(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030025
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法、及び鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132556
(22)【出願日】2022-08-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、戦略的省エネルギー技術革新プログラム 助成事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】樋口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】坪内 直人
(72)【発明者】
【氏名】望月 友貴
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA08
4K001DA01
4K001GA02
(57)【要約】
【課題】鉄鉱石の脈石及びリン濃度をさらに低減することが可能な、新規かつ改良された鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、リンを0.10質量%以上0.25質量%以下で含有する鉄鉱石に、濃度が3M以上5M以下のNaOH水溶液を加えて、密閉容器内において200℃以上300℃以下で10分以上加熱することを特徴とする、鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法が提供される。本発明の上記観点によれば、鉄鉱石の脈石及びリン濃度をさらに低減することが可能となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを0.10質量%以上0.25質量%以下で含有する鉄鉱石に、濃度が3M以上5M以下のNaOH水溶液を加えて、密閉容器内において200℃以上300℃以下で10分以上加熱することを特徴とする、鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法。
【請求項2】
リンを0.10質量%以上0.25質量%以下で含有する鉄鉱石に、濃度が3M以上5M以下のNaOH水溶液とグリセリンを加えて、密閉容器内において200℃以上300℃以下で10分以上加熱することを特徴とする、鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法。
【請求項3】
前記鉄鉱石に対して、40質量%以上70質量%以下の含有量となるように前記グリセリンを加えることを特徴とする、請求項2に記載の鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法により脈石及びリンを除去した鉄鉱石を還元して鉄を製造することを特徴とする、鉄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法、及び鉄の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石の品位を高める(脈石を低減する)方法として、選鉱が知られている。選鉱としては、例えば磁力選鉱、浮遊選鉱、及び重力選鉱が知られている。選鉱は山元(資源国)で行われることが多い。
【0003】
ところで、近年、脈石のみならず、リンの濃度が高い鉄鉱石が産出されるようになってきており、このような鉄鉱石の脈石及びリン濃度を低減する技術が強く求められてきた。このような課題に対して、比較的低温で反応を進められるアルカリ水熱反応が提案されている(非特許文献1)。アルカリ水熱反応は、概略的には、鉄鉱石にアルカリ水溶液を加え、密閉容器内で加熱するという技術である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y.Mochizuki and N.Tsubouchi : Hydrometallurgy 190 (2019) 105159
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示された技術によれば、鉄鉱石中の脈石及びリン濃度を低減することができる。しかし、本発明者らが非特許文献1に開示された技術についてさらに検討を進めたところ、さらなる改善の余地があることが判明した。