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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030000
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20240229BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B32B17/10
C03C17/34 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132515
(22)【出願日】2022-08-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】高田 晃右
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK42C
4F100AK52B
4F100BA25
4F100DB01
4F100DC21B
4F100DC21C
4F100EH01
4F100EH46
4F100EJ30
4F100EJ42
4F100EJ45
4F100EJ91
4F100GB41
4F100JK07A
4F100JL14C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4G059AA01
4G059AA08
4G059AB05
4G059AC30
4G059FA07
4G059FA11
4G059FA14
4G059FA15
4G059FA17
4G059FA19
4G059FA22
4G059FA27
4G059FB05
4G059GA01
4G059GA11
(57)【要約】
【課題】剥離性樹脂層の剥離不良が生じにくい積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、ガラス基板と、ガラス基板上に配置された積層樹脂層とを有し、積層樹脂層が、ガラス基板側から、中間樹脂層と、剥離性樹脂層とを有し、ガラス基板の積層樹脂層側の表面には、積層樹脂層が配置されてない周縁領域があり、ガラス基板の長辺の長さが400mm以上であり、ガラス基板の短辺の長さが320mm以上であり、ガラス基板の少なくとも1つの角部において、角部の頂点から最も近接した位置にある積層樹脂層までの距離Xが4mm以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、前記ガラス基板上に配置された積層樹脂層とを有し、
前記積層樹脂層が、前記ガラス基板側から、中間樹脂層と、剥離性樹脂層とを有し、
前記ガラス基板の前記積層樹脂層側の表面には、前記積層樹脂層が配置されてない周縁領域があり、
前記ガラス基板の長辺の長さが400mm以上であり、
前記ガラス基板の短辺の長さが320mm以上であり、
前記ガラス基板の少なくとも1つの角部において、前記角部の頂点から最も近接した位置にある前記積層樹脂層までの距離Xが4mm以上である、積層体。
【請求項2】
前記ガラス基板の一辺上の点から最も近接した位置にある前記積層樹脂層までの距離のうち最小の距離Yが1mm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記距離Xが21mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記距離Yが15mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記ガラス基板の1つの角部の頂点から最も近接した前記積層樹脂層の位置P1と、前記ガラス基板の1つの前記角部と隣接する角部の頂点から最も近接した前記積層樹脂層の位置P2とし、前記位置P1と前記P2とを結ぶ直線よりも、前記ガラス基板の辺側に前記積層樹脂層が存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記ガラス基板の4つの各角部における前記距離Xのうち、少なくとも1つが異なる、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記ガラス基板の4つの各辺における前記距離Yのうち、少なくとも1つが異なる、請求項2に記載の積層体。
【請求項8】
前記積層樹脂層は、複数の領域に分割されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記中間樹脂層は、シリコーン樹脂で構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記剥離性樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートで構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記ガラス基板の厚みは、0.2~1mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
前記ガラス基板のヤング率は、100GPa以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(PV);液晶パネル(LCD);有機ELパネル(OLED);電磁波、X線、紫外線、可視光線、赤外線などを感知する受信センサーパネル;などの電子デバイスの薄型化、軽量化が進行している。それに伴い、電子デバイスに用いるポリイミド基板などの基板の薄板化も進行している。薄板化により基板の強度が不足すると、基板のハンドリング性が低下し、基板上に電子デバイス用部材を形成する工程などにおいて問題が生じる場合がある。
【0003】
そこで、最近では、基板のハンドリング性を良好にするため、支持基板上にポリイミド基板を配置した積層体を用いる技術が提案されている(特許文献1)。より具体的には、特許文献1では、熱硬化性樹脂組成物硬化体層上にポリイミドワニスを塗布して、樹脂ワニス硬化フィルム(ポリイミド層に該当)を形成して、樹脂ワニス硬化フィルム上に精密素子を配置できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-193544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の熱硬化性樹脂組成物硬化体層上にポリイミドワニスを塗布して、樹脂ワニス硬化フィルムを形成する前に、熱硬化性樹脂組成物硬化体層上にPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の剥離性樹脂層を設けた積層体をハンドリングすることがある。
