いた後も、浸水箇所には、大量の水分を含んだ泥水が残る。特に住宅地域の浸水箇所では、水が引いた後の泥水の除去作業を、まず地域住民とボランティアなどがスコップなどを用いて手作業で行う場合が多い。水害直後の水分を多く含んだ泥水を、スコップなどですくい取ることは難しい。従って、泥水を土のう袋などに集める作業の作業性は悪く、効率が低い。また、泥水が集められた土のう袋は重いので、その扱いには重労働を要する。
【0003】
このように、人力での泥水除去作業は、長時間にわたる重労働となるので被災者の負担が大きい。
【0004】
また、泥水は、時間が経つと水分が抜けて、ある程度乾燥した状態になる。しかし、スコップ作業の際、乾燥した泥が飛散する。これは、乾燥した泥に、水道水などの水を散布することによって軽減できる。しかし、被災地では、断水および/または停電している場合が多い。一般的に停電の復旧は早いが、上下水の断水は、復旧にかなりの時間を要する。断水が復旧するまで水道水を使用することはできないので、作業者は、スコップ作業を作業性の悪い状態で長時間行わざるを得ない。
【0005】
また、住宅の床上浸水または床下浸水の復旧には、床下に溜まった泥水を除去する必要がある。現状では、床下の泥水を除去する作業は、作業者が床下に潜りこんで手作業することにより行われているので、大変な重労働となっている。床下の泥水が乾燥すると、作業はさらに困難になる。
【0006】
一方、泥水の除去作業に、吸引装置などの機械的な手段を使用することも考えられるが、大掛かりな設備は、機動性が問題となる。例えば、大型の作業車両で泥水除去作業を行う場合、被災地へのアクセスが困難な場合がある。災害後は、幹線道路が泥やゴミでおおわれているので、大型の作業車両は、住宅地まで入ってくることができない。大型の作業車両で住宅地の泥水除去を行うためには、まず、大型車両が住宅地まで移動できるように、幹線道路や住宅周辺道路の泥水除去作業を行う必要がある。
【0007】
既存の吸引装置の構成は、浸水被害に対応するのに、作業性、作業効率及び機動性などの面において不十分である。例えば、特許文献1は、圧縮空気を利用して、固体と液体を吸引する回収装置を記載している。この装置では、回収後の液体と固体は金網を通して互いに分離され、分離後の液体は、自然流下により装置から排出される。特許文献1は、切粉を含む加工用切削液の回収を企図している。分離後の固体を装置から取り出す具体的な方法は、特許文献1に記載されていない。
【0008】
特許文献2は、土木工事または建築工事で発生する汚泥などの汚泥物質を、脱水する装置を記載する。具体的には、特許文献2は、筒内の網袋と濾布上に投入された泥状物質から、真空吸引によって水を分離する装置を記載している。分離された水は、下水へ放流される。分離後の泥は、筒ごと吊り上げられるか、または網袋および濾布と共に筒から吊り
上げられる。
【0009】
また、特許文献3は、工事現場用の掃除機を記載している。具体的には、特許文献3は、メッシュ袋内に泥水を吸引した後、泥水を泥土と水に分離する装置を記載している。この装置は、分離後の水を排出するための専用の水中ポンプと真空ブロアを必要としている。分離後の泥土は、メッシュ袋ごと装置から取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-357767号公報
【特許文献2】特開平10-15598号公報
【特許文献3】実用新案登録第3211893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した泥水除去作業では、多量の泥水の除去が必要とされる。しかしながら、既存の吸引装置の構成は、泥水除去作業において泥水を連続的に吸引するために改良の余地がある。例えば、特許文献1に記載の装置では、分離後の液体は自然流下により装置から排出され、液体を回収するための容器の設置または方法に制約が伴う。また、特許文献2では、分離された水の下水への具体的な放流方法が開示されていない。さらに、特許文献3では、ポンプタンク内に排水用水中ポンプが設けられており、水を連続的に吸引して排出するには吸引装置と水中ポンプとのそれぞれに駆動源が必要とされる。また、タンク内に水中ポンプが配置されるため、装置が大型になる。こうした課題は、泥土などの固体物をあまり含まない雨水などの液体を回収する作業にも同様に存在する。
