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特開2024-29764プラズマ発生装置、プラズマ発生方法及びエッチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029764
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置、プラズマ発生方法及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240228BHJP
   H05H 1/34 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L21/302 101E
H05H1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133773
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2022131961
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「大気圧プラズマジェットによる超高精度熱処理技術プラットフォームの構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】東 清一郎
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084BB02
2G084BB12
2G084BB31
2G084CC23
2G084CC34
2G084DD12
2G084DD63
2G084FF02
2G084FF32
2G084FF39
2G084GG02
2G084GG07
2G084GG13
2G084GG18
5F004AA09
5F004AA14
5F004AA16
5F004BA03
5F004BA20
5F004BB12
5F004BB18
5F004BB26
5F004BB28
5F004BC06
5F004BD01
5F004CA01
5F004DA01
5F004DA04
5F004DA11
5F004DA18
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB26
5F004EA01
(57)【要約】
【課題】高速にエッチングを行うことができるプラズマ発生装置、プラズマ発生方法及びエッチング方法を提供する。
【解決手段】プラズマ発生装置1は、大気圧又はその近傍の圧力下で直流アーク放電によって熱プラズマを発生させる陰極11と、発生させたプラズマジェットを噴出させる噴出口を有する陽極14と、陰極11と陽極14との間でアーク放電が発生するアーク放電部の上流部にプラズマ生成ガスを供給する第1ガス導入部14dと、アーク放電部の下流部に反応活性種を生成するための反応性ガスを供給する第2ガス導入部14eと、を備える。また、第2ガス導入部14eは、陽極14に一体的に形成され、噴出口の噴出方向の中心よりも陰極11に近い位置から反応性ガスを供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧又はその近傍の圧力下で直流アーク放電によって熱プラズマを発生させる陰極と、
発生させたプラズマジェットを噴出させる噴出口を有する陽極と、
前記陰極と前記陽極との間でアーク放電が発生するアーク放電部の上流部にプラズマ生成ガスを供給する第1ガス導入部と、
前記アーク放電部の下流部に、反応活性種を生成するための反応性ガスを供給する第2ガス導入部と、を備え、
前記第2ガス導入部は、前記陽極に一体的に形成され、前記噴出口の噴出方向の中心よりも前記陰極に近い位置から前記反応性ガスを供給する、
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記陰極の前記アーク放電部側の先端部及び前記先端部と対向する前記陽極内壁は、テーパ角が90°未満のテーパ状であり、
前記噴出口の直径は、1mm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記噴出口の長さは3mm以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記陰極の材料は、マルエージング鋼、インコネル及びステンレス鋼のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記噴出口の近傍に配置され、磁場を印加することにより前記プラズマジェットの噴出方向を変化させる磁場印加部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記噴出口は、長孔形状であり、
前記磁場印加部である電磁石を用いて交番磁場を印加することにより、線状の前記プラズマジェットを噴出させる、
ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
アーク放電部の上流部にプラズマ生成ガスを供給し、
アーク放電部とプラズマジェットの噴出部との間の噴出方向の中心よりも前記アーク放電部に近い位置に反応活性種を生成するための反応性ガスを供給し、
大気圧又はその近傍の圧力下で直流アーク放電により熱プラズマを発生させる、