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、鉄鉱石の脈石及びリン濃度をさらに低減することが可能な、新規かつ改良された鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法及び鉄の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、リンを0.10質量%以上0.25質量%以下で含有する鉄鉱石に、濃度が3M以上5M以下のNaOH水溶液を加えて、密閉容器内において200℃以上300℃以下で10分以上加熱することを特徴とする、鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によれば、リンを0.10質量%以上0.25質量%以下で含有する鉄鉱石に、濃度が3M以上5M以下のNaOH水溶液とグリセリンを加えて、密閉容器内において200℃以上300℃以下で10分以上加熱することを特徴とする、鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法が提供される。
【0009】
ここで、鉄鉱石に対して、40質量%以上70質量%以下の含有量となるようにグリセリンを加えてもよい。
【0010】
本発明の他の観点によれば、上記の鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法により脈石及びリンを除去した鉄鉱石を還元して鉄を製造することを特徴とする、鉄の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記課題によれば、鉄鉱石の脈石及びリン濃度をさらに低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】各鉄鉱石のリン濃度及び脱リン率の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.本発明者らによる検討>
まず、本発明者らが行った検討について説明する。本発明者らは、非特許文献1に開示されたアルカリ水熱反応に着目した。そして、どのような条件下であれば鉄鉱石から多くの脈石及びリンを除去できるかについて検討した。
【0014】
本発明者らは、異なる化学組成を有する複数種類の鉄鉱石を準備した(表1)。粉末X線回析(XRD)分析によれば、ALYとALRはα-FeOOH、WALとA、B、Cはα-FeOOHとFe2O3であった。D、EはFe2O3であった。
【0015】
【0016】
表1におけるT.Fe、SiO2、Al2O3、SiO2+Al2O3、Pの濃度(質量%)は化学分析により特定した。T.Feは鉄成分、SiO2、Al2O3は脈石成分、Pはリンである。LOIは強熱減量(質量%)であり、鉄鉱石中の結晶水の含有量を示す。吸着P(質量%)はゲーサイトに賦存しているリンであり、本検討では、このようなリンをゲーサイトに化学吸着したリンとした。吸着リンの濃度はMLA(Mineral Liberation Analysis)により定量した。残りのリンはリン酸塩鉱物として存在するか、酸化鉄(ヘマタイト等)に固溶していたりする。アルカリ水熱反応では、主にゲーサイトに化学吸着したリンを除去する。表1に示す質量%は、鉄鉱石の質量に対する質量%を示す。表1によれば、OreA~Dはリンを0.10~0.25質量%と多く含むが、その大半が吸着リンとなっている。つまり、リンを0.10~0.25質量%と多く含む鉄鉱石は、アルカリ水熱反応で除去可能な吸着リンを多く含む傾向にある。このような傾向は特に豪州産の鉄鉱石で顕著である。
【0017】
次に、表1に示す各鉄鉱石を用いてアルカリ水熱反応を行った。具体的には、まず、SUS316製の反応器(外径25mm)に鉄鉱石約4.0gと5MのNaOH水溶液3.5mLを投入し、圧力計やバルブを備え付けた経路に接続した。ここで、鉄鉱石は粒径4.0mm以下に分級したものを用いた。具体的には、鉄鉱石を目開き4mmの篩に掛け、篩から落下した鉄鉱石をアルカリ水熱反応に供した。
【0018】
その後、バルブを介して反応器内に高純度Heを導入し、加圧状態でリークチェックを行なった。反応器内を充分Heでパージした後、反応器内を常圧のHe雰囲気にしてバルブを閉じた。反応器は250℃または300℃に保持された流動砂浴に入れ、30分以上保持した。この時のゲージ圧の変化は0-4MPaの範囲にあった。保持時間が終了した後、反応器を流動砂浴から取り出し、水で急冷した。反応器内の固体(固相)と液体はろ過により分離回収した。回収した固相は、温水にてろ液がpH6になるまで繰り返し洗浄を行なった。ついで、アルカリ水熱反応後の固相中の各成分(鉄、脈石、リン)の含有量を化学分析により特定し、以下の数式(1)、(2)により鉄回収率(%)、脱脈石率(%)、脱リン率(%)を求めた。
【0019】
【0020】
【0021】
数式(1)、(2)において、Waはアルカリ水熱反応後の固相の質量であり、Wbはアルカリ水熱反応前の鉄鉱石の質量であり、Faはアルカリ水熱反応後の固相中の鉄濃度(質量%)であり、Fbはアルカリ水熱反応前の鉄鉱石中の鉄濃度(質量%)である。
【0022】
