(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003008
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、導電パターンの製造方法及びタッチセンサー
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231228BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20231228BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20231228BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20231228BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231228BHJP
H10K 59/10 20230101ALN20231228BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/11 501
H10K71/60
G06F3/041 660
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H10K59/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179864
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2022545705の分割
【原出願日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2020142747
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020172157
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021112369
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有冨 隆志
(57)【要約】
【課題】ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンを形成する感光性転写材料及びその応用を提供する。
【解決手段】仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含み、前記仮支持体が、2層以上からなるポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層はフィラーを含有していない、感光性転写材料及びその応用。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含み、
前記仮支持体が、2層以上からなるポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層はフィラーを含有していない、
感光性転写材料。
【請求項2】
前記仮支持体の感光性樹脂層側の表層はフィラーを含有していない、請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記仮支持体の感光性樹脂層とは反対側の表面の算術平均粗さRaが1nm~50nmである、請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記表層が、相分離構造を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記表層が、脂環構造を持つポリエステル樹脂を含有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記脂環構造が、シクロヘキサン環である、請求項5に記載の感光性転写材料。
【請求項7】
前記表層が、イソフタル酸を共重合成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートを含有する、請求項5又は請求項6に記載の感光性転写材料。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の感光性転写材料を用いる樹脂パターンの製造方法であって、
基板を準備する工程と、
前記基板に前記感光性転写材料を接触させて、前記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する工程と、
を含む樹脂パターンの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂パターンの線幅が、10μm以下である、請求項8に記載の樹脂パターンの製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の感光性転写材料を用いる導電パターンの製造方法であって、
導電層を含む基板を準備する工程と、
前記基板に前記感光性転写材料を接触させて、前記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する工程と、
前記樹脂パターンによって覆われていない前記導電層をエッチング処理し、導電パターンを形成する工程と、
を含む導電パターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、導電パターンの製造方法及びタッチセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型入力装置といったタッチパネルを備えた表示装置(例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置)において、タッチパネルは、導電パターンを含む。導電パターンは、例えば、視認部のセンサー、周辺配線又は取り出し配線として使用される。導電パターン及び樹脂パターンといったパターンの製造方法では、例えば、感光性転写材料を用いて基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体を設ける工程、仮支持体を介して感光性樹脂層をパターン露光する工程、そして、露光された感光性樹脂層を現像する工程を含む方法が広く採用されている。
【0003】
仮支持体に含まれる異物に起因する解像度の低下を回避するため、特開2019-101405号公報には、直径2μm以上の微粒子の数が制限された感光性樹脂積層体ロールが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電パターンの高精細化、言い換えると、要求される解像性の向上に伴って、仮支持体に含まれる異物(例えば、粗大な粒子)に起因する導電パターンの故障(特に、ピンホール)が顕在化している。仮支持体に含まれる異物は、感光性樹脂層の露光を阻害し、樹脂パターンの故障(例えば、ピンホール)を引き起こす。例えば、導電パターンを形成するためのエッチングにおいて、ピンホールを含む樹脂パターンを保護膜として使用すると、導電パターンにピンホールが発生する。そこで、樹脂パターンに発生するピンホールの低減が求められている。
【0005】
本開示の一実施形態は、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンを形成する感光性転写材料を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、ピンホールの発生が抑制された導電パターンの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、ピンホールの発生が抑制された導電パターンを含むタッチセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を包含する。
<1> 仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含み、上記感光性樹脂層の限界解像度をXμmとして定義し、粒子の基準直径を式(1):Y=0.75×Xで表されるYμmとして定義した場合、上記仮支持体におけるYμm以上の直径を有する粒子の個数が、15個/cm2以下である、感光性転写材料。
<2> 上記仮支持体における10.5μm以上の直径を有する粒子の個数が、1.0個/cm2以下である、<1>に記載の感光性転写材料。
<3> 上記仮支持体の厚さが、16μm以下である、<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記感光性樹脂層の厚さが、5μm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
【0007】
<5> 仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含み、上記仮支持体が、2層以上からなるポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層はフィラーを含有していない、感光性転写材料。
<6> 上記仮支持体の感光性樹脂層側の表層はフィラーを含有していない、<5>に記載の感光性転写材料。
<7> 上記感光性樹脂層の限界解像度をXμmとして定義し、粒子の基準直径を式(1):Y=0.75×Xで表されるYμmとして定義した場合、上記仮支持体におけるYμm以上の直径を有する粒子の個数が、15個/cm2以下である、<5>又は<6>に記載の感光性転写材料。
<8> 上記仮支持体の感光性樹脂層とは反対側の表面の算術平均粗さRaが1nm~50nmである、<5>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<9> 上記表層が、相分離構造を有する、<5>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<10> 上記表層が、脂環構造を持つポリエステル樹脂を含有する、<5>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<11> 上記脂環構造が、シクロヘキサン環である、<10>に記載の感光性転写材料。
<12> 上記表層が、イソフタル酸を共重合成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートを含有する、<10>又は<11>に記載の感光性転写材料。
【0008】
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の感光性転写材料を用いる樹脂パターンの製造方法であって、基板を準備する工程と、上記基板に上記感光性転写材料を接触させて、上記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する工程と、を含む樹脂パターンの製造方法。
<14> 上記樹脂パターンの線幅が、10μm以下である、<13>に記載の樹脂パターンの製造方法。
<15> <1>~<12>のいずれか1つに記載の感光性転写材料を用いる導電パターンの製造方法であって、導電層を含む基板を準備する工程と、上記基板に上記感光性転写材料を接触させて、上記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンによって覆われていない上記導電層をエッチング処理し、導電パターンを形成する工程と、を含む導電パターンの製造方法。
<16> <15>に記載された導電パターンの製造方法によって得られた導電パターンを含むタッチセンサー。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンを形成する感光性転写材料が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンの製造方法が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、ピンホールの発生が抑制された導電パターンの製造方法が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、ピンホールの発生が抑制された導電パターンを含むタッチセンサーを提供が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る感光性転写材料の層構成を示す概略側面図である。
【
図2】本開示に係る感光性転写材料の他の層構成を示す概略側面図である。
【
図3】本開示に係る感光性転写材料の他の層構成を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されない。以下の実施形態は、本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。
【0012】
本開示の実施形態について図面を参照して説明する場合、図面において重複する構成要素及び符号の説明を省略することがある。図面において同一の符号を用いて示す構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0013】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0016】
本開示において、組成物中に、ある成分に該当する複数の物質が存在する場合、組成物中の上記成分の量は、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の上記物質の合計量を意味する。
【0017】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0018】
本開示において、序数詞(例えば、「第1」、及び「第2」)は、複数の構成要素を区別するために使用する用語であり、構成要素の数、及び構成要素の優劣を制限するものではない。
【0019】
本開示において、置換及び無置換を記していない基(原子団)は、置換基を有する基及び置換基を有しない基を包含する。例えば「アルキル基」との表記は、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)及び置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)を包含する。
【0020】
本開示において、化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で表される場合がある。
【0021】
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0022】
本開示において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0023】
本開示において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0024】
本開示において、「露光」とは、特に断らない限り、光を用いる露光のみならず、電子線及びイオンビームといった粒子線を用いる描画を含む。露光に用いられる光としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線及び極紫外線(EUV(Extreme ultraviolet lithography)光)並びにX線等の活性光線(活性エネルギー線)が挙げられる。
【0025】
本開示において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL(東ソー株式会社)、TSKgel G4000HxL(東ソー株式会社)及びTSKgel G2000HxL(東ソー株式会社)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC:Gel Permeation Chromatography)分析装置を用いて、テトラヒドロフラン(THF)中の化合物を示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0026】
本開示において、特段の断りがない限り、屈折率は、波長550nmでエリプソメーターを用いて測定した値である。
【0027】
本開示において、「固形分」とは、対象物の全成分から溶剤を除いた成分を意味する。
【0028】
<感光性転写材料>
本開示の第一実施形態に係る感光性転写材料は、仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含み、上記感光性樹脂層の限界解像度をXμmとして定義し、粒子の基準直径を式(1):Y=0.75×Xで表されるYμmとして定義した場合、上記仮支持体におけるYμm以上の直径を有する粒子の個数が、15個/cm2以下である。
上記した第一実施形態によれば、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンを形成する感光性転写材料が提供される。
【0029】
上記した効果が発現する推定理由を以下に説明する。上記したように、仮支持体に含まれる粗大な粒子は、感光性樹脂層の露光を阻害し、樹脂パターンにピンホールを発生させる。例えば、特開2019-101405号公報に開示された技術では、直径2μm以上の微粒子の数を制限することで、仮支持体に含まれる異物に起因する解像度の低下を回避している。しかしながら、露光障害を引き起こす粒子の大きさは、要求される解像度に応じて変動する。要求される解像度が小さくなるにつれて、従来の技術では許容されていた微小な粒子も感光性樹脂層の露光を阻害する。そこで、本開示の発明者は、感光性樹脂層の解像度に対する、仮支持体に含まれる粒子の大きさ及び個数の関係に着目した。感光性樹脂層の解像度と露光障害を引き起こす粒子の大きさとの関係に関する検証によって、本開示の発明者は、感光性樹脂層の限界解像度(X)に対して、Y(Y=0.75×X)μm以上の直径を有する粒子が露光障害の発生率の増大を招くことを明らかにした。本開示の第一実施形態に係る感光性転写材料において、感光性樹脂層の限界解像度(X)から導き出される粒子の基準直径(Y)に従って、仮支持体におけるYμm以上の直径を有する粒子の個数を15個/cm2以下に調節することで、露光障害の発生率を低減することができる。したがって、本開示の第一実施形態に係る感光性転写材料によれば、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンを形成する感光性転写材料が提供される。
【0030】
本開示の第二実施形態に係る感光性転写材料は、仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含み、上記仮支持体が、2層以上からなるポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層(即ち、第1の面側の最外層として配置された層及び第2の面側の最外層として配置された層のうちの少なくとも一方)はフィラーを含有していない。
上記した第二実施形態であっても、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンを形成する感光性転写材料が提供される。
【0031】
なお、本開示において、特に断りなく、単に「本開示に係る感光性転写材料」又は「感光性転写材料」という場合は、上記第一実施態様及び上記第二実施態様の両方について述べるものとする。
【0032】
<<仮支持体>>
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体を含む。感光性転写材料において、仮支持体は、少なくとも感光性樹脂層を支持する。感光性転写材料において、仮支持体は、隣接する層(例えば、感光性樹脂層)から剥離可能な部材である。以下、感光性転写材料において、感光性樹脂層を向く仮支持体の主面を第2の面といい、仮支持体の第2の面の反対側の主面を第1の面という。
【0033】
<本開示の第一実施形態に係る感光性転写材料における仮支持体>
以下、本開示の第一実施形態に係る感光性転写材料における仮支持体(以下、仮支持体(1)ともいう)について説明する。
本開示の第一実施形態に係る感光性転写材料において、感光性樹脂層の限界解像度をXμmとして定義し、粒子の基準直径を式(1):Y=0.75×Xで表されるYμmとして定義した場合、仮支持体におけるYμm以上の直径を有する粒子の個数(以下、「特定粒子(A)の個数」という場合がある。)は、15個/cm2以下である。仮支持体(1)における特定粒子(A)の個数が15個/cm2以下であることで、露光障害の発生率が低減され、ピンホールの発生が抑制される。ピンホールの低減の観点から、特定粒子(A)の個数は、14個/cm2以下であることが好ましく、12個/cm2以下であることがより好ましく、9個/cm2以下であることが特に好ましい。さらに、特定粒子(A)の個数は、7個/cm2以下であることが好ましく、6個/cm2以下であることがより好ましく、5個/cm2以下であることが特に好ましい。特定粒子(A)の個数の下限は、制限されない。特定粒子(A)の個数は、例えば、0個/cm2以上の範囲で決定されてもよい。特定粒子(A)の個数は、0個/cm2又は0個/cm2超であってもよい。特定粒子(A)の個数を低減する方法としては、例えば、仮支持体(1)中に添加する粒子の量を少なくすること、及び仮支持体(1)の製造における添加剤の析出又は結晶化を抑制することが挙げられる。また、不純物(本開示において規制される粒子を含む。)の削減の観点から、純度の高い原料を用いて仮支持体(1)を製造すること、又は仮支持体(1)の製造に使用される装置に付着した粒子といった異物を低減することが好ましい。また、単位面積あたりの異物数(本開示において規制される粒子を含む。)を削減する観点から、仮支持体(1)の厚さを薄くすることが好ましい。例えば、押出成形法を利用する仮支持体(1)の製造方法では、溶融体を濾過するための濾過器のフィルターの孔径及び溶融体の濾過回数の調整によって、仮支持体(1)に含まれる特定粒子(A)の個数を調整することができる。
【0034】
以下、感光性樹脂層の限界解像度(X)について説明する。本開示において、感光性樹脂層の限界解像度は、Xμmとして定義される。Xμmに関して使用される用語「μm」は、長さを表す単位、すなわち、マイクロメートルである。感光性樹脂層の限界解像度(X)は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、7μm以下であることが特に好ましい。感光性樹脂層の限界解像度(X)の下限は、制限されない。感光性樹脂層の限界解像度(X)の下限は、例えば、0.5μm、1μm又は2μmであってもよい。感光性樹脂層の限界解像度(X)は、例えば、感光性樹脂層の組成、感光性樹脂層の厚み及び露光時におけるマスクと基材との距離に応じて調整される。感光性樹脂層の限界解像度(X)は、以下の方法によって決定される。(1)厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに感光性転写材料を接触させて、PETフィルムの上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する。すなわち、PETフィルムと感光性転写材料との貼り合わせによって、少なくとも、PETフィルムと、感光性樹脂層と、仮支持体と、をこの順で含む積層体を得る。積層体において、PETフィルムの上に配置される層の構成は、感光性転写材料の層構成に応じて変化する。(2)得られた積層体を、オートクレーブ装置を用いて、0.6MPa及び60℃の条件下で30分間加圧脱泡する。(3)超高圧水銀灯を用いて、仮支持体を剥離せずにラインアンドスペースパターンマスク(Duty比は1:1であり、線幅は1μmから20μmまで1μmおきに段階的に変化している。)を介して感光性樹脂層を露光する。(4)仮支持体を剥離した後、現像する。現像は、25℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒間行う。感光性樹脂層を現像することで、樹脂パターンを形成する。マスクのパターンに対応する最小の線幅を有する樹脂パターン(以下、本段落において「基準パターン」という。)が得られるまで、露光量(単位:mJ/cm2)を都度調節しながら上記した一連の手順(1)~(4)を実施する。必要に応じて、1μ未満の線幅を有するマスクを用いてもよい。基準パターンの最小線幅を、感光性樹脂層の限界解像度(X)として採用する。
【0035】
以下、粒子の基準直径(Y)について説明する。本開示において、粒子の基準直径は、式(1):Y=0.75×Xで表されるYμmとして定義される。式(1)に関して使用される用語「X」は、感光性樹脂層の限界解像度(X)である。Xの単位は、マイクロメートルである。Yμmに関して使用される用語「μm」は、長さを表す単位、すなわち、マイクロメートルである。
【0036】
本開示において、特定粒子(A)の個数は、以下の方法によって測定される。仮支持体の表面における任意の10か所の領域(各領域の大きさ:10mm×10mm、合計面積:1000mm2)を、光学顕微鏡を用いて目視にて観察する。各領域に含まれる、Yμm以上の直径を有する粒子の個数を測定する。「直径」とは、平面視において粒子の輪郭線上の2つの点を結ぶ直線の最大値である。10か所の領域で測定された粒子の個数の合計値に基づき、測定領域の1cm2あたりの粒子の個数(個/cm2)を算出する。得られた値を、特定粒子(A)の個数として採用する。
【0037】
ピンホールの低減の観点から、仮支持体(1)における10.5μm以上の直径を有する粒子の個数(以下、「特定粒子(B)の個数」という場合がある。)は、1.0個/cm2以下であることが好ましく、0.5個/cm2以下であることがより好ましく、0.2個/cm2以下であることが特に好ましい。特定粒子(B)の個数の下限は、制限されない。特定粒子(B)の個数は、例えば、0個/cm2以上の範囲で決定されてもよい。特定粒子(B)の個数は、0個/cm2又は0個/cm2超であってもよい。特定粒子(B)の個数は、特定粒子(A)の個数の測定方法に準ずる方法によって測定される。特定粒子(B)の個数は、特定粒子(A)の個数の調整方法に準ずる方法によって調整される。
【0038】
仮支持体(1)における粒子(特定粒子(A)、及び特定粒子(B)を含む。以下、本段落において同じ。)は、仮支持体(1)の作製時に添加された粒子状の化合物であってもよい。仮支持体(1)における粒子は、仮支持体の作製時に添加された添加剤の重縮合、延伸若しくは冷却工程中の析出、又は結晶化により生成した粒子であってもよい。
【0039】
粒子状の化合物としては、例えば、無機粒子及び有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、無機酸化物を含む粒子が挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)及び酸化アルミニウム(アルミナ)が挙げられる。有機粒子としては、例えば、重合体を含む粒子が挙げられる。重合体としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン及びポリスチレンが挙げられる。
【0040】
仮支持体(1)の作製時に添加される添加剤の例としては、重縮合のための反応触媒、着色防止剤及び製膜性付与剤が挙げられる。
【0041】
重縮合のための反応触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物及びリン化合物が挙げられる。なお、通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物又はチタン化合物が好ましく用いられる。
【0042】
着色防止剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物が挙げられる。リン酸エステル系化合物としては、例えば、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルが挙げられる。置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとしては、例えば、炭素数が2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(RO)3-P=O、R=炭素数が1又は2のアルキル基〕が挙げられる。「(RO)3-P=O」で表される化合物としては、例えば、リン酸トリメチル及びリン酸トリエチルが挙げられる。
【0043】
製膜性付与剤としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物が挙げられる。なお、仮支持体の製造又は仮支持体の原材料として用いられるポリエステルの製造では、特に、マグネシウム化合物が好ましく用いられる。ポリエステルにマグネシウム化合物を含めることにより、ポリエステルの静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、着色防止剤と併用することにより、着色を抑え、優れた色調及び耐熱性が得られる。マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウム塩が挙げられる。マグネシウム塩としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム及び炭酸マグネシウムが挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましく用いられる。
【0044】
粒子の形状は、制限されない。平面視における粒子の形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形及び不定形が挙げられる。
【0045】
粒子は、透明の粒子、半透明の粒子又は黒色等の着色物のいずれであってもよい。
【0046】
仮支持体(1)は、光透過性を有することが好ましい。本開示において「光透過性を有する」とは、パターン露光に使用する波長における透過率が50%以上であることを意味する。感光性樹脂層の露光感度の向上の観点から、パターン露光に使用する波長(より好ましくは波長365nm)における仮支持体(1)の透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。透過率は、対象物の主面に垂直に入射した光(入射光)の強度に対する、対象物を通過した光(出射光)の強度の比率である。透過率は、公知の分光器(例えば、「MCPD Series」、大塚電子株式会社)を用いて測定される。
【0047】
仮支持体(1)の厚さは、制限されない。支持体としての強度、基板との貼り合わせに求められる可撓性、及び、露光において要求される光透過性の観点から、仮支持体(1)の厚さは、材質に応じて決定されてもよい。取扱い易さ及び汎用性の観点から、仮支持体(1)の厚さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、16μm以下であることが特に好ましい。取扱い易さ及び汎用性の観点から、仮支持体(1)の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。さらに、仮支持体(1)の厚さが薄くなるにつれて、仮支持体の体積が減少することにより、単位面積当たりの仮支持体に含まれる粒子の絶対量が減少する。
仮支持体の厚さは、以下の方法によって測定される。走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、仮支持体の厚さ方向(仮支持体の主面に対して垂直方向)に沿う断面を観察する。観察像に基づいて仮支持体の厚さを10か所で測定し、測定値を算術平均する。得られた値を、仮支持体の厚さとして採用する。
【0048】
仮支持体(1)の層構成は、制限されない。仮支持体(1)は、単層構造を有する仮支持体又は多層構造を有する仮支持体であってもよい。以下、仮支持体(1)の層構成について説明する。ただし、仮支持体(1)の層構成は、以下に示す層構成に制限されるものではない。
【0049】
単層構造を有する仮支持体(1)としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム及び紙が挙げられる。強度、可撓性及び光透過性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。上記の中でも、PETフィルムが好ましく、2軸延伸PETフィルムがより好ましい。樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、押出成形法が挙げられる。
【0050】
多層構造を有する仮支持体(1)としては、例えば、基材と、粒子含有層と、を含む仮支持体が挙げられる。多層構造を有する仮支持体(1)は、上記した粒子含有層以外の層(例えば、接着層)を含んでもよい。
【0051】
搬送性の観点から、仮支持体(1)は、仮支持体から感光性樹脂層へ向かう積層方向において、仮支持体の最外層として配置された粒子含有層(以下、「第1の粒子含有層」という場合がある。)と、基材と、をこの順で含むことが好ましい。言い換えると、仮支持体(1)は、基材と、仮支持体の第1の面側の最外層として配置された粒子含有層(第1の粒子含有層)と、をこの順で含むことが好ましい。第1の粒子含有層の表面は、仮支持体(1)の第1の面を含む。
【0052】
仮支持体製造時の搬送性確保の観点から、仮支持体(1)は、仮支持体から感光性樹脂層へ向かう積層方向において、基材と、仮支持体の最外層として配置された粒子含有層(以下、「第2の粒子含有層」という場合がある。)と、をこの順で含んでもよい。言い換えると、仮支持体(1)は、基材と、仮支持体の第2の面側の最外層として配置された粒子含有層(第2の粒子含有層)と、をこの順で含んでもよい。第2の粒子含有層の表面は、仮支持体(1)の第2の面を含む。
【0053】
仮支持体(1)は、複数の粒子含有層を含んでもよい。例えば、仮支持体(1)は、仮支持体から感光性樹脂層へ向かう積層方向において、第1の粒子含有層と、基材と、第2の粒子含有層と、をこの順で含んでもよい。
【0054】
基材としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム及び紙が挙げられる。基材は、樹脂フィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましく、2軸延伸PETフィルムであることが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、既述の樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、押出成形法が挙げられる。
【0055】
粒子含有層における粒子としては、例えば、無機粒子及び有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、無機酸化物を含む粒子が挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)及び酸化アルミニウム(アルミナ)が挙げられる。有機粒子としては、例えば、重合体を含む粒子が挙げられる。重合体としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン及びポリスチレンが挙げられる。粒子の耐摩耗性の観点から、粒子は、無機粒子であることが好ましく、無機酸化物を含む粒子であることがより好ましく、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む粒子であることが更に好ましく、酸化ケイ素を含む粒子であることが特に好ましい。
