IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030114
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】熱伝導シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240229BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20240229BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240229BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C08J5/18
C09K5/14 E
H01L23/36 D
H01L23/36 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132686
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
【テーマコード(参考)】
4F071
5F136
【Fターム(参考)】
4F071AA12
4F071AA13
4F071AA82
4F071AB03
4F071AE17
4F071AF14
4F071AF44Y
4F071AF45Y
4F071AG26
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB04
4F071BC01
4F071BC12
5F136BC07
5F136FA22
5F136FA75
5F136FA82
5F136GA12
5F136GA31
(57)【要約】
【課題】強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートの提供。
【解決手段】粒子状炭素材料を含む熱伝導シートであって、前記粒子状炭素材料の長軸方向の前記熱伝導シート表面に対する角度が60°以上90°以下であり、前記熱伝導シートに対して、所定の条件で熱重量分析測定を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率(%)が、前記熱重量分析測定を行う前の前記熱伝導シートの重量を100%として、3%以上20%以下である、熱伝導シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状炭素材料を含む熱伝導シートであって、
前記粒子状炭素材料の長軸方向の前記熱伝導シート表面に対する角度が60°以上90°以下であり、
前記熱伝導シートに対して、以下の条件:
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:30℃から1000℃まで
大気雰囲気下
で熱重量分析測定を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率(%)が、前記熱重量分析測定を行う前の前記熱伝導シートの重量を100%として、3%以上20%以下である、熱伝導シート。
【請求項2】
前記粒子状炭素材料の体積平均粒子径が30μm以上250μm以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
密度が1.2g/cm以上である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
樹脂および粒子状炭素材料を含む組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、
前記一次シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、前記一次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、
前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、二次シートを得るスライス工程と、
前記二次シートを焼成して熱伝導シートを得る焼成工程と、
を含む、熱伝導シートの製造方法であって、
前記粒子状炭素材料が膨張化黒鉛を含み、
前記一次シートにおける前記粒子状炭素材料の体積分率が45体積%以上であり、
前記焼成工程における焼成温度が200℃以上1500℃以下である、熱伝導シートの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が環状構造を有する、請求項4に記載の熱伝導シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パワー半導体(IGBTモジュールなど)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
【0003】
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、熱伝導性が高いシート状の部材、すなわち熱伝導シートを介して発熱体と放熱体とを密着させている。
【0004】
例えば、特許文献1には、粒子状炭素材料および樹脂を含むプレ熱伝導シートが複数層積層されてなり、全樹脂成分のムーニー粘度が所定の値以下である熱伝導シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/025587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、近年、太陽熱発電、地熱発電、半導体製造などの現場において、300℃を超える高温条件での使用に耐え得る熱伝導シートが求められている。しかしながら、上記従来の熱伝導シートを、300℃を超える高温条件で使用すると、熱伝導シート中の樹脂が熱分解されてしまうためと推察されるが、熱伝導性が低下するという問題があった。また、上記従来の熱伝導シートには、強度を更に向上させることも求められていた。即ち、上記従来の熱伝導シートには、高い強度を有するとともに、300℃を超える高温条件においても優れた熱伝導性を発揮するという点において、未だ改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、高い強度を有する(即ち、強度に優れる)とともに、高温条件においても優れた熱伝導性を発揮する(即ち、高温下における熱伝導性に優れる)熱伝導シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率的に製造し得る、熱伝導シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、粒子状炭素材料を含み、且つ粒子状炭素材料が特定の方向に配向した熱伝導シートであって、所定の条件で熱重量分析測定を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率が所定の範囲内である熱伝導シートが、強度および高温下における熱伝導性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明によれば、下記(1)~(3)の熱伝導シート、および下記(4)~(5)の熱伝導シートの製造方法が提供される。
