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▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029981
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】横軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
F04D29/58 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132490
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅樹
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB05
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC08
3H130BA32D
3H130BA32E
3H130BA97A
3H130CA21
3H130DA02X
3H130DB11Z
3H130DD01Z
3H130DJ06Z
3H130EA02A
3H130EB04A
3H130ED02A
(57)【要約】      (修正有)
【課題】設置スペースを縮小することが可能であり且つ水中軸受の摩擦熱を抑制可能であり且つ水中軸受の片アタリを軽減可能とする。
【解決手段】主軸11と、当該主軸に連結された羽根車12と、吸込口が形成され且つ吐出口の下側が形成されている下部ケーシング14と、当該下部ケーシングの上に設けられた吸込ケーシング15と、当該下部ケーシング及び当該吸込ケーシングの上に設けられ、吐出口の上側が形成されている上部ケーシング16と、を備え、当該吸込ケーシングは、主軸の長軸方向に略垂直な縦断面において円状であり且つ当該主軸の長軸方向に略平行な当該縦断面において当該主軸の長軸方向に沿って当該羽根車側に進むに従って外形が狭まる形状を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、
前記主軸に連結された羽根車と、
吸込口が形成され且つ吐出口の下側が形成されている下部ケーシングと、
前記羽根車より吸込側に設けられ且つ前記下部ケーシングの上に設けられた吸込ケーシングと、
前記下部ケーシング及び前記吸込ケーシングの上に設けられ、吐出口の上側が形成されている上部ケーシングと、
を備え、
前記吸込ケーシングは、主軸の長軸方向に略垂直な縦断面において円状であり且つ当該主軸の長軸方向に略平行な当該縦断面において当該主軸の長軸方向に沿って前記羽根車側に進むに従って外形が狭まる形状を有する横軸ポンプ。
【請求項2】
前記吸込ケーシング内に設けられ且つ前記主軸の周囲に設けられた外軸受と、
前記吸込ケーシング内に設けられ且つ前記外軸受よりも前記羽根車側において前記主軸の周囲に設けられた軸封部と、
を備える請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項3】
前記下部ケーシングには、減速機及び/または駆動機を下から支持する支持部材が設けられている
請求項1または2に記載の横軸ポンプ。
【請求項4】
真空ポンプに接続する真空配管を備え、
前記真空配管の一端は、前記上部ケーシングの高さが最も高い頂部に連通している
請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項5】
前記上部ケーシングの内部に設けられた旋回流防止部材を更に備え、
前記旋回流防止部材は、当該上部ケーシングの内部の旋回流に対向する対向面が形成され、内部は空洞であり、当該対向面より内部旋回流の下流側に空気吸入口が形成されている
請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項6】
前記主軸に垂直な縦断面において、前記旋回流防止部材は、V字状、L字状、または一部に開口が設けられたコの字状である
請求項5に記載の横軸ポンプ。
【請求項7】
土木駆体の上に固定された水密なポンプベースを更に備え、
前記下部ケーシングは、開口端部から外側に延伸する延伸部を有し、当該延伸部が前記ポンプベースの上に固定されており、
前記延伸部の下方に接して円周状に設けられ且つ前記土木駆体に接して設けられたベルマウスを更に備え、
前記ベルマウスの流入口寸法が、吸込槽に設けられた流入水路の寸法に略一致しており、