【0056】
ピンホールの低減の観点から、粒子含有層における粒子の平均粒子径は、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。また、透明性(ヘイズ)の観点から、粒子含有層における粒子の平均粒子径は、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、特に80nm以下が好ましい。搬送性の観点から、粒子含有層における粒子の平均粒子径は、5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることが特に好ましい。本開示において、粒子含有層における粒子の平均粒子径は、以下の方法によって測定される。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、10個の粒子の粒子径を測定する。ここで、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の2つの点を結ぶ直線の最大値である。測定値の算術平均を、粒子の平均粒子径として採用する。
【0057】
粒子含有層における粒子の形状は、制限されない。平面視における粒子の形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形及び不定形が挙げられる。
【0058】
粒子含有層は、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、例えば、重合体が挙げられる。重合体としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、スチレン-ブタジエン系重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンが挙げられる。
【0059】
粒子含有層の厚さは、制限されない。添加粒子による突起の形成しやすさの観点から、粒子含有層の厚さ(粒子含有層の表面に露出した粒子を除く。以下、本段落において同じ。)は、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。また、粒子を均一に存在させる観点から、粒子含有層の厚さは、5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。粒子含有層の厚さは、仮支持体の厚さの測定方法に準ずる方法によって測定される。
【0060】
粒子含有層の製造方法は、制限されない。粒子含有層は、例えば、基材の上に粒子含有層形成用組成物を塗布し、塗布された粒子含有層形成用組成物を必要に応じて乾燥することで形成される。粒子含有層形成用組成物は、粒子含有層を形成するための原材料である。上記方法において、粒子含有層形成用組成物は、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムの上に塗布されてもよい。粒子含有層形成用組成物が塗布された未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムは、更に延伸されてもよい。粒子含有層は、例えば、共押出法によって基材とともに形成されてもよい。
【0061】
仮支持体(1)として使用されるフィルムには、変形(例えば、シワ)、傷及び欠陥がないことが好ましい。
【0062】
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び、仮支持体の透明性の観点から、仮支持体(1)に含まれる微粒子、異物、欠陥及び析出物の数は少ない方が好ましい。直径が2μm以上の微粒子、異物及び欠陥の数は、50個/10mm2以下であることが好ましく、10個/10mm2以下であることがより好ましく、3個/10mm2以下であることが更に好ましく、0個/10mm2であることが特に好ましい。
【0063】
仮支持体(1)の好ましい態様は、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018、特開2016-27363号公報の段落0019~段落0026、国際公開第2012/081680号の段落0041~段落0057、国際公開第2018/179370号の段落0029~段落0040及び特開2019-101405号公報の段落0012~段落0032に記載されている。これらの公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
仮支持体(1)としては、例えば、膜厚16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、膜厚12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び膜厚9μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0065】
<本開示の第二実施形態に係る感光性転写材料における仮支持体>
以下、本開示の第二実施形態に係る感光性転写材料における仮支持体(以下、仮支持体(2)ともいう)について説明する。
本開示の第二実施形態に係る感光性転写材料において、仮支持体は、2層以上からなるポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層はフィラーを含有していない。
ここで、本開示における「フィラー」とは、表層におけるポリエステル樹脂間の隙間を埋めるために添加される無機材料であって、粒子径2.0μm以上のものを指す。
フィラーである無機材料としては、既述の、無機材料(好ましくは無機酸化物)が挙げられる。
なお、フィラーの有無、数は、後述の方法で確認されるが、既述の粒子の測定方法においては、粒子の一部として測定されることもある。
「表層はフィラーを含有しない」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で表層を観察し、5,000倍の倍率で10視野確認した際、フィラーの存在数の平均が0.5個/mm2以下であることを意味する。つまり、上記の方法で確認した際、フィラーの存在数の平均が0.5個/mm2以下であれば、「表層はフィラーを含有しない」とみなす。
【0066】
上記の観察方法について、より具体的に説明する。
仮支持体の表層であるポリエステルフィルムから、プラズマ低温灰化処理法でポリエステル樹脂を除去し、無機材料であるフィラーを残存させ、露出させる。処理条件は、ポリエステル樹脂は灰化されるがフィラーは極力ダメージを受けない条件を選択する。処理後の試料を、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社日立製作所S-4000型)を用いて、倍率5000倍で観察し、粒子画像をイメージアナライザ(株式会社ニレコLUZEX_AP)に取り込み、フィラーの有無、粒子の数を確認する。
なお、フィラーがプラズマ低温灰化処理法で大幅にダメージを受ける場合には、仮支持体断面を透過型電子顕微鏡(TEM、例えば、株式会社日立製作所H-600型)を用いて、5000倍で観察し、フィラーの有無、フィラーの数を確認する。
SEM及びTEMで観察した際に、5,000倍の倍率で10視野確認した際、フィラーの存在数の平均が0.5個/mm2以下であれば、観察対象の表層は粒子を含有しないと判断する。
【0067】
仮支持体(2)が2層からなるポリエステルフィルムであれば、2層のうち、一方の層が第1の面側の表層(即ち、第1の面側の最外層として配置された層)であり、他方の層が第2の面側の表層(即ち、第2の面側の最外層として配置された層)となる。仮支持体(2)が3層以上からなるポリエステルフィルムであれば、第1面側の表層(即ち、第1の面側の最外層として配置された層)と、第2の面側の表層(即ち、第2の面側の最外層として配置された層)と、この2つの表層とに挟まれた1層又は2層以上の中間層と、から構成される。
仮支持体(2)は、2つの表層のうち、少なくとも一方の表層はフィラーを含有していないものである。
【0068】
また、ピンホールの低減の観点から、仮支持体(2)の感光性樹脂層側の表層(即ち、第2の面側の表層)はフィラーを含有していない、ことが好ましい。
【0069】
ピンホールの低減の観点から、感光性樹脂層の限界解像度をXμmとして定義し、粒子の基準直径を式(1):Y=0.75×Xで表されるYμmとして定義した場合、仮支持体(2)におけるYμm以上の直径を有する粒子の個数が、15個/cm2以下であることが好ましく、12個/cm2以下であることがより好ましく、9個/cm2以下であることが更に好ましく、7個/cm2以下であることが特に好ましい。上記仮支持体(2)におけるYμm以上の直径を有する粒子の個数の下限は、制限されず、0個/cm2又は0個/cm2超であってもよい。
【0070】
搬送性の観点から、仮支持体(2)の感光性樹脂層とは反対側の表面(即ち、第1の面)の算術平均粗さRaが1nm~50nmであることが好ましく、1nm~40nmであることがより好ましい。
仮支持体(2)における感光性樹脂層とは反対側の表面(即ち、第1の面)の算術平均粗さRaは、JIS B 0601:1994年に準拠した方法により測定される。具体的には、後述する、保護フィルムの表面の算術平均粗さRaと同様の方法で測定することができる。
【0071】
仮支持体(2)を構成する2層以上からなるポリエステルフィルムとしては、フィルムを構成する樹脂がポリエステル樹脂を主成分とするものであればよい。なお、「フィルムを構成する樹脂がポリエステル樹脂を主成分とする」とは、フィルムを構成する樹脂のうち、少なくとも70モル%以上が、ポリエステル樹脂であることを意味する。
【0072】
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸、ジオール、及びこれらエステル形成性誘導体を構成成分とする単量体からの重合により得られる。フィルムを構成するポリエステル樹脂として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート、これら共重合体等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0073】
ポリエステル樹脂を得るための単量体であるジカルボン酸成分(ジカルボン酸とそのエステル形成性誘導体とを含む)としては、芳香族ジカルボン酸を用いることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸が特に好ましい。
ジカルボン酸成分は、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。例えば、芳香族ジカルボン酸を2種以上併用してもよいし、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを併用してもよい。
【0074】
ポリエステルを得るための単量体であるジオール成分(ジオールとそのエステル形成性誘導体とを含む)としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールなどを挙げられ、エチレングリコールが特に好ましい。
ジオール成分は、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0075】
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法、ジカルボン酸成分としてジカルボン酸のジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法などが挙げられる。なお、この際、必要に応じて、反応触媒として、従来公知の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることもできる。
【0076】
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の固有粘度は、0.5dl/g~0.8dl/gが好ましく、0.55dl/g~0.70dl/gがより好ましい。
【0077】
仮支持体(2)は、粒子を含有していない表層は、相分離構造を有することが好ましい。つまり、表層は、粒子を含有しておらず、且つ、相分離構造(具体的には、海島構造であってもよい)を有することが好ましい。表層は、粒子を含有していないものの、相分離構造(例えば、海島構造)を有することで、相分離構造に由来する表面凹凸が形成される。具体的には、相分離構造を有する表層を有するフィルムは、例えば、二軸延伸することにより、相分離構造に由来して、延伸されやすい領域と延伸され難い領域とが生じ、この延伸ムラによって、微小な表面凹凸を形成することができる。
上記のように表層に相分離構造を形成するためには、表層は、脂環構造を持つポリエステル樹脂を含有することが好ましい。つまり、表層が、主たるポリエステル樹脂(例えば、芳香環構造を有するポリエステル樹脂)と、主たるポリエステル樹脂とは相溶性の異なる脂環構造を持つポリエステル樹脂と、を含有することで、相分離構造(例えば、海島構造)が形成される。
【0078】
上記脂環構造を持つポリエステル樹脂における脂環構造としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、又はシクロヘキサン環が好ましいものとして挙げられ、シクロヘキサン環が特に好ましい。脂環構造を有するポリエステル樹脂は、例えば、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチルを、ジオール成分として1,3-シクロプロパンジオール、1,3-シクロブタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを用い、200ppmのブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)の存在下で重縮合反応を行うことで得られる。
【0079】
脂環構造を持つポリエステル樹脂の含有量としては、表面凹凸の形成性、感光性樹脂層形成用組成物の塗布欠陥の発生等の観点から、表層の全質量に対して、3質量%~10質量%が好ましい。
【0080】
仮支持体(2)は、表層に、脂環構造を持つポリエステル樹脂と共に、イソフタル酸を共重合成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートを含有することが好ましい。
ここで、イソフタル酸を共重合成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートとは、ポリエステル樹脂の最も多く含むジオール成分がエチレングリコール、最も多く含むジカルボン酸成分がテレフタル酸であるポリエステルであって、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を含むポリエステル樹脂をいう。イソフタル酸の共重合率は、ジカルボン酸成分全体に対して、0.1モル%~49モル%の範囲であることが好ましく、0.5モル%~40モル%であることが好ましい。イソフタル酸成分を共重合成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートを表層に含有すると、製膜性の点で好ましく、脂環構造を持つポリエステル樹脂との延伸性の違いから、表面凹凸を形成しやすくなる点で好ましい。
【0081】
イソフタル酸を共重合成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートの含有量としては、特に限定されるものではないが、表層を構成する全質量に対して、10質量%~20質量%であることが好ましい。
【0082】
ピンホールの低減の観点から、上記表層の厚みは、0.5μm~2.5μmであることが好ましく、0.6μm~2.0μmであることがより好ましい。
【0083】
仮支持体(2)の厚さは、ピンホールの低減の観点から、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。仮支持体の厚さの下限値は、例えば、5μm以上が挙げられる。
【0084】
(層構成)
仮支持体(2)において、2層からなるポリエステルフィルムの層構成としては、A層(表層)/B層(表層)が挙げられ、また7、3層からなるポリエステルフィルムの層構成としては、A層/B層(中間層)/A層、A層/B層(中間層)/C層(表層)が挙げられる。4層以上のポリエステルフィルムとしては、中間層が積層構造を有するものが挙げられる。
なお、上記A層が粒子を含有していない表層である場合、B層(表層)、B層(中間層)、及び、C層(表層)は、それぞれ、ポリエステルフィルムであればよく、本開示の目的を損なわない範囲で、粒子を含有してもかまわないが、A層と同様に粒子を含有していない層(ポリエステルフィルム)とすることもできる。上記のB層(表層)、B層(中間層)、又はC層(表層)が粒子を含有している層である場合は、含有される粒子は、有機系の粒子であってもよいし、無機系の粒子であってもよい。有機系の粒子としては、例えば、ポリイミド系樹脂、オレフィン又は変性オレフィン系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂などの粒子が挙げられる。無機系の粒子としては、例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、凝集アルミナ、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウムなど粒子が挙げられる。
【0085】
上記粒子としては、粒子表面を界面活性剤などで表面改質し、ポリエステル樹脂との親和性を改善したものが好ましい。また、粒子形状が球状に近く、さらに、ポリエステル樹脂との屈折率の差が少ない粒子が好ましく、例えば、コロイダルシリカ、有機系の粒子が挙げられ、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン系樹脂粒子が特に好ましい。中でも、乳化重合で調整された、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなる架橋ポリスチレン系樹脂粒子は、粒子形状が真球に近く、粒子径分布が均一であり、均一な突起形成を図ることが可能で好ましい。
【0086】
仮支持体(2)の好適な態様としては、3層以上からなるポリエステルフィルムであって、両表層が粒子を含有しておらず、且つ、脂環構造を持つポリエステル樹脂を含有し、厚みが0.5μm~2.5μmであり、第1の面の算術平均粗さRaが1nm~50nm以下であるものである。
【0087】
以下、仮支持体(2)の製造方法について説明する。
仮支持体(2)である2層以上からなるポリエステルフィルムは、共押出し法による溶融製膜を用いて製造すればよい。粒子を含む層(ポリエステルフィルム)を得る場合には、例えば、ジオール成分であるエチレングリコールに粒子を分散させてスラリー状にし、例えば、粗大粒子の高精度濾過を行った後、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する方法がある。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子の合成時に得られる水ゾル又はアルコールゾルを乾燥させることなくそのまま添加してもよい。また、粒子の水スラリーをポリエステルペレットと混合した後、ベント方式の2軸混練押出機に供給し、ポリエステルフィルムに粒子を含ませる方法を用いてもよい。
【0088】
各層のために準備した、粒子を含有するペレットと粒子を含有しないペレットとを用い、必要に応じて、粒子を含有するペレットと粒子を含有しないペレットとを混合した後、公知の溶融積層用押出機に供給する。押出機としては、1軸又は2軸の押出機を用いることができる。また、ペレットの乾燥工程を省くために、押出機に真空引きラインを設けた、ベント式押出機を用いることもできる。また、最も押出量が多くなるB層の形成には、ペレットを溶融する機能と、溶融したペレットを一定温度に保つ機能をそれぞれの押出機で分担する、いわゆるタンデム押出機を用いてもよい。
【0089】
押出機で溶融して押出した溶融物は、フィルターにより濾過する。フィルターには、例えば、径が5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることができる。続いて、スリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、複数の押出機、複数層のマニホールド又は合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、溶融物の流路には、スタティックミキサー、ギヤポンプを設置することが好ましい。
【0090】
仮支持体(2)は、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
延伸方法は、同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。逐次延伸の場合、最初の長手方向の延伸における延伸温度は、フィルムの破断を抑制する、及び、熱ダメージを抑制する観点から、90℃~130℃、より好ましくは100℃~125℃であることが望ましい。また、延伸ムラ、及びキズを防止する観点から、延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましい。
【0091】
延伸ムラを抑制する、及び、フィルムの破断を抑制する観点から、延伸倍率は、長手方向に、3倍~4.5倍(好ましくは3.5倍~4.3倍)であり、且つ、幅方向に、3.2倍~5倍(好ましくは4.0倍~4.6倍)であることが望ましい。延伸後、所望の熱収縮率等の特定を得る観点から、200℃~230℃(好ましくは210℃~230℃)で、0.5秒~20秒(好ましくは1秒~15秒)の熱固定を行うことが望ましい。更に、熱固形の後には、長手及び/又は幅方向に、0.1%~7.0%の弛緩処理を施すことが好ましい。
【0092】
以降、特に断りなく、単に「仮支持体」という場合は、上記仮支持体(1)及び仮支持体(2)の両方について述べるものとする。
【0093】
<<感光性樹脂層>>
本開示に係る感光性転写材料は、感光性樹脂層を含む。感光性樹脂層は、露光により露光部の現像液に対する溶解性が低下し、そして、非露光部が現像により除去されるネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。ただし、感光性樹脂層は、ネガ型感光性樹脂層に制限されるものではない。感光性樹脂層は、露光により露光部の現像液に対する溶解性が向上し、そして、露光部が現像により除去されるポジ型感光性樹脂層であってもよい。
【0094】
感光性樹脂層は、重合体Aと、重合性化合物Bと、光重合開始剤と、を含むことが好ましい。感光性樹脂層は、感光性樹脂層の全固形分質量を基準に、10質量%~90質量%の重合体Aと、5質量%~70質量%の重合性化合物Bと、0.01質量%~20質量%の光重合開始剤と、を含むことが好ましい。以下、感光性樹脂層の成分について説明する。
【0095】
(重合体A)
重合体Aとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール、ポリシロキサン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びポリアルキレングリコールが挙げられる。重合体Aは、アルカリ可溶性高分子化合物であることが好ましい。アルカリ可溶性高分子化合物は、アルカリ物質に溶け易い高分子化合物を包含する。本開示において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において、1質量%の炭酸ナトリウムを含む水溶液(100g)への溶解度が0.1g以上である性質を意味する。
【0096】
現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性がより優れる点から、重合体Aの酸価は、220mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g未満であることがより好ましく、190mgKOH/g未満であることが特に好ましい。重合体Aの酸価の下限は、制限されない。現像性がより優れる点から、重合体Aの酸価は、60mgKOH/g以上であることが好ましく、120mgKOH/g以上であることがより好ましく、150mgKOH/g以上であることが更に好ましく、170mgKOH/g以上であることが特に好ましい。重合体Aの酸価は、重合体Aを構成する構成単位の種類及び酸基を含有する構成単位の含有量により調整すればよい。
【0097】
本開示において、「酸価」とは、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)である。酸価の単位は、mgKOH/gで表される。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
【0098】
重合体Aの重量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量を500,000以下にすることは、解像性及び現像性を向上させる観点から好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、100,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることが更に好ましく、70,000以下であることが特に好ましい。一方、重量平均分子量を5,000以上にすることは、現像凝集物の性状及び未露光膜の性状(例えば、エッジフューズ性及びカットチップ性)を制御する観点から好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることが更に好ましく、30,000以上であることが特に好ましい。エッジフューズ性とは、ロール状に巻き取られた感光性転写材料において、ロールの端面からの、感光性樹脂層のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合のチップの飛び易さの程度をいう。例えば、発生したチップが露光に使用されるマスクに転写されると、不良品の原因となる。重合体Aの分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが特に好ましい。本開示において、分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である。本開示において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定される値である。
【0099】
重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、30℃以上135℃以下であることが好ましい。重合体AのTgが135℃以下であることで、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り又は解像度の悪化を抑制することができる。重合体AのTgは、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。重合体AのTgが30℃以上であることで、耐エッジフューズ性を向上させることができる。重合体AのTgは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、60℃以上であることが特に好ましく、70℃以上であることが最も好ましい。
【0100】
露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り又は解像度の悪化を抑制する観点から、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する構成単位を含むことが好ましい。重合体Aは、1種又は2種以上の芳香族炭化水素基を有する構成単位を含んでもよい。芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基及び置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、重合体Aの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率の上限は、制限されない。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。なお、感光性樹脂層が複数の種類の重合体Aを含む場合、芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、重量平均値として求められる。
【0101】
芳香族炭化水素基を有する構成単位は、芳香族炭化水素基を有する単量体を用いて導入される。芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有する単量体、スチレン及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、スチレントリマー)が挙げられる。上記の中でも、アラルキル基を有する単量体又はスチレンが好ましい。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する構成単位がスチレンに由来の構成単位である場合、スチレンに由来の構成単位の含有率は、重合体Aの全質量に対して、20質量%~80質量%であることが好ましく、25質量%~70質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0102】
アラルキル基としては、例えば、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ただし、ベンジル基を除く。)及び置換又は非置換のベンジル基が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
【0103】
フェニルアルキル基を有する単量体としては、例えば、フェニルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0104】
ベンジル基を有する単量体としては、例えば、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びクロロベンジル(メタ)アクリレート)及びベンジル基を有するビニルモノマー(例えば、ビニルベンジルクロライド及びビニルベンジルアルコール)が挙げられる。上記の中でも、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する構成単位がベンジル(メタ)アクリレートに由来の構成単位である場合、ベンジル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の含有率は、重合体Aの全質量に対して、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが更に好ましく、75質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0105】
芳香族炭化水素基を有する構成単位を含む重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する構成単位と、第一の単量体に由来の構成単位及び第二の単量体に由来の構成単位からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことが好ましい。
【0106】
芳香族炭化水素基を有する構成単位を含まない重合体Aは、第一の単量体に由来の構成単位を含むことが好ましく、第一の単量体に由来の構成単位及び第二の単量体に由来の構成単位を含むことがより好ましい。
【0107】
第一の単量体は、分子中にカルボキシル基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物及びマレイン酸半エステルが挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。重合体Aは、1種単独又は2種以上の第一の単量体に由来の構成単位を含んでもよい。重合体Aにおける第一の単量体の含有率は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~45質量%であることがより好ましく、15質量%~35質量%であることが特に好ましい。
【0108】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ、分子中に少なくとも1つの重合性不飽和基を有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート類(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート)、ビニルアルコールのエステル類(例えば、酢酸ビニル)及び(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。上記の中でも、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。重合体Aにおける第二の単量体の含有率は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが特に好ましい。
【0109】
露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り又は解像度の悪化を抑制する観点から、重合体Aは、アラルキル基を有する単量体に由来の構成単位及びスチレンに由来の構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。上記のような重合体Aの好ましい具体例としては、メタクリル酸とベンジルメタクリレートとスチレンとの共重合体及びメタクリル酸とメチルメタクリレートとベンジルメタクリレートとスチレンとの共重合体が挙げられる。
【0110】
ある実施形態において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する構成単位を25質量%~40質量%、第一の単量体に由来の構成単位を20質量%~35質量%及び第二の単量体に由来の構成単位を30質量%~45質量%含む重合体であることが好ましい。また、別のある実施形態において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来の構成単位を70質量%~90質量%及び第一の単量体に由来の構成単位を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
【0111】
重合体Aは、側鎖に分岐構造又は脂環構造を有してもよい。例えば、側鎖に分岐構造を有する基を含む単量体又は側鎖に脂環構造を有する基を含む単量体を使用することによって、重合体(A)の側鎖に分岐構造又は脂環構造を導入することができる。重合体Aの側鎖における脂環構造は、単環であってもよいし、多環であってもよい。
