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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029824
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電磁波吸収構造体および熱電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/13 20230101AFI20240229BHJP
【FI】
H01L35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132221
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】久保 若奈
(57)【要約】
【課題】幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも熱電変換素子上に温度差を生じさせることが可能な電磁波吸収構造体を提供する。
【解決手段】電磁波吸収構造体は、基材30と基材30上に設けられ、電磁波を吸収する微細構造体10と、を備え、微細構造体10は、導電層1と、誘電体層5と、が交互に複数積層された積層体であり、導電層1と誘電体層5とを積層した方向を積層方向としたとき、少なくとも積層方向に垂直な面の最小包含円の直径が異なる導電層1が積層されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と
前記基材上に設けられ、電磁波を吸収する微細構造体と、
を備え、
前記微細構造体は、
導電層と、
誘電体層と、
が交互に複数積層された積層体であり、
前記導電層と前記誘電体層とを積層した方向を積層方向としたとき、
少なくとも前記積層方向に垂直な面の最小包含円の直径が異なる導電層が積層されている電磁波吸収構造体。
【請求項2】
前記積層体において、前記積層方向に沿って、前記基材に最も近い位置にある前記導電層を基材側導電層とし、前記積層方向に沿って前記基材から最も外側に位置する前記導電層を最外導電層としたとき、前記基材側導電層の最小包含円の直径が前記最外導電層の最小包含円の直径よりも小さい、請求項1記載の電磁波吸収構造体。
【請求項3】
前記積層体において、前記積層方向に沿って、前記基材に最も近い位置にある前記導電層を基材側導電層とし、前記積層方向に沿って前記基材から最も外側に位置する前記導電層を最外導電層としたとき、前記基材側導電層の最小包含円の直径が前記最外導電層の最小包含円の直径よりも大きい、請求項1記載の電磁波吸収構造体。
【請求項4】
前記導電層および前記誘電体層の合計層数がそれぞれ2~10である、請求項1記載の電磁波吸収構造体。
【請求項5】
前記誘電体層が前記微細構造体の最も外側にある、請求項1記載の電磁波吸収構造体。
【請求項6】
前記基材上に、複数の前記微細構造体が設けられる、請求項1記載の電磁波吸収構造体。
【請求項7】
前記微細構造体の前記各導電層の前記最小包含円の直径の最大値を最大直径としたとき、
少なくとも一部の前記微細構造体間で前記最大直径が異なっている、請求項6記載の電磁波吸収構造体。
【請求項8】
前記導電層がAu、Pt、Ag、Cu、Pd、Al、Ti、Ta、Zr、Si、Sn、Pb、Ga、Ge、Co、Zn、Fe、In、およびBaからなる群から選択される1種以上を含有する層である、請求項1記載の電磁波吸収構造体。
【請求項9】
前記誘電体層の厚さが5~200nmである、請求項1記載の電磁波吸収構造体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電磁波吸収構造体と、電極と、熱電材料と、を備える、熱電変換素子。
【請求項11】
前記電磁波吸収構造体の前記基材が前記電極である、請求項10記載の熱電変換素子。
【請求項12】
前記電磁波吸収構造体を熱源側のみに備える、請求項10記載の熱電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波吸収構造体および熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱を電気に変換する熱電発電は、未利用熱エネルギーのリサイクル技術として期待されている。通常、熱電変換素子は、温度差を電位差に変換するゼーベック効果を用いて発電している。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱電変換膜と、前記熱電変換膜の一部の内部又は表面に配設された導電性ナノ構造体と、を備えた熱電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-192904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の熱電変換素子は、単一波長の熱エネルギーしか吸収できなかった。そのため、特許文献1の熱電変換素子より幅広い温度域の熱エネルギーを吸収できる構造が求められている。
【0006】
本発明は上記の事情を鑑みなされた発明であり、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも熱電変換素子上に温度差を生じさせることが可能な電磁波吸収構造体および熱電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の電磁波吸収構造体は、
基材と
前記基材上に設けられ、電磁波を吸収する微細構造体と、
を備え、
前記微細構造体は、
導電層と、
誘電体層と、
が交互に複数積層された積層体であり、
前記導電層と前記誘電体層とを積層した方向を積層方向としたとき、
少なくとも前記積層方向に垂直な面の最小包含円の直径が異なる導電層が積層されている。
(2)本発明の態様2は、態様1の電磁波吸収構造体において、
前記積層体において、前記積層方向に沿って、前記基材に最も近い位置にある前記導電層を基材側導電層とし、前記積層方向に沿って前記基材から最も外側に位置する前記導電層を最外導電層としたとき、前記基材側導電層の最小包含円の直径が前記最外導電層の最小包含円の直径よりも小さくてもよい。