前記ベルマウスの吐出口寸法が、前記下部ケーシングの開口端部の寸法に略一致している請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項8】
前記ベルマウスの流入口及び/または前記下部ケーシングの流入口の形状は矩形または円形であり、
前記ベルマウスの吐出口と前記下部ケーシングの流入口は、形状が同じであり且つ面積が同じである
請求項7に記載の横軸ポンプ。
【請求項9】
前記ポンプベースの内側の端部の水平位置は、吸込槽に設けられた流入水路の外縁の水平位置である
請求項7または8に記載の横軸ポンプ。
【請求項10】
前記上部ケーシング及び/または前記下部ケーシングには点検口が設けられている
請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項11】
土木駆体に固定され、且つ前記下部ケーシングの内部空間の下部及び/または当該内部空間の下方に設けられた整流部材を備える
請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項12】
前記上部ケーシングのボリュート形状が異なり、前記主軸の軸中心が流入水路中心からオフセットされている
請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項13】
吸込管が設けられておらず、
前記吸込ケーシングにおいて前記羽根車へ供給する液体の整流を行い、
吸込槽に設けられた流入水路を介して吸上げを行う
請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項14】
前記下部ケーシングの下方に設けられ且つ流入水路を形成する流入口ケーシングを更に備える
請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項15】
前記上部ケーシングに連結する案内翼を更に備える請求項1に記載の横軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横軸ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の横軸斜流ポンプの吸込形状は、ケーシング内に横置きされた羽根車入口に向けて均等に流入するように曲率の大きい曲管型の吸込ケーシングが採用されている(例えば特許文献1参照)。吸込ケーシング内で生じる旋回流がそのまま羽根車に流入するとポンプ性能に影響するため、羽根車入口部に旋回防止板や曲胴内に案内翼を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-94563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
曲率の大きい曲管型の吸込ケーシング自体が大型化するため、ポンプ全体寸法が軸方向に伸びて設置スペースが大きくなり、限られたスペースへの配置が立軸軸斜流ポンプに比べて困難という問題がある。
また吸込ケーシングの大型化により主軸の全長が長くなるので、主軸を含む回転体の質量が重くなり水中軸受のPV値が高くなり摩擦熱が大きくなるという問題がある。ここで、PV値とは面圧Pと表面速度Vの積であり摩擦熱の尺度である。
また吸込ケーシングの大型化により主軸の全長が長くなるので、主軸の撓みによる水中軸受の片アタリへの影響が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、設置スペースを縮小することが可能であり且つ水中軸受の摩擦熱を抑制可能であり且つ水中軸受の片アタリを軽減可能な横軸ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る横軸ポンプは、主軸と、前記主軸に連結された羽根車と、吸込口が形成され且つ吐出口の下側が形成されている下部ケーシングと、前記羽根車より吸込側に設けられ且つ前記下部ケーシングの上に設けられた吸込ケーシングと、前記下部ケーシング及び前記吸込ケーシングの上に設けられ、吐出口の上側が形成されている上部ケーシングと、を備え、前記吸込ケーシングは、主軸の長軸方向に略垂直な縦断面において円状であり且つ当該主軸の長軸方向に略平行な当該縦断面において当該主軸の長軸方向に沿って前記羽根車側に進むに従って外形が狭まる形状を有する。
【0007】
本発明の第2の態様に係る横軸ポンプは、第1の態様に係る横軸ポンプであって、前記吸込ケーシング内に設けられ且つ前記主軸の周囲に設けられた外軸受と、前記吸込ケーシング内に設けられ且つ前記外軸受よりも前記羽根車側において前記主軸の周囲に設けられた軸封部と、を備える。
