(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030053
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240229BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B6/03 330Z
A61B6/03 333A
A61B6/03 310
A61B6/03 360Q
A61B6/03 321L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132604
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水川 将
(72)【発明者】
【氏名】田島 崇史
(72)【発明者】
【氏名】種市 達哉
(72)【発明者】
【氏名】西納 直行
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093BA14
4C093CA13
4C093CA16
4C093EC42
4C093EE16
4C093FA32
4C093FA36
4C093FA53
4C093FA55
4C093FB09
4C093FB12
4C093FF35
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】被写体に体動が発生するおそれを低減しつつ、簡易な動作制御で被写体の体軸方向のより広い範囲の断層画像を得ることが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影制御部は、被写体と放射線源および放射線検出器との回転軸方向における位置関係を変えることなく、回転機構により放射線源および放射線検出器を回転させ、放射線源および放射線検出器が予め設定された設定角度回転する毎に、放射線を放射線源から照射させ、投影画像を放射線検出器から出力させるコンベンショナルスキャンを、回転軸方向に沿う複数の高さ位置において行う。画像処理部は、複数の高さ位置において得られた投影画像に基づいて断層画像を生成する。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源と、
前記被写体を透過した前記放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列され、前記被写体の投影画像を出力する放射線検出器と、
前記放射線源および前記放射線検出器を前記被写体の体軸周りに回転させる回転機構と、
前記放射線源および前記放射線検出器を回転軸方向に沿って昇降させる昇降機構と、
前記放射線源、前記放射線検出器、前記回転機構、および前記昇降機構の動作を制御するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記被写体と前記放射線源および前記放射線検出器との前記回転軸方向における位置関係を変えることなく、前記回転機構により前記放射線源および前記放射線検出器を回転させ、前記放射線源および前記放射線検出器が予め設定された設定角度回転する毎に、前記放射線を前記放射線源から照射させ、前記投影画像を前記放射線検出器から出力させるコンベンショナルスキャンを、前記回転軸方向に沿う複数の高さ位置において行い、
複数の前記高さ位置において得られた前記投影画像に基づいて断層画像を生成する、
コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記高さ位置を、隣り合う前記高さ位置で得られる前記投影画像同士に第1の重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記高さ位置において得られた前記投影画像から、複数の前記高さ位置毎の複数の前記断層画像を生成し、
前記第1の重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第1の重複する撮影範囲のうちで前記放射線の焦点軸により近い部分を選択的に用いて、複数の前記断層画像を合成する請求項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
隣り合う前記高さ位置における前記放射線源および前記放射線検出器の回転方向を異ならせる請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記回転軸方向に沿う撮影範囲の指定を受け付け、
前記昇降機構により、指定を受け付けた前記撮影範囲に応じた前記高さ位置に、前記放射線源および前記放射線検出器を合わせる請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
指定を受け付けた前記撮影範囲が前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅以内であった場合、指定を受け付けた前記撮影範囲に応じた1箇所の前記高さ位置において前記コンベンショナルスキャンを1回だけ行う請求項5に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記被写体を撮影するカメラを備え、
前記プロセッサは、
前記カメラから得られたカメラ画像に、前記撮影範囲の上端および下端を示すバーを重畳表示する制御を行い、
前記バーの移動操作によって前記撮影範囲の指定を受け付ける請求項5に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
指定を受け付けた前記撮影範囲の上端が上限を超えている場合、および、指定を受け付けた前記撮影範囲の下端が下限を超えている場合に、警告を出力する制御を行う請求項5に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記放射線源および前記放射線検出器の組で構成される撮影ユニットであり、回転方向の位相が異なる撮影ユニットを複数備える請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
複数の前記撮影ユニットの前記回転軸方向の間隔を変化させる変位機構を備える請求項9に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
複数の前記撮影ユニットの回転を並行して行うことにより、前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅を超える撮影範囲を撮影する場合、前記間隔を、隣り合う前記撮影ユニットで得られる前記投影画像同士に第2の重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記撮影ユニットの各々から得られた前記投影画像に基づいて、複数の前記撮影ユニット毎の複数の前記断層画像を生成し、
前記第2の重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する請求項10に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、臥位姿勢の被写体を撮影するためのコンピュータ断層撮影装置(以下、CT(Computed Tomography)装置と表記)が記載されている。特許文献1に記載のCT装置は、被写体に向けて放射線を発する放射線源、および被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器を被写体の体軸周りに回転させ、予め設定された設定角度回転する毎に放射線源から放射線を照射させ、放射線検出器から設定角度毎の複数の投影画像を得ている。そして、複数の投影画像から断層画像を生成している。放射線源はコーンビームを照射し、放射線検出器は複数の画素が2次元マトリクス状に配列された構成である。
【0003】
特許文献1においては、被写体の体軸方向のより広い範囲の断層画像を得るために、放射線源および放射線検出器を被写体の体軸周りにヘリカルスキャン(特許文献1では螺旋走査と表記)する態様が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、立位姿勢または座位姿勢の被写体の断層画像を得るためのCT装置の構想を練っている。こうしたCT装置に、特許文献1に記載の技術を用いようとした場合、次のような課題がある。すなわち、特許文献1に記載のCT装置においては、ヘリカルスキャンを行う際に、臥位姿勢の被写体が載置された寝台を体軸方向に移動させている。しかしながら、臥位姿勢と比べて立位姿勢または座位姿勢の被写体は不安定である。そのため、特許文献1に倣って立位姿勢または座位姿勢の被写体を体軸方向に昇降させた場合、被写体がふらついたりしやすく、そうしたふらつき等の体動に起因する断層画像の画質劣化が起こる可能性が高い。また、ヘリカルスキャンは動作制御が複雑である。
【0006】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、被写体に体動が発生するおそれを低減しつつ、簡易な動作制御で被写体の体軸方向のより広い範囲の断層画像を得ることが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコンピュータ断層撮影装置は、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源と、被写体を透過した放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列され、被写体の投影画像を出力する放射線検出器と、放射線源および放射線検出器を被写体の体軸周りに回転させる回転機構と、放射線源および放射線検出器を回転軸方向に沿って昇降させる昇降機構と、放射線源、放射線検出器、回転機構、および昇降機構の動作を制御するプロセッサと、を備え、プロセッサは、被写体と放射線源および放射線検出器との回転軸方向における位置関係を変えることなく、回転機構により放射線源および放射線検出器を回転させ、放射線源および放射線検出器が予め設定された設定角度回転する毎に、放射線を放射線源から照射させ、投影画像を放射線検出器から出力させるコンベンショナルスキャンを、回転軸方向に沿う複数の高さ位置において行い、複数の高さ位置において得られた投影画像に基づいて断層画像を生成する。
【0008】
プロセッサは、高さ位置を、隣り合う高さ位置で得られる投影画像同士に第1の重複する撮影範囲が生じる設定とし、複数の高さ位置において得られた投影画像から、複数の高さ位置毎の複数の断層画像を生成し、第1の重複する撮影範囲に基づいて複数の断層画像を位置合わせすることで、複数の断層画像を合成することが好ましい。
【0009】
プロセッサは、第1の重複する撮影範囲のうちで放射線の焦点軸により近い部分を選択的に用いて、複数の断層画像を合成することが好ましい。
【0010】
プロセッサは、隣り合う高さ位置における放射線源および放射線検出器の回転方向を逆にすることが好ましい。
【0011】
プロセッサは、回転軸方向に沿う撮影範囲の指定を受け付け、昇降機構により、指定を受け付けた撮影範囲に応じた高さ位置に、放射線源および放射線検出器を合わせることが好ましい。
【0012】
プロセッサは、指定を受け付けた撮影範囲が放射線検出器の放射線の検出面の幅以内であった場合、指定を受け付けた撮影範囲に応じた1箇所の高さ位置においてコンベンショナルスキャンを1回だけ行うことが好ましい。
【0013】
被写体を撮影するカメラを備え、プロセッサは、カメラから得られたカメラ画像に、撮影範囲の上端および下端を示すバーを重畳表示する制御を行い、バーの移動操作によって撮影範囲の指定を受け付けることが好ましい。
【0014】
プロセッサは、指定を受け付けた撮影範囲の上端が上限を超えている場合、および、指定を受け付けた撮影範囲の下端が下限を超えている場合に、警告を出力する制御を行うことが好ましい。
【0015】
放射線源および放射線検出器の組で構成される撮影ユニットであり、回転方向の位相が異なる撮影ユニットを複数備えることが好ましい。
【0016】
複数の撮影ユニットの回転軸方向の間隔を変化させる変位機構を備えることが好ましい。
【0017】
プロセッサは、複数の撮影ユニットの回転を並行して行うことにより、放射線検出器の放射線の検出面の幅を超える撮影範囲を撮影する場合、間隔を、隣り合う撮影ユニットで得られる投影画像同士に第2の重複する撮影範囲が生じる設定とし、複数の撮影ユニットの各々から得られた投影画像に基づいて、複数の撮影ユニット毎の複数の断層画像を生成し、第2の重複する撮影範囲に基づいて複数の断層画像を位置合わせすることで、複数の断層画像を合成することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、被写体に体動が発生するおそれを低減しつつ、簡易な動作制御で被写体の体軸方向のより広い範囲の断層画像を得ることが可能なコンピュータ断層撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】放射線源および放射線検出器の配置位置を示す図である。
【
図4】車椅子に乗った座位姿勢の被写体がポジショニングされた状態を示すCT装置の正面図である。
【
図7】放射線源、放射線検出器、および放射線を示す斜視図である。
【
図8】放射線源および放射線検出器の配置位置を示す図である。
【
図9】放射線検出器の基準位置とオフセット位置を示す図である。
【
図10】制御装置のCPUの処理部を示すブロック図である。
【