ことを特徴とするプラズマ発生方法。
【請求項8】
アーク放電部の上流部にプラズマ生成ガスを供給し、
アーク放電部とプラズマジェットの噴出部との間の噴出方向の中心よりも前記アーク放電部に近い位置に反応活性種を生成するための反応性ガスを供給し、
大気圧又はその近傍の圧力下で直流アーク放電により熱プラズマを発生させ、発生させたプラズマジェットを、被処理体上のエッチング対象物質に照射してエッチングを行う、
ことを特徴とするエッチング方法。
【請求項9】
平板状の前記被処理体の両面に、それぞれ前記プラズマジェットを照射して、前記被処理体の両面をエッチングする、
ことを特徴とする請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記プラズマジェットを噴出するプラズマ発生装置の噴出口と、前記被処理体表面との距離は3mm以下である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧熱プラズマジェットを用いた半導体のエッチングプロセスに係るプラズマ発生装置、プラズマ発生方法及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスにおいて、エッチング処理が行われている。例えば、ウエハにフォトレジストをスピン塗布した場合、ウエハエッジ部ではフォトレジストが厚くなり、露光工程での不具合原因となるので、露光工程に進む前にこれを除去する工程(EBR:Edge Bead Removal)が存在する。また、ウエハ端部に形成された絶縁膜、金属薄膜等が搬送中に剥離して歩留り低下を引き起こすので、これらウエハ端部の薄膜を除去するベベルエッチングと呼ばれる工程も存在する。
【0003】
従来、半導体製造プロセスにおけるエッチングには、エッチング液による除去方法が一般的に用いられている。しかしながら、エッチング液を用いる方法は、溶剤の管理、取扱が煩雑で、工程が複雑であることなどから、エッチング液を用いないドライプロセスによるエッチング技術が開発されている。更に近年、カーボンニュートラル達成の要求から、有機溶剤使用量を削減することが求められており、廃液処理コスト低減等の観点に加えて、CO排出量削減の観点からもドライプロセスへの移行が強く求められている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ハロゲン系ガス雰囲気で行う大気圧プラズマ処理によるエッチングと、酸素系ガス雰囲気で行う大気圧プラズマ処理によるアッシングとを交互に行うことにより、高速にエッチングを行う技術が提案されている。また、特許文献2では、部品剥離後の接着剤を、希ガスと酸素との混合ガスのプラズマを照射して除去する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-209096号公報
【特許文献2】特開2002-76586号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】福田 永,他4名,「表面波励起プラズマによる中性水素原子生成とレジストアッシングへの応用」,室蘭工業大学紀要,54巻,p.29-35,2004年
【非特許文献2】石島 達夫,「マイクロ波プラズマ源を用いた水蒸気プラズマアッシング装置」,プラズマ・核融合学会誌,第96巻第10号,p.562-567,2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体製造プロセスにおけるフォトレジストの除去のように、有機物のプラズマによる灰化(アッシング)を利用したエッチングでは、一般的に、処理温度が高いほどエッチングレートが向上することが知られている(非特許文献1)。また、最近では、水蒸気プラズマを用いてウエハを4μm/minの速度でエッチング可能であることが報告されている(非特許文献2)。
【0008】
プラズマを使ったドライエッチングは、溶剤を用いるウエットエッチングと比較して、プロセスを簡素化することができる。しかしながら、エッチング速度は4μm/min程度と低速であり、半導体の量産に用いるためには、より高速に処理を行えるエッチング技術が求められる。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、高速にエッチングを行うことができるプラズマ発生装置、プラズマ発生方法及びエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係るプラズマ発生装置は、
大気圧又はその近傍の圧力下で直流アーク放電によって熱プラズマを発生させる陰極と、
発生させたプラズマジェットを噴出させる噴出口を有する陽極と、
前記陰極と前記陽極との間でアーク放電が発生するアーク放電部の上流部にプラズマ生成ガスを供給する第1ガス導入部と、
前記アーク放電部の下流部に、反応活性種を生成するための反応性ガスを供給する第2ガス導入部と、を備え、
前記第2ガス導入部は、前記陽極に一体的に形成され、前記噴出口の噴出方向の中心よりも前記陰極に近い位置から前記反応性ガスを供給する。
【0011】
また、前記陰極の前記アーク放電部側の先端部及び前記先端部と対向する前記陽極内壁は、テーパ角が90°未満のテーパ状であり、
