(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030052
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240229BHJP
A61B 6/40 20240101ALI20240229BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240229BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20240229BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B6/03 370G
A61B6/03 321P
A61B6/03 320C
A61B6/03 320Y
A61B6/03 360Q
A61B6/03 321D
G01T1/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132603
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水川 将
(72)【発明者】
【氏名】種市 達哉
(72)【発明者】
【氏名】田島 崇史
(72)【発明者】
【氏名】西納 直行
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188CC22
2G188CC32
2G188DD05
2G188EE08
2G188EE27
2G188EE36
2G188FF14
4C093AA22
4C093CA39
4C093EA02
4C093EA06
4C093EA07
4C093EB17
4C093EB18
4C093FA15
4C093FA32
4C093FA55
4C093FD11
4C093FD12
4C093FE02
4C093FF09
4C093FF34
(57)【要約】
【課題】第1放射線および第2放射線の照射の切り替えを高速化することが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線源は、冷陰極である陰極をもつ放射線管を有する。撮影制御部は、回転機構によって放射線源および放射線検出器が予め設定された角度回転する毎に、第1エネルギー分布を有する第1放射線、および第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する第2放射線を連続的に放射線源から照射させる。撮影制御部は、第1放射線および第2放射線の連続的な照射によって得られる第1投影画像および第2投影画像であり、第1放射線に基づく第1投影画像および第2放射線に基づく第2投影画像を放射線検出器から出力させる。画像処理部は、第1投影画像および第2投影画像に基づいて断層画像を生成する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源であり、冷陰極をもつ放射線管を有する放射線源と、
前記被写体を透過した前記放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列され、前記被写体の投影画像を出力する放射線検出器と、
前記放射線源および前記放射線検出器を前記被写体の体軸周りに回転させる回転機構と、
前記放射線源、前記放射線検出器、および前記回転機構の動作を制御するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記回転機構によって前記放射線源および前記放射線検出器が予め設定された角度回転する毎に、第1エネルギー分布を有する第1放射線、および前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する第2放射線を連続的に前記放射線源から照射させ、
前記第1放射線および前記第2放射線の連続的な照射によって得られる第1投影画像および第2投影画像であり、前記第1放射線に基づく第1投影画像および前記第2放射線に基づく第2投影画像を前記放射線検出器から出力させ、
前記第1投影画像および前記第2投影画像に基づいて断層画像を生成する、
コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記冷陰極は、電界放出現象を利用して電子線を放出する電子放出源を有する電界放出型である請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記放射線源および前記放射線検出器の組で構成される撮影ユニットであり、回転方向の位相が異なる撮影ユニットを複数備える請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
複数の前記撮影ユニットの回転軸方向の間隔を変化させる変位機構を備える請求項3に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅を超える撮影範囲を撮影する場合、前記間隔を、隣り合う前記撮影ユニットで得られる前記投影画像同士に重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記撮影ユニットの各々から得られた前記投影画像に対して再構成処理を施すことで、複数の前記撮影ユニット毎の複数の前記断層画像を生成し、
前記重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する請求項4に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記放射線検出器は、前記放射線源および前記放射線検出器の回転軸方向と直交する方向に沿って、前記放射線の検出部が複数並べられた構成である請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記放射線源および前記放射線検出器の回転軸方向から見た場合、前記放射線検出器は、前記放射線源と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されている請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記放射線源および前記放射線検出器はフレームに保持されており、前記フレーム内に前記被写体がポジショニングされ、
前記放射線源および前記放射線検出器の回転軸方向から見た場合、前記放射線源は前記フレームの外側に配され、前記放射線検出器は前記フレームの内側に配されている請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記投影画像に対して再構成処理を施すことで前記断層画像を生成するに際して、圧縮センシングの手法を用いる請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅は300mm以上である請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、臥位姿勢または座位姿勢の被写体を撮影するためのコンピュータ断層撮影装置(以下、CT(Computed Tomography)装置と表記)であり、被写体に向けて放射線を発する放射線源、および被写体を透過した放射線を検出し、被写体の投影画像を出力する放射線検出器により構成される撮影ユニットを2つ備えるCT装置が記載されている。2つの撮影ユニットは、被写体の体軸周りを回転するガントリに、90°の間隔を空けて配されている。放射線源はコーンビームを照射し、放射線検出器は複数の画素が2次元マトリクス状に配列された構成である。
【0003】
特許文献1において、2つの撮影ユニットのうちの一方は第1エネルギー分布を有する第1放射線を照射し、他方は第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する第2放射線を照射する。2つの撮影ユニットは、ガントリが予め設定された角度回転する毎に、第1放射線および第2放射線を同時に被写体に照射し、これにより異なるエネルギーの放射線が照射された被写体の第1投影画像および第2投影画像を得る。
【0004】
特許文献1では、第1投影画像および第2投影画像にエネルギーサブトラクション(以下、ES(Energy Subtraction)と表記)処理を施し、特定の生体組織が強調されたES画像を生成している。具体的には、同じ回転位置において得られた第1投影画像および第2投影画像からES画像を生成している。そして、各回転位置のES画像に対して再構成処理を施し、断層画像を生成している。特定の生体組織とは、肋骨、背骨といった骨部組織、あるいは肺、胃といった軟部組織である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のCT装置では、2つの撮影ユニットが90°の間隔を空けて配されているので、同時に得られた第1投影画像および第2投影画像における被写体の写る角度が異なる。このため、同時に得られた第1投影画像および第2投影画像からはES画像を生成することができない。したがって、一方の撮影ユニットが0°の位置の場合に得られた第1投影画像、および、それから90°回転して他方の撮影ユニットが0°の位置に至った場合に得られた第2投影画像等、同じ回転位置において得られた第1投影画像および第2投影画像からES画像を生成していると考えられる。しかしながら、この方法では第1投影画像と第2投影画像との取得時間にタイムラグが生じ、被写体の体動の影響を大きく受けてしまう。
【0007】
本発明者らは、立位姿勢または座位姿勢の被写体の断層画像を得るためのCT装置の構想を練っている。そして、特許文献1に記載のCT装置における上記問題を解決するために、1つの放射線源から第1放射線および第2放射線を連続的に照射することで、各回転位置において、被写体の写る角度がほぼ同じ第1投影画像および第2投影画像をほぼ同時に得る構成を考えている。
【0008】
ただし、この場合、第1投影画像および第2投影画像の同時性を確保するために、第1放射線および第2放射線の照射の切り替えの高速化が必要である。また、それなりの画質の断層画像を生成するためには、予め設定された回転速度において第1投影画像および第2投影画像をより多く得るほうがよく、そのためにも第1放射線および第2放射線の照射の切り替えの高速化が必要である。さらに、立位姿勢または座位姿勢の被写体は、臥位姿勢の被写体と比べて不安定で体動が発生しやすいため、その観点からも第1放射線および第2放射線の照射の切り替えの高速化が必要である。
【0009】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、第1放射線および第2放射線の照射の切り替えを高速化することが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のコンピュータ断層撮影装置は、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源であり、冷陰極をもつ放射線管を有する放射線源と、被写体を透過した放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列され、被写体の投影画像を出力する放射線検出器と、放射線源および放射線検出器を被写体の体軸周りに回転させる回転機構と、放射線源、放射線検出器、および回転機構の動作を制御するプロセッサと、を備え、プロセッサは、回転機構によって放射線源および放射線検出器が予め設定された角度回転する毎に、第1エネルギー分布を有する第1放射線、および第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する第2放射線を連続的に放射線源から照射させ、第1放射線および第2放射線の連続的な照射によって得られる第1投影画像および第2投影画像であり、第1放射線に基づく第1投影画像および第2放射線に基づく第2投影画像を放射線検出器から出力させ、第1投影画像および第2投影画像に基づいて断層画像を生成する。