(1)粒子状炭素材料を含む熱伝導シートであって、前記粒子状炭素材料の長軸方向の前記熱伝導シート表面に対する角度が60°以上90°以下であり、前記熱伝導シートに対して、以下の条件:
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:30℃から1000℃まで
大気雰囲気下
で熱重量分析測定を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率(%)が、前記熱重量分析測定を行う前の前記熱伝導シートの重量を100%として、3%以上20%以下である、熱伝導シート。
このように、粒子状炭素材料を含み、当該粒子状炭素材料の長軸方向の熱伝導シート表面に対する角度(以下、単に「粒子状炭素材料の配向角度」と略記する場合がある。)が上述の範囲内であり、そして所定の条件で熱重量分析を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率(以下、単に「150℃から600℃までの重量減少率」と略記する場合がある。)が上述の範囲内である熱伝導シートは、強度および高温下における熱伝導性に優れる。
なお、本発明において、「粒子状炭素材料の配向角度」は、本明細書の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明において、熱伝導シートの「150℃から600℃までの重量減少率」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
そして、本発明において、「粒子状炭素材料」とは、アスペクト比が20以下の炭素材料を意味する。
【0010】
(2)前記粒子状炭素材料の体積平均粒子径が30μm以上250μm以下である、上記(1)に記載の熱伝導シート。
このように、熱伝導シートに含まれる粒子状炭素材料の体積平均粒子径が30μm以上250μm以下であれば、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、粒子状炭素材料の「体積平均粒子径」とは、レーザー回折法で測定された粒子径分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を表し、本明細書の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0011】
(3)密度が1.2g/cm以上である、上記(1)または(2)に記載の熱伝導シート。
このように、熱伝導シートの密度を1.2g/cm以上とすれば、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、熱伝導シートの「密度」は、本明細書の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0012】
(4)樹脂および粒子状炭素材料を含む組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、前記一次シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、前記一次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、二次シートを得るスライス工程と、前記二次シートを焼成して熱伝導シートを得る焼成工程と、を含む、熱伝導シートの製造方法であって、前記粒子状炭素材料が膨張化黒鉛を含み、前記一次シートにおける前記粒子状炭素材料の体積分率が45体積%以上であり、前記焼成工程における焼成温度が200℃以上1500℃以下である、熱伝導シートの製造方法。
このように、所定の一次シート成形工程、積層体形成工程、スライス工程および焼成工程を含む熱伝導シートの製造方法であって、粒子状炭素材料が膨張化黒鉛を含み、一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率が45体積%以上であり、そして焼成工程における焼成温度が200℃以上1500℃以下である熱伝導シートの製造方法によれば、強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率的に製造することができる。
【0013】
(5)前記樹脂が環状構造を有する、上記(4)に記載の熱伝導シートの製造方法。
このように、環状構造を有する樹脂を用いて熱伝導シートを製造すれば、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートを提供することができる。
また、本発明によれば、強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率的に製造し得る、熱伝導シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の熱伝導シートは、熱伝導性を有するため、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。即ち、本発明の熱伝導シートは、放熱部材としての熱伝導シートとして機能しうるものであり、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成することができる。
そして、本発明の熱伝導シートは、特に限定されるものではないが、例えば後述する本発明の熱伝導シートの製造方法に従って効率的に製造することができる。
【0016】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、粒子状炭素材料を含み、任意に、粒子状炭素材料以外の成分(その他の成分)を更に含有する。
ここで、本発明の熱伝導シートは、粒子状炭素材料を含み、粒子状炭素材料の配向角度が60°以上90°以下であり、所定の条件で熱重量分析を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率が3%以上20%以下であることを特徴とする。
【0017】
そして、本発明の熱伝導シートは、粒子状炭素材料を含み、粒子状炭素材料の配向角度が上述の範囲内であり、そして150℃から600℃までの重量減少率が上述の範囲内であるため、強度および高温下における熱伝導性に優れる。このように、上述した熱伝導シートにより、上記の効果が得られる理由は定かではないが、以下の通りであると推察される。
【0018】
まず、本発明の熱伝導シートは粒子状炭素材料を含み、当該粒子状炭素材料は、熱伝導シート表面に対して60°以上90°以下の角度で配向されている。このように、本発明の熱伝導シートは、粒子状炭素材料が熱伝導シート表面に対して良好に配向されているので、強度および高温下における熱伝導性に優れると考えられる。