図12】カメラ画像表示画面において撮影範囲を指定する様子を示す図である。
【
図13】指定を受け付けた撮影範囲の上端が上限を超えている場合に、警告画面を表示する様子を示す図である。
【
図14】指定を受け付けた撮影範囲の下端が下限を超えている場合に、警告画面を表示する様子を示す図である。
【
図15】指定を受け付けた撮影範囲が放射線検出器の放射線の検出面の幅を超える場合の高さ位置の設定の仕方を示す図である。
【
図16】指定を受け付けた撮影範囲が放射線検出器の放射線の検出面の幅以内の場合の高さ位置の設定の仕方を示す図である。
【
図17】2箇所の高さ位置が設定された場合を示す図である。
【
図18】2箇所の高さ位置が設定された場合の別の例を示す図である。
【
図19】3箇所の高さ位置が設定された場合を示す図である。
【
図20】1箇所の高さ位置が設定された場合を示す図である。
【
図21】2箇所の高さ位置が設定された場合の放射線源の放射線の照射タイミング、および放射線検出器の投影画像の読み出しタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図22】1箇所の高さ位置が設定された場合の放射線源の放射線の照射タイミング、および放射線検出器の投影画像の読み出しタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図23】2箇所の高さ位置が設定された場合の画像処理部の処理の概要を示す図である。
【
図26】合成処理の詳細のさらに別の例を示す図である。
【
図27】1箇所の高さ位置が設定された場合の画像処理部の処理の概要を示す図である。
【
図28】CT装置による撮影手順を示すフローチャートである。
【
図29】CT装置による撮影手順を示すフローチャートである。
【
図30】放射線検出器が基準位置にある場合の有効視野を示す図である。
【
図31】放射線検出器がオフセット位置にある場合の有効視野を示す図である。
【
図32】2つの撮影ユニットを備える第2実施形態を示す図である。
【
図34】線源昇降機構および検出器昇降機構を示す図である。
【
図35】一方の撮影ユニットが上端位置、他方の撮影ユニットが下端位置にある場合の放射線束を示す図である。
【
図36】2つの撮影ユニットがともに上端位置にある場合の放射線束を示す図である。
【
図37】
図35の場合の放射線源の放射線の照射タイミング、および放射線検出器の投影画像の読み出しタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図38】第2実施形態における画像処理部の処理の概要を示す図である。
【
図39】第2実施形態における画像処理部の処理の概要を示す図である。
【
図40】放射線源を120°隔たった位置に配した例を示す図である。
【
図41】放射線源を125°隔たった位置に配した例を示す図である。
【
図42】放射線の検出部が複数並べられた構成の放射線検出器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一例として
図1に示すように、CT装置10は、被写体Sの断層画像を得るための装置であり、装置本体11と制御装置12とで構成される。装置本体11は、例えば医療施設の撮影室内に設置される。制御装置12は、例えば撮影室の隣室の制御室内に設置される。制御装置12は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ、ノート型のパーソナルコンピュータ、あるいはタブレット端末である。制御装置12は、診療放射線技師といったCT装置10のオペレータにより操作される。
【0021】
一例として
図2にも示すように、装置本体11は、ステージ13と、3本の支柱14A、14B、および14Cと、天板15とを備える。ステージ13は例えば八角形状をした平板である(
図6参照)。ステージ13の裏面の四隅には、搬送用のキャスター16が取り付けられている。キャスター16には回転ロック機構(図示省略)が備えられており、装置本体11を設置箇所に設置した後に、回転ロック機構を働かせてキャスター16の回転をロックすることができる。あるいは、キャスター16はステージ13から取り外し可能であり、装置本体11を設置箇所に設置した後にキャスター16を外すことができる。
【0022】
支柱14A~14Cは外形が矩形板状をしており、ステージ13の表面の四隅に立設されている。支柱14Aおよび14Cは、装置本体11の正面側の左右(被写体Sの前の左右)に配されている。支柱14Bは、装置本体11の背面側の中心(被写体Sの後ろ)に配されている。天板15は、支柱14A~14Cの上端部に取り付けられている。天板15は、例えば外形がステージ13に倣う八角形状をした平板である(
図6参照)。天板15は、中心部が円形にくり抜かれ、かつ支柱14Aおよび14Cの間の装置本体11の正面側の部分が切り欠かれたC字状をしている。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、支柱14A~14Cをまとめて支柱14と表記する。
【0023】
支柱14Aには接続部材17Aが接続され、支柱14Bには接続部材17Bが接続され、支柱14Cには接続部材17Cが接続されている。接続部材17A~17Cにはフレーム18が接続されている。つまり、支柱14A~14Cとフレーム18とは、接続部材17A~17Cを介して相互に接続されている。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、接続部材17A~17Cをまとめて接続部材17と表記する。
【0024】
フレーム18は円環状をしている。この円環状のフレーム18の中心C(
図6参照)の位置に、被写体Sがポジショニングされる。
図1および
図2においては、頭上に両手を上げた立位姿勢の被写体Sがポジショニングされた様子を示している。
【0025】
支柱14には、接続部材17が嵌合するガイドレール(図示省略)が設けられている。接続部材17、ひいてはフレーム18は、ガイドレールに沿って鉛直方向に昇降可能である。すなわち、支柱14は、フレーム18を鉛直方向に昇降可能に保持する。また、フレーム18は、その中心Cを鉛直方向に貫く軸を回転軸RTA(
図3参照)として、被写体Sの体軸周りを回転可能である。すなわち、支柱14A~14Cは、被写体Sの体軸周りを回転可能にフレーム18を保持する。以下、中心Cを回転中心Cと表記する場合がある。符号RADで示す矢印は、フレーム18の回転軸方向を示す。回転軸方向RADは鉛直方向と平行である。ここで体軸とは、被写体Sの頭頂部から尾部(肛門)を貫く軸である。被写体Sが立位姿勢または座位姿勢(
図4参照)の場合は、体軸は鉛直方向および回転軸方向RADと平行である。「平行」とは、完全な平行の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの平行を指す。なお、支柱14が伸縮することで、フレーム18の高さ位置を変更可能としてもよい。
【0026】
図3にも示すように、フレーム18には、被写体Sに向けてX線、γ線等の放射線R(
図7参照)を照射する放射線源20と、被写体Sを透過した放射線Rを検出する放射線検出器21が取り付けられている。放射線源20は箱状をしており、放射線検出器21は矩形板状をしている。
【0027】
支柱14Aにはねじ軸22Aが設けられ、支柱14Bにはねじ軸22Bが設けられ、支柱14Cにはねじ軸22Cが設けられている。ねじ軸22A~22Cは、ステージ13から天板15までに達する高さを有する。ねじ軸22A~22Cが回転することにより、接続部材17A~17C、ひいてはフレーム18が回転軸方向RADに昇降する。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合、ねじ軸22A~22Cをまとめてねじ軸22と表記する。
【0028】
支柱14Aには、可動アーム24を介してタッチパネルディスプレイ25が取り付けられている。タッチパネルディスプレイ25はオペレータにより操作される。また、タッチパネルディスプレイ25はオペレータに各種情報を表示する。
【0029】
放射線源20にはカメラ26が設けられている。カメラ26は、装置本体11内にポジショニングされた被写体Sを撮影し、これにより得られたカメラ画像121(
図11参照)を制御装置12に送信する。カメラ26は放射線源20とは別体で、放射線Rの妨げにならない放射線源20の下部に取り付けられている。なお、カメラ26は放射線源20と一体でもよいし、放射線源20に内蔵されていてもよい。
【0030】
図1および
図2においては、頭上に両手を上げた立位姿勢の被写体Sがフレーム18内にポジショニングされた例を示したが、これに限らない。一例として
図4に示すように、CT装置10は、車椅子32に乗った座位姿勢の被写体Sをフレーム18内にポジショニングして撮影することも可能である。なお、立位姿勢の被写体S、および車椅子32に乗った座位姿勢の被写体Sのいずれとも、支柱14Aおよび14Cの側に正面が向き、支柱14Bの側に背面が向くようにポジショニングされる。
【0031】
一例として
図5に示すように、接続部材17、ひいてはフレーム18を回転軸方向RADに昇降させるフレーム昇降機構35は、前述のねじ軸22、ねじ軸22に螺合するボール入りのナット36、およびねじ軸22を回転させるフレーム昇降用モータ37等で構成されるボールねじ機構である。フレーム昇降用モータ37は、ステージ13の裏面に取り付けられている。フレーム18の高さ位置は、フレーム昇降用モータ37の回転向きおよび回転数から割り出される。フレーム昇降機構35は、本開示の技術に係る「昇降機構」の一例である。
【0032】
接続部材17は、フレーム18に接続する第1接続部38と、支柱14に接続する第2接続部39とを有する。第1接続部38はフレーム18側に、第2接続部39は支柱14側にそれぞれ突出しており、接続部材17は全体としてZ字状をしている。第1接続部38にはベアリング40が内蔵されている。ベアリング40は、フレーム18の全周にわたって形成されたガイド溝41(
図1等も参照)に嵌め込まれている。ベアリング40は、フレーム18の回転に伴って転動する。第2接続部39にはナット36が内蔵されている。
【0033】
一例として
図6に示すように、フレーム18、ひいては放射線源20および放射線検出器21を被写体Sの体軸周りに回転させる回転機構45は、フレーム18の全周に掛け回された回転ベルト46、回転用モータ47、およびポテンショメータ48等で構成される。回転用モータ47は接続部材17Bに内蔵されており、フレーム18から引き出された回転ベルト46の一部にプーリ49を介して接続されている。この回転用モータ47の駆動により、フレーム18、ひいては放射線源20および放射線検出器21は時計回り(右回り)方向CWおよび反時計回り(左回り)方向CCWに回転する。放射線源20および放射線検出器21の回転速度は、例えば36°/sec(秒)である。この場合、放射線源20および放射線検出器21が1回転(360°回転)するのに要する時間は10secである。時計回り方向CWおよび反時計回り方向CCWは、本開示の技術に係る「回転方向」の一例である。
【0034】
ポテンショメータ48は接続部材17Cに内蔵されており、フレーム18から引き出された回転ベルト46の一部にプーリ50を介して接続されている。ポテンショメータ48は、フレーム18の回転位置によって抵抗値が変化する可変抵抗を有し、フレーム18の回転位置に応じた電圧信号を出力する。このポテンショメータ48からの電圧信号により、フレーム18の回転位置が割り出される。なお、
図6においては、煩雑を避けるため放射線源20および放射線検出器21の図示を省略している。
【0035】
一例として
図7に示すように、放射線源20は放射線管55を内蔵している。放射線管55は放射線Rを発する。なお、図示は省略したが、放射線源20は、放射線Rの照射野を示す例えば橙色の可視光を発する照射野ランプも内蔵している。
【0036】
放射線源20は照射野限定器56を有する。照射野限定器56はコリメータとも呼ばれ、放射線検出器21への放射線Rの照射野を規定する。照射野限定器56には、放射線管55からの放射線Rが入射する入射開口と、放射線Rが出射する出射開口とが形成されている。出射開口の近傍には、例えば4枚の遮蔽板が設けられている。遮蔽板は、放射線Rを遮蔽する材料、例えば鉛等で形成されている。遮蔽板は、四角形の各辺上に配置、換言すれば井桁状(checkered pattern)に組まれており、放射線Rを透過させる四角形の照射開口を形成する。照射野限定器56は、各遮蔽板の位置を変更することで照射開口の大きさを変化させ、これにより放射線検出器21への放射線Rの照射野を変更する。この照射野限定器56の働きによって、四角錐状の放射線Rが放射線源20から照射される。回転軸方向RADから見た場合の放射線Rの放射角度θは、例えば10°~30°である。放射角度θはコーン角とも呼ばれる。
【0037】
放射線検出器21は、例えば、放射線Rを可視光に変換するシンチレータ、可視光に応じた電荷を蓄積することで放射線Rを検出する複数の画素57が2次元マトリクス状に配列された検出面58を有するTFT(Thin Film Transistor)基板、電荷に応じた電圧信号を投影画像として出力する信号処理回路、およびこれらを内蔵する筐体等で構成される。符号WAは、検出面58の回転軸方向RADにおける幅を示す。また、符号WBは、検出面58の回転軸方向RADと直交する方向における幅を示す。幅WAおよびWBはともに300mm以上である。例えば幅WAおよびWBは430mm(17インチ)である。放射線Rの焦点(放射線管55において放射線Rが発せられる点)から検出面58までの距離であるSID(Source To Image Distance)は、例えば1200mmである。幅WAは、本開示の技術に係る「検出面の幅」の一例である。なお、放射線検出器21は、放射線Rから変換された可視光ではなく、放射線Rを直接検出するタイプであってもよい。