【0012】
以上の実情の少なくとも一部に鑑みて、本願は、液体を連続的に吸引することができるコンパクトな液体処理システムを提案することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態によれば、液体を吸引して収集するための液体処理システムが提案され、かかる液体処理システムは、真空発生モジュールと、前記真空発生モジュールに接続され、前記真空発生モジュールによって生じる負圧により液体が吸い込まれる真空タンクと、前記真空発生モジュールから前記真空タンク内に延び、第1位置で前記真空タンク内に開口する第1開口と、前記第1位置よりも高い位置である第2位置で前記真空タンク内に開口する第2開口と、を有する吸気吸水管と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態を適用可能な泥水処理システムの全体概要を示す図である。
【
図2】
図1に示す泥水処理システムの一部の構成をより詳細に示す模式図である。
【
図3】第2実施形態の泥水処理システムの構成概要を模式的に示す図である。
【
図4】第2実施形態の泥水処理システムの構成概要を模式的に示す図である。
【
図5】第2実施形態の泥水処理システムの構成概要を模式的に示す図である。
【
図6】第3実施形態の液体処理システムの構成概要を模式的に示す図である。
【
図7】変形例の泥水処理システムの
図2に対応する構成を示す図である。
【
図8】第4実施形態の泥水処理システムの
図2に対応する構成の一例を示す図である。
【
図9】第4実施形態の泥水処理システムの
図2に対応する構成の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも一例を示すものであって、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。また、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における泥水処理システム(以下、システム)100の全体概要を示す図である。システム100は、液体処理システムの一実施形態に当たる。システム100は、浸水被害を受けた被災地に、泥水除去作業を行うために利用することができる。
図1に示すように、システム100は、負圧源としての真空発生モジュール50、真空タンク40、回収タンク20、排水タンク70、および、噴射装置80を備えている。
【0017】
真空発生モジュール50は、真空タンク40内に負圧を発生させられるように構成されている。本実施形態では、真空発生モジュール50は、コンプレッサー106とディフューザー54とを備え、コンプレッサー106からの圧縮流体(例えば空気)をノズルからディフューザー54に放出することで真空タンク40内に負圧を発生させるエジェクター方式が採用される。ただし、真空発生モジュール50としては、エジェクター方式に限定されず、真空ポンプなどが用いられてもよい。
【0018】
真空タンク40は、真空発生モジュール50に連結されて内部に負圧が発生させられる。真空タンク40には、連結管104を介して回収タンク20が接続されており、連結管104を介して回収タンク20の内部に真空タンク40内の負圧を作用させることができる。回収タンク20には、吸い込み管102が連結されており、吸い込み管102の吸い込み口を通して泥水が吸引される。回収タンク20は、吸引された泥水に含まれる泥土(固体物)を回収するように構成されている。泥土が取り除かれた泥水は、回収タンク20から連結管104を介して真空タンク40内に吸引される。連結管104は一例として回収タンク20の下方(下面または下方の側面)と真空タンク40の上方(上面または上方の側面)とに接続されることが好ましい。
【0019】
真空タンク40の内部には、吸気吸水管60が設けられている。吸気吸水管60は真空発生モジュール50の吸い込み口に連結されている。吸気吸水管60に関しては、詳しくは後述する。真空発生モジュール50の吐き出し口は、排気排水管108を介して排水タンク70に接続されている。なお、本実施形態では、真空発生モジュール50によって負圧が発生されると、真空タンク40および回収タンク20の内部は負圧となる。一方、排水タンク70は、外部に開放されており、真空発生モジュール50の作動にかかわらず内部は約外気圧となる。なお、システム100は、排水タンク70を備えなくてもよく、排気排水管108は下水などに接続されてもよい。