数式(2)を用いて脱脈石率を求める場合、Paはアルカリ水熱反応後の固相中の全脈石濃度(質量%)であり、Pbはアルカリ水熱反応前の鉄鉱石中の全脈石濃度(質量%)である。数式(2)を用いて脱リン率を求める場合、Paはアルカリ水熱反応後の固相中のリン濃度(質量%)であり、Pbはアルカリ水熱反応前の鉄鉱石中のリン濃度(質量%)である。結果を表2及び
図1に示す。
図1の横軸はアルカリ水熱反応前の鉄鉱石中のリン濃度(質量%)であり、縦軸は脱リン率(%)である。点P1はALYのリン濃度及び脱リン率の相関を示し、点P2はALRのリン濃度及び脱リン率の相関を示す。点P3~P8はWAL~OreEのリン濃度及び脱リン率の相関を示す。
【0023】
【0024】
ALY、ALRはリン濃度の低い高結晶水鉱石であり、これらの脱リン率は高い。しかし、もともとリン濃度が低い(<0.10質量%)ので、コストをかけて脱リン処理をする意味合いが低い。
【0025】
リン濃度が高い鉄鉱石は埋蔵量も豊富であり、脱リン処理をして有効活用化する意味合いは大きい。表2及び
図1によれば、リン濃度が0.1~0.25質量%の鉄鉱石にアルカリ水熱処理をすることで、効率の良い脱リン処理が出来ることが分かった。
【0026】
リン濃度の高い鉄鉱石の方が、含有脈石量が低く、高い脱脈石率を示す。リン濃度が0.1質量%以上の鉄鉱石にアルカリ水熱処理をすると、60%以上の高い脱脈石率を示した。アルカリ水熱処理による鉄回収率は鉄鉱石の種類に依らず高く、80%以上であった。
【0027】
なお、リン濃度が0.1質量%未満だと、上述した高結晶水鉱石を除き、リンの多くがFe2O3と共存するリン酸塩鉱物として存在することになり、アルカリ水熱反応による脱リン性が劣る。リン濃度が0.1質量%以上の鉄鉱石では、リンの多くがゲーサイトに化学吸着したリンとなる。アルカリ水熱反応では、吸着リンの反応性が高く、したがってリン濃度が0.1質量%以上となる場合に脱リン率が向上する。さらに、脈石成分(SiO2、Al2O3)もアルカリ水溶液に溶出し、脱脈石率も向上する。一方、リン濃度が0.25質量%を超えると、アルカリ水熱反応の反応性に対して、初期のリン含有量が過剰となり、脱リン率が低下する。
【0028】
そこで、本発明者らは、アルカリ水熱反応による脱リン及び脱脈石の対象となる鉄鉱石を、リン含有量0.1~0.25質量%の鉄鉱石とした。また、アルカリ水熱反応の反応温度を200~300℃とし、反応時間を10分以上、好ましくは30分以上とした。反応温度が200℃未満では、アルカリ水熱の反応速度が十分に早くなく、アルカリ水熱処理に多大な時間がかかってしまうので望ましくなく、反応温度が300℃超では、反応速度は十分に早いものの、反応温度200℃の時と大差ないばかりか、加温に多大なエネルギーが必要となるので、望ましくないからである。また、反応時間が10分未満では、アルカリ水熱反応が十分に進行しないからである。反応時間の上限値は特に制限されないが、例えば、工業的には3時間以内であってもよい。
【0029】
次に、本発明者らは、NaOH水溶液の濃度について検討した。具体的には、NaOH水溶液の濃度を2~6Mと変動させて上述したアルカリ水熱反応を行った。鉄鉱石はOreAを用いた。その結果を表3に示す。
【0030】
【0031】
表3によれば、NaOH水溶液の濃度が3~5Mとなる場合に、脱脈石率及び脱リン率が60%以上となる。他の鉱石種(B~D)に対しても同様の結果が得られた。なお、NaOH水溶液の濃度が3M未満となる場合、どの鉄鉱石種に対しても十分な(60%以上の)脱脈石率、脱リン率が得られなかった。一方、NaOH水溶液の濃度が5Mを超えると、アルカリ水熱反応後の鉄鉱石(固相)中にNaが0.12%超残留して好ましくない。このような高Naの鉄鉱石を用いて焼結鉱を製造すると、焼結鉱の還元粉化性(RDI)が悪化(40%以上)する。なお、RDIは、JIS M 8720で規定される焼結鉱の還元粉化指数である。焼結鉱500gを、550℃でCO-30%(N2-70%)のガスで30分還元し、冷却後に所定の回転粉化処理を行った後の粉率(2.8mm以下)で表される。洗浄を強化して残留Naを低減させる方法もあるが、焼結鉱の生産性が著しく低下するので好ましくない。
【0032】
次に、本発明者らは、アルカリ水熱反応に添加する物質について検討した。この結果、本発明者らは、上述したアルカリ水熱反応において、鉄鉱石にグリセリンを添加することで、高い還元率が得られることを見出した。グリセリンの添加濃度は、内数で40~70質量%が好ましい。この場合、高い還元率に加えて、高い脱リン率、脱脈石率が得られる。グリセリンの添加濃度はグリセリン、鉄鉱石、及びNaOHの合計質量に対する質量割合である。
【0033】
本発明者らは、このような結果が得られた理由を以下の様に考えている。すなわち、まず、グリセリンとNaOHが反応し、H2とH2Oが生成する(化学式1)。さらに、過剰なグリセリンが分解して、H2を発生する(化学式2)。これらの反応で生成したH2によって、共存する鉄鉱石が還元される(化学式3)。