(3)本発明の態様3は、態様1の電磁波吸収構造体において、
前記積層体において、前記積層方向に沿って、前記基材に最も近い位置にある前記導電層を基材側導電層とし、前記積層方向に沿って前記基材から最も外側に位置する前記導電層を最外導電層としたとき、前記基材側導電層の最小包含円の直径が前記最外導電層の最小包含円の直径よりも大きくてもよい。
(4)本発明の態様4は、態様1~3のいずれか1つの電磁波吸収構造体において、
前記導電層および前記誘電体層の合計層数がそれぞれ2~10であってもよい。
(5)本発明の態様5は、態様1~4のいずれか1つの電磁波吸収構造体において、前記誘電体層が前記微細構造体の最も外側にあってもよい。
(6)本発明の態様6は、態様1~5のいずれか1つの電磁波吸収構造体において、
前記基材上に、複数の前記微細構造体が設けられてもよい。
(7)本発明の態様7は、態様6の電磁波吸収構造体において、
前記微細構造体の前記各導電層の前記最小包含円の直径の最大値を最大直径としたとき、少なくとも一部の前記微細構造体間で前記最大直径が異なっていてもよい。
(8)本発明の態様8は、態様1~7のいずれか1つの電磁波吸収構造体は、前記導電層がAu、Pt、Ag、Cu、Pd、Al、Ti、Ta、Zr、Si、Sn、Pb、Ga、Ge、Co、Zn、Fe、In、およびBaからなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
(9)本発明の態様9は、態様1~8のいずれか1つの電磁波吸収構造体において、前記誘電体層の厚さが5~200nmであってもよい。
(10)本発明の態様10の熱電変換素子は、態様1~9のいずれか1つに記載の電磁波吸収構造体と、電極と、熱電材料と、を備える。
(11)本発明の態様11は、態様10の熱電変換素子において、前記電磁波吸収構造体の前記基材が前記電極であってもよい。
(12)本発明の態様12は、態様10の熱電変換素子において、
前記電磁波吸収構造体を熱源側のみに備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも熱電変換素子上に温度差を生じさせることが可能な電磁波吸収構造体および熱電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収構造体を示す概略斜視図である。
図2図1に示す電磁波吸収構造体のF2-F2線に沿う端面図である
図3】本発明の一実施形態に係る熱電変換素子を示す概略斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態の電磁波吸収構造体の模式平面図である。
図5】本発明の第3実施形態の電磁波吸収構造体の模式平面図である。
図6】導電層の形状が五角形状の場合の最小包含円の直径を説明する図である。
図7】導電層の形状がクロス状の場合の最小包含円の直径を説明する図である。
図8】導電層の形状が楕円状の場合の最小包含円の直径を説明する図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る電磁波吸収構造体を示す模式平面図である。
図10図9の電磁波吸収構造体のF10-F10線に沿う端面図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る熱電変換素子を示す概略斜視図である。
図12図11に示す熱電変換素子のF12-F12線に沿う端面図である
図13】本発明の第5実施形態に係る電磁波吸収構造体を示す模式断面図である。
図14】実施例1および比較例1のシミュレーション結果である。
図15】実施例2~6のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る電磁波吸収構造体および熱電変換素子を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法などは一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。図1に、微細構造体10の概略斜視図を示す。図2は、図1に示す電磁波吸収構造体のF2-F2線に沿う端面図である。以下の説明では、X方向(第2方向)は、Y方向(第1方向)は、基材30の表面30aと平行な方向であって、X方向に交差する方向である。例えば、Y方向は、X方向に略直交する。Z方向(第3方向)は、基材30の厚さ方向であって、X方向及びY方向に交差する方向である。例えば、Z方向は、X方向及びY方向に略直交する。Z方向に下の方向とは、Z方向に沿って基材30に向かう方向をいう。Z方向に上の方向とはZ方向に沿って、基材30に向かう方向と反対の方向をいう。ただし本明細書でいう「上」および「下」とは、説明の便宜上の表現であり、重力方向を規定するものではない。
【0011】
(電磁波吸収構造体50)
電磁波吸収構造体50は、基材30と、電磁波を吸収する微細構造体10とを備える。
【0012】
(基材30)
基材30は、熱伝導率に優れた基材であることが好ましい。基材30の材質としては、例えば、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0013】
基材30の幅、厚さ等は、目的に合わせて適宜設定することができる。また、基材30の材質としては、熱伝導率が大きい材質を選択し、基材30を薄くすることが好ましい。電磁波吸収構造体50を熱電変換素子の電極に配置する場合は、微細構造体10が吸収した熱エネルギーを熱電変換素子の電極に効率よく伝えられるように、基材30の厚みは、90nm以下であることが好ましい。
【0014】
(微細構造体10)
微細構造体10は、電磁波を吸収する構造体である。微細構造体10は基材30上に設けられる。微細構造体10は、環境中の電磁波を吸収することで、局所的な熱を発生する。したがって、微細構造体10を例えば、熱電変換素子の熱源側にのみ設けることで熱源側電極の温度が高くなり、熱電変換素子が発電することができるようになる。微細構造体10は、そのため、熱源側のみに設けることが好ましい。すなわち、熱電変換素子に電磁波吸収構造体50を用いる場合、電磁波吸収構造体50は熱源側のみにあることが好ましい。