【0020】
噴射装置80は、排水タンク70に溜められた液体を噴射口80aから噴射できるように構成されている。噴射装置80は、システム100の使用者によって噴射/停止できるように構成されることが好ましい。これにより、使用者は、例えば泥水除去作業を行う場所に噴射口80aを向けて液体を噴射し、固まった泥土を除去したり泥水を集めたりして泥水除去の作業効率の向上を図ることができる。噴射装置80は、一例として、真空発生モジュール50による動力を用いて液体を噴射するように構成される。本実施形態では、噴射装置80は、コンプレッサー106による圧縮流体を利用して液体を噴射口80aから噴射できるように構成される。ただし、こうした例に限定されず、システム100は、噴射装置80のための動力源を更に備えてもよい。また、システム100は、噴射装置80を備えなくてもよい。
【0021】
こうしたシステム100では、真空発生モジュール50によって発生される負圧を利用して、吸い込み管102の吸い込み口から回収タンク20に泥水が吸引される。回収タンク20では泥水に含まれる泥土が分離されて回収され、水分および細かい泥土が連結管104を通って真空タンク40内に吸引される。真空タンク40内に溜められた液体は、吸気吸水管60、真空発生モジュール50、及び、排気排水管108を通じて排水タンク70に排出される。こうしたシステム100により、泥水除去作業を省力化することができる。また、泥水除去作業を長時間にわたって連続的に行うことができる。
【0022】
また、システム100は、機動性に優れる。例えば、回収タンク20、真空タンク40、及び排水タンク70は、比較的コンパクトな構成とすることができ、被災地まで比較的容易に搬送し、現場に設置することができる。また、回収タンク20、真空タンク40、及び排水タンク70は、必要に応じて、それぞれ、別々の小型車両で搬送されてもよい。これにより、比較的迅速に被災地にアクセスすることができる。
【0023】
図2は、
図1に示す泥水処理システムの一部の構成をより詳細に示す模式図である。
図2では、主に、真空発生モジュール50、真空タンク40、及び吸気吸水管60が示されている。
【0024】
図2に示す例では、真空発生モジュール50は、エジェクター方式が採用されている。図示するように、真空発生モジュール50は、コンプレッサー106と、コンプレッサー106からの圧縮流体が供給されるノズル52と、ディフューザー54と、を備える。一例として、ノズル52およびディフューザー54は、真空タンク40の上部に取り付けられる。ただし、こうした例に限定されず、ノズル52およびディフューザー54は、一例として真空タンク40の側面などに取り付けられてもよい。真空発生モジュール50では、コンプレッサー106からの圧縮流体をノズル52からディフューザー54へと流入させることによって負圧を発生させることができる。
【0025】
吸気吸水管60は、真空発生モジュール50の吸い込み口(
図2中下側)に接続され、真空タンク40内に延在する。吸気吸水管60は、一例として、金属または樹脂などの剛性の高い材料で形成される。本実施形態では、吸気吸水管60は、上端がディフューザー54と真空タンク40の上面とに連結され、下端が真空タンク40内に位置する。ただし、吸気吸水管60は、ディフューザー54と一体に形成されるなど、真空発生モジュール50と一体に構成されてもよい。または、吸気吸水管60は、真空タンク40と一体に構成されてもよい。
【0026】
図2に示すように、吸気吸水管60は、真空タンク40内に開口する吸水口(第1開口)62および吸気口(第2開口)64を有する。吸水口62は、真空タンク40内における比較的低い第1位置に形成されており、吸気口64は、真空タンク40内における比較的高い第2位置に形成されている。つまり、吸気口64は、吸水口62よりも高い位置に形成されている。一例として、吸水口62は、真空タンク40の中央よりも低い位置に形成され、吸気口64は、真空タンク40の中央よりも低い位置に形成されることが好ましい。
【0027】
また、