前記噴出口の直径は、1mm以下である、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記噴出口の長さは3mm以下である、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記陰極の材料は、マルエージング鋼、インコネル及びステンレス鋼のいずれかである、
こととしてもよい。
【0014】
また、前記噴出口の近傍に配置され、磁場を印加することにより前記プラズマジェットの噴出方向を変化させる磁場印加部を備える、
こととしてもよい。
【0015】
また、前記噴出口は、長孔形状であり、
前記磁場印加部である電磁石を用いて交番磁場を印加することにより、線状の前記プラズマジェットを噴出させる、
こととしてもよい。
【0016】
また、本発明の第2の観点に係るプラズマ発生方法では、
アーク放電部の上流部にプラズマ生成ガスを供給し、
アーク放電部とプラズマジェットの噴出部との間の噴出方向の中心よりも前記アーク放電部に近い位置に反応活性種を生成するための反応性ガスを供給し、
大気圧又はその近傍の圧力下で直流アーク放電により熱プラズマを発生させる。
【0017】
また、本発明の第3の観点に係るエッチング方法では、
アーク放電部の上流部にプラズマ生成ガスを供給し、
アーク放電部とプラズマジェットの噴出部との間の噴出方向の中心よりも前記アーク放電部に近い位置に反応活性種を生成するための反応性ガスを供給し、
大気圧又はその近傍の圧力下で直流アーク放電により熱プラズマを発生させ、発生させたプラズマジェットを、被処理体上のエッチング対象物質に照射してエッチングを行う。
【0018】
また、平板状の前記被処理体の両面に、それぞれ前記プラズマジェットを照射して、前記被処理体の両面をエッチングする、
こととしてもよい。
【0019】
また、前記プラズマジェットを噴出するプラズマ発生装置の噴出口と、前記被処理体表面との距離は3mm以下である、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプラズマ発生装置及びプラズマ発生方法によれば、パワー密度の高いプラズマを発生させることができる。また、本発明のエッチング方法によれば、パワー密度の高いプラズマを用いて高速でエッチングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係るプラズマ発生装置の概略構成を示す断面図である。
図2図1のプラズマ発生装置のアーク放電部近傍の拡大図である。
図3】(A)はプラズマパワー密度の分布を示すシミュレーション結果の例であり、(B)は(A)のシミュレーションにおける噴出口の座標位置を示す概念図である。
図4】電極間距離の大きさに対する、プラズマ温度及びパワー密度の関係の例を示すグラフである。
図5】プラズマ生成ガスとしてアルゴン1.0L/min、反応性ガスとして酸素を用い、酸素ガス流量を変化させてシリコンウエハ上のフォトレジストのエッチング処理を行った場合の被処理体の状態の例であり、(A)はエッチング前、(B)は0.3L/minの場合、(C)は0.5L/minの場合、(D)は0.7L/minの場合の図である。
図6】エッチング処理前後の被処理体の状態を示す図であり、(A)は図5(A)の被処理体の断面図、(B)は図5(D)の被処理体の断面図である。
図7】酸素ガス流量とエッチングレートとの関係の例を示すグラフである。
図8】噴出口と被処理体との間の距離を変化させた場合の、プラズマジェットの走査速度に対するフォトレジスト膜厚の減少量を示すグラフである。
図9】噴出口と被処理体との間の距離とエッチングレートとの関係の例を示すグラフである。
図10】(A)は被処理体の温度とエッチングレートとの関係の例を示すグラフであり、(B)は図9の例における被処理体の温度変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11】(A)は実施の形態1に係るプラズマ発生装置の配置例を示す図、(B)は実施の形態2に係るプラズマ発生装置の配置例を示す図である。
図12】パーティクルによって生じるウエハ表面の凹凸を示す概念図である。
図13】実施の形態3に係るプラズマ発生装置の概略構成を示す断面図である。
図14】プラズマジェットの噴出方向変化を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るプラズマ発生装置1について説明する。
【0023】
図1に示すように、プラズマ発生装置1は、大気圧又はその近傍の圧力下でアーク放電を発生させる陰極11及び陽極14、陰極11を保持する導体12、導体12と陽極14とを絶縁する絶縁部13、陰極11と陽極14との間に直流電圧を印加する電源15を備える。
【0024】
陰極11は、フランジを有する円筒状の導体12の内部に同軸上に配置される円柱状の電極である。陰極11は、一部が導体12に保持されて、導体12に固定される。本実施の形態に係る陰極11は、一方の端部(以下、固定側端部11aという。)寄りの一部で導体12に固定される。また、図2に示すように、陰極11の他方の端部(以下、先端部11bという。)は、テーパ角θのテーパ状となっており、陽極14との間でアーク放電を生じるように所定の間隔で配置される。先端部11bと陽極14との間隔の詳細については後述する。陰極11の素材は、公知の直流アークプラズマ発生装置に用いられるものであり、例えばタングステンである。