次いで、本発明者の検討によれば、熱伝導シートに対して所定の条件で熱重量分析を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率が3%以上20%以下であることで、当該熱伝導シートは強度および高温下における熱伝導性が向上することが明らかとなった。本発明者の推察では、熱伝導シートにおいて、大気雰囲気下における150℃から600℃までの範囲において熱分解される成分は、例えば本発明の熱伝導シートの製造方法を経て製造した場合では、熱伝導シートの前駆体である一次シートおよび二次シートを成形するために用いた樹脂が、焼成工程における二次シートの焼成時に焼成されて生じたタール成分(樹脂の燃焼残渣)であると考えられる。このような熱伝導シート中の樹脂由来のタール成分は、熱伝導シートの強度を向上させるとともに、それ自身が優れた熱伝導性を備えるため、熱伝導シートの高温下における熱伝導性を高める機能を有する。そして、本発明の熱伝導シートに対して所定の条件で熱重量分析測定を行うと、この樹脂由来のタール成分が150℃から600℃にかけて蒸発、分解等により消滅(熱分解)すると考えられる。換言すると、本発明の熱伝導シートに対して、所定の条件で熱重量分析を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少は、熱伝導シート中の樹脂由来のタール成分が消滅(熱分解)することに起因すると考えられる。したがって、上記の「150℃から600℃までの重量減少率」は、熱伝導シートの重量100%に占める、樹脂由来のタール成分の重量の割合(重量%)に相当するといえる。
そして、本発明の熱伝導シートは、150℃から600℃までの重量減少率が3%以上であることにより、十分な量のタール成分を含むといえるので、強度および高温下における熱伝導性に優れる。加えて、本発明の熱伝導シートは、150℃から600℃までの重量減少率が20%以下であることで、熱伝導シート中の粒子状炭素材料の量が過度に減少するほど過剰な量のタール成分を含むわけではないといえる。そのため、熱伝導シート中において粒子状炭素材料が占める割合の減少に起因する、熱伝導シートの強度および熱伝導性の低下が抑制されていると考えられる。
したがって、本発明の熱伝導シートは、強度および高温下における熱伝導性に優れる。
【0019】
<粒子状炭素材料>
ここで、粒子状炭素材料としては、アスペクト比が20以下の炭素材料である限り、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、熱伝導シートの高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
【0020】
<<膨張化黒鉛>>
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、市販の膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC-1500、EC-1000、EC-500、EC-300、EC-100、EC-50、EC-10(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0021】
<<粒子状炭素材料の性状>>
[体積平均粒子径]
ここで、粒子状炭素材料の体積平均粒子径は、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。粒子状炭素材料の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、熱伝導シートの高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。また、粒子状炭素材料の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートの強度を更に向上させることができる。
【0022】
なお、粒子状炭素材料は、体積平均粒子径が上述の範囲内であり、且つ体積平均粒子径が互いに異なる2種以上を併用することが好ましい。体積平均粒子径の異なる2種以上の粒子状炭素材料を併用することで、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を一層高いレベルで両立することができる。なお、2種以上の粒子状炭素材料を併用する場合、当該2種以上の粒子状炭素材料の質量比は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整することができる。
【0023】
[アスペクト比]
ここで、本発明において、粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、20以下であることが必要であり、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。なお、アスペクト比は、通常1超である。また、本発明において、粒子状炭素材料の「アスペクト比」は、粒子状炭素材料をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0024】
[配向角度]
粒子状炭素材料の長軸方向の熱伝導シート表面に対する角度(粒子状炭素材料の配向角度)は、60°以上90°以下である必要があり、粒子状炭素材料の配向角度は、65°以上であることが好ましく、70°以上であることがより好ましい。粒子状炭素材料の配向角度が上述の範囲外であると、熱伝導シートの熱抵抗が上昇し、高温下における熱伝導性が低下する。そして、粒子状炭素材料の配向角度が上述の範囲であれば、熱伝導シートの高温下における熱伝導性を更に向上させるとともに、高圧下における熱抵抗を低減させることができる。
【0025】
<<粒子状炭素材料の含有割合>>
熱伝導シート中の粒子状炭素材料の含有割合は、熱伝導シートの全量を100質量%として、80質量%以上であることが好ましく、81質量%以上であることがより好ましく、82質量%以上であることが更に好ましく、97質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。熱伝導シート中の粒子状炭素材料の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させるとともに、高圧下における熱抵抗を低減させることができる。また、熱伝導シート中の粒子状炭素材料の含有割合が上記上限以下であれば、熱伝導シート中の樹脂由来の成分(タール成分)の量が増加する。そのため、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
【0026】
<その他の成分>
本発明の熱伝導シートは、上述した粒子状炭素材料以外の成分(その他の成分)を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、繊維状炭素材料(例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、および、それらの切断物)、樹脂、樹脂に由来するタール成分などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、本発明において、「繊維状炭素材料」とは、アスペクト比が20超の炭素材料を意味する。
【0027】
ここで、本発明の熱伝導シートに任意で含まれる樹脂由来のタール成分は、特に限定されるものではないが、例えば、後述する本発明の熱伝導シートの製造方法において、熱伝導シートの前駆体である一次シートおよび二次シートを成形するために用いた樹脂のうちの一部が、焼成工程で分解せずに生じたものである。
【0028】
そして、熱伝導シートにおける樹脂の含有割合は、熱伝導シートの全量を100質量%として、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0質量%である(即ち、熱伝導シートは樹脂を含まない)ことが特に好ましい。熱伝導シートに含有される樹脂の割合が上記上限以下であれば、熱伝導シートの高温下における熱伝導性を更に向上せるとともに、熱伝導シートの圧縮性を高めることができる。なお、熱伝導シートに含まれ得る樹脂の具体例としては、「熱伝導シートの製造方法」の項で後述する樹脂などが挙げられる。