【0011】
冷陰極は、電界放出現象を利用して電子線を放出する電子放出源を有する電界放出型であることが好ましい。
【0012】
放射線源および放射線検出器の組で構成される撮影ユニットであり、回転方向の位相が異なる撮影ユニットを複数備えることが好ましい。
【0013】
複数の撮影ユニットの回転軸方向の間隔を変化させる変位機構を備えることが好ましい。
【0014】
プロセッサは、放射線検出器の放射線の検出面の幅を超える撮影範囲を撮影する場合、間隔を、隣り合う撮影ユニットで得られる投影画像同士に重複する撮影範囲が生じる設定とし、複数の撮影ユニットの各々から得られた投影画像に対して再構成処理を施すことで、複数の撮影ユニット毎の複数の断層画像を生成し、重複する撮影範囲に基づいて複数の断層画像を位置合わせすることで、複数の断層画像を合成することが好ましい。
【0015】
放射線検出器は、放射線源および放射線検出器の回転軸方向と直交する方向に沿って、放射線の検出部が複数並べられた構成であることが好ましい。
【0016】
放射線源および放射線検出器の回転軸方向から見た場合、放射線検出器は、放射線源と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されていることが好ましい。
【0017】
放射線源および放射線検出器はフレームに保持されており、フレーム内に被写体がポジショニングされ、放射線源および放射線検出器の回転軸方向から見た場合、放射線源はフレームの外側に配され、放射線検出器はフレームの内側に配されていることが好ましい。
【0018】
プロセッサは、投影画像に対して再構成処理を施すことで断層画像を生成するに際して、圧縮センシングの手法を用いることが好ましい。
【0019】
放射線検出器の放射線の検出面の幅は300mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本開示の技術によれば、第1放射線および第2放射線の照射の切り替えを高速化することが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】放射線源および放射線検出器の配置位置を示す図である。
【
図4】車椅子に乗った座位姿勢の被写体がポジショニングされた状態を示すCT装置の正面図である。
【
図7】放射線源、放射線検出器、および放射線を示す斜視図である。
【
図10】第1放射線の第1エネルギー分布および第2放射線の第2エネルギー分布を示すグラフである。
【
図11】放射線管から第1放射線を発生させ、被写体を透過した第1放射線に基づく第1投影画像を放射線検出器から出力させる様子を示す図である。
【
図12】放射線管から第2放射線を発生させ、被写体を透過した第2放射線に基づく第2投影画像を放射線検出器から出力させる様子を示す図である。
【
図13】放射線のエネルギーに対する骨部組織と軟部組織の吸収係数を示すグラフである。
【
図16】放射線源および放射線検出器の配置位置を示す図である。
【
図17】放射線検出器の基準位置とオフセット位置を示す図である。
【
図18】制御装置のCPUの処理部を示すブロック図である。
【
図20】放射線源の放射線の照射タイミング、および放射線検出器の投影画像の読み出しタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図22】CT装置による撮影手順を示すフローチャートである。
【
図23】冷陰極をもつ放射線管から発せられる放射線と熱陰極をもつ放射線管から発せられる放射線の照射プロファイルを示すグラフである。
【
図24】放射線検出器が基準位置にある場合の有効視野を示す図である。
【
図25】放射線検出器がオフセット位置にある場合の有効視野を示す図である。
【
図26】2つの撮影ユニットを備える第2実施形態を示す図である。
【
図28】線源昇降機構および検出器昇降機構を示す図である。
【
図29】一方の撮影ユニットが上端位置、他方の撮影ユニットが下端位置にある場合の放射線束を示す図である。
【
図30】2つの撮影ユニットがともに上端位置にある場合の放射線束を示す図である。
【
図31】
図30で示した態様の場合の投影画像の取得位置を示す図である。
【
図32】第2実施形態における放射線源の放射線の照射タイミング、および放射線検出器の投影画像の読み出しタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図33】第2実施形態における画像処理部の処理の概要を示す図である。
【
図34】放射線源を120°隔たった位置に配した例を示す図である。
【
図35】放射線源を125°隔たった位置に配した例を示す図である。
【
図36】放射線の検出部が複数並べられた構成の放射線検出器を示す図である。
【
図37】投影画像に対して再構成処理を施すことで断層画像を生成するに際して、圧縮センシングの手法を用いる態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一例として
図1に示すように、CT装置10は、被写体Sの断層画像を得るための装置であり、装置本体11と制御装置12とで構成される。装置本体11は、例えば医療施設の撮影室内に設置される。制御装置12は、例えば撮影室の隣室の制御室内に設置される。制御装置12は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ、ノート型のパーソナルコンピュータ、あるいはタブレット端末である。制御装置12は、診療放射線技師といったCT装置10のオペレータにより操作される。
【0023】
一例として
図2にも示すように、装置本体11は、ステージ13と、3本の支柱14A、14B、および14Cと、天板15とを備える。ステージ13は例えば八角形状をした平板である(
図6参照)。ステージ13の裏面の四隅には、搬送用のキャスター16が取り付けられている。キャスター16には回転ロック機構(図示省略)が備えられており、装置本体11を設置箇所に設置した後に、回転ロック機構を働かせてキャスター16の回転をロックすることができる。あるいは、キャスター16はステージ13から取り外し可能であり、装置本体11を設置箇所に設置した後にキャスター16を外すことができる。
【0024】
支柱14A~14Cは外形が矩形板状をしており、ステージ13の表面の四隅に立設されている。支柱14Aおよび14Cは、装置本体11の正面側の左右(被写体Sの前の左右)に配されている。支柱14Bは、装置本体11の背面側の中心(被写体Sの後ろ)に配されている。天板15は、支柱14A~14Cの上端部に取り付けられている。天板15は、例えば外形がステージ13に倣う八角形状をした平板である(
図6参照)。天板15は、中心部が円形にくり抜かれ、かつ支柱14Aおよび14Cの間の装置本体11の正面側の部分が切り欠かれたC字状をしている。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、支柱14A~14Cをまとめて支柱14と表記する。
【0025】
支柱14Aには接続部材17Aが接続され、支柱14Bには接続部材17Bが接続され、支柱14Cには接続部材17Cが接続されている。接続部材17A~17Cにはフレーム18が接続されている。つまり、支柱14A~14Cとフレーム18とは、接続部材17A~17Cを介して相互に接続されている。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、接続部材17A~17Cをまとめて接続部材17と表記する。
【0026】
フレーム18は円環状をしている。この円環状のフレーム18の中心C(
図6参照)の位置に、被写体Sがポジショニングされる。
図1および
図2においては、頭上に両手を上げた立位姿勢の被写体Sがポジショニングされた様子を示している。
【0027】
支柱14には、接続部材17が嵌合するガイドレール(図示省略)が設けられている。接続部材17、ひいてはフレーム18は、ガイドレールに沿って鉛直方向に昇降可能である。すなわち、支柱14は、フレーム18を鉛直方向に昇降可能に保持する。また、フレーム18は、その中心Cを鉛直方向に貫く軸を回転軸RTA(
図3参照)として、被写体Sの体軸周りを回転可能である。すなわち、支柱14A~14Cは、被写体Sの体軸周りを回転可能にフレーム18を保持する。以下、中心Cを回転中心Cと表記する場合がある。符号RADで示す矢印は、フレーム18の回転軸方向を示す。回転軸方向RADは鉛直方向と平行である。ここで体軸とは、被写体Sの頭頂部から尾部(肛門)を貫く軸である。被写体Sが立位姿勢または座位姿勢(
図4参照)の場合は、体軸は鉛直方向および回転軸方向RADと平行である。「平行」とは、完全な平行の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの平行を指す。なお、支柱14が伸縮することで、フレーム18の高さ位置を変更可能としてもよい。
【0028】
図3にも示すように、フレーム18には、被写体Sに向けてX線、γ線等の放射線R(
図7参照)を照射する放射線源20と、被写体Sを透過した放射線Rを検出する放射線検出器21が取り付けられている。放射線源20は箱状をしており、放射線検出器21は矩形板状をしている。
【0029】
支柱14Aにはねじ軸22Aが設けられ、支柱14Bにはねじ軸22Bが設けられ、支柱14Cにはねじ軸22Cが設けられている。ねじ軸22A~22Cは、ステージ13から天板15までに達する高さを有する。ねじ軸22A~22Cが回転することにより、接続部材17A~17C、ひいてはフレーム18が回転軸方向RADに昇降する。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、ねじ軸22A~22Cをまとめてねじ軸22と表記する。
【0030】
支柱14Aには、可動アーム24を介してタッチパネルディスプレイ25が取り付けられている。タッチパネルディスプレイ25はオペレータにより操作される。また、タッチパネルディスプレイ25はオペレータに各種情報を表示する。
【0031】
図1および
図2においては、頭上に両手を上げた立位姿勢の被写体Sがフレーム18内にポジショニングされた例を示したが、これに限らない。一例として
図4に示すように、CT装置10は、車椅子32に乗った座位姿勢の被写体Sをフレーム18内にポジショニングして撮影することも可能である。なお、立位姿勢の被写体S、および車椅子32に乗った座位姿勢の被写体Sのいずれとも、支柱14Aおよび14Cの側に正面が向き、支柱14Bの側に背面が向くようにポジショニングされる。
【0032】
一例として
図5に示すように、接続部材17、ひいてはフレーム18を回転軸方向RADに昇降させるフレーム昇降機構35は、前述のねじ軸22、ねじ軸22に螺合するボール入りのナット36、およびねじ軸22を回転させるフレーム昇降用モータ37等で構成されるボールねじ機構である。フレーム昇降用モータ37は、ステージ13の裏面に取り付けられている。フレーム18の高さ位置は、フレーム昇降用モータ37の回転向きおよび回転数から割り出される。
【0033】
