IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030050
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240229BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B6/03 321D
A61B6/03 321P
A61B6/03 321L
A61B6/03 360Q
A61B6/03 333
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132601
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水川 将
(72)【発明者】
【氏名】田島 崇史
(72)【発明者】
【氏名】種市 達哉
(72)【発明者】
【氏名】西納 直行
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA39
4C093EA06
4C093EB17
4C093EB18
4C093EC29
4C093EC43
4C093EC48
4C093EE16
4C093FA13
4C093FA53
4C093FA55
4C093FB03
4C093FB09
4C093FB12
4C093FF35
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】比較的広い範囲の撮影と比較的狭い範囲の撮影をともに短時間で済ませることが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供する。
【解決手段】CT装置は、複数の撮影ユニットと、回転機構と、線源昇降機構および検出器昇降機構と、CPUとを備える。撮影ユニットは、被写体に向けて四角錐状の放射線を発する放射線源、および被写体を透過した放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列された放射線検出器により構成される。回転機構は、被写体の体軸周りに複数の撮影ユニットを回転させる。線源昇降機構および検出器昇降機構は、複数の撮影ユニットの回転軸方向RADの間隔を変化させる。CPUの撮影制御部は、複数の撮影ユニット、回転機構、線源昇降機構、および検出器昇降機構の動作を制御する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源、および前記被写体を透過した前記放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列された放射線検出器により構成される複数の撮影ユニットと、
前記被写体の体軸周りに複数の前記撮影ユニットを回転させる回転機構と、
複数の前記撮影ユニットの回転軸方向の間隔を変化させる変位機構と、
複数の前記撮影ユニット、前記回転機構、および前記変位機構の動作を制御するプロセッサと、
を備えるコンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記間隔を相対的に広げて撮影する第1撮影モードと、
前記間隔を相対的に狭めて撮影する第2撮影モードと
の切り替えを制御する請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記第1撮影モードは、前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅を超える第1撮影範囲を撮影するモードであり、かつ、
前記第1撮影モードにおける複数の前記撮影ユニットの前記体軸周りの回転角度は、180°以上の第1設定角度である請求項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記間隔を、隣り合う前記撮影ユニットで得られる投影画像同士に重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記撮影ユニットの各々から得られた前記投影画像に対して再構成処理を施すことで、複数の前記撮影ユニット毎の複数の断層画像を生成し、
前記重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する請求項3に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
複数の前記撮影ユニットは回転方向の位相が異なっており、
前記第2撮影モードは、前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅以内の第2撮影範囲を撮影するモードであり、かつ、
前記第2撮影モードにおける複数の前記撮影ユニットの前記体軸周りの回転角度は、複数の前記撮影ユニットの前記回転方向の位相に応じた第2設定角度であり、
複数の前記撮影ユニットが前記第2設定角度で回転されることにより、前記体軸周りの全周の撮影が複数の前記撮影ユニットで分担して行われる請求項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記第1撮影モードと第2撮影モードとが連続して行われる場合、
前記プロセッサは、
前記第1撮影モードにおいては第1方向に複数の前記撮影ユニットを回転させ、第2撮影モードにおいては前記第1方向とは逆の第2方向に複数の前記撮影ユニットを回転させる請求項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記第1撮影モードは、前記間隔が異なる複数のサブ撮影モードを有する請求項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記回転軸方向から見た場合、前記放射線検出器は、前記放射線源と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されている請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
複数の前記撮影ユニットはフレームに保持されており、前記フレーム内に前記被写体がポジショニングされ、
前記回転軸方向から見た場合、前記放射線源は前記フレームの外側に配され、前記放射線検出器は前記フレームの内側に配されている請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
複数の前記撮影ユニットは、第1撮影ユニットと第2撮影ユニットの2つあり、
前記回転軸方向から見た場合、前記第1撮影ユニットの第1放射線源の配された位置を0°としたときに、前記第2撮影ユニットの第2放射線源は、前記第1放射線源と90°以上120°以下の角度隔たった位置に配されている請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
複数の前記撮影ユニットは3つある請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記変位機構は、電動アクチュエータによって前記撮影ユニットを移動させる電動モードと、手動によって前記撮影ユニットを移動させる手動モードとを有する請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記手動モードにおいて、前記間隔が閾値以上であった場合に警告する制御を行う請求項12に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
前記撮影ユニットに連動して移動するカメラを備え、
前記プロセッサは、
前記カメラから得られたカメラ画像をディスプレイに表示する制御を行う請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記カメラ画像に断層画像として再構成可能な撮影範囲を重畳表示する請求項14に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項16】
前記被写体は、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされる請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、臥位姿勢の被写体を撮影するためのコンピュータ断層撮影装置(以下、CT(Computed Tomography)装置と表記)であり、画像取得の効率化を図るため、被写体に向けて放射線を発する放射線源、および被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器により構成される撮影ユニットを複数備えるCT装置が記載されている。複数の撮影ユニットは、被写体の体軸周りを回転するガントリに等間隔に配されている。放射線源はコーンビームを照射し、放射線検出器は複数の画素が2次元状に配列された構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-187453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、CT装置においては、被写体の全身、上半身といった、被写体の体軸方向の比較的広い範囲の撮影、および、疾患の原因と目される被疑部位といった、被写体の体軸方向の比較的狭い範囲の撮影が行われていた。特許文献1に記載のCT装置では、後者の比較的狭い範囲の撮影は短時間で済ませることができるが、前者の比較的広い範囲の撮影には時間が掛かるという問題があった。撮影に時間が掛かると、被写体の負担が増すとともに、被写体の体動によって画像の画質が劣化するおそれも増す。
【0005】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、比較的広い範囲の撮影と比較的狭い範囲の撮影をともに短時間で済ませることが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコンピュータ断層撮影装置は、被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源、および被写体を透過した放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列された放射線検出器により構成される複数の撮影ユニットと、被写体の体軸周りに複数の撮影ユニットを回転させる回転機構と、複数の撮影ユニットの回転軸方向の間隔を変化させる変位機構と、複数の撮影ユニット、回転機構、および変位機構の動作を制御するプロセッサと、を備える。
【0007】
プロセッサは、間隔を相対的に広げて撮影する第1撮影モードと、間隔を相対的に狭めて撮影する第2撮影モードとの切り替えを制御することが好ましい。
【0008】
第1撮影モードは、放射線検出器の放射線の検出面の幅を超える第1撮影範囲を撮影するモードであり、かつ、第1撮影モードにおける複数の撮影ユニットの体軸周りの回転角度は、180°以上の第1設定角度であることが好ましい。
【0009】
プロセッサは、間隔を、隣り合う撮影ユニットで得られる投影画像同士に重複する撮影範囲が生じる設定とし、複数の撮影ユニットの各々から得られた投影画像に対して再構成処理を施すことで、複数の撮影ユニット毎の複数の断層画像を生成し、重複する撮影範囲に基づいて複数の断層画像を位置合わせすることで、複数の断層画像を合成する。
【0010】
複数の撮影ユニットは回転方向の位相が異なっており、第2撮影モードは、放射線検出器の放射線の検出面の幅以内の第2撮影範囲を撮影するモードであり、かつ、第2撮影モードにおける複数の撮影ユニットの体軸周りの回転角度は、複数の撮影ユニットの回転方向の位相に応じた第2設定角度であり、複数の撮影ユニットが第2設定角度で回転されることにより、体軸周りの全周の撮影が複数の撮影ユニットで分担して行われることが好ましい。
【0011】
第1撮影モードと第2撮影モードとが連続して行われる場合、プロセッサは、第1撮影モードにおいては第1方向に複数の撮影ユニットを回転させ、第2撮影モードにおいては第1方向とは逆の第2方向に複数の撮影ユニットを回転させることが好ましい。
【0012】
第1撮影モードは、間隔が異なる複数のサブ撮影モードを有することが好ましい。
【0013】
回転軸方向から見た場合、放射線検出器は、放射線源と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されていることが好ましい。
【0014】