【0038】
一例として
図8に示すように、放射線Rの放射線束の中心軸RCAは、放射線検出器21の検出面58の中心点CSと垂直に交わる。以下の説明では、放射線源20の配された位置を0°とし、反時計回り方向CCWの90°毎の位置を90°、180°、および270°とする。
【0039】
放射線源20は、アタッチメント60によってフレーム18に取り付けられている。同様に、放射線検出器21は、アタッチメント61によってフレーム18に取り付けられている。これらのアタッチメント60および61は、ボルト62でフレーム18に固定されている。回転軸方向RADから見た場合、放射線源20はフレーム18の外側に配され、放射線検出器21はフレーム18の内側に配されている。
【0040】
フレーム18は、半円環状の2つの部材を溶接等により接合してなる。アタッチメント60は、フレーム18の対向する2つの接合部63のうちの1つを覆うように取り付けられている。こうして接合部63にアタッチメント60を取り付けることで、機械的に弱い部分である接合部63をアタッチメント60で補強することができる。
【0041】
一例として
図9に示すように、回転軸方向RADから見た場合、放射線検出器21は、放射線源20と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配されている。ここで基準位置とは、照射野限定器56の出射開口を最大に開放したときの放射線Rの放射線束の中心軸RCAと、放射線検出器21の検出面58の中心点CSとが垂直に交わる位置である。オフセット位置の予め設定された角度は、本例においては放射角度θの半分(θ/2)である。
【0042】
一例として
図10に示すように、制御装置12を構成するコンピュータは、ストレージ95、メモリ96、CPU(Central Processing Unit)97、ディスプレイ98、および入力デバイス99等を備えている。
【0043】
ストレージ95は、制御装置12を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブル、ネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブである。もしくはストレージ95は、ハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージ95には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。なお、ハードディスクドライブに代えてソリッドステートドライブを用いてもよい。
【0044】
メモリ96は、CPU97が処理を実行するためのワークメモリである。CPU97は、ストレージ95に記憶されたプログラムをメモリ96へロードして、プログラムにしたがった処理を実行する。これにより、CPU97はコンピュータの各部を統括的に制御する。CPU97は、本開示の技術に係る「プロセッサ」の一例である。なお、メモリ96はCPU97に内蔵されていてもよい。
【0045】
ディスプレイ98は各種画面を表示する。各種画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。制御装置12を構成するコンピュータは、各種画面を通じて、入力デバイス99からの操作指示の入力を受け付ける。入力デバイス99は、キーボード、マウス、タッチパネル、および音声入力用のマイク等である。
【0046】
ストレージ95には作動プログラム105が記憶されている。作動プログラム105は、コンピュータを制御装置12として機能させるためのアプリケーションプログラムである。ストレージ95には、作動プログラム105の他に、照射条件テーブル106およびオーダー別照射条件情報107等が記憶されている。
【0047】
作動プログラム105が起動されると、制御装置12のCPU97は、メモリ96等と協働して、受付部110、リードライト(以下、RW(Read Write)と略す)制御部111、撮影制御部112、画像処理部113、および表示制御部114として機能する。
【0048】
受付部110は、装置本体11のタッチパネルディスプレイ25、および入力デバイス99を介してオペレータにより入力される様々な操作指示を受け付ける。例えば受付部110は撮影メニュー116を受け付ける。受付部110は、撮影メニュー116をRW制御部111に出力する。
【0049】
RW制御部111は、受付部110から撮影メニュー116を受け取る。RW制御部111は、受け取った撮影メニュー116に対応する放射線Rの照射条件117を、照射条件テーブル106から読み出す。RW制御部111は、照射条件テーブル106から読み出した照射条件117を、オーダー別照射条件情報107に書き込む。
【0050】
撮影制御部112は、放射線源20(放射線管55および照射野限定器56)、カメラ26、フレーム昇降機構35(フレーム昇降用モータ37)、回転機構45(回転用モータ47およびポテンショメータ48)、並びに放射線検出器21の動作を制御する。撮影制御部112は、オーダー別照射条件情報107から照射条件117を読み出す。撮影制御部112は、照射条件117にしたがって照射野限定器56を駆動させ、照射野を調整する。制御装置12には、図示しない照射スイッチを通じて、オペレータにより撮影指示が入力される。撮影指示が入力された場合、撮影制御部112は、照射条件117にしたがって放射線管55を駆動させ、放射線管55から放射線Rを発生させる。撮影制御部112は、放射線Rの照射により放射線検出器21で検出された投影画像135(
図21参照)を、放射線検出器21から画像処理部113に出力させる。
【0051】
画像処理部113は、放射線検出器21から投影画像135を受け取る。画像処理部113は、投影画像135に対して様々な画像処理を施し、断層画像138(
図22参照)を生成する。画像処理部113は、断層画像138を表示制御部114に出力する。
【0052】
表示制御部114は、タッチパネルディスプレイ25およびディスプレイ98への各種情報の表示を制御する。表示制御部114は、カメラ26からカメラ画像121を受け取る。表示制御部114は、カメラ画像121をタッチパネルディスプレイ25およびディスプレイ98に表示する。また、表示制御部114は、画像処理部113から断層画像138を受け取る。表示制御部114は、断層画像138をタッチパネルディスプレイ25およびディスプレイ98に表示する。
【0053】
撮影メニュー116は、例えば、撮影オーダーID(Identification Data)および撮影手技を含む。撮影オーダーIDは、断層画像138を用いて診断を行う医師が発行した撮影オーダーの識別情報である。撮影手技は、立位または座位といった被写体Sの姿勢と、頭部、頸部、全脊椎といった撮影部位と、成人男性、成人女性、小児等の被写体Sの属性とで構成される。
【0054】
撮影オーダーは、図示省略した放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)から制御装置12に送信される。制御装置12は、表示制御部114の制御の下、撮影オーダーのリストをディスプレイ98に表示する。オペレータは、撮影オーダーのリストを閲覧して内容を確認する。続いて制御装置12は、撮影オーダーに対応する撮影メニューを設定可能な形態でディスプレイ98に表示する。オペレータは、入力デバイス99を操作することで、撮影オーダーに応じた撮影メニューを選択して入力する。
【0055】
照射条件テーブル106には、撮影手技毎に照射条件117が登録されている。照射条件117には、放射線管55に印加する管電圧および管電流と、放射線Rの照射時間とが含まれる。また、照射条件117には照射野のサイズも含まれる。照射条件117は、オペレータの手で微調整することが可能である。なお、管電流と照射時間の代わりに、管電流照射時間積、いわゆるmAs値を照射条件117としてもよい。
【0056】
オーダー別照射条件情報107には、撮影オーダーID毎に照射条件117が登録されている。撮影制御部112は、次の撮影の撮影オーダーIDに対応する照射条件117をオーダー別照射条件情報107から読み出し、読み出した照射条件117にしたがって各部の動作を制御する。
【0057】
一例として
図11に示すように、表示制御部114は、撮影の前段階において、カメラ画像表示画面120をディスプレイ98等に表示する制御を行う。カメラ画像表示画面120には、カメラ26から得られたカメラ画像121、メッセージ122、および決定ボタン123が表示される。カメラ画像121には被写体Sが写っている。表示制御部114は、断層画像138として再構成可能な撮影範囲CRをカメラ画像121に重畳表示する。また、表示制御部114は、撮影範囲CRの上端を示すバー124A、および撮影範囲CRの下端を示すバー124Bをカメラ画像121に重畳表示する。
【0058】
バー124Aおよび124Bは、
図11に示すカメラ画像表示画面120の初期表示状態においては、例えば一般的な成人男性の半身(腰部から上の上半身、および腰部から下の下半身、
図11においては上半身を例示)をカバー可能な撮影範囲CRに応じた位置に表示されている。バー124Aおよび124Bは、オペレータによって上下に移動操作させることが可能である。このバー124Aおよび124Bの移動操作によって、撮影範囲CRが変更される。メッセージ122は、バー124Aおよび124Bの移動操作、および決定ボタン123の選択を促す内容である。
【0059】
オペレータは、撮影メニュー116の内容、および被写体Sの体格等を勘案してバー124Aおよび124Bを移動操作し、所望の撮影範囲CRとする。その後、オペレータは決定ボタン123を選択する。決定ボタン123が選択された場合、一例として
図12に示すように、受付部110は、そのときバー124Aおよび124Bにより指定された撮影範囲CRの情報である撮影範囲情報128を受け付ける。撮影範囲情報128は、具体的には、バー124Aおよび124Bの高さ位置を示す情報である。受付部110は、撮影範囲情報128を撮影制御部112に出力する。
【0060】
一例として
図13に示すように、決定ボタン123が選択されたときのバー124A、すなわち指定を受け付けた撮影範囲CRの上端が上限ULを超えている場合、表示制御部114は警告画面130Aをディスプレイ98等に表示する制御を行う。警告画面130Aには、撮影範囲CRの上端が上限ULを超えている旨、および指定のやり直しを促す旨のメッセージ131Aが表示される。上限ULは、フレーム昇降機構35によって放射線源20および放射線検出器21を上限の高さ位置まで上昇させたときの撮影範囲CRの上端である。
【0061】
また、一例として
図14に示すように、決定ボタン123が選択されたときのバー124B、すなわち指定を受け付けた撮影範囲CRの下端が下限LLを超えている場合、表示制御部114は警告画面130Bをディスプレイ98等に表示する制御を行う。警告画面130Bには、撮影範囲CRの下端が下限LLを超えている旨、および指定のやり直しを促す旨のメッセージ131Bが表示される。下限LLは、フレーム昇降機構35によって放射線源20および放射線検出器21を下限の高さ位置まで下降させたときの撮影範囲CRの下端である。
【0062】
警告画面130Aおよび130Bは、例えばカメラ画像表示画面120上にポップアップ表示される。また、警告画面130Aおよび130Bは、OKボタン132を選択することで表示が消える。警告画面130Aおよび130Bを表示する制御は、本開示の技術に係る「警告を出力する制御」の一例である。なお、警告画面130Aおよび130Bの表示に代えて、あるいは加えて、メッセージ131Aおよび131Bを読み上げる音声等を警告として出力してもよい。
【0063】
撮影制御部112は、受付部110からの撮影範囲情報128に基づいて、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置を設定する。より詳しくは、一例として
図15に示すように、指定を受け付けた撮影範囲CRが放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WAを超える場合、撮影制御部112は、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、2箇所以上の高さ位置を設定する。対して、一例として
図16に示すように、指定を受け付けた撮影範囲CRが放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WA以内であった場合、撮影制御部112は、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、1箇所の高さ位置を設定する。撮影制御部112は、フレーム昇降機構35を動作させることで、設定した高さ位置に放射線源20および放射線検出器21を合わせる。
【0064】
図17~
図19は、
