(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030088
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N35/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132651
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】舟越 砂穂
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】磯島 宣之
(72)【発明者】
【氏名】横山 洸幾
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB08
2G058BB18
2G058BB19
2G058CD04
(57)【要約】
【課題】自動分析装置の周囲の温度にかかわらず、複数の試薬を適切な温度に調整する。
【解決手段】検体の分析をする分析部と、分析の前に検体の前処理を行う処理部と、を備える自動分析装置であって、処理部には、その内部の空気の加熱又は冷却をする温調部が設置され、温調部は、第1の試薬温調部と、第2の試薬温調部と、を含み、第1の試薬温調部は、接触熱伝達により第1の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、第2の試薬温調部は、接触熱伝達又は強制対流熱伝達により第2の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、第1の試薬温調部は、第2の試薬温調部よりも熱交換量が多くなるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の分析をする分析部と、
前記分析の前に前記検体の前処理を行う処理部と、を備え、
前記処理部には、その内部の空気の加熱又は冷却をする温調部が設置され、
前記温調部は、第1の試薬温調部と、第2の試薬温調部と、を含み、
前記第1の試薬温調部は、接触熱伝達により第1の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、
前記第2の試薬温調部は、接触熱伝達又は強制対流熱伝達により第2の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、
前記第1の試薬温調部は、前記第2の試薬温調部よりも熱交換量が多くなるように構成されている、自動分析装置。
【請求項2】
前記温調部は、前記処理部の前記内部の前記空気の加熱又は冷却をするフィンと、前記空気を循環させるファンと、を有する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記第1の試薬温調部は、前記フィン又は前記フィンが設置されたフィンベースに接触させた前記第1の試薬を流す第1の試薬温調部チューブを有し、
前記第2の試薬温調部は、前記ファンの空気吹出部に設けられた前記第2の試薬を流す第2の試薬温調部チューブを有する、請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記温調部は、試薬温調部フィンを更に有し、
前記第1の試薬温調部は、前記試薬温調部フィンに接触させた前記第1の試薬を流す第1の試薬温調部チューブを有し、
前記第2の試薬温調部は、前記ファンの空気吹出部に設けられた前記第2の試薬を流す第2の試薬温調部チューブを有する、請求項2記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記第1の試薬温調部は、接触熱伝達により前記第1の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、
前記第2の試薬温調部は、接触熱伝達により前記第2の試薬の加熱又は冷却をする構成を有する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記温調部は、前記処理部の前記内部の前記空気の加熱又は冷却をするフィンと、前記空気を循環させるファンと、を有し、
前記第1の試薬温調部は、前記フィン又は前記フィンが設置されたフィンベースに接触させた前記第1の試薬を流す第1の試薬温調部チューブを有し、
前記第2の試薬温調部は、前記フィン又は前記フィンが設置されたフィンベースに接触させた前記第2の試薬を流す第2の試薬温調部チューブを有し、
前記温調部は、ペルチェ素子を有し、
前記ペルチェ素子は、前記フィンベースよりも伝熱面積が小さく、
前記第1の試薬温調部チューブは、前記フィンベースに前記ペルチェ素子を接触させた面の反対側の前記ペルチェ素子の投影面に配置され、