【0015】
微細構造体10は、導電層1と、誘電体層5と、が交互に複数積層された積層体である。即ち、1つの導電層1と当該導電層1の表面上に設けられる1つの誘電体層5とからなる積層体が複数積層されている。
【0016】
図1に示すように、導電層1と誘電体層5とを積層した方向を積層方向hとしたとき、微細構造体10において、少なくとも積層方向hに垂直な面の最小包含円の直径が異なる導電層1が積層されている。本実施形態では、少なくとも積層方向hに垂直な面の最小包含円の直径が異なる導電層1が、誘電体層5を介し積層されている。最小包含円は、積層方向hに垂直な面における導電層1の形状を含む円のうち、半径が最小の円を言う。
【0017】
次に、電磁波吸収構造体50の構造が複雑なため、式によって、直径と熱エネルギーの吸収波長域との関係を表すことは困難である。本開示の電磁波吸収構造体50の構造は、有限要素法によって当該構造をメッシュで分割してそれぞれのドメインで電磁波吸収を補完的に計算することで、設置予定の温度域に合わせて熱エネルギーの吸収波長域を求めることができる。
【0018】
微細構造体(積層体)10において、積層方向hに沿って、基材30に最も近い位置にある導電層1を基材側導電層7とし、積層方向hに沿って基材30から最も外側に位置する導電層1を最外導電層8としたとき、基材側導電層7の最小包含円の直径dが最外導電層8の最小包含円の直径よりも大きい。そのため、吸収エネルギーの幅を広くすることができる。本実施形態では、基材側導電層7から最外導電層8に向かって積層方向hに垂直な面の最小包含円の直径が積層方向に沿って徐々に小さくなっている。このように、導電層1の直径が所定の範囲を有することで、より広い範囲のエネルギースぺクトルを吸収することができる。
【0019】
導電層1および誘電体層5の合計層数がそれぞれ2以上であることが好ましい。導電層1および誘電体層5が複数層ある場合、前述のように各導電層1は、それぞれの最小包含円の直径dが異なっていることが好ましいが、等しくてもよい。電磁波吸収構造体50を配置する温度環境によって、導電層1の最小包含円の直径dおよび導電層1および誘電体層5の各合計層数は適宜変えることができる。多くの熱エネルギーを吸収できるので、導電層1および誘電体層5のそれぞれの合計層数が多いほど、好ましい。導電層1および誘電体層5の合計層数がそれぞれ10以下としてもよい。
【0020】
最小包含円の直径は、熱エネルギーを取り出す環境温度によって決定される。熱エネルギーを取り出す環境温度が数十℃~200℃の場合、微細構造体10の最上部および最下部の導電層1の最小包含円の直径dの範囲は、例えば200nm~5μmの範囲である。1つの導電層1の最小包含円の直径dが複数ある場合(例えば、積層方向に沿って基材30側の表面の最小包含円の直径が、基材30側の表面の反対の表面の最小包含円の直径とが異なっていた場合)、導電層1の最小包含円の直径dの最大値を導電層1の最小包含円の直径dとしてもよい。
【0021】
導電層1の材質は、導電性を有していればよく、特に限定されない。導電層1としては、Au、Pt、Ag、Cu、Pd、Al、Ti、Ta、Zr、Si、Sn、Pb、Ga、Ge、Co、Zn、Fe、In、およびBaからなる群から選択される金属を少なくとも1種以上含有し、前記記載の金属を少なくとも1種以上含有する酸化物および/または窒化物、あるいはそれらの複合体で形成することができる。なお、発熱特性が高い導電層1の材質としては、TiN、TaN、ZrN、TiZr等が好ましい。
【0022】
導電層1の積層方向に垂直な面における外形は、特に限定されない。導電層1の積層方向に垂直な面における外形は、円状、多角形状であってもよい。また、導電層1の積層方向に垂直な面における外形は、異径形状でも良いし、等方的な形であってもよい。
【0023】
導電層1の厚さは、特に限定されない。導電層1の厚さが5~200nmであることが好ましい。導電層1の厚さが5~200nmであることで、環境温度が数十℃~500℃において、効率よく熱エネルギーを吸収する微細構造体10を形成しやすい。また、各導電層1間で、導電層1の厚さが同じであってもよいし、異なっていてもよい。吸収する熱エネルギーの波長範囲に応じて適宜設定することができる。導電層1の厚さが厚くなるにつれ、熱エネルギーの吸収波長域が長波長側にシフトする。
【0024】
誘電体層5の材質は、絶縁性を有していればよく、特に限定されない。誘電体層5の材質としては、MgF、CaF、SiO、ZrO、ZnO、Al、MnO、MoO、MgO、CaO、WO、TiO、BaTiO、Si、AlN、SiC,ロッシェル塩などの金属含有化合物、ポリエチレンやポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーやノルボルネン系樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンやポリジフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリスチレンやAS樹脂などのスチレン系樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ナイロン、尿素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンオキサイドなどの有機化合物などを適時選択して用いることができる。
【0025】
誘電体層5の誘電率としては、例えば、1~50F/mであることが好ましい。誘電率が1~50F/mであることで、各導電層1の分極率が向上する。
【0026】
誘電体層5は、微細構造体10の最も外側にあることが好ましい。即ち、最外層9は、誘電体層5であることが好ましい。誘電体層5が最外層9にあることで、導電層1を酸化などから保護することができる。
【0027】
誘電体層5の積層方向に垂直な面における外形は、特に限定されない。誘電体層5の積層方向に垂直な面における外形は、円状、多角形状であってもよい。また、導電層1の積層方向に垂直な面における外形は、異径形状でも良いし、等方的な形であってもよい。誘電体層5の外形は、導電層1の外形と同じであることが好ましい。
【0028】