接続部材17は、フレーム18に接続する第1接続部38と、支柱14に接続する第2接続部39とを有する。第1接続部38はフレーム18側に、第2接続部39は支柱14側にそれぞれ突出しており、接続部材17は全体としてZ字状をしている。第1接続部38にはベアリング40が内蔵されている。ベアリング40は、フレーム18の全周にわたって形成されたガイド溝41(
図1等も参照)に嵌め込まれている。ベアリング40は、フレーム18の回転に伴って転動する。第2接続部39にはナット36が内蔵されている。
【0034】
一例として
図6に示すように、フレーム18、ひいては放射線源20および放射線検出器21を被写体Sの体軸周りに回転させる回転機構45は、フレーム18の全周に掛け回された回転ベルト46、回転用モータ47、およびポテンショメータ48等で構成される。回転用モータ47は接続部材17Bに内蔵されており、フレーム18から引き出された回転ベルト46の一部にプーリ49を介して接続されている。この回転用モータ47の駆動により、フレーム18、ひいては放射線源20および放射線検出器21は時計回り(右回り)方向CWおよび反時計回り(左回り)方向CCWに回転する。放射線源20および放射線検出器21の回転速度は、例えば36°/sec(秒)である。この場合、放射線源20および放射線検出器21が1回転(360°回転)するのに要する時間は10secである。時計回り方向CWおよび反時計回り方向CCWは、本開示の技術に係る「回転方向」の一例である。
【0035】
ポテンショメータ48は接続部材17Cに内蔵されており、フレーム18から引き出された回転ベルト46の一部にプーリ50を介して接続されている。ポテンショメータ48は、フレーム18の回転位置によって抵抗値が変化する可変抵抗を有し、フレーム18の回転位置に応じた電圧信号を出力する。このポテンショメータ48からの電圧信号により、フレーム18の回転位置が割り出される。なお、
図6においては、煩雑を避けるため放射線源20および放射線検出器21の図示を省略している。
【0036】
一例として
図7に示すように、放射線源20は放射線管55を内蔵している。放射線管55は放射線Rを発する。なお、図示は省略したが、放射線源20は、放射線Rの照射野を示す例えば橙色の可視光を発する照射野ランプも内蔵している。
【0037】
放射線源20は照射野限定器56を有する。照射野限定器56はコリメータとも呼ばれ、放射線検出器21への放射線Rの照射野を規定する。照射野限定器56には、放射線管55からの放射線Rが入射する入射開口と、放射線Rが出射する出射開口とが形成されている。出射開口の近傍には、例えば4枚の遮蔽板が設けられている。遮蔽板は、放射線Rを遮蔽する材料、例えば鉛等で形成されている。遮蔽板は、四角形の各辺上に配置、換言すれば井桁状(checkered pattern)に組まれており、放射線Rを透過させる四角形の照射開口を形成する。照射野限定器56は、各遮蔽板の位置を変更することで照射開口の大きさを変化させ、これにより放射線検出器21への放射線Rの照射野を変更する。この照射野限定器56の働きによって、四角錐状の放射線Rが放射線源20から照射される。回転軸方向RADから見た場合の放射線Rの放射角度θは、例えば10°~30°である。放射角度θはコーン角とも呼ばれる。
【0038】
放射線検出器21は、例えば、放射線Rを可視光に変換するシンチレータ、可視光に応じた電荷を蓄積することで放射線Rを検出する複数の画素57が2次元マトリクス状に配列された検出面58を有するTFT(Thin Film Transistor)基板、電荷に応じた電圧信号を投影画像として出力する信号処理回路、およびこれらを内蔵する筐体等で構成される。符号WAは、検出面58の回転軸方向RADにおける幅を示す。また、符号WBは、検出面58の回転軸方向RADと直交する方向における幅を示す。幅WAおよびWBはともに300mm以上である。例えば幅WAおよびWBは430mm(17インチ)である。放射線Rの焦点F(放射線管55において放射線Rが発せられる点、
図8参照)から検出面58までの距離であるSID(Source To Image Distance)は、例えば1200mmである。幅WAは、本開示の技術に係る「検出面の幅」の一例である。なお、放射線検出器21は、放射線Rから変換された可視光ではなく、放射線Rを直接検出するタイプであってもよい。
【0039】
一例として
図8に示すように、放射線管55は、陰極60と陽極61とを有している。陰極60は、電子を放出する。陽極61は、電子が衝突することで放射線Rを発する。陰極60と陽極61とは、ほぼ円筒形状の真空のガラス管62に収容されている。陰極60は冷陰極である。より詳しくは、陰極60は、電界放出現象を利用して、陽極61に向けて電子線EBを放出する電子放出源を有する電界放出型である。陽極61は、回転機構により回転する回転陽極とは異なり、回転せずに位置が固定された固定陽極である。
【0040】
陰極60と陽極61との間には、電圧発生器63からの管電圧が印加される。管電圧の印加により、陰極60から陽極61に向けて電子線EBが放出される。そして、電子線EBが衝突した陽極61の点である焦点Fから、放射線Rが発せられる。
【0041】
図示は省略したが、放射線管55はハウジングに収容されている。ハウジングには、放射線Rを透過する放射線透過窓が設けられている。陽極61から発せられた放射線Rは、放射線透過窓を通じてハウジング外に出射される。ハウジング内は絶縁油で満たされている。
【0042】
一例として
図9に示すように、陰極60は、半導体基板70上にエミッタ電極71とゲート電極72とが設けられた構造である。半導体基板70は、例えば結晶化シリコンである。エミッタ電極71は、例えばコーン形状のカーボンナノチューブあるいはタングステンナノチューブである。エミッタ電極71は、ゲート電極72と接続されている。エミッタ電極71は、電子線EBの放出エリアとして機能する。すなわち、エミッタ電極71は、本開示の技術に係る「電子放出源」の一例である。
【0043】
エミッタ電極71の周囲には、集束電極73が設けられている。この集束電極73に集束電圧を印加することで、エミッタ電極71が放出する電子線EBが陽極61に向けて加速され、かつ、電子線EBが集束される。
【0044】
一例として
図10に示すように、放射線管55は第1放射線R1および第2放射線R2の2種の放射線Rを発する。第1放射線R1は、実線で示す第1エネルギー分布ED1を有する。対して第2放射線R2は、破線で示す第2エネルギー分布ED2を有する。第1放射線R1は、第2放射線R2よりも高い管電圧、例えば140kVの管電圧が設定されて発生される。第2放射線R2は、第1放射線R1よりも低い管電圧、例えば80kVの管電圧が設定されて発生される。こうした管電圧の高低差により、第2エネルギー分布ED2における第2放射線R2の強度は、第1エネルギー分布ED1における第1放射線R1の強度よりも低い。端的に言えば、第2放射線R2は、第1放射線R1よりもエネルギーが低い。なお、第1放射線R1の管電圧は、例示の140kVに限らない。同様に、第2放射線R2の管電圧も、例示の80kVに限らない。以下の説明では、特に区別する必要がない場合、第1エネルギー分布ED1および第2エネルギー分布ED2をまとめてエネルギー分布EDと表記する。
【0045】
図11は、放射線管55から第1放射線R1を発生させ、被写体Sを透過した第1放射線R1に基づく第1投影画像751を放射線検出器21から出力させる様子の一例を示している。対して
図12は、放射線管55から第2放射線R2を発生させ、被写体Sを透過した第2放射線R2に基づく第2投影画像752を放射線検出器21から出力させる様子の一例を示している。このように、CT装置10は、
図10で示したようにエネルギー分布EDの異なる第1放射線R1および第2放射線R2を放射線源20から連続的に照射させ、第1放射線R1に基づく第1投影画像751および第2放射線R2に基づく第2投影画像752を放射線検出器21から出力させるES撮影を行うことが可能である。以下の説明では、特に区別する必要がない場合、第1投影画像751および第2投影画像752をまとめて投影画像75と表記する。
【0046】
第1投影画像751および第2投影画像752には、肋骨、背骨といった骨部組織と、肺、胃といった軟部組織との両方が映っている。ただし、これら骨部組織と軟部組織とは、吸収しやすい放射線Rのエネルギーが異なる。このため、第1投影画像751に映る骨部組織と第2投影画像752に映る骨部組織は、画素値が異なる。また、第1投影画像751に映る軟部組織と第2投影画像752に映る軟部組織も、画素値が異なる。
【0047】
より詳しくは一例として
図13に示すように、比較的高いエネルギーの放射線Rの骨部組織の吸収係数と軟部組織の吸収係数との差は小さい。対して比較的低いエネルギーの放射線Rの骨部組織の吸収係数と軟部組織の吸収係数との差は大きい。比較的高いエネルギーの放射線Rとは、ここでは第1放射線R1であり、比較的低いエネルギーの放射線Rとは、ここでは第2放射線R2である。このため、第1投影画像751においては、骨部組織と軟部組織の画素値の比は小さくなり、第2投影画像752においては、逆に骨部組織と軟部組織の画素値の比は大きくなる。
【0048】
図14および
図15は、
図13で示した骨部組織と軟部組織の放射線Rの吸収係数の違いを利用して、第1投影画像751および第2投影画像752に基づいて、被写体S内部の特定の生体組織が強調されたES画像を生成する様子を示している。
図14は、骨部組織が強調された骨部画像76BOを生成する様子を示している。一方、
図15は、軟部組織が強調された軟部画像76SPを生成する様子を示している。以下の説明では、特に区別する必要がない場合、骨部画像76BOおよび軟部画像76SPをまとめてES画像76と表記する。
【0049】
図14において、骨部画像76BOは、次式(1)に示す演算を行うことで生成される。
BESI=RI1×α1-RI2×β1+B1・・・(1)
なお、BESIは骨部画像76BOの画素値、RI1は第1投影画像751の画素値、RI2は第2投影画像752の画素値、α1、β1は重み付け係数、B1はバイアス値である。
【0050】
重み付け係数α1、β1は、第1投影画像751および第2投影画像752の軟部組織の画素値が一致する値に調整されている。このため、第1投影画像751の画素値RI1に重み付け係数α1を乗算し、第2投影画像752の画素値RI2に重み付け係数β1を乗算して、両者の差分をとると、軟部組織が除去されて骨部組織のみが描出された骨部画像76BOを生成することができる。
【0051】
一方、
図15において、軟部画像76SPは、次式(2)に示す演算を行うことで生成される。
SESI=RI1×α2-RI2×β2+B2・・・(2)
なお、SESIは軟部画像76SPの画素値、α2、β2は重み付け係数、B2はバイアス値である。
【0052】
重み付け係数α1、β1と同様に、重み付け係数α2、β2は、第1投影画像751および第2投影画像752の骨部組織の画素値が一致する値に調整されている。このため、第1投影画像751の画素値RI1に重み付け係数α2を乗算し、第2投影画像752の画素値RI2に重み付け係数β2を乗算して、両者の差分をとると、骨部組織が除去されて軟部組織のみが描出された軟部画像76SPを生成することができる。なお、以下の説明では、
図14および
図15で示した処理をES処理と表記する。
【0053】
一例として
図16に示すように、放射線Rの放射線束の中心軸RCAは、放射線検出器21の検出面58の中心点CSと垂直に交わる。以下の説明では、放射線源20の配された位置を0°とし、反時計回り方向CCWの90°毎の位置を90°、180°、および270°とする。