図2に示す例では、吸気口64は、吸水口62よりも小さい寸法とされる。ここで、吸気口64および吸水口62は、一例として円形の開口であるが、多角形など任意の形状であってもよい。本実施形態では、「寸法」は、開口が円形である場合には、直径または半径を意味する。また、「寸法」は、開口が多角形である場合には、一辺の長さ、または中心を通る開口幅において最小となる開口幅を意味する。あるいは、開口の寸法は、開口面積と等価な面積を有する円の直径で定義することもできる。吸水口62の寸法は、
一例として吸気口64の約1.2倍、1.5倍、2倍程度とすることができる。
【0028】
さらに、
図2に示す例では、吸水口62は、吸気吸水管60の下端に形成され、鉛直下方を向いて開口している。また、吸気口64は、吸気吸水管60の側面にエルボ管が接続されて形成され、鉛直上方を向いて開口している。限定するものではないが、吸水口62は、水平方向、または水平方向よりも鉛直下方に開口することが好ましく、吸気口64は、水平方向、または水平方向よりも鉛直上方に開口することが好ましい。
【0029】
こうした吸気吸水管60が備えられたシステム100の動作について説明する。真空発生モジュール50が作動すると、真空タンク40内の泥水が少ないときには、吸水口62および吸気口64から真空タンク40内の空気が吸い込まれ、排気排水管108を通じて排水タンク70に空気が吐き出される。真空タンク40内の負圧は、連結管104を介して回収タンク20および吸い込み管102に作用する。これにより、使用者は、吸い込み管102を通じて回収タンク20および真空タンク40に泥水を吸い込むことができる。真空タンク40内の泥水の水位が吸気吸水管60の吸水口62に至ると、吸水口62から泥水が吸い込まれると共に吸気口64から真空タンク40内の空気が吸い込まれ、排気排水管108を通じて空気および泥水が排水タンク70に吐き出される。このように吸気吸水管60を備えることにより、真空タンク40内に吸引される泥水(液体)を、吸気吸水管60を通じて排水タンク70に排水することができる。なお、排水タンク70は外部に開放されているため、排水タンク70が満杯になった場合には容易に排水タンク70を交換することができ、真空タンク40内に吸引される泥水(液体)を連続的に排水することができる。
【0030】
<第2実施形態>
図3~
図5は、第2実施形態の泥水処理システム100Aの構成概要を模式的に示す図である。第2実施形態の泥水処理システム100A(以下、「システム100A」ともいう)は、上記した泥水処理システム100と概ね同一であり、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、
図3~
図5では、排水タンク70の図示を省略している。第2実施形態の泥水処理システム100Aの真空タンク40Aには、通水弁105A,105Bによって開閉可能な2つの連結管(第1の連結管、第2の連結管)104A,104Bが取り付けられており、真空タンク40Aは、2つの回収タンク(第1の回収タンク、第2の回収タンク)20A,20Bを接続可能となっている。2つの回収タンク20A,20Bのそれぞれには、吸い込み管102A,102Bが取り付けられている。また、第2実施形態の吸気吸水管60には、吸気口(第2開口)64を開閉可能な通気弁65が設けられている。通水弁105A,105B、および通気弁65は、システム100Aの使用者が操作可能なように構成される。なお、
図3~
図5に示す例では、通気弁65は、真空タンク40Aの内部に設けられているが、こうした例に限定されず、通気弁65は、真空タンク40Aの外部に設けられてもよい。この場合には、吸気吸水管60は、吸気吸水管60本体に接続されて真空タンク40Aの外部を通って真空タンク40A内に吸気口64を画定する分岐管(図示せず)を有し、通気弁65は、分岐管に設けられるものとしてもよい。通水弁105A,105B、および通気弁65は、公知の任意の開閉弁を採用することができ、手動の開閉弁であってもよいし、電動の開閉弁などであってもよい。
【0031】
こうした第2実施形態のシステム100Aでは、2つの回収タンク20A,20Bの切り替えを伴って、泥水除去作業を行うことができる。
図3~
図5を参照して、システム100Aにおける回収タンク20A,20Bの切替時処理を説明する。ここで、
図3~
図5では、通水弁105A,105Bおよび通気弁65によって流路が閉じられているときには弁を黒塗りで示しており、流路が開かれているときには弁を白塗りで示している。