誘電体層5の厚さは、特に限定されない。誘電体層5の厚さが5~200nmであることが好ましい。誘電体層5の厚さが5~200nmであることで、環境温度が数十℃~500℃において、効率よく熱エネルギーを吸収する微細構造体10を形成しやすい。また、各誘電体層5間で、誘電体層5の厚さが同じであってもよいし、異なっていてもよい。吸収する熱エネルギーの波長範囲に応じて適宜設定することができる。
【0029】
(微細構造体10の配置)
基材30上に、複数の微細構造体10が設けられることが好ましい。複数の微細構造体10が設けられることで、吸収熱エネルギー量を増加させることができる。
【0030】
微細構造体10の各導電層1の最小包含円の直径の最大値を微細構造体10の最大直径としたとき、少なくとも一部の微細構造体10間で最大直径が異なっていることが好ましい。微細構造体10間で最大直径が異なっていれば、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。
【0031】
微細構造体10の基材30上の配列は周期的であってもよいし、ランダムな配置であってもよい。基材30表面における微細構造体10の密度が高いことが好ましい。微細構造体10同士は接触していないことが好ましい。2つの微細構造体10の間隔は、例えば、微細構造体10の小さいほうの最大直径よりも小さいことが好ましい。
【0032】
(微細構造体10の形成方法)
微細構造体10の形成方法は、特に限定されない。例えば、基材30上に真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法、プラズマ重合などのCVD法、スピンコートなどの塗布法など公知の方法にて、導電層1と誘電体層5とを複数交互に積層して積層体を形成する。その後、パターニング技術によって、微細構造体10を形成してもよい。また、その際、積層体表面をランダムに(ウェットエッチング、またはドライエッチングしてもよい。
微細構造体10をジメチルポリシロキサン(PDMS)などの転写可能な基板上に形成し、基材30と微細構造体10を形成したPDMS基板とを接触させることで、基材30に微細構造体10を転写してもよい。微細構造体10を形成する組成物を溶媒に溶解および/または分散させて塗工液を調製し、得られた塗工液を基材30に塗布し乾燥、必要応じて熱処理や光照射することで、基材30上に微細構造体10を形成してもよい。
【0033】
(熱電変換素子100)
図3は、第1実施形態に係る熱電変換素子を示す概略斜視図である。熱電変換素子100は、電磁波吸収構造体50、第1電極41、第2電極42、熱電材料20および絶縁基板52を備える。熱電変換素子100は、電磁波吸収構造体50が周囲の熱エネルギーを集約することで、温度勾配を形成できる。そのため、熱電変換素子100は均一な温度環境でも発電することができる。以下、各部について説明する。
【0034】
(絶縁基板52)
絶縁基板52は、第2電極42を固定する機能を備える。絶縁基板52の材質は、使用する温度(例えば、200℃)以上の融点を持ち、第2電極42との間で絶縁する材料であれば、特に限定されない。絶縁基板52の材質としては、例えばアルミナである。
【0035】
(第1電極41)
第1電極41は、熱電材料20の一端と電気的に接続される。第1電極41は、導電性を有していれば、特に限定されない。熱電材料20と接触する面を第1面41aとし、その反対の面を第2面41bとしたとき、第2面41bに、電磁波吸収構造体50が、伝熱可能に設けられている。第1電極41は、電極の一例である。熱電変換素子100は、電磁波吸収構造体50を電極に備える。第1電極41としては、導電性金属からなる基材、導電性金属で被覆した絶縁性セラミックス基材等などが挙げられる。
【0036】
第1電極41に用いられる導電性金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、鉄、チタン、アルミニウム等の金属およびこれらの合金を用いることができる。熱電変換素子100の使用環境において、酸化及び熔融の生じない金属を用いることが好ましい。
【0037】
第1電極41に用いられる絶縁性セラミックスとしては、例えば、アルミナ等の酸化物セラミックスからなる基板を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、および、これらの合金を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する方法は特に限定されず、蒸着法、上述の金属または合金を含むペーストを塗布する方法等によって形成することができる。
【0038】
第1電極41の幅、厚さ等は、熱電材料20の大きさ、電気抵抗率等に合わせて適宜設定することができる。また、第1電極41から効率よく放熱するためには、熱伝導率が高い材質を選択し、第1電極41を薄くすることが好ましい。第1電極41の厚さは例えば、0.01mm~2mmである。
【0039】
(電磁波吸収構造体50)
電磁波吸収構造体50は、第1電極41の表面41bに設けられている。電磁波吸収構造体50は、空隙が無いように、第1電極41に設けられている。例えば、電磁波吸収構造体50の基材30と第1電極41とは熱伝導率が高い接着剤などで固定されていてもよい。
【0040】
(第2電極42)
第2電極42は、絶縁基板52上に固定される。第2電極42は、熱電材料20と電気的に接続される。第2電極42は、導電性を有していれば、特に限定されない。第2電極42としては、導電性金属からなる基材、導電性金属で被覆した絶縁性セラミックス基材等などが挙げられる。
【0041】
第2電極42に用いられる導電性金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、鉄、チタン、アルミニウム等の金属およびこれらの合金を用いることができる。熱電変換素子100の使用環境において、酸化及び熔融の生じない金属を用いることが好ましい。
【0042】