また、重合体Aは、側鎖に直鎖構造を有してもよい。
【0112】
側鎖に分岐構造を有する基を含む単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸tert-アミル、(メタ)アクリル酸sec-アミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル及び(メタ)アクリル酸tert-オクチルが挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチルが好ましく、メタクリル酸イソプロピル又はメタクリル酸tert-ブチルであることがより好ましい。
【0113】
側鎖に脂環構造を有する基を含む単量体の具体体としては、単環の脂肪族炭化水素基を有するモノマー及び多環の脂肪族炭化水素基を有するモノマーが挙げられる。また、側鎖に脂環構造を有する基を含む単量体の具体体としては、炭素原子数が5~20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。側鎖に脂環構造を有する基を含む単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシ-ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸1-メンチル及び(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル及び(メタ)アクリル酸トリシクロデカンがより好ましい。
【0114】
感光性樹脂層は、1種又は2種以上の重合体Aを含んでもよい。2種以上の重合体Aを使用する場合、芳香族炭化水素基を有する構成単位を含む重合体Aを2種類使用すること、又は芳香族炭化水素基を有する構成単位を含む重合体Aと、芳香族炭化水素基を有する構成単位を含まない重合体Aと、を混合使用することが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する構成単位を含む重合体Aの使用割合は、重合体Aの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0115】
感光性樹脂層における重合体Aの含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましく、40質量%~60質量%であることが特に好ましい。重合体Aの含有率を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。重合体Aの含有率を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0116】
重合体Aの合成は、単量体を溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びイソプロパノール)を用いて希釈した溶液に、ラジカル重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル及びアゾイソブチロニトリル)を適量添加し、加熱撹拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合又は乳化重合を用いてもよい。
【0117】
(重合性化合物B)
重合性化合物Bは、重合性基を有する化合物である。本開示において「重合性化合物」とは、重合開始剤の作用を受けて重合する化合物であって、上記した重合体Aとは異なる化合物を意味する。
【0118】
重合性基としては、重合反応に関与する基であれば制限されず、例えば、エチレン性不飽和基(例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基及びマレイミド基)及びカチオン性重合性基(例えば、エポキシ基及びオキセタン基)が挙げられる。重合性基は、エチレン性不飽和基であることが好ましく、アクリロイル基又はメタアクリロイル基であることがより好ましい。
【0119】
感光性樹脂層の感光性がより優れる点で、重合性化合物Bは、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)であることが好ましく、一分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、多官能エチレン性不飽和化合物)であることがより好ましい。また、解像性及び剥離性により優れる点で、一分子のエチレン性不飽和化合物に含まれるエチレン性不飽和基の数は、6つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2つ以下であることが特に好ましい。エチレン性不飽和化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0120】
感光性樹脂層の感光性と解像性及び剥離性とのバランスがより優れる点で、感光性樹脂層は、一分子中に2つ又は3つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能又は3官能エチレン性不飽和化合物)を含むことが好ましく、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能エチレン性不飽和化合物)を含むことがより好ましい。剥離性に優れる点から、感光性樹脂層における2官能エチレン性不飽和化合物の含有率は、重合性化合物Bの全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%超であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。2官能エチレン性不飽和化合物の含有率の上限は、制限されない。感光性樹脂層における2官能エチレン性不飽和化合物の含有率は、重合性化合物Bの全質量に対して、100質量%であってもよい。すなわち、感光性樹脂層に含まれる重合性化合物Bの全てが2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
【0121】
感光性樹脂層は、芳香環及び2つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物B1を含むことが好ましい。重合性化合物B1は、上述した重合性化合物Bのうち、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能エチレン性不飽和化合物)に包含される化合物である。
【0122】
芳香環としては、例えば、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環)、芳香族複素環(例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環及びピリジン環)及びそれらの縮合環が挙げられる。芳香環は、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。芳香環は、置換基を有してもよい。重合性化合物B1は、2つ以上の芳香環を有してもよい。
【0123】
現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性が向上する点から、重合性化合物B1は、ビスフェノール構造を有することが好ましい。ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造及びビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられる。ビスフェノール構造は、ビスフェノールA構造であることが好ましい。ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、上記ビスフェノール構造の両端にそれぞれ結合した2つのエチレン性不飽和基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)と、を有する化合物が挙げられる。各エチレン性不飽和基は、ビスフェノール構造の末端に、直接結合してもよく、1つ以上のアルキレンオキシ基を介して結合してもよい。アルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であることが好ましく、エチレンオキシ基であることがより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の数は、制限されない。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の数は、1分子あたり4個~16個であることが好ましく、6個~14個であることがより好ましい。ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~段落0080に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
重合性化合物B1は、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンであることがより好ましい。2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業株式会社)及びエトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業株式会社)が挙げられる。
【0125】
重合性化合物B1としては、例えば、下記式(I)で表される化合物も挙げられる。
【0126】
【0127】
式(I)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Aは、C2H4を表し、Bは、C3H6を表し、n1及びn3は、それぞれ独立に、1~39の整数を表し、n1+n3は、2~40の整数であり、n2及びn4は、それぞれ独立に、0~29の整数を表し、n2+n4は、0~30の整数であり、-(A-O)-及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。ブロックの場合、-(A-O)-がビスフェニル基側であってもよく、-(B-O)-がビスフェニル基側であってもよい。n1+n2+n3+n4は、2~20の整数であることが好ましく、2~16の整数であることがより好ましく、4~12の整数であることが特に好ましい。n2+n4は、0~10の整数であることが好ましく、0~4の整数であることがより好ましく、0~2の整数であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。
【0128】
感光性樹脂層は、1種又は2種以上の重合性化合物B1を含んでもよい。
【0129】
感光性樹脂層における、重合性化合物B1の含有量は、解像性がより優れる点から、感光性樹脂層の総質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、転写性及び耐エッジフューズ性の点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0130】
解像性がより優れる点から、感光性樹脂層における重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の比は、質量基準で、40%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。感光性樹脂層における重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の比の上限は、制限されない。剥離性の点から、感光性樹脂層における重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の比は、質量基準で、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。
【0131】
感光性樹脂層は、上述した重合性化合物B1以外の重合性化合物Bを含んでもよい。重合性化合物B1以外の重合性化合物Bとしては、例えば、単官能のエチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物)、芳香環を有しない2官能エチレン性不飽和化合物(すなわち、芳香環を有しておらず、かつ、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する化合物)及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物)が挙げられる。
【0132】
単官能のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0133】
芳香環を有しない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
【0134】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業株式会社)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業株式会社)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業株式会社)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業株式会社)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0135】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0136】
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ウレタンジ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル株式会社)、UA-32P(新中村化学工業株式会社)及びUA-1100H(新中村化学工業株式会社)が挙げられる。
【0137】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート及びこれらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、そして、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0138】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、例えば、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(例えば、KAYARAD DPCA-20(日本化薬株式会社)及びA-9300-1CL(新中村化学工業株式会社))、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(KAYARAD RP-1040(日本化薬株式会社)、ATM-35E(新中村化学工業株式会社)、A-9300(新中村化学工業株式会社)及びEBECRYL 135(ダイセル・オルネクス社))、エトキシル化グリセリントリアクリレート(例えば、A-GLY-9E(新中村化学工業株式会社))、アロニックスTO-2349(東亞合成株式会社)、アロニックスM-520(東亞合成株式会社)及びアロニックスM-510(東亞合成株式会社)が挙げられる。
【0139】
現像等の処理液耐性の観点から、感光性樹脂層は、重合性化合物B1及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、重合性化合物B1及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。重合性化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物の質量比(重合性化合物B1の合計質量:3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量)は、1:1~5:1であることが好ましく、1.2:1~4:1であることがより好ましく、1.5:1~3:1であることが特に好ましい。
【0140】
重合性化合物B1以外の重合性化合物Bとしては、特開2004-239942号公報の段落0025~段落0030に記載された酸基を有する重合性化合物を用いてもよい。
【0141】
感光性樹脂層は、1種又は2種以上の重合性化合物Bを含んでもよい。
【0142】
感光性樹脂層における重合性化合物Bの含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0143】
重合性化合物Bの分子量は、200~3,000であることが好ましく、280~2,200であることがより好ましく、300~2,200であることが特に好ましい。分子量分布を有する重合性化合物Bの分子量は、重量平均分子量(Mw)によって表される。
【0144】
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量Mmと重合体Aの含有量Mbとの比Mm/Mbの値は、解像性及び直線性の観点から、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、及び、解像性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、解像性及び直線性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含み、かつ、感光性樹脂層に含まれる(メタ)アクリル化合物の全質量に対するアクリル化合物の含有割合は、60質量%以下であることがより好ましい。
【0145】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性光線(例えば、紫外線、可視光線及びX線)を受けて、重合性化合物の重合を開始する化合物である。
【0146】
光重合開始剤の種類は、制限されない。本開示に係る光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を包含する。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0147】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤及びN-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤が挙げられる。
【0148】
感光性、露光部の視認性、非露光部の視認性及び解像性の観点から、感光性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤として、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾール構造は、同一であっても異なっていてもよい。2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体及び2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0149】
光ラジカル重合開始剤として、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~段落0042及び特開2015-14783号公報の段落0064~段落0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0150】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル及びアニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)が挙げられる。
【0151】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、TAZ-110(商品名:みどり化学株式会社)、ベンゾフェノン、TAZ-111(商品名:みどり化学株式会社)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE01、BASF社)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE02、BASF社)、IRGACURE OXE03(BASF社)、IRGACURE OXE04(BASF社)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.社)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.社)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.社)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.社)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.社)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.社)、2,4,6-トリメチルベンゾリル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.社)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾリル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.社)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン株式会社)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(別名:2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、商品名:B-CIM、Hampford社)、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業株式会社)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-305、常州強力電子新材料社)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(商品名:TR-PBG-326、常州強力電子新材料社)及び3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-391、常州強力電子新材料社)が挙げられる。
【0152】
光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤としては、300nm以上の波長(好ましくは300nm~450nmの波長)を含む活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましい。また、300nm以上の波長を含む活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤は、増感剤と併用することによって300nm以上の波長を含む活性光線に感応して酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0153】
光カチオン重合開始剤は、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることが好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることがより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることが特に好ましい。pKaの下限は、制限されない。光カチオン重合開始剤が発生する酸のpKaは、-10.0以上であることが好ましい。
【0154】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、イオン性光カチオン重合開始剤及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、オニウム塩化合物(例えば、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類)及び第4級アンモニウム塩類が挙げられる。イオン性光カチオン重合開始剤として、特開2014-85643号公報の段落0114~段落0133に記載されたイオン性光カチオン重合開始剤を用いてもよい。非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物として、例えば、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載された化合物を用いてもよい。また、オキシムスルホネート化合物として、国際公開第2018/179640号の段落0084~段落0088に記載された化合物を用いてもよい。
【0155】
感光性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0156】
感光性樹脂層は、1種又は2種以上の光重合開始剤を含んでもよい。
【0157】
感光性樹脂層における光重合開始剤の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。光重合開始剤の含有率の上限は、制限されない。感光性樹脂層における光重合開始剤の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0158】
(色素)
露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性及び解像性の観点から、感光性樹脂層は、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、「色素N」という場合がある。)を含むことが好ましい。感光性樹脂層が色素Nを含むことで、感光性樹脂層に隣接する層(例えば、仮支持体)との密着性が向上し、解像性が向上する。
【0159】
本開示において、色素に関して使用される用語「酸、塩基又はラジカルにより最大吸収波長が変化する」は、(1)発色状態にある色素が、酸、塩基又はラジカルにより消色する態様、(2)消色状態にある色素が、酸、塩基又はラジカルにより発色する態様及び(3)発色状態にある色素が、他の色相の発色状態に変化する態様を包含する。例えば、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物又は露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。色素Nは、露光により感光性樹脂層内に発生した酸、塩基又はラジカルが作用することにより、発色又は消色の状態が変化する色素であってもよい。色素Nは、酸、塩基又はラジカルにより感光性樹脂層内の状態(例えばpH)が変化することで発色又は消色の状態が変化する色素であってもよい。また、色素Nは、露光を介さずに、酸、塩基又はラジカルの作用を直接受けて発色又は消色の状態が変化する色素であってもよい。
【0160】
露光部の視認性及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
【0161】
露光部の視認性、非露光部の視認性及び解像性の観点から、色素Nは、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。露光部の視認性、非露光部の視認性及び解像性の観点から、感光性樹脂層は、色素Nとしてラジカルにより最大吸収波長が変化する色素と、光ラジカル重合開始剤と、を含むことが好ましい。
【0162】
露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性及び解像性の観点から、色素Nは、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
【0163】
本開示における色素Nの発色機構としては、例えば、感光性樹脂層に含まれる光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)又は光塩基発生剤から発生する、ラジカル、酸又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素又は塩基反応性色素(例えば、ロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
【0164】
露光部の視認性及び非露光部の視認性の観点から、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける色素Nの極大吸収波長は、550nm以上であることが好ましく、550~700nmであることがより好ましく、550~650nmであることが更に好ましい。発色時の波長範囲である400~780nmにおける極大吸収波長の数は、1つまたは2つ以上であってもよい。発色時の波長範囲である400~780nmにおける極大吸収波長の数が2つ以上である場合、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
【0165】
色素Nの極大吸収波長は、以下の方法によって測定される。大気雰囲気下で、分光光度計(例えば、UV3100、株式会社島津製作所)を用いて、400nm~780nmの波長範囲で色素Nを含む溶液(液温:25℃)の透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長を検出する。光の強度が極小となる波長を極大吸収波長として採用する。
【0166】
露光により発色又は消色する色素としては、例えば、ロイコ色素が挙げられる。
【0167】
露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ色素、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素及びアントラキノン系色素が挙げられる。
【0168】
露光部の視認性及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、ロイコ色素であることが好ましい。
【0169】
ロイコ色素としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ色素(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ色素(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ色素(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ色素(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ色素(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ色素(インドリルフタリド系色素)及びロイコオーラミン骨格を有するロイコ色素(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。上記の中でも、トリアリールメタン系色素又はフルオラン系色素が好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ色素(トリフェニルメタン系色素)又はフルオラン系色素がより好ましい。
【0170】
露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ色素は、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有することが好ましい。ロイコ色素におけるラクトン環、スルチン環又はスルトン環が光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応することで、ロイコ色素を閉環状態に変化させて消色させること、又はロイコ色素を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ色素は、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有し、ラジカル又は酸により、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環が開環して発色する化合物であることが好ましく、ラクトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物であることがより好ましい。
【0171】
ロイコ色素の具体例としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-ザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド及び3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
【0172】
色素Nとしては、例えば、染料も挙げられる。染料としては、例えば、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業株式会社)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業株式会社)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業株式会社)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業株式会社)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業株式会社)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業株式会社)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業株式会社)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業株式会社)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業株式会社)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン及び1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
【0173】
色素Nは、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン又はビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩であることが好ましい。
【0174】
感光性樹脂層は、1種又は2種以上の色素Nを含んでもよい。
【0175】
