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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030071
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】鼻腔洗浄用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/14 20060101AFI20240229BHJP
   A61K 31/235 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240229BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61K31/14
A61K31/235
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/44
A61K47/26
A61P11/02
A61P31/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132629
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 貴史
(72)【発明者】
【氏名】稲木 萌翔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB25
4C076CC10
4C076CC31
4C076DD09F
4C076DD25
4C076EE23F
4C076EE58T
4C076EE58W
4C076FF43
4C076FF52
4C076FF56
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB17
4C206DB43
4C206FA41
4C206KA01
4C206KA14
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA79
4C206NA06
4C206NA08
4C206NA09
4C206ZA34
4C206ZB35
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、防腐剤及び炭酸水素ナトリウムを含有する鼻腔洗浄用組成物において、鼻腔粘膜に対する刺激を緩和する製剤処方を提供することである。
【解決手段】(A)防腐剤、(B)炭酸水素ナトリウム、及び(C)ミント系香料を含有する、鼻腔洗浄用組成物は、鼻腔粘膜に対する刺激が緩和されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)防腐剤、(B)炭酸水素ナトリウム、及び(C)ミント系香料を含有する、鼻腔洗浄用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が第四級アンモニウム及び/又はパラオキシ安息香酸エステルである、請求項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
【請求項3】
前記(C)成分がペパーミント油を含む、請求項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量が0.005~0.3重量%である、請求項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
【請求項5】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分が0.005~1重量部含まれる、請求項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
【請求項6】
さらに、(D)ノニオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防腐剤を含み、鼻腔粘膜に対する刺激が緩和されている鼻腔洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻腔粘膜は、直接外界に露出されており、外界からの刺激に対して敏感に反応する上皮組織である。鼻腔粘膜に、花粉、微生物、ハウスダスト等の異物が付着すると、耐え難い不快感を生じたり、アレルギー疾患や感染症等の各種疾患を発症したりすることが知られている。このような鼻腔粘膜症状を予防又は改善するには、鼻腔洗浄用組成物によって粘膜に付着した異物を除去することが有効になる。また、鼻腔粘膜は、皮膚等の他の上皮組織とは異なり、表皮に覆われていないため、鼻腔洗浄用組成物には、鼻腔粘膜に対する刺激性に配慮して処方することが必要とされている。
【0003】
鼻腔洗浄用組成物には、外出時に使用したり、繰り返し使用したりすることがあるため、防腐性能を有していることが求められている。そこで、従来、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤を配合した鼻腔洗浄用組成物の処方が種々報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、防腐剤には刺激性があることに鑑み、防腐剤による刺激を緩和できる処方検討として、パラオキシ安息香酸エステルを含有する鼻腔洗浄用組成物にノニオン性界面活性剤を含有する処方が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-92368号公報
【特許文献2】特開2022-094512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、鼻腔洗浄用組成物の抗菌効果を高めるために、第四級アンモニウム塩等の防腐剤を含む鼻腔洗浄用組成物において、炭酸水素ナトリウムを配合する処方を開発した。この処方を基本とし、さらに鼻腔粘膜に対する刺激を緩和できる製剤設計が可能となれば、鼻腔洗浄用組成物の有用性は更に高まる。