第2電極42に用いられる絶縁性セラミックスとしては、例えば、アルミナ等の酸化物セラミックスからなる基板を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、および、これらの合金を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する方法は特に限定されず、蒸着法、上述の金属または合金を含むペーストを塗布する方法等によって形成することができる。
【0043】
第2電極42の幅、厚さ等は、熱電材料20の大きさ、電気抵抗率等に合わせて適宜設定することができる。また、第2電極42から効率よく放熱するためには、熱伝導率が高い材質を選択し、第2電極42を薄くすることが好ましい。第2電極42の厚さは例えば、0.01mm~2mmである。
【0044】
(熱電材料20)
熱電材料20は一方の端が第1電極41と接続され、他方の端が第2電極42と接続される。熱電材料20は、p型熱電材料またはn型熱電材料である。特に限定されず、公知の熱電変換素子に用いられる公知の材料を用いることができる。例えば、熱電材料20としては、BiTe系材料、BiSb系材料、BiSbTe系材料などが挙げられる。
【0045】
以上、第1実施形態に係る熱電変換素子100および電磁波吸収構造体50について説明した。第1実施形態に係る電磁波吸収構造体50によれば、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも熱電変換素子上に温度差を生じさせることが可能である。電磁波吸収構造体50を備える熱電変換素子100によれば、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも発電することが可能である。
【0046】
微細構造体10において、基材側導電層7の最小包含円の直径dが最外導電層8の最小包含円の直径よりも大きかったが、基材側導電層7の最小包含円の直径dが最外導電層8の最小包含円の直径よりも小さくてもよい。
【0047】
熱電変換素子100において、第1電極41を基材30として、第1電極41の表面41b上に微細構造体10を直接設けることが好ましい。第1電極41の表面41b上に微細構造体10を直接設けることで、微細構造体10が吸収した熱エネルギーを効率よく第1電極41に伝えることができる。これによって、熱電変換素子100の熱電変換特性を向上することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る電磁波吸収構造体50Aの平面図である。電磁波吸収構造体50Aでは、基材30上に、複数の微細構造体10Aが設けられる。複数の微細構造体10Aが設けられることで、吸収熱エネルギー量を増加させることができる。
【0049】
また、電磁波吸収構造体50Aでは、微細構造体10Aの各導電層1の最小包含円の直径の最大値を微細構造体10の最大直径としたとき、各微細構造体10間で最大直径が異なっている。各微細構造体10間で最大直径が異なっていれば、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。また、電磁波吸収構造体50Aでは、積層方向hに対し垂直な面(XY平面)で、微細構造体10の各導電層1の最小包含円の直径dが異なっている。微細構造体10間で各導電層1の大きさが異なっているので、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。
【0050】
微細構造体10Aの基材30上での配列は周期的であってもよいし、ランダムな配置であってもよい。基材30表面における微細構造体10Aの密度が高いことが好ましい。
【0051】
(微細構造体10Aの形成方法)
微細構造体10Aの形成方法は、特に限定されない。例えば、基材30上に真空蒸着など公知の方法で、導電層1と誘電体層5とを複数交互に積層して積層体を形成する。その後、積層体表面を公知の方法でウェットエッチング、またはドライエッチングすることで、微細構造体10Aを得ることができる。
【0052】
以上、第2実施形態に係る電磁波吸収構造体50Aについて説明した。第2実施形態に係る電磁波吸収構造体50Aによれば、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも熱電変換素子上に温度差を生じさせることが可能である。各微細構造体10A間で最大直径が異なっているので、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。また、電磁波吸収構造体50Aでは、微細構造体10A内で各導電層1の最小包含円の直径が異なっているので、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。
【0053】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る電磁波吸収構造体50Bの平面図である。電磁波吸収構造体50Bでは、基材30上に、複数の微細構造体10Bが設けられる。複数の微細構造体10Bが設けられることで、吸収熱エネルギー量を増加させることができる。
【0054】
また、電磁波吸収構造体50Bでは、微細構造体10Bの各導電層1の最小包含円の直径の最大値を微細構造体10の最大直径としたとき、各微細構造体10間で最大直径が異なっている。各微細構造体10間で最大直径が異なっていれば、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。また、電磁波吸収構造体50Bでは、積層方向hに対し垂直な面(XY平面)で、微細構造体10Bの各導電層1の最小包含円の直径dが異なっている。微細構造体10B内で各導電層1の大きさが異なっているので、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。電磁波吸収構造体50Bでは、各微細構造体10B間で、積層方向に垂直な面における導電層1の外形が異なっている。導電層1の外形は、特に限定されず、例えば、三角形状、四角形状、五角形状、クロス状、円状、楕円状などである。
【0055】
微細構造体10Bの基材30上での配列は周期的であってもよいし、ランダムな配置であってもよい。基材30表面における微細構造体10Bの密度が高いことが好ましい。
【0056】