【0025】
導体12は、締結用のフランジを有する円筒状の部材である。導体12は、陰極11を保持する保持部12aと、保持部12aで仕切られる中空の陰極冷却部12bを備える。導体12は電源15に接続されており、陰極11は保持部12aを介して電源15に電気的に接続される。
【0026】
陰極冷却部12bには、導体12の外壁部を貫通する給水口12c(不図示)及び排水口12d(不図示)が形成されている。給水口12cを通じて水が供給され、排水口12dを通じて水が排出されることにより、保持部12aから陰極冷却部12bへ挿入された陰極11が冷却される。
【0027】
絶縁部13は、陽極14と、陰極11を保持する導体12との間に配置されている。絶縁部13の材質は特に限定されず、例えばセラミックスを用いることができる。
【0028】
陽極14は、図1に示すように、下部の内面が円錐状である略円筒形状に形成されている。また、陽極14の円錐部の下端部には、プラズマジェットが噴出される噴出口14aが形成されている。また、陽極14は、プラズマ生成ガスである希ガスを内部に導入する第1ガス導入部14d、反応活性種を生成するための反応性ガスである酸素ガスを導入する第2ガス導入部14eを備える。
【0029】
陽極14の素材は、特に限定されず、公知の熱プラズマ発生装置に用いられる陽極材料を用いることができる。本実施の形態に係る陽極14には、後述するようにノズル径の小さい噴出口14a、陽極14と一体的に形成される第2ガス導入部14e等が形成されることとしている。このような複雑な形状を実現するため、陽極14は金属三次元(3D)プリンタを用いて形成されることが好ましい。この場合、金属三次元プリンタで使用可能であり、プラズマジェットの温度に対応可能な耐熱性を有する材料として、銅、マルエージング鋼、インコネル、ステンレス鋼、チタンのうちいずれかを用いることが好ましい。
【0030】
以下の表は、上記の各材料で形成された陽極14を用いてプラズマジェットを発生させ、エッチングを行った場合のエッチングレートの比較例である。
【表1】
【0031】
上記の比較例におけるエッチング条件は以下の表の通りである。これらの条件でプラズマジェットを、シリコンウエハ上に形成されたフォトレジストに照射して、エッチングされたフォトレジストの領域を計測する。計測されたエッチング領域とスキャン速度とに基づいてエッチングレートが算出される。
【表2】
【0032】
上記のエッチングレートの比較結果から、陽極14の材料は、銅、マルエージング鋼、インコネル及びステンレス鋼のいずれかであることが好ましい。このうち、銅は、反射率が高く、レーザー加熱方式の金属三次元プリンタによる造形においては、寸法精度が比較的低い。また、銅は、半導体プロセスにおいて不純物となり得る。したがって、陽極14の材料は、マルエージング鋼、インコネル及びステンレス鋼のいずれかであることがより好ましい。
【0033】
噴出口14aは陽極14の円錐状の下端部に形成された断面円形の貫通孔である。陰極11の先端部11bと、噴出口14aの上端部(以下、入口部14bともいう。)の周縁部との間(以下、アーク放電部という。)で発生したプラズマジェットは、噴出口14aの下端の噴出部14cから噴出される。
【0034】
噴出口14aの直径(ノズル径)は特に限定されないが、エッチング効率を高めるためには、噴出口14aの直径を小さくして、プラズマジェットのパワー密度を高めることが好ましい。図3(A)は、図3(B)に示すように、噴出口14aの入口部14bにおけるノズル中心点を原点とし、ノズルの径方向の位置をr、原点から噴出口14aの噴出部14c方向の距離をlとした場合の、プラズマパワー密度の分布を示すシミュレーション結果である。噴出口14aの入口部(l=0mm)では、発生したArプラズマが集中して流入するので、最もプラズマパワー密度が高くなる。エッチング効率を高めるためには、エッチング対象の試料表面を1~10ms(ミリ秒)程度の短時間に加熱することが好ましい。試料表面を1~10ms程度の短時間で、エッチングに求められる温度まで加熱するためには、10kW/cm以上のパワー密度を発生できることが好ましい。図3(A)に示すように、10kW/cm以上のパワー密度でプラズマを噴出させるために、ノズル径は直径1mm以下であることが好ましい。
【0035】
一方、噴出口14aの直径が小さくなると、異物によって詰まるおそれが生じる。本実施の形態では、円錐部の頂角で表されるテーパ角θが鋭角、すなわち90°未満となるように構成することとしている。これにより、プラズマ生成ガスの流れがスムーズになり、噴出口14aが詰まるおそれを低減できるので、噴出口14aの直径を小さくすることができる。テーパ角θは、先端が同じテーパ角θとなるように加工されている陰極11の強度を考慮して設定すればよい。例えば、テーパ角θを60°、噴出口14aの直径を1mmとすることができる。
【0036】
また、噴出口14aの形状は、陽極14の表面性状、エッチング方向等に応じて適宜設定可能であり、円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。この場合、断面積を、直径1mmの円形と同等以下とし、プラズマパワー密度が大きく低下しないように設定することが好ましい。
【0037】