複数の撮影ユニットはフレームに保持されており、フレーム内に被写体がポジショニングされ、回転軸方向から見た場合、放射線源はフレームの外側に配され、放射線検出器はフレームの内側に配されていることが好ましい。
【0015】
複数の撮影ユニットは、第1撮影ユニットと第2撮影ユニットの2つあり、回転軸方向から見た場合、第1撮影ユニットの第1放射線源の配された位置を0°としたときに、第2撮影ユニットの第2放射線源は、第1放射線源と90°以上120°以下の角度隔たった位置に配されていることが好ましい。
【0016】
複数の撮影ユニットは3つあることが好ましい。
【0017】
変位機構は、電動アクチュエータによって撮影ユニットを移動させる電動モードと、手動によって撮影ユニットを移動させる手動モードとを有することが好ましい。
【0018】
プロセッサは、手動モードにおいて、間隔が閾値以上であった場合に警告する制御を行うことが好ましい。
【0019】
撮影ユニットに連動して移動するカメラを備え、プロセッサは、カメラから得られたカメラ画像をディスプレイに表示する制御を行うことが好ましい。
【0020】
プロセッサは、カメラ画像に断層画像として再構成可能な撮影範囲を重畳表示することが好ましい。
【0021】
被写体は、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、比較的広い範囲の撮影と比較的狭い範囲の撮影をともに短時間で済ませることが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】CT装置の正面図である。
図2】CT装置の側面図である。
図3】第1撮影ユニットおよび第2撮影ユニットの構成を示す図である。
図4】車椅子に乗った座位姿勢の被写体がポジショニングされた状態を示すCT装置の正面図である。
図5】フレーム昇降機構を示す図である。
図6】回転機構を示す図である。
図7】放射線源、放射線検出器、および放射線を示す斜視図である。
図8】第1撮影ユニットおよび第2撮影ユニットの配置位置を示す図である。
図9】放射線検出器の基準位置とオフセット位置を示す図である。
図10】線源昇降機構および検出器昇降機構を示す図である。
図11】第1撮影ユニットが上端位置、第2撮影ユニットが下端位置にある場合の放射線束を示す図である。
図12】第1撮影ユニットおよび第2撮影ユニットがともに上端位置にある場合の放射線束を示す図である。
図13】制御装置のCPUの処理部を示すブロック図である。
図14】CT装置による撮影手順を示すフローチャートである。
図15】第1撮影モードと第2撮影モードのそれぞれの内容をまとめた表である。
図16】投影画像から断層画像を生成する処理の概要を示す図である。
図17】放射線検出器が基準位置にある場合の有効視野を示す図である。
図18】放射線検出器がオフセット位置にある場合の有効視野を示す図である。
図19】第2放射線源が第1放射線源と120°より大きい角度隔たった位置に配されている場合を示す図である。
図20】第1撮影モードにおける第1撮影ユニットと第2撮影ユニットの位置の別の例を示す図である。
図21】第1撮影モードにおける第1撮影ユニットと第2撮影ユニットの位置の別の例を示す図である。
図22】第2撮影モードにおける第1撮影ユニットと第2撮影ユニットの位置の別の例を示す図である。
図23】間隔が異なる複数のサブ撮影モードを示す表である。
図24】線源用クラッチを有する線源昇降機構、および検出器用クラッチを有する検出器昇降機構を示す図である。
図25】電動モードを示す図である。
図26】手動モードを示す図である。
図27】第1撮影ユニットと第2撮影ユニットの間隔が閾値以上であった場合に、ディスプレイに表示される警告画面を示す図である。
図28】第2放射線源にカメラを設けた第3実施形態を示す図である。
図29】カメラ画像表示画面を示す図である。
図30】3つの撮影ユニットを設けた例を示す図である。
図31】第1撮影ユニット、第2撮影ユニット、および第3撮影ユニットの構成を示す図である。
図32】第1撮影ユニットが上端位置、第2撮影ユニットが中間位置、第3撮影ユニットが下端位置にある場合の放射線束を示す図である。
図33】第1撮影ユニット、第2撮影ユニット、および第3撮影ユニットがともに上端位置にある場合の放射線束を示す図である。
図34】撮影ユニットが3つの場合の第1撮影モードと第2撮影モードのそれぞれの内容をまとめた表である。
図35】第1撮影ユニットと第2撮影ユニットを対向する位置に配した例を示す図である。
図36図35で示した例の場合の第2撮影モードにおける放射線束を示す図である。
図37図35で示した例の場合の第1撮影モードにおける放射線束を示す図である。
図38】フレームの回転速度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一例として図1に示すように、CT装置10は、被写体Sの断層画像を得るための装置であり、装置本体11と制御装置12とで構成される。装置本体11は、例えば医療施設の撮影室内に設置される。制御装置12は、例えば撮影室の隣室の制御室内に設置される。制御装置12は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ、ノート型のパーソナルコンピュータ、あるいはタブレット端末である。制御装置12は、診療放射線技師といったCT装置10のオペレータにより操作される。
【0025】
一例として図2にも示すように、装置本体11は、ステージ13と、3本の支柱14A、14B、および14Cと、天板15とを備える。ステージ13は例えば八角形状をした平板である(図6参照)。ステージ13の裏面の四隅には、搬送用のキャスター16が取り付けられている。キャスター16には回転ロック機構(図示省略)が備えられており、装置本体11を設置箇所に設置した後に、回転ロック機構を働かせてキャスター16の回転をロックすることができる。あるいは、キャスター16はステージ13から取り外し可能であり、装置本体11を設置箇所に設置した後にキャスター16を外すことができる。
【0026】
支柱14A~14Cは外形が矩形板状をしており、ステージ13の表面の四隅に立設されている。支柱14Aおよび14Cは、装置本体11の正面側の左右(被写体Sの前の左右)に配されている。支柱14Bは、装置本体11の背面側の中心(被写体Sの後ろ)に配されている。天板15は、支柱14A~14Cの上端部に取り付けられている。天板15は、例えば外形がステージ13に倣う八角形状をした平板である(図6参照)。天板15は、中心部が円形にくり抜かれ、かつ支柱14Aおよび14Cの間の装置本体11の正面側の部分が切り欠かれたC字状をしている。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、支柱14A~14Cをまとめて支柱14と表記する。
【0027】
支柱14Aには接続部材17Aが接続され、支柱14Bには接続部材17Bが接続され、支柱14Cには接続部材17Cが接続されている。接続部材17A~17Cにはフレーム18が接続されている。つまり、支柱14A~14Cとフレーム18とは、接続部材17A~17Cを介して相互に接続されている。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、接続部材17A~17Cをまとめて接続部材17と表記する。
【0028】
フレーム18は円環状をしている。この円環状のフレーム18の中心C(図6参照)の位置に、被写体Sがポジショニングされる。図1および図2においては、頭上に両手を上げた立位姿勢の被写体Sがポジショニングされた様子を示している。
【0029】
支柱14には、接続部材17が嵌合するガイドレール(図示省略)が設けられている。接続部材17、ひいてはフレーム18は、ガイドレールに沿って鉛直方向に昇降可能である。すなわち、支柱14は、フレーム18を鉛直方向に昇降可能に保持する。また、フレーム18は、その中心Cを鉛直方向に貫く軸を回転軸RA(図3等参照)として、被写体Sの体軸周りを回転可能である。すなわち、支柱14A~14Cは、被写体Sの体軸周りを回転可能にフレーム18を保持する。以下、中心Cを回転中心Cと表記する場合がある。符号RADで示す矢印は、フレーム18の回転軸方向を示す。回転軸方向RADは鉛直方向と平行である。ここで体軸とは、被写体Sの頭頂部から尾部(肛門)を貫く軸である。被写体Sが立位姿勢または座位姿勢(図4参照)の場合は、体軸は鉛直方向および回転軸方向RADと平行である。「平行」とは、完全な平行の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの平行を指す。なお、支柱14が伸縮することで、フレーム18の高さ位置を変更可能としてもよい。
【0030】
フレーム18には、被写体Sに向けてX線、γ線等の放射線R(図7参照)を照射する第1放射線源201および第2放射線源202と、被写体Sを透過した放射線Rを検出する第1放射線検出器211および第2放射線検出器212が取り付けられている。第1放射線源201および第2放射線源202は箱状をしており、第1放射線検出器211および第2放射線検出器212は矩形板状をしている。
【0031】
一例として図3に示すように、第1放射線源201と第1放射線検出器211は、第1撮影ユニット301を構成する。また、第2放射線源202と第2放射線検出器212は、第2撮影ユニット302を構成する。つまり、CT装置10は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の2つの撮影ユニットを有する。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、第1放射線源201と第2放射線源202をまとめて放射線源20と表記する。また、第1放射線検出器211と第2放射線検出器212をまとめて放射線検出器21と表記する。さらに、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302をまとめて撮影ユニット30と表記する。
【0032】
図1および図2に戻って、支柱14Aにはねじ軸22Aが設けられ、支柱14Bにはねじ軸22Bが設けられ、支柱14Cにはねじ軸22Cが設けられている。ねじ軸22A~22Cは、ステージ13から天板15までに達する高さを有する。ねじ軸22A~22Cが回転することにより、接続部材17A~17C、ひいてはフレーム18が回転軸方向RADに昇降する。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、ねじ軸22A~22Cをまとめてねじ軸22と表記する。
【0033】
支柱14Aには、可動アーム24を介してタッチパネルディスプレイ25が取り付けられている。タッチパネルディスプレイ25はオペレータにより操作される。また、タッチパネルディスプレイ25はオペレータに各種情報を表示する。
【0034】
図1および図2においては、頭上に両手を上げた立位姿勢の被写体Sがフレーム18内にポジショニングされた例を示したが、これに限らない。一例として図4に示すように、CT装置10は、車椅子32に乗った座位姿勢の被写体Sをフレーム18内にポジショニングして撮影することも可能である。なお、立位姿勢の被写体S、および車椅子32に乗った座位姿勢の被写体Sのいずれとも、支柱14Aおよび14Cの側に正面が向き、支柱14Bの側に背面が向くようにポジショニングされる。
【0035】
一例として図5に示すように、接続部材17、ひいてはフレーム18を回転軸方向RADに昇降させるフレーム昇降機構35は、前述のねじ軸22、ねじ軸22に螺合するボール入りのナット36、およびねじ軸22を回転させるフレーム昇降用モータ37等で構成されるボールねじ機構である。フレーム昇降用モータ37は、ステージ13の裏面に取り付けられている。フレーム18の高さ位置は、フレーム昇降用モータ37の回転向きおよび回転数から割り出される。
【0036】
接続部材17は、フレーム18に接続する第1接続部38と、支柱14に接続する第2接続部39とを有する。第1接続部38はフレーム18側に、第2接続部39は支柱14側にそれぞれ突出しており、接続部材17は全体としてZ字状をしている。第1接続部38にはベアリング40が内蔵されている。ベアリング40は、フレーム18の全周にわたって形成されたガイド溝41(図1等も参照)に嵌め込まれている。ベアリング40は、フレーム18の回転に伴って転動する。第2接続部39にはナット36が内蔵されている。
【0037】