【0008】
本発明の第3の態様に係る横軸ポンプは、第1または2の態様に係る横軸ポンプであって、前記下部ケーシングには、減速機及び/または駆動機を下から支持する支持部材が設けられている。
【0009】
本発明の第4の態様に係る横軸ポンプは、第1から3のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、真空ポンプに接続する真空配管を備え、前記真空配管の一端は、前記上部ケーシングの高さが最も高い頂部に連通している。
【0010】
本発明の第5の態様に係る横軸ポンプは、第1から4のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、前記上部ケーシングの内部に設けられた旋回流防止部材を更に備え、前記旋回流防止部材は、当該上部ケーシングの内部の旋回流に対向する対向面が形成され、内部は空洞であり、当該対向面より内部旋回流の下流側に空気吸入口が形成されている。
【0011】
本発明の第6の態様に係る横軸ポンプは、第5の態様に係る横軸ポンプであって、前記主軸に垂直な縦断面において、前記旋回流防止部材は、V字状、L字状、または一部に開口が設けられたコの字状である。
【0012】
本発明の第7の態様に係る横軸ポンプは、第1から6のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、土木駆体の上に固定された水密なポンプベースを更に備え、前記下部ケーシングは、開口端部から外側に延伸する延伸部を有し、当該延伸部が前記ポンプベースの上に固定されており、前記延伸部の下方に接して円周状に設けられ且つ前記土木駆体に接して設けられたベルマウスを更に備え、前記ベルマウスの流入口寸法が、吸込槽に設けられた流入水路の寸法に略一致しており、前記ベルマウスの吐出口寸法が、前記下部ケーシングの開口端部の寸法に略一致している。
【0013】
本発明の第8の態様に係る横軸ポンプは、第7の態様に係る横軸ポンプであって、前記ベルマウスの流入口及び/または前記下部ケーシングの流入口の形状は矩形または円形であり、前記ベルマウスの吐出口と前記下部ケーシングの流入口は、形状が同じであり且つ面積が同じである。
【0014】
本発明の第9の態様に係る横軸ポンプは、第7または8の態様に係る横軸ポンプであって、前記ポンプベースの内側の端部の水平位置は、吸込槽に設けられた流入水路の外縁の水平位置である。
【0015】
本発明の第10の態様に係る横軸ポンプは、第1から9のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、前記上部ケーシング及び/または前記下部ケーシングには点検口が設けられている。
【0016】
本発明の第11の態様に係る横軸ポンプは、第1から10のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、土木駆体に固定され、且つ前記下部ケーシングの内部空間の下部及び/または当該内部空間の下方に設けられた整流部材を備える。
【0017】
本発明の第12の態様に係る横軸ポンプは、第1から11のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、前記上部ケーシングのボリュート形状が異なり、前記主軸の軸中心が流入水路中心からオフセットされている。
【0018】
本発明の第13の態様に係る横軸ポンプは、第1から12のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、吸込管が設けられておらず、前記吸込ケーシングにおいて前記羽根車へ供給する液体の整流を行い、吸込槽に設けられた流入水路を介して吸上げを行う。
【0019】
本発明の第14の態様に係る横軸ポンプは、第1から12のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、前記下部ケーシングの下方に設けられ且つ流入水路を形成する流入口ケーシングを更に備える。
【0020】
本発明の第15の態様に係る横軸ポンプは、第1から14のいずれかの態様に係る横軸ポンプであって、前記上部ケーシングに連結する案内翼を更に備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、従来の曲胴形式吸込ケーシングより軸方向の長さが短縮され設置スペースが削減される。上部ケーシングと下部ケーシングで上下2つ割りの構造を持つことで、従来の横軸軸流斜流ポンプと同様の維持管理性を持つ。また、主軸の長さが短くなり、主軸の質量が軽くなり、面圧(=質量÷軸の接触面積)が小さくなり、その結果水中軸受のPV値が小さくなり、摩擦熱を抑制することができる。また羽根車前後の軸受間の距離が短くなることで、片アタリも軽減される。このように設置スペースを縮小することが可能であり且つ水中軸受の摩擦熱を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る横軸ポンプの主軸に平行な縦断面図の一例である。