【0029】
<熱伝導シートの性状>
<<重量減少率>>
熱伝導シートは、所定の条件で熱重量分析測定を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率が、熱重量分析測定を行う前の熱伝導シートの重量を100%として、3%以上20%以下であることが必要であり、150℃から600℃までの重量減少率は、6%以上であることが好ましく、9%以上であることがより好ましく、13%以上であることが更に好ましく、19%以下であることが好ましい。熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率が3%未満であると、熱伝導シート中のタール成分の量が減少するためと推察されるが、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性が低下する。また、熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率が20%超であると、熱伝導シート中に占める粒子状炭素材料の割合が減少するためと考えられるが、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性が低下する。
なお、熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率は、後述する熱伝導シートの製造方法において、一次シート成形工程に用いる組成物中の樹脂の種類や量、焼成工程における条件(例えば、焼成温度および時間)などを変更することにより調整することができる。具体的には、一次シート成形工程に用いる組成物中の樹脂の量を増加させること、および/または、樹脂として環状構造を有する樹脂を用いることで、熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率を増加させることができる。また、焼成工程における焼成温度を低下させることでも、熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率を増加させることができる。
【0030】
<<密度>>
熱伝導シートの密度は、1.2g/cm以上であることが好ましく、1.25g/cm以上であることがより好ましく、1.3g/cm以上であることが更に好ましく、1.35g/cm以上であることがより一層好ましく、1.4g/cm以上であることが特に好ましい。熱伝導シートの密度が上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。また、熱伝導シートの密度の上限は、特に限定されないが、例えば、1.6g/cm以下とすることができ、1.5g/cm以下とすることができる。
なお、熱伝導シートの密度は、例えば、後述する熱伝導シートの製造方法において実施する工程、使用する樹脂および粒子状炭素材料の種類、性状および量比、ならびに、焼成の条件(例えば、焼成温度および時間)などによって調整することができる。
【0031】
<<厚み>>
熱伝導シートの厚みは、80μm以上であることが好ましく、90μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。熱伝導シートの厚みが上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。一方、熱伝導シートの厚みが上記上限以下であれば、熱抵抗の値を適度に下げることが出来る。
【0032】
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上述した本発明の熱伝導シートを製造する際に好適に用いることができる。そして、本発明の熱伝導シートの製造方法は、(A)樹脂と、膨張化黒鉛を含有する粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、45体積%以上の粒子状炭素材料を含む一次シートを得る一次シート成形工程と、(B)一次シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、一次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、(C)積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、二次シートを得るスライス工程と、(D)200℃以上1500℃以下の焼成温度で二次シートを焼成して熱伝導シートを得る焼成工程と、を含むことを特徴とする。かかる本発明の熱伝導シートの製造方法によれば、強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率的に製造することができる。
なお、本発明の熱伝導シートの製造方法は、任意で、上記(A)~(D)以外の工程を更に含んでいてもよい。以下、各工程について詳述する。
【0033】
<一次シート成形工程>
一次シート成形工程では、樹脂と、膨張化黒鉛を含有する粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る。
【0034】
<<組成物>>
一次シート成形工程で使用される組成物は、樹脂と、膨張化黒鉛を含有する粒子状炭素材料とを含む。なお、組成物は、樹脂および粒子状炭素材料以外の成分(その他の成分)を更に含んでいてもよい。
【0035】
[樹脂]
樹脂としては、特に限定されず、任意の樹脂を用いることができる。例えば、樹脂としては、液状樹脂および固体樹脂のいずれも用いることができる。なお、樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、樹脂としては、液状樹脂と固体樹脂との双方を用いることができる。なお、樹脂として液状樹脂と固体樹脂とを併用する場合、液状樹脂と固体樹脂との質量比は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整することができる。
【0036】
そして、液状樹脂としては、常温常圧下で液体である限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
【0037】
液状樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム)、1,2-ポリブタジエンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
固体樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0039】
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物などのスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、ゴムは、「樹脂」に含まれるものとする。
【0040】
常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
―環状構造を有する樹脂―