露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性及び解像性の観点から、色素Nの含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.1質量%~1質量%であることが特に好ましい。色素Nの含有率は、感光性樹脂層に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素Nの含有率を意味する。以下、ラジカルにより発色する色素を例に、色素の定量方法を説明する。メチルエチルケトン(100mL)に色素(0.001g)を溶かした溶液及びメチルエチルケトン(100mL)に0.01gを溶かした溶液を調製する。各溶液に、光ラジカル重合開始剤(Irgacure OXE01、BASF社)を加え、次に、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させて、全ての色素を発色状態にする。大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、株式会社島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて感光性樹脂層(3g)をメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記した方法と同じ方法によって、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。検量線に基づいて、感光性樹脂層を含む溶液の吸光度から感光性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
【0176】
(界面活性剤)
厚さの均一性の観点から、感光性樹脂層は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤は、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤であることが好ましい。
【0177】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(例えば、F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-444、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、MFS-578、MFS-578-2、MFS-579、MFS-586、MFS-587、MFS-628、MFS-631、MFS-603、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K及びDS-21、DIC株式会社)、フロラード(例えば、FC430、FC431及びFC171、住友スリーエム株式会社)、サーフロン(例えば、S-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393及びKH-40、AGC株式会社)、PolyFox(例えば、PF636、PF656、PF6320、PF6520及びPF7002、OMNOVA社)及びフタージェント(例えば、710FL、710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、681及び683、株式会社ネオス)、U-120E(ユニケム株式会社)が挙げられる。
【0178】
フッ素系界面活性剤として、フッ素原子を含む官能基を含む分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含む官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物を用いてもよい。上記のようなフッ素系界面活性剤としては、DIC株式会社のメガファックDSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日)、例えば、メガファックDS-21)が挙げられる。
【0179】
フッ素系界面活性剤として、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いてもよい。
【0180】
フッ素系界面活性剤として、ブロックポリマーを用いてもよい。
【0181】
フッ素系界面活性剤として、フッ素原子を含む(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、2つ以上(好ましくは5つ以上)のアルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基)を含む(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物を用いてもよい。
【0182】
フッ素系界面活性剤として、エチレン性不飽和結合を含む基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いてもよい。上記のようなフッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(例えば、RS-101、RS-102、RS-718K及びRS-72-K、DIC株式会社)が挙げられる。
【0183】
フッ素系界面活性剤としては、環境適性向上の観点から、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物の代替材料に由来する界面活性剤であることが好ましい。
【0184】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート(例えば、グリセロールエトキシレート)及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート)が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック(例えば、L10、L31、L61、L62、10R5、17R2及び25R2、HYDROPALAT WE 3323、BASF社)、テトロニック(例えば、304、701、704、901、904及び150R1、BASF社)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール株式会社)、NCW-101(富士フイルム和光純薬株式会社)、NCW-1001(富士フイルム和光純薬株式会社)、NCW-1002(富士フイルム和光純薬株式会社)、パイオニン(例えば、D-1105、D-6112、D-6112-W及びD-6315、竹本油脂株式会社)、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社)及びサーフィノール(例えば、104、400及び440、日信化学工業株式会社)も挙げられる。
【0185】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー及び側鎖又は末端に有機基が導入された変性シロキサンポリマーが挙げられる。
【0186】
界面活性剤としては、例えば、DOWSIL8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA及びトーレシリコーンSH8400(東レ・ダウコーニング株式会社)が挙げられる。
【0187】
界面活性剤としては、例えば、EXP.S-309-2、EXP.S-315、EXP.S-503-2、EXP.S-505-2(以上、DIC株式会社製)が挙げられる。
【0188】
界面活性剤としては、例えば、X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001及びKF-6002(信越化学工業株式会社)が挙げられる。
【0189】
界面活性剤としては、例えば、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460及びTSF-4452(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)が挙げられる。
【0190】
界面活性剤としては、例えば、BYK307、BYK323及びBYK330(ビックケミー社)等が挙げられる。
【0191】
界面活性剤としては、例えば、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK325、BYK313、BYK315N、BYK331、BYK333、BYK345、BYK347、BYK348、BYK349、BYK370、BYK377、BYK378、BYK323(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0192】
感光性樹脂層は、1種又は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0193】
界面活性剤の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0194】
(添加剤)
感光性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、熱架橋性化合物、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、増感剤、可塑剤、ヘテロ環状化合物及び溶剤が挙げられる。感光性樹脂層は、1種又は2種以上の添加剤を含んでもよい。
【0195】
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、エチレン性不飽和化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、重合体A及び/又はエチレン性不飽和化合物が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、感光性樹脂層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0196】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100℃~160℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。
ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。
示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
【0197】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。
これらの中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物を含むことが好ましい。
【0198】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、且つ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
【0199】
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
中でも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基が更に好ましい。
【0200】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工株式会社製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ株式会社製)が挙げられる。
また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
【0201】
【0202】
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0203】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤が挙げられる。ラジカル重合禁止剤は、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールであることが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩及びジフェニルニトロソアミンも挙げられる。感光性樹脂層の感度を損なわないために、ラジカル重合禁止剤としてニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩を使用することが好ましい。
【0204】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール及びビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0205】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール及びN-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール類の市販品としては、例えば、CBT-1(城北化学工業株式会社)が挙げられる。
【0206】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾ-ル類及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル類の合計含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。上記した添加剤の合計含有率を0.01質量%以上にすることは、感光性樹脂層に保存安定性を付与するという観点から好ましい。一方で、上記した添加剤の合計含有率を3質量%以下にすることは、感度を維持し、染料の脱色を抑える観点から好ましい。
【0207】
増感剤の種類は、制限されない。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。
【0208】
光源に対する感度の向上及び重合速度と連鎖移動とのバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性樹脂層が増感剤を含む場合の増感剤の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
【0209】
可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0097~段落0103及び段落0111~段落0118に記載された化合物が挙げられる。
【0210】
溶剤としては、例えば、下記「感光性樹脂層の形成方法」の項で説明する溶剤が挙げられる。例えば、溶剤を含む感光性樹脂層形成用組成物を用いて感光性樹脂層を形成した場合、感光性樹脂層に溶剤が残留することがある。
【0211】
感光性樹脂層は、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、有機の沈殿防止剤及び無機の沈殿防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。
【0212】
感光性樹脂層に含まれる添加剤については、特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0213】
(不純物)
感光性樹脂層は、不純物を含んでもよい。不純物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンは、不純物として混入し易いため、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの含有率は、下記の範囲にすることが好ましい。
【0214】
感光性樹脂層における不純物の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、80ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、2ppm以下であることが特に好ましい。感光性樹脂層における不純物の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、1ppb以上又は0.1ppm以上であってもよい。不純物の含有率を上記範囲にする方法としては、不純物の含有量が少ない原料を選択すること、感光性樹脂層の形成時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法及びイオンクロマトグラフィー法といった公知の方法によって定量される。
【0215】
感光性樹脂層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びヘキサンといった化合物の含有率は、少ないことが好ましい。感光性樹脂層における上記化合物の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、100ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、4ppm以下であることが特に好ましい。感光性樹脂層における上記化合物の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、10ppb以上又は100ppb以上であってもよい。上記化合物の含有率は、上記不純物の含有率を調整する方法と同じ方法によって調整される。また、上記化合物は、公知の測定法によって定量される。
【0216】
信頼性及びラミネート性を向上させる点から、感光性樹脂層における水の含有率は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.5質量%であることがより好ましい。
【0217】
(残存モノマー)
感光性樹脂層は、残存モノマー、例えば、上述した重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
残存モノマーの含有率は、パターニング性、及び、信頼性の点から、重合体Aの全質量に対して、5,000質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下がより好ましく、500質量ppm以下が更に好ましい。残存モノマーの含有率の下限は特に制限されないが、重合体Aの全質量に対して、1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましい。
重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーの含有率は、パターニング性、及び、信頼性の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、3,000質量ppm以下が好ましく、600質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下が更に好ましい。重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーの含有率の下限は特に制限されないが、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量ppm以上が好ましく、1質量ppm以上がより好ましい。
【0218】
高分子反応で重合体Aを合成する際のモノマーの残存モノマー量も、上記範囲とすることが好ましい。例えば、カルボン酸側鎖にアクリル酸グリシジルを反応させて重合体Aを合成する場合には、アクリル酸グリシジルの含有量を上記範囲にすることが好ましい。
残存モノマーの量は、液体クロマトグラフィー、及び、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法で測定できる。
【0219】
(厚さ)
感光性樹脂層の厚さは、制限されない。感光性樹脂層の厚さは、例えば、0.1μm~100μmの範囲で決定される。現像性及び解像性の観点から、感光性樹脂層の厚さは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。さらに、感光性樹脂層の厚さは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。現像液等の処理液耐性の観点から、感光性樹脂層の厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが特に好ましい。さらに、感光性樹脂層の厚さは、0.5μm~10μmであることが好ましく、0.5μm~5μmであることがより好ましい。また、感光性樹脂層の厚さは、0.5μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~4μmであることが特に好ましい。感光性樹脂層の厚さは、仮支持体の厚さの測定方法に準ずる方法によって測定される。
【0220】
(透過率)
密着性により優れる点から、波長365nmにおける感光性樹脂層の透過率は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。波長365nmにおける感光性樹脂層の透過率の上限は、制限されない。波長365nmにおける感光性樹脂層の透過率は、99.9%以下であることが好ましい。
【0221】
(感光性樹脂層の形成方法)
感光性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。感光性樹脂層は、例えば、感光性樹脂層形成用組成物を調製し、仮支持体の上に感光性樹脂層形成用組成物を塗布し、そして、塗布された感光性樹脂層形成用組成物を乾燥することで形成される。
【0222】
感光性樹脂層形成用組成物としては、例えば、重合体A、重合性化合物B及び光重合開始剤を含む組成物が挙げられる。感光性樹脂層形成用組成物の粘度を調節し、感光性樹脂層の形成を容易にするため、感光性樹脂層形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
【0223】
溶剤は、感光性樹脂層の成分を溶解又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤としては、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(例えば、メタノール及びエタノール)、ケトン溶剤(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、芳香族炭化水素溶剤(例えば、トルエン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、環状エーテル溶剤(例えば、テトラヒドロフラン)、エステル溶剤、アミド溶剤及びラクトン溶剤が挙げられる。
【0224】
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
【0225】
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0226】
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落0092~段落0094に記載された溶剤及び特開2018-177889公報の段落0014に記載された溶剤も挙げられる。これらの公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0227】
感光性樹脂層形成用組成物は、1種又は2種以上の溶剤を含んでもよい。感光性樹脂層形成用組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤及び環状エーテル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことがより好ましく、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤と、環状エーテル溶剤と、含むことが特に好ましい。
【0228】
感光性樹脂層形成用組成物における溶剤の含有率は、感光性樹脂層形成用組成物中の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
【0229】
感光性樹脂層形成用組成物の調製方法は、制限されない。感光性樹脂層形成用組成物は、例えば、各成分を溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより調製される。感光性樹脂層の形成前に、孔径が0.2μm~30μmのフィルターを用いて、感光性樹脂層形成用組成物をろ過することが好ましい。
【0230】
感光性樹脂層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布が挙げられる。
【0231】
<<熱可塑性樹脂層>>
本開示に係る感光性転写材料は、熱可塑性樹脂層を含んでもよい。感光性転写材料が熱可塑性樹脂層を含むことで、感光性転写材料と基板との貼り合わせにおいて基板への感光性転写材料の追従性が向上し、感光性転写材料と基板との間に気泡が混入することを抑制する。また、感光性転写材料が熱可塑性樹脂層を含むことで、層間の密着性が向上する。本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間に、熱可塑性樹脂層を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂層については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0232】
(アルカリ可溶性樹脂)
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0233】
現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂は、アクリル樹脂であることが好ましい。ここで、アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位及び(メタ)アクリル酸アミドに由来の構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂を意味する。現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位を有するアクリル樹脂が特に好ましい。
【0234】
(メタ)アクリル酸に由来の構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位及び(メタ)アクリル酸アミドに由来の構成単位の合計含有率は、アクリル樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸に由来の構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の合計含有率は、アクリル樹脂の全質量に対して、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0235】
アルカリ可溶性樹脂は、酸基を含むことが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基及びホスホン酸基が挙げられる。酸基は、カルボキシ基であることが好ましい。
【0236】
現像性の観点から、アルカリ可溶性樹脂は、酸価が60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、酸価が60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であることがより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0237】
酸価が60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載されたポリマーのうちの酸価が60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~段落0052に記載されたポリマーのうちの酸価が60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂及び特開2016-224162号公報の段落0053~段落0068に記載されたバインダーポリマーのうちの酸価が60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
【0238】
カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の含有率は、アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、12質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0239】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を含んでもよい。反応性基としては、例えば、エチレン性不飽和基、重縮合性基(例えば、ヒドロキシ基及びカルボキシ基)及び重付加反応性基(例えば、エポキシ基及び(ブロック)イソシアネート基)が挙げられる。
【0240】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましく、20,000~50,000であることが特に好ましい。
【0241】
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂を含んでもよい。
【0242】
現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の含有率は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、40質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0243】
(色素)
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲である400~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、「色素B」という場合がある。)を含むことが好ましい。色素Bの好ましい態様は、以下に示す事項を除いて、色素Nの好ましい態様と同様である。
【0244】
露光部の視認性、非露光部の視認性及び解像性の観点から、色素Bは、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
【0245】
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の色素Bを含んでもよい。
【0246】
露光部の視認性及び非露光部の視認性の観点から、色素Bの含有率は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.2質量%~6質量%であることがより好ましく、0.2質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.25質量%~3.0質量%であることが特に好ましい。ここで、色素Bの含有量は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下、ラジカルにより発色する色素を例に、色素の定量方法を説明する。メチルエチルケトン(100mL)に色素B(0.001g)を溶かした溶液及びメチルエチルケトン(100mL)に色素B(0.01g)を溶かした溶液を調製する。各溶液に、光ラジカル重合開始剤(Irgacure OXE01、BASF社)を加え、次に、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させて、全ての色素を発色状態にする。大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、株式会社島津製作所)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層(0.1g)をメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記した方法と同じ方法によって、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。検量線に基づいて、熱可塑性樹脂層を含む溶液の吸光度から熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
【0247】
露光部の視認性、非露光部の視認性及び解像性の観点から、熱可塑性樹脂層は、色素Bとして酸により最大吸収波長が変化する色素と、光により酸を発生する化合物と、を含むことが好ましい。光により酸を発生する化合物については後述する。
【0248】
(光により、酸、塩基又はラジカルを発生する化合物)
熱可塑性樹脂層は、光により、酸、塩基又はラジカルを発生する化合物(以下、「化合物C」という場合がある。)を含んでもよい。化合物Cは、活性光線(例えば、紫外線及び可視光線)を受けて、酸、塩基又はラジカルを発生する化合物であることが好ましい。化合物Cとしては、例えば、光酸発生剤、光塩基発生剤及び光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)が挙げられる。上記の中でも、光酸発生剤が好ましい。
【0249】
解像性の観点から、熱可塑性樹脂層は、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤としては、上記「感光性樹脂層」の項で説明した光カチオン重合開始剤が挙げられる。光酸発生剤の好ましい態様は、以下に示す事項を除いて、上記「感光性樹脂層」の項で説明した光カチオン重合開始剤の好ましい態様と同じである。感度及び解像性の観点から、光酸発生剤は、オニウム塩化合物及びオキシムスルホネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。感度、解像性及び密着性の観点から、光酸発生剤は、オキシムスルホネート化合物を含むことが好ましい。好ましい光酸発生剤の具体例を以下に示す。
【0250】
【0251】
熱可塑性樹脂層は、光塩基発生剤を含んでもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン及び2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0252】
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)を含んでもよい。光ラジカル重合開始剤としては、上記「感光性樹脂層」の項で説明した光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項で説明した光ラジカル重合開始剤の好ましい態様と同じである。
【0253】
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の化合物Cを含んでもよい。
【0254】
露光部の視認性、非露光部の視認性及び解像性の観点から、熱可塑性樹脂層における化合物Cの含有率は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0255】
(可塑剤)