前記第2の試薬温調部チューブは、前記ペルチェ素子の前記投影面以外の部分に配置されている、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記温調部は、第3の試薬温調部を更に含み、
前記第3の試薬温調部は、接触熱伝達又は強制対流熱伝達により第3の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、
前記第1の試薬温調部は、前記第2の試薬温調部及び前記第3の試薬温調部よりも熱交換量が多くなるように構成されている、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記温調部は、前記処理部の前記内部の前記空気の加熱又は冷却をするフィンと、前記空気を循環させるファンと、を有し、
前記第1の試薬温調部は、前記フィン又は前記フィンが設置されたフィンベースに接触させた前記第1の試薬を流す第1の試薬温調部チューブを有し、
前記第2の試薬温調部は、前記ファンの空気吹出部に設けられた前記第2の試薬を流す第2の試薬温調部チューブを有し、
前記第3の試薬温調部は、前記ファンの空気吹出部に設けられた前記第3の試薬を流す第3の試薬温調部チューブを有する、請求項7記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記検体とアッセイ試薬とを反応させた反応液中の磁性成分と非磁性成分とを分離する磁気分離部を有し、
前記第1の試薬温調部で温度の調整がされた前記第1の試薬を、前記磁気分離部に置かれた反応容器に供給する構成を有する、請求項1~8のいずれか一項に自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、分析対象物質の含まれる検体溶液と反応試薬とを反応容器に分注して反応させ、反応液を光学的に測定することによって分析を行う装置である。例えば、血液、血清、尿等を試料として、試料中に含まれる特定の生体成分や化学物質等を検出するための自動分析装置がある。
【0003】
自動分析装置の分析に用いられる試薬は、温度を適切に制御する必要がある。
【0004】
特許文献1には、試薬を磁気分離部へ供給する配管の周囲を温度調整する熱交換器を有する自動分析装置であって、熱交換器は、吸放熱部で熱交換された空気を送風するファンを備え、ファンから送風された空気が配管に当たる構成、熱交換器のフィン内に試薬の配管を通過させる構成等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動分析装置において十分な分析精度を得るためには、磁気分離等の分析の前処理に使われる試薬や、検出器に供給される試薬の温度をそれぞれ所定の温度に保つ必要がある。特に、磁気分離後の撹拌を磁気分離部と異なる温度環境の場所で行う場合、撹拌終了後の反応液を適切な温度にするためには、磁気分離部の反応容器に供給される試薬と、分析部に直接供給される試薬の温度とを異なる温度に調整する必要がある。
【0007】
特許文献1に記載されている自動分析装置は、前処理工程である磁気分離部に供給される試薬の温度と、分析部に供給される試薬の温度とを異なる温度にする場合、温度差がある限られた範囲に限定される。今後、より安定した分析性能が要求される中で、温度差の調整範囲をより広げて、より正確に温度を調整できるようにすることが望ましい。
【0008】
本開示の目的は、自動分析装置の周囲の温度にかかわらず、複数の試薬を適切な温度に調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の自動分析装置は、検体の分析をする分析部と、分析の前に検体の前処理を行う処理部と、を備え、処理部には、その内部の空気の加熱又は冷却をする温調部が設置され、温調部は、第1の試薬温調部と、第2の試薬温調部と、を含み、第1の試薬温調部は、接触熱伝達により第1の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、第2の試薬温調部は、接触熱伝達又は強制対流熱伝達により第2の試薬の加熱又は冷却をする構成を有し、第1の試薬温調部は、第2の試薬温調部よりも熱交換量が多くなるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、自動分析装置の周囲の温度にかかわらず、複数の試薬を適切な温度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【
図3A】
図2の内部フィン3及び内部フィンベース4を示す斜視図である。
【
図3B】内部フィン3及び内部フィンベース4を
図3Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【
図4】
図3Aの試薬温調部フィン27を示す斜視図である。
【
図5】
図1の第2の試薬温調部14の構造を示す斜視図である。