【0054】
放射線源20は、アタッチメント80によってフレーム18に取り付けられている。同様に、放射線検出器21は、アタッチメント81によってフレーム18に取り付けられている。これらのアタッチメント80および81は、ボルト82でフレーム18に固定されている。回転軸方向RADから見た場合、放射線源20はフレーム18の外側に配され、放射線検出器21はフレーム18の内側に配されている。
【0055】
フレーム18は、半円環状の2つの部材を溶接等により接合してなる。アタッチメント80は、フレーム18の対向する2つの接合部83のうちの1つを覆うように取り付けられている。こうして接合部83にアタッチメント80を取り付けることで、機械的に弱い部分である接合部83をアタッチメント80で補強することができる。
【0056】
一例として
図17に示すように、回転軸方向RADから見た場合、放射線検出器21は、放射線源20と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されている。ここで基準位置とは、照射野限定器56の出射開口を最大に開放したときの放射線Rの放射線束の中心軸RCAと、放射線検出器21の検出面58の中心点CSとが垂直に交わる位置である。オフセット位置の予め設定された角度は、本例においては放射角度θの半分(θ/2)である。
【0057】
一例として
図18に示すように、制御装置12を構成するコンピュータは、ストレージ95、メモリ96、CPU(Central Processing Unit)97、ディスプレイ98、および入力デバイス99等を備えている。
【0058】
ストレージ95は、制御装置12を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブル、ネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブである。もしくはストレージ95は、ハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージ95には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。なお、ハードディスクドライブに代えてソリッドステートドライブを用いてもよい。
【0059】
メモリ96は、CPU97が処理を実行するためのワークメモリである。CPU97は、ストレージ95に記憶されたプログラムをメモリ96へロードして、プログラムにしたがった処理を実行する。これにより、CPU97はコンピュータの各部を統括的に制御する。CPU97は、本開示の技術に係る「プロセッサ」の一例である。なお、メモリ96はCPU97に内蔵されていてもよい。
【0060】
ディスプレイ98は各種画面を表示する。各種画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。制御装置12を構成するコンピュータは、各種画面を通じて、入力デバイス99からの操作指示の入力を受け付ける。入力デバイス99は、キーボード、マウス、タッチパネル、および音声入力用のマイク等である。
【0061】
ストレージ95には作動プログラム105が記憶されている。作動プログラム105は、コンピュータを制御装置12として機能させるためのアプリケーションプログラムである。ストレージ95には、作動プログラム105の他に、照射条件テーブル106およびオーダー別照射条件情報107等が記憶されている。
【0062】
作動プログラム105が起動されると、制御装置12のCPU97は、メモリ96等と協働して、受付部110、リードライト(以下、RW(Read Write)と略す)制御部111、撮影制御部112、画像処理部113、および表示制御部114として機能する。
【0063】
受付部110は、装置本体11のタッチパネルディスプレイ25、および入力デバイス99を介してオペレータにより入力される様々な操作指示を受け付ける。例えば受付部110は撮影メニュー116を受け付ける。受付部110は、撮影メニュー116をRW制御部111に出力する。
【0064】
RW制御部111は、受付部110から撮影メニュー116を受け取る。RW制御部111は、受け取った撮影メニュー116に対応する放射線Rの照射条件117を、照射条件テーブル106から読み出す。RW制御部111は、照射条件テーブル106から読み出した照射条件117を、オーダー別照射条件情報107に書き込む。
【0065】
撮影制御部112は、放射線源20(放射線管55および照射野限定器56)、フレーム昇降機構35(フレーム昇降用モータ37)、回転機構45(回転用モータ47およびポテンショメータ48)、並びに放射線検出器21の動作を制御する。撮影制御部112は、オーダー別照射条件情報107から照射条件117を読み出す。撮影制御部112は、照射条件117にしたがって照射野限定器56を駆動させ、照射野を調整する。制御装置12には、図示しない照射スイッチを通じて、オペレータにより撮影指示が入力される。撮影指示が入力された場合、撮影制御部112は、照射条件117にしたがって放射線管55を駆動させ、放射線管55から放射線Rを発生させる。撮影制御部112は、放射線Rの照射により放射線検出器21で検出された投影画像75を、放射線検出器21から画像処理部113に出力させる。
【0066】
画像処理部113は、放射線検出器21から投影画像75を受け取る。画像処理部113は、投影画像75に対して様々な画像処理を施し、断層画像120(
図21参照)を生成する。画像処理部113は、断層画像120を表示制御部114に出力する。
【0067】
表示制御部114は、タッチパネルディスプレイ25およびディスプレイ98への各種情報の表示を制御する。表示制御部114は、画像処理部113から断層画像120を受け取る。表示制御部114は、断層画像120をタッチパネルディスプレイ25およびディスプレイ98に表示する。
【0068】
撮影メニュー116は、例えば、撮影オーダーID(Identification Data)および撮影手技を含む。撮影オーダーIDは、断層画像120を用いて診断を行う医師が発行した撮影オーダーの識別情報である。撮影手技は、立位または座位といった被写体Sの姿勢と、頭部、頸部、全脊椎といった撮影部位と、成人男性、成人女性、小児等の被写体Sの属性とで構成される。
【0069】
撮影オーダーは、図示省略した放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)から制御装置12に送信される。制御装置12は、表示制御部114の制御の下、撮影オーダーのリストをディスプレイ98に表示する。オペレータは、撮影オーダーのリストを閲覧して内容を確認する。続いて制御装置12は、撮影オーダーに対応する撮影メニューを設定可能な形態でディスプレイ98に表示する。オペレータは、入力デバイス99を操作することで、撮影オーダーに応じた撮影メニューを選択して入力する。
【0070】
照射条件テーブル106には、撮影手技毎に照射条件117が登録されている。照射条件117には、放射線管55に印加する管電圧および管電流と、放射線Rの照射時間とが含まれる。管電圧は、第1放射線R1および第2放射線R2の2種の放射線Rを発生させるための2種の管電圧である。また、照射条件117には照射野のサイズも含まれる。照射条件117は、オペレータの手で微調整することが可能である。なお、管電流と照射時間の代わりに、管電流照射時間積、いわゆるmAs値を照射条件117としてもよい。
【0071】
オーダー別照射条件情報107には、撮影オーダーID毎に照射条件117が登録されている。撮影制御部112は、次の撮影の撮影オーダーIDに対応する照射条件117をオーダー別照射条件情報107から読み出し、読み出した照射条件117にしたがって各部の動作を制御する。
【0072】
一例として
図19に示すように、放射線源20は、0°を回転開始位置および回転終了位置として、2.4°、4.8°、7.2°、・・・、117.6°、120°、122.4°、・・・、352.8°、355.2°、357.6°と、角度間隔2.4°置きに放射線Rを照射する。放射線検出器21も、角度間隔2.4°置きに投影画像75を出力する。2.4°は、本開示の技術に係る「予め設定された角度」の一例である。なお、回転終了位置は、厳密には0°から反時計回り方向CCWにθの角度をなす位置である。
【0073】
図20は、放射線源20の放射線Rの照射タイミング、および放射線検出器21の投影画像75の読み出しタイミングを示すタイミングチャートの一例である。撮影制御部112は、撮影に先立って、放射線検出器21に読み出し動作を行わせる。この読み出し動作は、待機中に画素57に蓄積された暗電荷等の不要電荷を掃き出す動作であり、リセット動作とも呼ばれる。
【0074】
放射線検出器21に不要電荷を掃き出す読み出し動作を行わせた後、撮影制御部112は、放射線源20から第1放射線R1を照射させる。また、撮影制御部112は、放射線検出器21に蓄積動作を行わせる。蓄積動作は、第1放射線R1に基づく電荷を画素57に蓄積させる動作である。続いて撮影制御部112は、放射線検出器21に読み出し動作を行わせ、放射線検出器21から第1放射線R1に基づく第1投影画像751を出力させる。
【0075】
次いで、撮影制御部112は、放射線源20から今度は第2放射線R2を照射させる。また、撮影制御部112は、第2放射線R2に基づく電荷を画素57に蓄積させる蓄積動作を放射線検出器21に行わせる。続いて撮影制御部112は、放射線検出器21に読み出し動作を行わせ、放射線検出器21から第2放射線R2に基づく第2投影画像752を出力させる。第1放射線R1および第2放射線R2の照射時間は、例えば5msec~15msecである。
【0076】
このように、撮影制御部112は、放射線源20から第1放射線R1および第2放射線R2を交互に連続的に照射させる。また、撮影制御部112は、放射線検出器21から第1投影画像751および第2投影画像752を出力させる。ここで、放射線源20および放射線検出器21は回転しているため、第1放射線R1の照射時と第2放射線R2の照射時とでは、放射線源20および放射線検出器21の位置に多少のずれがあるが、第1放射線R1の照射開始時の放射線源20の位置(0°、2.4°、4.8°、・・・)を、第1投影画像751および第2投影画像752の取得位置とする。なお、第2放射線R2を先に照射してもよい。また、0°、2.4°、4.8°、・・・といった予め設定された角度毎に一旦フレーム18の回転を停止させたうえで、放射線源20から第1放射線R1および第2放射線R2を交互に連続的に照射させてもよい。
【0077】
ここで、本開示の技術に係る「第1放射線および第2放射線の連続的な照射」とは、
図20で示したように、第1放射線R1および第2放射線R2を断続的に交互に照射する、いわゆるパルス照射のことを指す。従来のCT装置のように、撮影開始から終了まで継続的に放射線Rを照射する、いわゆるコンティニュアス照射とは異なる。
【0078】
画像処理部113は、同じ取得位置の第1投影画像751および第2投影画像752の組に対して
図14または
図15で示したES処理を施し、ES画像76を生成する。これにより、取得位置毎のES画像76が生成される。
【0079】
一例として
図21に示すように、画像処理部113は、取得位置毎のES画像76に対して再構成処理を施し、断層画像120を生成する。
【0080】
次に、CT装置10による撮影手順について、一例として