本発明者等は、上記ポリイミドワニスで形成されたポリイミド膜を得る際に、剥離性樹脂層を有するガラス基板(支持基板)を用いる技術について検討した。剥離性を有するガラス基板を準備する際に、ガラス基板が大きいときに、剥離性樹脂層を剥離しにくい等の剥離性に問題があることを見出した。
【0006】
本発明は、剥離性樹脂層の剥離不良が生じにくい積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上述の課題を解決できることを見出した。
(1)ガラス基板と、ガラス基板上に配置された積層樹脂層とを有し、積層樹脂層が、ガラス基板側から、中間樹脂層と、剥離性樹脂層とを有し、ガラス基板の積層樹脂層側の表面には、積層樹脂層が配置されてない周縁領域があり、ガラス基板の長辺の長さが400mm以上であり、ガラス基板の短辺の長さが320mm以上であり、ガラス基板の少なくとも1つの角部において、角部の頂点から最も近接した位置にある積層樹脂層までの距離Xが4mm以上である、積層体。
【0008】
(2)ガラス基板の一辺上の点から最も近接した位置にある積層樹脂層までの距離のうち最小の距離Yが1mm以上である、(1)に記載の積層体。
(3)距離Xが21mm以下である、(1)又は(2)に記載の積層体。
(4)距離Yが15mm以下である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の積層体。
(5)ガラス基板の1つの角部の頂点から最も近接した積層樹脂層の位置P1と、ガラス基板の1つの角部と隣接する角部の頂点から最も近接した積層樹脂層の位置P2とし、位置P1とP2とを結ぶ直線よりも、ガラス基板の辺側に積層樹脂層が存在する、(1)~(4)のいずれか1つに記載の積層体。
(6)ガラス基板の4つの各角部における距離Xのうち、少なくとも1つが異なる、(1)~(5)のいずれか1つに記載の積層体。
(7)ガラス基板の4つの各辺における距離Yのうち、少なくとも1つが異なる、(2)に記載の積層体。
(8)積層樹脂層は、複数の領域に分割されている、(1)~(7)のいずれか1つに記載の積層体。
(9)中間樹脂層は、シリコーン樹脂で構成される、(1)~(8)のいずれか1つに記載の積層体。
(10)剥離性樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートで構成される、(1)~(9)のいずれか1つに記載の積層体。
(11)ガラス基板の厚みは、0.2~1mmである、(1)~(10)のいずれか1つに記載の積層体。
(12)ガラス基板のヤング率は、100GPa以下である、(1)~(11)のいずれか1つに記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剥離性樹脂層の剥離不良が生じにくい積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的断面図である。
図2】本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的平面図である。
図3】本発明の実施形態の積層体の第2の例を示す模式的平面図である。
図4】本発明の実施形態の積層体の第3の例を示す模式的平面図である。
図5】本発明の実施形態の積層体の第4の例を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す実施形態に制限されることはない。なお、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明の積層体の特徴点としては、ガラス基板と、ガラス基板上に配置された積層樹脂層とを有し、積層樹脂層が、ガラス基板側から、中間樹脂層と、剥離性樹脂層とを有し、ガラス基板の積層樹脂層側の表面には、積層樹脂層が配置されてない周縁領域があり、ガラス基板の長辺の長さが400mm以上であり、ガラス基板の短辺の長さが320mm以上であり、ガラス基板の少なくとも1つの角部において、角部の頂点から最も近接した位置にある積層樹脂層までの距離Xが4mm以上であることにより、剥離性樹脂層の剥離不良を抑制できることを知見している。これにより、所望の効果が得られる。
【0013】
<積層体>
図1は本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的断面図であり、図2は本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的平面図である。
図1に示すように積層体10は、ガラス基板12上に配置された積層樹脂層14とを有する。積層樹脂層14は、ガラス基板12側から、中間樹脂層16と、剥離性樹脂層18とを有する。中間樹脂層16がガラス基板12の表面12aに設けられ、中間樹脂層16と剥離性樹脂層18とが積層されている。積層樹脂層14において、中間樹脂層16と剥離性樹脂層18とは同じ大きさである。積層樹脂層14は、例えば、ガラス基板12の表面12aの法線方向から見た外形が超楕円形である。
【0014】
剥離性樹脂層18が、積層体10から剥離されて、中間樹脂層16上に、例えば、ポリイミド層(図示せず)が形成される。ガラス基板12は、支持基板として機能するものであり、積層樹脂層14側の表面12aの法線方向から見た場合、外形が、例えば、四角形である。
積層体10は、図2に示すようにガラス基板12の長辺12bの長さLが400mm以上であり、ガラス基板12の短辺12cの長さLが320mm以上である。
ガラス基板12は、積層樹脂層14よりも大きく、ガラス基板12の積層樹脂層14側の表面12aには、積層樹脂層14が配置されてない周縁領域13がある。ガラス基板12の周縁領域13の表面12aは露出している。
積層体10では、ガラス基板12の少なくとも1つの角部12dにおいて、角部12dの頂点12eから最も近接した位置にある積層樹脂層14までの距離Xが4mm以上である。