【0007】
そこで、本発明は、防腐剤及び炭酸水素ナトリウムを含有する鼻腔洗浄用組成物において、鼻腔粘膜に対する刺激を緩和する製剤処方を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、防腐剤及び炭酸水素ナトリウムを含有する鼻腔洗浄用組成物において、ミント系香料を配合すれば、鼻腔粘膜に対する刺激を効果的に緩和できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)防腐剤、(B)炭酸水素ナトリウム、及び(C)ミント系香料を含有する、鼻腔洗浄用組成物。
項2. 前記(A)成分が第四級アンモニウム及び/又はパラオキシ安息香酸エステルである、項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
項3. 前記(C)成分がペパーミント油を含む、項1又は2に記載の鼻腔洗浄用組成物。
項4. 前記(C)成分の含有量が0.005~0.3重量%である、項1~3のいずれかに記載の鼻腔洗浄用組成物。
項5. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分が0.005~1重量部含まれる、項1~4のいずれかに記載の鼻腔洗浄用組成物。
項6. さらに、(D)ノニオン性界面活性剤を含む、項1~5のいずれかに記載の鼻腔洗浄用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鼻腔粘膜に対する刺激が緩和された鼻腔洗浄用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、(A)防腐剤(以下において、「(A)成分」とも記載する。)、(B)炭酸水素ナトリウム(以下において、「(B)成分」とも記載する。)、及び(C)ミント系香料(以下において、「(C)成分」とも記載する。)を含有することを特徴とする。以下、本発明の鼻腔洗浄用組成物について詳述する。
【0012】
(A)防腐剤
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、(A)成分として防腐剤を含有する。本発明で使用される具体的な防腐剤としては特に制限されないが、例えば、第四級アンモニウム塩、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン酢酸塩、デヒドロ酢酸又はその塩、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、パラクロルメタキシレノール、クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0013】
第四級アンモニウム塩としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられ、より好ましくは塩化ベンザコニウムが挙げられる。これらの第四級アンモニウム塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
【0014】
パラオキシ安息香酸エステルは、パラオキシ安息香酸のアルキルエステル又はベンジルエステルである。パラオキシ安息香酸のアルキルエステルにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。パラオキシ安息香酸エステルとして、具体的には、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル等が挙げられ、好ましくはパラオキシ安息香酸メチルが挙げられる。
【0015】
これらの防腐剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらの防腐剤の中でも、鼻腔粘膜に対する刺激をより一層効果的に緩和する観点から、好ましくは第四級アンモニウム塩及びパラオキシ安息香酸エステルが挙げられ、より好ましくは第四級アンモニウム塩が挙げられ、さらに好ましくは塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0017】
本発明の鼻腔洗浄用組成物における(A)成分の含有量については、使用する防腐剤の種類及び/又は備えさせるべき抗菌性能、並びに/若しくは鼻腔洗浄用組成物の用時における希釈の要否及び当該希釈の倍率等に応じて適宜設定することができる。本発明の鼻腔洗浄用組成物の(A)成分の含有量としては、総量で0.0001~0.6重量%が挙げられ、鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果をより一層高める観点から、好ましくは0.0001~0.3重量%、より好ましくは0.0001~0.1重量%、さらに好ましくは0.0001~0.07重量%、0.0001~0.04重量%、又は0.0001~0.01重量%が挙げられる。特に、防腐剤として第四級アンモニウム塩を用いる場合、第四級アンモニウム塩の含有量としては、上記観点から、好ましくは0.0001~0.1重量%、より好ましくは0.0001~0.07重量%、さらに好ましくは0.0001~0.04重量%、一層好ましくは0.0001~0.01重量%が挙げられ、防腐剤としてパラオキシ安息香酸を用いる場合、パラオキシ安息香酸の含有量としては、上記観点から、好ましくは0.0001~0.3重量%、より好ましくは0.0001~0.1重量%、さらに好ましくは0.0001~0.07重量%が挙げられる。
【0018】