一例として図6に示すように、フレーム18、ひいては撮影ユニット30を被写体Sの体軸周りに回転させる回転機構45は、フレーム18の全周に掛け回された回転ベルト46、回転用モータ47、およびポテンショメータ48等で構成される。回転用モータ47は接続部材17Bに内蔵されており、フレーム18から引き出された回転ベルト46の一部にプーリ49を介して接続されている。この回転用モータ47の駆動により、フレーム18、ひいては撮影ユニット30は時計回り(右回り)方向CWおよび反時計回り(左回り)方向CCWに回転する。時計回り方向CWおよび反時計回り方向CCWは、本開示の技術に係る「回転方向」の一例である。
【0038】
ポテンショメータ48は接続部材17Cに内蔵されており、フレーム18から引き出された回転ベルト46の一部にプーリ50を介して接続されている。ポテンショメータ48は、フレーム18の回転位置によって抵抗値が変化する可変抵抗を有し、フレーム18の回転位置に応じた電圧信号を出力する。このポテンショメータ48からの電圧信号により、フレーム18の回転位置が割り出される。なお、図6においては、煩雑を避けるため撮影ユニット30の図示を省略している。
【0039】
一例として図7に示すように、放射線源20は放射線管55を内蔵している。放射線管55は放射線Rを発する。なお、図示は省略したが、放射線源20は、放射線Rの照射野を示す例えば橙色の可視光を発する照射野ランプも内蔵している。
【0040】
放射線源20は照射野限定器56を有する。照射野限定器56はコリメータとも呼ばれ、放射線検出器21への放射線Rの照射野を規定する。照射野限定器56には、放射線管55からの放射線Rが入射する入射開口と、放射線Rが出射する出射開口とが形成されている。出射開口の近傍には、例えば4枚の遮蔽板が設けられている。遮蔽板は、放射線Rを遮蔽する材料、例えば鉛等で形成されている。遮蔽板は、四角形の各辺上に配置、換言すれば井桁状(checkered pattern)に組まれており、放射線Rを透過させる四角形の照射開口を形成する。照射野限定器56は、各遮蔽板の位置を変更することで照射開口の大きさを変化させ、これにより放射線検出器21への放射線Rの照射野を変更する。この照射野限定器56の働きによって、四角錐状の放射線Rが放射線源20から照射される。回転軸方向RADから見た場合の放射線Rの放射角度θは、例えば10°~30°である。放射角度θはコーン角とも呼ばれる。
【0041】
放射線検出器21は、例えば、放射線Rを可視光に変換するシンチレータ、可視光に応じた電荷を蓄積することで放射線Rを検出する複数の画素57が2次元マトリクス状に配列された検出面58を有するTFT(Thin Film Transistor)基板、電荷に応じた電圧信号を投影画像として出力する信号処理回路、およびこれらを内蔵する筐体等で構成される。検出面58は、例えば430mm×430mm(17インチ)のサイズを有する。符号Wは、検出面58の回転軸方向RADにおける幅を示す。放射線Rの焦点(放射線管55において放射線Rが発せられる点)から検出面58までの距離であるSID(Source To Image Distance)は、例えば1200mmである。なお、放射線検出器21は、放射線Rから変換された可視光ではなく、放射線Rを直接検出するタイプであってもよい。
【0042】
一例として図8に示すように、回転軸方向RADから見た場合、第1放射線源201の配された位置を0°とし、反時計回り方向CCWの90°毎の位置を90°、180°、および270°としたときに、第2放射線源202は、第1放射線源201と90°以上120°以下の角度φ隔たった位置に配されている。第1放射線検出器211と第2放射線検出器212は、この第1放射線源201と第2放射線源202の配置位置にしたがった位置に配されている。このため、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302は回転方向の位相が異なっている。なお、φは、本例においては120°である。
【0043】
第1放射線源201からの放射線Rである第1放射線R1と、第2放射線源202からの放射線Rである第2放射線R2とは、フレーム18の回転中心C付近において交差する。第1放射線R1の放射線束の第1中心軸RCA1は、第1放射線検出器211の検出面58の第1中心点CS1と垂直に交わる。同じく、第2放射線R2の放射線束の第2中心軸RCA2は、第2放射線検出器212の検出面58の第2中心点CS2と垂直に交わる。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、第1中心軸RCA1および第2中心軸RCA2をまとめて中心軸RCAと表記する。また、第1中心点CS1および第2中心点CS2をまとめて中心点CSと表記する。
【0044】
第1放射線源201および第2放射線源202は、アタッチメント60Aおよび60Bによってフレーム18に取り付けられている。同様に、第1放射線検出器211および第2放射線検出器212は、アタッチメント61Aおよび61Bによってフレーム18に取り付けられている。これらのアタッチメント60A、60B、61A、および61Bは、ボルト62でフレーム18に固定されている。このため第1撮影ユニット301および第2撮影ユニット302は、その位置関係を維持したまま、回転機構45により一緒に同じ回転方向を回転される。回転軸方向RADから見た場合、放射線源20はフレーム18の外側に配され、放射線検出器21はフレーム18の内側に配されている。
【0045】
フレーム18は、半円環状の2つの部材を溶接等により接合してなる。アタッチメント60Aは、フレーム18の対向する2つの接合部63のうちの1つを覆うように取り付けられている。こうして接合部63にアタッチメント60Aを取り付けることで、機械的に弱い部分である接合部63をアタッチメント60Aで補強することができる。
【0046】
一例として図9に示すように、回転軸方向RADから見た場合、放射線検出器21は、放射線源20と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されている。ここで基準位置とは、照射野限定器56の出射開口を最大に開放したときの放射線Rの放射線束の中心軸RCAと、放射線検出器21の検出面58の中心点CSとが垂直に交わる位置である。オフセット位置の予め設定された角度は、本例においては放射角度θの半分(θ/2)である。
【0047】
一例として図10に示すように、第2放射線源202は、線源昇降機構70により回転軸方向RADに昇降される。線源昇降機構70は、ガイドレール71、および線源昇降用モータ72等で構成される。ガイドレール71は、アタッチメント60Bからフレーム18の外側に向かって延びた第1部分71Aと、第1部分71Aから直角に折れ曲がり、回転軸方向RADに沿って下に延びた第2部分71Bとで構成される。第2部分71Bは、一般的な成人男性の半身(腰部から上の上半身、および腰部から下の下半身)をカバー可能な長さを有する。ここで、「一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さ」とは、人種や個人差はあるものの、200cmを身長の最大値と考えた場合、例えば、100cm程度度の長さである。このように、第2部分71Bの長さを「一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さ」に設定することにより、半身の全体を漏らさず撮影、診断することができる。撮影漏れによって再撮影を行う必要が生じ、撮影時間の長時間化および被写体Sの被曝量増大を招くおそれを低減することができる。被写体Sの半身ではなく全身を撮影する場合を考慮して、第2部分71Bの長さを、上記の100cm程度を超えた長さに設定してもよい。なお、図10においては、煩雑を避けるため第1放射線源201および第1放射線検出器211の図示を省略している。
【0048】
第2放射線源202は第2部分71Bに取り付けられている。第2放射線源202の上昇は、第1部分71Aにより規制される。また、第2部分71Bの下端にはストッパー73が設けられており、このストッパー73により第2放射線源202の下降が規制される。第2放射線源202は、第1部分71Aによって決まる上端位置と、ストッパー73によって決まる下端位置との間で昇降可能である。
【0049】
線源昇降用モータ72は、回転駆動することで、第2放射線源202を第2部分71Bに沿って移動させる。第2放射線源202の高さ位置は、線源昇降用モータ72の回転向きおよび回転数から割り出される。なお、線源昇降用モータ72は、本開示の技術に係る「電動アクチュエータ」の一例である。
【0050】
第2放射線検出器212は、検出器昇降機構80により回転軸方向RADに昇降される。検出器昇降機構80は、ガイドレール81、および検出器昇降用モータ82等で構成される。ガイドレール81は、アタッチメント61Bから真っ直ぐ回転軸方向RADに沿って下に延びている。ガイドレール81は、ガイドレール71の第2部分71Bと同じく、一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さを有する。
【0051】
ガイドレール81には昇降ボックス83が取り付けられている。昇降ボックス83には検出器昇降用モータ82が内蔵されている。昇降ボックス83には、アーム84(図8も参照)を介して第2放射線検出器212が取り付けられている。アーム84は、昇降ボックス83の中心部分からフレーム18の内側に向かって延びた細長の棒である。
【0052】
ガイドレール81の上端および下端には、ストッパー85および86が設けられている。ストッパー85により第2放射線検出器212の上昇が規制され、ストッパー86により第2放射線検出器212の下降が規制される。第2放射線検出器212は、ストッパー85によって決まる上端位置と、ストッパー86によって決まる下端位置との間で昇降可能である。第2放射線検出器212の上端位置および下端位置は、第2放射線源202の上端位置および下端位置に対応する。
【0053】
検出器昇降用モータ82は、線源昇降用モータ72に連動して回転駆動することで、昇降ボックス83、ひいては第2放射線検出器212をガイドレール81に沿って移動させる。第2放射線検出器212の高さ位置は、検出器昇降用モータ82の回転向きおよび回転数から割り出される。なお、検出器昇降用モータ82は、線源昇降用モータ72と同じく、本開示の技術に係る「電動アクチュエータ」の一例である。
【0054】
図10において図示省略した第1放射線源201および第1放射線検出器211には、線源昇降機構70および検出器昇降機構80は設けられていない。したがって第1放射線源201および第1放射線検出器211は回転軸方向RADに昇降しない。第1放射線源201および第1放射線検出器211の高さ位置は、上端位置に固定されている(図11および図12参照)。
【0055】
第1放射線源201および第1放射線検出器211の高さ位置が上端位置に固定されている一方で、第2放射線源202および第2放射線検出器212の高さ位置は、線源昇降機構70および検出器昇降機構80により変化する。つまり、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の回転軸方向RADの間隔が変化する。このため、CT装置10は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の回転軸方向RADの間隔を相対的に広げて撮影したり、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の回転軸方向RADの間隔を相対的に狭めて撮影したりすることが可能である。線源昇降機構70および検出器昇降機構80は、本開示の技術に係る「変位機構」の一例である。
【0056】
一例として図11に示すように、第2放射線源202および第2放射線検出器212が下端位置にあるとき、第1放射線R1の放射線束の下端R1LEと第2放射線R2の放射線束の上端R2UEとが一致する。換言すれば、本例における上端位置と下端位置は、第1放射線R1の放射線束の下端R1LEと第2放射線R2の放射線束の上端R2UEとが一致する位置である。この場合の撮影範囲である第1撮影範囲CR1は、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADにおける幅Wの約1.5倍の幅の範囲である。つまり、第1撮影範囲CR1は幅Wを超える範囲である。なお、図11においては、説明の便宜上、図8で示した0°と180°のそれぞれの位置に放射線源20および放射線検出器21があった場合の放射線Rを示している。また、図11においては、煩雑を避けるため、図9で示したように放射線検出器21をオフセットさせていない。以降の図12等も同様である。