図2】第1の実施形態に係る吸込ケーシングの拡大図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4A】流入水路を示す概略断面図である。
図4B図4AのF-F断面図である。
図5】第1の実施形態に係る横軸ポンプの主軸に略垂直な一部縦断面図である。
図6図5のB-B矢視図である。
図7図5のC-C矢視図である。
図8図5のD-D矢視図である。
図9図5のE-E概略矢視図である。
図10】分解前の横軸ポンプの縦断面図の一例である。
図11】上部ケーシングを取り外した場合の横軸ポンプの縦断面図の一例である。
図12】吸込ケーシング及び回転体を外した場合の横軸ポンプの縦断面図の一例である。
図13】回転体部分の分解工程の縦断面図を示す模式図である。
図14】旋回流防止部材の変形例1の概略断面図である。
図15】旋回流防止部材の変形例2の概略断面図である。
図16】上部ケーシングの変形例1の概略断面図である。
図17】上部ケーシングの変形例2の概略断面図である。
図18A】第2の実施形態に係る横軸ポンプの主軸に平行な縦断面図の一例である。
図18B図18AのG-G断面図である。
図19】従来の横軸ポンプの主軸に平行な縦断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0024】
従来の問題点を明確にするために、まず図19を用いて従来の横軸ポンプについて説明する。図19は、従来の横軸ポンプの主軸に平行な縦断面図の一例である。図19に示すように、従来の横軸ポンプ201は、主軸202と主軸202に連結された羽根車203と吸込ケーシング204を備える。図21には吸込ケーシング204の主軸に沿った長さLが示されている。吸込ケーシング204は、単純な曲管形状が採用されており、主軸方向の寸法が大きくなる。この寸法が大きくなる理由としては、曲管形状の曲率を大きくとり内部流れで偏流が生じずに、羽根車入口に極力均一に流入する必要があるためである。
【0025】
<本実施形態の別の課題>
上記の課題に加えて、設置計画の観点からは、吸込形状による損失水頭や旋回流の影響により効率が低いという問題がある。横軸ポンプではこの効率の低さから、駆動機が立軸斜流ポンプのものに比べて大きい。更に施工上の観点からは、吸込形状と全体長さにより、ポンプの下部ケーシングをコンクリート基礎に埋設する必要があり、施工日数が掛かるという問題がある。本実施形態ではこれらの問題も解決する。各実施形態に係る横軸ポンプは揚水機場または排水機場に設置されるものとして、以下説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る横軸ポンプの主軸に平行な縦断面図の一例である。図1に示すように、横軸ポンプ1は、土木駆体30に設けられており、回転体10を備える。回転体10は例えば主軸11と、主軸11に連結された羽根車12と、主軸11に外周に設けられた水中軸受13とを有する。駆動機2の出力軸の回転力が減速機3で減速され、減速後の回転力が主軸11に伝達されることによって主軸11が回転しそれに伴って羽根車12が回転する。駆動機2は例えば電動機であり減速機3が省略される場合もある。図1の矢印A1が流水方向である。
【0026】
横軸ポンプ1は、羽根車12より吐出側において主軸11の外周に設けられた水中軸受13を備える。更に横軸ポンプ1は、下部ケーシング14、下部ケーシング14の上に設けられた吸込ケーシング15、下部ケーシング14及び吸込ケーシング15の上に設けられた上部ケーシング16を備える。
下部ケーシング14には、吸込口が形成され且つ吐出口の下側が形成されている。
一方、上部ケーシング16には、吐出口の上側が形成されている。
【0027】
吸込ケーシング15は、羽根車12より吸込側に設けられている。換言すれば羽根車12は、吸込ケーシング15より吐出側において主軸11に連結されている。
吸込ケーシング15は、主軸11の長軸方向に略垂直な縦断面において円状であり且つ当該主軸11の長軸方向に略平行な当該縦断面において当該主軸の長軸方向に沿って羽根車12側に進むに従って外形が狭まる形状を有する。