次に、図6図8を例に、電磁波吸収構造体50Bのように、導電層1の形状が円形ではない場合の最小包含円の直径の求め方について説明する。図6は、積層方向に垂直な面における導電層1Aの形状(外形)が五角形状の場合の最小包含円の直径を説明する図である。図6に示すように、導電層1Aを内包する円であり、かつ、導電層1Aを内包する円のうち、直径が最小のとなる円C1を作成する。最小包含円の直径d1は、円C1の直径となる。
【0057】
図7は、積層方向に垂直な面における導電層1Bの形状(外形)がクロス状(十字状)の場合の最小包含円の直径を説明する図である。クロス状の場合も同様に、導電層1Bを内包する円であり、かつ、導電層1Bを内包する円のうち、直径が最小の円を作成する。最小包含円の直径d2は、円C2の直径となる。
【0058】
図8は、積層方向に垂直な面における導電層1Cの形状(外形)が楕円状の場合の最小包含円の直径を説明する図である。図8に示すように、導電層1Cを内包する円であり、かつ、導電層1Cを内包する円のうち、直径が最小の円C3を作成する。最小包含円の直径d3は、円C3の直径となる。導電層1Cの場合は、楕円の長径と直径d3が等しくなる。同様の方法で、三角形状などについても最小包含円の直径を求めることができる。
【0059】
(微細構造体10Bの形成方法)
微細構造体10Bの形成方法は、特に限定されない。例えば、基材30上に真空蒸着など公知の方法で、導電層1と誘電体層5とを複数交互に積層して積層体を形成する。その後、積層体表面をウェットエッチング、またはドライエッチングすることで、電磁波吸収構造体50Bを得ることができる。
【0060】
以上、第3実施形態に係る電磁波吸収構造体50Bについて説明した。第3実施形態に係る電磁波吸収構造体50Bによれば、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも熱電変換素子上に温度差を生じさせることが可能である。各微細構造体10B間で最大直径が異なっているので、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。また、電磁波吸収構造体50Bでは、微細構造体10B内で各導電層1の最小包含円の直径が異なっているので、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。
【0061】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る電磁波吸収構造体50Cの平面図である。図10は、図9の電磁波吸収構造体のF10-F10線に沿う端面図である。電磁波吸収構造体50Cでは、基材30上に、複数の微細構造体10Cが設けられる。複数の微細構造体10Cが設けられることで、吸収熱エネルギー量を増加させることができる。
【0062】
また、電磁波吸収構造体50Cでは、各微細構造体10C間で最大直径が異なっている。各微細構造体10C間で最大直径が異なっていれば、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。また、電磁波吸収構造体50Cでは、積層方向hに対し垂直な面(XY平面)で、微細構造体10Cの各導電層1の最小包含円の直径dが異なっている。微細構造体10間で各導電層1の大きさが異なっているので、より広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。
【0063】
微細構造体10Cの各導電層1の最小包含円の直径は、積層方向に向かって徐々に小さくなくてもよい。例えば、積層方向に沿って、所定の位置(例えば、微細構造体10Cの高さの半分の位置)徐々に最小包含円の直径が小さくなった後、所定の位置からは、導電層1の最小包含円の直径が大きくなってもよい。積層方向に沿って、基材30側から最表層に向かって、導電層1内で、徐々に最小包含円の直径が小さくなってもよい。積層方向に沿って、基材30側から最表層に向かって、導電層1内で、徐々に最小包含円の直径が大きくなってもよい。積層方向に沿って、基材30側から最表層に向かって、導電層1内で、最小包含円の直径が同じでもよい。微細構造体10C中で、複数の導電層1の最小包含円の直径が同じでもよい。
【0064】
(微細構造体10Cの形成方法)
微細構造体10Cの形成方法は、特に限定されない。例えば、基材30上に真空蒸着など公知の方法で、導電層1と誘電体層5とを複数交互に積層して積層体を形成する。その後、積層体を公知の方法でウェットエッチング、またはドライエッチングすることで、微細構造体10Bを得ることができる。
【0065】
(熱電変換素子100C)
図11は、熱電変換素子を示す概略斜視図である。図12は、図11に示す熱電変換素子のF12-F12線に沿う端面図である。熱電変換素子100Cは、電磁波吸収構造体50C、第1電極41、第2電極42、p型熱電材料21、n型熱電材料22、伝熱性接着層35、および絶縁基板52を備える。p型熱電材料21とn型熱電材料22とは第1電極41および第2電極42を介し、電気的に直列に交互に接続されている。熱電変換素子100Cは、電磁波吸収構造体50が周囲の熱エネルギーを集約することで、温度勾配を形成できる。そのため、熱電変換素子100Cは均一な温度環境でも発電することができる。以下、各部について説明する。
【0066】
(絶縁基板52)
絶縁基板52は、第2電極42を固定する機能を備える。絶縁基板52の材質は、使用する温度(例えば、200℃)以上の融点を持ち、第2電極42との間で絶縁する材料であれば、特に限定されない。絶縁基板52の材質としては、例えばアルミナである。
【0067】
(第1電極41)
第1電極41は、p型熱電材料21の一端と電気的に接続され、n型熱電材料22の一端と電気的に接続される。第1電極41は、導電性を有していれば、特に限定されない。熱電材料20と接触する面を第1面41aとし、その反対の面を第2面41bとしたとき、第2面41bに、電磁波吸収構造体50が、伝熱可能に設けられている。第1電極41は、電極の一例である。熱電変換素子100は、電磁波吸収構造体50を電極に備える。第1電極41としては、導電性金属からなる基材、導電性金属で被覆した絶縁性セラミックス基材等などが挙げられる。
【0068】