図15で示したように、指定を受け付けた撮影範囲CRが放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WAを超えていて(CR>WA)、撮影制御部112が、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、2箇所以上の高さ位置を設定した場合を示す。
【0065】
まず、
図17および
図18は、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、高さ位置AおよびBの2箇所を設定した場合を示す。
図17に示す高さ位置AおよびBは、高さ位置Aにおける放射線Rの放射線束の下端RLEと、高さ位置Bにおける放射線Rの放射線束の上端RUEとが一致する位置に設定されている。この場合の撮影範囲CRは、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、高さ位置AおよびBの2箇所を設定したときに、回転軸RTAに沿う高精細描画領域HDAの合計の幅が最大となる撮影範囲である。高精細描画領域HDAは、いずれの回転角度においても放射線Rが照射される領域であり、高精細な断層画像138を得ることができる領域である。1箇所の高さ位置における高精細描画領域HDAの幅は、放射線源20の回転半径(回転中心Cと放射線源20の放射線Rの焦点との距離)、放射線検出器21の回転半径(回転中心Cと放射線検出器21の検出面58の中心点CSとの距離)、および放射線検出器21の検出面58の幅WAおよびWB等によって定まり、例えば200mm~300mmである。なお、「一致」とは、完全一致の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの一致を指す。
【0066】
図17における撮影範囲CRは、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADにおける幅WAの約1.5倍の幅の範囲である。なお、
図17においては、説明の便宜上、
図8で示した0°と180°のそれぞれの位置に放射線源20および放射線検出器21があった場合の放射線Rを示している。また、
図17においては、煩雑を避けるため、
図9で示したように放射線検出器21をオフセットさせていない。以降の
図18等も同様である。
【0067】
符号OCR1で示すように、高さ位置AおよびBにおいては、撮影範囲CRが一部重複している。撮影制御部112は、この第1の重複する撮影範囲(以下、第1重複撮影範囲と表記)OCR1を確保可能な位置に、高さ位置AおよびBを設定する。つまり、撮影制御部112は、高さ位置AおよびBを、高さ位置AおよびBで得られる投影画像135Aおよび135B(ともに
図21参照)同士に第1重複撮影範囲OCR1が生じる設定とする。なお、
図17の場合の第1重複撮影範囲OCR1は、例えば10mm~30mmである。
【0068】
図18は、撮影範囲CRは放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WAを超えてはいるが、
図17の場合と比べて狭い場合を示す。この場合、撮影制御部112は、高さ位置AおよびBを
図17の場合と比べて互いに近付けた位置に設定する。この場合、高さ位置AおよびBにおける高精細描画領域HDAは一部重複する。また、第1重複撮影範囲OCR1は、
図17の場合と比べて広くとられる。
【0069】
図19は、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、高さ位置A、B、およびCの3箇所を設定した場合を示す。
図19に示す高さ位置AおよびBは、
図17の場合と同じく、高さ位置Aにおける放射線Rの放射線束の下端RLEと、高さ位置Bにおける放射線Rの放射線束の上端RUEとが一致する位置に設定されている。また、
図19に示す高さ位置BおよびCは、高さ位置Bにおける放射線Rの放射線束の下端RLEと、高さ位置Cにおける放射線Rの放射線束の上端RUEとが一致する位置に設定されている。この場合の撮影範囲CRは、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、高さ位置A、B、およびCの3箇所を設定したときに、回転軸RTAに沿う高精細描画領域HDAの合計の幅が最大となる撮影範囲である。この場合の第1重複撮影範囲OCRは、
図17の場合と同じく、例えば10mm~30mmである。なお、図示は省略するが、撮影範囲CRによっては、4箇所以上の高さ位置が設定されてもよい。
【0070】
一方、
図20は、
図16で示したように、指定を受け付けた撮影範囲CRが放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WA以内(CW≦WA)で、撮影制御部112が、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、1箇所の高さ位置Aだけを設定した場合を示す。
図20は、特に、撮影範囲CRと幅WAとが一致(CR=WA)している場合を示す。
【0071】
一例として
図21に示すように、
図17および
図18で示した態様の場合、高さ位置Aにおいては、撮影制御部112は、0°を回転開始位置および回転終了位置として反時計回り方向CCWに放射線源20を回転させ、2.4°、4.8°、7.2°、・・・、352.8°、355.2°、357.6°と、2.4°置きに放射線Rを照射させる。また、2.4°置きに放射線検出器21から投影画像135Aを出力させる。高さ位置Bにおいては、撮影制御部112は、0°を回転開始位置および回転終了位置として今度は時計回り方向CWに放射線源20を回転させ、357.6°、355.2°、352.8°、・・・、7.2°、4.8°、2.4°と、こちらも2.4°置きに放射線Rを照射させる。また、こちらも2.4°置きに放射線検出器21から投影画像135Bを出力させる。このように、撮影制御部112は、高さ位置AおよびBにおける放射線源20および放射線検出器21の回転方向を逆にする。2.4°は、本開示の技術に係る「予め設定された設定角度」の一例である。なお、高さ位置Aにおける回転終了位置は、厳密には0°から反時計回り方向CCWにθの角度をなす位置であり、高さ位置Bにおける回転終了位置は、厳密には0°から時計回り方向CWにθの角度をなす位置である。
【0072】
撮影制御部112は、高さ位置AおよびBのいずれにおいても、撮影に先立って、放射線検出器21に読み出し動作を行わせる。この読み出し動作は、待機中に画素57に蓄積された暗電荷等の不要電荷を掃き出す動作であり、リセット動作とも呼ばれる。
【0073】
放射線検出器21に不要電荷を掃き出す読み出し動作を行わせた後、撮影制御部112は、放射線源20から放射線Rを照射させる。また、撮影制御部112は、放射線検出器21に蓄積動作を行わせる。蓄積動作は、放射線Rに基づく電荷を画素57に蓄積させる動作である。続いて撮影制御部112は、放射線検出器21に読み出し動作を行わせ、放射線検出器21から放射線Rに基づく投影画像135A(高さ位置Aにおける投影画像135)または135B(高さ位置Bにおける投影画像135)を出力させる。撮影制御部112は、こうして、被写体Sと放射線源20および放射線検出器21との回転軸方向RADにおける位置関係を変えることなく、設定角度の2.4°毎に放射線源20から放射線Rを照射させ、放射線検出器21から投影画像135を出力させるコンベンショナルスキャンを、高さ位置AおよびBにおいて行う。一例として、撮影制御部112は、放射線源20および放射線検出器21を高さ位置Aに合わせて、高さ位置Aにおいてコンベンショナルスキャンを行った後、放射線源20および放射線検出器21を高さ位置Bに合わせて、高さ位置Bにおいてコンベンショナルスキャンを行う。なお、放射線Rの照射時間は、例えば5msec~15msecである。
【0074】
図19で示した態様の場合は、図示は省略するが、高さ位置AおよびBにおけるコンベンショナルスキャンは
図21で示した場合と同じである。高さ位置Cにおいては、撮影制御部112は、高さ位置Aと同じく、0°を回転開始位置および回転終了位置として反時計回り方向CCWに放射線源20を回転させ、2.4°、4.8°、7.2°、・・・と、2.4°置きに放射線Rを照射させる。また、2.4°置きに放射線検出器21から投影画像135Aを出力させる。一例として、撮影制御部112は、放射線源20および放射線検出器21を高さ位置Aに合わせて、高さ位置Aにおいてコンベンショナルスキャンを行った後、放射線源20および放射線検出器21を高さ位置Bに合わせて、高さ位置Bにおいてコンベンショナルスキャンを行う。さらにその後、放射線源20および放射線検出器21を高さ位置Cに合わせて、高さ位置Cにおいてコンベンショナルスキャンを行う。
【0075】
一方、一例として
図22に示すように、
図20で示した態様の場合、高さ位置Aにおいて、撮影制御部112は、0°を回転開始位置および回転終了位置として反時計回り方向CCWに放射線源20を回転させ、2.4°、4.8°、7.2°、・・・、352.8°、355.2°、357.6°と、2.4°置きに放射線Rを照射させる。また、2.4°置きに放射線検出器21から投影画像135Aを出力させる。このように、
図20で示した態様の場合は、1箇所の高さ位置においてコンベンショナルスキャンを1回だけ行う。なお、回転終了位置は、厳密には0°から反時計回り方向CCWにθの角度をなす位置である。
【0076】
ここで、放射線源20および放射線検出器21は回転しているため、放射線Rの照射開始時と終了時とでは、放射線源20および放射線検出器21の位置に多少のずれがあるが、放射線Rの照射開始時の放射線源20の位置(0°、2.4°、4.8°、・・・)を、投影画像135の取得位置とする。なお、0°、2.4°、4.8°、・・・といった予め設定された設定角度毎に一旦フレーム18の回転を停止させたうえで、放射線源20から放射線Rを照射させてもよい。
【0077】
一例として
図23に示すように、
図17および
図18で示した態様の場合、画像処理部113は、高さ位置Aにおいて得られた投影画像135Aに対して再構成処理を施すことで、高さ位置Aにおける断層画像138Aを生成する。また、画像処理部113は、高さ位置Bにおいて得られた投影画像135Bに対して再構成処理を施すことで、高さ位置Bにおける断層画像138Bを生成する。画像処理部113は、第1重複撮影範囲OCR1に基づいて断層画像138Aおよび138Bを位置合わせすることで、断層画像138Aおよび138Bを合成し、最終的な診断用の断層画像138を生成する。この際、シグモイド関数を用いて、断層画像138Aおよび138Bが第1重複撮影範囲OCR1において滑らかに繋がれるように処理してもよい。
【0078】
図23における合成処理の詳細を示す
図24において、画像処理部113は、第1重複撮影範囲OCR1のうちで放射線Rの焦点軸FAにより近い部分を選択的に用いて、断層画像138Aおよび138Bを合成する。焦点軸FAとは、放射線Rの焦点から放射線検出器21の検出面58の中心点CSに引いた垂線である。焦点軸FAは、ここでは、照射野限定器56の照射開口の上端および下端を均等に開いた場合を示しているので、放射線Rの放射線束の中心軸RCAと同じである。したがって、焦点軸FAにより近い部分は、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPAと、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPBである。部分UHPAは、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPAと比べて、高さ位置Aにおける放射線Rの焦点軸FAに近い。また、部分LHPBは、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPBと比べて、高さ位置Bにおける放射線Rの焦点軸FAに近い。
【0079】
図24においては、照射野限定器56の照射開口の上端および下端を均等に開いた場合を示したが、これに限らない。一例として
図25に示すように、照射開口の下端に比べて上端を絞った場合も考えられる。この場合も
図24の場合と同様に、画像処理部113は、第1重複撮影範囲OCR1のうちで放射線Rの焦点軸FAにより近い部分である、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPAと、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPBを選択的に用いて、断層画像138Aおよび138Bを合成する。
【0080】
図24の場合は、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPAの幅と、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPBの幅は同じある。対して
図25の場合は、照射開口の上端を絞った分、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPAの幅は、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPBの幅よりも狭い。なお、図示は省略するが、