図22に示すフローチャートを参照して説明する。まず、オペレータにより装置本体11内に被写体Sが誘導される(ステップST100)。そして、撮影制御部112の制御の下でフレーム昇降機構35が動作され、撮影メニュー116に応じた高さ位置にフレーム18が移動される(ステップST110)。その後、オペレータにより被写体Sがポジショニングされる(ステップST120)。この際、必要に応じて放射線源20に内蔵された照射野ランプが点灯され、オペレータによってフレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切か否かが判断される。フレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切でなかった場合は、オペレータによってフレーム18の高さ位置が調整されたり、被写体Sのポジショニングがし直されたりする。フレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切であった場合、オペレータは照射スイッチを通じて撮影指示を入力する。撮影指示は受付部110で受け付けられる(ステップST130でYES)。これにより放射線源20および放射線検出器21による撮影が行われる(ステップST140)。
【0081】
撮影においては、撮影制御部112の制御の下で回転機構45が動作され、フレーム18が例えば反時計回り方向CCWに360°回転される。その間に、撮影制御部112の制御の下で、放射線源20から第1放射線R1および第2放射線R2が交互に連続的に照射され、その都度放射線検出器21から第1投影画像751および第2投影画像752が出力される。
【0082】
撮影の終了後、画像処理部113において、得られた第1投影画像751および第2投影画像752からES画像76が生成され(ステップST150)、さらにES画像76から断層画像120が生成される(ステップST160)。そして、表示制御部114の制御の下で、断層画像120がディスプレイ98等に表示され、オペレータの閲覧に供される(ステップST160)。
【0083】
以上説明したように、CT装置10は、放射線源20と、放射線検出器21と、回転機構45と、CPU97とを備える。放射線源20は、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体Sに向けて四角錐状の放射線Rを発する。放射線源20は、冷陰極である陰極60をもつ放射線管55を有する。陰極60は、電界放出現象を利用して電子線EBを放出する電子放出源としてのエミッタ電極71を有する電界放出型である。放射線検出器21は、被写体Sを透過した放射線Rを検出する複数の画素57が2次元状に配列され、被写体Sの投影画像75を出力する。回転機構45は、放射線源20および放射線検出器21を被写体Sの体軸周りに回転させる。
【0084】
CPU97の撮影制御部112は、回転機構45によって放射線源20および放射線検出器21が予め設定された角度回転する毎に、第1エネルギー分布ED1を有する第1放射線R1、および第1エネルギー分布ED1とは異なる第2エネルギー分布ED2を有する第2放射線R2を連続的に放射線源20から照射させる。撮影制御部112は、第1放射線R1および第2放射線R2の連続的な照射によって得られる第1投影画像751および第2投影画像752であり、第1放射線R1に基づく第1投影画像751および第2放射線R2に基づく第2投影画像752を放射線検出器21から出力させる。画像処理部113は、第1投影画像751および第2投影画像752に基づいて断層画像120を生成する。
【0085】
図23は、本開示の技術のような冷陰極をもつ放射線管55から発せられる放射線R(実線で示す)と、比較例としての熱電子を放出するフィラメント構造の陰極といった熱陰極をもつ放射線管から発せられる放射線R(二点鎖線で示す)の照射プロファイルの一例を示すグラフである。冷陰極をもつ放射線管55から発せられる放射線Rは、所望の放射線強度となるまでの立ち上がり時間RTCが、熱陰極をもつ放射線管から発せられる放射線Rの立ち上がり時間RTHと比べて極めて短い。具体的には、立ち上がり時間RTHは5msec程度掛かるのに対し、立ち上がり時間RTCは大体4~5μsecと短い。また、冷陰極をもつ放射線管55から発せられる放射線Rは、所望の放射線強度から消灯となるまでの立ち下がり時間FTCが、熱陰極をもつ放射線管から発せられる放射線Rの立ち下がり時間FTHと比べて極めて短い。具体的には、立ち下がり時間FTHは5msec~90msec程度掛かるのに対し、立ち下がり時間FTCは大体4~5μsecと短い。
【0086】
このため、本開示の技術は、冷陰極をもつ放射線管55を有する放射線源20を用いたことで、熱陰極をもつ放射線管を有する放射線源を用いた場合と比べて、第1放射線R1および第2放射線R2の照射の切り替えを高速化することが可能となる。したがって、第1投影画像751および第2投影画像752の同時性を確保することができる。また、予め設定された回転速度において第1投影画像751および第2投影画像752をより多く得ることができ、結果として断層画像120の画質を高めることができる。さらに、臥位姿勢の被写体Sと比べて不安定で体動が発生しやすい立位姿勢または座位姿勢の被写体Sを撮影するにあたり、体動による断層画像120の画質劣化のおそれを軽減することができる。
【0087】
立ち上がり時間RTCおよび立ち下がり時間FTCが短いので、放射線Rのトータルの照射時間も短くすることができる。このため、回転によるぶれがより抑制された投影画像75を得ることができる。結果として断層画像120の画質を高めることができる。
【0088】
冷陰極は熱陰極よりも遥かに発熱量が小さい。このため放熱構造が不要で、放射線管55の小型化が可能である。具体的には、放射線管55の直径を、例えば約50mm以下とすることができる。したがって、放射線源20の小型化に寄与することができる。
【0089】
図7で示したように、放射線源20は四角錐状の放射線Rを照射し、放射線検出器21は、放射線Rを検出する複数の画素57が2次元状に配列された構成である。このため、放射線源から扇状の放射線Rを照射し、画素が1次元状に配列された放射線検出器で放射線Rを検出する従来のCT装置と比べて、撮影を短時間で済ませることができる。なお、四角錐状に代えて、円錐状の放射線Rを照射してもよい。
【0090】
図1、
図2、および
図4で示したように、被写体Sは、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされる。このため、重力が掛かった自然な状態の肺等の軟組織を観察したい、あるいは重力が掛かって負荷が加えられた状態の股関節等の関節を観察したい、という要望に応えることができる。
【0091】
ここで、
図24に示すように、放射線検出器21が基準位置に配されていた場合は、360°の回転でスキャンする領域が変わらないため、有効視野sFOV(Scan Field Of View)は、ハッチングで示すように比較的小さい領域に留まる。対して
図25に示すように、放射線検出器21がオフセット位置に配されていた場合は、360°の回転でスキャンする領域が変わるため、有効視野sFOVは、ハッチングで示すように比較的大きい領域となる。したがって、
図17で示したように、回転軸方向RADから見た場合、放射線検出器21を、放射線源20と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配することで、放射線検出器21を基準位置に配する場合と比べて、有効視野sFOVを広くすることができる。
【0092】
放射線源20および放射線検出器21はフレーム18に保持されており、フレーム18内に被写体Sがポジショニングされる。
図16で示したように、回転軸方向RADから見た場合、放射線源20はフレーム18の外側に配され、放射線検出器21はフレーム18の内側に配されている。有効視野sFOVは、放射線源20が被写体Sから離れる程、かつ、放射線検出器21が被写体Sに近付く程、大きくなる。このため、被写体Sがポジショニングされるフレーム18の外側に放射線源20を配し、内側に放射線検出器21を配せば、有効視野sFOVを広くすることができる。
【0093】
図7で示したように、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅WAおよびWBは300mm以上である。このため、比較的広い有効視野sFOVを確保することができる。
【0094】
[第2実施形態]
一例として
図26および
図27に示すように、第2実施形態においては、撮影ユニット125Aおよび撮影ユニット125Bの2つの撮影ユニットを設ける。撮影ユニット125Aは放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの組で構成され、撮影ユニット125Bは放射線源20Bおよび放射線検出器21Bの組で構成される。放射線源20Aは、上記第1実施形態の放射線源20と同じく、0°の位置に配されている。放射線源20Bは、放射線源20Aと角度φ隔たった位置に配されている。放射線検出器21Aおよび21Bは、この放射線源20Aおよび20Bの配置位置にしたがった位置に配されている。このため、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bとは、回転方向の位相が異なっている。なお、φは、本例においては90°である。また、放射線検出器21Aおよび21Bのいずれも、
図17で示したオフセット位置に配されている。
【0095】
放射線源20Aから照射される放射線RAの放射線束の中心軸RCAAは、放射線検出器21Aの検出面58の中心点CSAと垂直に交わる。また、放射線源20Bから照射される放射線RBの放射線束の中心軸RCABは、放射線検出器21Bの検出面58の中心点CSBと垂直に交わる。
【0096】
放射線源20Aは、アタッチメント80Aによってフレーム18に取り付けられている。同様に、放射線検出器21Aは、アタッチメント81Aによってフレーム18に取り付けられている。また、放射線源20Bは、アタッチメント80Bによってフレーム18に取り付けられ、放射線検出器21Bは、アタッチメント81Bによってフレーム18に取り付けられている。このため撮影ユニット125Aおよび撮影ユニット125Bは、その位置関係を維持したまま、回転機構45により一緒に同じ回転方向を回転される。
【0097】
一例として
図28に示すように、放射線源20Bは、線源昇降機構130により回転軸方向RADに昇降される。線源昇降機構130は、ガイドレール131、および線源昇降用モータ132等で構成される。ガイドレール131は、アタッチメント80Bからフレーム18の外側に向かって延びた第1部分131Aと、第1部分131Aから直角に折れ曲がり、回転軸方向RADに沿って下に延びた第2部分131Bとで構成される。第2部分131Bは、一般的な成人男性の半身(腰部から上の上半身、および腰部から下の下半身)をカバー可能な長さを有する。ここで、「一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さ」とは、人種や個人差はあるものの、200cmを身長の最大値と考えた場合、例えば、100cm程度度の長さである。このように、第2部分131Bの長さを「一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さ」に設定することにより、半身の全体を漏らさず撮影、診断することができる。撮影漏れによって再撮影を行う必要が生じ、撮影時間の長時間化および被写体Sの被曝量増大を招くおそれを低減することができる。被写体Sの半身ではなく全身を撮影する場合を考慮して、第2部分131Bの長さを、上記の100cm程度を超えた長さに設定してもよい。なお、