【0028】
この構成により、従来の曲胴形式吸込ケーシングより軸方向の長さが短縮され設置スペースが削減される。上部ケーシング16と下部ケーシング14で上下2つ割りの構造を持つことで、従来の横軸軸流斜流ポンプと同様の維持管理性を持つ。
また、主軸11の長さが短くなり、主軸の質量が軽くなり、面圧(=質量÷軸の接触面積)が小さくなり、その結果水中軸受のPV値が小さくなり、摩擦熱を抑制することができる。
また羽根車12前後の軸受間の距離が短くなることで、片アタリも軽減される。
更に主軸11の軸方向の長さが短縮されることで軽量となり、設置される土木駆体への荷重が軽減される。
【0029】
上部ケーシング16には、案内翼161が連結されている。
【0030】
下部ケーシング14には、案内翼141が連結されている。また下部ケーシング14には、外周側に設けられた支持部材142を有する。
なお、本実施形態では、支持部材142は一例として減速機3を下から支持する。なお、支持部材142は一例として減速機3に換えてまたは加えて駆動機2を下から支持してもよい。このように、下部ケーシング14には、減速機及び/または駆動機を下から支持する支持部材142が形成されている。
【0031】
また、下部ケーシング14がその上の吸込ケーシング15及び上部ケーシング16と減速機3を支える強度を有する。このように、下部ケーシング14がその上の吸込ケーシング15及び上部ケーシング16と減速機3を支えることができるので、従来の横軸軸斜流ポンプと異なり、下部ケーシングを基礎に埋設して固定設置をせずに済むため工期短縮が可能である。減速機とポンプを共通の下部ケーシングに設置する構造により、一体搬入及び据付と芯出し作業の簡略化で工程短縮が可能である。
【0032】
図2は、第1の実施形態に係る吸込ケーシングの拡大図である。図1及び図2に示すように、横軸ポンプ1は、吸込ケーシング15内に設けられ且つ主軸11の周囲に設けられた外軸受17を備える。更に横軸ポンプ1は、吸込ケーシング15内に設けられ且つ外軸受17よりも羽根車12側において主軸11の周囲に設けられた軸封部18を備える。軸封部18は例えばメカニカルシールである。
【0033】
図2に示すように、外軸受17は外軸受ケース171を有し、外軸受ケース171には、内部に軸受172、軸受173が設けられている。ここで軸受は一例としてベアリングである。また、外軸受ケース171には、内部に外軸受用油室174が形成されており、この外軸受用油室174の内部において、軸受172、173が潤滑油に浸るように、潤滑油が所定の高さまで充填されている。
【0034】
更に吸込ケーシングは、円錐台状で当該円錐台の上面と下面に開口が設けられ内部に空間が設けられている外形部材150と外形部材150の上に連結されている連結部材151を有する。更に外軸受17は、その内部において第1部材175を有する。第1部材175は、外形部材150の内面に接続されており軸封部18の外周側に設けられた略円盤状である。
【0035】
従来の曲胴形式吸込ケーシングでは、外軸受及び軸封部はケーシング外に張り出したが、本実施形態では吸込ケーシング15内に設置することで主軸11の軸方向の長さが短縮される。
【0036】
図1に戻って、横軸ポンプ1は、土木駆体30の上に固定された水密なポンプベース19を更に備える。下部ケーシング14は、開口端部から外側に延伸する延伸部143を有し、当該延伸部143がポンプベース19の上に固定されている。また横軸ポンプ1は、延伸部143の下方に接して円弧状に設けられベルマウス20を更に備える。
【0037】
横軸ポンプ1は、土木駆体30に固定され、且つ下部ケーシング14の内部空間の下部及び/または当該内部空間の下方に設けられた整流部材21を備える。整流部材21は、図2の主軸11に垂直な縦断面において向かって左側と右側の下部ケーシング14及び上部ケーシング16に、ほぼ均等に水が流入するように配置されている。整流部材21は一例として下部ケーシングに連結されており、具体的には例えばボルト・ナットで固定されている。
【0038】
図3は、図1のA-A断面図である。図3に示すように、横軸ポンプ1は、真空ポンプに接続する真空配管25を備える。真空配管25の一端は、上部ケーシング16の高さが最も高い頂部の開口165に連通している。これにより、真空配管25は、羽根車12の吸込側にある上部ケーシング16の頂部からとすることで、満水後の起動時に負圧部より吸気するため真空配管25への圧力水混入を少なくする。その結果、真空ポンプへの異物流入防止や、セパレートタンクの小容量化が可能である。