図3(A)に示すように、プラズマパワー密度は、噴出口14aの周囲を水冷方式で冷却する陽極14の熱ピンチ効果によって、ノズル中心部(r=0mm)で最も高くなる。また、発生したArプラズマは、陽極14の冷却によって、噴出口14aの噴出部14cへ向かってパワー密度が低下する。噴出口14aの長さは、10kW/cm以上のパワー密度でプラズマを噴出させるために、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
【0038】
図2に示す陰極11と陽極14との距離(以下、電極間距離ESともいう。)は、プラズマ生成ガスの流量、陰極11及び陽極14の表面性状等に基づいて設定すればよい。図4は、電極間距離ESの大きさに対する、プラズマ温度(ガス温度)及びパワー密度の関係を示すグラフである。電極間距離ESが1.0mmから大きくなるにつれて、プラズマ温度は上昇し、これに伴ってエッチングされる試料表面に移送されるパワー密度も上昇する。電極間距離ESが2.0mmより大きくなると、イグニッション(プラズマ点火)しにくくなるとともに、点火後における放電電流が不安定化する。したがって、電極間距離ESは、1.5~2.5mmであることが好ましく、2.0mm程度であることがより好ましい。
【0039】
第1ガス導入部14dは、陽極14の外壁を貫通するように形成されており、外部のガスボンベ(不図示)等と接続されて、陽極14内部にプラズマ生成ガスである希ガスを導入する。第1ガス導入部14dの内部側開口部は、図1に示すように、陰極11の先端部11bより上部となるように形成されている。これにより、希ガスは、プラズマ生成ガスの流れにおいてアーク放電部の上流部に供給される。
【0040】
第2ガス導入部14eは、陽極14に一体的に形成されている。具体的には、第2ガス導入部14eは、図1及び図2に示すように、陽極14の外壁を貫通するように形成されており、外部のガスボンベ(不図示)等と接続されて、プラズマ発生装置1に酸素ガスを供給する。図2に示すように、本実施の形態に係る第2ガス導入部14eは、陽極14の外壁からテーパ部を貫通する貫通孔として形成されている。そして、第2ガス導入部14eの内部側開口部は、噴出口14aの内側面に形成されている。これにより、酸素ガスは、プラズマ生成ガスの流れにおいてアーク放電部の下流部に供給される。
【0041】
また、第2ガス導入部14eの内部側開口部は、酸素ガスを効率的に解離、励起するために、プラズマのパワー密度の高い上流側に供給されることが望ましい。例えば、噴出口14aの長さが3mmである場合、図3のグラフに示すように、噴出口14aの中心部におけるパワー密度は、噴出口14aの入口部14bにおけるパワー密度の2/3程度まで低下する。また、噴出口14aの噴出部14cにおけるパワー密度は、入口部14bにおけるパワー密度の1/2程度まで低下することとなる。そこで、本実施の形態に係る酸素供給位置は、噴出口14aの噴出方向の中心よりも陰極に近い上流側であることとする。言い換えると本実施の形態では、アーク放電部と噴出部14cとの間の噴出方向の中心よりもアーク放電部に近い位置に、酸素を供給することとしている。これにより、高密度の原子状酸素ラジカルを発生させることができる。
【0042】
また、陽極14の噴出口14aを含むテーパ部の周囲には、陽極14を冷却する水が導入される中空の陽極冷却部14fが形成されている。陽極冷却部14fには、陽極14の外壁部を貫通する給水口14g(不図示)及び排水口14h(不図示)が形成されている。そして、給水口14gを通じて水が供給され、排水口14hを通じて水が排出されることにより、陽極14が冷却される。陽極冷却部14fは、陽極14に一体的に形成されてもよいし、陽極14の円錐部とその外壁を覆う別部品とで構成されてもよい。
【0043】
電源15は、陰極11及び陽極14と電気的に接続され、両電極間に電圧を印加する。これにより、陰極11の先端部11bと、陽極14の噴出口14aの入口部14b周縁との間(アーク放電部)にアーク放電を発生させる。これにより、第1ガス導入部14dから導入され、陰極11と陽極14との間を流れる希ガスがプラズマ化される。
【0044】
以下、図を参照しつつプラズマ発生装置1を用いたプラズマの発生及びエッチング処理について説明する。本実施の形態では、Si(100)ウエハ上にフォトレジストが塗布された被処理体30にプラズマジェットを照射し、エッチング対象物質であるフォトレジストをアッシングすることにより、エッチングを行う場合を例として説明する。
【0045】
陰極11と陽極14との間に電源15から直流電圧が印加され、第1ガス導入部14dからプラズマ生成ガスであるアルゴンガスが陽極14の内部空間へ供給されると、直流アーク放電によってアーク放電部で熱プラズマが発生する。発生した熱プラズマは、噴出口14aからプラズマジェットとして噴出され、噴出口14aの下部に配置された被処理体30に照射される。
【0046】
また、陽極14に一体的に形成された第2ガス導入部14eより、アーク放電部の下流部である噴出口14aに反応性ガスである酸素ガスが供給される。これにより、プラズマ照射によって被処理体の表面を局所加熱するとともに、被処理体30に反応活性種である活性酸素を多く供給できるので、フォトレジストのアッシングの効率を向上させることができる。
【0047】