【
図6A】実施例1の自動分析装置の周囲温度と第1の試薬の温度及び撹拌後の反応液の温度との関係を示すグラフである。
【
図6B】実施例1の自動分析装置の周囲温度と第2の試薬の温度との関係を示すグラフである。
【
図7】実施例2の自動分析装置を示す概略構成図である。
【
図8】
図7の第2の試薬温調部14の構造を示す斜視図である。
【
図9A】実施例3の内部フィン3及び内部フィンベース4を示す斜視図である。
【
図9B】内部フィン3及び内部フィンベース4を
図9Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【
図10A】実施例4の内部フィン3及び内部フィンベース4を示す斜視図である。
【
図10B】内部フィン3及び内部フィンベース4を
図10Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【
図11】実施例5の自動分析装置を示す概略構成図である。
【
図12A】実施例5の内部フィン3及び内部フィンベース4を示す斜視図である。
【
図12B】内部フィン3及び内部フィンベース4を
図12Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、自動分析装置に関し、特に、分析に用いられる試薬の温度を調整する装置に関する。
【0013】
以下、本開示の自動分析装置の実施例について添付図面を参照して説明する。以下の実施例では、免疫自動分析装置を例として説明する。
【実施例0014】
図1は、実施例1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【0015】
本図に示す自動分析装置は、分析の前処理を行う処理部25と、分析部200と、を備えている。処理部25には、温調部1と、磁気分離部18と、容器保持部20と、空気温度センサ30と、が設けられている。分析部200には、検出容器23と、検出器24と、が設けられている。ここで、温調部1の「温調」は、「温度調節」の略称である。
【0016】
温調部1は、加熱・冷却部2と、内部フィン3と、内部フィンベース4と、内部ファン5と、空気吹出部6と、外部フィン7と、外部フィンベース8と、外部ファン9と、を有する。温調部1の内部フィン3、内部フィンベース4、内部ファン5及び空気吹出部6は、処理部25の内部に配置されている。一方、温調部1の外部フィン7、外部フィンベース8及び外部ファン9は、処理部25の外部に配置されている。
【0017】
処理部25は、断熱部材で覆われ、内部の温度を制御できるようになっている。
【0018】
磁気分離部18は、反応容器15を設置可能な構成を有する。そして、磁気分離部18には、反応容器15に試薬、溶液等を供給する吐出ノズル16と、不要な溶液を排出する吸引ノズル17と、が設けられている。
【0019】
容器保持部20は、反応容器15及び試薬容器19を設置可能な構成を有する。反応容器15の液体は、吸引ノズル22により分析部200の検出容器23に送ることができるようになっている。
【0020】
処理部25の外部には、第1の試薬貯蔵部31と、第2の試薬貯蔵部35と、が設けられている。第1の試薬貯蔵部31の試薬は、第1の試薬チューブ11を介して、吐出ノズル16に送られ、反応容器15に注入されるようになっている。第2の試薬貯蔵部35の試薬は、第2の試薬チューブ12を介して、試薬容器19に送られるようになっている。
【0021】
第1の試薬チューブ11は、第1の試薬温調部13を通るように構成されている。第2の試薬チューブ12は、第2の試薬温調部14を通るように構成されている。第1の試薬チューブ11には、シリンジポンプ32と、バルブ33、34と、が設けられている。第2の試薬チューブ12には、シリンジポンプ36と、バルブ37、38と、が設けられている。
【0022】
また、処理部25の外部には、モータ39を有する撹拌部21が設けられている。
【0023】
さらに、処理部25の外部には、複数の反応容器15を保持する反応テーブル26と、複数の試薬ボトル61を保持するアッセイ試薬貯蔵部60と、が設けられている。
【0024】
つぎに、自動分析装置の動作の概要を説明する。
【0025】
図1において、反応テーブル26上には複数の反応容器15が置かれる。そして、それぞれの反応容器15には、血液や尿等の検体とアッセイ試薬が分注される。アッセイ試薬は、アッセイ試薬貯蔵部60に保持された試薬ボトル61に貯蔵されている。
【0026】
反応テーブル26の温度は、ヒータ(図示せず)によって所定の温度に保たれ、検体とアッセイ試薬との反応が促進される。反応テーブル26に所定時間置かれた反応容器15は、処理部25に設置された磁気分離部18に、搬送機構(図示せず)によって搬送される(点線の矢印)。
【0027】