【0039】
図3の矢印A2に示すような内部旋回流を抑えるために、横軸ポンプ1は、上部ケーシング16の内部に設けられた旋回流防止部材163を更に備える。旋回流防止部材163は、上部ケーシング16の内面(ここでは一例として内天面)に固定されている。
これにより、ポンプ運転時に上部ケーシング16および下部ケーシング14内で生じる羽根車12と同回転方向の旋回流を低減できるので、効率を向上させることができる。
旋回流防止部材163は、上部ケーシング16の内部の旋回流に対向する対向面1631が形成され、内部は空洞であり、当該対向面より内部旋回流の下流側に空気吸入口164が形成されている。
【0040】
これにより、図3の矢印A3の方向に空気吸入口164を介して空気が旋回流防止部材163内に入り、図3の矢印A4に示すように、気液二相流においても最上部の開口165から真空ポンプにより脱気される。このように、回転体を空転したまま真空ポンプ等で脱気する空転起動では、羽根車12に接水した際に軸中心部分から最外周部分に旋回流が発生する。その際、旋回流防止部材163で旋回流を断ち切り、その反対側から脱気を継続することができる。
【0041】
ここでは主軸に垂直な縦断面において、旋回流防止部材163は一例としてV字状である。
【0042】
図1及び図3に示すように、上部ケーシング16には点検口162が設けられ、下部ケーシング14には点検口144が設けられている。これにより、点検口162からから、羽根車12に対向する上部ケーシング16の内面と羽根車12との隙間を計測することが可能となり、点検口144から、羽根車12に対向する下部ケーシング14の内面と羽根車12との隙間を計測することが可能となる。
なお、これに限らず、上部ケーシング16または下部ケーシング14のいずれか一方に点検口が設けられていてもよい。このように、上部ケーシング16及び/または下部ケーシング14には点検口が設けられている。
【0043】
図4Aは、流入水路を示す概略断面図である。図4Bは、図4AのF-F断面図である。図4A及び図4Bに示すように、吸込槽31において土木躯体30に固定され土木躯体30から吸込槽31の内部において下方に延伸する構造体33が設けられることによって、流入水路32が設けられている。構造体33は例えば土木工事によって設けられる。図4A及び図4Bに示すように、整流部材21が設けられている。
【0044】
図4A及び図4Bに示すように、一例として吸込管が設けられておらず、吸込ケーシング15において羽根車へ供給する液体の整流を行い、吸込槽31に設けられた流入水路32を介して吸上げを行う。
このように一態様では、吸込ケーシング15でのみ、羽根車12への整流を行うため、従来の横軸軸斜流ポンプの様に吸込管を持たずに吸込槽31の躯体上部から流入水路を介して吸上げを行う。
【0045】
従来の横軸軸斜流ポンプでは、吸込槽からポンプまでは吸込管により接続されていたが、吸込槽の躯体構造で吸込槽上部までの構造体33を設けることで鉛直方向の流入水路32を設け、直接ポンプを接続することで吸込管を省略する。従来の吸込管よりも水路断面積は大きくなり流速が遅くなることから吸込損失の低減や、吸込管廻りの渦流発生に配慮が不要となり、増量及び低水位化がし易い。また既設の横軸軸斜流ポンプのように、吸込管を吸込槽内で組立した後に、横軸ポンプ1と接続する。吸込槽内での養生等の施工手間が無くなり、工程短縮につながる。
【0046】
図3の主軸に略垂直な縦断面及び図4Aの主軸に略平行な縦断面において、ベルマウス20の流入口寸法が、吸込槽に設けられた流入水路32の寸法に略一致しており、ベルマウス20の吐出口寸法が、下部ケーシング14の開口端部の寸法に略一致している。
【0047】
これにより、ベルマウス20が土木構造の流入水路32と下部ケーシング14の寸法差を吸収する役割を持つことで、吸込ケーシングは標準寸法による製品化を図り、各機場の土木構造寸法に対応できるものとする。
【0048】
図3の主軸に略垂直な縦断面においてベルマウス20は一例として表面形状が円弧状である。これにより、整流作用を発揮することができる。
【0049】
一態様では、ベルマウス20の流入口及び/または下部ケーシング14の流入口の形状は矩形または円形であり、ベルマウス20の吐出口と下部ケーシング14の流入口は、形状が同じであり且つ面積が同じである。
【0050】
一態様ではポンプベース19は矩形または円形であり、図1図3及び図4Aに示すように、一態様においてポンプベース19の内側の端部の水平位置は、吸込槽31に設けられた流入水路32の外縁の水平位置である。このように、ポンプベース19の縦断面において対向する内面間の距離は流入水路32の幅と略同じであり、流入水路32の幅に対して下部ケーシング14の流入口幅寸法が小さい場合は、ベルマウス20により水路幅に合わせたものとする。