本発明の鼻腔洗浄用組成物は鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果に優れているため、防腐剤の量が比較的多くても、効果的に鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果を得ることができる。このような観点から、好適な(A)成分の含有量としては、総量で、例えば0.003~0.6重量%、0.005~0.6重量%、0.01~0.6重量%又は0.04~0.6重量%が挙げられる。特に、防腐剤として第四級アンモニウム塩を用いる場合、好適な第四級アンモニウム塩の含有量としては、上記観点から、好ましくは0.003~0.6重量%、より好ましくは0.005~0.6重量%が挙げられ、防腐剤としてパラオキシ安息香酸を用いる場合、好適なパラオキシ安息香酸の含有量としては、上記観点から、好ましくは0.01~0.6重量%、より好ましくは0.04~0.6重量%が挙げられる。
【0019】
本発明の鼻腔洗浄用組成物が用時に希釈されることなくそのまま用いられる場合は、本発明の鼻腔洗浄用組成物中の(A)成分の含有量は、上述の用時における防腐剤の濃度と同じである。本発明の鼻腔洗浄用組成物が用時に希釈されて用いられる場合は、本発明の鼻腔洗浄用組成物中の(A)成分の含有量は、上述の用時における防腐剤の濃度に希釈倍率を乗じた量である。後述に述べる(A)成分以外の成分の含有量についても同様である。
【0020】
(B)炭酸水素ナトリウム
本発明の鼻腔洗浄用組成物には、(B)成分として炭酸水素ナトリウムが含まれる。炭酸水素ナトリウムは、(A)成分の抗菌作用を増強する。また、炭酸水素ナトリウムは、当該抗菌作用の増強効果以外に、他の作用として、上気道粘膜の洗浄、特に鼻腔内洗浄に用いられる場合に鼻漏の粘性を弱める作用、及び/又は粘膜洗浄に用いられる場合に刺激を緩和する作用も奏し得る。
【0021】
本発明の鼻腔洗浄用組成物における(B)成分としての含有量については特に限定されないが、例えば0.3~2.0重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%、さらに好ましくは0.7~1.3重量%、一層好ましくは0.8~1.2重量%が挙げられる。
【0022】
また、本発明の鼻腔洗浄用組成物における(A)成分と(B)成分との含有比率については、上記の各成分の含有量に基づいて定まるが、好ましくは、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量としては、例えば10~250重量部、好ましくは13~200重量部、より好ましくは15~170重量部、さらに好ましくは18~150重量部が挙げられる。特に、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量としては、(A)成分として第四級アンモニウム塩を用いる場合は、10~250重量部、好ましくは50~200重量部、より好ましくは100~170重量部、さらに好ましくは130~150重量部が挙げられ、(A)成分としてパラオキシ安息香酸エステルを用いる場合は、10~40重量部、好ましくは13~30重量部、より好ましくは15~25重量部、さらに好ましくは18~22重量部が挙げられる。
【0023】
(C)ミント系香料
本発明の鼻腔洗浄用組成物には、(C)成分としてミント系香料が含まれる。ミント系香料は、(A)成分及び(B)成分を含む鼻腔洗浄用組成物の、鼻腔粘膜に対する刺激を緩和する。
【0024】
ミント系香料は、シソ科(Lamiaseae)ハッカ属(Mentha L.)植物の葉に由来する散香気成分である。(C)成分は、当該植物の葉の精油の形態で配合することができる。当該植物の具体例としては、スペアミント、イングリッシュミント、ケンタッキーカーネルミント、ペパーミント、キャンデーミント、スイスリコラミント、カーリーミント、ロココミント、クールミント、ペニーロイヤルミント、アップルミント、パイナップルミント、ボウルズミント、レモンミント、オーデコロンミント、ラベンダーミント、グレープフルーツミント、オレンジミント等が挙げられる。(C)成分としては、これらの植物のうち1種の精油を単独で用いてもよいし、複数種の精油を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記の植物の中でも、鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果をより高める観点から、好ましくは、ペパーミント、キャンデーミント、スイスリコラミント、カーリーミント、ロココミント、クールミントの精油が挙げられ、より好ましくはペパーミントの精油(ペパーミント油)が挙げられる。
【0026】
ミント系香料に含まれる具体的な化合物としては、モノテルペンが挙げられ、好ましくは環式モノテルペンが挙げられ、より好ましくは、カルボン、メントフラン、メントール、メントン、イソメントン、メンチルアセテート、プレゴン、ロツンジホロン等が挙げられる。(C)成分には、これらの化合物が単独で含まれていてもよいし、複数種の組み合わせで含まれていてもよい。
【0027】
これらの化合物の中でも、鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果をより高める観点から、好ましくは、メントール、メントフラン、メンチルアセテート、イソメントン、カルボンが挙げられ、より好ましくは、メントール、メントフラン、メンチルアセテートが挙げられる。
【0028】
本発明の鼻腔洗浄用組成物における(C)成分としての含有量については、得るべき鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果の程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.0001~0.01重量%が挙げられ、鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果をより高める観点から、好ましくは0.001~0.01重量%、より好ましくは0.002~0.01重量%、より好ましくは0.0025~0.01重量%、0.0025~0.008重量%、又は0.0025~0.005重量%が挙げられる。