磁気分離部18においては、検体とアッセイ試薬とを反応させた反応液中の磁性成分と非磁性成分とを分離する磁気分離と呼ばれるプロセスが行われる。
【0028】
そして、吸引ノズル17により不要な溶液が排出される。次に、吐出ノズル16から置換液と呼ばれる第1の試薬が吐出される。第1の試薬は、第1の試薬貯蔵部31に貯蔵されており、シリンジポンプ32とバルブ33、34の動作によって吐出ノズル16から磁気分離部18上の反応容器15に送られる。
【0029】
反応容器15に吐出される第1の試薬の温度は、後述する方法によって第1の試薬温調部13において調整される。
【0030】
磁気分離プロセスの終了後、反応容器15は、搬送機構により撹拌部21に搬送される(点線の矢印)。撹拌部21においては、モータ39によって反応容器15を回転させることにより撹拌が行われる。所定時間の撹拌終了後、反応容器15は、搬送機構により容器保持部20に搬送される(点線の矢印)。そして、反応容器15の内容物である反応液が吸引ノズル22から分析部200の検出容器23に導かれる。
【0031】
検出容器23において、検出器24により反応液からの信号の検出が行われる。一方、容器保持部20には、試薬容器19が載せられており、試薬容器19には、第2の試薬貯蔵部35からシリンジポンプ36とバルブ37、38の動作によって第2の試薬が供給される。試薬容器19に供給される試薬の温度は、後述する方法によって第2の試薬温調部14において調整される。容器保持部20は、回転するようになっており、反応容器15の反応液とは別のタイミングで試薬容器19内の試薬が吸引ノズル22から検出容器23に導かれる。
【0032】
処理部25の内部の空気は、温調部1によって一定の温度に調整される。
【0033】
【0034】
図2においては、
図1に示す構成の他に、制御装置70を示している。また、加熱・冷却部2の詳細な構成を示している。加熱・冷却部2は、加熱や冷却の動作を行う部分であり、ペルチェ素子101と、ヒートスプレッダ102と、サーマルインターフェース103、104と、樹脂等で造られたケース106と、から構成されている。
【0035】
内部フィン3および外部フィン7には、プレートフィンやピンフィン等が用いられている。ヒートスプレッダ102は、アルミニウム等の金属であり、ペルチェ素子101と内部フィンベース4との熱伝達を助ける役割がある。サーマルインターフェース103、104は、サーマルグリースまたは熱伝導率が高いシート部材であり、ペルチェ素子101とヒートスプレッダ102との間、及びペルチェ素子101と外部フィンベース8との間の接触状態を良好にして伝熱を促進する。ヒートスプレッダ102と内部フィンベース4との間にも、熱伝導率の高いシート部材等のサーマルインターフェース105が設けられている。
【0036】
次に、温調部1の動作について説明する。
【0037】
空気温度センサ30の検知した空気温度が目標温度よりも高いときには、制御装置70は、ペルチェ素子101のヒートスプレッダ102の側の面が低温、外部フィンベース8の側の面が高温になるようにペルチェ素子101に通電する。内部ファン5は、矢印110の方向に送風するように運転される。これにより、処理部25内の空気は、内部フィン3に吸い込まれ、空気吹出部6から矢印110の方向に吹き出される。このとき、空気の熱は、内部フィン3や内部フィンベース4に吸熱され、サーマルインターフェース105、ヒートスプレッダ102、サーマルインターフェース103を経て、ペルチェ素子101に吸熱される。一方、ペルチェ素子101の反対側の面は、発熱(放熱)し、その熱は、サーマルインターフェース104、外部フィンベース8から外部フィン7に伝わる。外部ファン9は、矢印111の方向に送風するように運転される。これにより、外部フィン7および外部フィンベース8の熱は、外部フィン7の間に流れる空気に放熱される。
【0038】
空気温度センサ30の検知した空気温度が目標値よりも低いときには、ペルチェ素子101のヒートスプレッダ102の側の面が高温、外部フィンベース8の側の面が低温になるようにペルチェ素子101に通電する。周囲の空気の熱は、外部フィン7の間を流れるときに外部フィン7や外部フィンベース8に熱を奪われ、サーマルインターフェース104を経てペルチェ素子101によって吸熱される。ペルチェ素子101の反対側の面は発熱し、その熱はサーマルインターフェース103、ヒートスプレッダ102、サーマルインターフェース105を経て、内部フィンベース4、内部フィン3に伝えられ、内部ファン5によって内部フィン3の間を流れる空気に放熱され、加熱された空気が空気吹出部6から矢印110の方向に吹き出される。
【0039】
ペルチェ素子101の出力は、空気温度センサ30の検知した空気温度と目標温度に従って制御装置70によって制御される。ペルチェ素子101の出力は、例えば、ペルチェ素子101に通電する通電率を変化させることによって制御する。