解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層は、可塑剤を含むことが好ましい。
【0256】
可塑剤の分子量(可塑剤が分子量分布を有する場合には重量平均分子量(Mw))は、アルカリ可溶性樹脂の分子量よりも小さいことが好ましい。可塑剤の分子量は、200~2,000であることが好ましい。
【0257】
可塑剤としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物が挙げられる。可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を含む化合物であることが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物であることがより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造を有することがより好ましい。
【0258】
解像性及び保存安定性の観点から、可塑剤は、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。相溶性、解像性及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、上記「重合性化合物B」の項で説明した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。感光性転写材料において熱可塑性樹脂層が感光性樹脂層に接触している場合、熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層は、同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層が同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上する。
【0259】
隣接する層との密着性の観点から、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、露光後の露光部においても重合しないことが好ましい。
【0260】
解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0261】
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物又はウレタン(メタ)アクリレート化合物であることも好ましい。
【0262】
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の可塑剤を含んでもよい。
【0263】
解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層における可塑剤の含有率は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0264】
(界面活性剤)
厚さ均一性の観点から、熱可塑性樹脂層は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項で説明した界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項で説明した界面活性剤の好ましい態様と同じである。
【0265】
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0266】
熱可塑性樹脂層における界面活性剤の含有率は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0267】
(増感剤)
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。増感剤としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項で説明した増感剤が挙げられる。
【0268】
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の増感剤を含んでもよい。
【0269】
光源に対する感度の向上、及び、露光部及び非露光部の視認性の観点から、増感剤の含有率は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
【0270】
(添加剤)
熱可塑性樹脂層は、上記した成分に加えて、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
【0271】
(厚さ)
熱可塑性樹脂層の厚さは、制限されない。隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。現像性及び解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の厚さは、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂層の厚さは、仮支持体の厚さの測定方法に準ずる方法によって測定される。
【0272】
(熱可塑性樹脂層の形成方法)
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。熱可塑性樹脂層は、例えば、熱可塑性樹脂層形成用組成物を調製し、対象物(例えば、感光性樹脂層)の上に熱可塑性樹脂層形成用組成物を塗布し、そして、塗布された熱可塑性樹脂層形成用組成物を乾燥することで形成される。
【0273】
熱可塑性樹脂層形成用組成物の粘度を調節し、熱可塑性樹脂層の形成を容易にするため、熱可塑性樹脂層形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は、熱可塑性樹脂層の成分を溶解又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤としては、上記「感光性樹脂層」の項で説明した溶剤が挙げられる。溶剤の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項で説明した溶剤の好ましい態様と同じである。
【0274】
熱可塑性樹脂層形成用組成物は。1種又は2種以上の溶剤を含んでもよい。
【0275】
熱可塑性樹脂層形成用組成物における溶剤の含有率は、熱可塑性樹脂層形成用組成物中の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
【0276】
熱可塑性樹脂層形成用組成物は、例えば、感光性樹脂層形成用組成物の調製方法に準ずる方法によって調製される。熱可塑性樹脂層形成用組成物は、例えば、感光性樹脂層形成用組成物の塗布方法に準ずる方法によって塗布される。
【0277】
<<中間層>>
本開示に係る感光性転写材料は、感光性樹脂層と熱可塑性樹脂層との間に中間層を含むことが好ましい。感光性転写材料が中間層を含むことで、感光性転写材料の形成又は感光性転写材料の保存において層間で起こる成分の混合を抑制できる。現像性及び感光性転写材料の形成又は感光性転写材料の保存において層間で起こる成分の混合の抑制の観点から、中間層は、水溶性の層であることが好ましい。本開示において、「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水(100g)への溶解度が0.1g以上である性質を意味する。
【0278】
中間層としては、例えば、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能を有する酸素遮断層が挙げられる。酸素遮断層は、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減し、生産性が向上するという点で好ましい。酸素遮断層は、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液(1質量%の炭酸ナトリウム水溶液、液温:22℃)に分散又は溶解する酸素遮断層であることが好ましい。
【0279】
中間層は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂及びポリアミド樹脂が挙げられる。樹脂は、単独重合体又は共重合体であってもよい。樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。
【0280】
酸素遮断性及び感光性転写材料の形成又は感光性転写材料の保存において層間で起こる成分の混合の抑制の観点から、中間層は、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコールと、ポリビニルピロリドンと、を含むことがより好ましい。
【0281】
層間で起こる成分の混合を抑制する観点から、中間層に含まれる樹脂は、感光性樹脂層に含まれる重合体Aとは異なる樹脂であり、かつ、熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(例えば、アルカリ可溶性樹脂)とは異なる樹脂であることが好ましい。
【0282】
中間層は、1種又は2種以上の樹脂を含んでもよい。
【0283】
酸素遮断性及び感光性転写材料の形成又は感光性転写材料の保存において層間で起こる成分の混合の抑制の観点から、中間層における樹脂の含有率は、中間層の全質量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0284】
中間層は、必要に応じて、界面活性剤といった添加剤を含んでもよい。界面活性剤としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項で説明した界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項で説明した界面活性剤の好ましい態様と同じである。
【0285】
中間層の厚さは、制限されない。中間層の厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。中間層の厚さが上記の範囲内であると、酸素遮断性を低下させることがなく、感光性転写材料の形成又は感光性転写材料の保存において層間で起こる成分の混合を抑制でき、また、現像工程における中間層の除去時間の増大を抑制できる。中間層の厚さは、仮支持体の厚さの測定方法に準ずる方法によって測定される。
【0286】
中間層の形成方法は、制限されない。中間層は、例えば、樹脂及び任意の添加剤を含む中間層形成用組成物を調製し、熱可塑性樹脂層又は感光性樹脂層の表面に中間層形成用組成物を塗布し、塗布された中間層形成用組成物を乾燥することで形成される。
【0287】
中間層形成用組成物の粘度を調節し、中間層の形成を容易にするため、中間層形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は、樹脂を溶解又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤は、水及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤であることがより好ましい。水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数が1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール及びグリセリンが挙げられる。水混和性の有機溶剤は、炭素数が1~3のアルコールであることが好ましく、メタノール又はエタノールであることがより好ましい。
【0288】
<<保護フィルム>>
本開示に係る感光性転写材料は、保護フィルムを含むことが好ましい。本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、感光性樹脂層と、保護フィルムと、をこの順で含むことが好ましい。保護フィルムは、感光性転写材料の最外層であることが好ましい。
【0289】
保護フィルムとしては、例えば、樹脂フィルム及び紙が挙げられる。強度及び可撓性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。上記の中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0290】
保護フィルムの厚さは、制限されない。保護フィルムの厚さは、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましい。保護フィルムの厚さは、仮支持体の厚さの測定方法に準ずる方法によって測定される。
【0291】
解像性により優れる点から、保護フィルムの感光性樹脂層側の表面(以下、単に「保護フィルムの表面」という場合がある。)の算術平均粗さRaは、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることが特に好ましい。保護フィルムの表面の算術平均粗さRaが上記範囲であることで、感光性樹脂層及び形成される樹脂パターンの厚さの均一性が向上するためと考えられる。保護フィルムの算術平均粗さRaの下限は、0.001μm以上であることが好ましい。
【0292】
保護フィルムの表面の算術平均粗さRaは、以下の方法によって測定される。3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社)を用いて、以下の条件にて保護フィルムの表面プロファイルを得る。測定及び解析ソフトウェアとして、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフトウェアを用いてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さRaを算出する。感光性転写材料に含まれる保護フィルムの表面の算術平均粗さRaの測定においては、感光性転写材料から保護フィルムを剥離することで現れた保護フィルムの表面の算術平均粗さRaを測定すればよい。
【0293】
<<仮支持体、感光性樹脂層及び保護フィルムの関係>>
本開示に係る感光性転写材料は、感光性樹脂層を硬化した硬化膜の120℃における破断伸びが15%以上であり、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaが50nm以下であり、保護フィルムの感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaが150nm以下であることが好ましい。
【0294】
また、本開示に係る感光性転写材料は、下記式(R1)を満たすことが好ましい。
X×Y<1,500:式(R1)
ここで、上記式(R1)中、Xは、感光性樹脂層を硬化した硬化膜の120℃における破断伸びの値(%)を表し、Yは、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表す。
X×Yは、750以下がより好ましい。
【0295】
感光性樹脂層を硬化した硬化膜の23℃での破断伸びに対し、120℃での破断伸びが2倍以上大きいことが好ましい。
破断伸びは、厚み20μmの感光性樹脂層を超高圧水銀ランプにより120mJ/cm2で露光して硬化した後、高圧水銀ランプで400mJ/cm2で更に追加露光し、145℃で30分間加熱した後の硬化膜を用い、引っ張り試験によって測定する。
【0296】
また、本開示に係る感光性転写材料は、下記式(R2)を満たすことが好ましい。
Y≦Z:式(R2)
ここで、上記式(R2)中、Yは、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表し、Zは、保護フィルムの感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表す。
【0297】
<<他の層>>
本開示に係る感光性転写材料は、上述した層以外の層(以下、本段落において「他の層」という。)を含んでもよい。他の層としては、例えば、コントラストエンハンスメント層(屈折率調整層ともいう。)が挙げられる。コントラストエンハンスメント層については、国際公開第2018/179640号の段落0134に記載されている。また、他の層については、特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196に記載されている。これらの公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0298】
<<感光性転写材料の製造方法>>
本開示に係る感光性転写材料の製造方法は、制限されない。感光性転写材料は、例えば、上述の各層の形成方法を利用して製造される。以下、
図1及び
図2を参照しながら、感光性転写材料の製造方法について説明する。
図1は、本開示に係る感光性転写材料の構成を示す概略図である。
図2は、本開示の他の一実施形態に係る感光性転写材料の構成を示す概略図である。
図3は、本開示の他の一実施形態に係る感光性転写材料の構成を示す概略図である。
【0299】
図1に示される感光性転写材料100は、仮支持体10と、感光性樹脂層20と、保護フィルム30と、をこの順で含む。感光性転写材料100は、例えば、以下の方法によって製造される。第1の面10a及び上記第1の面10aの反対側に第2の面10bを有する仮支持体10を準備する。仮支持体10の第2の面10bの上に、感光性樹脂層形成用組成物を塗布し、塗布された感光性樹脂層形成用組成物を乾燥して、感光性樹脂層20を形成する。感光性樹脂層20の上に、保護フィルム30を配置する。上記の方法によって製造された感光性転写材料100を巻き取ることで、ロール形態の感光性転写材料100を作製及び保管してもよい。ロール形態の感光性転写材料100は、例えば、ロールツーロール方式によって基板との貼り合わせに使用される。
【0300】
図2に示される感光性転写材料110は、仮支持体11と、感光性樹脂層20と、保護フィルム30と、をこの順で含む。仮支持体11は、仮支持体11から感光性樹脂層20へ向かう積層方向において、粒子含有層11-1と、基材11-2と、をこの順で含む。仮支持体11において、粒子含有層11-1は、仮支持体11の第1の面11a側の最外層として配置されている。仮支持体11において、基材11-2は、仮支持体11の第2の面11b側の最外層として配置されている。感光性転写材料110は、例えば、仮支持体10にかえて仮支持体11を準備すること以外は、上記した感光性転写材料100の製造方法と同じ方法によって製造される。
【0301】
図3に示される感光性転写材料120は、仮支持体10と、熱可塑性樹脂層40、中間層50と、感光性樹脂層20と、保護フィルム30と、をこの順で含む。感光性転写材料120の製造方法としては、例えば、上記した方法に準じて、仮支持体の第2の面10bの上に、熱可塑性樹脂層40、中間層50、感光性樹脂層20及び保護フィルム30をこの順で形成する方法が挙げられる。
【0302】
本開示に係る感光性転写材料の製造方法は、上記した方法に制限されるものではない。例えば、仮支持体にかえて保護フィルムの上に各層を形成することで、感光性転写材料を製造してもよい。
【0303】
<<感光性転写材料の用途>>
本開示に係る感光性転写材料は、例えば、フォトリソグラフィによる精密微細加工を必要とする各種用途に好適に使用される。例えば、感光性樹脂層をパターニングした後、感光性樹脂層又はその硬化物を被膜としてエッチングを行ってよく、又は電気めっきを主体とするエレクトロフォーミングを行ってもよい。パターニングによって得られた硬化物は、永久膜として使用されてもよい。パターニングによって得られた硬化物は、例えば、層間絶縁膜、配線保護膜又はインデックスマッチング層を有する配線保護膜として使用されてもよい。本開示に係る感光性転写材料は、例えば、半導体パッケージ、プリント基板又はセンサー基板における配線の形成方法に好適に使用される。本開示に係る感光性転写材料は、例えば、タッチパネル、電磁波シールド材及びフィルムヒーターといった導電性フィルムの形成方法に好適に使用される。本開示に係る感光性転写材料は、例えば、液晶シール材、マイクロマシン及びマイクロエレクトロニクス分野における構造物の形成方法に好適に使用される。
【0304】
本開示に係る感光性転写材料は、例えば、配線保護膜用感光性転写材料として用いられてもよい。配線保護膜用感光性転写材料として好ましく用いられる感光性転写材料の層構成としては、例えば、以下の(1)及び(2)が挙げられる。
(1)仮支持体/感光性樹脂層/屈折率調整層/保護フィルム
(2)仮支持体/感光性樹脂層/保護フィルム
【0305】
以下、配線保護膜用感光性転写材料として好ましく用いられる感光性転写材料の構成要素について説明する。ただし、配線保護膜用感光性転写材料として好ましく用いられる感光性転写材料の構成要素は、以下に示す構成要素に制限されるものではない。
【0306】
(仮支持体)
仮支持体としては、例えば、上記「仮支持体」の項において説明した仮支持体が挙げられる。仮支持体の好ましい態様は、上記「仮支持体」の項において説明した仮支持体の好ましい態様と同じである。
【0307】
(保護フィルム)
保護フィルムとしては、例えば、上記「保護フィルム」の項において説明した保護フィルムが挙げられる。保護フィルムの好ましい態様は、上記「保護フィルム」の項において説明した保護フィルムの好ましい態様と同じである。
【0308】
(感光性樹脂層)
-アルカリ可溶性樹脂-
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、及び、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物との反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
【0309】
アルカリ可溶性樹脂の好適態様の一つとして、アルカリ現像性及びフィルム形成性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有する樹脂を意味する。(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位のみで構成されていてもよく、(メタ)アクリル化合物以外の重合性単量体に由来する構成単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量の上限は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、100質量%以下である。
【0310】
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、及び、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミドが挙げられる。
【0311】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、及び、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルがより好ましい。
【0312】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
上記構成単位を形成する重合性単量体としては、(メタ)アクリル化合物と共重合可能な(メタ)アクリル化合物以外の化合物であれば特に制限されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及び、α-メチルスチレン等のα位又は芳香族環に置換基を有してもよいスチレン化合物、アクリロニトリル及びビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールエステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及び、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、並びに、クロトン酸が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0313】
また、(メタ)アクリル樹脂は、アルカリ現像性をより良好にする点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及び、ホスホン酸基が挙げられる。
中でも、(メタ)アクリル樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位を有することがより好ましく、上記の(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有することが更に好ましい。
【0314】
(メタ)アクリル樹脂における酸基を有する構成単位(好ましくは(メタ)アクリル酸に由来する構成単位)の含有量は、現像性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、10質量%以上が好ましい。また、上限値は特に制限されないが、アルカリ耐性に優れる点で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0315】
また、(メタ)アクリル樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することがより好ましい。
(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%~90質量%が好ましく、60質量%~90質量%がより好ましく、65質量%~90質量%が更に好ましい。
【0316】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有する樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のみで構成されている樹脂がより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂としては、メタクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸メチルに由来する構成単位、及び、アクリル酸エチルに由来する構成単位を有するアクリル樹脂も好ましい。
【0317】
また、(メタ)アクリル樹脂は、解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有することが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂におけるメタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、解像性の観点から、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されず、100質量%以下であってもよく、80質量%以下が好ましい。
【0318】
また、(メタ)アクリル樹脂は、解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種と、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種とを有することも好ましい。
解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量に対して、質量比で60/40~80/20が好ましい。
【0319】
(メタ)アクリル樹脂は、転写後の感光性樹脂層の現像性に優れる点で、末端にエステル基を有することが好ましい。
なお、(メタ)アクリル樹脂の末端部は、合成に用いた重合開始剤に由来する部位により構成される。末端にエステル基を有する(メタ)アクリル樹脂は、エステル基を有するラジカルを発生する重合開始剤を用いることにより合成できる。
【0320】
また、アルカリ可溶性樹脂は、例えば、現像性の点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、例えば、加熱により架橋成分と熱架橋し、強固な膜を形成しやすいという点から、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有樹脂)であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂)であることが更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂がカルボキシ基を有する樹脂であると、例えば、ブロックイソシアネート化合物等の熱架橋性化合物を添加して熱架橋することで、3次元架橋密度を高めることができる。また、カルボキシ基を有する樹脂のカルボキシ基が無水化され、疎水化すると、湿熱耐性が改善し得る。
【0321】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて、特に制限はなく、公知の(メタ)アクリル樹脂から適宜選択できる。
例えば、特開2011-095716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂等を好ましく使用できる。
【0322】
アルカリ可溶性樹脂の他の好適態様としては、スチレン-アクリル共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、スチレン-アクリル共重合体とは、スチレン化合物に由来する構成単位と、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位とを有する樹脂を指し、上記スチレン化合物に由来する構成単位、及び、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の合計含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
また、スチレン化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、5質量%~80質量%が更に好ましい。
また、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%~95質量%が更に好ましい。
【0323】
アルカリ可溶性樹脂は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、芳香環構造を有することが好ましく、芳香環構造を有する構成単位を有することがより好ましい。
芳香環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、及び、α-メチルスチレン等のスチレン化合物、並びに、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、下記式(S)で表される構成単位(スチレンに由来する構成単位)を有することがより好ましい。
【0324】
【0325】
アルカリ可溶性樹脂が芳香環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~70質量%より好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における芳香環構造を有する構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%が更に好ましく、20モル%~50モル%が特に好ましい。
なお、本明細書において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、上記「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本明細書において、上記「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0326】
アルカリ可溶性樹脂は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、脂肪族炭化水素環構造を有することが好ましい。つまり、アルカリ可溶性樹脂は、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有することが好ましい。中でも、アルカリ可溶性樹脂は、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有することがより好ましい。
【0327】
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位における脂肪族炭化水素環構造を構成する環としては、トリシクロデカン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルナン環、及び、イソボロン環が挙げられる。
中でも、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環が好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環)がより好ましい。
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、アルカリ可溶性樹脂は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましく、上記式(S)で表される構成単位、及び、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましい。
【0328】
【0329】
式(Cy)中、RMは水素原子又はメチル基を表し、RCyは脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基を表す。
【0330】
式(Cy)におけるRMは、メチル基であることが好ましい。
式(Cy)におけるRCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、炭素数5~20の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが好ましく、炭素数6~16の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることがより好ましく、炭素数8~14の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが更に好ましい。
式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
また、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、シクロペンタン環構造、シクロヘキサン環構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造、ノルボルナン環構造、又は、イソボロン環構造であることが好ましく、シクロヘキサン環構造、又は、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることがより好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることが更に好ましい。
更に、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造であることが好ましく、2~4環の脂肪族炭化水素環が縮環した環であることがより好ましい。