本実施の形態では、プラズマジェットによる加熱を行うためのプラズマ生成ガスであるアルゴンガスをアーク放電部の上流部に供給し、アッシングを効率よく行うための反応性ガスである酸素ガスをアーク放電部の下流部に供給する構造とした。アルゴンガスと、酸素ガスとを用いてプラズマジェットを発生させる場合、アルゴンガスと酸素ガスとを混合して、アーク放電部の上流部から導入することが考えられる。この場合、陰極11のタングステンが酸化して、融点が大幅に低下することとなる。したがって、陰極11が溶融して急激に損耗するという不具合が生じる。これに対し、本実施の形態では、アルゴンガスをアーク放電部の上流部へ供給し、酸素ガスをアーク放電部の下流部へ供給することにより、陰極11の酸化を抑制し、陰極11の消耗を大幅に抑制することができる。したがって、プラズマジェットにより被処理体30に照射する活性酸素を増加させ、アッシング効率を高めることが可能となる。
【0048】
また、本実施の形態では、第2ガス導入部14eの内部側開口部は、噴出口14aの噴出方向の中心よりも陰極に近い上流側であることとしている。これにより、プラズマパワー密度の高い位置に反応性ガスである酸素ガスを供給している。したがって、酸素ガスを効率的に解離、励起して、高密度の活性酸素を発生させることができるので、アッシング効率を高めることが可能となる。
【0049】
また、テーパ角を鋭角とすることにより、ノズル径を小さくすることができるので、プラズマジェットのパワー密度を高め、被処理体30を効率よく加熱して、温度を高めることが可能となる。これにより、アッシングの効率を高めて、エッチング速度を向上させることができる。
【0050】
(数値例)
本例では、被処理体30として、Si(100)ウエハ上にフォトレジスト(東京応化工業社製TSMRiP-3300、17cP)を4400rpmでスピン塗布し、130℃で2分間ベーキングしたものを用いた。
【0051】
また、本例では、希ガスであるアルゴンガスの流量fArを1.0L/minとして、酸素ガスの流量fO2を0.3~0.7L/minの範囲で変化させながらアッシングを行った。また、その他の条件として、電極間距離ES=2mm、放電電流I=20A、噴出口14aと被処理体30との間の距離d=1mm、ノズル径1mmとした。また、発生した大気圧直流アーク放電による熱プラズマジェットをスキャン速度v=20mm/sで被処理体30に対して掃引した。電源15は、電流一定モードで運転した。
【0052】
上記条件でプラズマ発生装置1を動作させることにより、アルゴンガスと酸素ガスとを用いた反応性大気圧熱プラズマジェットを照射して、ウエハエッジ部を局所的に加熱すると同時にアッシングを行い、フォトレジストを除去(エッチング)する。
【0053】
図5(A)~(D)は、アッシング処理前後における被処理体30のフォトレジストの光学顕微鏡像を示しており、図5(A)はアッシング処理前、図5(B)~(D)はそれぞれ、酸素ガス流量fO2を0.3、0.5、0.7L/minとした場合のアッシング処理後の画像である。図5(B)~(D)に示すように、プラズマジェット照射によって、干渉色の変化が観察された。さらに、図5(D)に示すように、酸素ガス流量fO2=0.7L/minとした場合において、ウエハ表面の露出が見られた。
【0054】
図6(A)、(B)は、図5(A)、(D)の試料断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察した結果である。アッシング処理前に1.17μmの厚みであったフォトレジスト(PR)が図6(B)では消失し、残渣のない清浄表面が確認できる。
【0055】
上記の結果から、酸素ガス流量fO2を0.7L/min、スキャン速度vを20mm/sとした条件で1.17μmのフォトレジスト膜を完全にエッチングできていることがわかる。また、この条件において、プラズマジェットの照射幅が4mm(図5(D)より算出)であると仮定すると、エッチングレートは5.85μm/s以上であると見積もられる。また、図7は、酸素ガス流量fO2を1.0L/minまで増加させた場合の、酸素ガス流量fO2とエッチングレートとの関係を示すグラフである。図7に示すように、酸素ガス流量fO2を1.0L/minとした場合のエッチングレートは、6.38μm/sと見積もられる。これらの結果から、従来の方法(エッチングレート4μm/min程度)と比較して、エッチング速度が大幅に向上していることがわかる。
【0056】
図8は、噴出口14aと被処理体30との間の距離d(以下、ワーキングディスタンスdともいう。)を変化させた場合の、プラズマジェットの走査速度に対するフォトレジスト膜厚の減少量を示すグラフである。本例では、ワーキングディスタンスdを1mmから3mmの範囲で変化させた。また、アルゴンガスの流量fArを1.0L/min、酸素ガス流量fO2を1.0L/min、印加電力を260~290W(電圧V=13~14.5V、放電電流I=20A)、電極間距離ES=2mmとした。図8に示すように、ワーキングディスタンスdを1mmから3mmの範囲で変化させた場合、ワーキングディスタンスdを小さくするほど加熱効果が大きくなるので、膜厚減少量が増えることがわかる。すなわち、ワーキングディスタンスdを小さくするほどエッチング速度が大きくなることがわかる。また、この結果から、実用可能なエッチング速度を得るためには、噴出口14aと被処理体30との間の距離dを3mm以下とすることが好ましい。