【0057】
符号OCRで示すように、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302とは、撮影範囲が重複している。撮影制御部112は、この重複する撮影範囲(以下、重複撮影範囲と表記)OCRを確保可能な位置に第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302を配する。つまり、撮影制御部112は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302との回転軸方向RADの間隔を、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302とから得られる第1投影画像311と第2投影画像312(ともに図16参照)に重複撮影範囲OCRが生じる設定とする。
【0058】
一例として図12に示すように、第2放射線源202および第2放射線検出器212が上端位置にあるとき、第1放射線R1の放射線束および第2放射線R2の放射線束が一致する。この場合の撮影範囲である第2撮影範囲CR2は、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅Wと一致する範囲である。つまり、第2撮影範囲CR2は幅W以内の範囲である。いずれの回転角度においても第1放射線R1および第2放射線R2が照射される矢印および符号HDAで示す領域は、高精細な断層画像を得ることができる領域(以下、高精細描画領域という)である。高精細描画領域HDAの回転軸方向RADの幅は、例えば200mm~300mmである。なお、「一致」とは、完全一致の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの一致を指す。
【0059】
図11で示した態様は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の回転軸方向RADの間隔を相対的に広げた撮影の一例である。対して図12で示した態様は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の回転軸方向RADの間隔を相対的に狭めた撮影の一例である。
【0060】
一例として図13に示すように、制御装置12を構成するコンピュータは、ストレージ95、メモリ96、CPU(Central Processing Unit)97、ディスプレイ98、および入力デバイス99等を備えている。
【0061】
ストレージ95は、制御装置12を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブル、ネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブである。もしくはストレージ95は、ハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージ95には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。なお、ハードディスクドライブに代えてソリッドステートドライブを用いてもよい。
【0062】
メモリ96は、CPU97が処理を実行するためのワークメモリである。CPU97は、ストレージ95に記憶されたプログラムをメモリ96へロードして、プログラムにしたがった処理を実行する。これにより、CPU97はコンピュータの各部を統括的に制御する。CPU97は、本開示の技術に係る「プロセッサ」の一例である。なお、メモリ96はCPU97に内蔵されていてもよい。
【0063】
ディスプレイ98は各種画面を表示する。各種画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。制御装置12を構成するコンピュータは、各種画面を通じて、入力デバイス99からの操作指示の入力を受け付ける。入力デバイス99は、キーボード、マウス、タッチパネル、および音声入力用のマイク等である。
【0064】
ストレージ95には作動プログラム105が記憶されている。作動プログラム105は、コンピュータを制御装置12として機能させるためのアプリケーションプログラムである。ストレージ95には、作動プログラム105の他に、照射条件テーブル106およびオーダー別照射条件情報107等が記憶されている。
【0065】
作動プログラム105が起動されると、制御装置12のCPU97は、メモリ96等と協働して、受付部110、リードライト(以下、RW(Read Write)と略す)制御部111、撮影制御部112、画像処理部113、画像解析部114、および表示制御部115として機能する。
【0066】
受付部110は、装置本体11のタッチパネルディスプレイ25、および入力デバイス99を介してオペレータにより入力される様々な操作指示を受け付ける。例えば受付部110は撮影メニュー116を受け付ける。受付部110は、撮影メニュー116をRW制御部111に出力する。
【0067】
RW制御部111は、受付部110から撮影メニュー116を受け取る。RW制御部111は、受け取った撮影メニュー116に対応する放射線Rの照射条件117を、照射条件テーブル106から読み出す。RW制御部111は、照射条件テーブル106から読み出した照射条件117を、オーダー別照射条件情報107に書き込む。
【0068】
撮影制御部112は、放射線源20(放射線管55および照射野限定器56)、フレーム昇降機構35(フレーム昇降用モータ37)、並びに回転機構45(回転用モータ47およびポテンショメータ48)の動作を制御する。また、撮影制御部112は、線源昇降機構70(線源昇降用モータ72)、検出器昇降機構80(検出器昇降用モータ82)、並びに放射線検出器21の動作を制御する。撮影制御部112は、オーダー別照射条件情報107から照射条件117を読み出す。撮影制御部112は、照射条件117にしたがって照射野限定器56を駆動させ、照射野を調整する。制御装置12には、図示しない照射スイッチを通じて、オペレータにより撮影指示が入力される。撮影指示が入力された場合、撮影制御部112は、照射条件117にしたがって放射線管55を駆動させ、放射線管55から放射線Rを発生させる。撮影制御部112は、放射線Rの照射により放射線検出器21で検出された投影画像を、放射線検出器21から画像処理部113に出力させる。
【0069】
画像処理部113は、放射線検出器21から投影画像を受け取る。画像処理部113は、投影画像に対して各種画像処理を施す。また、画像処理部113は、複数枚の画像処理後の投影画像に対して再構成処理を施し、断層画像を生成する。画像処理部113は、断層画像を画像解析部114および表示制御部115に出力する。
【0070】
画像解析部114は、断層画像に対して画像解析処理を施し、断層画像に写る被疑部位を特定する。被疑部位は疾患の原因と目される部位であり、例えば、脊椎において神経が狭窄した部分等である。画像解析処理は、いわゆるCAD(Computer-Aided Diagnosis)処理である。画像解析部114は、特定した被疑部位の高さ位置情報を撮影制御部112に出力する。
【0071】
表示制御部115は、タッチパネルディスプレイ25およびディスプレイ98への各種情報の表示を制御する。表示制御部115は、画像処理部113から断層画像を受け取る。表示制御部115は、断層画像をタッチパネルディスプレイ25およびディスプレイ98に表示する。
【0072】
撮影メニュー116は、例えば、撮影オーダーID(Identification Data)および撮影手技を含む。撮影オーダーIDは、断層画像を用いて診断を行う医師が発行した撮影オーダーの識別情報である。撮影手技は、立位または座位といった被写体Sの姿勢と、頭部、頸部、全脊椎といった撮影部位と、成人男性、成人女性、小児等の被写体Sの属性とで構成される。
【0073】
撮影オーダーは、図示省略した放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)から制御装置12に送信される。制御装置12は、表示制御部115の制御の下、撮影オーダーのリストをディスプレイ98に表示する。オペレータは、撮影オーダーのリストを閲覧して内容を確認する。続いて制御装置12は、撮影オーダーに対応する撮影メニューを設定可能な形態でディスプレイ98に表示する。オペレータは、入力デバイス99を操作することで、撮影オーダーに応じた撮影メニューを選択して入力する。
【0074】
照射条件テーブル106には、撮影手技毎に照射条件117が登録されている。照射条件117には、放射線管55に印加する管電圧および管電流と、放射線Rの照射時間とが含まれる。また、照射条件117には照射野のサイズも含まれる。照射条件117は、オペレータの手で微調整することが可能である。なお、管電流と照射時間の代わりに、管電流照射時間積、いわゆるmAs値を照射条件117としてもよい。
【0075】
オーダー別照射条件情報107には、撮影オーダーID毎に照射条件117が登録されている。撮影制御部112は、次の撮影の撮影オーダーIDに対応する照射条件117をオーダー別照射条件情報107から読み出し、読み出した照射条件117にしたがって各部の動作を制御する。
【0076】
次に、CT装置10による撮影手順について、一例として図14に示すフローチャートを参照して説明する。まず、撮影制御部112の制御の下でフレーム昇降機構35が動作され、撮影メニュー116に応じた高さ位置にフレーム18が移動される。例えば成人男性の被写体Sの全脊椎の撮影を指示する撮影メニュー116の場合は、被写体Sの頭部にあたる高さ位置にフレーム18が移動される。また、図11で示したように、撮影制御部112の制御の下で線源昇降機構70および検出器昇降機構80が動作され、第2放射線源202および第2放射線検出器212(第2撮影ユニット302)が下端位置に移動される(ステップST100)。さらに、撮影制御部112の制御の下で照射野限定器56が動作され、照射条件117に応じた照射野に調整される。
【0077】
その後、オペレータにより装置本体11内に被写体Sが誘導され(ステップST110)、オペレータにより被写体Sがポジショニングされる(ステップST120)。この際、必要に応じて放射線源20に内蔵された照射野ランプが点灯され、オペレータによってフレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切か否かが判断される。フレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切でなかった場合は、オペレータによってフレーム18の高さ位置が調整されたり、被写体Sのポジショニングがし直されたりする。フレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切であった場合、オペレータは照射スイッチを通じて撮影指示を入力する。撮影指示は受付部110で受け付けられる(ステップST130でYES)。これにより第1撮影モードによる撮影が行われる(ステップST140)。
【0078】
一例として図15の表120に示すように、第1撮影モードは、第2撮影ユニット302の高さ位置が下端位置とされ、撮影範囲が1つの放射線検出器21の検出面58の幅Wを超える第1撮影範囲CR1とされた図11で示した状態での撮影である。第1撮影モードにおける撮影ユニット30(フレーム18)の回転角度は360°であり、回転方向は時計回り方向CWである。360°は、本開示の技術に係る「第1設定角度」の一例である。また、時計回り方向CWは、本開示の技術に係る「第1方向」の一例である。なお、回転角度は、厳密には360°+θである。
【0079】
第1撮影モードにおける撮影時間は10秒である。回転角度が360°であるため、撮影ユニット30(フレーム18)は1秒間に36°回転する。
【0080】
第1撮影モードにおける放射線検出器21のフレームレートは30fps(frames per second)である。撮影時間が10秒であるため、第1撮影モードにおいて1台の放射線検出器21から出力される投影画像は300枚である。このため、放射線検出器21は、1.2°毎に1枚の投影画像を出力していることになる。本例においては第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の2つの撮影ユニット30を有するため、トータルで600枚の投影画像が得られる。