このような積層体10においては、輸送又はオートクレーブ処理で積層体10が加熱されても、ガラス基板12の反りが抑制され、剥離性樹脂層18を剥離しにくくなる等の剥離不良が生じにくい。
【0015】
ガラス基板12は、外縁が面取りされていることがある。この場合、角部12dの頂点12eも所定の曲率半径を有する円弧になっていることがある。角部12dが円弧の場合、ガラス基板12の各辺の直接部分を各辺の延在方向に延長して、隣接する2つの辺のそれぞれの延長線が交わる点を仮想頂点とする。この仮想頂点のうち、ガラス基板12において対角の関係にある仮想頂点同士を結んで得られる線を仮想対角線とする。この仮想対角線と、円弧とが交わる点を頂点とする。
また、ガラス基板12の角部12dが、オリエンテーションフラットのようにコーナーカットされていることもある。この場合、上述の円弧と同様に、コーナーカットされた形成された辺(図示せず)と、上述の仮想対角線とが交わる点を頂点とする。
【0016】
積層体10は、上述の角部12dの頂点12eから最も近接した位置にある積層樹脂層14までの距離Xが、21mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。上述の距離Xが21mm以下であると、ガラス基板12の表面12aに対して積層樹脂層14を設ける領域が広くなるため好ましい。
なお、上述の角部12dの頂点12eから最も近接した位置にある積層樹脂層14までの距離Xは、ガラス基板12の4つの角部12dにおいて、全て同じである必要はない。上述の距離Xは、ガラス基板12の4つの各角部12dのうち、少なくとも1つが異なっていてもよく、全てが異なっていてもよい。また、例えば、4つの角部12dのうち、2つの角部と、残りの2つの角部とをペアにて、2つのペアで、距離Xが異なる構成でもよい。
積層体10は、ガラス基板12の一辺上の点Pから最も近接した位置にある積層樹脂層14までの距離のうち最小の距離Yが1mm以上であることが好ましい。
最小の距離Yが15mm以下であると、ガラス基板12の表面12aに対して積層樹脂層14を設ける領域が広くなるため好ましい。
なお、ガラス基板12の4つの辺において、一辺上の点から最も近接した位置にある積層樹脂層14までの距離のうち最小の距離Yは、ガラス基板12の4つの各辺のうち、少なくとも1つが異なっていてもよく、全てが異なっていてもよい。この場合、積層樹脂層14は、4つの辺のうち、少なくとも1つの辺に寄って配置される。このように積層樹脂層14は、積層樹脂層14の周囲の周縁領域13が均等になるようにガラス基板12の表面12aに配置されることに限定されるものではなく、積層樹脂層14を1つの辺に寄せて配置してもよい。
【0017】
図2に示すように、積層体10において、ガラス基板12の1つの角部12dの頂点12eから最も近接した積層樹脂層14の位置P1と、ガラス基板12の1つの角部12dと隣接する角部12dの頂点12eから最も近接した積層樹脂層14の位置P2とし、位置P1と位置P2とを結ぶ直線Lpよりも、ガラス基板12の辺側に積層樹脂層14が存在することが好ましい。すなわち、積層樹脂層14は、上述の直線Lpよりもガラス基板12の辺側に領域14dが存在する。
上述の直線Lpは、図2に示すように長辺12b側と、短辺12c側との両方に存在する。積層樹脂層14において、長辺12b側の直線Lpよりもガラス基板12の長辺12b側に領域14dが存在する。また、積層樹脂層14において、短辺12c側の直線Lpよりもガラス基板12の短辺12c側に領域14dが存在する。
積層体10の剥離性樹脂層18を剥離し、ガラス基板12及び中間樹脂層16上にポリイミド層(図示せず)を形成した場合、上述のように位置P1と位置P2とを結ぶ直線Lpよりもガラス基板12の長辺12b側、又は短辺12c側に積層樹脂層14が存在すると、高温加熱の際に、ポリイミド層の劣化が抑制されて、ポリイミド層にクラックが生じにくいため好ましい。
このことから、積層樹脂層14は、ガラス基板12の表面12aの法線方向から見た外形が四角形(図3参照)よりも、図2に示す積層樹脂層14の外形の方が好ましい。
なお、積層樹脂層14において、領域14dがある場合、距離Xと、距離Yとは、距離X>距離Y×1.4の関係を満たす。
【0018】
積層体10の積層樹脂層14の外形は、上述の距離Xを満たせば、特に限定されるものではなく、四角形でもよく、図3に示す積層体10aのようにガラス基板12の積層樹脂層14側の表面12aの法線方向から見た場合、外形が長方形でもよい。
なお、図3は本発明の実施形態の積層体の第2の例を示す模式的平面図である。図3において、図1及び図2に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0019】
図4は本発明の実施形態の積層体の第3の例を示す模式的平面図である。図4において、図1及び図2に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図4に示す積層体10bは、図1及び図2に示す積層体10に比して、積層樹脂層14が複数の領域に分割されている点が異なり、それ以外は、図1及び図2に示す積層体10と同様の構成である。
積層体10bの積層樹脂層14は、長辺12bの半分の長さの位置に設けられ、短辺12cに沿って延びた直線状の溝19により、2つの領域15a、15bに分割されている。2つの領域15a、15bは、形状及び大きさが同じである。
溝19は、積層樹脂層14の表面14aからガラス基板12の表面12aに達しており、溝19には積層樹脂層14がなく、ガラス基板12の表面12aが露出している。
溝19の長辺12bの延在方向における長さ、すなわち、溝19の幅Zは、例えば、上述の距離Yよりも広くてもよい。
溝19は、例えば、カッター又はレーザーを用いて積層樹脂層14を切断して、取り除くことにより形成される。また、積層樹脂層14は間をあけて配置して溝19を設けてもよい。
また、積層樹脂層14が2つの領域に分割されているが、分割数は、2に限定されるものではないが、例えば、3~240でもよい。
2つの領域15a、15bは、形状及び大きさが同じであることに限定されるものではなく、形状又は大きさのうち、少なくとも一方が異なってもよい。