【0057】
図9は、更にワーキングディスタンスdを小さくして、d=0.5mmとした場合のガス流量とエッチングレートとの関係を示すグラフである。また、d=0.5mmの場合におけるアルゴンガスの流量fArを2.0L/minとし、酸素ガス流量fO2を2.0~2.6L/minに変化させてエッチングレートを測定した。図9に示すように、d=1mm付近でエッチングレートの上昇率が大きくなり、d=0.5mmとした場合にエッチングレートが大幅に向上している。したがって、噴出口14aと被処理体30との間の距離dを1mm以下とすることがより好ましい。
【0058】
図10(A)は被処理体の温度とエッチングレートとの関係の例を示すグラフである。また、図10(B)は図9の例でエッチングレートが61.5μm/sとなった場合(fO2=2.4L/min)における、フォトレジスト表面温度のシミュレーション結果である。シミュレーション結果から、フォトレジスト表面は、4ms程度の短時間に約820Kまで加熱されていると考えられる。通常、電気炉等を用いてフォトレジストを820Kに加熱した場合、フォトレジストが炭化して、エッチングレートは低下する。これに対し、本例では、ミリ秒単位の短時間に加熱が行われることにより、炭化反応の前にエッチング反応が生じるので、エッチングレートを向上させることができると考えられる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態に係るプラズマ発生装置1は、アーク放電部の上流部からプラズマ生成ガスであるアルゴンガスを供給し、アーク放電部の下流部に反応性ガスである酸素ガスを供給する。したがって、アーク放電部の上流部からアルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する場合のように、陰極が溶融して損耗することを防止できる。具体的には、直流電流によるジュール発熱で先端が高温となっている陰極11が、反応性ガスと反応して溶融したり急激に劣化したりすることを避けることができる。
【0060】
さらに、本実施の形態に係るプラズマ発生装置1は、アーク放電部の下流部で酸素ガスを供給してプラズマジェットとして噴出させるので、プラズマ照射によって被処理体の表面を局所加熱するとともに、活性酸素の発生量を増加させることができる。また、プラズマのパワー密度の高い噴出口14aの上流側に酸素ガスを供給することにより、効率的に酸素ガスを解離、励起して、活性酸素の発生量をより増加させることができる。これにより、フォトレジストを効率よくアッシングしてエッチングレートを大幅に高めることができる。
【0061】
また、本実施の形態に係るプラズマ発生装置1では、陰極11及び陽極14のテーパ部を鋭角としているので、起動時に生じるパーティクル等によって噴出口14aが詰まるおそれを低減できる。これにより、噴出口14aの径を小さくすることが可能となる。したがって、プラズマジェットの径を小さくし、プラズマジェットのパワー密度を高めることができるので、エッチングの効率をより高めることができる。
【0062】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、ウエハの一方の面に形成されたフォトレジスト等の薄膜のみをエッチングすることとしたが、ウエハの裏面に回り込んだフォトレジストを含む、ウエハの両面に形成された薄膜等をエッチングすることもできる。本実施の形態では、ウエハの裏面を含む端部のエッチング(ベベルエッチング)を行う場合のエッチング方法について説明する。
【0063】
本実施の形態では、複数のプラズマ発生装置1を用いてエッチングを行う点で実施の形態1と異なる。その他、プラズマ発生装置1の構成及びプラズマ発生方法は、実施の形態1と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
半導体製造プロセスにおいては、フォトレジスト、High-k膜等の絶縁膜、導電材料としての金属膜等の薄膜が、ウエハ端部からウエハ裏面へと回り込んで形成される。このように、ウエハ端部及び裏面に形成された薄膜は、半導体製造工程において、剥離してパーティクルとなり、歩留まり低下の原因となる。したがって、ウエハ端部及び裏面に形成された薄膜も、実施の形態1で説明したウエハ端部に形成される厚さの大きいフォトレジストと同様に除去することが必要となる。
【0065】
従来、ウエハ端部及び裏面に形成された薄膜は、一般的にウエットエッチングによって除去されている。また、特開2007-299881号公報では、コ字型形状電極を用いた大気圧グロー放電によりベベルエッチングを行う方法が提案されている。しかしながら、ウエットエッチングは、溶剤の管理、取扱が煩雑で、工程が複雑となること、大気圧グロー放電は放電ガスに高価なヘリウム(He)を用いるためコストが高く、エッチングレートが低いこと等の課題がある。
【0066】