【0032】
図3に示すように、システム100Aは、真空タンク40Aに接続された一方の連結管104Aを開いて他方の連結管104Bを閉じることにより、一方の連結管104Aに接続された回収タンク20Aを利用して泥水除去作業を行うことができる。これにより、回収タンク20Aに泥水に含まれる固体物(泥土など)が回収され、真空タンク40Aに泥水が吸引される。また、このときには、通気弁65を開いておくことで、上記したように真空タンク40A内の泥水と空気とが吸気吸水管60を通じて排水タンク70(
図3では不図示)に送られる。なお、真空タンク40A内の泥水の水位が低いほど吸気吸水管60を通じて気体が多く排出され、真空タンク40A内の泥水の水位が高いほど吸気吸水管60を通じて液体が多く排出される。
【0033】
続いて、
図4に示すように、泥水除去作業に伴って回収タンク20A内の泥土量が多くなって回収タンク20A,20Bを切り替えるときには、使用者は、吸気吸水管60の通気弁65を閉じる。これにより、吸気口64から空気が吸入されることが防がれ、真空タンク40A内の泥水を積極的に排水タンク70に排出することができる。なお、回収タンク20Aには回収タンク20Aの内部と外部とを連通する排気弁(図示せず)が設けられるものとし、真空タンク40A内の泥水を排出するときには、回収タンク20Aの排気弁を開くものとしてもよい。
【0034】
そして、
図5に示すように、連結管104Aを閉じて連結管104Bを開くことにより、真空タンク40Aに連通する回収タンクを、回収タンク20Aから回収タンク20Bへと切り替えることができる。回収タンク20Aと真空タンク40Aとの流体接続は解除されており、使用者は、回収タンク20A内に溜められた泥土を外部に持ち出すなどして容易に処理することができる。また、真空タンク40Aには、回収タンク20Bが流体接続されており、回収タンク20Bを利用して継続して泥水除去作業を行うことができる。これにより、回収タンク20Aを用いた泥水除去作業と同様に、泥水に含まれる固体物が回収タンク20Bに回収される。また、このときには、通気弁65を開くことにより、真空タンク40A内の泥水と空気とが吸気吸水管60を通じて排水タンク70に排水される。
【0035】
以上説明したように、第2実施形態の真空タンク40Aには、2つの連結管104A,104Bを介して2つの回収タンク20A,20Bが接続されており、2つの回収タンク20A,20Bを切り替えながら泥水除去作業を行うことができる。なお、上記したように、回収タンク20A,20Bのそれぞれには、回収タンク20A,20Bの内部と外部とを連通する排気弁が設けられてもよい。また、通水弁105A,105Bおよび通気弁65を開閉するタイミングは、上記した例に限定されず、システム100Aの使用状態に応じて使用者が適宜行うものとすればよい。
【0036】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の液体処理システム100Bの構成概要を模式的に示す図である。第3実施形態の液体処理システム100B(以下、「システム100B」ともいう)は、上記した泥水処理システム100と概ね同一であり、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。システム100Bの真空タンク40Bは、連結管104を介して回収タンク20が接続されるのに代えて、吸い込み管102が接続されている。つまり、システム100Bは、上記したシステム100と異なり、回収タンク20を備えていない。
【0037】
システム100Bでは、吸い込み管102から吸い込まれた液体が、真空タンク40に直接に吸引される。また、真空タンク40には、上記した実施形態と同様に吸気吸水管60が設けられており、真空タンク40内に吸引された液体を、吸気吸水管60を通じて排水タンク70に排出することができる。こうした第3実施形態のシステム100Bは、一例として、雨水など、あまり固体物が含まれていない液体、またはまったく固体物が含ま
れていない液体を除去する場合に好適に利用することができる。
【0038】
<変形例>
図7は、変形例の泥水処理システムの
図2に対応する構成を示す図である。