短辺12cに沿って延びた直線状の溝19に限定されるものではなく、短辺12cの半分の長さの位置に設けられ、長辺12bに沿って延びた直線状の溝19により、積層樹脂層14が分割されてもよい。
【0020】
図3に示す積層樹脂層14の形状が、ガラス基板12の積層樹脂層14側の表面12aの法線方向から見た場合に四角形の場合でも、積層樹脂層14は複数の領域に分割されていてもよい。具体的には、図5に示す積層体10cの積層樹脂層14のように、溝19により2つの領域15a、15bに分割されていてもよい。
なお、図5は本発明の実施形態の積層体の第4の例を示す模式的平面図である。図3において、図1及び図2に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0021】
以下では、上記積層体を構成する各部材について詳述する。
(ガラス基板)
ガラス基板は、積層樹脂層14を支持して補強する部材であり、支持基板として機能する。
ガラス基板を構成するガラスとしては、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40~90質量%のガラスが好ましい。
ガラス基板として、より具体的には、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(AGC株式会社製商品名「AN100」)が挙げられる。
ガラス基板の製造方法は、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法が挙げられる。
ガラス基板の形状は、特に制限されないが、輸送及び移送等のハンドリングの観点から、ガラス基板12の積層樹脂層14側の表面12aの法線方向から見た場合、外形が四角形であることが好ましい。
ガラス基板は外形が四角形である場合、ガラス基板の長辺と短辺とは違う長さでもよく、また、ガラス基板の長辺と短辺とが同じ長さでもよい。
【0022】
ガラス基板は、フレキシブルでないことが好ましい。ガラス基板のヤング率は、100GPa以下であることが好ましい。ガラス基板のヤング率は、超音波パルス法により測定された値である。ガラス基板のヤング率が100GPa以下であれば、ガラス基板の運搬時の周辺部材との接触による破損を抑制することができる。ガラス基板のヤング率は65GPa以上であり、ヤング率が65GPa以上であれば、ガラス基板の運搬時の周辺部材との接触による破損を抑制することができる。
ガラス基板の厚みDt(図1参照)は0.2~1mmが好ましい。上記ガラス基板の厚みDtは、ガラス基板12の任意の10点の厚みを測定して、それらを算術平均して求めた値である。
【0023】
(積層樹脂層)
積層樹脂層14は、上述のように中間樹脂層16と剥離性樹脂層18とをする。例えば、剥離性樹脂層18を剥離した後、ガラス基板12及び中間樹脂層16上にポリイミド層(図示せず)が形成される。
【0024】
[中間樹脂層]
中間樹脂層16は、ガラス基板12の表面12aに形成されている。
中間樹脂層16は、その上に配置されるポリイミド層(図示せず)の剥離を防止するための膜である。
中間樹脂層16の材質としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。また、いくつかの種類の樹脂を混合して中間樹脂層16を構成することもできる。
なかでも、耐熱性や剥離性の点から、中間樹脂層16の材質として、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましく、シリコーン樹脂がより好ましく、縮合硬化型シリコーンより形成されるシリコーン樹脂がより好ましい。シリコーン樹脂で構成された中間樹脂層16のことを、シリコーン樹脂層という。
以下では、中間樹脂層16がシリコーン樹脂層である形態について詳述する。
【0025】
シリコーン樹脂とは、所定のオルガノシロキシ単位を含む樹脂であり、通常、硬化性シリコーンを硬化させて得られる。硬化性シリコーンは、その硬化機構により付加硬化型シリコーン、縮合硬化型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン、及び、電子線硬化型シリコーンに分類されるが、いずれも使用できる。なかでも、縮合硬化型シリコーンが好ましい。
縮合硬化型シリコーンとしては、モノマーである加水分解性オルガノシラン化合物若しくはその混合物(モノマー混合物)、又は、モノマー又はモノマー混合物を部分加水分解縮合反応させて得られる部分加水分解縮合物(オルガノポリシロキサン)を好適に用いることができる。
この縮合硬化型シリコーンを用いて、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)を進行させることにより、シリコーン樹脂を形成できる。
【0026】
中間樹脂層16は、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を用いて形成されることが好ましい。
硬化性組成物は、硬化性シリコーンのほかに、溶媒、白金触媒(硬化性シリコーンとして付加反応型シリコーンを用いる場合)、レベリング剤、金属化合物などを含んでいてもよい。金属化合物に含まれる金属元素としては、例えば、3d遷移金属、4d遷移金属、ランタノイド系金属、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)が挙げられる。金属化合物の含有量は、特に制限されず、適宜調整される。
【0027】
中間樹脂層16は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。中間樹脂層16のシリコーン樹脂を構成するSi-O-Si結合の一部が切れて、ヒドロキシ基が現れ得る。また、縮合反応型シリコーンを用いる場合には、そのヒドロキシ基が、中間樹脂層16のヒドロキシ基になり得る。
【0028】
中間樹脂層16の厚さは、一方の樹脂基板を剥離した後、中間層の樹脂基板が配置されていない側にガラス製の支持基板を積層するときに異物の埋め込み性に優れる点で、1μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましい。中間樹脂層16の厚さの上限は、加工コストやプロセスタクトの点で、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましい。