更に、式(Cy)におけるRCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、式(Cy)における-C(=O)O-の酸素原子と脂肪族炭化水素環構造とが直接結合する基、すなわち、脂肪族炭化水素環基であることが好ましく、シクロヘキシル基、又は、ジシクロペンタニル基であることがより好ましく、ジシクロペンタニル基であることが更に好ましい。
【0331】
アルカリ可溶性樹脂は、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(Cy)で表される構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
【0332】
アルカリ可溶性樹脂が芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、40質量%~75質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位及び上記式(Cy)で表される構成単位の総含有量は、本現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位のモル量nSと上記式(Cy)で表される構成単位のモル量nCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、下記式(SCy)に示す関係を満たすことが好ましく、下記式(SCy-1)を満たすことがより好ましく、下記式(SCy-2)を満たすことが更に好ましい。
0.2≦nS/(nS+nCy)≦0.8:式(SCy)
0.30≦nS/(nS+nCy)≦0.75:式(SCy-1)
0.40≦nS/(nS+nCy)≦0.70:式(SCy-2)
【0333】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、及び、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
上記酸基を有する構成単位としては、下記に示す、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が好ましく、メタクリル酸由来の構成単位がより好ましい。
【0334】
【0335】
アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が酸基を有する構成単位を有する場合、酸基を有する構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、10質量%~30質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における酸基を有する構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%が更に好ましい。
【0336】
アルカリ可溶性樹脂は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、反応性基を有することが好ましく、反応性基を有する構成単位を有することがより好ましい。
反応性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和基がより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂がエチレン性不飽和基を有している場合、アルカリ可溶性樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
エチレン性不飽和基としては、アリル基又は(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
反応性基を有する構成単位の一例としては、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0337】
【0338】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が反応性基を有する構成単位を有する場合、反応性基を有する構成単位の含有量は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、20質量%~40質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における反応性基を有する構成単位の含有量は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
【0339】
反応性基をアルカリ可溶性樹脂に導入する手段としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、及び、スルホ基等の官能基に、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート化合物、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、及び、カルボン酸無水物等の化合物を反応させる方法が挙げられる。
反応性基をアルカリ可溶性樹脂に導入する手段の好ましい例としては、カルボキシ基を有するポリマーを重合反応により合成した後、高分子反応により、得られた樹脂のカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて、(メタ)アクリロキシ基をポリマーに導入する手段が挙げられる。この手段により、側鎖に(メタ)アクリロキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
上記重合反応は、70℃~100℃の温度条件で行うことが好ましく、80℃~90℃の温度条件で行うことがより好ましい。上記重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製のV-601(商品名)又はV-65(商品名)がより好ましい。上記高分子反応は、80℃~110℃の温度条件で行うことが好ましい。上記高分子反応においては、アンモニウム塩等の触媒を用いることが好ましい。
【0340】
アルカリ可溶性樹脂としては、本開示における効果がより優れる点から、以下に示す樹脂が好ましい。なお、以下に示す各構成単位の含有比率(a~d)及び重量平均分子量Mw等は目的に応じて適宜変更できる。
【0341】
【0342】
上記樹脂において、aは20質量%~60質量%、bは10質量%~50質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0343】
【0344】
上記樹脂において、aは20質量%~60質量%、bは10質量%~50質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0345】
【0346】
上記樹脂において、aは30質量%~65質量%、bは1.0質量%~20質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0347】
【0348】
上記樹脂において、aは1.0質量%~20質量%、bは20質量%~60質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0349】
また、アルカリ可溶性樹脂は、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を有する重合体(以下、「重合体X」ともいう。)を含んでいてもよい。
カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造、及び、環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。
環状カルボン酸無水物構造の環としては、5員環~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環が更に好ましい。
【0350】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位、又は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
【0351】
【0352】
式P-1中、RA1aは、置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよく、Z1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表し、n1aは、0以上の整数を表す。
【0353】
RA1aで表される置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。
Z1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が更に好ましい。
n1aは、0以上の整数を表す。Z1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
n1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
【0354】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位としては、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位が好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位がより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位が更に好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位が特に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位が最も好ましい。
【0355】
以下、カルボン酸無水物構造を有する構成単位の具体例を挙げるが、カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、これらの具体例に限定されるものではない。下記の構成単位中、Rxは、水素原子、メチル基、CH2OH基、又は、CF3基を表し、Meは、メチル基を表す。
【0356】
【0357】
【0358】
重合体Xにおけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0359】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位の総含有量は、重合体Xの全構成単位に対して、0モル%~60モル%が好ましく、5モル%~40モル%がより好ましく、10モル%~35モル%が更に好ましい。
【0360】
感光性樹脂層は、重合体Xを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層が重合体Xを含む場合、解像性及び現像性の観点から、重合体Xの含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、0.2質量%~20質量%がより好ましく、0.5質量%~20質量%が更に好ましく、1質量%~20質量%が更に好ましい。
【0361】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、解像性及び現像性を向上させる観点から5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましく、20,000~30,000が特に好ましい。
【0362】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、10mgKOH/g~200mgKOH/gが好ましく、60mgKOH/g~200mgKOH/gがより好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gが更に好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gが特に好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂の酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って、測定される値である。
アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、現像性の観点から、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0が更に好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
【0363】
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光性、解像性及び現像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましい。
【0364】
-重合性化合物-
感光性樹脂層は、重合性化合物を含んでいてもよい。
重合性化合物は、重合性基を有する化合物である。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、及び、カチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。
【0365】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基が好ましい。
なお、本明細書におけるエチレン性不飽和化合物は、上記バインダーポリマー以外の化合物であり、分子量5,000未満であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項において説明したエチレン性不飽和化合物の好ましい態様と同じである。
【0366】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、下記式(M)で表される化合物(単に、「化合物M」ともいう。)が挙げられる。
Q2-R1-Q1:式(M)
式(M)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、R1は鎖状構造を有する二価の連結基を表す。
【0367】
式(M)におけるQ1及びQ2は、合成容易性の点から、Q1及びQ2は同じ基であることが好ましい。
また、式(M)におけるQ1及びQ2は、反応性の点から、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
式(M)におけるR1としては、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基(-L1-O-L1-)、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基(-(L1-O)p-L1-)が好ましく、炭素数2~20の炭化水素基、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基がより好ましく、炭素数4~20のアルキレン基が更に好ましく、炭素数6~18の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
上記炭化水素基は、少なくとも一部に鎖状構造を有していればよく、上記鎖状構造以外の部分としては、特に制限はなく、例えば、分岐鎖状、環状、又は、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、及び、それらの組み合わせのいずれであってもよく、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基と1以上のアリーレン基とを組み合わせた基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、直鎖アルキレン基が更に好ましい。
なお、上記L1はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、エチレン基、プロピレン基、又は、ブチレン基が好ましく、エチレン基又は1,2-プロピレン基がより好ましい。
pは2以上の整数を表し、2~10の整数であることが好ましい。
【0368】
また、化合物MにおけるQ1とQ2との間を連結する最短の連結鎖の原子数は、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、3個~50個が好ましく、4個~40個がより好ましく、6個~20個が更に好ましく、8個~12個が特に好ましい。
本明細書において、「Q1とQ2の間を連結する最短の連結鎖の原子数」とは、Q1に連結するR1における原子からQ2に連結するR1における原子までを連結する最短の原子数である。
【0369】
化合物Mの具体例としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、及び、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エステルモノマーは混合物としても使用できる。
上記化合物の中でも、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが更に好ましい。
【0370】
また、エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
本明細書において、「2官能以上のエチレン性不飽和化合物」とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0371】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
上記化合物M以外の2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0372】
2官能のエチレン性不飽和化合物の市販品としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:NKエステル A-DCP、新中村化学工業株式会社製)、トリシクロデカンジメナノールジメタクリレート(商品名:NKエステル DCP、新中村化学工業株式会社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-NOD-N、新中村化学工業株式会社製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-HD-N、新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0373】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及び、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0374】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業株式会社製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標) RP-1040、新中村化学工業株式会社製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社のEBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製NKエステル A-GLY-9E等)も挙げられる。
【0375】
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートも挙げられる。官能基数の下限としては、6官能以上がより好ましく、8官能以上が更に好ましい。なお、官能基数の上限としては、20官能以下が好ましい。3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル株式会社製)、UA-32P(新中村化学工業株式会社製)、U-15HA(新中村化学工業株式会社製)、UA-1100H(新中村化学工業株式会社製)、共栄社化学株式会社製のAH-600(商品名)、並びに、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、及びUX-5000(いずれも日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0376】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、酸基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
酸基としては、リン酸基、スルホ基、及び、カルボキシ基が挙げられる。
これらの中でも、酸基としては、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、酸基を有する3官能~4官能のエチレン性不飽和化合物〔ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価:80mgKOH/g~120mgKOH/g)〕、酸基を有する5官能~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの〔酸価:25mgKOH/g~70mgKOH/g)〕等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0377】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物が、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であると、現像性及び膜強度がより高まる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成株式会社製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成株式会社製)、アロニックス(登録商標)M-510(東亞合成株式会社製)が挙げられる。
【0378】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物が好ましく、この公報に記載の内容は、本明細書に組み込まれる。
【0379】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、及び、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート等のフタル酸系化合物、並びに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルも挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0380】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、及び、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、エチレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が2~14であり、かつ、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
中でも、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
【0381】
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和化合物のカプロラクトン変性化合物(例えば、日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業株式会社製A-9300-1CL等)、エチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(例えば、日本化薬株式会社製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業株式会社製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標)135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0382】
エチレン性不飽和化合物としては、現像性に優れる観点から、エステル結合を含むものも好ましい。
エステル結合を含むエチレン性不飽和化合物としては、分子内にエステル結合を含むものであれば特に制限されないが、硬化性及び現像性に優れる観点から、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
信頼性付与の点からは、エチレン性不飽和化合物としては、炭素数6~20の脂肪族基を有するエチレン性不飽和化合物と、上記のテトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物と、を含むことが好ましい。
炭素数6以上の脂肪族構造を有するエチレン性不飽和化合物としては、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0383】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとしては、脂肪族炭化水素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能エチレン性不飽和化合物)が挙げられる。
上記エチレン性不飽和化合物としては、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造(好ましくは、トリシクロデカン構造及びトリシクロデセン構造よりなる群から選択される構造)を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物がより好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
上記脂肪族炭化水素環構造としては、得られる硬化膜の透湿度及び曲げ耐性、並びに、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、トリシクロデカン構造、トリシクロデセン構造、ノルボルナン構造、又は、イソボロン構造が好ましい。
【0384】
エチレン性不飽和化合物の分子量は、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。
感光性樹脂層に含まれるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の含有量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0385】
感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、3官能又は4官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましい。
【0386】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物と、脂肪族炭化水素環を有する構成単位を有するアルカリ可溶性樹脂とを含むことが好ましい。
【0387】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物とを含むことがより好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸変性体とを含むことが更に好ましい。
【0388】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述する熱架橋性化合物とを含むことが好ましく、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述するブロックイソシアネート化合物とを含むことがより好ましい。
【0389】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含むことが好ましい。
2官能のエチレン性不飽和化合物と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量の質量比は10:90~90:10が好ましく、30:70~70:30がより好ましい。
全てのエチレン性不飽和化合物の合計量に対する、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましい。
感光性樹脂層における2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%~60質量%が好ましく、15質量%~40質量%がより好ましい。
【0390】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、防錆性の点から、化合物M、及び、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、化合物M、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、1,9-ノナンジオールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタンアクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
【0391】
感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物として、単官能エチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。
上記エチレン性不飽和化合物における2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が更に好ましい。
【0392】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、5質量%~60質量%が更に好ましく、5質量%~50質量%が特に好ましい。
【0393】
-重合開始剤-
感光性樹脂層は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項において説明した光重合開始剤の好ましい態様と同じである。
重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。また、その上限値としては、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることより好ましい。
【0394】
-複素環化合物-
感光性樹脂層は、複素環化合物を含んでいてもよい。
複素環化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
複素環化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。複素環化合物は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
【0395】
複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、及び、ピリミジン化合物が挙げられる。
上記の中でも、複素環化合物としては、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0396】
複素環化合物の好ましい具体例を以下に示す。トリアゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0397】
【0398】
【0399】
テトラゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0400】
【0401】
【0402】
チアジアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0403】
【0404】
トリアジン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0405】
【0406】
ローダニン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0407】
【0408】
チアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0409】
【0410】
ベンゾチアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0411】
【0412】
ベンゾイミダゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0413】
【0414】
【0415】
ベンゾオキサゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0416】
【0417】
複素環化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が複素環化合物を含む場合、複素環化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~20.0質量%が好ましく、0.10質量%~10.0質量%がより好ましく、0.30質量%~8.0質量%が更に好ましく、0.50質量%~5.0質量%が特に好ましい。
【0418】
-脂肪族チオール化合物-
感光性樹脂層は、脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含むことで、脂肪族チオール化合物がエチレン性不飽和化合物との間でエン-チオール反応することで、形成される膜の硬化収縮が抑えられ、応力が緩和される。
【0419】
脂肪族チオール化合物としては、単官能の脂肪族チオール化合物、又は、多官能の脂肪族チオール化合物(すなわち、2官能以上の脂肪族チオール化合物)が好ましい。
上記の中でも、脂肪族チオール化合物としては、形成されるパターンの密着性(特に、露光後における密着性)の点から、多官能の脂肪族チオール化合物がより好ましい。
本明細書において、「多官能の脂肪族チオール化合物」とは、チオール基(「メルカプト基」ともいう。)を分子内に2個以上有する脂肪族化合物を意味する。
【0420】
多官能の脂肪族チオール化合物としては、分子量が100以上の低分子化合物が好ましい。具体的には、多官能の脂肪族チオール化合物の分子量は、100~1,500がより好ましく、150~1,000が更に好ましい。
【0421】
多官能の脂肪族チオール化合物の官能基数としては、例えば、形成されるパターンの密着性の点から、2官能~10官能が好ましく、2官能~8官能がより好ましく、2官能~6官能が更に好ましい。
【0422】
多官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、及び、ジ(メルカプトエチル)エーテルが挙げられる。
【0423】
