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特開2024-30187アルミニウム合金材、及びアルミニウム合金材の製造方法
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  • 特開-アルミニウム合金材、及びアルミニウム合金材の製造方法 図1
  • 特開-アルミニウム合金材、及びアルミニウム合金材の製造方法 図2
  • 特開-アルミニウム合金材、及びアルミニウム合金材の製造方法 図3
  • 特開-アルミニウム合金材、及びアルミニウム合金材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030187
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】アルミニウム合金材、及びアルミニウム合金材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
C25D11/04 302
C25D11/04 308
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132809
(22)【出願日】2022-08-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 悟
(72)【発明者】
【氏名】中島 大希
(72)【発明者】
【氏名】箕田 正
(72)【発明者】
【氏名】林 重成
(72)【発明者】
【氏名】西 侃
(57)【要約】
【課題】耐クリープ性に優れるアルミニウム合金材を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、アルミニウム合金で構成された基材と、基材の表面に配置された酸化皮膜と、を備えるアルミニウム合金材である。酸化皮膜の厚さは、50nm以上600nm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金で構成された基材と、
前記基材の表面に配置された酸化皮膜と、
を備え、
前記酸化皮膜の厚さは、50nm以上600nm以下である、アルミニウム合金材。
【請求項2】
アルミニウム合金で構成された基材と、
前記基材の表面に配置された酸化皮膜と、
を備え、
前記酸化皮膜の硬さは、4000MPa以上である、アルミニウム合金材。
【請求項3】
アルミニウム合金で構成された基材と、
前記基材の表面に配置された酸化皮膜と、
を備え、
前記酸化皮膜のヤング率は、100GPa以上である、アルミニウム合金材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金材であって、
前記酸化皮膜は、アモルファスである、アルミニウム合金材。
【請求項5】
請求項4に記載のアルミニウム合金材であって、
前記酸化皮膜の前記基材とは反対側の表面に配置された水和酸化物層をさらに備え、
前記水和酸化物層は、結晶質である、アルミニウム合金材。
【請求項6】
アルミニウムの含有量が95質量%未満のアルミニウム合金を化成液中で陽極酸化させることで、前記アルミニウム合金で構成された基材の表面に酸化皮膜を形成する工程を備える、アルミニウム合金材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミニウム合金材、及びアルミニウム合金材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金において、機械的特性を高めるために、表面に酸化処理を行うことで酸化物層(つまり酸化皮膜)を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-510761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように酸化皮膜を形成することは公知であるものの、酸化皮膜自身の性状の最適化はこれまで図られていない。一方、発明者らは、酸化皮膜の性状を最適化することで、アルミニウム合金材の耐クリープ性を高められることを発見した。
【0005】
本開示の一局面は、耐クリープ性に優れるアルミニウム合金材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、アルミニウム合金で構成された基材と、基材の表面に配置された酸化皮膜と、を備えるアルミニウム合金材である。酸化皮膜の厚さは、50nm以上600nm以下である。
【0007】
このような構成によれば、一定の厚みを有する酸化皮膜の形成によって、アルミニウム合金材の耐クリープ性が高められる。
【0008】