なお、異物埋め込み性に優れるとは、ガラス基板12と中間樹脂層16との間に異物があっても、中間樹脂層16によって異物が埋め込まれことを意味する。異物の埋め込み性が優れると、中間樹脂層16に異物による凸部が生じにくい。このことから、異物埋め込み性に優れると、上述のように中間樹脂層16上にポリイミド層を形成し、さらにポリイミド層上に電子デバイス用部材を形成した際、凸部による電子デバイス用部材中での断線等のリスクが抑制される。
中間樹脂層16の厚さは、5点以上の任意の位置における中間樹脂層16の厚さを三鷹光器株式会社製の非接触表面性状測定装置「PF-60」を用いて測定し、それらを算術平均したものである。
【0029】
[剥離性樹脂層]
剥離性樹脂層18は、中間樹脂層16上に配置されるものであり、中間樹脂層16を保護する。
剥離性樹脂層18は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、又はポリウレタン樹脂で構成される。中でも、入手しやすい点から、剥離性樹脂層18を構成する樹脂は、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0030】
剥離性樹脂層の厚みは、外部から受けた力の影響を低減するために、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。剥離性樹脂層の厚みの上限値としては、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0031】
剥離性樹脂層は、中間樹脂層16側の表面に、さらに密着層を有していてもよい。
密着層としては、公知の粘着層を用いることができる。粘着層を構成する粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。
また、密着層は樹脂で構成されていてもよく、樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレンエラストマーが挙げられる。
剥離性樹脂層の中間樹脂層16側の表面粗さ(Ra)は、剥離性樹脂層を剥離した際の剥離力が低減するため、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、15nm以下がさらに好ましい。また、Raは、剥離性樹脂層と中間樹脂層とが密着した状態を維持できるため、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましい。表面粗さ(Ra)は、三菱ケミカルシステム株式会社製の非接触表面・層断面形状計測システム「VertscanR3300-lite」を用いて測定する。
【0032】
<積層体の製造方法>
積層体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、ガラス基板12上の所定の領域の中間樹脂層16を形成し、その後、中間樹脂層16上に剥離性樹脂層18を形成する方法が挙げられる。
以下、各層の製造手順について詳述する。
【0033】
まず、ガラス基板12上の所定の領域の中間樹脂層16を形成する。
中間樹脂層16の形成方法は、中間樹脂層16の材料によって適宜最適な方法が選択される。例えば、中間樹脂層16としてシリコーン樹脂層を形成する場合、上述した、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物をガラス基板12上の所定の領域に塗布して、塗膜に対して加熱処理を施す方法が挙げられる。
【0034】
なかでも、中間樹脂層16としてシリコーン樹脂層を用いる場合、生産性が優れる場合、仮支持体と仮支持体上に配置された加熱処理後にシリコーン樹脂層となる前駆体膜とを有する転写フィルム(積層フィルム)を用意して、転写フィルム中の前駆体膜をガラス基板12上の所定の位置に貼り合わせて、得られたガラス基板12、前駆体膜、及び、仮支持体を有する積層体に対して加熱処理を施す方法が挙げられる。加熱処理を施すことによりシリコーン樹脂層が形成される。
以下、上記手順について詳述する。
【0035】
上記では、まず、加熱処理後にシリコーン樹脂層となる前駆体膜と、剥離性樹脂層となるPETフィルムとを有する転写フィルムを用意する。転写フィルムには、PETフィルムに前駆体膜が形成されている。転写フィルムの前駆体膜をガラス基板12上の所定の位置に貼り合わせて積層基体を得る。
上記の転写フィルムをガラス基板12に貼り合わせた後に、得られた積層基体をアルカリ洗剤で洗浄してもよい。また、アルカリ洗剤で洗浄した後、必要に応じて、純水でリンスしてもよい。さらに、純水でリンスした後、必要に応じて、エアナイフで水切りしてもよい。
【0036】
シリコーン樹脂層を形成するための加熱処理の際には、圧力をかけながら実施することが好ましい。具体的には、オートクレーブを用いて加熱処理及び加圧処理を実施することが好ましい。
加熱処理の際の加熱温度としては、50~350℃が好ましく、55~300℃がより好ましく、60~250℃がさらに好ましい。加熱時間としては、10~60分間が好ましく、20~40分間がより好ましい。
加圧処理の際の圧力としては、0.5~1.5MPaが好ましく、0.8~1.0MPaがより好ましい。
【0037】
また、加熱処理は、複数回行ってもよい。加熱処理を複数回実施する場合、それぞれの加熱条件を変更してもよい。
【0038】
次に、積層基体において、転写フィルムのPETフィルム側から、PETフィルム(剥離性樹脂層18)及びシリコーン樹脂層(中間樹脂層16)を所定のサイズに切断して、積層体を形成する。
また、例えば、転写フィルムを所定のサイズに切断した後に、所定のサイズの転写フィルムを、ガラス基板に貼付けてもよい。また、転写フィルムをガラス基板に貼付けた後に、転写フィルムを所定のサイズに切断してもよい。
図4に示す溝19がある積層体を形成する場合、積層基体において、転写フィルムを所定のサイズに切断した後、さらに転写フィルムをPETフィルム側から切断して、溝19を形成する。
これ以外に、転写フィルムを所定のサイズに切断した後に、所定のサイズの転写フィルムを、溝19となる間隔をあけてガラス基板に貼付けてもよい。