第1電極41に用いられる導電性金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、鉄、チタン、アルミニウム等の金属およびこれらの合金を用いることができる。熱電変換素子100の使用環境において、酸化及び熔融の生じない金属を用いることが好ましい。
【0069】
第1電極41に用いられる絶縁性セラミックスとしては、例えば、アルミナ等の酸化物セラミックスからなる基板を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、および、これらの合金を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する方法は特に限定されず、蒸着法、上述の金属または合金を含むペーストを塗布する方法等によって形成することができる。
【0070】
第1電極41の幅、厚さ等は、熱電材料20の大きさ、電気抵抗率等に合わせて適宜設定することができる。また、第1電極41から効率よく放熱するためには、熱伝導率が高い材質を選択し、第1電極41を薄くすることが好ましい。第1電極41の厚さは例えば、0.01mm~2mmである。
【0071】
(電磁波吸収構造体50C)
電磁波吸収構造体50Cは、第1電極41の表面41bに設けられている。電磁波吸収構造体50は、空隙が無いように、第1電極41に設けられている。電磁波吸収構造体50Cは、電磁波吸収構造体50Cの基材30と第1電極41との間に、熱伝導率が高い伝熱性接着層35がある。
【0072】
(伝熱性接着層35)
伝熱性接着層35は、電磁波吸収構造体50Cと第1電極41との間に設けられる。伝熱性接着層35があることで、第1電極41に電磁波吸収構造体50Cの熱を効率よく伝えることができる。伝熱性接着層35は、熱伝導率が高く、電磁波吸収構造体50Cを第1電極41に固定できれば、特に限定されない。伝熱性接着層は、例えば、熱伝導性接着剤の硬化物から構成されていてもよい。
【0073】
(p型熱電材料21)
p型熱電材料21は一方の端が第1電極41と接続され、他方の端が第2電極42と接続される。p型熱電材料21は、特に限定されず、公知の熱電変換素子に用いられる公知の材料を用いることができる。例えば、p型熱電材料21としては、BiTe系材料、BiSb系材料、BiSbTe系材料などが挙げられる。
【0074】
(n型熱電材料22)
n型熱電材料22は一方の端が第1電極41と接続され、他方の端が第2電極42と接続される。n型熱電材料22は、特に限定されず、公知の熱電変換素子に用いられる公知の材料を用いることができる。例えば、n型熱電材料22としては、BiTe系材料、BiSb系材料、BiSbTe系材料などが挙げられる。
【0075】
(第2電極42)
第2電極42は、絶縁基板52上に固定される。第2電極42は、p型熱電材料21の一端と電気的に接続され、n型熱電材料22の一端と電気的に接続される。第2電極42は、導電性を有していれば、特に限定されない。第2電極42としては、導電性金属からなる基材、導電性金属で被覆した絶縁性セラミックス基材等などが挙げられる。
【0076】
第2電極42に用いられる導電性金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、鉄、チタン、アルミニウム等の金属およびこれらの合金を用いることができる。熱電変換素子100の使用環境において、酸化及び熔融の生じない金属を用いることが好ましい。
【0077】
第2電極42に用いられる絶縁性セラミックスとしては、例えば、アルミナ等の酸化物セラミックスからなる基板を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、および、これらの合金を用いることができる。絶縁性セラミックスを被覆する方法は特に限定されず、蒸着法、上述の金属または合金を含むペーストを塗布する方法等によって形成することができる。
【0078】
第2電極42の幅、厚さ等は、p型熱電材料21、n型熱電材料22の大きさ、電気抵抗率等に合わせて適宜設定することができる。また、第2電極42から効率よく放熱するためには、熱伝導率が高い材質を選択し、第2電極42を薄くすることが好ましい。第2電極42の厚さは例えば、0.01mm~2mmである。
【0079】
以上、第4実施形態に係る熱電変換素子100Cおよび電磁波吸収構造体50Cについて説明した。第4実施形態に係る電磁波吸収構造体50Cによれば、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも熱電変換素子上に温度差を生じさせることが可能である。電磁波吸収構造体50Cを備える熱電変換素子100Cによれば、より幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも発電することが可能である。
【0080】
熱電変換素子100Cにおいて、第1電極41を基材30として、第1電極41の表面41b上に微細構造体10Cを直接設けることが好ましい。第1電極41の表面41b上に微細構造体10Cを直接設けることで、微細構造体10Cが吸収した熱エネルギーを効率よく第1電極41に伝えることができる。これによって、熱電変換素子100Cの熱電変換特性を向上することができる。
【0081】
(第5実施形態)
図13は、第5実施形態の電磁波吸収構造体50Dの模式平面図である。電磁波吸収構造体50Dでは、基材30上に、複数の微細構造体10Dが設けられる。複数の微細構造体10Dが設けられることで、吸収熱エネルギー量を増加させることができる。
【0082】
また、電磁波吸収構造体50Dでは、各誘電体層5が連続して接続されている。このような構成でも幅広い波長範囲の熱エネルギーを吸収することができる。また、第5実施形態に係る電磁波吸収構造体50Dは、全体が誘電体層5で導電層1が覆われているため、電磁波吸収構造体50の耐久性をより向上することができる。
【0083】
以上、本発明の熱電変換素子100および電磁波吸収構造体50について詳説した。本発明は、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0084】