ここで、樹脂としては、環状構造を有する樹脂を用いることが好ましい。環状構造を有する樹脂を用いれば、熱伝導シート中に残存する樹脂由来の成分(タール成分)の量が増加するためと推察されるが、得られる熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
環状構造は、炭素、水素、窒素、酸素などの原子で構成されるものであれば特に限定されないが、炭化水素環(炭素と水素で構成される環)が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
そして、環状構造を有する樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物などのスチレン系樹脂;ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などのイミド樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環を有する樹脂が好ましく、スチレン系樹脂がより好ましく、スチレン-ブタジエンランダム共重合体がより好ましい。
【0042】
そして、スチレン系樹脂中のスチレン単位の含有割合は、スチレン系樹脂中の全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。スチレン系樹脂中のスチレン単量体単位の含有割合が上記下限以上であれば、得られる熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。なお、スチレン系樹脂中のスチレン単量体単位の含有割合の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、50質量%以下とすることができ、40質量%以下とすることができる。
なお、本発明において、「スチレン単位」とは、「単量体としてスチレンを用いて得た重合体中に含まれる、スチレン由来の繰り返し単位」を意味する。
【0043】
[粒子状炭素材料]
粒子状炭素材料としては、「熱伝導シート」の項で上述した粒子状炭素材料を用いることができる。ここで、粒子状炭素材料は、膨張化黒鉛を含むことが必要である。粒子状炭素材料が膨張化黒鉛を含まないと、得られる熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性が低下する。
【0044】
そして、粒子状炭素材料に占める膨張化黒鉛の含有割合は、粒子状炭素材料の全量を100質量%として、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%である(即ち、粒子状炭素材料は膨張化黒鉛のみである)ことが特に好ましい。粒子状炭素材料に占める膨張化黒鉛の含有割合が上記下限以上であれば、得られる熱伝導シートの高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
【0045】
[その他の成分]
一次シート成形工程で使用される組成物は、上述した樹脂および粒子状炭素材料以外のその他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、分散剤や「熱伝導シート」の項で上述した繊維状炭素材料を用いることができる。分散剤としては、特に限定されることはなく、既知のものを用いることができる。なお、組成物中の分散剤の含有量は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整することができる。
【0046】
[組成物の調製]
組成物は、特に限定されることはなく、上述した成分を混合し、その後任意に解砕することにより調製することができる。
なお、上述した成分の混合は、特に制限されることなく、ニーダー;ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサー;二軸混練機;ロール;などの既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解または分散させて樹脂溶液または樹脂分散液として、粒子状炭素材料、および任意で添加されるその他の成分と混合してもよい。また、混合時間は、例えば、5分以上60分以下とすることができる。そして、混合温度は、例えば、5℃以上160℃以下とすることができる。さらに、上述した成分の混合後に任意に行われる解砕は、特に制限されることなく、既知の解砕装置を用いて行うことができる。解砕の条件(解砕時間など)は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整すればよい。
【0047】
[組成物の成形]
そして、上述のようにして調製した組成物は、加圧してシート状に成形することができる。このように組成物を加圧成形したシート状のものを、一次シートとすることができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば、真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0048】
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば、特に制限されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形(一次加工)によりシート状に成形することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に制限されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃以下、ロール間隙は50μm以上2500μm以下、ロール線圧は1kg/cm以上3000kg/cm以下、ロール速度は0.1m/分以上20m/分以下とすることができる。
【0049】
そして、一次シート中の粒子状炭素材料の含有量は、樹脂100質量部に対して、200質量部以上であることが好ましく、250質量部以上であることがより好ましく、300質量部以上であることが更に好ましく、350質量部以上であることが特に好ましく、500質量部以下であることが好ましく、450質量部以下であることがより好ましく、400質量部以下であることが更に好ましい。一次シート中の粒子状炭素材料の含有量が上記下限以上であれば、得られる熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。一方、一次シート中の粒子状炭素材料の含有量が上記上限以下であれば、得られる熱伝導シートの強度を更に向上させることができる。
【0050】
また、一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率は、一次シートの全体積を100体積%として、45体積%以上であることが必要であり、50体積%以上であることが好ましく、55体積%以上であることがより好ましく、70体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましい。一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率が45体積%未満であると、得られる熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性が低下する。また、粒子状炭素材料の体積分率が上記上限以下であれば、得られる熱伝導シートの強度を更に向上させることができる。