【0029】
また、本発明の鼻腔洗浄用組成物における(A)成分と(C)成分との含有比率については、上記の各成分の含有量に基づいて定まるが、好ましくは、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量として、例えば0.01~2重量部、好ましくは0.03~2重量部、より好ましくは0.045~2重量部、さらに好ましくは0.05~2重量部、0.05~1.2重量部、0.05~0.8重量部、又は0.05~0.6重量部が挙げられる。特に、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量としては、(A)成分として第四級アンモニウム塩を用いる場合は、例えば0.1~2重量部、好ましくは0.3~2重量部、より好ましくは0.35~2重量部、さらに好ましくは0.4~2重量部、0.4~1.2重量部、0.4~0.8重量部、又は0.4~0.6重量部が挙げられ、(A)成分としてパラオキシ安息香酸エステルを用いる場合は、例えば0.03~0.2重量部、より好ましくは0.045~0.2重量部、さらに好ましくは0.05~0.2重量部、0.05~0.12重量部、0.05~0.1重量部、又は0.05~0.08重量部が挙げられる。
【0030】
本発明の鼻腔洗浄用組成物が(C)成分として、メントール、メントフラン、及びメンチルアセテートを含む場合、メントール、メントフラン、及びメンチルアセテートの総量の含有量としては、例えば0.0001~0.008重量%が挙げられ、鼻腔粘膜に対する刺激緩和効果をより高める観点から、好ましくは0.0005~0.008重量%、より好ましくは0.0015~0.008重量%、さらにより好ましくは0.002~0.008重量%、0.002~0.006重量%、又は0.002~0.004重量%が挙げられる。
【0031】
本発明の鼻腔洗浄用組成物が(C)成分として、メントール、メントフラン、及びメンチルアセテートを含む場合、本発明の鼻腔洗浄用組成物における(A)成分の含有量とメントール、メントフラン、及びメンチルアセテートの総量との比率については、上記の各成分の含有量に基づいて定まるが、好ましくは、(A)成分1重量部当たりのメントール、メントフラン、及びメンチルアセテートの総量として、例えば0.008~1.8重量部、好ましくは0.024~1.8重量部、より好ましくは0.036~1.8重量部、さらに好ましくは0.04~1.8重量部、0.04~1.1重量部、0.04~0.75重量部、又は0.04~0.55重量部が挙げられる。特に、(A)成分1重量部当たりのメントール、メントフラン、及びメンチルアセテートの総量としては、(A)成分として第四級アンモニウム塩を用いる場合は、例えば0.08~1.8重量部、好ましくは0.24~1.8重量部、より好ましくは0.3~1.8重量部、さらに好ましくは0.33~1.8重量部、0.33~1.1重量部、0.33~0.75重量部、又は0.33~0.55重量部が挙げられ、(A)成分としてパラオキシ安息香酸エステルを用いる場合は、例えば0.024~0.18重量部、より好ましくは0.036~0.18重量部、さらに好ましくは0.04~0.18重量部、0.04~0.11重量部、0.04~0.09重量部、又は0.04~0.075重量部が挙げられる。
【0032】
(D)ノニオン性界面活性剤
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、(D)成分としてノニオン性界面活性剤を含有することができる。
【0033】
本発明で使用されるノニオン性界面活性剤としては、鼻腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、鼻腔粘膜に対する刺激をより一層効果的に緩和するという観点から、好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0035】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては、特に制限されないが、例えば、5~40モル、好ましくは10~30モル、より好ましくは15~25モルが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数としては、特に制限されないが、例えば、10~22個、好ましくは14~22個、より好ましくは16~20個が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、具体的には、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、好ましくは酸化エチレン(EO)の平均付加モル数が20であるモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)、酸化エチレン(EO)の平均付加モル数が20であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)が挙げられる。
【0036】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては、特に制限されないが、例えば、5~100モル、好ましくは20~80モル、より好ましくは40~80モルが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80が挙げられる。
【0037】
本発明の鼻腔洗浄用組成物における(D)成分の含有量としては、例えば、0.001~0.5重量%、好ましくは0.01~0.3重量%、より好ましくは0.02~0.1重量%、さらに好ましくは0.04~0.08重量%が挙げられる。