【0081】
第1撮影モードにおいては、撮影制御部112の制御の下で回転機構45が動作され、フレーム18が時計回り方向CWに360°回転される。その間に、撮影制御部112の制御の下で、放射線検出器21のフレームレートに応じた周期で、同じ照射条件にて放射線源20から放射線Rが連続的に照射され、その都度放射線検出器21から投影画像が出力される。より詳しくは、第1放射線源201および第2放射線源202から同じタイミングで第1放射線R1および第2放射線R2が照射され、第1放射線検出器211および第2放射線検出器212から同じタイミングで投影画像が出力される。放射線検出器21のフレームレートに応じた周期とは、ここではフレーム18が1.2°回転する時間(約0.03秒)である。なお、「同時」とは、完全同時の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの同時を指す。
【0082】
図14に戻って、第1撮影モードによる撮影の終了後、画像処理部113において、得られた投影画像から画像解析用の断層画像が生成される(ステップST150)。より詳しくは図16に示すように、上端位置に配された第1撮影ユニット301により得られた第1投影画像311と、下端位置に配された第2撮影ユニット302により得られた第2投影画像312とから、それぞれ第1断層画像341と第2断層画像342とが生成される。そして、第1断層画像341と第2断層画像342とが重複撮影範囲OCRに基づいて位置合わせされて合成されることで、画像解析用の断層画像34が生成される。この際、シグモイド関数を用いて、第1断層画像341と第2断層画像342とが重複撮影範囲OCRにおいて滑らかに繋がれるように処理してもよい。次いで、画像解析部114において、画像解析用の断層画像34に写る被疑部位が特定される(ステップST150)。そして、被疑部位の高さ位置情報が画像解析部114から撮影制御部112に出力される。
【0083】
第1撮影モードによる撮影の終了後、撮影制御部112の制御の下で線源昇降機構70および検出器昇降機構80が動作され、第2放射線源202および第2放射線検出器212(第2撮影ユニット302)が上端位置に移動される(ステップST160)。また、画像解析部114から撮影制御部112に被疑部位の高さ位置情報が入力された場合、撮影制御部112の制御の下でフレーム昇降機構35が動作され、被疑部位に応じた高さ位置にフレーム18が移動される(ステップST170)。その後、第2撮影モードによる撮影が行われる(ステップST180)。
【0084】
再び図15の表120に示すように、第2撮影モードは、第2撮影ユニット302の高さ位置が上端位置とされ、撮影範囲が1つの放射線検出器21の検出面58の幅W以内の第2撮影範囲CR2とされた図12で示した状態での撮影である。第2撮影モードにおける撮影ユニット30(フレーム18)の回転角度は240°である。回転方向は、第1撮影モードの時計回り方向CWとは逆の反時計回り方向CCWである。240°は、本開示の技術に係る「第2設定角度」の一例である。また、反時計回り方向CCWは、本開示の技術に係る「第2方向」の一例である。なお、回転角度は、厳密には240°+θである。
【0085】
第2撮影モードにおいては、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の高さ位置が同じ上端位置に揃えられる。また、図8で示したように、第1放射線源201と第2放射線源202は120°の角度隔たった位置に配されている。このため、フレーム18を240°回転させれば、360°の角度範囲をカバーしたことになる。
【0086】
第2撮影モードにおける撮影時間は、回転角度が240°であるため、第1撮影モードの10秒よりも短い約6.7秒である。
【0087】
第2撮影モードにおける放射線検出器21のフレームレートは、第1撮影モードと変わらず30fpsである。撮影時間が約6.7秒であるため、第2撮影モードにおいて1台の放射線検出器21から出力される投影画像は200枚である。第2撮影モードにおいても第1撮影モードと同じく、放射線検出器21は、1.2°毎に1枚の投影画像を出力していることになる。本例においては第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の2つの撮影ユニット30を有するため、トータルで400枚の投影画像が得られる。
【0088】
第2撮影モードにおいては、撮影制御部112の制御の下で回転機構45が動作され、第1撮影モードの終了時の回転位置からフレーム18が反時計回り方向CCWに240°回転される。その間に、撮影制御部112の制御の下で、放射線検出器21のフレームレートに応じた周期で放射線源20から放射線Rが連続的に照射され、その都度放射線検出器21から投影画像が出力される。第2撮影モードにおいても第1撮影モードと同じく、第1放射線源201および第2放射線源202から同時に放射線Rが照射され、第1放射線検出器211および第2放射線検出器212から同時に投影画像が出力される。
【0089】
第2撮影モードにおいては、第1撮影ユニット301は0°~240°の角度範囲の撮影を担い、第2撮影ユニット302は120°~360°の角度範囲の撮影を担う。つまり、被写体Sの体軸周りの全周の撮影が、第1撮影ユニット301および第2撮影ユニット302で分担して行われる。第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302とで重複する角度範囲、ここでは120°~240°の角度範囲で得られた投影画像は、断層画像の生成には用いられずに破棄されるものもある。なお、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302とで重複する角度範囲で得られた投影画像を、投影画像の撮影タイミングの精度確認に用いてもよい。
【0090】
図14に戻って、第2撮影モードによる撮影の終了後、画像処理部113において、得られた投影画像から診断用の断層画像が生成される(ステップST190)。そして、表示制御部115の制御の下で、診断用の断層画像がディスプレイ98等に表示され、オペレータの閲覧に供される(ステップST190)。
【0091】
以上説明したように、CT装置10は、複数の撮影ユニット30と、回転機構45と、線源昇降機構70および検出器昇降機構80と、CPU97とを備える。撮影ユニット30は、被写体Sに向けて四角錐状の放射線Rを発する放射線源20、および被写体Sを透過した放射線Rを検出する複数の画素57が2次元状に配列された放射線検出器21により構成される。回転機構45は、被写体Sの体軸周りに複数の撮影ユニット30を回転させる。線源昇降機構70および検出器昇降機構80は、複数の撮影ユニット30の回転軸方向RADの間隔を変化させる。CPU97の撮影制御部112は、複数の撮影ユニット30、回転機構45、線源昇降機構70、および検出器昇降機構80の動作を制御する。このため、比較的広い範囲の撮影と比較的狭い範囲の撮影をともに短時間で済ませることが可能となる。
【0092】
特許文献1に記載のCT装置により比較的広い範囲の撮影を行う場合は、ガントリ内に被写体Sをポジショニングした後、ガントリを被写体Sの体軸方向に何度か移動させて撮影する必要がある。このため、第2撮影ユニット302を下端位置に移動させた後に被写体Sを装置本体11内に誘導し、被写体Sをポジショニングする本開示の技術に係るCT装置10と比べて、被写体Sをポジショニングしてから撮影が終了するまでの時間が長く掛かる。このため被写体Sの負担が増す。また、ガントリを被写体Sの体軸方向に何度か移動させるタイミングで被写体Sの体動が起きると、断層画像の画質が劣化する。対して本開示の技術に係るCT装置10によれば、比較的広い範囲の撮影を短時間で済ませることが可能であるため、被写体Sの負担が軽減され、被写体Sの体動による断層画像の画質劣化のおそれも低減される。
【0093】
図7で示したように、放射線源20は四角錐状の放射線Rを照射し、放射線検出器21は、放射線Rを検出する複数の画素57が2次元状に配列された構成である。このため、放射線源から扇状の放射線Rを照射し、画素が1次元状に配列された放射線検出器で放射線Rを検出する従来のCT装置と比べて、撮影を短時間で済ませることができる。なお、四角錐状に代えて、円錐状の放射線Rを照射してもよい。
【0094】
撮影制御部112は、複数の撮影ユニット30の回転軸方向RADの間隔を相対的に広げて撮影する第1撮影モードと、間隔を相対的に狭めて撮影する第2撮影モードとの切り替えを制御する。このため、複数の撮影ユニット30の回転軸方向RADの間隔を相対的に広げた撮影と、間隔を相対的に狭めた撮影とを、1台のCT装置10でスムーズに行うことができる。間隔を相対的に広げた撮影と、間隔を相対的に狭めた撮影とを別の装置で行う場合と比べて、被写体Sの負担が軽減される。また、間隔を相対的に広げた撮影と、間隔を相対的に狭めた撮影とで、被写体Sのポジショニングの再現性を確保することができる。
【0095】
図11および図15で示したように、第1撮影モードは、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅Wを超える第1撮影範囲CR1を撮影するモードである。第1撮影モードにおける複数の撮影ユニット30の体軸周りの回転角度は、180°以上の第1設定角度である。このため、第1撮影モードにおいては、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅Wを超える第1撮影範囲CR1をカバーした断層画像を短時間で得ることができる。
【0096】
図11で示したように、撮影制御部112は、撮影ユニット30の回転軸方向RADの間隔を、隣り合う撮影ユニット30で得られる投影画像に重複撮影範囲OCRが生じる設定とする。図16で示したように、画像処理部113は、複数の撮影ユニット30の各々から得られた投影画像(第1投影画像311および第2投影画像312)に対して再構成処理を施すことで、複数の撮影ユニット30毎の複数の断層画像(第1断層画像341および第2断層画像342)を生成する。画像処理部113は、重複撮影範囲OCRに基づいて複数の断層画像を位置合わせすることで、複数の断層画像を合成する。このため、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅Wを超える第1撮影範囲CR1をカバーした断層画像の撮影が可能となる。なお、重複撮影範囲OCRに基づいて各撮影ユニット30の投影画像を位置合わせすることで合成した後、合成後の投影画像に対して再構成処理を施すことで断層画像を生成してもよい。
【0097】
図12および図15で示したように、第2撮影モードは、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅W以内の第2撮影範囲CR2を撮影するモードである。第2撮影モードにおける複数の撮影ユニット30の体軸周りの回転角度は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の回転方向の位相に応じた第2設定角度である。複数の撮影ユニット30が第2設定角度で回転されることにより、体軸周りの全周の撮影が複数の撮影ユニット30で分担して行われる。このため、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅W以内の第2撮影範囲CR2をカバーした断層画像を短時間で得ることができる。
【0098】
図15で示したように、第1撮影モードと第2撮影モードとが連続して行われる場合、撮影制御部112は、第1撮影モードにおいては時計回り方向CWに複数の撮影ユニット30を回転させ、第2撮影モードにおいては反時計回り方向CCWに複数の撮影ユニット30を回転させる。このため、360°以上の回転を許容するスリップリングといった特殊な機構を設けずに済み、装置構成をシンプルにすることができる。
【0099】