また、図4に示す溝19がある積層体を形成する場合でも、転写フィルムをガラス基板に貼付けた後に、転写フィルムを所定のサイズに切断してもよい。
【実施例0039】
以下に、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。以下、例1~例4は比較例であり、例5~例13は実施例である。
【0040】
(硬化性シリコーンの調製)
1Lのフラスコに、トリエトキシメチルシラン(179g)、トルエン(300g)、酢酸(5g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、60℃に加熱して12時間反応させて、反応粗液を得た。
得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。洗浄された反応粗液にクロロトリメチルシラン(70g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、50℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。
洗浄された反応粗液からトルエンを減圧留去し、スラリー状態にした後、真空乾燥機で終夜乾燥することにより、白色のオルガノポリシロキサン化合物である硬化性シリコーン1を得た。
硬化性シリコーン1は、M単位、T単位のモル比が13:87、有機基は全てメチル基、平均OX基数が0.02であった。M単位は(R)3SiO1/2で表されるオルガノシロキシ単位を意味し、T単位はRSiO3/2で表されるオルガノシロキシ単位を意味し、各式におけるRは水素原子又は有機基を表す。平均OX基数は、Si原子1個に平均で何個のOX基(Xは水素原子又は炭化水素基)が結合しているかを表した数値である。
【0041】
(硬化性組成物の調製)
硬化性シリコーン1(20g)と、金属化合物としてオクチル酸ジルコニウム化合物(「オルガチックスZC-200」、マツモトファインケミカル株式会社製)(0.16g)と、2-エチルヘキサン酸セリウム(III)(Alfa Aesar社製、金属含有率12質量%)(0.17g)、溶媒としてIsoper G(東燃ゼネラル石油株式会社製)(19.7g)とを混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物1を得た。
【0042】
(積層フィルムの作製)
剥離性樹脂層になる離型フィルムとしてPETフィルム(東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム HPE(高密度ポリエチレン)、厚さ50μm)を準備し、このフィルム表面上に調製した硬化性組成物1を塗布し、ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱することにより、シリコーン樹脂層を形成した。
塗布したシリコーン樹脂層の上に保護フィルムとして、PETフィルム(東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム HPE、厚さ50μm)を貼合し、離型フィルム、シリコーン樹脂層(中間層)及び保護フィルムがこの順に積層された積層フィルム1を得た。得られた積層フィルム1の厚さは、110μmであった。
【0043】
(積層フィルムの切断)
積層フィルム1の離型フィルムのPETフィルム側からカッターを挿入し、所望のサイズ(400×320mm、880×690mm、890×700mm、912×722mm、914.4×724.4mm、918×728mm、920×730mm)に切断した。これにより、積層樹脂層の外形が、四角形に形成される。
例1では、カッターを用いて、400×320mmのサイズに切断した。
また、積層フィルム1を打ち抜き機(タマリ機工株式会社製油圧裁断機、装置名「TP-12801000×100TON」)に配置し、刃幅0.5mm、刃角30度のトムソン刃で作製された刃型(398×318mmの角R6.2mm、458×728mmの角R6.2mm、910×720mmの角R0.1mm、910×724mmの角R0.1mm、918×728mmの角R6.2mm、920×730mmの角R4.8mm)を離型フィルムのPETフィルム側から入射し、積層フィルム1を切断した。これにより、積層樹脂層の外形が、四隅が曲線で構成された超楕円形に形成される。ここで、角Rとは、積層樹脂層の外形の4隅を構成する曲線の曲率半径を示す。
なお、積層樹脂層の切断方式として、カッターを用いる方式をカッター方式という。また、積層樹脂層の切断方式として、打ち抜き機を用いる方式を打ち抜き方式という。
【0044】
(ガラス基板の中に1枚の積層フィルムが配置される積層基板の作製)
下記表1の例1~12に相当する。
水系ガラス洗浄剤(株式会社パーカーコーポレーション製「PK―LCG213」)で洗浄後、純水で洗浄した920×730mm、厚み0.5mm、又は400×320mm、厚み0.5mmの角部、及び辺部が面取されているガラス基板「AN Wizus」(支持基板、ヤング率85GPa)と、保護フィルムが剥離された積層フィルム1のシリコーン樹脂層が形成されたPETフィルムとを貼合して、ガラス基板、シリコーン樹脂層、及びPETフィルムがこの順で配置された積層体を作製した。なお、上記貼合の際には、ガラス基板の側面(辺)とシリコーン樹脂層、及びPETフィルムの距離と、ガラス基板の角部とシリコーン樹脂層、及びPETフィルムの距離とが下記表1に示す例1の関係となるように、ガラス基板とシリコーン樹脂層、及びPETフィルムとを貼合した。
例1は、上述の400×320mm、厚み0.5mmのガラス基板を用いた。
例2~13は、上述の920×730mm、厚み0.5mmのガラス基板を用いた。
【0045】
(ガラス基板の中に2枚の積層フィルムが配置される積層基板の作製)
下記表1の例13に相当する。
水系ガラス洗浄剤で洗浄後、純水で洗浄した920×730mm、厚み0.5mmの角部、及び辺部が面取されているガラス基板「AN Wizus」(支持基板)と、保護フィルムを剥離した458×728mmの積層フィルム1のシリコーン樹脂層が形成されたPETフィルムとを貼合した後に、さらにもう1枚の458×728mmの保護フィルムが剥離された積層フィルム1のシリコーン樹脂層が形成されたPETフィルムを貼合し、ガラス基板にシリコーン樹脂層、及びPETフィルムを2枚配置し、ガラス基板、シリコーン樹脂層、及びPETフィルムがこの順で配置された積層体を作製した。なお、上記貼合の際には、2枚の保護フィルムが剥離された積層フィルム1の長辺に沿った距離は、ガラス基板の側面(辺)と、保護フィルムが剥離された積層フィルム1との距離よりも大きい。