【0051】
図4Aに示すように、土木躯体30は、上盤部分301と壁302を有し、ポンプベース19は、吸込槽31の土木躯体30の上盤部分301の上に固定され、吸込槽31の土木躯体30の壁302の上に固定されている。これにより、ポンプベース19を介してポンプ荷重が吸込槽31の土木躯体30の上盤部分301のみに掛かるだけでなく、吸込槽31の壁302の上に掛かることで、土木躯体30への荷重分散が図られる。
【0052】
図5は、第1の実施形態に係る横軸ポンプの主軸に略垂直な一部縦断面図である。図5において、吸込ケーシング15の連結部材151の断面が示されており、下部ケーシング14の内面側に設けられた突出部材146が示されている。
【0053】
図6は、図5のB-B矢視図である。図6に示すように、吸込ケーシング15の連結部材151の上に、旋回流防止部材163が設けられており、旋回流防止部材163に空気吸入口164が設けられ、上部ケーシングの頂部に、真空配管25に連通する開口165が設けられている。
【0054】
図7は、図5のC-C矢視図である。図7において突出部材146が円周状に設けられており、突出部材146の一端が旋回流防止部材163の一面に連結され、突出部材146の他端が旋回流防止部材163の他面に連結されている。
【0055】
図8は、図5のD-D矢視図である。図8において主軸11の軸に対して突出部材146が略左右対称に設けられている。また図8に示すように、吸込ケーシング15は、円錐台状であって裾野が広がるように湾曲した形状を有し、円錐台の上面と下面に主軸11が通るように開口が設けられており、内部に空間が設けられている。吸込ケーシング15の内部に、外軸受17と軸封部18が設けられている。
【0056】
図9は、図5のE-E概略矢視図である。図9に示すように、突出部材146がドーナツ状に設けられている。また図6図7及び図9に示すように整流部材21の内部に空洞が設けられている。
【0057】
<組立および整備時の状態>
続いて組立および整備時の状態について、整備時等に分解する工程を例に図10図13を用いて説明する。図10は分解前の横軸ポンプの縦断面図の一例である。図11は、上部ケーシングを取り外した場合の横軸ポンプの縦断面図の一例である。図12は、吸込ケーシング及び回転体を外した場合の横軸ポンプの縦断面図の一例である。図13は、回転体部分の分解工程の縦断面図を示す模式図である。
【0058】
図11に示すように、上部ケーシング16と一体となった案内翼161までのケーシングは上下で2分割の構造となっており、上部ケーシング16を取り外すことで、吸込ケーシング15と羽根車12、主軸11、水中軸受13から構成される回転体部分全体を確認できる。
【0059】
図12に示すように下部ケーシング14に固定されている吸込ケーシング15と水中軸受13を取り外すことで、回転体全体を着脱できる。これにより、減速機3を取り外すことなく、吸込ケーシング15の内部に設置される外軸受17の整備が可能となる。
【0060】
回転体部分の分解工程は、図13に示すように、まず主軸11から水中軸受13を抜き、主軸11に固定された羽根車12を抜く。また主軸11から、減速機3と接続するための接続部材111を取り外す。(ステップ1)。次に吸込ケーシング15を主軸15から抜く(ステップ2)。このとき、一例として軸封部18を構成する第1構成部材181が吸込ケーシング15に連結されているため、吸込ケーシング15とともにシール部材181が取り外される。一方、軸封部18を構成する第2構成部材182は、主軸11の外周外側に残る。その後に外軸受17が取り外される。
【0061】
続いて旋回流防止部材の変形例について説明する。
<旋回流防止部材の変形例1>
図14は、旋回流防止部材の変形例1の概略断面図である。図14図3に対応する図である。図14に示すように、旋回流防止部材163bは、L字状であり、矢印A5の内部旋回流の対向面1631bより内部旋回流の下流側に空気吸入口164bが形成されている。矢印A6に示すように空気吸入口164bから空気が入り、矢印A7に示すように真空ポンプへ吸引される。
【0062】
<旋回流防止部材の変形例2>
図15は、旋回流防止部材の変形例2の概略断面図である。図15図3に対応する図である。図15に示すように、旋回流防止部材163cは、一部に開口が設けられたコの字状であり、矢印A8の内部旋回流の対向面1631cより内部旋回流の下流側に空気吸入口164cが形成されている。矢印A9に示すように空気吸入口164cから空気が入り、矢印A10に示すように真空ポンプへ吸引される。
