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  • 特開-グラウンド構造及びその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029753
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】グラウンド構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20240228BHJP
   E01C 5/06 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E01C13/08
E01C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128998
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022131756
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】新見 龍男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘義
(72)【発明者】
【氏名】佃 美伸
(72)【発明者】
【氏名】黒田 高章
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA01
2D051AF03
2D051DA02
2D051DA05
2D051DC05
2D051HA01
2D051HA06
2D051HA08
(57)【要約】
【解決手段】 グラウンド構造は、配列されたコンクリートブロックから成る基盤と、基盤に固定された人工芝とから成る。コンクリートブロックはセメントと砂と無機保水材とを含み、JIS A 5371に準拠して測定した透水係数が1.0×10-4m/s以上で10.0×10-4m/s以下、かつJIS A 5371に準拠して測定した保水量が0.10g/cm以上で0.40g/cm以下である。人工芝は、合成樹脂製で通水孔を有する基布と、基布に固定された合成樹脂パイルとから成る。
【効果】 日射による温度上昇が少ないグラウンド構造を提供する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列されたコンクリートブロックから成る基盤と、基盤に固定された人工芝から成るグランド構造であり、
コンクリートブロックは、セメントと砂と無機保水材とを含有し、JIS A 5371に準拠して測定した透水係数が1.0×10-4m/s以上で10.0×10-4m/s以下であり、かつJIS A 5371に準拠して測定した保水量が0.10g/cm以上で0.40g/cm以下であり、
人工芝は、合成樹脂製で通水孔を有する基布と、基布に固定された合成樹脂パイルとから成ることを特徴とする、グラウンド構造。
【請求項2】
コンクリートブロックは、透水係数が2.0×10-4m/s以上で7.0×10-4m/s以下、かつ保水量が0.15g/cm以上で0.30g/cm以下であることを特徴とする、請求項1のグラウンド構造。
【請求項3】
前記無機保水材は、汚泥を焼結により固化させたセラミックス固化体及び金属精錬時に副生する高温のスラグを水により破砕した水砕スラグの少なくとも一方から成ることを特徴とする、請求項2のグラウンド構造。
【請求項4】
コンクリートブロックは、1m当たり、セメントを350Kg以上で450Kg以下、砂を600Kg以上で1500Kg以下、無機保水材を500Kg以上で1500Kg以下、かつ粗骨材を0Kg以上で200Kg以下含有することを特徴とする、請求項2のグラウンド構造。
【請求項5】
配列されたコンクリートブロックから成る基盤と、基盤に固定された人工芝から成るグランド構造の施工方法であり、
セメントと砂と無機保水材と水を、JIS A 5371に準拠して測定した養生後のコンクリートブロックの透水係数が1.0×10-4m/s以上で10.0×10-4m/s以下、保水量が0.10g/cm以上で0.40g/cm以下となるように混合し、コンクリートブロックの形状に成型した後に養生し、コンクリートブロックを製造するステップと、
製造したコンクリートブロックを地盤上に配列するステップと、
配列したコンクリートブロック上に、合成樹脂製で通水孔を有する基布と、基布に固定された合成樹脂パイルとから成る人工芝を固定するステップと、
人工芝上に目砂を散布するステップ、とを行うグラウンド構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校や運動場等のグラウンドにおける人工芝と基盤とを有するグラウンド構造と、その施工方法に関する。詳しくは、基盤に透水係数1.0×10-4m/s以上かつ保水量0.10g/cm以上のコンクリートブロックを使用することにより、夏季において日射による温度上昇を抑制するグラウンド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