【0051】
<積層体形成工程>
積層体形成工程では、上述した一次シート成形工程で得られた一次シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、一次シートを折畳または捲回して、樹脂および粒子状炭素材料を含む一次シートが厚み方向に複数形成された積層体を得る。ここで、一次シートの折畳による積層体の形成は、特に制限されることなく、折畳機を用いて一次シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、一次シートの捲回による積層体の形成は、特に制限されることなく、一次シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに一次シートを捲き回すことにより行うことができる。また、一次シートの積層による積層体の形成は、特に制限されることなく、積層装置を用いて行うことができる。
【0052】
なお、積層体形成工程では、得られた積層体を、加熱しながら、積層方向に加圧(二次加圧)することが好ましい。積層体を加熱しながら積層方向に加圧する二次加圧を行うことにより、積層された一次シート相互間の融着を促進することができる。
【0053】
ここで、積層体を積層方向に加圧する際の圧力は、0.05MPa以上0.50MPa以下とすることができる。
また、積層体の加熱温度は、特に限定されないが、50℃以上170℃以下であることが好ましい。
さらに、積層体の加熱時間は、例えば、10秒間以上30分間以下とすることができる。
【0054】
なお、一次シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体では、粒子状炭素材料が積層方向に略直交する方向に配向していると推察される。例えば、粒子状炭素材料の形状が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、積層方向に略直交していると推察される。
【0055】
<スライス工程>
スライス工程では、上述した積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、積層体のスライス片よりなる二次シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、二次シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
【0056】
なお、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して45°以下であることが必要であり、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが特に好ましい。
そして、このようにして得られた二次シートでは、厚み方向に粒子状炭素材料が良好に配向している。
【0057】
<焼成工程>
焼成工程では、上述したスライス工程で得られた二次シートを焼成して、二次シートに含まれる樹脂を燃焼させて除去することにより、熱伝導シートを得る。
得られた熱伝導シートは、上述した二次シートから樹脂の一部または全部が除去されて得られるシートである。したがって、熱伝導シートでは、厚み方向に粒子状炭素材料が良好に配向している。例えば、粒子状炭素材料の形状が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、二次シートの厚み方向と略一致している。
【0058】
ここで、焼成工程における二次シートの焼成は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。焼成工程を窒素雰囲気下で行うと、熱伝導シート中の樹脂由来の成分(タール成分)の量が増加するためと推察されるが、得られる熱伝導シートの強度および高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。また、焼成工程において二次シートを焼成する際の加熱温度(焼成温度)は、200℃以上1500℃以下であることが必要であり、焼成温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、1200℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることがより好ましく、800℃以下であることが更に好ましい。焼成温度が200℃未満であると、得られる熱伝導シートの圧縮性を十分に確保することができない。一方、焼成温度が1500℃超であると、得られる熱伝導シートの強度が低下する。
なお、本発明において、「窒素雰囲気」とは、窒素濃度が90体積%以上の雰囲気を意味する。
【0059】
なお、焼成工程において二次シートを焼成する際の加熱時間(焼成時間)は、焼成温度に応じて調整可能であるが、例えば、30分間以上72時間以下とすることができる。
【0060】
ここで、下式(1)~(3)に従って算出することができる焼成状態インデックス(%)の値は、0%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、3%以上であることが更に好ましく、5%以上であることが特に好ましく、15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。
理論焼成残留率=(組成物中の粒子状炭素材料の配合量)÷(組成物中の全固形分量)・・・(1)
実測焼成残留率=(熱伝導シートの質量)÷(二次シートの質量)・・・(2)
焼成状態インデックス(%)={1-(理論焼成残留率)÷(実測焼成残留率)}×100・・・(3)
【0061】
焼成工程における焼成を、焼成状態インデックスの値が上記下限以上となるような条件で実施することで、得られる熱伝導シートの強度を更に向上させることができる。また、焼成工程における焼成を、焼成状態インデックスの値が上記上限以下となるような条件で実施することで、得られる熱伝導シートの高温下における熱伝導性を更に向上させることができる。
なお、焼成状態インデックスの値は、焼成工程における焼成条件(焼成温度および焼成時間)、一次シート形成工程で使用される組成物の配合などに基づいて、制御することができる。
【実施例0062】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、粒子状炭素材料の配向角度および体積平均粒子径、一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率、ならびに、熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率、焼成状態インデックス、厚み、密度、300℃における厚み方向の熱伝導率、および強度は、以下の方法で測定または評価した。
【0063】
<粒子状炭素材料の配向角度>
熱伝導シート中の粒子状炭素材料の配向角度は、熱伝導シートを正八角形に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製「SU-3500」)にて当該シートの上端から下端までが収まる倍率で観察した。なお、このときの倍率は700倍であった。この断面における粒子状炭素材料の長軸に50本線を引き、熱伝導シートの表面に対する長軸の角度の平均を算出した。なお、角度が90°超であった場合には補角を採用した。これを8面に対して実施し、8面の中で最も値の大きなものを熱伝導シート中の粒子状炭素材料の配向角度とした。