ここで、図17に示すように、放射線検出器21が基準位置に配されていた場合は、360°の回転でスキャンする領域が変わらないため、有効視野sFOV(Scan Field Of View)は、ハッチングで示すように比較的小さい領域に留まる。対して図18に示すように、放射線検出器21がオフセット位置に配されていた場合は、360°の回転でスキャンする領域が変わるため、有効視野sFOVは、ハッチングで示すように比較的大きい領域となる。したがって、図9で示したように、回転軸方向RADから見た場合、放射線検出器21を、放射線源20と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配することで、放射線検出器21を基準位置に配する場合と比べて、有効視野sFOVを広くすることができる。また、放射線検出器21を基準位置に配する場合と比べて、角度φを多少なりとも大きくとることができる。なお、図17の放射線検出器21を基準位置に配した場合の第1設定角度は、180°(厳密には180°+θ)である。
【0100】
複数の撮影ユニット30はフレーム18に保持されており、フレーム18内に被写体Sがポジショニングされる。図8で示したように、回転軸方向RADから見た場合、放射線源20はフレーム18の外側に配され、放射線検出器21はフレーム18の内側に配されている。有効視野sFOVは、放射線源20が被写体Sから離れる程、かつ、放射線検出器21が被写体Sに近付く程、大きくなる。このため、被写体Sがポジショニングされるフレーム18の外側に放射線源20を配し、内側に放射線検出器21を配せば、有効視野sFOVを広くすることができる。
【0101】
図3で示したように、複数の撮影ユニット30は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の2つある。図8で示したように、回転軸方向RADから見た場合、第1撮影ユニット301の第1放射線源201の配された位置を0°としたときに、第2撮影ユニット302の第2放射線源202は、第1放射線源201と90°以上120°以下の角度φ隔たった位置に配されている。
【0102】
角度φが90°未満である場合は、第2撮影モードにおける回転角度が第1撮影モードの360°に近付き、撮影時間も第1撮影モードと殆ど変わらなくなる。このため、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302を設けたことによる撮影時間の短縮の効果が薄い。また、角度φが120°よりも大きい場合は、図19に示す角度φが125°の場合のように、第2放射線検出器212の端が第1撮影ユニット301により得られる投影画像に写り込んでしまう。したがって、角度φは90°以上120°以下であることが好ましい。
【0103】
なお、放射線検出器21のサイズを小さくすれば、角度φを120°より大きくしても、図19のように放射線検出器21が投影画像に写り込むことは避けられる。ただし、放射線検出器21のサイズを小さくした分、有効視野sFOVは小さくなる。また、放射線検出器21の回転半径(回転中心Cと放射線検出器21の検出面58の中心点CSとの距離)を大きくすれば、角度φを120°より大きくすることができる。ただし、放射線検出器21が被写体Sから離れるために、この場合も有効視野sFOVは小さくなる。このため、放射線源20の回転半径(回転中心Cと放射線源20の放射線Rの焦点との距離)と、放射線検出器21の回転半径との比を2:1(例えば放射線源20の回転半径=800mm、放射線検出器21の回転半径=400mm)程度として、比較的広い有効視野sFOVを確保することが好ましい。
【0104】
あるいは、フレーム18を大きくしてSIDを長くとれば、放射線検出器21を被写体Sから離すことなく、角度φを120°より大きくすることができる。ただし、大型化して重くなったフレーム18に合わせて高出力の回転用モータ47を用意したり、支柱14を太くして剛性を高めたりする必要がある。また、SIDが長くなる分、放射線Rのパワーも上げる必要がある。これらのことから、やはり角度φは90°以上120°以下であることが好ましい。
【0105】
図1図2、および図4で示したように、被写体Sは、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされる。このため、重力が掛かった自然な状態の肺等の軟組織を観察したい、あるいは重力が掛かって負荷が加えられた状態の股関節等の関節を観察したい、という要望に応えることができる。なお、臥位姿勢の被写体Sを撮影するCT装置であってもよい。
【0106】
図11で示した例では、下端位置を、第1放射線R1の放射線束の下端R1LEと第2放射線R2の放射線束の上端R2UEとが一致する位置としたが、これに限らない。一例として図20に示すように、第1撮影ユニット301により得られた投影画像から生成された断層画像と、第2撮影ユニット302により得られた投影画像から生成された断層画像とを画像合成するための最低限の重複撮影範囲OCRを確保可能な間隔であれば、下端位置を図11の場合より下げてもよい。こうすれば、第1撮影範囲CR1をさらに広くすることができる。ただし、この場合は、ハッチングで示すように、回転中心C付近において第1放射線R1および第2放射線R2がともに照射されない空白領域BAが生じるので、この空白領域BAを避けた領域PAに被写体Sをポジショニングする。断層画像の画質は多少劣化するが、比較的広い範囲を撮影することができる。なお、最低限の重複撮影範囲OCRは、例えば10mm~30mmである。
【0107】
また、一例として図21に示すように、下端位置を、第1放射線R1の放射線束に第2放射線R2の放射線束が一部重複する位置としてもよい。
【0108】
第2撮影モードにおいては、図12で示したように、第1放射線R1の放射線束および第2放射線R2の放射線束を一致させているが、これに限らない。一例として図22に示すように、第1放射線R1の放射線束および第2放射線R2の放射線束の間に、高精細描画領域HDA内に最小の被疑部位SSが収まる程度のずれを許容してもよい(高精細描画領域HDAの回転軸方向RADの幅≧最小の被疑部位SSの回転軸方向RADの幅)。この場合、第2撮影範囲CR2は、実際には放射線検出器21の検出面58の幅Wを少し超えるが、幅W以内とする。高精細描画領域HDAは、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302との間隔が離れる程小さくなるが、高精細描画領域HDAの回転軸方向RADの幅が、最小の被疑部位SSの回転軸方向RADの幅よりも小さくなったとき、第1放射線R1の放射線束および第2放射線R2の放射線束の間のずれの許容量の上限となる。最小の被疑部位SSは、例えば小児の1つの脊椎であり、約15mm程度である。
【0109】
[第2実施形態]
一例として図23の表125に示すように、第1撮影モードに複数のサブ撮影モードを設けてもよい。具体的には、サブ撮影モードは、サブ撮影モードA、サブ撮影モードB、およびサブ撮影モードCの3つである。
【0110】
サブ撮影モードAは、図11で示した、第1放射線R1の放射線束の下端R1LEと第2放射線R2の放射線束の上端R2UEとが一致する間隔とするモードである。サブ撮影モードAは、例えば全脊椎撮影等の標準的な撮影に適用される。
【0111】
サブ撮影モードBは、図20で示した、第1撮影ユニット301により得られた投影画像から生成された断層画像と、第2撮影ユニット302により得られた投影画像から生成された断層画像とを画像合成するための最低限の重複撮影範囲OCRを確保可能な間隔とするモードである。サブ撮影モードBは、例えば側弯症患者等の比較的撮影範囲が広い撮影に適用される。
【0112】
サブ撮影モードCは、図21で示した、第1放射線R1の放射線束に第2放射線R2の放射線束が一部重複する間隔とするモードである。サブ撮影モードCは、例えば小児等の比較的撮影範囲が狭い撮影に適用される。
【0113】
このように、第2実施形態では、第1撮影モードは、間隔が異なる複数のサブ撮影モードを有する。このため、撮影の内容に適応した間隔で第1撮影モードによる撮影を行うことができる。
【0114】
[第3実施形態]
一例として図24に示す線源昇降機構130および検出器昇降機構135を用いてもよい。線源昇降機構130は、ガイドレール71および線源昇降用モータ72等にさらに線源用クラッチ131を追加したものである。線源用クラッチ131は、第2放射線源202に対する線源昇降用モータ72の駆動力の伝達および遮断を切り替える。検出器昇降機構135は、ガイドレール81および検出器昇降用モータ82等にさらに検出器用クラッチ136を追加したものである。検出器用クラッチ136は、昇降ボックス83、ひいては第2放射線検出器212に対する検出器昇降用モータ82の駆動力の伝達および遮断を切り替える。
【0115】
一例として図25および図26に示すように、線源昇降機構130および検出器昇降機構135は電動モードと手動モードとを有する。図25に示すように、電動モードにおいては、線源用クラッチ131により線源昇降用モータ72の駆動力が第2放射線源202に伝達され、第2放射線源202が電動にて昇降される。また、検出器用クラッチ136により検出器昇降用モータ82の駆動力が昇降ボックス83、ひいては第2放射線検出器212に伝達され、第2放射線検出器212が電動により昇降される。
【0116】
一方、図26に示すように、手動モードにおいては、線源用クラッチ131により線源昇降用モータ72の駆動力の伝達が遮断され、これにより第2放射線源202の手動での昇降が可能となる。また、検出器用クラッチ136により検出器昇降用モータ82の駆動力の伝達が遮断され、これにより第2放射線検出器212の手動での昇降が可能となる。
【0117】
このように、第3実施形態では、線源昇降機構130および検出器昇降機構135は、線源昇降用モータ72および検出器昇降用モータ82によって第2撮影ユニット302を移動させる電動モードと、手動によって第2撮影ユニット302を移動させる手動モードとを有する。このため、手動による第2撮影ユニット302の位置の調整が可能となる。
【0118】
なお、手動モードにおいて、例えば第1撮影モードによる撮影を開始するときに、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の間隔が閾値以上であった場合、表示制御部115の制御の下で、一例として図27に示す警告画面140をディスプレイ98に表示してもよい。
【0119】
警告画面140は、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の間隔が離れすぎている旨のメッセージ141を含む。警告画面140は、確認ボタン142を選択することで表示が消える。閾値には、第1撮影ユニット301により得られた投影画像から生成された断層画像と、第2撮影ユニット302により得られた投影画像から生成された断層画像とを画像合成するための最低限の重複撮影範囲OCRを確保可能な間隔が設定される。
【0120】
このように、手動モードにおいて、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の間隔が閾値以上であった場合に警告する制御を行えば、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の間隔が不適切な状態で撮影が行われてしまう事態を避けることができる。
【0121】
閾値に、高精細描画領域HDAの回転軸方向RADの幅が最小の被疑部位SSの回転軸方向RADの幅よりも小さくなる間隔を設定してもよい。そして、第2撮影モードによる撮影を開始するときに、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の間隔が閾値以上であった場合に、警告画面140をディスプレイ98に表示してもよい。なお、警告画面140に代えて、あるいは加えて、ランプ、音声等で警告してもよい。
【0122】
[第4実施形態]
一例として図28に示すように、第2放射線源202にカメラ145を設けてもよい。カメラ145は、装置本体11内にポジショニングされた被写体Sを撮影する。カメラ145は第2放射線源202に連動して昇降する。カメラ145は第2放射線源202とは別体で、第2放射線R2の妨げにならない第2放射線源202の下部に取り付けられている。なお、カメラ145は第2放射線源202と一体でもよいし、第2放射線源202に内蔵されていてもよい。
【0123】
一例として図29に示すように、表示制御部115は、カメラ画像表示画面150をディスプレイ98に表示する制御を行う。カメラ画像表示画面150には、カメラ145から得られたカメラ画像151が表示される。カメラ画像151には被写体Sが写っている。表示制御部115は、カメラ画像151に断層画像として再構成可能な撮影範囲を示す枠152を重畳表示する。再構成可能な撮影範囲は、有効視野sFOVに相当する範囲であってもよいし、高精細描画領域HDAに相当する範囲であってもよい。再構成可能な撮影範囲は、SID、照射野のサイズ、および第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の間隔等から導出することができる。