図25の場合とは逆に、照射開口の上端に比べて下端を絞った場合も、画像処理部113は、第1重複撮影範囲OCR1のうちで放射線Rの焦点軸FAにより近い部分である、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPAと、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPBを選択的に用いて、断層画像138Aおよび138Bを合成する。照射開口の上端に比べて下端を絞った場合は、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPBの幅が、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPAの幅よりも狭くなる。
【0081】
断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1の上半分の部分UHPAの幅W_UHPAは、高さ位置AおよびBにおける放射線源20の高さの差ΔHと、焦点軸FAと放射線Rの放射線束の上端および下端との距離のうちの短いほうの距離(
図25の場合は、焦点軸FAと放射線束の上端との距離)Dとを用いて、以下の式(1)により求めることができる。
W_UHPA=D-(ΔH/2)・・・(1)
このため、例えばD=149mm、ΔH=250mmであった場合、W_UHPA=24mmとなる。
【0082】
また、断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1の下半分の部分LHPBの幅W_LHPBは、放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WAと、差ΔHと、距離Dとを用いて、以下の式(2)により求めることができる。
W_LHPB=WA-D-(ΔH/2)・・・(2)
このため、例えばWA=430mm、D=149mm、ΔH=250mmであった場合、W_UHPA=156mmとなる。
【0083】
一例として
図26に示すように、放射線Rの放射線束の上端と焦点軸FAとを一致させ、放射線Rを下向きに照射した場合は、画像処理部113は、焦点軸FAから遠い断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1は用いずに、焦点軸FAにより近い断層画像138Bの第1重複撮影範囲OCR1を用いて、断層画像138Aおよび138Bを合成する。なお、図示は省略するが、放射線Rの放射線束の下端と焦点軸FAとを一致させ、放射線Rを上向きに照射した場合は、画像処理部113は、断層画像138Aの第1重複撮影範囲OCR1を用いて、断層画像138Aおよび138Bを合成する。
【0084】
図19で示した態様の場合は、図示は省略するが、画像処理部113は、高さ位置A~Cにおいて得られた投影画像135のそれぞれに対して再構成処理を施すことで、高さ位置A~Cにおける断層画像138を生成する。そして、第1重複撮影範囲OCR1に基づいて高さ位置A~Cにおける断層画像138を位置合わせすることで、高さ位置A~Cにおける断層画像138を合成する。
【0085】
一方、一例として
図27に示すように、
図20で示した態様の場合、画像処理部113は、高さ位置Aにおいて得られた投影画像135Aに対して再構成処理を施すことで、最終的な診断用の断層画像138を生成する。
【0086】
次に、CT装置10による撮影手順について、一例として
図28および
図29に示すフローチャートを参照して説明する。まず、オペレータにより装置本体11内に被写体Sが誘導される(ステップST100)。そして、撮影制御部112の制御の下でフレーム昇降機構35が動作され、撮影メニュー116に応じた高さ位置にフレーム18が移動される(ステップST110)。その後、オペレータにより被写体Sがポジショニングされる(ステップST120)。
【0087】
装置本体11内にポジショニングされた被写体Sは、カメラ26により撮影される。これにより得られたカメラ画像121は、カメラ26から表示制御部114に送信される。そして、
図11等で示したように、表示制御部114の制御の下、カメラ画像121を含むカメラ画像表示画面120がディスプレイ98等に表示される。カメラ画像121、およびカメラ画像121に重畳表示された撮影範囲CRを参考に、オペレータによってフレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切か否かが判断される。フレーム18の高さ位置および被写体Sのポジショニングが撮影に適切でなかった場合は、オペレータによってフレーム18の高さ位置が調整されたり、被写体Sのポジショニングがし直されたりする。また、撮影範囲CRの上端および下端を示すバー124Aおよび124Bがオペレータにより移動操作されたりする。なお、バー124Aおよび124Bの移動操作に連動して、フレーム昇降機構35によりフレーム18の高さ位置が変更されてもよい。
【0088】
カメラ画像表示画面120の決定ボタン123が選択された場合、そのときのバー124Aおよび124Bの高さ位置を示す撮影範囲情報128が受付部110において受け付けられる。これにより撮影範囲CRの指定が受け付けられる(ステップST130)。
【0089】
ここで、
図13および
図14で示したように、指定を受け付けた撮影範囲CRの上端(バー124A)が上限ULを超えている場合、および、指定を受け付けた撮影範囲CRの下端(バー124B)が下限LLを超えている場合は、表示制御部114の制御の下、警告画面130Aおよび130Bがディスプレイ98等に表示される。
【0090】
図15で示したように、指定を受け付けた撮影範囲CRが放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WAを超える場合、撮影制御部112により、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、2箇所以上の高さ位置(高さ位置AおよびB等)が設定される(ステップST140)。一方、
図16で示したように、指定を受け付けた撮影範囲CRが放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WA以内であった場合、撮影制御部112により、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、1箇所の高さ位置(高さ位置A)が設定される(ステップST140)。
【0091】
撮影範囲CRの指定後、オペレータは照射スイッチを通じて撮影指示を入力する。撮影指示は受付部110で受け付けられる(ステップST150でYES)。これにより放射線源20および放射線検出器21による撮影が行われる。
【0092】
撮影においては、
図21および
図22で示したように、撮影制御部112の制御の下で回転機構45が動作され、フレーム18が回転される。その間に、撮影制御部112の制御の下で、放射線源20から放射線Rが連続的に照射され、その都度放射線検出器21から投影画像135が出力される。こうしたコンベンショナルスキャンが、設定された高さ位置にて行われる(ステップST160)。
【0093】
設定された高さ位置が2箇所以上で、設定された全ての高さ位置でのコンベンショナルスキャンが終了しないうち(ステップST170でNO)は、撮影制御部112の制御の下でフレーム昇降機構35が動作され、次の高さ位置に放射線源20および放射線検出器21が移動された後(ステップST180)、再びコンベンショナルスキャンが行われる(ステップST160)。この際、前の高さ位置におけるコンベンショナルスキャンとは逆の回転方向に放射線源20および放射線検出器21が回転される。
【0094】
設定された全ての高さ位置でのコンベンショナルスキャンが終了した場合(ステップST170でYES)、
図23~
図27で示したように、画像処理部113において、得られた投影画像135から断層画像138が生成される(ステップST190)。そして、表示制御部114の制御の下で、断層画像138がディスプレイ98等に表示され、オペレータの閲覧に供される(ステップST190)。
【0095】
以上説明したように、CT装置10は、放射線源20と、放射線検出器21と、回転機構45と、フレーム昇降機構35と、CPU97とを備える。放射線源20は、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体Sに向けて四角錐状の放射線Rを発する。放射線検出器21は、被写体Sを透過した放射線Rを検出する複数の画素57が2次元状に配列され、被写体Sの投影画像135を出力する。回転機構45は、放射線源20および放射線検出器21を被写体Sの体軸周りに回転させる。フレーム昇降機構35は、放射線源20および放射線検出器21を回転軸方向RADに沿って昇降させる。
【0096】
撮影制御部112は、被写体Sと放射線源20および放射線検出器21との回転軸方向RADにおける位置関係を変えることなく、回転機構45により放射線源20および放射線検出器21を回転させ、放射線源20および放射線検出器21が予め設定された設定角度回転する毎に、放射線Rを放射線源20から照射させ、投影画像135を放射線検出器21から出力させるコンベンショナルスキャンを、回転軸方向RADに沿う複数の高さ位置において行う。画像処理部113は、複数の高さ位置において得られた投影画像135に基づいて断層画像138を生成する。
【0097】
本開示の技術においては、被写体の体軸方向のより広い範囲を撮影する場合に、被写体Sは移動しない。このため、臥位姿勢と比べて不安定な立位姿勢または座位姿勢の被写体Sがふらついたりして、被写体Sに体動が発生するおそれを低減することができる。結果として、断層画像138の画質劣化が起こる可能性を低くすることができる。また、コンベンショナルスキャンは、被写体Sと放射線源20および放射線検出器21との回転軸方向RADにおける位置関係を変えることなく行うので、ヘリカルスキャンと比べて動作制御か簡易である。したがって、本開示の技術によれば、被写体Sに体動が発生するおそれを低減しつつ、簡易な動作制御で被写体Sの体軸方向のより広い範囲の断層画像138を得ることが可能となる。
【0098】
図7で示したように、放射線源20は四角錐状の放射線Rを照射し、放射線検出器21は、放射線Rを検出する複数の画素57が2次元状に配列された構成である。このため、放射線源から扇状の放射線Rを照射し、画素が1次元状に配列された放射線検出器で放射線Rを検出する従来のCT装置と比べて、撮影を短時間で済ませることができる。なお、四角錐状に代えて、円錐状の放射線Rを照射してもよい。
【0099】
図1、
図2、および
図4で示したように、被写体Sは、立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされる。このため、重力が掛かった自然な状態の肺等の軟組織を観察したい、あるいは重力が掛かって負荷が加えられた状態の股関節等の関節を観察したい、という要望に応えることができる。
【0100】
図17~
図19で示したように、撮影制御部112は、高さ位置を、隣り合う高さ位置で得られる投影画像135同士に第1重複撮影範囲OCR1が生じる設定とする。
図23で示したように、画像処理部113は、複数の高さ位置において得られた投影画像135から、複数の高さ位置毎の複数の断層画像138を生成する。そして、第1重複撮影範囲OCR1に基づいて複数の断層画像138を位置合わせすることで、複数の断層画像138を合成する。このため、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅WAを超える撮影範囲CRをカバーした断層画像138の撮影が可能となる。なお、第1重複撮影範囲OCR1に基づいて複数の高さ位置毎の複数の投影画像135を位置合わせすることで合成した後、合成後の投影画像135に対して再構成処理を施すことで断層画像138を生成してもよい。
【0101】
図24および
図25で示したように、画像処理部113は、第1重複撮影範囲OCR1のうちで放射線Rの焦点軸FAにより近い部分(部分UHPAおよびLHPB)を選択的に用いて、複数の断層画像138を合成する。焦点軸FAにより近い部分は、焦点軸FAからより遠い部分(部分LHPAおよびUHPB)と比べて画質がよい。このため、比較的画質がよい焦点軸FAにより近い部分を選択的に用いて、複数の断層画像138を合成すれば、より良好な画質の断層画像138を得ることができる。
【0102】
図21で示したように、撮影制御部112は、隣り合う高さ位置における放射線源20および放射線検出器21の回転方向を逆にする。このため、360°以上の回転を許容するスリップリングといった特殊な機構を設けずに済み、装置構成をシンプルにすることができる。
【0103】
なお、回転方向を逆にしたことで発生するバックラッシュ量を、CT装置10の出荷時等に回転用モータ47に与えた駆動値と実際の回転量との差に基づいて予め測定しておき、測定したバックラッシュ量に応じた回転制御を行ってもよい。例えばバックラッシュ量が1.5°であった場合は、回転方向を逆にしたときに1.5°分余計に回転するよう回転用モータ47に与える駆動値を補正する。この補正は、回転方向を逆にしたときにだけ行えばよい。
【0104】
図12で示したように、受付部110は、回転軸方向RADに沿う撮影範囲CRの指定を受け付ける。
図17~
図19で示したように、撮影制御部112は、フレーム昇降機構35により、指定を受け付けた撮影範囲CRに応じた高さ位置に、放射線源20および放射線検出器21を合わせる。このため、オペレータが意図した撮影範囲CRの断層画像138を得ることができる。
【0105】
図20および