【0046】
(積層基板の加熱)
得られた積層体のガラス基板とホットプレートが接触するように配置して、60℃で、30分間加熱した後、積層体を1日間クリーンルーム環境下(室温23℃、湿度55%)で静置させた。
【0047】
<例2~12>
上記貼合の際に、ガラス基板の側面(辺)とシリコーン樹脂層、及びPETフィルムの距離とガラス基板の角部とシリコーン樹脂層、及びPETフィルムの距離とを、下記表1に示す例2~12の関係となるように、ガラス基板と、シリコーン樹脂層及びPETフィルム(保護フィルムが剥離された積層フィルム1)とを貼合した以外は、例1と同様の手順に従って積層体を得た。
【0048】
例2では、積層フィルム1をカッターを用いて920×730mmのサイズに切断した。例3では、積層フィルム1を打ち抜き機を用いて920×730mm(角R4.8mm)のサイズに切断した。
例4では、積層フィルム1をカッターを用いて918×728mmのサイズに切断した。例5では、積層フィルム1を打ち抜き機を用いて918×728mm(角R6.2mm)のサイズに切断した。
例6では、積層フィルム1をカッターを用いて914.4×724.4mmのサイズに切断した。例7では、積層フィルム1を打ち抜き機を用いて398×318mm(角R6.2mm)のサイズに切断した。
【0049】
例8では、積層フィルム1をカッターを用いて912×722mmのサイズに切断した。例9では、積層フィルム1を打ち抜き機を用いて910×720mm(角R0.1mm)のサイズに切断した。
例10では、積層フィルム1をカッターを用いて890×700mmのサイズに切断した。例11では、積層フィルム1をカッターを用いて880×690mmのサイズに切断した。
例12では、積層フィルム1を打ち抜き機を用いて910×724mm(角R0.1mm)のサイズに切断した。例12は、上記貼合の際に、より具体的には、ガラス基板(920×730mm)の短辺12c(図2参照)における距離Yをそれぞれ5mm、長辺12b(図2参照)における距離Yを1mmと5mmとなるように、シリコーン樹脂層及びPETフィルム(保護フィルムが剥離された積層フィルム1)をガラス基板に貼合した。
【0050】
<例13>
例13では、積層フィルム1を打ち抜き機を用いて458×728mm(角R6.2mm)のサイズに切断して、2つのシリコーン樹脂層及びPETフィルムを得た。
例13は、上記貼合の際に、ガラス基板の側面と、シリコーン樹脂層及びPETフィルムとの距離と、ガラス基板の角部と、シリコーン樹脂層及びPETフィルムの距離とを表1の例13の関係となるように、ガラス基板に、2つのシリコーン樹脂層及びPETフィルム(保護フィルムが剥離された積層フィルム1)を貼合した。例13では、2つのシリコーン樹脂層及びPETフィルムの間に溝ができるように間をあけて貼合した。なお、溝はガラス基板12の長辺の中間の位置に設け、溝の幅を2mmとした。
【0051】
<反りの評価>
ガラス基板、シリコーン樹脂層、及びPETフィルムからなる積層体を石定盤の上に、ガラス基板と石定盤が接触するように静置させて、積層体の角部のガラス基板と石定盤の隙間をシックネスゲージ(シンワ測定株式会社製、シックネスゲージD 65mm 25枚組(製品名))を用いて測定した。4角のうち、最大となる隙間量(反り量)を評価した。また、PETフィルムの角にスコッチテープ(3M株式会社製スコッチ メンディングテープ幅「810-1-18D」)を貼り付けて、PETフィルムを引き上げ剥離した。積層体を蛍光灯の下に置いて、シリコーン樹脂層の光の反射状態に基づいて、目視にて剥離後の欠点の有無を観察した。
A:最大の反り量が0.2mmよりも小さくて、剥離後欠点が生じない
B:最大の反り量が0.2mm以上で、剥離後欠点が生じる
【0052】
<基板有効面積率の評価>
ガラス基板の面積と、シリコーン樹脂層及びPETフィルムの面積との比率を計算して評価した。
A:基板有効面積率が90.5%よりも大きい
B:基板有効面積率が90.5%以下
【0053】
(ポリイミド層の形成)
ガラス基板とシリコーン樹脂層、及びPETフィルムからなる例5と例6の積層体のPETフィルムを剥離して、クリーンオーブンを用いて大気雰囲気下にて250℃で30分間加熱した。次にシリコーン樹脂層にコロナ処理を施した後、無色ポリイミドワニス(三菱ガス化学株式会社製「ネオプリムH230」)を塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で20分間加熱した。続いて、イナートガスオーブンを用いて窒素雰囲気下400℃で30分間加熱し(キュア工程)、ガラス基板、シリコーン樹脂層、及びポリイミド層(厚み:7μm)をこの順に有する積層サンプルを作製した。
(窒化ケイ素層の形成)
次に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、積層サンプルのポリイミド層の全面に厚み100nmの窒化ケイ素層を作製した。
【0054】
<耐熱評価>
例5及び例6に基づく積層サンプルに対して、窒素雰囲気下にて、420℃で1時間加熱して、耐熱試験を実施した。耐熱試験後の積層サンプルの外観を目視で確認し、ポリイミド層において、ガラス基板の1つの角部の頂点から最も近接した積層樹脂層の位置P1と、ガラス基板の1つの角部と隣接する角部の頂点から最も近接した積層樹脂層の位置P2とを結ぶ直線よりも、ガラス基板の辺側にクラックが発生したかどうかを評価した。
A:クラックが発生した
B:クラックが発生しない
なお、耐熱評価は、例1~13のうち、例5及び例6だけ評価している。このため、残りの例1~4及び例7~13については、表1の「耐熱評価」の欄に「‐」と記した。
【0055】
【表1】
【0056】
例1~4と例5~13との比較より、ガラス基板の角部の頂点から最も近接した位置にある積層樹脂層までの距離Xが4mm以上あれば、剥離後欠点が生じにくいことが分かった。