学校や運動場等のグラウンドには、低コストかつ施工が容易である砂や土を用いる土系舗装が用いられていたが、土埃が舞わないようにする等の理由から、校庭の芝生化が活発になっている。その際、設置や維持管理のコスト削減として人工芝が用いられることが多い。
【0003】
人工芝を含む構造体は一般に、コンクリート舗装やアスファルト舗装、土系舗装からなる基盤と、人工芝と目砂によって形成される。人工芝は基盤にジョイントテープあるいは接着剤によって貼り付けられる。基盤へ人工芝を貼り付けた後、目砂散布機により目砂を散布し、ブラシを使用して充填する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】飯島健太郎:グラウンドサーフェイスによるスポーツ障害と人工芝・天然芝
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら人工芝は、夏場に日光にさらされた際に、天然芝や土の地面に比べて熱くなる。これは、合成樹脂で製造されていることから、人工芝は熱を吸収しやすいためである。
【0006】
基盤に使用されるコンクリート舗装やアスファルト舗装、土系舗装は、保水性が低いため、散水しても保水せず、気化熱による温度低下が小さい。
【0007】
夏季は人工芝に人体が直接触れると火傷する恐れがあり、人工芝の表面温度抑制方法が求められていた。
【0008】
本発明は、日射による人工芝の表面温度上昇を抑制できる、グラウンド構造とその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった。そして、人工芝と基盤とを有する構造体において、基盤に透水性および保水性の高いコンクリートブロックを用いることにより、日射による温度上昇を低減できることを見出し、更に検討を進めた結果、本発明を完成した。
【0010】
本発明のグラウンド構造は、配列されたコンクリートブロックから成る基盤と、基盤に固定された人工芝から成る。コンクリートブロックは、セメントと砂と無機保水材とを含有し、JIS A 5371に準拠して測定した透水係数が1.0×10-4m/s以上で10.0×10-4m/s以下であり、かつJIS A 5371に準拠して測定した保水量が0.10g/cm以上で0.40g/cm以下である。保水量と透水係数は、保水材の種類と含有量によりほぼ定まる。人工芝は、合成樹脂製で通水孔を有する基布と、基布に固定された合成樹脂パイルとから成る。なおグラウンド構造は、人工芝上に目砂を散布して使用する。
【0011】
本発明のグランド構造の施工方法では、セメントと砂と無機保水材と水を、JIS A 5371に準拠して測定した養生後のコンクリートブロックの透水係数が1.0×10-4m/s以上で10.0×10-4m/s以下、保水量が0.10g/cm以上で0.40g/cm以下となるように、混合する。次いでこの混合物をコンクリートブロックの形状に成型した後に養生し、コンクリートブロックを製造する。製造したコンクリートブロックを地盤上に配列し、配列したコンクリートブロック上に、人工芝を固定する。人工芝は、合成樹脂製で通水孔を有する基布と、基布に固定された合成樹脂パイルとから成り、人工芝上に目砂を散布する。この明細書のグラウンド構造に関する記載は、特にことわらない限り、その施行方法にも当てはまる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、適切な透水係数と適切な保水量を有するコンクリートブロックを用いることにより、日射による人工芝表面の温度上昇を抑制する。
【0013】
好ましくは、コンクリートブロックは、透水係数が2.0×10-4m/s以上で7.0×10-4m/s以下、かつ保水量が0.15g/cm以上で0.30g/cm以下である。
【0014】
好ましくは、無機保水材は、汚泥を焼結により固化させたセラミックス固化体及び金属精錬時に副生する高温のスラグを水により破砕した水砕スラグの少なくとも一方から成る。特に好ましくは、無機保水材は、排水汚泥を焼結により固化させたセラミックス固化体及び高炉スラグを水により破砕した高炉水砕スラグの少なくとも一方から成る。セラミックス固化体は下水等から生成する廃棄物で、水砕スラグは高炉等から生じる副生成物である。セラミックス固化体あるいは水砕スラグをコンクリートブロック中に固定すると、廃棄物及び副生成物を安全に処理できる。またセラミックス固化体と水砕スラグは、透水性能と保水性能に優れる安価な保水材である。
【0015】
好ましくは、コンクリートブロックは、1m当たり、セメントを350Kg以上で450Kg以下、砂を600Kg以上で1500Kg以下、無機保水材を500Kg以上で1500Kg以下、かつ粗骨材を0Kg以上で200Kg以下含有する。粗骨材は例えば砕石で、これ以外に河川、丘陵などから採取した砂利等を用いても良い。粗骨材は平均粒径が2mm以上25mm以下が好ましい。砂は例えば、山、丘陵等から採取した石を砕き、石と砂とに分けた砕砂であるが、海、河川等から採取した砂をそのまま用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例のグラウンド構造の断面図