図22で示したように、撮影制御部112は、指定を受け付けた撮影範囲CRが放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅WA以内であった場合、指定を受け付けた撮影範囲CRに応じた1箇所の高さ位置においてコンベンショナルスキャンを1回だけ行う。このため、幅WAを超える撮影範囲CRの断層画像138だけでなく、幅WA以内の撮影範囲CRの断層画像138も得ることができる。
【0106】
図1等で示したように、CT装置10は、被写体Sを撮影するカメラ26を備える。
図11等で示したように、表示制御部114は、カメラ26から得られたカメラ画像121に、撮影範囲CRの上端および下端を示すバー124Aおよび124Bを重畳表示する制御を行う。受付部110は、バー124Aおよび124Bの移動操作によって撮影範囲CRの指定を受け付ける。このため、オペレータは、カメラ画像121に写る被写体Sを見ながら、容易に撮影範囲CRを指定することができる。なお、撮影範囲CRの右端および左端を示すバーをカメラ画像121に重畳表示し、当該バーの移動操作によって撮影範囲CRの回転軸方向RADと直交する方向の幅を変更可能に構成してもよい。
【0107】
図13および
図14で示したように、表示制御部114は、指定を受け付けた撮影範囲CRの上端(バー124A)が上限ULを超えている場合、および、指定を受け付けた撮影範囲CRの下端(バー124B)が下限LLを超えている場合に、警告画面130Aおよび130Bをディスプレイ98等に表示する制御を行う。このため、撮影範囲CRの上端が上限ULを超えた状態で撮影が行われたり、撮影範囲CRの下端が下限LLを超えた状態で撮影が行われたりすることを避けることができる。
【0108】
ここで、
図30に示すように、放射線検出器21が基準位置に配されていた場合は、360°の回転でスキャンする領域が変わらないため、有効視野sFOV(Scan Field Of View)は、ハッチングで示すように比較的小さい領域に留まる。対して
図31に示すように、放射線検出器21がオフセット位置に配されていた場合は、360°の回転でスキャンする領域が変わるため、有効視野sFOVは、ハッチングで示すように比較的大きい領域となる。したがって、
図9で示したように、回転軸方向RADから見た場合、放射線検出器21を、放射線源20と正対する基準位置から予め設定された角度分異なったオフセット位置に配することで、放射線検出器21を基準位置に配する場合と比べて、有効視野sFOVを広くすることができる。なお、
図30の放射線検出器21を基準位置に配した場合の回転角度は、180°(厳密には180°+θ)である。
【0109】
放射線源20および放射線検出器21はフレーム18に保持されており、フレーム18内に被写体Sがポジショニングされる。
図8で示したように、回転軸方向RADから見た場合、放射線源20はフレーム18の外側に配され、放射線検出器21はフレーム18の内側に配されている。有効視野sFOVは、放射線源20が被写体Sから離れる程、かつ、放射線検出器21が被写体Sに近付く程、大きくなる。このため、被写体Sがポジショニングされるフレーム18の外側に放射線源20を配し、内側に放射線検出器21を配せば、有効視野sFOVを広くすることができる。
【0110】
[第2実施形態]
一例として
図32および
図33に示すように、第2実施形態においては、撮影ユニット145Aおよび撮影ユニット145Bの2つの撮影ユニットを設ける。撮影ユニット145Aは放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの組で構成され、撮影ユニット145Bは放射線源20Bおよび放射線検出器21Bの組で構成される。放射線源20Aは、上記第1実施形態の放射線源20と同じく、0°の位置に配されている。放射線源20Bは、放射線源20Aと角度φ隔たった位置に配されている。放射線検出器21Aおよび21Bは、この放射線源20Aおよび20Bの配置位置にしたがった位置に配されている。このため、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bとは、回転方向の位相が異なっている。なお、φは、本例においては90°である。また、放射線検出器21Aおよび21Bのいずれも、
図9で示したオフセット位置に配されている。
【0111】
放射線源20Aから照射される放射線RAの放射線束の中心軸RCAAは、放射線検出器21Aの検出面58の中心点CSAと垂直に交わる。また、放射線源20Bから照射される放射線RBの放射線束の中心軸RCABは、放射線検出器21Bの検出面58の中心点CSBと垂直に交わる。
【0112】
放射線源20Aは、アタッチメント60Aによってフレーム18に取り付けられている。同様に、放射線検出器21Aは、アタッチメント61Aによってフレーム18に取り付けられている。また、放射線源20Bは、アタッチメント60Bによってフレーム18に取り付けられ、放射線検出器21Bは、アタッチメント61Bによってフレーム18に取り付けられている。このため撮影ユニット145Aおよび撮影ユニット145Bは、その位置関係を維持したまま、回転機構45により一緒に同じ回転方向を回転される。
【0113】
一例として
図34に示すように、放射線源20Bは、線源昇降機構150により回転軸方向RADに昇降される。線源昇降機構150は、ガイドレール151、および線源昇降用モータ152等で構成される。ガイドレール151は、アタッチメント60Bからフレーム18の外側に向かって延びた第1部分151Aと、第1部分151Aから直角に折れ曲がり、回転軸方向RADに沿って下に延びた第2部分151Bとで構成される。第2部分151Bは、一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さを有する。ここで、「一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さ」とは、人種や個人差はあるものの、200cmを身長の最大値と考えた場合、例えば、100cm程度度の長さである。このように、第2部分151Bの長さを「一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さ」に設定することにより、半身の全体を漏らさず撮影、診断することができる。撮影漏れによって再撮影を行う必要が生じ、撮影時間の長時間化および被写体Sの被曝量増大を招くおそれを低減することができる。被写体Sの半身ではなく全身を撮影する場合を考慮して、第2部分151Bの長さを、上記の100cm程度を超えた長さに設定してもよい。なお、
図34においては、煩雑を避けるため放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの図示を省略している。
【0114】
放射線源20Bは第2部分151Bに取り付けられている。放射線源20Bの上昇は、第1部分151Aにより規制される。また、第2部分151Bの下端にはストッパー153が設けられており、このストッパー153により放射線源20Bの下降が規制される。放射線源20Bは、第1部分151Aによって決まる上端位置と、ストッパー153によって決まる下端位置との間で昇降可能である。
【0115】
線源昇降用モータ152は、回転駆動することで、放射線源20Bを第2部分151Bに沿って移動させる。放射線源20Bの高さ位置は、線源昇降用モータ152の回転向きおよび回転数から割り出される。
【0116】
放射線検出器21Bは、検出器昇降機構160により回転軸方向RADに昇降される。検出器昇降機構160は、ガイドレール161、および検出器昇降用モータ162等で構成される。ガイドレール161は、アタッチメント61Bから真っ直ぐ回転軸方向RADに沿って下に延びている。ガイドレール161は、ガイドレール151の第2部分151Bと同じく、一般的な成人男性の半身をカバー可能な長さを有する。
【0117】
ガイドレール161には昇降ボックス163が取り付けられている。昇降ボックス163には検出器昇降用モータ162が内蔵されている。昇降ボックス163には、アーム164を介して放射線検出器21Bが取り付けられている。アーム164は、昇降ボックス163の中心部分からフレーム18の内側に向かって延びた細長の棒である。
【0118】
ガイドレール161の上端および下端には、ストッパー165および166が設けられている。ストッパー165により放射線検出器21Bの上昇が規制され、ストッパー166により放射線検出器21Bの下降が規制される。放射線検出器21Bは、ストッパー165によって決まる上端位置と、ストッパー166によって決まる下端位置との間で昇降可能である。放射線検出器21Bの上端位置および下端位置は、放射線源20Bの上端位置および下端位置に対応する。
【0119】
検出器昇降用モータ162は、線源昇降用モータ152に連動して回転駆動することで、昇降ボックス163、ひいては放射線検出器21Bをガイドレール161に沿って移動させる。放射線検出器21Bの高さ位置は、検出器昇降用モータ162の回転向きおよび回転数から割り出される。
【0120】
図34において図示省略した放射線源20Aおよび放射線検出器21Aには、線源昇降機構150および検出器昇降機構160は設けられていない。したがって放射線源20Aおよび放射線検出器21Aは回転軸方向RADに昇降しない。放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの高さ位置は、上端位置に固定されている(
図35および
図36参照)。
【0121】
放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの高さ位置が上端位置に固定されている一方で、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bの高さ位置は、線源昇降機構150および検出器昇降機構160により変化する。つまり、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bの回転軸方向RADの間隔が変化する。このため、第2実施形態においては、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に広げて撮影したり、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に狭めて撮影したりすることが可能である。線源昇降機構150および検出器昇降機構160は、本開示の技術に係る「変位機構」の一例である。
【0122】
一例として
図35に示すように、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bが下端位置にあるとき、放射線RAの放射線束の下端RALEと放射線RBの放射線束の上端RBUEとが一致する。換言すれば、本例における上端位置と下端位置は、放射線RAの放射線束の下端RALEと放射線RBの放射線束の上端RBUEとが一致する位置である。この場合の撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bを合わせた撮影範囲CRABは、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADにおける幅WAの約1.5倍の幅の範囲である。つまり、撮影範囲CRABは幅WAを超える範囲である。
【0123】
符号OCR2で示すように、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bとは、撮影範囲CRABが一部重複している。撮影制御部112は、この第2の重複する撮影範囲(以下、第2重複撮影範囲と表記)OCR2を確保可能な位置に、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bを配する。つまり、撮影制御部112は、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bの回転軸方向RADの間隔を、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bで得られる投影画像135AAおよび135BB(ともに
図37参照)同士に第2重複撮影範囲OCR2が生じる設定とする。なお、
図35の場合の第2重複撮影範囲OCR2は、
図17で示した第1重複撮影範囲OCR1と同じく、例えば10mm~30mmである。
【0124】
一例として
図36に示すように、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bが上端位置にあるとき、放射線RAの放射線束および放射線RBの放射線束が一致する。この場合の撮影範囲CRABは、1つの放射線検出器21の検出面58の回転軸方向RADの幅WAと一致する範囲である。つまり、撮影範囲CRABは幅WA以内の範囲である。
【0125】
図35で示した態様は、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に広げた撮影の一例である。対して
図36で示した態様は、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に狭めた撮影の一例である。
【0126】
図35で示した態様の場合、放射線源20Aおよび20Bは、上記第1実施形態の
図21で示した場合と同じく、0°を回転開始位置および回転終了位置として、角度間隔2.4°置きに放射線RAおよびRBを照射する。放射線検出器21Aおよび21Bも、角度間隔2.4°置きに投影画像135AAおよび135BBを出力する。なお、回転終了位置は、厳密には0°から反時計回り方向CCWにθの角度をなす位置である。