図28においては、煩雑を避けるため放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの図示を省略している。
【0098】
放射線源20Bは第2部分131Bに取り付けられている。放射線源20Bの上昇は、第1部分131Aにより規制される。また、第2部分131Bの下端にはストッパー133が設けられており、このストッパー133により放射線源20Bの下降が規制される。放射線源20Bは、第1部分131Aによって決まる上端位置と、ストッパー133によって決まる下端位置との間で昇降可能である。
【0099】
線源昇降用モータ132は、回転駆動することで、放射線源20Bを第2部分131Bに沿って移動させる。放射線源20Bの高さ位置は、線源昇降用モータ132の回転向きおよび回転数から割り出される。
【0100】
放射線検出器21Bは、検出器昇降機構140により回転軸方向RADに昇降される。検出器昇降機構140は、ガイドレール141、および検出器昇降用モータ142等で構成される。ガイドレール141は、アタッチメント81Bから真っ直ぐ回転軸方向RADに沿って下に延びている。ガイドレール141は、ガイドレール131の第2部分131Bと同じく、一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さを有する。
【0101】
ガイドレール141には昇降ボックス143が取り付けられている。昇降ボックス143には検出器昇降用モータ142が内蔵されている。昇降ボックス143には、アーム144を介して放射線検出器21Bが取り付けられている。アーム144は、昇降ボックス143の中心部分からフレーム18の内側に向かって延びた細長の棒である。
【0102】
ガイドレール141の上端および下端には、ストッパー145および146が設けられている。ストッパー145により放射線検出器21Bの上昇が規制され、ストッパー146により放射線検出器21Bの下降が規制される。放射線検出器21Bは、ストッパー145によって決まる上端位置と、ストッパー146によって決まる下端位置との間で昇降可能である。放射線検出器21Bの上端位置および下端位置は、放射線源20Bの上端位置および下端位置に対応する。
【0103】
検出器昇降用モータ142は、線源昇降用モータ132に連動して回転駆動することで、昇降ボックス143、ひいては放射線検出器21Bをガイドレール141に沿って移動させる。放射線検出器21Bの高さ位置は、検出器昇降用モータ142の回転向きおよび回転数から割り出される。
【0104】
図28において図示省略した放射線源20Aおよび放射線検出器21Aには、線源昇降機構130および検出器昇降機構140は設けられていない。したがって放射線源20Aおよび放射線検出器21Aは回転軸方向RADに昇降しない。放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの高さ位置は、上端位置に固定されている(
図29および
図30参照)。
【0105】
放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの高さ位置が上端位置に固定されている一方で、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bの高さ位置は、線源昇降機構130および検出器昇降機構140により変化する。つまり、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bの回転軸方向RADの間隔が変化する。このため、CT装置10は、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に広げて撮影したり、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に狭めて撮影したりすることが可能である。線源昇降機構130および検出器昇降機構140は、本開示の技術に係る「変位機構」の一例である。
【0106】
一例として
図29に示すように、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bが下端位置にあるとき、放射線RAの放射線束の下端RALEと放射線RBの放射線束の上端RBUEとが一致する。換言すれば、本例における上端位置と下端位置は、放射線RAの放射線束の下端RALEと放射線RBの放射線束の上端RBUEとが一致する位置である。この場合の撮影範囲CR1は、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADにおける幅WAの約1.5倍の幅の範囲である。つまり、撮影範囲CR1は幅WAを超える範囲である。なお、
図29においては、説明の便宜上、
図26で示した0°と180°のそれぞれの位置に放射線源20Aおよび20Bと放射線検出器21Aおよび21Bがあった場合の放射線RAおよびRBを示している。また、
図29においては、煩雑を避けるため、
図17で示したように放射線検出器21Aおよび21Bをオフセットさせていない。以降の
図30等も同様である。
【0107】
符号OCRで示すように、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bとは、撮影範囲が重複している。撮影制御部112は、この重複する撮影範囲(以下、重複撮影範囲と表記)OCRを確保可能な位置に撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bを配する。つまり、撮影制御部112は、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bとの回転軸方向RADの間隔を、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bとから得られる第1投影画像751Aおよび第2投影画像752Aと第1投影画像751Bおよび第2投影画像752B(ともに
図32参照)に重複撮影範囲OCRが生じる設定とする。
【0108】
一例として
図30に示すように、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bが上端位置にあるとき、放射線RAの放射線束および放射線RBの放射線束が一致する。この場合の撮影範囲CR2は、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WAと一致する範囲である。つまり、撮影範囲CR2は幅WA以内の範囲である。いずれの回転角度においても放射線RAおよび放射線RBが照射される矢印および符号HDAで示す領域は、高精細な断層画像120を得ることができる領域(以下、高精細描画領域という)である。高精細描画領域HDAの回転軸方向RADの幅は、例えば200mm~300mmである。なお、「一致」とは、完全一致の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの一致を指す。
【0109】
図29で示した態様は、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に広げた撮影の一例である。対して
図30で示した態様は、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に狭めた撮影の一例である。
【0110】
図29で示した態様の場合、放射線源20Aおよび20Bは、上記第1実施形態の
図19で示した場合と同じく、0°を回転開始位置および回転終了位置として、角度間隔2.4°置きに放射線Rを照射する。放射線検出器21Aおよび21Bも、角度間隔2.4°置きに投影画像75を出力する。一方、
図30で示した態様の場合、放射線源20Aおよび20Bは、一例として
図31に示すように、0°を回転開始位置、268.8°を回転終了位置として、2.4°、4.8°、7.2°、・・・、117.6°、120°、122.4°、・・・、264°、266.4°と、角度間隔2.4°置きに放射線Rを照射する。放射線検出器21Aおよび21Bも、角度間隔2.4°置きに投影画像75を出力する。なお、回転終了位置は、厳密には268.8°から反時計回り方向CCWにθの角度をなす位置である。
【0111】
図30で示した態様の場合、撮影ユニット125Aおよび125Bの高さ位置が同じ上端位置に揃えられる。また、
図26で示したように、放射線源20Aおよび20Bは90°の角度隔たった位置に配されている。このため、フレーム18を約270°回転させれば、360°の角度範囲をカバーしたことになる。
【0112】
図30で示した態様の場合、撮影ユニット125Aは0°~268.8°の角度範囲の撮影を担い、撮影ユニット125Bは90°~358.8°の角度範囲の撮影を担う。つまり、被写体Sの体軸周りの全周の撮影が、撮影ユニット125Aおよび125Bで分担して行われる。撮影ユニット125Aおよび125Bで重複する角度範囲、ここでは90°~268.8°の角度範囲で得られた投影画像75は、断層画像120の生成には用いられずに破棄されるものもある。なお、撮影ユニット125Aおよび125Bで重複する角度範囲で得られた投影画像75を、投影画像75の撮影タイミングの精度確認に用いてもよい。
【0113】
図32は、第2実施形態における放射線源20Aおよび20Bの放射線Rの照射タイミング、並びに放射線検出器21Aおよび21Bの投影画像75の読み出しタイミングを示すタイミングチャートの一例である。なお、
図32においては、放射線源20Aを「放射線源A」、放射線検出器21Aを「放射線検出器A」、放射線源20Bを「放射線源B」、放射線検出器21Bを「放射線検出器B」とそれぞれ表記している。
【0114】
図32に示すように、撮影制御部112は、上記第1実施形態と同様に、撮影に先立って、放射線検出器21Aおよび21Bに不要電荷を掃き出す読み出し動作を行わせる。
【0115】
放射線検出器21Aおよび21Bに不要電荷を掃き出す読み出し動作を行わせた後、撮影制御部112は、放射線源20Aおよび20Bから第1放射線R1AおよびR1Bを同時に照射させる。また、撮影制御部112は、放射線検出器21Aおよび21Bに蓄積動作を行わせる。第1放射線R1AおよびR1Bは、上記第1実施形態の第1放射線R1と同じく、第1エネルギー分布ED1を有する放射線Rである。続いて撮影制御部112は、放射線検出器21Aおよび21Bに読み出し動作を行わせ、放射線検出器21Aおよび21Bから、第1放射線R1Aに基づく第1投影画像751A、および第1放射線R1Bに基づく第1投影画像751Bを出力させる。
【0116】
次いで、撮影制御部112は、放射線源20Aおよび20Bから今度は第2放射線R2AおよびR2Bを同時に照射させる。また、撮影制御部112は、放射線検出器21Aおよび21Bに蓄積動作を行わせる。続いて撮影制御部112は、放射線検出器21Aおよび21Bに読み出し動作を行わせ、放射線検出器21Aおよび21Bから、第2放射線R2Aに基づく第2投影画像752A、および第2放射線R2Bに基づく第2投影画像752Bを出力させる。なお、「同時」とは、完全な同時の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの同時を指す。
【0117】
このように、撮影制御部112は、放射線源20Aから第1放射線R1Aおよび第2放射線R2Aを交互に連続的に照射させ、放射線源20Bから第1放射線R1Bおよび第2放射線R2Bを交互に連続的に照射させる。また、撮影制御部112は、放射線検出器21Aおよび21Bから第1投影画像751Aおよび751Bと第2投影画像752Aおよび752Bとを出力させる。