図2図1のグラウンド構造の部分拡大断面図
図3】実施例のコンクリートブロックの平面図
図4】実施例のコンクリートブロックの斜視図
図5】実施例のグラウンド施工方法の工程図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用される人工芝は、ポリエチレン製やポリプロピレン製、ナイロン製等の基布に、ポリプロピレン製等のパイルが固定されている人工芝であれば、特に制限なく使用が可能である。また、散水した水がコンクリートブロックに到達しやすく、かつ気化しやすくなるように、穴が開いている基布を用いても良いし、基布に適度に穴を開けても良い。
【0018】
本発明における最大の特徴は、人工芝と基盤とを有する構造体の基盤に、透水係数1.0×10-4m/s以上かつ保水量0.10g/cm以上のコンクリートブロックを用いることにある。透水係数が1.0×10-4m/sに満たない場合、散水しても水分が基盤に浸透せず人工芝表面を流れてしまう。透水係数が大きいとコンクリートブロック内部の空隙量が多くなり、強度低下に繋がるため、透水係数は10.0×10-4m/s以下が好ましい。また、保水量0.10g/cmに満たない場合、人工芝を冷却するだけの気化熱が発生しない。保水量が多いとコンクリートブロック内部の空隙量が多くなり、強度低下に繋がるので保水量は0.40g/cm以下であることが好ましい。より好ましくは、透水係数は2.0×10-4m/s以上7.0×10-4m/s以下で、保水量は0.15g/cm以上0.30g/cm以下である。なお、透水係数及び保水量は、JIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」に記載の方法で測定する。
【0019】
本発明において、所定の保水量および透水係数を確保するために、コンクリートブロックに保水材を混合する。使用する保水材としては、例えば下水排水汚泥を1000℃等で焼結したセラミックス固化体を用いる。一般的に保水性舗装材料として使用される高炉水砕スラグも好ましい。高炉水砕スラグは、高炉鋼の製造時に副産物として生成される砂状の骨材であり、高温のスラグに水を噴射し急冷することにより、スラグを砂状に破砕したものである。セラミックス固化体も高炉水砕スラグも透水性能と保水性能に優れている。しかし、高炉水砕スラグは微粉の含有量が多いため、多量に加えても透水率は大きくは増加しない傾向にある。
【0020】
これら材料は多孔質であり空隙に水を大量に保有し、かつ通水性がある。また、多孔質であるものの材料自体がある程度の強度を有するため、コンクリートブロックへの添加量が多くなっても強度低下を起こしにくい。
【0021】
本発明で使用する保水材は、粒度の範囲が5.0mmふるい残分が5%未満で、かつ0.075mmふるい通過率が5%未満であることが望ましい。
【0022】
コンクリートブロックとしては、上記の透水性、保水性を有するコンクリートブロックであれば特に制限されないが、所定形状の型枠にコンクリートを充填し、振動等の締め固めをした後に即時脱型したコンクリートブロックが好ましい。また、一般的な生コンクリートと同様に締固めした後型枠内で静置し、硬化後に脱型することも可能である。
【0023】
本発明で基盤に使用されるコンクリートブロックにおいて、使用されるセメントは、JIS R 5210「ポルトランドセメント」、JIS R 5211「高炉セメント」、JIS R 5212「シリカセメント」、JIS R 5213「フライアッシュセメント」、JIS R 5214「エコセメント」など、公知のセメントが制限なく使用できる。
【0024】
また、コンクリートブロックの強度を満足する範囲で公知の無機粉体を採用することが可能であり、体的にはJIS R 5210「ポルトランドセメント」の少量混合成分に規定される無機粉末、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」、JIS A 6207「コンクリート用シリカフューム」、石灰石微粉末等が挙げられる。
【0025】
本発明で基盤に使用されるコンクリートブロックを製造するに際し、骨材(細骨材、粗骨材)としては、公知の骨材が制限なく使用できる。当該骨材としては、例えば砕石、砕砂などの天然骨材、JIS A 5011に規定されるスラグ骨材、軽量骨材、保水材等を特に制限なく使用できる。
【0026】
本発明で基盤に使用されるコンクリートブロックの製造方法において使用する水は、モルタルやコンクリートの調製用として公知の水が特に制限なく使用できる。具体的には、工水、水道水等である。
【0027】
本発明で基盤に使用されるコンクリートブロックの製造時には、上記した骨材、セメント及び水のほかに、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的にモルタルやコンクリートの調製に際して混合される公知の添加剤であるAE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、空気量調整剤、凝結促進剤を添加配合しても構わない。