例1~10及び例12~13と、例11との比較より、ガラス基板の角部の頂点から最も近接した位置にある積層樹脂層までの距離Xが21mm以下であり、ガラス基板の一辺上の点から最も近接した位置にある積層樹脂層までの距離のうち最小の距離Yが15mm以下であれば、有効面積が向上することが分かった。
例5と例6との比較から、例5はガラス基板の1つの角部の頂点から最も近接した積層樹脂層の位置P1と、ガラス基板の1つの角部と隣接する角部の頂点から最も近接した積層樹脂層の位置P2とを結ぶ直線よりも、ガラス基板の辺側に積層樹脂層が存在するころとからクラックが生じにくいことが分かった。
【符号の説明】
【0057】
10、10a、10b、10c 積層体
12 ガラス基板
12a 表面
12b 長辺
12c 短辺
12d 角部
12e 頂点
13 周縁領域
14 積層樹脂層
14a 表面
14d 領域
15a 領域
15b 領域
16 中間樹脂層
18 剥離性樹脂層
19 溝
Dt 厚み
Lp 直線
P1、P2 位置
X 距離
Y 距離
Z 幅
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、前記ガラス基板上に配置された積層樹脂層とを有し、
前記積層樹脂層が、前記ガラス基板側から、中間樹脂層と、剥離性樹脂層とを有し、
前記ガラス基板の前記積層樹脂層側の表面には、前記積層樹脂層が全く配置されてない周縁領域があり、
前記ガラス基板の長辺の長さが400mm以上であり、
前記ガラス基板の短辺の長さが320mm以上であり、
前記ガラス基板の少なくとも1つの角部において、前記角部の頂点から最も近接した位置にある前記積層樹脂層までの距離Xが4mm以上であり、
前記ガラス基板の1つの角部の頂点から最も近接した前記積層樹脂層の位置P1と、前記ガラス基板の1つの前記角部と隣接する角部の頂点から最も近接した前記積層樹脂層の位置P2とし、前記位置P1と前記P2とを結ぶ直線よりも、前記ガラス基板の辺側に前記積層樹脂層が存在する、積層体。
【請求項2】
前記ガラス基板の一辺上の点から最も近接した位置にある前記積層樹脂層までの距離のうち最小の距離Yが1mm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記距離Xが21mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記距離Yが15mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記ガラス基板の4つの各角部における前記距離Xのうち、少なくとも1つが異なる、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記ガラス基板の4つの各辺における前記距離Yのうち、少なくとも1つが異なる、請求項2に記載の積層体。
【請求項7】
前記積層樹脂層は、複数の領域に分割されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記中間樹脂層は、シリコーン樹脂で構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記剥離性樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートで構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記ガラス基板の厚みは、0.2~1mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記ガラス基板のヤング率は、100GPa以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、前記ガラス基板上に配置された積層樹脂層とを有し、
前記積層樹脂層が、前記ガラス基板側から、中間樹脂層と、剥離性樹脂層とを有し、
前記ガラス基板の前記積層樹脂層側の表面には、前記積層樹脂層配置されてない周縁領域があり、
前記ガラス基板の長辺の長さが400mm以上であり、
前記ガラス基板の短辺の長さが320mm以上であり、
前記ガラス基板の少なくとも1つの角部において、前記角部の頂点から最も近接した位置にある前記積層樹脂層までの距離Xが4mm以上であり、
前記積層樹脂層は、複数の領域に分割されている、積層体。
【請求項2】
前記ガラス基板の一辺上の点から最も近接した位置にある前記積層樹脂層までの距離のうち最小の距離Yが1mm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記距離Xが21mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記距離Yが15mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記ガラス基板の1つの角部の頂点から最も近接した前記積層樹脂層の位置P1と、前記ガラス基板の1つの前記角部と隣接する角部の頂点から最も近接した前記積層樹脂層の位置P2とし、前記位置P1と前記P2とを結ぶ直線よりも、前記ガラス基板の辺側に前記積層樹脂層が存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記ガラス基板の4つの各角部における前記距離Xのうち、少なくとも1つが異なる、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記ガラス基板の4つの各辺における前記距離Yのうち、少なくとも1つが異なる、請求項2に記載の積層体。
【請求項8】
前記中間樹脂層は、シリコーン樹脂で構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記剥離性樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートで構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記ガラス基板の厚みは、0.2~1mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記ガラス基板のヤング率は、100GPa以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。