【0124】
このように、第4実施形態では、第2放射線源202に連動して移動するカメラ145を備える。表示制御部115は、カメラ145から得られたカメラ画像151をディスプレイ98に表示する制御を行う。このため、オペレータは、第2放射線源202と被写体Sとの位置関係、および被写体Sのポジショニングの様子等を、カメラ画像151を通して確認することができる。
【0125】
また、表示制御部115は、カメラ画像151に断層画像として再構成可能な撮影範囲を示す枠152を重畳表示する。このため、オペレータに再構成可能な撮影範囲を報せることができる。オペレータは、枠152を頼りに被写体Sのポジショニングをし直したり、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の間隔を微調整したりすることができる。
【0126】
第2放射線源202ではなく、第2放射線検出器212にカメラ145を設けてもよい。また、第2放射線源202および第2放射線検出器212とは別の位置、例えば図8等で示す90°の位置にカメラ145を配し、カメラ145を第2撮影ユニット302と連動して昇降させる昇降機構を設けてもよい。
【0127】
[第5実施形態]
上記各実施形態では、第1撮影ユニット301と第2撮影ユニット302の2つの撮影ユニット30の例を示したが、撮影ユニット30の数はこれに限らない。一例として図30および図31に示すように、第1撮影ユニット301、第2撮影ユニット302、および第3撮影ユニット303の3つの撮影ユニット30を備えていてもよい。
【0128】
第3撮影ユニット303は、第3放射線源203と第3放射線検出器213とで構成される。回転軸方向RADから見た場合、第3放射線源203は、第1放射線源201と240°、第2放射線源202と120°、それぞれ隔たった位置に配されている。第3放射線検出器213は、この第3放射線源203の配置位置にしたがった位置に配されている。つまり、第1撮影ユニット301、第2撮影ユニット302、および第3撮影ユニット303は、120°毎に配されている。
【0129】
なお、第1放射線検出器211、第2放射線検出器212、および第3放射線検出器213のいずれも、図9で示したオフセット位置に配されている。また、線源昇降機構および検出器昇降機構は、第2撮影ユニット302と第3撮影ユニット303に設けられており、第2撮影ユニット302と第3撮影ユニット303は回転軸方向RADに昇降する。一方、第1撮影ユニット301には、上記第1実施形態と同じく線源昇降機構および検出器昇降機構は設けられておらず、第1撮影ユニット301は上端位置に固定されている。
【0130】
一例として図32に示すように、第2撮影ユニット302を構成する第2放射線源202および第2放射線検出器212は中間位置に配され、第3撮影ユニット303を構成する第3放射線源203および第3放射線検出器213は下端位置に配される。中間位置は、第1放射線R1の放射線束の下端R1LEと第2放射線R2の放射線束の上端R2UEとが一致する位置である。下端位置は、第2放射線R2の放射線束の下端R2LEと、第3放射線源203から発せられる第3放射線R3の放射線束の上端R3UEとが一致する位置である。この場合の第1撮影範囲CR1は、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADにおける幅Wの約2倍の幅の範囲である。つまり、第1撮影範囲CR1は幅Wを超える範囲である。
【0131】
一例として図33に示すように、第2放射線源202および第2放射線検出器212と、第3放射線源203および第3放射線検出器213とが上端位置にあるとき、第1放射線R1の放射線束、第2放射線R2の放射線束、および第3放射線R3の放射線束が一致する。この場合の第2撮影範囲CR2は、上記第1実施形態の図12の場合と同じく、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅Wと一致する範囲である。つまり、第2撮影範囲CR2は幅W以内の範囲である。
【0132】
本第5実施形態における第1撮影モードと第2撮影モードの内容は、一例として図34に示す表155のようになる。すなわち、第1撮影モードは、第2撮影ユニット302の高さ位置が中間位置、第3撮影ユニット303の高さ位置が下端位置とされ、撮影範囲が1つの放射線検出器21の検出面58の幅Wを超える第1撮影範囲CR1とされた図32で示した状態での撮影である。回転角度、回転方向、撮影時間、およびフレームレートは、上記第1実施形態の第1撮影モードと同じである。
【0133】
第2撮影モードは、第2撮影ユニット302および第3撮影ユニット303の高さ位置が上端位置とされ、撮影範囲が1つの放射線検出器21の検出面58の幅W以内の第2撮影範囲CR2とされた図33で示した状態での撮影である。この場合の撮影ユニット30(フレーム18)の回転角度は120°である。このため撮影時間は約3.3秒である。なお、回転角度は、厳密には120°+θである。
【0134】
第2撮影モードにおいて1台の放射線検出器21から出力される投影画像は100枚である。本例においては第1撮影ユニット301、第2撮影ユニット302、および第3撮影ユニット303の3つの撮影ユニット30を有するため、トータルで300枚の投影画像が得られる。
【0135】
第2撮影モードにおいては、第1撮影ユニット301は0°~120°の角度範囲の撮影を担い、第2撮影ユニット302は120°~240°の角度範囲の撮影を担い、第3撮影ユニット303は240°~360°の角度範囲の撮影を担う。つまり、被写体Sの体軸周りの全周の撮影が、第1撮影ユニット301、第2撮影ユニット302、および第3撮影ユニット303で分担して行われる。
【0136】
このように、第5実施形態では、撮影ユニット30は、第1撮影ユニット301、第2撮影ユニット302、および第3撮影ユニット303の3つある。このため、2つの撮影ユニット30の場合と比べて、第1撮影モードにおける第1撮影範囲CR1を広くとることができる。また、2つの撮影ユニット30の場合と比べて、第2撮影モードによる撮影をより短時間で済ませることができる。
【0137】
一例として図35に示すように、回転軸方向RADから見た場合に、第1放射線源201と第2放射線源202、第1放射線検出器211と第2放射線検出器212を対向する位置(ここでは0°の位置と180°の位置)に配してもよい。ただし、この場合は、そのままでは第1放射線検出器211と第2放射線検出器212が投影画像に写り込んでしまうので、回転軸方向RADにおける第1放射線源201および第2放射線源202の配置位置を以下のように工夫する。
【0138】
すなわち、一例として図36に示すように、第2撮影モードの場合、第1放射線源201および第2放射線源202を、回転軸方向RADにおいて第1放射線検出器211および第2放射線検出器212の下方にずらした位置に配する。そして、照射野限定器56により第1放射線R1および第2放射線R2の照射野を調整し、第1放射線R1および第2放射線R2を第1放射線検出器211および第2放射線検出器212に向けて打ち上げる。
【0139】
また、一例として図37に示すように、第1撮影モードのために第2放射線源202および第2放射線検出器212を下端位置に下降させる場合を考える。この場合、第1放射線源201が図36で示した位置のままであると、下降した第2放射線検出器212が投影画像に写り込んでしまう。そこで、第1放射線源201にも線源昇降機構を設けて、第2放射線検出器212が投影画像に写り込まない位置に第1放射線源201を下降させる。
【0140】
こうすれば、第2撮影モードにおける撮影ユニット30の回転角度である第2設定角度は180°でよいので、上記第1実施形態の第2設定角度が240°の場合と比べて、第2撮影モードによる撮影を短時間で済ませることができる。
【0141】
なお、フレーム18はそれなりの重量がある。そして、撮影ユニット30を複数設けたことでさらにフレーム18の重量が増すので、フレーム18の慣性モーメントはより大きくなる。このため、実際は、一例として図38のグラフに示すように、回転開始から定速回転に至るまでの加速期間APと、定速回転から回転停止に至るまでの減速期間DPとに、T1-T0の時間とT3-T2の時間が掛かる。そこで、例えば上記第1実施形態の第1撮影モードにおいて360°の第1設定角度にてフレーム18を回転させる場合、定速期間CSPにおいてはフレーム18を360°回転させるとして、20°ずつの回転で加速期間APおよび減速期間DPを終わらせる。このため、実際には、フレーム18を400°回転させていることになる。第2撮影モードにおいて例えば240°の第2設定角度にてフレーム18を回転させる場合も同様に、相応の加速期間APおよび減速期間DPが設けられ、フレーム18が240°以上回転される。
【0142】
フレーム18は、前述のようにスリップリングのような機構をもたず、配線により電力が供給される。このため、フレーム8には配線長に応じた限界回転角度が存在する。そこで、安全対策として、フレーム18の一方向の回転角度が限界回転角度となった場合に、回転用モータ47への電力供給を強制的に遮断する機械的スイッチを設けることが好ましい。図38で示したようにフレーム18を360°回転させるのに実際には400°回転させる場合は、400°の回転が360°の回転に変換されるような回転角度変換器を回転機構45のポテンショメータ48に接続すればよい。
【0143】
第1撮影モードによる撮影において、例えば全身等のより広い範囲を撮影する場合は、フレーム18を2回以上昇降させて、2回以上に分けて撮影を行ってもよい。また、第2撮影モードによる撮影において、異なる高さ位置の被疑部位が複数特定された場合も同様に、フレーム18を2回以上昇降させて、複数の被疑部位を1つずつ撮影してもよい。
【0144】
第1撮影モードによる撮影と第2撮影モードによる撮影は、必ずしも連続して行わなくてもよい。単純放射線撮影装置、超音波撮影装置といった他の医用画像撮影装置で得られた画像の解析によって既に被疑部位が特定されている場合は、第2撮影モードによる撮影のみを行ってもよい。
【0145】
上記第1実施形態では、第1撮影ユニット301を上端位置に固定としたが、これに限らない。第1撮影ユニット301にも線源昇降機構および検出器昇降機構を設け、第1撮影ユニット301を回転軸方向RADに昇降可能としてもよい。
【0146】
放射線源20および放射線検出器21をフレーム18の周方向に沿って移動させる機構を設け、放射線源20および放射線検出器21の配置位置を変更可能に構成してもよい。こうすれば、装置本体11内への被写体Sの誘導の邪魔になる放射線源20および放射線検出器21を、邪魔にならない位置に退避させるといったことができる。
【0147】
画像解析部114により被疑部位を特定する代わりに、第1撮影モードによる撮影で得られた断層画像をディスプレイ98に表示し、その画面上でオペレータに被疑部位を指定させてもよい。
【0148】
支柱14は4本でもよいし5本でもよい。また、回転用モータ47をステッピングモータとして、回転用モータ47に与えるパルス数によってフレーム18の回転位置を割り出してもよい。また、フレーム18は円環に限らず、多角環でもよい。
【0149】
制御装置12を構成するコンピュータのハードウェア構成は種々の変形が可能である。例えば、制御装置12を、処理能力および信頼性の向上を目的として、ハードウェアとして分離された複数台のコンピュータで構成することも可能である。例えば、受付部110、RW制御部111、および表示制御部115の機能と、撮影制御部112、画像処理部113、および画像解析部114の機能とを、2台のコンピュータに分散して担わせる。この場合は2台のコンピュータで制御装置12を構成する。
【0150】
このように、制御装置12のコンピュータのハードウェア構成は、処理能力、安全性、信頼性等の要求される性能に応じて適宜変更することができる。さらに、ハードウェアに限らず、作動プログラム105といったアプリケーションプログラムについても、安全性および信頼性の確保を目的として、二重化したり、あるいは、複数のストレージに分散して格納することももちろん可能である。
【0151】