上述の態様では、ゼーベック効果を利用した熱電変換素子で説明したが、本発明においては、例えば特開2009-130070号、同2009-151000号、同2011ー249746号、同2012-109367号、同2014-154850号、同2015ー222789号等に開示されているスピンゼーベック効果を利用した熱電変換素子と組み合わせることも可能である。
【実施例0085】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0086】
(実施例1)
導電層A(円形、厚さ0.1μm、直径1.85μm)、誘電体層B(円形、厚さ0.06μm、直径1.85μm)、導電層C(円形、厚さ0.1μm、直径1.75μm)、誘電体層D(円形、厚さ0.06μm、直径1.75μm)、導電層E(円形、厚さ0.1μm、直径1.65μm)誘電体層F(円形、厚さ0.06μm、直径1.65μm)、導電層G(円形、厚さ0.1μm、直径1.53 μm)、誘電体層H(円形、厚さ0.06μm、直径1.53μm)をこの順で積層した積層体で、構造配列周期4 μmの積層体を実施例1とした。構造配列周期は、積層体(微細構造体)が一定の間隔で規則的に配列した際の、積層体間の間隔を言う。
【0087】
(実施例2)
導電層A(円形、厚さ0.03μm、直径1.85μm)、誘電体層B(円形、厚さ0.06μm、直径1.85μm)、導電層C(円形、厚さ0.03μm、直径1.75μm)、誘電体層D(円形、厚さ0.06μm、直径1.75μm)、導電層E(円形、厚さ0.03μm、直径1.65 μm)誘電体層F(円形、厚さ0.06μm、直径1.65μm)、導電層G(円形、厚さ0.03μm、直径1.53 μm)、誘電体層H(円形、厚さ0.06μm、直径1.53μm)をこの順で積層した積層体で、構造配列周期3 μmの積層体を実施例2とした。
【0088】
(実施例3)
導電層A(円形、厚さ0.08μm、直径1.85μm)、誘電体層B(円形、厚さ0.06μm、直径1.85μm)、導電層C(円形、厚さ0.08μm、直径1.75μm)、誘電体層D(円形、厚さ0.06μm、直径1.75μm)、導電層E(円形、厚さ0.08μm、直径1.65 μm)誘電体層F(円形、厚さ0.06μm、直径1.65μm)、導電層G(円形、厚さ0.08μm、直径1.53 μm)、誘電体層H(円形、厚さ0.06μm、直径1.53μm)をこの順で積層した積層体で、構造配列周期3 μmの積層体を実施例3とした。
【0089】
(実施例4)
導電層A(円形、厚さ0.10μm、直径1.85μm)、誘電体層B(円形、厚さ0.06μm、直径1.85μm)、導電層C(円形、厚さ0.10μm、直径1.75μm)、誘電体層D(円形、厚さ0.06μm、直径1.75μm)、導電層E(円形、厚さ0.10μm、直径1.65 μm)誘電体層F(円形、厚さ0.06μm、直径1.65μm)、導電層G(円形、厚さ0.10μm、直径1.53 μm)、誘電体層H(円形、厚さ0.06μm、直径1.53μm)をこの順で積層した積層体で、構造配列周期3 μmの積層体を実施例4とした。
【0090】
(実施例5)
導電層A(円形、厚さ0.13μm、直径1.85μm)、誘電体層B(円形、厚さ0.06μm、直径1.85μm)、導電層C(円形、厚さ0.13μm、直径1.75μm)、誘電体層D(円形、厚さ0.06μm、直径1.75μm)、導電層E(円形、厚さ0.13μm、直径1.65 μm)誘電体層F(円形、厚さ0.06μm、直径1.65μm)、導電層G(円形、厚さ0.13μm、直径1.53 μm)、誘電体層H(円形、厚さ0.06μm、直径1.53μm)をこの順で積層した積層体で、構造配列周期3 μmの積層体を実施例5とした。
【0091】
(実施例6)
導電層A(円形、厚さ0.18μm、直径1.85μm)、誘電体層B(円形、厚さ0.06μm、直径1.85μm)、導電層C(円形、厚さ0.18μm、直径1.75μm)、誘電体層D(円形、厚さ0.06μm、直径1.75μm)、導電層E(円形、厚さ0.18μm、直径1.65 μm)誘電体層F(円形、厚さ0.06μm、直径1.65μm)、導電層G(円形、厚さ0.18μm、直径1.53 μm)、誘電体層H(円形、厚さ0.06μm、直径1.53μm)をこの順で積層した積層体で、構造配列周期3 μmの積層体を実施例6とした。
【0092】
(比較例1)
導電層A(円形、厚さ0.1μm、直径1.85μm)、誘電体層B(円形、厚さ0.06μm、直径1.85μm)、および導電層C(円形、厚さ0.1μm、直径1.85μm)をこの順で積層した積層体を比較例1とした。
【0093】
実施例1および比較例1の積層体に対し、有限要素法によりシミュレーションを行った。得られた結果を図14に示す。図14の横軸は波長(μm)を表し、縦軸は吸収強度(%)を表す。図14に示す通り、各導電層の直径を変えた実施例1の積層体は幅広い波長の熱エネルギーを吸収した。一方、導電層の直径が同じ比較例1の積層体は、1つの吸収ピークがあるのみであった。以上より、最小包含円の直径が異なる導電層を積層することで、幅広い熱エネルギーを吸収することが確認された。これによって、幅広い波長域の熱エネルギーを吸収可能であり、かつ、均一な温度環境下でも局所的な熱を発生させることができ、温度差による発電が可能となる。
【0094】
次に、実施例2~5の積層体に対し、有限要素法によりでシミュレーションを行った。得られた結果を図15に示す。図15の横軸は波長(μm)を表し、縦軸は吸収率(%)を表す。図15に示す通り、Ag(導電層膜厚)の値が大きくなるにつれ、熱エネルギーの吸収波長域が長波長側にシフトかつ広帯域吸収特性を示した。このことから、Ag(導電層膜厚)の値を調整することで、熱エネルギーの吸収域を調製することができることが確認された。
【符号の説明】
【0095】
1 導電層、5 誘電体層、7 基材側導電層、8 最外導電層、9 最外層、10 微細構造体、20、熱電材料、21 p型熱電材料、22 n型熱電材料、30 基材、41 第1電極、42 第2電極、50 電磁波吸収構造体、52 絶縁基板、100 熱電変換素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15