【0127】
一方、
図36で示した態様の場合、放射線源20Aおよび20Bは、0°を回転開始位置、268.8°を回転終了位置として、角度間隔2.4°置きに放射線RAおよびRBを照射する。放射線検出器21Aおよび21Bも、角度間隔2.4°置きに投影画像135AAおよび135BBを出力する。なお、回転終了位置は、厳密には268.8°から反時計回り方向CCWにθの角度をなす位置である。
【0128】
図36で示した態様の場合、撮影ユニット145Aおよび145Bの高さ位置が同じ上端位置に揃えられる。また、
図32で示したように、放射線源20Aおよび20Bは90°の角度隔たった位置に配されている。このため、フレーム18を約270°回転させれば、360°の角度範囲をカバーしたことになる。
【0129】
図36で示した態様の場合、撮影ユニット145Aは0°~268.8°の角度範囲の撮影を担い、撮影ユニット145Bは90°~358.8°の角度範囲の撮影を担う。つまり、被写体Sの体軸周りの全周の撮影が、撮影ユニット145Aおよび145Bで分担して行われる。撮影ユニット145Aおよび145Bで重複する角度範囲、ここでは90°~268.8°の角度範囲で得られた投影画像135は、断層画像138の生成には用いられずに破棄されるものもある。なお、撮影ユニット145Aおよび145Bで重複する角度範囲で得られた投影画像135を、投影画像135の撮影タイミングの精度確認に用いてもよい。
【0130】
図37は、第2実施形態における放射線源20Aおよび20Bの放射線Rの照射タイミング、並びに放射線検出器21Aおよび21Bの投影画像135の読み出しタイミングを示すタイミングチャートの一例である。なお、
図37においては、放射線源20Aを「放射線源A」、放射線検出器21Aを「放射線検出器A」、放射線源20Bを「放射線源B」、放射線検出器21Bを「放射線検出器B」とそれぞれ表記している。
【0131】
図37に示すように、撮影制御部112は、上記第1実施形態と同様に、撮影に先立って、放射線検出器21Aおよび21Bに不要電荷を掃き出す読み出し動作を行わせる。
【0132】
放射線検出器21Aおよび21Bに不要電荷を掃き出す読み出し動作を行わせた後、撮影制御部112は、放射線源20Aおよび20Bから放射線RAおよびRBを同時に照射させる。また、撮影制御部112は、放射線検出器21Aおよび21Bに蓄積動作を行わせる。続いて撮影制御部112は、放射線検出器21Aおよび21Bに読み出し動作を行わせ、放射線検出器21Aおよび21Bから、放射線RAに基づく投影画像135AA、および放射線RBに基づく投影画像135BBを出力させる。撮影制御部112は、これらの放射線RAおよびRBの照射と、投影画像135AAおよび135BBの出力とを、撮影ユニット145Bおよび145Bに、2.4°毎に繰り返し行わせる。なお、「同時」とは、完全な同時の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの同時を指す。
【0133】
一例として
図38に示すように、
図35で示した態様の場合、画像処理部113は、撮影ユニット145Aで得られた上端位置における複数の投影画像135AAに対して再構成処理を施すことで、上端位置における断層画像138AAを生成する。また、画像処理部113は、撮影ユニット145Bで得られた下端位置における複数の投影画像135BBに対して再構成処理を施すことで、下端位置における断層画像138BBを生成する。画像処理部113は、第2重複撮影範囲OCR2に基づいて断層画像138AAおよび138BBを位置合わせすることで、断層画像138AAおよび138BBを合成し、最終的な診断用の断層画像138を生成する。この際、断層画像138Aおよび138Bを合成する際と同様に、シグモイド関数を用いて、断層画像138AAおよび138BBが第2重複撮影範囲OCR2において滑らかに繋がれるように処理してもよい。
【0134】
撮影制御部112により、放射線源20および放射線検出器21の撮影時の高さ位置として、2箇所以上の高さ位置が設定された場合は、画像処理部113は、さらに
図39に示す処理を行う。
図39は、撮影制御部112により2箇所の高さ位置AおよびBが設定された場合を示す。この場合、画像処理部113は、第1重複撮影範囲OCR1に基づいて断層画像138AAAおよび138BBBを位置合わせすることで、断層画像138AAAおよび138BBBを合成し、最終的な診断用の断層画像138を生成する。ここで、断層画像138AAAは、
図38で示した手順で、高さ位置Aにおいて撮影ユニット145Aおよび撮影ユニット145Bで得られた投影画像135AAおよび135BBに基づいて生成された断層画像138である。また、断層画像138BBBは、これも
図38で示した手順で、高さ位置Bにおいて撮影ユニット145Aおよび撮影ユニット145Bで得られた投影画像135AAおよび135BBに基づいて生成された断層画像138である。
【0135】
図36で示した態様の場合、画像処理部113は、0°~268.8°の角度範囲については、撮影ユニット145Aで得られた投影画像135AAを用い、90°~358.8°の角度範囲については、撮影ユニット145Bで得られた投影画像135BBを用いて、最終的な診断用の断層画像138を生成する。
【0136】
このように、第2実施形態においては、放射線源20Aおよび放射線検出器21Aの組で構成される撮影ユニット145Aと、放射線源20Bおよび放射線検出器21Bの組で構成される撮影ユニット145Bとを備え、撮影ユニット145Aと撮影ユニット145Bの回転方向の位相を異ならせている。このため、
図36で示した態様のように、360°未満の回転で被写体Sの体軸周りの全周の撮影を完了させることができる。したがって、放射線源20および放射線検出器21の組が1つの上記第1実施形態と比べて、撮影をより短時間で済ませることができる。
【0137】
また、第2実施形態においては、
図34で示したように、撮影ユニット145Aおよび145Bの回転軸方向RADの間隔を変化させる変位機構としての線源昇降機構150および検出器昇降機構160を備えている。このため、
図35で示した撮影ユニット145Aおよび145Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に広げた撮影と、
図36で示した間隔を相対的に狭めた撮影とを、1台のCT装置10でスムーズに行うことができる。間隔を相対的に広げた撮影と、間隔を相対的に狭めた撮影とを別の装置で行う場合と比べて、被写体Sの負担が軽減される。また、間隔を相対的に広げた撮影と、間隔を相対的に狭めた撮影とで、被写体Sのポジショニングの再現性を確保することができる。
【0138】
撮影ユニット145Aおよび145Bの回転軸方向RADの間隔を相対的に広げて撮影することで、放射線源20および放射線検出器21の組が1つだけの上記第1実施形態の構成と比べて、1箇所の高さ位置における撮影範囲を広げることができる。このため、例えば、上記第1実施形態の構成では4箇所の高さ位置でコンベンショナルスキャンを行う必要がある撮影範囲CRであっても、本第2実施形態の構成では半分の2箇所の高さ位置のコンベンショナルスキャンで済む等、放射線源20および放射線検出器21の移動回数およびコンベンショナルスキャンの回数を減らすことができる。結果として撮影を短時間で済ませることができる。被写体Sの負担が軽減され、被写体Sの体動による断層画像138の画質劣化のおそれも低減される。
【0139】
また、
図35および
図37で示したように、撮影制御部112は、撮影ユニット145Aおよび145Bの回転を並行して行うことにより、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅WAを超える撮影範囲CRABを撮影する。この場合、撮影制御部112は、撮影ユニット145Aおよび145Bの回転軸方向RADの間隔を、撮影ユニット145Aおよび145Bで得られる投影画像135AAおよび投影画像135BB同士に第2重複撮影範囲OCR2が生じる設定とする。
図38で示したように、画像処理部113は、撮影ユニット145Aおよび145Bの各々から得られた投影画像135AAおよび135BBに対して再構成処理を施すことで、撮影ユニット145Aおよび145B毎の断層画像138AAおよび138BBを生成する。画像処理部113は、第2重複撮影範囲OCR2に基づいて断層画像138AAおよび138BBを位置合わせすることで、断層画像138AAおよび138BBを合成する。このため、放射線検出器21の放射線Rの検出面58の幅WAを超える撮影範囲CRABをカバーした断層画像138の撮影が可能となる。なお、第2重複撮影範囲OCR2に基づいて投影画像135AAおよび135BBを位置合わせすることで合成した後、合成後の投影画像135に対して再構成処理を施すことで断層画像138を生成してもよい。
【0140】
なお、放射線源20Aおよび20Bの配置位置の角度φは、例示の90°に限らない。一例として
図40に示すように、φを120°としてもよい。φを120°とすれば、
図36で示した態様におけるフレーム18の回転角度を約240°とすることができ、撮影をさらに短時間で済ませることができる。
【0141】
また、φを120°とすれば、放射線検出器21Bを、放射線RAの後方散乱線の影響を特に強く受ける領域BSAを避けた位置に配することができる。より詳しくは、角度φが90°であった場合は、破線で示すように放射線検出器21Bの端が領域BSAに入ってしまう。そうすると、本例においては放射線RAおよびRBを同時に照射しているため、放射線検出器21Bにより得られる投影画像135BBに、放射線RAの後方散乱線による成分がノイズとして乗ってしまう。しかし、φを120°とすれば、放射線検出器21Bにより得られる投影画像135BBに、放射線RAの後方散乱線による成分がノイズとして乗ってしまうおそれを低減することができる。ここでいう後方散乱線とは、放射線源20および放射線検出器21の配置に起因する散乱線である。ただし、領域BSAを避けた位置に放射線検出器21Bを配することで、被写体Sに起因する散乱線の影響も低減することができる。
【0142】
なお、放射線検出器21の前にグリッドを設ける等して、散乱線の影響を軽減してもよい。あるいは、例えば特許第6006193号に記載されるような、グリッドを実際には用いずに、グリッドを用いた場合と同等の画質改善の効果を、画像処理によって達成する技術を適用してもよい。
【0143】
角度φには上限が存在する。例えば
図41に示す角度φが125°の場合のように、放射線検出器21Bの端が撮影ユニット145Aにより得られる投影画像135AAに写り込んでしまってはいけない。このため、角度φは、90°以上、かつ、放射線検出器21Bの端が撮影ユニット145Aにより得られる投影画像135AAに写り込む限界の角度以下であることが好ましい。
【0144】
放射線検出器21のサイズを小さくすれば、角度φを大きくしても、
図41のように放射線検出器21が投影画像135に写り込むことは避けられる。ただし、放射線検出器21のサイズを小さくした分、有効視野sFOVは小さくなる。また、放射線検出器21の回転半径を大きくすれば、角度φを大きくすることができる。ただし、放射線検出器21が被写体Sから離れるために、この場合も有効視野sFOVは小さくなる。このため、放射線源20の回転半径と、放射線検出器21の回転半径との比を2:1(例えば放射線源20の回転半径=800mm、放射線検出器21の回転半径=400mm)程度として、比較的広い有効視野sFOVを確保することが好ましい。
【0145】
あるいは、フレーム18を大きくしてSIDを長くとれば、放射線検出器21を被写体Sから離すことなく、角度φを大きくすることができる。ただし、大型化して重くなったフレーム18に合わせて高出力の回転用モータ47を用意したり、支柱14を太くして剛性を高めたりする必要がある。また、SIDが長くなる分、放射線Rのパワーも上げる必要がある。これらのことから、やはり角度φは本例のように90°~120°程度であることが好ましい。
【0146】
撮影ユニット145Aを上端位置に固定としたが、これに限らない。撮影ユニット145Aにも線源昇降機構および検出器昇降機構を設け、撮影ユニット145Aを回転軸方向RADに昇降可能としてもよい。
【0147】
撮影ユニットの数は例示の2つに限らない。例えば3つの撮影ユニットを120°間隔で設けてもよい。撮影ユニットの数を増やせば、撮影ユニットの高さ位置を同じ位置に揃える
図36で示したような態様の場合の回転角度をさらに減じることができ、撮影をさらに短時間で済ませることができる。
【0148】
[第3実施形態]
第3実施形態においては、一例として
図42に示す放射線検出器170を用いる。放射線検出器170は、回転軸方向RADと直交する方向に沿って、放射線Rの検出部171が2つ並べられた構成である。ここで検出部171は、前述のシンチレータおよびTFT基板により構成される。
【0149】
放射線検出器170を用いる場合は、放射線源20と正対する基準位置に放射線検出器170を配置する。そして、フレーム18を180°+θ回転させ、予め設定された設定角度毎に放射線源20から放射線Rを照射させ、放射線検出器170から投影画像135を出力させる。あるいは、より高画質な断層画像138を得るために、フレーム18を360°+θ回転させ、予め設定された設定角度毎に放射線源20から放射線Rを照射させ、放射線検出器170から投影画像135を出力させる。
【0150】