上記各実施形態において、例えば、受付部110、RW制御部111、撮影制御部112、画像処理部113、画像解析部114、および表示制御部115といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、ソフトウェア(作動プログラム105)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU97に加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、および/またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0152】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0153】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0154】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0155】
以上の記載から、下記の付記項に記載の技術を把握することができる。
【0156】
[付記項1]
被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源、および前記被写体を透過した前記放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列された放射線検出器により構成される複数の撮影ユニットと、
前記被写体の体軸周りに複数の前記撮影ユニットを回転させる回転機構と、
複数の前記撮影ユニットの回転軸方向の間隔を変化させる変位機構と、
複数の前記撮影ユニット、前記回転機構、および前記変位機構の動作を制御するプロセッサと、
を備えるコンピュータ断層撮影装置。
[付記項2]
前記プロセッサは、
前記間隔を相対的に広げて撮影する第1撮影モードと、
前記間隔を相対的に狭めて撮影する第2撮影モードと
の切り替えを制御する付記項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項3]
前記第1撮影モードは、前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅を超える第1撮影範囲を撮影するモードであり、かつ、
前記第1撮影モードにおける複数の前記撮影ユニットの前記体軸周りの回転角度は、180°以上の第1設定角度である付記項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項4]
前記プロセッサは、
前記間隔を、隣り合う前記撮影ユニットで得られる投影画像同士に重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記撮影ユニットの各々から得られた前記投影画像に対して再構成処理を施すことで、複数の前記撮影ユニット毎の複数の断層画像を生成し、
前記重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する付記項3に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項5]
複数の前記撮影ユニットは回転方向の位相が異なっており、
前記第2撮影モードは、前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅以内の第2撮影範囲を撮影するモードであり、かつ、
前記第2撮影モードにおける複数の前記撮影ユニットの前記体軸周りの回転角度は、複数の前記撮影ユニットの前記回転方向の位相に応じた第2設定角度であり、
複数の前記撮影ユニットが前記第2設定角度で回転されることにより、前記体軸周りの全周の撮影が複数の前記撮影ユニットで分担して行われる付記項2から付記項4のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項6]
前記第1撮影モードと第2撮影モードとが連続して行われる場合、
前記プロセッサは、
前記第1撮影モードにおいては第1方向に複数の前記撮影ユニットを回転させ、第2撮影モードにおいては前記第1方向とは逆の第2方向に複数の前記撮影ユニットを回転させる付記項2から付記項5のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項7]
前記第1撮影モードは、前記間隔が異なる複数のサブ撮影モードを有する付記項2から付記項6のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項8]
前記回転軸方向から見た場合、前記放射線検出器は、前記放射線源と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されている付記項1から付記項7のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項9]
複数の前記撮影ユニットはフレームに保持されており、前記フレーム内に前記被写体がポジショニングされ、
前記回転軸方向から見た場合、前記放射線源は前記フレームの外側に配され、前記放射線検出器は前記フレームの内側に配されている付記項1から付記項8のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項10]
複数の前記撮影ユニットは、第1撮影ユニットと第2撮影ユニットの2つあり、
前記回転軸方向から見た場合、前記第1撮影ユニットの第1放射線源の配された位置を0°としたときに、前記第2撮影ユニットの第2放射線源は、前記第1放射線源と90°以上120°以下の角度隔たった位置に配されている付記項1から付記項9のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項11]
複数の前記撮影ユニットは3つある付記項1から付記項10のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項12]
前記変位機構は、電動アクチュエータによって前記撮影ユニットを移動させる電動モードと、手動によって前記撮影ユニットを移動させる手動モードとを有する付記項1から付記項11のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項13]
前記プロセッサは、
前記手動モードにおいて、前記間隔が閾値以上であった場合に警告する制御を行う付記項12に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項14]
前記撮影ユニットに連動して移動するカメラを備え、
前記プロセッサは、
前記カメラから得られたカメラ画像をディスプレイに表示する制御を行う付記項1から付記項13のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項15]
前記プロセッサは、
前記カメラ画像に断層画像として再構成可能な撮影範囲を重畳表示する付記項14に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項16]
前記被写体は、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされる付記項1から付記項15のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【0157】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0158】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0159】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0160】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0161】
10 コンピュータ断層撮影装置(CT装置)
11 装置本体
12 制御装置
13 ステージ
14、14A~14C 支柱
15 天板
16 キャスター
17、17A~17C 接続部材
18 フレーム
20 放射線源
21 放射線検出器
22、22A~22C ねじ軸
24 可動アーム
25 タッチパネルディスプレイ
30 撮影ユニット
32 車椅子
34 画像解析用の断層画像
35 フレーム昇降機構
36 ナット
37 フレーム昇降用モータ
38 第1接続部
39 第2接続部
40 ベアリング
41 ガイド溝
45 回転機構
46 回転ベルト
47 回転用モータ
48 ポテンショメータ
49、50 プーリ
55 放射線管
56 照射野限定器
57 画素
58 検出面
60A、60B、61A、61B アタッチメント
62 ボルト
63 接合部
70、130 線源昇降機構
71、81 ガイドレール
71A、71B 第1部分、第2部分
72 線源昇降用モータ
73、85、86 ストッパー
80、135 検出器昇降機構
82 検出器昇降用モータ
83 昇降ボックス
84 アーム
95 ストレージ
96 メモリ
97 CPU
98 ディスプレイ
99 入力デバイス
105 作動プログラム
106 照射条件テーブル
107 オーダー別照射条件情報
110 受付部
111 リードライト制御部(RW制御部)
112 撮影制御部
113 画像処理部
114 画像解析部
115 表示制御部
116 撮影メニュー
117 照射条件
120、125、155 表
131 線源用クラッチ
136 検出器用クラッチ
140 警告画面
141 メッセージ
142 確認ボタン
145 カメラ
150 カメラ画像表示画面
151 カメラ画像
152 枠
201 第1放射線源
202 第2放射線源
203 第3放射線源
211 第1放射線検出器
212 第2放射線検出器
213 第3放射線検出器
301 第1撮影ユニット
302 第2撮影ユニット
303 第3撮影ユニット
311 第1投影画像
312 第2投影画像
341 第1断層画像
342 第2断層画像
AP 加速期間
BA 空白領域
C フレームの中心(回転中心)
CCW 反時計回り方向
CR1 第1撮影範囲
CR2 第2撮影範囲
CS 放射線検出器の検出面の中心点
CS1 第1放射線検出器の検出面の第1中心点
CS2 第2放射線検出器の検出面の第2中心点
CSP 定速期間
CW 時計回り方向
DP 減速期間
HDA 高精細描画領域
OCR 重複撮影範囲
PA 空白領域を避けた領域
R 放射線
R1 第1放射線
R1LE 第1放射線の放射線束の下端
R2 第2放射線
R2LE 第2放射線の放射線束の下端
R2UE 第2放射線の放射線束の上端
R3 第3放射線
R3UE 第3放射線の放射線束の上端
RA 回転軸
RAD 回転軸方向
RCA 放射線の放射線束の中心軸
RCA1 第1放射線の放射線束の第1中心軸
RCA2 第2放射線の放射線束の第2中心軸
S 被写体
sFOV 有効視野
SS 最小の被疑部位
ST100、ST110、ST120、ST130、ST140、ST150、ST160、ST170、ST180、ST190 ステップ
T0~T3 時間
W 放射線検出器の検出面の幅
θ 放射線の放射角度
φ 第1放射線源と第2放射線源の配置位置の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
プロセッサは、間隔を、隣り合う撮影ユニットで得られる投影画像同士に重複する撮影範囲が生じる設定とし、複数の撮影ユニットの各々から得られた投影画像に対して再構成処理を施すことで、複数の撮影ユニット毎の複数の断層画像を生成し、重複する撮影範囲に基づいて複数の断層画像を位置合わせすることで、複数の断層画像を合成することが好ましい
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0137
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0137】
一例として図35に示すように、回転軸方向RADから見た場合に、第1放射線源201と第2放射線源202、および第1放射線検出器211と第2放射線検出器212を対向する位置(ここでは0°の位置と180°の位置)に配してもよい。ただし、この場合は、そのままでは第1放射線検出器211と第2放射線検出器212が投影画像に写り込んでしまうので、回転軸方向RADにおける第1放射線源201および第2放射線源202の配置位置を以下のように工夫する。