図7に示すように、吸気吸水管60の吸気口64(吸気口64A)は、吸気吸水管60の本体の側面に空けられた開口であってもよい。また、吸気吸水管60の吸気口64(吸気口64B)は、真空タンク40の中央より低い位置から中央より高い位置へと延びる接続配管により形成されてもよい。また、吸気吸水管60は、複数の吸水口62を有してもよいし、複数の吸気口64を有してもよい。
【0039】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の泥処理システムの
図2に対応する構成の一例を示す図である。第4実施形態の泥処理システムにおける真空タンク40は、吸気吸水管60に加えて、真空タンク40の底部に接続された排水管110から水を排出することができるように構成されている。排水管110には、ディフューザー154が設けられており、ディフューザー154の内部には、圧縮流体が供給されるノズル152が配置されている。ノズル152は、圧縮流体を供給するコンプレッサー106に接続されており、真空タンク40から離れる方向にディフューザー154内部に圧縮流体を流入させるように構成されている。換言すれば、ディフューザー154の吸い込み口が真空タンク40の底部に接続されている。なお、
図8に示す例では、コンプレッサー106は、真空発生モジュール50におけるコンプレッサー106を利用するものとしているが、こうした例には限定されない。また、真空発生モジュール50におけるコンプレッサー106は、ノズル52とノズル152との一方のみを選択して圧縮流体を供給できるように構成されてもよいし、ノズル52及びノズル152の両方に一括して圧縮流体を供給するように構成されてもよい。そして、第4実施形態の真空タンク40では、ノズル152からディフューザー154へと圧縮流体を流入させることによって、真空タンク40に吸引される泥水(液体)を、排水管110を通じて排出することができる。このように、第4実施形態の泥処理システムでは、真空タンク40に吸引される液体を、吸気吸水管60と排水管110とのそれぞれから外部に排出することができ、より好適に液体を連続的に吸引することが可能になる。なお、排水管110は、排気排水管108と共に排水タンク70に接続されるとよい。排水管110は、排気排水管108に接続されて統合されてもよいし、排気排水管108とは別に排水タンク70に接続されてもよい。コンプレッサーからノズル152への圧縮空気管に流量調整弁(図示せず)が設けられてもよい。また、排水管110には、手動または電動の止水弁(図示せず)が設けられてもよい。さらに、
図8に示す例では、排水管110は、真空タンク40に対して、吸気吸水管60の吸水口62の真下に接続されている。しかしながら、こうした例に限定されず、排水管110は、真空タンク40に対して、鉛直方向に見て吸水口62とは異なる位置に接続されてもよい。
【0040】
図9は、第4実施形態の泥処理システムの
図2に対応する構成の別の一例を示す図である。
図8に示す例では、排水管110(ディフューザー154)は、真空タンク40の底部に取り付けられるものとした。これに代えて、
図9に示す例では、排水管110(ディフューザー154)は、真空タンク40の側部(側面)に取り付けられている。こうした例においても、
図8に示す例と同様の機能を奏することができる。なお、排水管110が真空タンク40の側部に取り付けられる場合には、真空タンク40の下端部、または下端部近傍に取り付けられることが好ましい。
【0041】
本発明は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、液体を吸引して収集するための液体処理システムが提案され、前記液体処理システムは、真空発生モジュールと、前記真空発生モジュールに接続され、前記真空発生モジュールによって生じる負圧により液体が吸い込まれる真空タンクと
、前記真空発生モジュールから前記真空タンク内に延び、第1位置で前記真空タンク内に開口する第1開口、および、前記第1位置よりも高い位置である第2位置で前記真空タンク内に開口する第2開口を有する吸気吸水管と、を備える。形態1によれば、液体を連続的に吸引することができるコンパクトな収集タンク装置を提供することができる。
【0042】
[形態2]形態2によれば、形態1において、前記第1開口は、第1寸法の開口であり、前記第2開口は、前記第1寸法よりも小さい第2寸法の開口である。形態2によれば、吸気吸水管により好適に気体と液体とを吸い込むことができる。