上記の中でも、多官能の脂肪族チオール化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及び、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0424】
単官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、及び、ステアリル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。
【0425】
感光性樹脂層は、1種単独の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよく、2種以上の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含む場合、脂肪族チオール化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、5質量%以上が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましく、8質量%~20質量%が特に好ましい。
【0426】
-熱架橋性化合物-
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。
熱架橋性化合物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した熱架橋性化合物が挙げられる。
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0427】
-界面活性剤-
感光性樹脂層は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.01質量%~1.0質量%がより好ましく、0.05質量%~0.80質量%が更に好ましい。
【0428】
-ラジカル重合禁止剤-
感光性樹脂層は、ラジカル重合禁止剤を含んでいてもよい。
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明したラジカル重合禁止剤が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層がラジカル重合禁止剤を含む場合、ラジカル重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%以上の場合、感光性樹脂層の保存安定性がより優れる。一方、含有量が3質量%以下である場合、感度の維持及び染料の脱色を抑制がより優れる。
【0429】
-水素供与性化合物-
感光性樹脂層は、水素供与性化合物を含んでいてもよい。
水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、及び、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
水素供与性化合物としては、例えば、アミン類、及び、アミノ酸化合物が挙げられる。
【0430】
アミン類としては、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-020189号公報、特開昭51-082102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-084305号公報、特開昭62-018537号公報、特開昭64-033104号公報、及び、Research Disclosure 33825号等に記載の化合物が挙げられる。より具体的には、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン(別名:ロイコクリスタルバイオレット)、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、及び、p-メチルチオジメチルアニリンが挙げられる。
中でも、感度、硬化速度、及び、硬化性の観点から、アミン類としては、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0431】
アミノ酸化合物としては、例えば、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-フェニルグリシンが挙げられる。
中でも、感度、硬化速度、及び、硬化性の観点から、アミノ酸化合物としては、N-フェニルグリシンが好ましい。
【0432】
また、水素供与性化合物としては、例えば、特公昭48-042965号公報に記載の有機金属化合物(トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-034414号公報に記載の水素供与体、及び、特開平6-308727号公報に記載のイオウ化合物(トリチアン等)も挙げられる。
【0433】
水素供与性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が水素供与性化合物を含む場合、水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスとによる硬化速度の向上の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~10.0質量%が好ましく、0.01質量%~8.0質量%がより好ましく、0.03質量%~5.0質量%が更に好ましい。
【0434】
-不純物-
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
不純物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した不純物が挙げられる。
【0435】
-残存モノマー-
感光性樹脂層は、上述した重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
感光性樹脂層における重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーとしては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーが挙げられる。
【0436】
-他の成分-
感光性樹脂層は、既述の成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、及び、粒子(例えば、金属酸化物粒子)が挙げられる。また、他の成分としては、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤も挙げられる。
【0437】
粒子としては、金属酸化物粒子が好ましい。
金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0438】
感光性樹脂層が粒子を含む場合、金属種、及び、大きさ等の異なる粒子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層は、粒子を含まないか、あるいは、感光性樹脂層が粒子を含む場合には、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超35質量%以下が好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下がより好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超5質量%以下が更に好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超1質量%以下が更に好ましく、粒子を含まないことが特に好ましい。
【0439】
感光性樹脂層は、着色剤(顔料、染料等)を含んでいてもよいが、例えば、透明性の点からは、着色剤を実質的に含まないことが好ましい。
感光性樹脂層が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0440】
酸化防止剤としては、例えば、1-フェニル-3-ピラゾリドン(別名:フェニドン)、1-フェニル-4,4-ジメチル-3-ピラゾリドン、及び、1-フェニル-4-メチル-4-ヒドロキシメチル-3-ピラゾリドン等の3-ピラゾリドン類;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、及び、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類;パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、及び、パラフェニレンジアミンが挙げられる。
中でも、保存安定性、及び、硬化性の観点から、酸化防止剤としては、3-ピラゾリドン類が好ましく、1-フェニル-3-ピラゾリドンがより好ましい。
【0441】
感光性樹脂層が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、1質量%以下が好ましい。
【0442】
-感光性樹脂層の厚み-
感光性樹脂層の厚み(層厚)は、特に制限されないが、現像性及び解像性の観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が更に好ましく、10μm以下が特に好ましく、5.0μm以下が最も好ましい。下限としては、感光性樹脂層を硬化して得られる膜の強度が優れる点で、0.60μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。
【0443】
-感光性樹脂層の屈折率-
感光性樹脂層の屈折率は、1.47~1.56が好ましく、1.49~1.54がより好ましい。
【0444】
-感光性樹脂層の色-
感光性樹脂層は無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*値は10~90であることが好ましく、a*値は-1.0~1.0であることが好ましく、b*値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0445】
なお、感光性樹脂層を硬化して得られるパターン(感光性樹脂層の硬化膜)は、無彩色であることが好ましい。
具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、パターンのL*値は10~90であることが好ましく、パターンのa*値は-1.0~1.0であることが好ましく、パターンのb*値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0446】
-感光性樹脂層の透湿度-
感光性樹脂層を硬化して得られるパターン(感光性樹脂層の硬化膜)の層厚40μmでの透湿度は、防錆性の観点から、500g/(m2・24hr)以下であることが好ましく、300g/(m2・24hr)以下であることがより好ましく、100g/(m2・24hr)以下であることが更に好ましい。
なお、透湿度は、感光性樹脂層を、i線によって露光量300mJ/cm2にて露光した後、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性樹脂層を硬化させた硬化膜で測定する。
【0447】
(屈折率調整層)
感光性転写材料は、屈折率調整層を有していることが好ましい。
屈折率調整層としては、公知の屈折率調整層を適用できる。屈折率調整層に含まれる材料としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、金属塩、及び、粒子が挙げられる。
屈折率調整層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と粒子とを用いる方法、及び、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法が挙げられる。
【0448】
アルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明したアルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0449】
粒子としては、例えば、金属酸化物粒子、及び、金属粒子が挙げられる。
金属酸化物粒子の種類は特に制限はなく、公知の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
【0450】
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0451】
金属酸化物粒子としては、具体的には、酸化ジルコニウム粒子(ZrO2粒子)、Nb2O5粒子、酸化チタン粒子(TiO2粒子)、二酸化珪素粒子(SiO2粒子)、及び、これらの複合粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの中でも、金属酸化物粒子としては、例えば、屈折率を調整しやすいという点から、酸化ジルコニウム粒子及び酸化チタン粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0452】
金属酸化物粒子の市販品としては、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F04)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F74)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F75)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F76)、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30M、日産化学工業株式会社製)、及び、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30K、日産化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0453】
粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
屈折率調整層における粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対し、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%が更に好ましい。
金属酸化物粒子として酸化チタンを用いる場合、酸化チタン粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対して、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%が更に好ましい。
【0454】
屈折率調整層の屈折率は、感光性樹脂層の屈折率よりも高いことが好ましい。
屈折率調整層の屈折率は、1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、1.60以上が更に好ましく、1.65以上が特に好ましい。屈折率調整層の屈折率の上限は、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が特に好ましい。
【0455】
屈折率調整層の厚みは、50nm~500nmが好ましく、55nm~110nmがより好ましく、60nm~100nmが更に好ましい。
【0456】
屈折率調整層は、例えば、屈折率調整層を用いて形成される。屈折率調整層形成用組成物としては、上述した屈折率調整層を形成する各種成分と溶剤とを含むことが好ましい。なお、屈折率調整層形成用組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した屈折率調整層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、屈折率調整層に含まれる成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50質量部~2,500質量部が好ましく、50質量部~1,900質量部がより好ましく、100質量部~900質量部が更に好ましい。
【0457】
屈折率調整層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0458】
(仮支持体、感光性樹脂層及び保護フィルムの関係)
配線保護膜用感光性転写材料として好ましく用いられる感光性転写材料においても、既述した仮支持体、感光性樹脂層及び保護フィルムの関係を満たすことが好ましい。
【0459】
<樹脂パターンの製造方法>
本開示の一実施形態に係る樹脂パターンの製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いる樹脂パターンの製造方法である。本開示の一実施形態によれば、ピンホールの発生が抑制された樹脂パターンの製造方法が提供される。本開示の一実施形態に係る樹脂パターンの製造方法は、基板を準備する工程(以下、「準備工程」という場合がある。)と、上記基板に感光性転写材料を接触させて、上記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する工程(以下、「貼り合わせ工程」という場合がある。)と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」という場合がある。)と、露光された上記感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する工程(以下、「現像工程」という場合がある。)と、を含むことが好ましい。
【0460】
<<準備工程>>
準備工程では、基板を準備する。基板の種類は、制限されない。基板は、導電層を含む基板であることが好ましい。さらに、基板は、基材と、上記基材の上に導電層と、を含む基板であることが好ましく、基材と、上記基材に接触した導電層と、を含む基板であることがより好ましい。導電層は、基材の片面に配置されてもよい。導電層は、基材の両面にそれぞれ配置されてもよい。基板は、導電層以外の層を含んでもよい。
【0461】
基材としては、例えば、ガラス、シリコン及び樹脂フィルムが挙げられる。基材は、透明であることが好ましい。本開示において、「透明」とは、400nm~700nmの波長における透過率が80%以上であることを意味する。基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
【0462】
透明なガラスとしては、例えば、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスが挙げられる。透明なガラスとして、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を用いてもよい。
【0463】
樹脂フィルムは、光学的に歪みが小さく、又は透明度が高い樹脂フィルムであることが好ましい。上記のような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース及びシクロオレフィンポリマーが挙げられる。
【0464】
ロールツーロール方式を利用する樹脂パターンの製造方法において、基材は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0465】
導電層としては、例えば、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる導電層が挙げられる。導電層は、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であることが好ましい。
【0466】
導電性及び細線形成性の観点から、導電層は、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層及び導電ポリマー層からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、金属層であることがより好ましく、銅層又は銀層であることが特に好ましい。
【0467】
導電層の成分としては、例えば、金属及び導電性金属酸化物が挙げられる。金属としては、例えば、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag及びAuが挙げられる。導電性金属酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)及びSiO2が挙げられる。本開示において、「導電性」とは、体積抵抗率が1×106Ωcm未満である性質を意味する。導電性金属酸化物の体積抵抗率は、1×104Ωcm未満であることが好ましい。
【0468】
複数の導電層を含む基板を用いて樹脂パターンを製造する場合、複数の導電層のうち少なくとも1つの導電層は、導電性金属酸化物を含むことが好ましい。
【0469】
基板は、1層又は2層以上の導電層を含んでもよい。基板が2層以上の導電層を含む場合、基板は、互いに異なる材料によって形成された2層以上の導電層を含むことが好ましい。
【0470】
導電層の好ましい態様は、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0141に記載されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0471】
導電層を含む基板としては、透明電極及び引き回し配線の少なくとも一方を有する基板が好ましい。上記のような基板は、タッチパネル用基板として好適に使用できる。透明電極は、タッチパネル用電極として好適に機能し得る。透明電極は、ITO(酸化インジウムスズ)、及び、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜、並びに、金属メッシュ、及び、金属ナノワイヤー等の金属細線により構成されることが好ましい。金属細線としては、銀、銅等の細線が挙げられる。中でも、銀メッシュ、銀ナノワイヤー等の銀導電性材料が好ましい。
【0472】
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及び、マンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又は、チタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0473】
<<貼り合わせ工程>>
貼り合わせ工程では、基板に感光性転写材料を接触させて、上記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する。
【0474】
感光性転写材料については、上記「感光性転写材料」の項で説明したとおりである。貼り合わせ工程において用いられる感光性転写材料の好ましい態様は、上記「感光性転写材料」の項で説明した感光性転写材料の好ましい態様と同じである。
【0475】
貼り合わせ工程において、基板の上に配置される感光性樹脂層及び仮支持体は、それぞれ、感光性転写材料に含まれる感光性樹脂層及び仮支持体である。すなわち、感光性転写材料の層構成に応じて、貼り合わせ工程によって得られる積層体の層構成が変化する。例えば、貼り合わせ工程において、基板に、仮支持体と、熱可塑性樹脂層と、中間層と、感光性樹脂層と、をこの順で含む感光性転写材料を接触させると、基板の上に、感光性樹脂層、中間層、熱可塑性樹脂層及び仮支持体がこの順で配置される。感光性転写材料が保護フィルムを含む場合、感光性転写材料から保護フィルムを除去した後、基板に感光性転写材料を接触させる。
【0476】
貼り合わせ工程において、基板に感光性転写材料を接触させて、基板に感光性転写材料を圧着させることが好ましい。例えば、基板に感光性転写材料を接触させて、ロールといった手段を用いて、基板及び感光性転写材料に対して加圧及び加熱を施すことにより、基板に感光性転写材料を圧着させることが好ましい。
【0477】
基板に感光性転写材料を接触させる方法(基板に感光性転写材料を圧着させる方法を含む。)においては、例えば、公知の転写方法又は公知のラミネート方法が用いられる。基板に感光性転写材料を接触させる方法においては、例えば、ラミネーター、真空ラミネーター、又は、より生産性を高めることができるオートカットラミネーターが用いられる。
【0478】
<<露光工程>>
露光工程では、感光性樹脂層をパターン露光する。パターン露光におけるパターンの配置及び寸法は、制限されない。パターンの少なくとも一部(好ましくは、タッチパネルの電極パターン又は取り出し配線に対応する部分)は、20μm以下の幅を有する細線を含むことが好ましく10μm以下の幅を有する細線を含むことがより好ましい。
【0479】
露光工程における光源としては、例えば、感光性樹脂層を露光可能な波長の光(例えば、365nm又は405nm)を照射する光源が挙げられる。光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
【0480】
露光量は、5mJ/cm2~300mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~200mJ/cm2であることがより好ましい。
【0481】
露光工程において、仮支持体を剥離した後に感光性樹脂層をパターン露光してもよい。露光工程において、仮支持体を介して感光性樹脂層をパターン露光した後、仮支持体を剥離してもよい。
【0482】
フォトマスクを用いる露光方式においてパターン露光の前に仮支持体を剥離した場合、フォトマスクを感光性樹脂層に接触させて感光性樹脂層を露光してもよく、フォトマスクを感光性樹脂層に接触させずにフォトマスクを感光性樹脂層に近付けて感光性樹脂層を露光してもよい。フォトマスクを用いる露光方式において仮支持体を介して感光性樹脂層を露光する場合、フォトマスクを仮支持体に接触させて感光性樹脂層を露光してもよく、フォトマスクを仮支持体に接触させずにフォトマスクを仮支持体に近付けて感光性樹脂層を露光してもよい。感光性樹脂層とフォトマスクとの接触によるフォトマスクの汚染を防止するため、及びフォトマスクに付着した異物による露光への影響を避けるため、仮支持体を介して感光性樹脂層をパターン露光することが好ましい。
【0483】
露光方式は、制限されない。露光方式としては、例えば、接触露光方式及び非接触露光方式が挙げられる。接触露光方式としては、例えば、フォトマスクを用いて感光性樹脂層をパターン露光する方式が挙げられる。非接触露光方式としては、例えば、プロキシミティ露光方式、レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光方式及び露光レーザーを用いるダイレクト露光方式が挙げられる。レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光方式では、必要な解像力及び焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機を用いてもよい。ダイレクト露光方式では、感光層に直接描画を行ってもよく、レンズを介して感光層に縮小投影露光をしてもよい。露光は、大気下、減圧下又は真空下で行ってもよい。光源と感光性樹脂層との間に水といった液体を介在させて露光してもよい。
【0484】
<<現像工程>>
現像工程では、露光された感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する。感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、感光性樹脂層の非露光部が除去され、感光性樹脂層の露光部が樹脂パターンを形成する。感光性樹脂層がポジ型感光性樹脂層である場合、感光性樹脂層の露光部が除去され、感光性樹脂層の非露光部が樹脂パターンを形成する。また、貼り合わせ工程において基板の上に配置された熱可塑性樹脂層及び中間層は、除去される感光性樹脂層とともに除去される。熱可塑性樹脂層及び中間層は、現像液への溶解又は分散によって除去されてもよい。
【0485】
現像は、例えば、現像液を用いて行われる。現像液は、対象の感光性樹脂層を除去する現像液であれば制限されない。現像液として、公知の現像液が用いられる。現像液としては、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液が挙げられる。現像液は、pKaが7~13の化合物を0.05mol/L~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液であることが好ましい。現像液は、水溶性の有機溶剤及び/又は界面活性剤を含んでもよい。現像液としては、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載された現像液も好ましい。
【0486】
現像液の液温は、制限されない。現像液の液温は、20℃~40℃であることが好ましい。
【0487】
現像方式は、制限されない。現像方式は、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像又はディップ現像であってもよい。シャワー現像とは、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることで、対象の感光性樹脂層を除去する方式である。
【0488】
現像工程の後に、洗浄剤をシャワーにより吹き付け、ブラシで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
【0489】
上記した工程を経て得られた樹脂パターンの線幅は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが特に好ましい。樹脂パターンの線幅の下限は、制限されない。樹脂パターンの線幅は、例えば、1μm以上であってもよい。樹脂パターンの線幅は、以下の方法によって測定される。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて樹脂パターンを観察し、樹脂パターンにおける30箇所の線幅を測定する。測定値の算術平均を、樹脂パターンの線幅として採用する。
【0490】
上記した工程を経て得られた樹脂パターンは、永久膜又はエッチングの保護膜として用いられてもよい。
【0491】
<<ロールツーロール方式>>
樹脂パターンの製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。ロールツーロール方式とは、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、樹脂パターンの製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基板又は基板を含む積層体を巻き出す工程(「巻き出し工程」という場合がある。)と、いずれかの工程の後に、基板又は基板を含む積層体を巻き取る工程(以下、「巻き取り工程」という場合がある。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは全ての工程)を、基板又は基板を含む積層体を搬送しながら行う方式をいう。巻き出し工程における巻き出し方法及び巻き取り工程における巻取り方法として、例えば、ロールツーロール方式に適用される公知の方法が用いられる。
【0492】
<導電パターンの製造方法>
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いる導電パターンの製造方法である。本開示の一実施形態によれば、ピンホールの発生が抑制された導電パターンの製造方法が提供される。本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法は、導電層を含む基板を準備する工程(以下、「準備工程」という場合がある。)と、上記基板に感光性転写材料を接触させて、上記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する工程(以下、「貼り合わせ工程」という場合がある。)と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」という場合がある。)と、露光された上記感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する工程(以下、「現像工程」という場合がある。)と、上記樹脂パターンによって覆われていない上記導電層をエッチング処理し、導電パターンを形成する工程(以下、「エッチング工程」という場合がある。)と、を含むことが好ましい。
【0493】
<<準備工程>>
準備工程では、導電層を含む基板を準備する。導電層を含む基板については、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明したとおりである。導電層を含む基板の好ましい態様は、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明した導電層を含む基板の好ましい態様と同じである。
<<貼り合わせ工程>>
貼り合わせ工程では、基板に感光性転写材料を接触させて、上記基板の上に感光性樹脂層及び仮支持体をこの順で配置する。貼り合わせ工程については、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明したとおりである。貼り合わせ工程の好ましい態様は、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明した貼り合わせ工程の好ましい態様と同じである。
【0494】
<<露光工程>>
露光工程では、感光性樹脂層をパターン露光する。露光工程については、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明したとおりである。露光工程の好ましい態様は、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明した露光工程の好ましい態様と同じである。
【0495】
<<現像工程>>
現像工程では、露光された感光性樹脂層を現像して、樹脂パターンを形成する。現像工程については、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明したとおりである。現像工程の好ましい態様は、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明した現像工程の好ましい態様と同じである。
【0496】
<<エッチング工程>>
エッチング工程では、樹脂パターンによって覆われていない導電層をエッチング処理し、導電パターンを形成する。エッチング工程において、樹脂パターンは、導電層の保護膜として機能する。エッチング工程において、樹脂パターンによって覆われていない導電層がエッチング処理によって除去され、樹脂パターンによって覆われた導電層が導電パターンを形成する。
【0497】
エッチング処理の方法として、例えば、公知の方法が利用される。エッチング処理の方法としては、例えば、特開2017-120435号公報の段落0209~段落0210に記載された方法、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054に記載された方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法及びドライエッチング法(例えば、プラズマエッチング)が挙げられる。