【0028】
本発明においてコンクリートブロックの配合は水セメント比が23%以上35%以下とし、単位水量が110以上130kg/m以下とする。
【0029】
本発明において保水材にセラミックス固化体を使用する場合、セラミックス固化体の配合量はコンクリート1mあたり150kg以上400kg以下とする。セラミックス固化体を細骨材とした場合、細骨材率は80%以上100%以下とする。
【0030】
本発明において保水材に高炉水砕スラグを使用する場合、高炉水砕スラグの配合量はコンクリート1mあたり500kg以上1700kg以下とする。高炉水砕スラグを細骨材とした場合、細骨材率は80%以上100%以下とする。
【0031】
本発明において保水材にセラミックス固化体と高炉水砕スラグを併用する場合、セラミックス固化体の配合量はコンクリート1mあたり150kg以上250kg以下、高炉水砕スラグの配合量はコンクリート1mあたり400kg以上800kg以下とする。セラミックス固化体及び高炉水砕スラグを細骨材とした場合、細骨材率(骨材中の細骨材の重量比)は80%以上100%以下とする。
【0032】
本発明の基盤に使用されるコンクリートブロックは、車両が通過する場合は5N/mm以上、通過しない場合は3N/mm以上の曲げ強度が好ましい。
【0033】
骨材、セメント、水、及び必要に応じて配合するその他材料を混合、硬化させる、コンクリートブロックの製造方法は、生コンクリート工場やコンクリート二次製品工場における従来の製造方法が特に際限なく使用できる。
【0034】
骨材とセメントと水とその他材料を混錬する際に使用するミキサーは一般的にモルタルやコンクリートを混錬するミキサーが制限なく使用できる。具体的には、パン型ミキサー、強制二軸ミキサー、傾動ミキサー、モルタルミキサー、ハンドミキサー等が挙げられる。
【0035】
骨材とセメントと水とその他材料とを混合、硬化させた後のコンクリートブロックの養生方法は、生コンクリート工場やコンクリート二次製品工場における従来の養生方法が特に際限なく使用できる。具体的には、湿潤養生、水中養生、蒸気養生、オートクレープ養生、気中養生等が挙げられる。
【0036】
本発明においてコンクリートブロックの敷設方法は、一般的なインターロッキングブロックを施工する際に用いる方法が特に制限なく使用できる。具体的には、下地材を処理した後にコンクリートブロックを敷き、必要に応じて目地を砂で埋める方法である。
【0037】
本発明において、コンクリートブロックの上に人工芝を設置する方法は、アスファルトやコンクリート上に施工する一般的な方法を特に制限なく用いることができる。具体的には、コンクリートブロック上面のゴミを取り除き、コンクリートブロック上面に接着剤を塗布して人工芝を貼り付ける方法である。接着テープなどにより、人工芝をコンクリートブロック上面に固定しても良い。設置した人工芝には目砂を散布する。目砂に使用する砂は、山砂、海砂、川砂など公知の砂が制限なく使用できる。
【0038】
目砂に使用する砂は、最大粒径が4mm以下のものであり、好ましくは最大粒径2mm以下である。目砂の散布量は、目砂の厚みが5mm以下となる程度であり、好ましくは厚みが1~3mm程度である。目砂の施工方法は、一般的な人工芝で用いられる方法が特に制限なく使用できる。具体的には、人力または散布機で均等に砂を散布し、トンボ等で目砂を均す。その後、デッキブラシ等で目砂を擦りこみ、散水すればよい。
【実施例0039】
図1図5に実施例を示す。本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の一部は、必要不可欠なものではない。
【0040】
図1図2はグラウンド構造2を示し、土などの地盤20に必要に応じて適宜の処理を加え、地盤20上にグラウンド構造2を設置する。グラウンド構造2は、縦横に水平に配列したコンクリートブロック4、24から成る基盤6と、基盤6に固定した人工芝10とから成る。基盤6でのコンクリートブロック4、24間の隙間5には例えば砂を充填する。
【0041】
人工芝10は、例えば合成樹脂製の基布12に、下端がU字状に折り返すポリプロピレン等の合成樹脂のパイル14を固定したものである。基布12は通水孔16を備え、散水や降水をコンクリートブロック4、24へ供給し、コンクリートブロック4、24から蒸発した水蒸気を通過させる。人工芝10の裏面の接着剤層15により人工芝10を基盤6に固定する。なお接着テープなどにより固定しても良い。人工芝10のパイル14内に目砂18を散布し次いで充填する。図2の鎖線Sは目砂を充填する高さを示す。
【0042】
図3,4にコンクリートブロック4、24を示す。サイズは例えば幅Wが100mm、高さHが60mm、長さLが200mmである。直方体状のコンクリートブロック4でも、4側面に凹凸を設けたコンクリートブロック24(図3に鎖線で表示)でも良い。