本開示の別の態様は、アルミニウム合金で構成された基材と、基材の表面に配置された酸化皮膜と、を備えるアルミニウム合金材である。酸化皮膜の硬さは、4000MPa以上である。
【0009】
このような構成によれば、一定の硬さを有する酸化皮膜の形成によって、アルミニウム合金材の耐クリープ性が高められる。
【0010】
本開示の別の態様は、アルミニウム合金で構成された基材と、基材の表面に配置された酸化皮膜と、を備えるアルミニウム合金材である。酸化皮膜のヤング率は、100GPa以上である。
【0011】
このような構成によれば、一定のヤング率を有する酸化皮膜の形成によって、アルミニウム合金材の耐クリープ性が高められる。
【0012】
本開示の別の態様は、アルミニウムの含有量が95質量%未満のアルミニウム合金を化成液中で陽極酸化させることで、アルミニウム合金で構成された基材の表面に酸化皮膜を形成する工程を備える、アルミニウム合金材の製造方法である。
【0013】
このような構成によれば、耐クリープ性の向上に寄与する酸化皮膜を有するアルミニウム合金材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aは、実施形態におけるアルミニウム合金材の模式的な断面図であり、図1Bは、図1Aとは異なる実施形態におけるアルミニウム合金材の模式的な断面図である。
図2図2Aは、実施形態におけるアルミニウム合金材の製造方法のフロー図であり、図2Bは、図2Aとは異なる実施形態におけるアルミニウム合金材の製造方法のフロー図である。
図3図3は、実施例におけるクリープ試験1の試験結果を示すグラフである。
図4図4は、実施例におけるクリープ試験2の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
<アルミニウム合金材>
図1Aに示すように、第1実施形態のアルミニウム合金材1は、基材2と、酸化皮膜3とを備える。
【0016】
<基材>
基材2は、アルミニウム合金で構成されている。基材2を構成するアルミニウム合金は、アルミニウム(Al)の含有量が95質量%未満である。つまり、基材2は、95質量%未満のAlと、5質量%以上のAl以外の元素とを含む。
【0017】
基材2に含まれるAl以外の元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)等が挙げられる。
【0018】
<酸化皮膜>
酸化皮膜3は、基材2の表面に配置されたバリア層である。酸化皮膜3は、アモルファス(つまり非晶質)であり、アモルファス金属酸化物(具体的にはアモルファスAl)で構成されている。なお、酸化皮膜3が含有するAlは、基材2由来である。
【0019】
酸化皮膜3の厚みは、50nm以上600nm以下である。酸化皮膜3の厚みが50nm以上であることで、アルミニウム合金材1の耐クリープ性が高められる。また、酸化皮膜3の厚みが600nm以下であることで、陽極酸化による酸化皮膜3の形成が容易となる。酸化皮膜3の厚みの下限としては、100nmが好ましい。また、酸化皮膜3の厚みの上限としては、300nmが好ましい。
【0020】
なお、アルミニウム合金の表面に不可避的に形成される自然酸化皮膜の厚みは数nmである。また、「酸化皮膜3の厚み」は、電子顕微鏡により撮影したアルミニウム合金材1の断面写真を用いて酸化皮膜3の厚みを複数点で測定し、測定した複数点の厚みを平均した値である。
【0021】
酸化皮膜3の硬さは、4000MPa以上である。酸化皮膜3の硬さが4000MPa以上であることで、アルミニウム合金材1の耐クリープ性が高められる。酸化皮膜3の硬さとしては、4500MPa以上が好ましく、5000MPa以上がより好ましい。
【0022】
「酸化皮膜3の硬さ」は、ISO-14577(Instrumented indentation test for hardness and materials parameters)に準拠して、押し込み硬さ試験機で酸化皮膜3の表面を押し込むことで測定される値である。測定時の押し込み深さは、例えば、酸化皮膜3の厚みの1/10以上1/5以下とされる。
【0023】
酸化皮膜3のヤング率は、100GPa以上である。酸化皮膜3のヤング率が100GPa以上であることで、アルミニウム合金材1の耐クリープ性が高められる。酸化皮膜3のヤング率としては、110GPa以上が好ましく、115GPa以上がより好ましい。
【0024】
「酸化皮膜3のヤング率」は、押し込み硬さ試験機で酸化皮膜3の表面を押し込むことで測定される値である。つまり、酸化皮膜3のヤング率は、酸化皮膜3の硬さと同時に計測可能である。
【0025】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)一定の厚みを有する酸化皮膜3の形成によって、アルミニウム合金材1の耐クリープ性が高められる。
【0026】