<粒子状炭素材料の体積平均粒子径>
熱伝導シート1gを溶媒(実施例6ではメチルエチルケトンを用い、それ以外の実施例および比較例ではヘキサンを用いた)に入れ、熱伝導シート中の樹脂に由来する成分(例えば、タール成分)等を溶解することにより、熱伝導シートに含まれる粒子状炭素材料(膨張化黒鉛)を分離および分散させた懸濁液を得た。次に、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA960」)を用いて、当該懸濁液に含まれる粒子状炭素材料の粒子径を測定した。そして、得られた粒子径を横軸とし、体積換算した粒子の頻度を縦軸とした粒度分布曲線を作成した。当該粒度分布曲線において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を求め、粒子状炭素材料の体積平均粒子径の値とした。
なお、粒度分布測定にて使用した溶媒は、上記の熱伝導シート懸濁液を得る際に用いたものと同様の溶媒であった。
<一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率>
一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率は、一次シート中に含まれる粒子状炭素材料の質量を密度で除して粒子状炭素材料が占める体積を求めた上で、当該粒子状炭素材料が一次シート100体積%中に占める割合(体積%)として算出した。
<150℃から600℃までの重量減少率>
熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率は、熱重量測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、製品名「TA7000」)を用いて測定した。具体的には、大気雰囲気の測定環境下にて、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30~1000℃の条件下にて、熱伝導シートの重量(W(g))を測定した。得られたデータを基に、測定開始後の経過時間を横軸(X座標軸)、熱伝導シートの重量(W(g))を縦軸(Y座標軸)にプロットしたグラフ(熱重量曲線)を作成した。そして、熱伝導シートの150℃から600℃までの重量減少率(TG(%))を、下記の式(4)から算出した。
TG(%)={(W150-W600)/W}×100 ・・・(4)
〔式(4)中、Wは熱重量分析測定を行う前の熱伝導シートの重量(g)であり、W150は150℃における熱伝導シートの重量(g)であり、W600は600℃における熱伝導シートの重量(g)である。〕
<焼成状態インデックスの算出>
下式(5)~(7)に従って、焼成工程を経た熱伝導シートについての焼成状態インデックスを算出した。
理論焼成残留率=(組成物中の粒子状炭素材料の配合量)÷(組成物中の全固形分量)・・・(5)
実測焼成残留率=(熱伝導シートの質量)÷(二次シートの質量)・・・(6)
焼成状態インデックス(%)={1-(理論焼成残留率)÷(実測焼成残留率)}×100・・・(7)
<厚み>
膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて、実施例および比較例で作製した熱伝導シートの略中心点および四隅(四角)の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)を熱伝導シートの厚みとした。
<密度>
実施例および比較例で作製した熱伝導シートの質量、面積および厚みを測定し、質量を体積(=面積×厚み)で割ることにより、熱伝導シートの密度(g/cm)を算出した。
<300℃における厚み方向の熱伝導率>
厚み方向の熱拡散率α(m/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)、および比重ρ(g/m)を、それぞれ、以下の方法で測定した。
[厚み方向の熱拡散率α]
窒素ガスをフローしながら熱拡散・熱伝導率測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して測定を行い、窒素雰囲気下での300℃における厚み方向の熱拡散率を測定した。
[定圧比熱Cp]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、25℃における比熱を測定した。
[比重ρ(密度)]
<密度>の項目に説明した方法に従って、熱伝導シートの密度を算出した。
そして、各測定値を、下記式(8):
λ=α×Cp×ρ・・・(8)
に代入し、300℃における熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。この300℃における熱伝導率の値が大きいほど、高温下における熱伝導性に優れていることを示す。
<強度>
実施例および比較例で作製した熱伝導シートを1cm×5cmのサイズに切断した試験片を作製した。また、6cm×6cm×2cmの台座を準備した。そして、試験片の中心から右半分を台座上に載せ、左半分を台座から外にはみ出すよう設置した。さらに、試験片の右半分に6cm×6cm×2mmのアルミ板を載せた。そして、25℃の温度条件下、試験片の台座からはみ出した部分に対して、50mg、100mg、200mg、および300mgの重りを順番に交代で乗せていき、下記の基準に従って、熱伝導シートの強度を評価した。
A:300mgの重りで試験片が折れなかった。
B:200mgの重りでは試験片が折れず、300mgの重りで試験片が折れた。
C:100mgの重りでは試験片が折れず、200mgの重りで試験片が折れた。
D:50mgの重りでは試験片が折れず、100mgの重りで試験片が折れた。
E:50mgの重りで試験片が折れた。
【0064】
(実施例1)
<組成物の調製>
樹脂として、常温常圧下で固体のスチレン-ブタジエンランダム共重合体(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標) 1502」、比重:0.94g/cm)100部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC-50」、体積平均粒子径:250μm、アスペクト比=1.5)360部とを加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<一次シート成形工程>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙1000μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.8mmの一次シートを得た。このようにして得られた一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率を測定した。結果を表1に示す。
<積層体形成工程>
続いて、得られた一次シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、一次シートの厚み方向に188枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体を得た。