【0498】
ウェットエッチング法に用いられるエッチング液については、エッチングの対象に合わせて酸性又はアルカリ性のエッチング液を適宜選択すればよい。酸性のエッチング液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸性成分を含む水溶液が挙げられる。酸性のエッチング液としては、例えば、上記した酸性成分と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウム及び過マンガン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種の塩と、を含む水溶液も挙げられる。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分であってもよい。アルカリ性のエッチング液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及び有機アミンの塩(例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)からなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ成分を含む水溶液が挙げられる。アルカリ性のエッチング液としては、例えば、上記したアルカリ成分と、塩(例えば、過マンガン酸カリウム)と、を含む水溶液も挙げられる。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分であってもよい。
【0499】
<<除去工程>>
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法は、エッチング工程の後、残存する樹脂パターンを除去する工程を含むことが好ましい。
【0500】
樹脂パターンを除去する方法としては、例えば、薬品処理を用いて樹脂パターンを除去する方法が挙げられる。除去液を用いて樹脂パターンを除去する方法が好ましい。除去液を用いて樹脂パターンを除去する方法としては、例えば、液温が30℃~80℃(好ましくは50~80℃)である撹拌中の除去液に、樹脂パターンを含む基板を1分間~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0501】
除去液としては、例えば、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分と、水、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種と、を含む除去液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、例えば、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物及び第4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0502】
スプレー法、シャワー法及びパドル法といった公知の方法を利用して、残存する樹脂パターンを除去してもよい。
【0503】
<<他の工程>>
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法は、上述した工程に加えて、他の工程を更に含んでもよい。他の工程としては、例えば、以下に示す工程が挙げられる。また、本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法に適用可能な露光工程、現像工程及び他の工程については、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載されている。上記公報に記載された内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0504】
(可視光線反射率を低下させる工程)
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法は、基板の複数の導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理を行う工程を含んでもよい。可視光線反射率を低下させる処理としては、例えば、酸化処理が挙げられる。例えば、導電層が銅を含む場合、銅を酸化処理して酸化銅を形成し、導電層を黒化することにより、導電層の可視光線反射率を低下させることができる。可視光線反射率を低下させる処理については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025並びに特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載されている。これらの公報に記載された内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0505】
(絶縁膜を形成する工程及び絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程)
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法は、導電パターンの表面に絶縁膜を形成する工程と、上記絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程と、を含むことが好ましい。上記の工程により、第一の電極パターンと絶縁した第二の電極パターンを形成することができる。絶縁膜を形成する方法としては、例えば、公知の永久膜を形成する方法が挙げられる。絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する方法としては、例えば、導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンを有する新たな導電層を形成してもよい。
【0506】
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法において、基材の両面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、基材の両面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路を形成することも好ましい。上記のような方法によれば、基材の一方の表面に第一の導電パターンを形成し、基材の他方の表面に第二の導電パターンを形成することができる。上記のような導電パターンは、例えば、タッチパネル用回路配線として使用される。上記のような導電パターンは、ロールツーロール方式によって形成されることが好ましい。
【0507】
<<ロールツーロール方式>>
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。ロールツーロール方式については、上記「樹脂パターンの製造方法」の項で説明したとおりである。
【0508】
<<回路配線の用途>>
本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法によって得られる導電パターンは、種々の装置に適用される。導電パターンを含む装置としては、例えば、入力装置が挙げられ、タッチパネルが好ましく、静電容量型タッチパネルがより好ましい。上記入力装置は、有機EL表示装置及び液晶表示装置といった表示装置に適用できる。また、本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法によって得られる導電パターンは、タッチセンサーに適用されることが好ましい。
【0509】
<タッチセンサー>
本開示の一実施形態に係るタッチセンサーは、本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法によって得られた導電パターンを含む。本開示の一実施形態に係るタッチセンサーの構成要素は、本開示の一実施形態に係る導電パターンの製造方法によって得られた導電パターンを含むことを除き、制限されない。導電パターンは、例えば、タッチセンサーの透明電極又は額縁配線として利用される。導電パターンの形状及び寸法は、例えば、目的とするタッチセンサーに応じて決定される。導電パターンの製造に用いられるフォトマスクのパターンとしては、例えば、特開2019-204070号公報に記載されたパターンA及びパターンBが挙げられる。導電パターン以外の構成要素として、例えば、公知のタッチセンサーに含まれる構成要素が利用される。タッチセンサーについては、例えば、特許第6486341号公報及び特開2016-155978号公報に記載されている。これらの公報は、参照により本明細書に取り込まれる。公知のタッチセンサーの製造方法は、導電パターン以外のタッチセンサーの構成要素を形成するために参照されてもよい。
【0510】
タッチセンサーは、例えば、種々の入力装置に適用される。入力装置としては、例えば、タッチパネルが挙げられる。
【0511】
タッチパネルの検出方法としては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式及び光学方式が挙げられる。上記の中でも、静電容量方式が好ましい。
【0512】
タッチパネル型としては、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の
図5、
図6、
図7及び
図8に記載された構成)、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の
図19に記載された構成並びに特開2012-89102号公報の
図1及び
図5に記載された構成)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の
図2に記載された構成)、各種アウトセル型(例えば、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1及びG1F)及び他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の
図6に記載の構成)が挙げられる。
【実施例0513】
以下、実施例に基づいて本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されるものではない。以下に示す実施例の内容(例えば、材料、使用量、割合、処理内容及び処理手順)は、本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。
【0514】
<粒子含有層形成用組成物1の調製>
下記に示す成分を混合して得られた混合物を、6μmのフィルター(F20、株式会社マーレフィルターシステムズ)を用いてろ過し、そして、2x6ラジアルフロースーパーフォビック(ポリポア株式会社)を用いて膜脱気した。以上の手順によって、粒子含有層形成用組成物1を得た。
【0515】
・アクリルポリマー(AS-563A、ダイセルミライズ株式会社、固形分:27.5質量%):167質量部
・ノニオン系界面活性剤(ナロアクティーCL95、三洋化成工業株式会社、固形分:100質量%):0.7質量部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油株式会社、固形分濃度が1質量%である水希釈液):114.4質量部
・カルナバワックス分散物(セロゾール524、中京油脂株式会社、固形分:30質量%):7質量部
・カルボジイミド化合物(カルボジライトV-02-L2、日清紡ケミカル株式会社、固形分濃度が10質量%である水希釈):20.9質量部
・マット剤(スノーテックスXL、日産化学株式会社、固形分:40質量%、平均粒子径:50nm):2.8質量部
・水:690.2質量部
【0516】
<仮支持体1の製造>
以下の方法によって仮支持体1を製造した。
【0517】
(押出成形)
特許第5575671号公報に記載されたクエン酸キレート有機チタン錯体を重合触媒として用いて製造したポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを乾燥し、上記ペレットの含水率を50ppm以下にした。乾燥したペレットを、直径が30mmである1軸混練押出機のホッパーに投入し、280℃で溶融した。溶融体を、濾過器(孔径:2μm)を通した後、ダイから25℃の冷却ロールに押し出し、未延伸フィルムを得た。上記方法において、溶融体は、静電印加法を用いて冷却ロールに密着させた。
【0518】
(延伸及び塗布)
固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法によって逐次2軸延伸を施すことで、厚さが16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、厚さが40nmの粒子含有層を形成した。
【0519】
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。縦延伸の条件を以下に示す。
・予熱温度:75℃
・延伸温度:90℃
・延伸倍率:3.4倍
・延伸速度:1,300%/秒
【0520】
(b)塗布
縦延伸したフィルムの片面に、バーコーターを用いて、粒子含有層形成用組成物1を製膜後の厚さが40nmとなるように塗布した。
【0521】
(c)横延伸
粒子含有層形成用組成物1が塗布されたフィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
・予熱温度:110℃
・延伸温度:120℃
・延伸倍率:4.2倍
・延伸速度:50%/秒
【0522】
(熱固定及び熱緩和)
縦延伸及び横延伸を経た二軸延伸フィルムを下記条件で熱固定した。
・熱固定温度:227℃
・熱固定時間:6秒
【0523】
熱固定の後、テンター幅を縮め、二軸延伸フィルムを下記条件で熱緩和した。
・熱緩和温度:190℃
・熱緩和率:4%
【0524】
(巻き取り)
熱固定及び熱緩和の後、フィルムの両端をトリミングし、フィルムの端部に10mm幅で押出し加工(ナーリング)した後、40kg/mの張力でフィルムを巻き取った。フィルムの幅は1.5mであり、フィルムの巻長は6,300mであった。得られたフィルムロールを、仮支持体1とした。
【0525】
仮支持体1は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材)と、粒子含有層と、をこの順で含む。仮支持体1のヘーズは、0.2%であった。ヘーズは、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社、NDH2000)を用いて全光ヘーズとして測定した。150℃で30分間の加熱による熱収縮率は、MD(搬送方向、Machine Direction)側で1.0%であり、TD(フィルムの面上において搬送方向と直交する方向、Transverse Direction)側で0.2%であった。断面TEM写真から測定した粒子含有層の厚さは、40nmであった。株式会社日立ハイテクノロジーズ製のHT-7700型透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて上述の方法によって測定した、粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径は、50nmであった。
【0526】
<仮支持体2の製造>
押出成形において、溶融体が濾過器を通過した回数を2回に変更したこと以外は、仮支持体1の製造方法と同じ方法によって、仮支持体2を得た。
【0527】
<仮支持体3の製造>
押出成形において、濾過器のフィルターの孔径を3μmに変更したこと以外は、仮支持体1の製造方法と同じ方法によって、仮支持体3を得た。
【0528】
<仮支持体4の製造>
押出成形において、溶融体が濾過器を通過した回数を2回に変更したこと以外は、仮支持体3の製造方法と同じ方法によって、仮支持体4を得た。
【0529】
<仮支持体5の製造>
押出成形において、溶融体が濾過器を通過した回数を3回に変更したこと以外は、仮支持体3の製造方法と同じ方法によって、仮支持体5を得た。
【0530】
<仮支持体6の製造>
押出成形において、仮支持体の厚さが10μmとなるように吐出量を調整したこと以外は、仮支持体4の製造方法と同じ方法によって、仮支持体6を得た。
【0531】
<仮支持体7の製造>
押出成形において、濾過器のフィルターの孔径を5μmに変更したこと以外は、仮支持体1の製造方法と同じ方法によって、仮支持体7を得た。
【0532】
<粒子の個数>
仮支持体の表面における任意の10か所の領域(各領域の大きさ:10mm×10mm、合計面積:1000mm2)を、光学顕微鏡を用いて目視にて観察した。各領域に含まれる直径が3μm以上の粒子の個数を測定した。10か所の領域で測定された粒子の個数の合計値に基づき、測定領域の1cm2あたりの粒子の個数(個/cm2)を算出した。測定結果を以下に示す。
表1中、「3μm~」の欄には、直径が3μm以上4.5μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「4.5μm~」の欄には、直径が4.5μm以上6μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「6μm~」の欄には、直径が6μm以上7.5μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「9μm~」の欄には、直径が9μm以上10.5μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「10.5μm~」の欄には、直径が10.5μm以上の粒子の個数(個/cm2)を、それぞれ示した。
【0533】
【0534】
<感光性樹脂層形成用組成物1~4の調製>
メチルエチルケトン(400質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(200質量部)、メチルアルコール(20質量部)及び以下の成分を混合し、感光性樹脂層形成用組成物1~4を調製した。
【0535】
【0536】
<熱可塑性樹脂層形成用組成物1の調製>
メチルエチルケトン(500質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(20質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(200質量部)及び以下の成分を混合し、熱可塑性樹脂層形成用組成物1を調製した。
【0537】
【0538】
上記の表に記載された略号の意味を以下に示す。
・A-2:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/アクリル酸共重合体(75質量%/10質量%/15質量%、重量平均分子量:30,000、Tg:75℃、酸価:186mgKOH/g)
・B-1:下記に示す構造の化合物(酸により発色する色素)
【0539】
【0540】
・C-1:下記に示す構造の化合物(光酸発生剤、特開2013-47765号公報の段落0227に記載の化合物、段落0227に記載の方法に従って合成した。)
【0541】
【0542】
・D-3:NKエステルA-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業株式会社)
・D-4:8UX-015A(多官能ウレタンアクリレート化合物、大成ファインケミカル株式会社)
・D-5:アロニックスTO-2349(カルボキシ基を有する多官能アクリレート化合物、東亞合成株式会社)
・E-1:メガファックF-552(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社)
・F-1:フェノチアジン(富士フイルム和光純薬株式会社)
・F-2:CBT-1(カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学工業株式会社)
【0543】
<水溶性樹脂層形成用組成物1の調製>
以下の成分を混合し、水溶性樹脂層形成用組成物1を調製した。
・イオン交換水:38.12質量部
・メタノール(三菱ガス化学株式会社):57.17質量部
・クラレポバール 4-88LA(ポリビニルアルコール、株式会社クラレ):3.22質量部
・ポリビニルピロリドンK-30(株式会社日本触媒):1.49質量部
・メガファックF-444(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社):0.0035部
【0544】
<実施例1>
仮支持体の基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)の粒子含有層形成面の反対側に、スリット状ノズルを用いて、熱可塑性樹脂層形成用組成物1を塗布した。塗布された熱可塑性樹脂層形成用組成物1を100℃で120秒間かけて乾燥し、2.0μmの厚さを有する熱可塑性樹脂層を形成した。
【0545】
熱可塑性樹脂層の上に、スリット状ノズルを用いて、水溶性樹脂層形成用組成物1を塗布した。塗布された水溶性樹脂層形成用組成物1を120℃で120秒間かけて乾燥し、1.0μmの厚さを有する水溶性樹脂層を形成した。水溶性樹脂層は、中間層である。
【0546】
水溶性樹脂層の上に、スリット状ノズルを用いて、感光性樹脂層形成用組成物2を塗布した。塗布された感光性樹脂層形成用組成物2を100℃で120秒間かけて乾燥し、4.0μmの厚さを有する感光性樹脂層を形成した。
【0547】
以上の手順によって得られた感光性転写材料は、仮支持体と、熱可塑性樹脂層と、水溶性樹脂層と、感光性樹脂層と、をこの順で含む。熱可塑性樹脂層、水溶性樹脂層及び感光性樹脂層に関する層構成を表4~5に示す。
【0548】
<実施例2~10及び比較例1>
表4~5の記載に従って、仮支持体の種類及び層構成を適宜変更したこと以外は、実施例1に記載した手順と同じ手順によって、感光性転写材料を得た。
【0549】
<解像性>
(1)厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚さが200nmの銅層をスパッタリングによって形成することで、銅層付きPET基板を作製した。真空ラミネーター(株式会社MCK、ロール温度:100℃、線圧:1.0MPa、線速度:0.5m/分)を用いたロールツーロール方式によって、感光性転写材料と銅層付きPET基板とを貼り合わせた。得られた積層体は、少なくとも、PETフィルムと、銅層と、感光性樹脂層と、仮支持体と、をこの順で含む。(2)得られた積層体を、オートクレーブ装置を用いて、0.6MPa及び60℃の条件下で30分間加圧脱泡した。(3)超高圧水銀灯を用いて、仮支持体を剥離せずにラインアンドスペースパターンマスク(Duty比は1:1であり、線幅は1μmから20μmまで1μmおきに段階的に変化している。)を介して感光性樹脂層を露光した。(4)仮支持体を剥離した後、現像した。現像は、25℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒間行った。感光性樹脂層を現像することで、樹脂パターンを形成した。マスクのパターンに対応する最小の線幅を有する樹脂パターン(以下、本段落において「基準パターン」という。)が得られるまで、露光量(単位:mJ/cm2)を都度調節しながら上記した一連の手順(1)~(4)を実施した。基準パターンの最小線幅を、感光性樹脂層の限界解像度(X)として採用した。評価結果を表5に示す。
【0550】
<配線パターンのピンホール>
配線形成用マスク(Duty比は1:1であり、線幅は1μmから20μmまで1μmおきに段階的に変化している。配線パターンの長さは50mmである。配線の本数は10本である。)を用いたこと以外は、上記「解像性」の項で説明した方法(すなわち、基準露光量で感光性樹脂層を露光して樹脂パターンを形成する方法)と同じ方法によって、配線パターン(すなわち、樹脂パターン)を形成した。光学顕微鏡を用いて配線パターンを目視で観察し、ピンホールの最大サイズ及び個数に基づき、以下の基準に従って、配線パターンのピンホールに関して評価した。評価結果を表5に示す。
A:ピンホールが確認されない、又は配線幅の1/4以下の大きさのピンホールが確認された。
B:配線幅の1/4を超え1/2以下の大きさのピンホールが確認された。
C:配線幅の1/2を超え3/4以下の大きさのピンホールが確認された。
D:配線幅の3/4を超える大きさのピンホールが確認された。
【0551】
【0552】
【0553】
表5は、比較例1に比べて、実施例1~10における配線パターンのピンホールの発生が抑制されていることを示す。
【0554】
<実施例11~21>
(ポリエステルAペレットの作製)
テレフタル酸86.5質量部と、エチレングリコール37.1質量部と、を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、トリメチルリン酸0.02質量部、酢酸マグネシウム0.06質量部、酢酸リチウム0.01質量部、三酸化アンチモン0.0085質量部を添加し、引き続いて、減圧下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.63dl/gのポリエステルAペレット(表6中は、ポリエステルAと表記)を得た。
【0555】
(ポリエステルCペレットの作製)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてCHDM(シクロヘキサンジメタノール)を用い、200ppmのブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)の存在下で重縮合反応を行い、脂環構造を持つポリエステルCペレット(表6中は、ポリエステルCと表記)を得た。
【0556】
(ポリエステルEペレットの作製)
上記と同様にポリエステルAペレットを製造するにあたり、エステル化反応終了後、体積平均粒子径0.2μm、体積形状係数f=0.51、体積平均粒子径0.06μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカをそれぞれ添加し、その後、重縮合反応を行い、ポリエステルAの質量に対し、2種の球状シリカを1質量%ずつ含有するシリカ含有ポリエステルEペレット(表6中は、ポリエステルEと表記)を得た。
上記球状シリカは、エタノールとエチルシリケートとの混合溶液を攪拌しながら、この混合溶液に、エタノール、純水、及びアンモニア水からなる混合溶液を添加し、得られた反応液を攪拌して、エチルシリケートの加水分解反応及びこの加水分解生成物の重縮合反応を行なった後に、反応後の攪拌を行って得られた単分散シリカ粒子である。
【0557】
(ポリエステルGペレットの作製)
ジメチルテレフタレート100質量部、エチレングリコール64質量部に、触媒として酢酸マンガン0.04質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を加え、エステル交換反応を行い、その後、反応生成物に、凝集アルミナを含むスラリーを加え、続いて、三酸化アンチモンを加え、重縮合反応を行って、凝集アルミナを2質量%含有する、固有粘度0.62dl/gのポリエステルGペレット(表6中は、ポリエステルGと表記)を得た。
上記凝集アルミナを含むスラリーは、凝集アルミナとしてδ型-アルミナを用いて、10質量%のエチレングリコールスラリーとし、サンドグラインダーを用い、粉砕、分散処理を行い、更に捕集効率95%の3μmフィルターを用いて濾過して得られたスラリーである。
【0558】
(ポリエステルZペレットの作製)
上記と同様にポリエステルAペレットを製造するにあたり、エステル化反応終了後、球状シリカ(株式会社アドマテック製SO-C1、粒径:0.2μm~0.4μm)を添加し、その後、重縮合反応を行い、ポリエステルAの質量に対し、球状シリカを1質量%含有するシリカ含有ポリエステルZペレット(表6中は、ポリエステルZと表記)を得た。
【0559】
(仮支持体8の作製)
仮支持体1の作製において粒子含有層を形成しなかった以外は同様にして、仮支持体8(厚さ16μmの単層ポリエチレンテレフタレートフィルム)を作製した。
仮支持体8の第1の面の算術平均粗さRaは、0.2nmであった。
【0560】
(仮支持体9の作製)
仮支持体8の第1の面に対し、熱ナノインプリント(加熱温度:130℃、圧力:0.1MPa)により表面凹凸を形成し、仮支持体9(厚さ16μmの単層ポリエチレンテレフタレートフィルム)を作製した。
仮支持体9の第1の面の算術平均粗さRaは、35nmであった。
【0561】
(仮支持体10~15の作製)
各層について表6に示した配合で調合した原料の混合物を、ブレンダー内で攪拌した後、A層用、B層用のベント付き二軸押出機に供給した。275℃で溶融押出し、孔径:3μmのフィルターを2回通し、濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、A層/B層/A層からなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
未延伸積層フィルムに逐次延伸(長手方向、幅方向)を実施した。まず、長手方向の延伸を実施し、次に、幅方向の延伸を実施した。長手方向の延伸は、105℃でテフロン(登録商標)ロールにて搬送した後に、ロールの周速差にて120℃で4.0倍延伸して一軸延伸フィルムとした。続いて、この一軸延伸フィルムをステンター内で横方向に115℃で4.0倍延伸し、続いて、230℃で熱固定し、幅方向に5%弛緩し、搬送工程にて冷却させた。その後、エッジを切断後に巻き取り、表6に記載の各層の厚さを有する二軸延伸フィルムの中間製品を得た。この中間製品をスリッターにてスリットし、3層からなるポリエステルフィルムのロールを得た。
得られたA層/B層/A層からなる3層積層のポリエステルフィルムを、仮支持体10~15とした。
【0562】
(仮支持体16、18の作製)
各層について表6に示した配合で調合した原料の混合物を、ブレンダー内で攪拌した後、A層用、B層用、C層用のベント付き二軸押出機に供給した。275℃で溶融押出し、5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルターにて濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、A層/B層/C層からなる3層積層とした以外は、仮支持体12の作製と同様にして、3層からなるポリエステルフィルムのロールを得た。
【0563】
(仮支持体17の作製)
各層について表6に示した配合で調合した原料の混合物を用い、矩形の2層用合流ブロックを使用してA層/B層からなる2層積層とした以外は、仮支持体17の作製と同様にして、2層からなるポリエステルフィルムのロールを得た。
【0564】
得られた仮支持体10~18について、厚み(各層の厚み)、表層における粒子の有無、第1の面の算術平均粗さRaについて、既述の方法で測定した。
結果を表6に示す。
また、表6には、仮支持体10~18の層構成も示しており、A/B/Aとは、A層/B層/A層の3層からなるポリエステルフィルムの層構成を指し、A/B/Cとは、A層/B層/C層の3層からなるポリエステルフィルムの層構成を指し、A/Bとは、A層/B層」の2層からなるポリエステルフィルムの層構成を指す。
なお、仮支持体10~18は、いずれも、表6中の層構成の欄の左側に記載のA(即ち、A層)が、第2の面側の最外層として配置される層である。
【0565】
【0566】
<粒子の個数>
得られた仮支持体について、既述の方法で、直径が3μm以上の粒子の個数を測定し、測定領域の1cm2あたりの粒子の個数(個/cm2)を算出した。測定結果を以下に示す。
表7中、「3μm~」の欄には、直径が3μm以上4.5μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「4.5μm~」の欄には、直径が4.5μm以上6μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「6μm~」の欄には、直径が6μm以上7.5μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「9μm~」の欄には、直径が9μm以上10.5μm未満の粒子の個数(個/cm2)を、「10.5μm~」の欄には、直径が10.5μm以上の粒子の個数(個/cm2)を、それぞれ示した。
【0567】
【0568】
<感光性転写材料の作製>
表7の記載に従って、仮支持体8~18のいずれかを用い、実施例1に記載した手順と同じ手順によって、表4に記載の層構成4を有する感光性転写材料を得た。仮支持体10~18に対して感光性樹脂層は、仮支持体の第2の面側に形成した。仮支持体8及び9を用いた場合は、仮支持体1で粒子含有層を形成した面の反対側を第2の面とし、この面に感光性樹脂層を形成した。
以上の手順によって得られた感光性転写材料は、仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含む。
【0569】
得られた感光性転写材料について、既述の方法で、感光性樹脂層の限界解像度(X)、基準直径(Y=0.75X)、基準直径以上の粒子の個数、直径10.5μm以上の粒子の個数を求めた。また、得られた感光性転写材料について、既述の方法で、配線パターンのピンホールについて評価した。
結果を表8に示す。
【0570】
<ラミネート性>
解像性の評価において、感光性転写材料と銅層付きPET基板とを貼り合わせた後の、積層体におけるしわの有無、ずれの有無を確認し、以下の基準に沿って、ラミネート性を評価した。結果を表8に示す。
A:積層体にしわがなく、積層体の感光性転写材料と銅層付きPET基板との端部位置が合った状態(即ち、ずれがない状態)で貼り合わせされている。
B:感光性転写材料と銅層付きPET基板との積層体の一部に、搬送方向に沿ったしわが入っている。
C:積層体の感光性転写材料と銅層付きPET基板との端部にずれが生じている。
【0571】
【0572】
表8は、実施例11~21における配線パターンのピンホールの発生が抑制されていることを示す。
なお、実施例11のラミネート性がBである理由としては、仮支持体8の第1の面のRaが小さいことで、仮支持体8の第1の面は滑り難く、真空ラミネーターにおけるゴムロールとの滑り差が生じてしわが入る、といった機構によるものと推測される。
また、実施例17のラミネート性がCである理由としては、仮支持体14の第1の面のRaが大きいことで、仮支持体14の第1の面は滑りに易く、真空ラミネーターにおけるゴムロールとの間に滑りが生じ、銅層付きPET基板に対して仮支持体14を含む感光性転写材料の位置がずれる、といった機構によるものと推測される。
【0573】
[符号の説明]
10、11:仮支持体
10a、11a:仮支持体の第1の面
10b、11b:仮支持体の第2の面
11-1:粒子含有層
11-2:基材
20:感光性樹脂層
30:保護フィルム
40:熱可塑性樹脂層
50:中間層
100、110、120:感光性転写材料
【0574】
2020年8月26日に出願された日本国特許出願2020-142747号、2020年10月12日に出願された日本国特許出願2020-172157号、及び2021年7月6日に出願された日本国特許出願2021-112369号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。