(1b)一定の硬さを有する酸化皮膜3の形成によって、アルミニウム合金材1の耐クリープ性が高められる。
(1c)一定のヤング率を有する酸化皮膜3の形成によって、アルミニウム合金材1の耐クリープ性が高められる。
【0027】
(1d)酸化皮膜3がアモルファスであることで、アルミニウム合金材1の耐クリープ性が高められる。
【0028】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
<アルミニウム合金材>
図1Bに示すように、第2実施形態のアルミニウム合金材11は、基材2と、酸化皮膜3と、水和酸化物層4とを備える。
【0029】
アルミニウム合金材11の基材2及び酸化皮膜3は、第1実施形態のアルミニウム合金材1の基材2及び酸化皮膜3と同じである。つまり、第2実施形態のアルミニウム合金材11は、第1実施形態のアルミニウム合金材1に水和酸化物層4を加えたものである。
【0030】
<水和酸化物層>
水和酸化物層4は、酸化皮膜3の基材2とは反対側の表面に配置された保護層である。水和酸化物層4は、結晶質である。水和酸化物層4は、結晶性の水和金属酸化物(具体的には結晶性のAl・XHO)で構成されている。
【0031】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)酸化皮膜3の表面に積層された水和酸化物層4によって、アルミニウム合金材11の耐クリープ性が高められる。
【0032】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
図2Aに示すアルミニウム合金材の製造方法は、第1実施形態のアルミニウム合金材1を得るための方法である。
【0033】
本実施形態のアルミニウム合金材の製造方法は、研磨工程S10と、酸化皮膜形成工程S30とを有する。
【0034】
<研磨工程>
本工程では、Alの含有量が95質量%未満のアルミニウム合金の表面を機械研磨する。なお、本工程の前にアルミニウム合金の焼きなましを行ってもよい。また、研磨工程S10は省略されてもよい。
【0035】
<酸化皮膜形成工程>
本工程では、アルミニウム合金を、常法にしたがって化成液中で陽極酸化させることで、アルミニウム合金で構成された基材2の表面に酸化皮膜3を形成する。
【0036】
化成液としては、有機カルボン酸(例えばアジピン酸、酒石酸等)、リン酸、ホウ酸等を陰イオンとして含み、アンモニウム、ナトリウム等のアルカリ金属を陽イオンとして含む溶液が用いられる。
【0037】
陽極酸化における電流密度は、例えば、2mA/cm以上20mA/cm以下である。陽極酸化における到達電圧は、例えば、10V以上500V以下である。本工程では、陽極の電圧が到達電圧に達した時点で電圧上昇を止め、定電圧の陽極酸化を行う。
【0038】
[3-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)耐クリープ性の向上に寄与する酸化皮膜を有するアルミニウム合金材が得られる。
【0039】
[4.第4実施形態]
[4-1.構成]
図2Bに示すアルミニウム合金材の製造方法は、第2実施形態のアルミニウム合金材11を得るための方法である。
【0040】
本実施形態のアルミニウム合金材の製造方法は、研磨工程S10と、熱水処理工程S20と、酸化皮膜形成工程S31とを有する。研磨工程S10は、図2Aの第3実施形態のアルミニウム合金材の製造方法と同じである。
【0041】
なお、本実施形態のアルミニウム合金の製造方法は、「高橋英明、外4名、“水和酸化物皮膜に覆われたアルミニウムのアノード酸化 I.水和酸化物および複合酸化物皮膜の生成挙動”、金属表面技術、表面技術協会、1987年、第38巻、第2号、p.67-73」に開示された製法に基づいている。
【0042】
<熱水処理工程>
本工程では、アルミニウム合金を、沸騰した蒸留水中に一定時間浸漬することで、アルミニウム合金の表面に水和酸化物層4を形成する。
【0043】
<酸化皮膜形成工程>
本工程では、熱水処理後のアルミニウム合金を、常法にしたがって化成液中で陽極酸化させることで、アルミニウム合金で構成された基材2の表面に酸化皮膜3を形成する。
【0044】
本工程では、陽極酸化によって、基材2の表面と水和酸化物層4との間でアモルファスの酸化皮膜3が成長する。また、水和酸化物層4が結晶化される。化成液としては、第3実施形態のアルミニウム合金材の製造方法と同様のものが使用される。
【0045】
陽極酸化における電流密度は、例えば、1mA/cm以上5mA/cm以下である。陽極酸化における到達電圧は、例えば、10V以上500V以下である。本工程では、陽極の電圧が到達電圧に達した時点で電圧上昇を止め、定電圧の陽極酸化を行う。
【0046】