<スライス工程>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層された一次シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横150mm×厚み0.30mmの二次シートを得た。
<焼成工程>
その後、得られた二次シートを窒素雰囲気下にて400℃で4時間焼成し、熱伝導シート(厚み300μm)を得た。
得られた熱伝導シートを用いて、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例2)
組成物の調製時に、膨張化黒鉛(EC-50)360部に代えて、膨張化黒鉛(EC-50)180部および膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC-300」、体積平均粒子径:50μm、アスペクト比=1.5)180部を使用した以外は、実施例1と同様にして、組成物および熱伝導シートを調製または作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例3)
組成物の調製時に、膨張化黒鉛(EC-50)に代えて、膨張化黒鉛(EC-300)を使用した以外は、実施例1と同様にして、組成物および熱伝導シートを調製または作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
以下のようにして調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<組成物の調製>
樹脂として、スチレン-ブタジエンランダム共重合体(Nipol 1502)50部および常温常圧下で液体の1,2-ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、商品名「NISSO-PB B-3000」、比重:0.88g/cm)50部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(EC-50)378部とを加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
【0068】
(実施例5)
組成物の調製時に、スチレン-ブタジエンランダム共重合体の代わりに1,2-ポリブタジエンを使用するとともに、膨張化黒鉛(EC-50)の量を360部から470部に変更した以外は、実施例1と同様にして、組成物および熱伝導シートを調製または作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例6)
以下のようにして調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<組成物の調製>
樹脂として、常温常圧下で液体のアクリロニトリル-ブタジエン共重合体(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 1312」、比重:1.0g/cm)70部および常温常圧下で固体のアクリロニトリル-ブタジエン共重合(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 3350」、比重:1.0g/cm)30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(EC-50)225部とを加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
【0070】
(実施例7)
焼成工程における焼成温度を400℃から1000℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、組成物および熱伝導シートを調製または作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例8)
焼成工程における焼成条件を400℃で4時間から200℃で8時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、組成物および熱伝導シートを調製または作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(比較例1)
焼成工程における焼成条件を400℃で4時間から2000℃で8時間に変更した以外は、実施例5と同様にして、組成物および熱伝導シートを調製または作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例2)
組成物の調製時に、膨張化黒鉛(EC-50)の量を360部から170部に変更した以外は、実施例1と同様にして、組成物および熱伝導シートを調製または作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
なお、以下に示す表1中、
「PB」は、1,2-ポリブタジエンを示し、
「SBR」は、スチレン-ブタジエンランダム共重合体を示し、
「NBR」は、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体を示し、
「粒子状炭素材料の配向角度」は、粒子状炭素材料の長軸方向の熱伝導シート表面に対する角度を示し、
「重量減少率」は、熱伝導シートに対して、所定の条件で熱重量分析測定を行って得られる熱重量曲線において、150℃から600℃までの重量減少率を示す。
また、表1中、「焼成状態インデックス」は、理論焼成残留率および実測焼成残留率から算出した値の小数点第一位を四捨五入したものを表記した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1より、粒子状炭素材料を含み、粒子状炭素材料の配向角度が60°以上90°以下であり、そして150℃から600℃までの重量減少率が3%以上20%以下である実施例1~8の熱伝導シートは、強度および高温下における熱伝導性に優れていることが分かる。
一方、150℃から600℃までの重量減少率が3%未満である比較例1の熱伝導シートは、実施例1~8の熱伝導シートと比較して、強度が低下していることが分かる。
また、150℃から600℃までの重量減少率が20%超である比較例2の熱伝導シートは、実施例1~8の熱伝導シートと比較して、高温下における熱伝導性が低下していることが分かる。
さらに、一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率が45体積%以上であり、焼成温度が200℃以上1500℃以下である実施例1~8に比べて、焼成温度が上記範囲外である比較例1では強度が低下しており、また一次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率が上記値未満である比較例2では高温下における熱伝導性が低下していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートを提供することができる。
また、本発明によれば、強度および高温下における熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率的に製造し得る、熱伝導シートの製造方法を提供することができる。