【0040】
図3Aは、
図2の内部フィン3及び内部フィンベース4を示す斜視図である。
【0041】
図3Aにおいては、第1の試薬温調部13は、破線の長方形で示す部分であり、試薬温調部フィン27と第1の試薬温調部チューブ28とから構成される。第1の試薬温調部チューブ28は、試薬温調部フィン27の間、言い換えると、試薬温調部フィン27の溝部に配置されている。
【0042】
図3Bは、内部フィン3及び内部フィンベース4を
図3Aとは異なる方向から見た斜視図である。
【0043】
図3Bに示すように、試薬温調部フィン27は、内部フィンベース4の両端部に熱的に接触するように配置されている。第1の試薬温調部チューブ28は、試薬温調部フィン27の4つの溝部に熱的に接触するようにはめ込まれている。第1の試薬温調部チューブ28は、第1の試薬チューブ11の一部を構成している。
【0044】
図4は、
図3Aの試薬温調部フィン27を示す斜視図である。
【0045】
本図に示す試薬温調部フィン27は、アルミニウム合金等の熱伝導率が高い金属で形成されている。試薬温調部フィン27は、3つのフィンを有し、フィンの間に形成された溝部を有する。
【0046】
第1の試薬温調部チューブ28は、ステンレス鋼または樹脂等で形成されたチューブであり、試薬温調部フィン27と密着して固定される。第1の試薬温調部チューブ28と試薬温調部フィン27との間には、グリースや熱伝導率の高い樹脂等のサーマルインターフェースを設けてもよい。また、第1の試薬温調部チューブ28と試薬温調部フィン27とをはんだ付けや溶接によって固定してもよい。
【0047】
試薬温調部フィン27は、ねじ(図示せず)等により内部フィンベース4に固定される。試薬温調部フィン27と内部フィンベース4との間には、グリースや熱伝導樹脂等のサーマルインターフェースを設けてもよい。また、内部フィンベース4と試薬温調部フィン27とを、熱伝導率が高く両側に接着面を有する樹脂や、熱伝導率の高い接着剤によって固定してもよい。
【0048】
第1の試薬温調部チューブ28を流れる試薬は、内部フィンベース4によって、試薬温調部フィン27と第1の試薬温調部チューブ28を介して冷却または加熱がされた後、磁気分離部18に設置された反応容器15に供給される。
【0049】
図3A及び3Bに示す矢印は、試薬を流す向きを表している。ペルチェ素子101に近い部分が下流側になるように試薬を流すことにより、効率的に熱交換を行うことができる。
【0050】
図5は、
図1の第2の試薬温調部14の構造を示す斜視図である。
【0051】
本図に示すように、第2の試薬温調部チューブ29は、内部ファン5の吹出側にらせん状に設置されている。第2の試薬温調部チューブ29は、第2の試薬チューブ12の一部を構成している。第2の試薬温調部チューブ29を流れる第2の試薬は、内部ファン5から吹き出す空気によって冷却または加熱がされた後、試薬容器19(
図1)に供給される。
【0052】
図5示す矢印は、試薬を流す向きを表している。第2の試薬温調部チューブ29のらせんを風下から風上に向かうように配置し、この方向に試薬を流すことにより、効率的に試薬の冷却や加熱を行うことができる。
【0053】
図1に示すように、第1の試薬温調部13で冷却または加熱された試薬は、磁気分離部18の反応容器15に導かれ、磁気分離工程の後、撹拌部21に搬送される。撹拌部21は、他の工程と共通に使用するために、空気温度が一定に保たれている処理部25の外部に設置する場合が多い。検出器24による検出精度を保つため、撹拌後の反応液の温度を所定の温度範囲に調整する必要がある。そのため、周囲温度が高いときには磁気分離部18に供給される第1の試薬は低めの温度に、周囲温度が低いときには逆に高めの温度に調整する必要がある。
【0054】
一方、第2の試薬温調部14で温度を調整された試薬は、容器保持部20にある試薬容器19に供給された後、検出容器23に導かれる。検出器24による検出精度を保つため、試薬容器19に供給される第2の試薬の温度も、所定の温度に保つ必要がある。
【0055】
つぎに、本実施例の自動分析装置の構成により、周囲温度にかかわらず、反応液及び試薬の温度を適切な温度に調整する作用が得られることについて説明する。
【0056】
第1の試薬温調部13においては、第1の試薬温調部チューブ28と内部フィンベース4とを試薬温調部フィン27を介して接触させて、ペルチェ素子101に近い部分からの接触熱伝達によって試薬を冷却・加熱している。これに対して、第2の試薬温調部14においては、内部ファン5から吹き出す空気によって強制対流熱伝達によって試薬を冷却・加熱している。
【0057】
周囲温度が高いときには、周囲温度が高いほど処理部25の内部の空気を冷却する冷却能力を多く要する。このため、ペルチェ素子101の出力が大きくなる。したがって、内部フィンベース4の温度は、低くなる。これにより、第1の試薬温調部13で調整される試薬の温度がより低く調整される。