【0118】
一例として
図33に示すように、
図29で示した態様の場合、画像処理部113は、同じ取得位置の第1投影画像751Aおよび第2投影画像752Aの組に対してES処理を施し、ES画像76Aを生成する。また、画像処理部113は、同じ取得位置の第1投影画像751Bおよび第2投影画像752Bの組に対してES処理を施し、ES画像76Bを生成する。これにより、取得位置毎のES画像76Aおよび76Bが生成される。
【0119】
画像処理部113は、ES画像76Aに対して再構成処理を施すことで、断層画像120Aを生成する。また、画像処理部113は、ES画像76Bに対して再構成処理を施すことで、断層画像120Bを生成する。画像処理部113は、重複撮影範囲OCRに基づいて断層画像120Aおよび120Bを位置合わせすることで、断層画像120Aおよび120Bを合成し、最終的な診断用の断層画像120を生成する。この際、シグモイド関数を用いて、断層画像120Aおよび120Bが重複撮影範囲OCRにおいて滑らかに繋がれるように処理してもよい。
【0120】
図30で示した態様の場合、画像処理部113は、0°~268.8°の角度範囲については、同じ取得位置の第1投影画像751Aおよび第2投影画像752AからES画像76Aを生成し、90°~358.8°の角度範囲については、同じ取得位置の第1投影画像751Bおよび第2投影画像752BからES画像76Bを生成する。そして、ES画像76Aおよび76Bから、最終的な診断用の断層画像120を生成する。
【0121】
このように、第2実施形態においては、放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの組で構成される撮影ユニット125Aと、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bの組で構成される撮影ユニット125Bとを備え、撮影ユニット125Aと撮影ユニット125Bの回転方向の位相を異ならせている。このため、
図30で示した態様のように、360°未満の回転で被写体Sの体軸周りの全周の撮影を完了させることができる。したがって、放射線源20および放射線検出器21の組が1つの上記第1実施形態と比べて、撮影をより短時間で済ませることができる。
【0122】
また、第2実施形態においては、
図28で示したように、撮影ユニット125Aおよび125Bの回転軸方向RADの間隔を変化させる変位機構としての線源昇降機構130および検出器昇降機構140を備えている。このため、
図29で示した撮影ユニット125Aおよび125Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に広げた撮影と、
図30で示した間隔を相対的に狭めた撮影とを、1台のCT装置10でスムーズに行うことができる。間隔を相対的に広げた撮影と、間隔を相対的に狭めた撮影とを別の装置で行う場合と比べて、被写体Sの負担が軽減される。また、間隔を相対的に広げた撮影と、間隔を相対的に狭めた撮影とで、被写体Sのポジショニングの再現性を確保することができる。
【0123】
また、
図29で示したように、撮影制御部112は、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅WAを超える撮影範囲CR1を撮影する。この場合、撮影制御部112は、撮影ユニット125Aおよび125Bの回転軸方向RADの間隔を、撮影ユニット125Aおよび125Bで得られる第1投影画像751Aおよび第2投影画像752Aと第1投影画像751Bおよび第2投影画像752B同士に重複撮影範囲OCRが生じる設定とする。
図33で示したように、画像処理部113は、撮影ユニット125Aおよび125Bの各々から得られた投影画像75、より詳しくは第1投影画像751Aおよび第2投影画像752Aから生成されたES画像76A、並びに第1投影画像751Bおよび第2投影画像752Bから生成されたES画像76Bに対して再構成処理を施すことで、撮影ユニット125Aおよび125B毎の断層画像120Aおよび120Bを生成する。画像処理部113は、重複撮影範囲OCRに基づいて断層画像120Aおよび120Bを位置合わせすることで、断層画像120Aおよび120Bを合成する。このため、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅WAを超える撮影範囲CR1をカバーした断層画像120の撮影が可能となる。なお、重複撮影範囲OCRに基づいてES画像76Aおよび76Bを位置合わせすることで合成した後、合成後のES画像に対して再構成処理を施すことで断層画像120を生成してもよい。
【0124】
なお、放射線源20Aおよび20Bの配置位置の角度φは、例示の90°に限らない。一例として
図34に示すように、φを120°としてもよい。φを120°とすれば、
図30で示した態様におけるフレーム18の回転角度を約240°とすることができ、撮影をさらに短時間で済ませることができる。
【0125】
また、φを120°とすれば、放射線検出器21Bを、放射線RAの後方散乱線の影響を特に強く受ける領域BSAを避けた位置に配することができる。より詳しくは、角度φが90°であった場合は、破線で示すように放射線検出器21Bの端が領域BSAに入ってしまう。そうすると、本例においては放射線RAおよびRBを同時に照射しているため、放射線検出器21Bにより得られる第1投影画像751Bおよび第2投影画像752Bに、放射線RAの後方散乱線による成分がノイズとして乗ってしまう。しかし、φを120°とすれば、放射線検出器21Bにより得られる第1投影画像751Bおよび第2投影画像752Bに、放射線RAの後方散乱線による成分がノイズとして乗ってしまうおそれを低減することができる。ここでいう後方散乱線とは、放射線源20および放射線検出器21の配置に起因する散乱線である。ただし、領域BSAを避けた位置に放射線検出器21Bを配することで、被写体Sに起因する散乱線の影響も低減することができる。
【0126】
なお、放射線検出器21の前にグリッドを設ける等して、散乱線の影響を軽減してもよい。あるいは、例えば特許第6006193号に記載されるような、グリッドを実際には用いずに、グリッドを用いた場合と同等の画質改善の効果を、画像処理によって達成する技術を適用してもよい。
【0127】
角度φには上限が存在する。例えば
図35に示す角度φが125°の場合のように、放射線検出器21Bの端が撮影ユニット125Aにより得られる投影画像75に写り込んでしまってはいけない。このため、角度φは、90°以上、かつ、放射線検出器21Bの端が撮影ユニット125Aにより得られる投影画像75に写り込む限界の角度以下であることが好ましい。
【0128】
放射線検出器21のサイズを小さくすれば、角度φを大きくしても、
図35のように放射線検出器21が投影画像75に写り込むことは避けられる。ただし、放射線検出器21のサイズを小さくした分、有効視野sFOVは小さくなる。また、放射線検出器21の回転半径(回転中心Cと放射線検出器21の検出面58の中心点CSとの距離)を大きくすれば、角度φを大きくすることができる。ただし、放射線検出器21が被写体Sから離れるために、この場合も有効視野sFOVは小さくなる。このため、放射線源20の回転半径(回転中心Cと放射線源20の放射線Rの焦点との距離)と、放射線検出器21の回転半径との比を2:1(例えば放射線源20の回転半径=800mm、放射線検出器21の回転半径=400mm)程度として、比較的広い有効視野sFOVを確保することが好ましい。
【0129】
あるいは、フレーム18を大きくしてSIDを長くとれば、放射線検出器21を被写体Sから離すことなく、角度φを大きくすることができる。ただし、大型化して重くなったフレーム18に合わせて高出力の回転用モータ47を用意したり、支柱14を太くして剛性を高めたりする必要がある。また、SIDが長くなる分、放射線Rのパワーも上げる必要がある。これらのことから、やはり角度φは本例のように90°~120°程度であることが好ましい。
【0130】
撮影ユニット125Aを上端位置に固定としたが、これに限らない。撮影ユニット125Aにも線源昇降機構および検出器昇降機構を設け、撮影ユニット125Aを回転軸方向RADに昇降可能としてもよい。
【0131】
撮影ユニットの数は例示の2つに限らない。例えば3つの撮影ユニットを120°間隔で設けてもよい。撮影ユニットの数を増やせば、撮影ユニットの高さ位置を同じ位置に揃える
図30で示したような態様の場合の回転角度をさらに減じることができ、撮影をさらに短時間で済ませることができる。
【0132】
[第3実施形態]
第3実施形態においては、一例として
図36に示す放射線検出器150を用いる。放射線検出器150は、回転軸方向RADと直交する方向に沿って、放射線Rの検出部151が2つ並べられた構成である。ここで検出部151は、前述のシンチレータおよびTFT基板により構成される。
【0133】
放射線検出器150を用いる場合は、放射線源20と正対する基準位置に放射線検出器150を配置する。そして、フレーム18を180°+θ回転させ、予め設定された角度毎に放射線源20から第1放射線R1および第2放射線R2を交互に連続的に照射させ、放射線検出器150から第1投影画像751および第2投影画像752を出力させる。あるいは、より高画質な断層画像120を得るために、フレーム18を360°+θ回転させ、予め設定された角度毎に放射線源20から第1放射線R1および第2放射線R2を交互に連続的に照射させ、放射線検出器150から第1投影画像751および第2投影画像752を出力させる。フレーム18を180°+θ回転させる場合において、回転軸方向RADに沿うより広い範囲を撮影したいときには、フレーム18の高さ位置を変更する。そして、変更前の回転方向とは逆の回転方向にフレーム18を180°+θ回転させる。
【0134】
このように、第3実施形態においては、回転軸方向RADと直交する方向に沿って、放射線Rの検出部151が複数並べられた構成の放射線検出器150を用いる。このため、回転軸方向RADと直交する方向のより広い範囲を一度に撮影することができる。なお、放射線検出器150をオフセット位置に配してもよい。
【0135】
[第4実施形態]
一例として
図37に示すように、第4実施形態においては、画像処理部113は、ES画像76に対して再構成処理を施すことで断層画像120を生成するに際して、トータルバリエーション(TV:Total Variation)正則化といった圧縮センシングの手法を用いる。圧縮センシングは、データ量が不足した測定データから高精度な信号復元を行う逆問題を解く手法である。測定データとは、ここでは投影画像75およびES画像76であり、信号復元後のデータとは、ここでは断層画像120である。また、データ量が不足とは、ここでは放射線Rの線量が低い場合、および/または、投影画像75の枚数が少ない場合である。
【0136】
このように、第4実施形態においては、再構成処理において圧縮センシングの手法を用いる。このため、圧縮センシングの手法を用いない場合と比べて、放射線Rの線量を低くしたり、投影画像75の枚数を少なくしたりすることができる。したがって、被写体Sの被曝量を低減することができ、また、撮影をさらに短時間で済ませることができる。
【0137】