このように、第3実施形態においては、回転軸方向RADと直交する方向に沿って、放射線Rの検出部171が複数並べられた構成の放射線検出器170を用いる。このため、回転軸方向RADと直交する方向のより広い範囲を一度に撮影することができる。なお、放射線検出器170をオフセット位置に配してもよい。
【0151】
なお、画像処理部113において、投影画像135に対して再構成処理を施すことで断層画像138を生成するに際して、トータルバリエーション(TV:Total Variation)正則化といった圧縮センシングの手法を用いてもよい。圧縮センシングは、データ量が不足した測定データから高精度な信号復元を行う逆問題を解く手法である。測定データとは、ここでは投影画像135であり、信号復元後のデータとは、ここでは断層画像138である。また、データ量が不足とは、ここでは放射線Rの線量が低い場合、および/または、投影画像135の枚数が少ない場合である。
【0152】
このように再構成処理において圧縮センシングの手法を用いれば、圧縮センシングの手法を用いない場合と比べて、放射線Rの線量を低くしたり、投影画像135の枚数を少なくしたりすることができる。したがって、被写体Sの被曝量を低減することができ、また、撮影をさらに短時間で済ませることができる。
【0153】
放射線源20および放射線検出器21をフレーム18の周方向に沿って移動させる機構を設け、放射線源20および放射線検出器21の配置位置を変更可能に構成してもよい。こうすれば、装置本体11内への被写体Sの誘導の邪魔になる放射線源20および放射線検出器21を、邪魔にならない位置に退避させるといったことができる。
【0154】
上記第1実施形態では、カメラ画像121に重畳表示されたバー124Aおよび124Bの移動操作によって撮影範囲CRの指定を受け付けているが、これに限らない。コンベンショナルスキャンによる本撮影に先立って、低線量の放射線Rによるスカウト撮影を行い、スカウト撮影により得られた投影画像135をディスプレイ98等に表示し、投影画像135上で撮影範囲CRの指定を受け付けてもよい。放射線検出器21を
図9で示したようにオフセット位置に配した場合は、例えば90°および270°の2箇所の回転位置においてスカウト撮影を行い、これにより得られた2枚の投影画像135の合成画像上で撮影範囲CRの指定を受け付ける。放射線検出器21を基準位置に配した場合は、例えば90°の1箇所の回転位置においてのみスカウト撮影を行い、これにより得られた1枚の投影画像135上で撮影範囲CRの指定を受け付ける。また、撮影範囲CRの上端および下端を示す光を発するレーザー等の表示器を設け、表示器の移動操作によって撮影範囲CRの指定を受け付けてもよい。
【0155】
支柱14は4本でもよいし5本でもよい。また、回転用モータ47をステッピングモータとして、回転用モータ47に与えるパルス数によってフレーム18の回転位置を割り出してもよい。また、フレーム18は円環に限らず、多角環でもよい。
【0156】
制御装置12を構成するコンピュータのハードウェア構成は種々の変形が可能である。例えば、制御装置12を、処理能力および信頼性の向上を目的として、ハードウェアとして分離された複数台のコンピュータで構成することも可能である。例えば、受付部110、RW制御部111、および表示制御部114の機能と、撮影制御部112および画像処理部113の機能とを、2台のコンピュータに分散して担わせる。この場合は2台のコンピュータで制御装置12を構成する。
【0157】
このように、制御装置12のコンピュータのハードウェア構成は、処理能力、安全性、信頼性等の要求される性能に応じて適宜変更することができる。さらに、ハードウェアに限らず、作動プログラム105といったアプリケーションプログラムについても、安全性および信頼性の確保を目的として、二重化したり、あるいは、複数のストレージに分散して格納することももちろん可能である。
【0158】
上記各実施形態において、例えば、受付部110、RW制御部111、撮影制御部112、画像処理部113、および表示制御部114といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、ソフトウェア(作動プログラム105)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU97に加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、および/またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0159】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0160】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0161】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0162】
以上の記載から、下記の付記項に記載の技術を把握することができる。
【0163】
[付記項1]
立位姿勢および座位姿勢のうちのいずれかの姿勢でポジショニングされた被写体に向けて錐状の放射線を発する放射線源と、
前記被写体を透過した前記放射線を検出する複数の画素が2次元状に配列され、前記被写体の投影画像を出力する放射線検出器と、
前記放射線源および前記放射線検出器を前記被写体の体軸周りに回転させる回転機構と、
前記放射線源および前記放射線検出器を回転軸方向に沿って昇降させる昇降機構と、
前記放射線源、前記放射線検出器、前記回転機構、および前記昇降機構の動作を制御するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記被写体と前記放射線源および前記放射線検出器との前記回転軸方向における位置関係を変えることなく、前記回転機構により前記放射線源および前記放射線検出器を回転させ、前記放射線源および前記放射線検出器が予め設定された設定角度回転する毎に、前記放射線を前記放射線源から照射させ、前記投影画像を前記放射線検出器から出力させるコンベンショナルスキャンを、前記回転軸方向に沿う複数の高さ位置において行い、
複数の前記高さ位置において得られた前記投影画像に基づいて断層画像を生成する、
コンピュータ断層撮影装置。
[付記項2]
前記プロセッサは、
前記高さ位置を、隣り合う前記高さ位置で得られる前記投影画像同士に第1の重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記高さ位置において得られた前記投影画像から、複数の前記高さ位置毎の複数の前記断層画像を生成し、
前記第1の重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する付記項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項3]
前記プロセッサは、
前記第1の重複する撮影範囲のうちで前記放射線の焦点軸により近い部分を選択的に用いて、複数の前記断層画像を合成する付記項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項4]
前記プロセッサは、
隣り合う前記高さ位置における前記放射線源および前記放射線検出器の回転方向を異ならせる付記項1から付記項3のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項5]
前記プロセッサは、
前記回転軸方向に沿う撮影範囲の指定を受け付け、
前記昇降機構により、指定を受け付けた前記撮影範囲に応じた前記高さ位置に、前記放射線源および前記放射線検出器を合わせる付記項1から付記項4のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項6]
前記プロセッサは、
指定を受け付けた前記撮影範囲が前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅以内であった場合、指定を受け付けた前記撮影範囲に応じた1箇所の前記高さ位置において前記コンベンショナルスキャンを1回だけ行う付記項5に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項7]
前記被写体を撮影するカメラを備え、
前記プロセッサは、
前記カメラから得られたカメラ画像に、前記撮影範囲の上端および下端を示すバーを重畳表示する制御を行い、
前記バーの移動操作によって前記撮影範囲の指定を受け付ける付記項5または付記項6に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項8]
前記プロセッサは、
指定を受け付けた前記撮影範囲の上端が上限を超えている場合、および、指定を受け付けた前記撮影範囲の下端が下限を超えている場合に、警告を出力する制御を行う付記項5から付記項7のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項9]
前記放射線源および前記放射線検出器の組で構成される撮影ユニットであり、回転方向の位相が異なる撮影ユニットを複数備える付記項1から付記項8のいずれか1項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項10]
複数の前記撮影ユニットの前記回転軸方向の間隔を変化させる変位機構を備える付記項9に記載のコンピュータ断層撮影装置。
[付記項11]
前記プロセッサは、
複数の前記撮影ユニットの回転を並行して行うことにより、前記放射線検出器の前記放射線の検出面の幅を超える撮影範囲を撮影する場合、前記間隔を、隣り合う前記撮影ユニットで得られる前記投影画像同士に第2の重複する撮影範囲が生じる設定とし、
複数の前記撮影ユニットの各々から得られた前記投影画像に基づいて、複数の前記撮影ユニット毎の複数の前記断層画像を生成し、
前記第2の重複する撮影範囲に基づいて複数の前記断層画像を位置合わせすることで、複数の前記断層画像を合成する付記項10に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【0164】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0165】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0166】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0167】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0168】
10 コンピュータ断層撮影装置(CT装置)
11 装置本体
12 制御装置
13 ステージ
14、14A~14C 支柱
15 天板
16 キャスター
17、17A~17C 接続部材
18 フレーム
20、20A、20B 放射線源
21、21A、21B、170 放射線検出器
22、22A~22C ねじ軸
24 可動アーム
25 タッチパネルディスプレイ
26 カメラ
32 車椅子
35 フレーム昇降機構
36 ナット
37 フレーム昇降用モータ
38 第1接続部
39 第2接続部
40 ベアリング
41 ガイド溝
45 回転機構
46 回転ベルト
47 回転用モータ
48 ポテンショメータ
49、50 プーリ
55 放射線管
56 照射野限定器
57 画素
58 検出面
60、60A、60B、61、61A、61B アタッチメント
62 ボルト
63 接合部
95 ストレージ
96 メモリ
97 CPU
98 ディスプレイ
99 入力デバイス
105 作動プログラム
106 照射条件テーブル
107 オーダー別照射条件情報
110 受付部
111 リードライト制御部(RW制御部)
112 撮影制御部
113 画像処理部
114 表示制御部
116 撮影メニュー
117 照射条件
120 カメラ画像表示画面
121 カメラ画像
122、131A、131B メッセージ
123 決定ボタン
124A、124B バー
128 撮影範囲情報
130A、130B 警告画面
132 OKボタン
135、135A、135AA、135B、135BB 投影画像
138、138A、138AA、138AAA、138B、138BB、138BBB 断層画像
145A、144B 撮影ユニット
150 線源昇降機構
151、161 ガイドレール
151A、151B 第1部分、第2部分
152 線源昇降用モータ
153、165、166 ストッパー
160 検出器昇降機構
162 検出器昇降用モータ
163 昇降ボックス
164 アーム
171 検出部
BSA 後方散乱線の影響を特に強く受ける領域
C フレームの中心(回転中心)
CCW 反時計回り方向
CR、CRAB 撮影範囲
CS、CSA、CSB 放射線検出器の検出面の中心点
CW 時計回り方向
FA 焦点軸
HDA 高精細描画領域
LHPA、LHPB 部分
LL 下限
OCR1 第1重複撮影範囲
OCR2 第2重複撮影範囲
R、RA、RB 放射線
RAD 回転軸方向
RALE、RLE 放射線の放射線束の下端
RBUE、RUE 放射線の放射線束の上端
RCA、RCAA、RCAB 放射線の放射線束の中心軸
RTA 回転軸
S 被写体
sFOV 有効視野
ST100、ST110、ST120、ST130、ST140、ST150、ST160、ST170、ST180、ST190 ステップ
UHPA、UHPB 部分
UL 上限
WA、WB 放射線検出器の検出面の幅
θ 放射線の放射角度
φ 放射線源の配置位置の角度