C3H5(OH)3+NaOH=CH3CH(OH)COONa+H2+H2O (化学式1)
C3H5(OH)3= CH3CH(OH)COOH+H2 (化学式2)
Fe2O3+3H2=2Fe+3H2O (化学式3)
【0034】
表4は5MのNaOH水溶液に65質量%のグリセリンを添加してアルカリ水熱反応を行った結果を示す。表4において、還元率は、アルカリ水熱反応前試料のT.Fe、M.Fe、FeOの化学分析から求まる被還元酸素量と、アルカリ水熱反応後試料のT.Fe、M.Fe、FeOの化学分析値から求まる残存酸素量を測定して、被還元酸素量に対する除去された酸素量の比率から求めた。
【0035】
【0036】
表4によれば、リン含有量が0.1質量%未満のWALは低い還元率であった。一方、高結晶水鉱石であるALYとALRは高い還元率を示した。リン含有量が0.1質量%以上の鉄鉱石は高い還元率を示した。これは以下の理由によると考えられる。すなわち、上記のようにリン含有率が高い鉄鉱石中にはゲーサイト吸着リンが多く、アルカリ水熱反応で脱リンされやすいので、脱リンに消費されるNaOH量が少なくてすむ。その分、グリセリンと反応してH2を生じやすく還元が進む。このため、リン含有量が0.1質量%以上の鉄鉱石は高い還元率を示すと考えられる。ただし、過度にリン含有量が高い(0.25重量%超)と、NaOHのほとんどが脱リンで消費されてしまい、グリセリンと反応してH2を発生する量が限定されてしまうために還元率は80%未満となった。
【0037】
本発明者らは、グリセリンの好ましい濃度について検討した。具体的には、本発明者らは、グリセリンの添加濃度を35~75質量%として上述したアルカリ水熱反応を行った。鉄鉱石はOreAを使用した。結果を表5に示す。
【0038】
【0039】
表5によれば、グリセリンの濃度がいずれの場合であっても、高い還元率が得られた。特に、グリセリンの添加濃度が40~70質量%となる場合に高い脱脈石率、脱リン率、還元率が得られた。他の鉱石種(B~D)でも同様の結果が得られた。グリセリンの濃度が40質量%未満だと、H2発生量が不十分となり、還元率が低下して80%以下となる。ただし、70%の還元率は実用上十分な値である。グリセリンの濃度が70質量%を超えると、NaOHを優先的に消費してしまい、脱脈石率、脱リン率が低下して60%未満となる。ただし、還元率は100%と非常に高い値となった。
【0040】
以上により、リンを0.10~0.25質量%で含有する鉄鉱石に、濃度が3~5MのNaOH水溶液を加えて、密閉容器内で200~300℃で10分以上、好ましくは加熱することで、鉄鉱石の脈石及びリン濃度をさらに低減することが可能となる。具体的には、脱リン率、脱脈石率ともに60%以上に達する。これに加えて、密閉容器内にNaOH水溶液を添加する際に、更にグリセリンを添加することで、高い還元率の鉄を得ることができる。グリセリンの添加濃度は、好ましくは内数で40~70質量%である。この場合、鉄鉱石の還元率が80%以上に達する。
【0041】
<2.鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法>
次に、鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法について説明する。上述したように、本実施形態に係る鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法は、リンを0.10~0.25質量%で含有する鉄鉱石に、濃度が3~5MのNaOH水溶液を加えて、密閉容器内で200~300℃で10分以上、好ましくは30分以上加熱するというものである。密閉容器内は、不活性ガス(He等)を充填することが好ましい。これにより、鉄鉱石の脈石及びリン濃度をさらに低減することが可能となる。本実施形態では、密閉容器内にNaOH水溶液を添加する際に、更にグリセリンを添加することが好ましい。これにより、高い還元率の鉄を得ることができる。グリセリンの好ましい添加濃度は内数で40~70質量%である。なお、アルカリ水熱反応後の固相を十分に洗浄すれば固相にアルカリ成分が残留せず、その後に高炉に使用しても問題ない。また、本実施形態に係る鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法は、バッチ式で行われてもよいし、NaOH水溶液を循環させるような流通式で行われてもよい。
【0042】
<3.鉄の製造方法>
本実施形態に係る鉄の製造方法は、上述した鉄鉱石中の脈石及びリンの除去方法により脈石及びリンを除去した鉄鉱石を還元して鉄を製造するというものである。鉄の製造方法は特に制限されないが、例えば鉄鉱石を用いて焼結鉱を製造し、この焼結鉱を高炉に装入することで鉄を製造してもよい。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。