【0058】
反応容器15は、磁気分離部18での処理後に、処理部25の外部に設けられた撹拌部21で撹拌される。撹拌部21は、周囲温度が高いため、撹拌後における反応容器15の反応液の温度は、周囲温度の影響で上昇し、目標温度範囲に到達する。
【0059】
逆に、周囲温度が低いときには、周囲温度が低いほど処理部25の内部の空気を加熱するための加熱能力を多く要する。、ペルチェ素子101の出力が大きくなる。したがって、内部フィンベース4の温度が高くなる。これにより、第1の試薬温調部13で調整される試薬の温度がより高く調整される。
【0060】
反応容器15は、磁気分離部18で処理後に、処理部25の外部に設けられた撹拌部21で撹拌される。撹拌部21は、周囲温度が低いため、撹拌後における反応容器15の反応液の温度は、周囲温度の影響で下降し、目標温度範囲に到達する。
【0061】
図6Aは、上述の内容をまとめたものであり、本実施例の自動分析装置の周囲温度と第1の試薬の温度及び撹拌後の反応液の温度との関係を示すグラフである。横軸に周囲温度、縦軸に試薬温度をとっている。
【0062】
本図において、処理部25の内部に設置された磁気分離部18に供給される第1の試薬は、周囲温度が高いほど内部フィンベース4の温度が低くなるため、破線で示すように減少関数となる。一方、処理部25の外部において攪拌した後における反応液の温度は、周囲温度にかかわらず、実線で示すようにほぼ一定となっている。なお、2本の一点鎖線で示す範囲は、反応液の目標温度範囲である。
【0063】
一方、ペルチェ素子101の出力は、処理部25の吹出空気温度が一定となるように制御しているため、第2の試薬温調部で空気によって加熱・冷却される第2の試薬の温度はほぼ一定の温度となる。
【0064】
図6Bは、本実施例の自動分析装置の周囲温度と第2の試薬の温度との関係を示すグラフである。横軸に周囲温度、縦軸に試薬温度をとっている。
【0065】
本図において、ペルチェ素子101の出力の制御により、試薬容器19に供給される第2の試薬の温度は、周囲温度にかかわらず、実線で示すようにほぼ一定となっている。なお、2本の一点鎖線で示す範囲は、第2の試薬の目標温度範囲である。
【0066】
このように、第1の試薬と第2の試薬とを異なる温度に調整できるので、周囲の温度にかかわらず、第1の試薬および撹拌後の反応容器15内の液温を適切な温度に調整することが可能である。したがって、吸引ノズル22から検出容器23に吸引される反応液と試薬がいずれも適切な温度に調整される。これにより、検出器24による高い検出精度が実現される。
【0067】
まとめると、第1の試薬は、外部における撹拌操作を前提として、目標温度範囲を超える加熱又は冷却を行う。一方、第2の試薬は、処理部25の内部のみにおける操作を前提とするため、目標温度範囲に収まるように加熱又は冷却を行う。このような第1の試薬及び第2の試薬の加熱又は冷却を1つの温調部1により行うため、第1の試薬温調部チューブ28及び第2の試薬温調部チューブ29の配置を適切に選定している。
【0068】
第1の試薬の温度を適切に設定するには、第1の試薬温調部13の第1の試薬温調部チューブ28と試薬温調部フィン27とが接触する部分の長さを適切に設定すればよい。また、
図5の試薬を流す向きを矢印の向きと逆向きにすることによっても、磁気分離部18に供給される第1の試薬の温度を調整できる。
【0069】
本実施例によれば、周囲の温度にかかわらず、撹拌後の反応容器内の反応液の温度と試薬容器に供給される第2の試薬の温度とをいずれも適切な温度に調整することができ、検出器による高い検出精度を実現することが可能である。
容器保持部20は、回転するようになっており、反応容器15の反応液や試薬容器19の第1の試薬のいずれとも異なるタイミングで、試薬容器42内の第3の試薬が吸引ノズル22から検出容器23に導かれる。
第2の試薬温調部チューブ29を流れる第2の試薬は、内部ファン5から吹き出す空気によって冷却または加熱がされた後、試薬容器19に供給される。第3の試薬温調部チューブ41を流れる第3の試薬は、内部ファン5から吹き出す空気によって冷却または加熱がされた後、試薬容器42に供給される。
なお、本図においては、内部ファン5から吹き出す空気の流れに対して、第2の試薬温調部チューブ29が第3の試薬温調部チューブ41の上流側に配置されているが、この構成に限定されるものではなく、第3の試薬温調部チューブ41を第2の試薬温調部チューブ29の上流側に配置してもよい。
本実施例によれば、自動分析装置の周囲温度にかかわらず、撹拌後の反応容器内の反応液の温度、第2の試薬の温度および第3の試薬の温度のいずれも適切な温度に調整することができ、検出器による高い検出精度を実現することが可能である。