【0063】
続いて、上部ケーシングの別形状タイプとして2つの変形例について説明する。2つの変形例いずれも上下2つ割り構造や流入水路構造、吸込ケーシング内への外軸受・軸封構造を持つことは同様だが、上部ケーシングのボリュート形状が異なり、主軸11の軸中心(すなわち回転体中心)が流入水路中心からオフセットされている。
これにより、減速機3が平行軸歯車減速機の場合、駆動機2から横軸ポンプ1への軸がオフセットされる。この場合、駆動機2の設置スペースがポンプ幅より外にはみ出すことで設置スペースを要するが、これを解消することができる。
【0064】
<上部ケーシングの変形例1:通常起動タイプ>
図16は、上部ケーシングの変形例1の概略断面図である。図15に示すように、上部ケーシング16bの内面から内部方向に突出する突出部166を有し、主軸11の軸中心及び吸込ケーシング15が流入水路中心からオフセットされている。この突出部166は内部が空洞になっている。また図3と比べて上部ケーシングの点検口162bの位置が変更されている。また矢印A12に示すように開口165から真空ポンプへ空気が吸引される。
【0065】
<上部ケーシングの変形例2:空転起動タイプ>
図17は、上部ケーシングの変形例2の概略断面図である。図17に示すように、主軸11の軸中心及び吸込ケーシング15が流入水路中心からオフセットされている。また上部ケーシング16cの内面から内部方向に突出する突出部166cにおいて空気吸入口164dが設けられている。この突出部166cの下側端部に対して略垂直方向に接続された接続部材167、この突出部166cの上側端部に略水平方向に接続された接続部材168が設けられている。接続部材167と接続部材168との間に開口165cが設けられており、矢印A13に示すようにからこの開口165cから真空ポンプへ空気が吸引される。また図3と比べて上部ケーシングの点検口162cの位置が変更されている。
【0066】
<第2の実施形態>
続いて第2の実施形態について図18A及び図18Bを用いて説明する。図18Aは、第2の実施形態に係る横軸ポンプの主軸に平行な縦断面図の一例である。図18Bは、図18AのG-G断面図である。図18Aに示すように、第2の実施形態に係る横軸ポンプ1bは、下部ケーシング14の下方に設けられ且つ流入水路24を形成する流入口ケーシング23を更に備える。より具体的には流入口ケーシング23はベルマウス20の下方に設けられている。
【0067】
これにより、既設躯体構造側で老朽化等の理由でコンクリート構造の鉛直水路が設けられない場合は、流入口ケーシングを流入水路24とすることによって、様々な吸込槽構造への対応が可能である。
【0068】
一態様では流入口ケーシング23は例えば鋼板製であり、一例として土木躯体30に固定されている。一態様では、流入口ケーシング23の入口部には渦対策構造体(図示せず)を有してもよい。一態様では図18A及び図18Bに示すように第2の実施形態に係る横軸ポンプ1bは、第1の実施形態と同様に整流部材21を備える。
【0069】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、1b 横軸ポンプ
10 回転体
11 主軸
12 羽根車

13 水中軸受
14 下部ケーシング
141 案内翼
142 支持部材
143 延伸部
144 点検口
146 突出部材
15 吸込ケーシング
150 外形部材
151 連結部材
16、16b、16c 上部ケーシング
161 案内翼
162、162b、162c 点検口
163、163b、163c 旋回流防止部材
1631、1631b、1631c 対向面
163b旋回流防止部材
164、164b、164c 空気吸入口
165、165c 開口
166、166c 突出部
167 接続部材
168 接続部材
17 外軸受
171 外軸受ケース
172 軸受
173 軸受
174 外軸受用油室
175 第1部材
18 軸封部
19 ポンプベース
2 駆動機
20 ベルマウス
201 横軸ポンプ
202 主軸
203 羽根車
204 吸込ケーシング
21 整流部材
23 流入口ケーシング
24 流入水路
25 真空配管
3 減速機
30 土木躯体
301 上盤部分
302 壁
31 吸込槽
32 流入水路
33 構造体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19