[4-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(4a)耐クリープ性の向上に寄与する二層構造のバリア層を有するアルミニウム合金材が得られる。
【0047】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0048】
(5a)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0049】
[6.実施例]
以下に、本開示の効果を確認するために行った試験の内容とその評価とについて説明する。
【0050】
<試料の作製及び皮膜厚みの測定>
表1に示す製造条件に基づいて、実施例1-5、比較例1、2及び参考例のアルミニウム合金材の試料を得た。
【0051】
表1のA3003-O、A2618-T651及びA6061-T6は、それぞれ、JIS-H-4000、4040、4080、4100等に規定される組成を有し、Al含有量が95質量%未満のアルミニウム合金である。また、電解液Aは、0.5Mホウ酸/0.05M四ホウ酸ナトリウム水溶液である。
【0052】
実施例1-5では、基材となるアルミニウム合金をそれぞれ表1に示した電解液、電流密度及び到達電圧にて陽極酸化することで、基材の表面に酸化皮膜を形成した。なお、実施例5は、陽極酸化の前に、沸騰水に浸漬する熱水処理を行った。つまり、実施例5は、アモルファス酸化皮膜と結晶質水和酸化物層との二層構造のバリア層を有する。
【0053】
得られた各試料について、測定した皮膜厚さを表1に示す。比較例1、2及び参考例は、陽極酸化を行っていない。そのため、これらの試料における皮膜厚さは自然酸化皮膜の厚み(つまり数nm)であり、測定不能である。
【0054】
【表1】
【0055】
<表面硬さ及び表面ヤング率の測定>
実施例1-3、比較例1、2及び参考例それぞれの試料に対し、表面硬さ及び表面ヤング率を測定した。
【0056】
表面硬さ及び表面ヤング率は、エリオニクス社の超微小押し込み硬さ試験機「ENT-1100a」を用いて測定した。測定条件としては、荷重印加速度を0.0375mN/s、最大荷重を0.15mN、最大荷重保持時間を10s、除加速度を0.0375mN/sとした。
【0057】
また、表面硬さの測定時は、最大押し込み深さを25nmとした。これにより、実施例1-3では、基材の影響が排除された酸化皮膜のみの物性値を測定した。すなわち、実施例1-3における「表面硬さ」及び「表面ヤング率」は、それぞれ、「酸化皮膜の硬さ」及び「酸化皮膜のヤング率」である。測定した表面硬さ及び表面ヤング率を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示されるように、酸化皮膜が積極的に形成されていない比較例1、2及び参考例は、基材の種類(つまり組成)に起因して、表面硬さ及び表面ヤング率のバラツキが大きい。一方で、同じ皮膜厚さを有する実施例1-3では、基材の種類による表面硬さ及び表面ヤング率のバラツキが小さい。つまり、酸化皮膜の形成によって、基材の種類によらず一定の硬さ及びヤング率を有するアルミニウム合金材を得ることができる。
【0060】
<クリープ試験1>
基材がいずれもA3003-Oである実施例1、実施例5及び比較例1の試料に対し、JIS-Z-2271:2019に準拠して、試験温度175℃、試験応力65MPaで、クリープ試験を行った。試験片は、JIS-Z-2271:2019に規定されたクリープ破断試験片に準拠した形状とし、平行部の直径は6mmとした。その結果を図3に示す。
【0061】
図3に示されるように、実施例1は、比較例1よりもクリープ伸びが小さい。つまり、酸化皮膜の形成によってアルミニウム合金材の耐クリープ性が高められている。また、実施例5は、実施例1よりもさらにクリープ伸びが小さい。つまり、酸化皮膜と水和酸化物層との組み合わせによってさらにクリープ性が高められている。
【0062】
<クリープ試験2>
基材がいずれもA2618-T651である実施例4及び比較例2の試料に対し、JIS-Z-2271:2019に準拠して、試験温度250℃、試験応力100MPaで、クリープ試験を行った。試験片の形状は、クリープ試験1と同じとした。その結果を図4に示す。
【0063】
図4に示されるように、実施例4は、クリープ破断に向かう(試験時間が約60時間となる)手前までは、比較例2よりもクリープ伸びが小さい。そのため、酸化皮膜によって、破断に至る前の状態でのアルミニウム合金材の耐クリープ性が高められている。
【0064】
また、破断の直前では、実施例4のクリープ伸びの方が、比較例2のクリープ伸びよりも大きくなっている。そのため、耐クリープ性を高められる酸化皮膜の厚みの下限は、実施例4の厚みである50nmと推測される。
【符号の説明】
【0065】
1,11…アルミニウム合金材、2…基材、3…酸化皮膜、4…水和酸化物層。
図1
図2
図3
図4