ES画像76に代えて、あるいは加えて、任意のエネルギー分布EDの放射線Rで撮影した投影画像75を仮想的に再現した仮想単色投影画像を取得位置毎に生成し、仮想単色投影画像から断層画像120を生成してもよい。また、ES画像76に代えて、あるいは加えて、石灰化といった特定の箇所を分別した分別画像を取得位置毎に生成し、分別画像から断層画像120を生成してもよい。
【0138】
上記第1実施形態、または上記第3実施形態において、例えば全身等の比較的広い範囲を撮影する場合は、フレーム18を2回以上昇降させて、2回以上に分けて撮影を行ってもよい。
【0139】
放射線源20および放射線検出器21をフレーム18の周方向に沿って移動させる機構を設け、放射線源20および放射線検出器21の配置位置を変更可能に構成してもよい。こうすれば、装置本体11内への被写体Sの誘導の邪魔になる放射線源20および放射線検出器21を、邪魔にならない位置に退避させるといったことができる。
【0140】
支柱14は4本でもよいし5本でもよい。また、回転用モータ47をステッピングモータとして、回転用モータ47に与えるパルス数によってフレーム18の回転位置を割り出してもよい。また、フレーム18は円環に限らず、多角環でもよい。
【0141】
制御装置12を構成するコンピュータのハードウェア構成は種々の変形が可能である。例えば、制御装置12を、処理能力および信頼性の向上を目的として、ハードウェアとして分離された複数台のコンピュータで構成することも可能である。例えば、受付部110、RW制御部111、および表示制御部114の機能と、撮影制御部112および画像処理部113の機能とを、2台のコンピュータに分散して担わせる。この場合は2台のコンピュータで制御装置12を構成する。
【0142】
このように、制御装置12のコンピュータのハードウェア構成は、処理能力、安全性、信頼性等の要求される性能に応じて適宜変更することができる。さらに、ハードウェアに限らず、作動プログラム105といったアプリケーションプログラムについても、安全性および信頼性の確保を目的として、二重化したり、あるいは、複数のストレージに分散して格納することももちろん可能である。
【0143】
上記各実施形態において、例えば、受付部110、RW制御部111、撮影制御部112、画像処理部113、および表示制御部114といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、ソフトウェア(作動プログラム105)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU97に加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、および/またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0144】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0145】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0146】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0147】
以上の記載から、下記の付記項に記載の技術を把握することができる。
【0148】
[付記項1]
立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源であり、冷陰極をもつ放射線管を有する放射線源と、
前記被写体を透過した前記放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列され、前記被写体の投影画像を出力する放射線検出器と、
前記放射線源および前記放射線検出器を前記被写体の体軸周りに回転させる回転機構と、
前記放射線源、前記放射線検出器、および前記回転機構の動作を制御するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記回転機構によって前記放射線源および前記放射線検出器が予め設定された角度回転する毎に、第1エネルギー分布を有する第1放射線、および前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する第2放射線を連続的に前記放射線源から照射させ、
前記第1放射線および前記第2放射線の連続的な照射によって得られる第1投影画像および第2投影画像であり、前記第1放射線に基づく第1投影画像および前記第2放射線に基づく第2投影画像を前記放射線検出器から出力させ、
前記第1投影画像および前記第2投影画像に基づいて断層画像を生成する、
コンピュータ断層撮影装置。
[付記項2]
前記冷陰極は、電界放出現象を利用して電子線を放出する電子放出源を有する電界放出型である付記項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項3]
前記放射線源および前記放射線検出器の組で構成される撮影ユニットであり、回転方向の位相が異なる撮影ユニットを複数備える付記項1または付記項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項4]
複数の前記撮影ユニットの回転軸方向の間隔を変化させる変位機構を備える付記項3に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項5]
前記プロセッサは、
前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅を超える撮影範囲を撮影する場合、前記間隔を、隣り合う前記撮影ユニットで得られる前記投影画像同士に重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記撮影ユニットの各々から得られた前記投影画像に対して再構成処理を施すことで、複数の前記撮影ユニット毎の複数の前記断層画像を生成し、
前記重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する付記項4に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項6]
前記放射線検出器は、前記放射線源および前記放射線検出器の回転軸方向と直交する方向に沿って、前記放射線の検出部が複数並べられた構成である付記項1または付記項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項7]
前記放射線源および前記放射線検出器の回転軸方向から見た場合、前記放射線検出器は、前記放射線源と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されている付記項1から付記項6のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項8]
前記放射線源および前記放射線検出器はフレームに保持されており、前記フレーム内に前記被写体がポジショニングされ、
前記放射線源および前記放射線検出器の回転軸方向から見た場合、前記放射線源は前記フレームの外側に配され、前記放射線検出器は前記フレームの内側に配されている付記項1から付記項7のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項9]
前記プロセッサは、
前記投影画像に対して再構成処理を施すことで前記断層画像を生成するに際して、圧縮センシングの手法を用いる付記項1から付記項8のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項10]
前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅は300mm以上である付記項1から付記項9のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【0149】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0150】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0151】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0152】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0153】
10 コンピュータ断層撮影装置(CT装置)
11 装置本体
12 制御装置
13 ステージ
14、14A~14C 支柱
15 天板
16 キャスター
17、17A~17C 接続部材
18 フレーム
20、20A、20B 放射線源
21、21A、21B、150 放射線検出器
22、22A~22C ねじ軸
24 可動アーム
25 タッチパネルディスプレイ
32 車椅子
35 フレーム昇降機構
36 ナット
37 フレーム昇降用モータ
38 第1接続部
39 第2接続部
40 ベアリング
41 ガイド溝
45 回転機構
46 回転ベルト
47 回転用モータ
48 ポテンショメータ
49、50 プーリ
55 放射線管
56 照射野限定器
57 画素
58 検出面
60 陰極
61 陽極
62 ガラス管
63 電圧発生器
70 半導体基板
71 エミッタ電極
72 ゲート電極
73 集束電極
75 投影画像
76、76A、76B エネルギーサブトラクション画像(ES画像)
76BO 骨部画像
76SP 軟部画像
80、80A、80B、81、81A、81B アタッチメント
82 ボルト
83 接合部
95 ストレージ
96 メモリ
97 CPU
98 ディスプレイ
99 入力デバイス
105 作動プログラム
106 照射条件テーブル
107 オーダー別照射条件情報
110 受付部
111 リードライト制御部(RW制御部)
112 撮影制御部
113 画像処理部
114 表示制御部
116 撮影メニュー
117 照射条件
120、120A、120B 断層画像
125A、125B 撮影ユニット
130 線源昇降機構
131、141 ガイドレール
131A、131B 第1部分、第2部分
132 線源昇降用モータ
133、145、146 ストッパー
140 検出器昇降機構
142 検出器昇降用モータ
143 昇降ボックス
144 アーム
151 検出部
751、751A、751B 第1投影画像
752、752A、752B 第2投影画像
BSA 後方散乱線の影響を特に強く受ける領域
C フレームの中心(回転中心)
CCW 反時計回り方向
CR1、CR2 撮影範囲
CS、CSA、CSB 放射線検出器の検出面の中心点
CW 時計回り方向
EB 電子線
ED エネルギー分布
ED1 第1エネルギー分布
ED2 第2エネルギー分布
F 焦点
FTC 冷陰極をもつ放射線管から発せられる放射線の立ち下がり時間
FTH 熱陰極をもつ放射線管から発せられる放射線の立ち下がり時間
HDA 高精細描画領域
OCR 重複撮影範囲
R、RA、RB 放射線
R1、R1A、R1B 第1放射線
R2、R2A、R2B 第2放射線
RALE 放射線の放射線束の下端
RBUE 放射線の放射線束の上端
RAD 回転軸方向
RCA、RCAA、RCAB 放射線の放射線束の中心軸
RTA 回転軸
RTC 冷陰極をもつ放射線管から発せられる放射線の立ち上がり時間
RTH 熱陰極をもつ放射線管から発せられる放射線の立ち上がり時間
S 被写体
sFOV 有効視野
ST100、ST110、ST120、ST130、ST140、ST150、ST160 ステップ
WA、WB 放射線検出器の検出面の幅
θ 放射線の放射角度
φ 放射線源の配置位置の角度