【0038】
本発明の鼻腔洗浄用組成物における(A)成分と(D)成分との含有比率については、上記の各成分の含有量に基づいて定まるが、好ましくは、(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量としては、例えば0.1~30重量部、好ましくは0.5~20重量部、より好ましくは1~10重量部が挙げられる。
【0039】
その他の成分
本発明の鼻腔洗浄用組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤化等に必要とされる他の基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、炭素数1~5の1価低級アルコール、多価アルコール、(D)成分以外の界面活性剤、着色剤、増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、等張化剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、キレート剤、(C)成分以外の香料等の添加剤が挙げられる。これらの基材や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
また、本発明の鼻腔洗浄用組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ビタミン類、アミノ酸類、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、血行促進成分、収斂剤、清涼化剤、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
剤型・用途・製品形態
本発明の鼻腔洗浄用組成物の剤型としては、特に限定されず、例えば、粉剤、顆粒剤、錠剤、液剤等が挙げられる。これらの中でも、用時に鼻腔洗浄用組成物をそのまま使用できる、又は、用時における希釈が容易である、液剤が好ましい。これらの剤型の鼻腔洗浄用組成物は、一般的に公知の方法で調製することができる。
【0042】
また、本発明の鼻腔洗浄用組成物は、用時に希釈されることなくそのまま用いられるように調製されていてもよいし、用時に希釈されて用いられるように調製されていてもよい。なお、希釈とは、粉剤、顆粒剤、錠剤を液体基剤に溶解させることと、液剤(つまり、濃縮液剤)を液体基剤と混合することとの両方を含む。
【0043】
本発明の鼻腔洗浄用組成物が用時に希釈されて用いられるように調製されている場合、用時における希釈倍率としては特に限定されないが、例えば濃縮液剤の場合、例えば2~10倍、好ましくは3~8倍、より好ましくは4~6倍が挙げられる。また、希釈に用いる液体基剤としては、好ましくは水が挙げられる。
【0044】
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、鼻腔内の洗浄に使用される。本発明の鼻腔洗浄用組成物を用いて鼻腔内を洗浄する方法としては、例えば、本発明の鼻腔洗浄用組成物を一方の鼻腔に導入し、当該鼻腔から当該鼻腔洗浄用組成物をそのまま流し出す方法;本発明の鼻腔洗浄用組成物を鼻腔に導入し、口から当該鼻腔洗浄用組成物を流し出す方法;本発明の鼻腔洗浄用組成物を一方の鼻腔に導入し、他方の鼻腔から当該鼻腔洗浄用組成物を流し出す方法等が挙げられる。また、本発明の鼻腔洗浄用組成物を鼻腔内に導入する際には、液滴状(特に、ミスト状)にして導入してもよく、また液流として導入してもよい。
【0045】
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、鼻腔内に内容物を吐出できる容器に収容して使用される。当該容器は、滴下又は噴霧により内容物を液滴状にして吐出できる容器であってもよく、また、内容物を液流として吐出できる容器であってもよい。本発明の鼻腔洗浄用組成物を収容する容器の好適な一例として、点鼻剤用の容器、即ち、滴下又は噴霧により鼻腔内に内容物を液滴状にして吐出できる容器が挙げられる。
【実施例0046】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
試験例
表1及び2に示す組成の鼻腔洗浄用組成物(液剤)を調製した。なお、ペパーミント油は、その100重量部中、メントール、メントフラン、及びメンチルアセテートを総量で85.5重量部含む。得られた鼻腔洗浄用組成物について、鼻腔粘膜に対する刺激の程度を評価した。具体的には、先ず、鼻腔内にミスト状で噴霧できる容器(汎用されている点鼻剤容器)に鼻腔洗浄用組成物を収容した。次いで、被験者10名が、片方の鼻腔内に約0.15mlの鼻腔洗浄用組成物をミスト状で噴霧し、鼻腔内の洗浄を行い、鼻腔内洗浄時の刺激の程度を評価した。鼻腔内洗浄時の刺激の程度は、「刺激を感じない」を0点、「強い刺激を感じる」を100点とする、VAS(Visual Analogue Scale)法によるアンケートによって行い、被験者10名のアンケート結果の平均値を求め、小数点第一位を四捨五入した値とした。さらに、下記式に基づいて、鼻腔粘膜に対する刺激の緩和の程度を示す刺激改善率(%)を導出した。なお、下記式において、基準のVAS値平均値とは、各表における比較例1又は比較例4の鼻腔洗浄用組成物のVAS値平均値を指す。結果を表1に示す。
【0048】
【数1】
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1及び2が示す通り、防腐剤及び炭酸水素ナトリウムを含有する鼻腔洗浄用組成物においては、ミント系ではない香料を配合した場合は鼻腔内洗浄時の刺激に対する緩和はほぼ認められなかった(比較例2,3,5,6)が、ミント系香料を配合することで、鼻腔内洗浄時の刺激が顕著に緩和されていた(実施例1~4)。