そこで、本実施の形態では、平板状の被処理体30であるウエハの両面にプラズマ発生装置1を配置し、ウエハ端部のエッチングを行う。より具体的には、実施の形態1では、図11(A)に示すように、プラズマ発生装置1をウエハの一方の面側のみに配置してエッチングすることとしたが、本実施の形態では、図11(B)に示すように、ウエハの上面側、下面側にそれぞれプラズマ発生装置を配置して、ウエハの上下両面からプラズマジェットを照射する。これにより、ウエハ裏面部に付着した絶縁膜、金属膜等の薄膜をエッチングすることができる。さらに、本実施の形態では、ウエハの両面にプラズマを照射することにより加熱効果が高まるので、片面のみにプラズマを照射する場合と比較して、エッチングレートが高くなるという利点がある。図11(B)では、ウエハ上面のプラズマ照射位置とウエハ下面のプラズマ照射位置とをずらした例を示しているが、ウエハの加熱をより効果的に行うためには両面のプラズマ照射位置を近づけることが好ましく、ウエハの同位置(ウエハ両面の対向する位置)に上下両面からプラズマを照射することとしてもよい。
【0067】
また、実施の形態1の酸素ガスに代えて、四フッ化炭素(CF)、六フッ化硫黄(SF)、塩素(Cl)、三塩化ホウ素(BCl)等を反応性ガスとして用いることができる。これらの反応性ガスを、実施の形態1の酸素ガスと同様に、アーク放電部の下流部から導入することにより、陰極11との接触を避けつつ、高密度の反応活性種を生成することができる。また、プラズマジェット照射によってウエハをプラズマ加熱しながら処理を行うことができるので、ウエハ両面に形成された絶縁膜、金属膜等の薄膜を高速でエッチングすることができる。
【0068】
(実施の形態3)
上記実施の形態1及び2では、噴出口14aから下方にプラズマジェットを噴出させることとしたが、プラズマジェットの噴出方向を制御して、より広範囲をエッチングすることもできる。本実施の形態では、プラズマジェットの噴出方向を変化させ、広範囲でウエハのエッチングを行う方法について説明する。
【0069】
本実施の形態では、プラズマ発生装置2がプラズマジェットの噴出方向を変化させる磁場印加部20を備える点、及び噴出口14aの形状が長孔形状である点で実施の形態1に係るプラズマ発生装置1と異なる。その他、プラズマ発生装置2の構成及びプラズマ発生方法は、実施の形態1と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0070】
近年、半導体デバイスの微細化が進み、ナノメートルサイズのデバイスをリソグラフィで作製するために、EUV露光(極端紫外線露光)によるリソグラフィ技術が開発されている。EUV露光では、露光における焦点深度が浅くなるので、図12の概念図に示すように、わずかなウエハの凹凸が露光不良の原因となる。したがって、ウエハ裏面の微細なパーティクルを除去することが求められる。
【0071】
また、フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造工程には、ガラス基板と有機膜とを接着、分離する工程が多く含まれる。これらの工程において、ガラス基板表面に残った有機物が欠陥を生じたり、パーティクルとなって歩留まりを低下させたりするおそれがある。そこで、本実施の形態では、プラズマ発生装置2によって生じるプラズマジェットを広範囲に照射して、対象物質の異物除去を行う。
【0072】
具体的には、プラズマ発生装置2の噴出口14aは、長孔形状に形成されている。また、図13に示すように、プラズマ発生装置2は、プラズマジェットの方向を変化させる磁場印加部20を備える。本実施の形態に係る磁場印加部20は、電磁石であり、噴出口14aと被処理体30との間の、噴出口14a近傍に配置される。また、磁場印加部20は、長孔形状の噴出口14aの長手方向と直交する方向で、噴出口14aの両側に配置される。
【0073】
プラズマ発生装置2は、長孔形状の噴出口14aの長手方向に直交する方向から、電磁石である磁場印加部20を用いて交番磁場を印加する。これにより、プラズマ発生装置2は、噴出口14aの長手方向にプラズマジェットの噴出方向を変化させることができる(図14)。さらに、交番磁場の周波数を高くすることにより、線状のプラズマジェットを発生させることができる。
【0074】
本実施の形態では、アーク放電部の上流側からプラズマ生成ガスとして例えばアルゴンガス又は窒素ガスを供給し、アーク放電部の下流部に反応性ガスとして例えば酸素ガスを供給する。さらに、プラズマジェットの噴出方向を磁場印加部20によって走査して線状のプラズマジェットを発生させる。そして、線状のプラズマジェットと直交する方向に被処理体30又はプラズマ発生装置2を移動させることにより、ウエハ、基板等の被処理体30の表面の異物を広範囲でエッチングし、除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、ドライエッチングを行うプラズマ発生装置に好適である。特に、半導体製造プロセスにおいてフォトレジストをエッチングするプラズマ発生装置に好適である。
【符号の説明】
【0076】
1,2 プラズマ発生装置、11 陰極、11a 固定側端部、11b 先端部、12 導体、12a 保持部、12b 陰極冷却部、12c 給水口、12d 排水口、13 絶縁部、14 陽極、14a 噴出口、14b 入口部、14c 噴出部、14d 第1ガス導入部、14e 第2ガス導入部、14f 陽極冷却部、14g 給水口、14h 排水口、15 電源、20 磁場印加部、30 被処理体、ES 電極間距離
図1
図2
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