【0043】
[形態3]形態3によれば、形態1または2において、前記第1開口は、水平方向、または水平方向よりも鉛直下方に開口しており、前記第2開口は、水平方向、または水平方向よりも鉛直上方に開口している。形態3によれば、吸気吸水管により好適に気体と液体とを吸い込むことができる。
【0044】
[形態4]形態4によれば、形態1から3において、前記第1位置は、前記真空タンクの中央よりも下方であり、前記第2位置は、前記真空タンクの中央よりも上方である。形態4によれば、吸気吸水管により好適に気体と液体とを吸い込むことができる。
【0045】
[形態5]形態5によれば、形態1から4において、前記真空発生モジュールは、圧縮された流体をノズルから送出するコンプレッサーと、前記圧縮された流体が流れるディフューザーと、を有し、前記吸気吸水管は、前記ディフューザーの吸い込み口に連結される。
【0046】
[形態6]形態6によれば、形態5において、前記ディフューザーの吐出し口に接続される排水タンクを備える。形態6によれば、排水タンクに液体を溜めることができる。
【0047】
[形態7]形態7によれば、形態6において、前記排水タンクに溜められた液体を噴射口から噴射可能な噴射装置を備える。形態7によれば、例えば液体を吸い込む場所に液体を噴射することができる。
【0048】
[形態8]形態8によれば、形態7において、前記噴射装置は、前記真空発生モジュールによる動力を用いて前記液体を噴射するように構成される。
【0049】
[形態9]形態9によれば、形態1から8において、圧縮された流体をノズルから送出するコンプレッサーと、前記圧縮された流体が流れるディフューザーと、を備え、前記ディフューザーの吸い込み口は、前記真空タンクの底部または側部に接続される。形態9によれば、真空タンクの底部または側部に接続されたディフューザーによって排水することができる。
【0050】
[形態10]形態10によれば、形態9において、前記ディフューザーの吐き出し口に接続される排水タンクを備える。形態9によれば、排水タンクに液体を溜めることができる。
【0051】
[形態11]形態11によれば、形態1から10において、前記液体に含まれる固体物を回収するための回収タンクと、前記真空タンクと前記回収タンクとを接続する連結管と、前記回収タンクに接続され、液体を吸引するための吸引口を有する吸い込み管と、を備え、前記吸引口から吸引された液体が、前記回収タンクと前記連結管とを介して前記真空タンクに吸引される。形態11によれば、回収タンクに固体物を回収して、真空タンクに液体を吸引することができる。
【0052】
[形態12]形態12によれば、形態11において、前記回収タンクは、第1の回収タンクと第2の回収タンクとを含み、前記連結管は、前記真空タンクと前記第1の回収タンクとを接続する第1の連結管と、前記真空タンクと前記第2の回収タンクとを接続する第2の連結管と、を含み、前記第1および第2の連結管のそれぞれには、当該第1および第2の連結管を開閉可能な通水弁が設けられ、前記吸気吸水管は、前記第2開口を開閉可能な通気弁を有する。形態12によれば、第1および第2の回収タンクを切り替えながら液体を吸引することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。一例として、第1および第3実施形態のシステム100,100Bにおいても、吸気吸水管60に通気弁が設けられてもよいし、第1実施形態のシステム100において連結管104に通水弁が設けられてもよい。また、システム100において回収タンク20に排気弁が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
20,20A,20B…回収タンク
40,40A…真空タンク
50…真空発生モジュール
52…ノズル
54…ディフューザー
60…吸気吸水管
62…吸水口
64,64A,64B…吸気口
65…通気弁
70…排水タンク
80…噴射装置
80a…噴射口
100,100A…泥水処理システム(液体処理システム)
100B…液体処理システム
102,102A,102B…吸い込み管
104,104A,104B…連結管
105A,105B…通水弁
106…コンプレッサー
108…排気排水管