【0043】
図5に、グラウンド構造の施工方法を示す。ポルトランドセメント等のセメントと、砕砂、保水材に水を混合する(ステップ1)。保水材は例えばセラミックス固化体と高炉水砕スラグである。上記の混合物を型に充填して成型し、養生してコンクリートブロック4、24を製造する(ステップ2)。
【0044】
地盤20にコンクリートブロック4,24を配列し(ステップ3)、隙間5に砂を充填し(ステップ4)、基盤6を形成する。ついで基盤6上に人工芝10を載置し、接着剤層15により固定する(ステップ5)。そして目砂を人工芝10上に散布する(ステップ6)と、グラウンド構造2が完成する。グラウンド構造2は散水などによりコンクリートブロック4,24に給水し、保水材の空隙が大きいので多量の水を蓄えることができ、また保水材の透水率が高いので散水した水を速やかにコンクリートブロック4,24内に供給できる。
【0045】
実験例
表1に、実験に用いたコンクリートブロック4の配合(比較例及び実施例1~3)を示す。なお%は重量%を示す。コンクリートブロック4の製造から人工芝10の固定と目砂の散布までの施工は、既に示した通りである。
【0046】
【表1】
【0047】
試験方法は、次の通りである。
日射表面温度測定
乾いたコンクリート平板上に、20℃の水中に24時間浸漬して保水した、幅100×長さ200×高さ60mmのコンクリートブロックを基盤として2個並べ、周囲を発泡スチロール板で囲った。その上にポリプロピレンのパイルと、ポリエチレンの基布からなる市販の人工芝(製品名:人工芝ロール巻きリアルタイプ、CAINZ社販売)を設置し、目砂として丘砂(粗粒率1.21、吸水率0.90%)を散布して構造体を作製した。なお粗粒率は、砂等の粗さを示すために慣用されている数値である。また吸水率1%は、内部が湿潤で表面が乾燥している状態の砂などについて、乾燥重量100gに対し重量が1g増していることを表す。作製した構造体の上面から500mlの20℃の水を散水した後、直ちに人工芝表面からの高さ30cmから250Wの赤外線ランプ加熱して、人工芝中央部の表層温度を熱電対により測定した。
【0048】
(比較例1)
基盤のコンクリートブロックとして、表1に示す配合により、JIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」に記載の方法で測定される透水係数が0m/s、JIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」に記載の方法で測定される保水量が0.07g/cmのインターロッキングブロック(製品名:Standard、販売社:トクヤマ通商(株))を用い、基盤、人工芝および目砂からなる構造体を作製した。作製した構造体の日射表面温度測定をしたところ、60分加熱後における人工芝表面の温度は70℃であった。
【0049】
(実施例1)
基盤6のコンクリートブロック24として、表1に示す配合により、JIS A 5371に記載の方法で測定される透水係数が5.0×10-4m/s、JIS A 5371に記載の方法で測定される保水量が0.21g/cmのインターロッキングブロック24を用い、基盤、人工芝および目砂からなる構造体を作製した。インターロッキングブロック24の保水材には、下水排水汚泥を1000℃で焼結した多孔質材料(セラミックス固化体)および高炉水砕スラグを用いた。作製した構造体の日射表面温度測定をしたところ、加熱開始後60分における人工芝表面の温度は59℃であった。
【0050】
(実施例2)
基盤6のコンクリートブロック24として、表1に示す配合により、JIS A 5371に記載の方法で測定される透水係数が4.6×10-4m/s、JIS A 5371に記載の方法で測定される保水量が0.21g/cmのインターロッキングブロック24を用い、基盤、人工芝および目砂からなる構造体を作製した。インターロッキングブロック24の保水材には高炉水砕スラグを用いた。作製した構造体の日射表面温度測定をしたところ、加熱開始後60分における人工芝表面の温度は57℃であった。
【0051】
(実施例3)
基盤のコンクリートブロック24として、表1に示す配合により、JIS A 5371に記載の方法で測定される透水係数が3.1×10-4m/s、JIS A 5371に記載の方法で測定される保水量が0.20g/cmのインターロッキングブロック24を用い、基盤、人工芝および目砂からなる構造体を作製した。インターロッキングブロック24の保水材には高炉水砕スラグを用いた。作製した構造体の日射表面温度測定をしたところ、加熱開始後60分における人工芝表面の温度は57℃であった。
【0052】
【表2】
【符号の説明】
【0053】
2 グラウンド構造
4 コンクリートブロック
5 隙間
6 基盤
10 人工芝
12 基布
14 パイル
15 接着剤層
16 通水孔
18 目砂
20 地盤
24 コンクリートブロック
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
【表2】