IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プリント配線板の製造方法 図1
  • 特開-プリント配線板の製造方法 図2
  • 特開-プリント配線板の製造方法 図3
  • 特開-プリント配線板の製造方法 図4
  • 特開-プリント配線板の製造方法 図5
  • 特開-プリント配線板の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030218
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20240229BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05K1/11 H
H05K3/42 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132914
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 元司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 完爾
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB01
5E317BB12
5E317BB13
5E317BB14
5E317BB15
5E317CC31
5E317CD11
5E317CD27
5E317GG17
(57)【要約】
【課題】基板にダメージを与えることのない低コストで簡単なプラズマ処理なしのプロセスにより、残渣が低減した状態で孔の内表面に導体を形成できるプリント配線板の製造方法の提供。
【解決手段】フッ素樹脂と無機フィラーとを含む基板と、前記基板の少なくとも一方の主面上に形成された金属層とを有しており、前記金属層が形成される前記基板の主面の水接触角が75°以下である金属層付き基板を準備し、ドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)が16000~57000(mm・rpm)であるドリル加工条件で、前記金属層付き基板に孔を形成し、前記形成された孔の内表面を洗浄し、前記洗浄された孔の内表面に導体を形成する、プリント配線板の製造方法。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂と無機フィラーとを含む基板と、前記基板の少なくとも一方の主面上に形成された金属層とを有しており、前記金属層が形成される前記基板の主面の水接触角が75°以下である金属層付き基板を準備し、
ドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)が16000~57000(mm・rpm)であるドリル加工条件で、前記金属層付き基板に孔を形成し、
前記形成された孔の内表面を洗浄し、
前記洗浄された孔の内表面に導体を形成する、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄は前記孔の内表面をプラズマ処理することなく実施される、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレンに基づく単位及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を有する第1の含フッ素重合体、又は、テトラフルオロエチレンに基づく単位及びヘキサフルオロプロピレンに基づく単位を有する第1の含フッ素重合体を含む、請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記第1の含フッ素重合体が、カルボニル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に基づく単位を有する、請求項3に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記フッ素樹脂は、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2の含フッ素重合体をさらに含む、請求項3又は4に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素樹脂の総体積量における前記第1の含フッ素重合体の体積量が50体積%以上である、請求項3~5のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記無機フィラーはシリカである、請求項1~6のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記ドリル加工条件におけるドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)が20000~50000(mm・rpm)である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記ドリル加工条件におけるドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)が30000~40000(mm・rpm)である、請求項8に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
前記ドリル加工条件におけるドリル径が0.10~0.50mmである、請求項1~9のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記ドリル加工条件における送り速度が20~50(mm/s)である、請求項1~10のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
濃度が30~60質量%であり、温度が10~30℃である塩化第2鉄水溶液を用いて、前記金属層における金属をエッチングする、請求項1~11のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂基板を有するプリント配線板が知られている。フッ素樹脂は、エポキシ樹脂に比べて、低誘電率であると共に低誘電正接であることから、フッ素樹脂基板を有するプリント配線板は、高周波信号処理用の回路基板に用いられている。また、フッ素樹脂は耐薬品性や耐熱性に優れていることから、フッ素樹脂基板を有するプリント配線板は、薬剤に晒される回路基板や耐熱性が要求される回路基板にも用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
ところで、代表的なフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、耐薬品性がある反面、撥水性であるが故にプリント配線板の製造工程における洗浄後の残渣を除去することが難しいという問題がある。このような問題を改善するため、洗浄工程前に、例えばプラズマ処理が実施される。このプラズマ処理により、プラズマ照射によりフッ素樹脂基板が親水化されるため洗浄効果が高まり、洗浄後の残渣残りを少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6809771号公報
【特許文献2】国際公開第2018/43682号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラズマ処理には、(i)高コストで煩雑なプロセスである、(ii)基板の表面が粗化する、(iii)基板に脆化層が形成される、(iv)効果持続時間が短い、などといった問題がある。このようなことから、基板にダメージを与えることのない低コストで簡単なプロセスにより、プリント配線板を製造することが要求されている。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑み、基板にダメージを与えることのない低コストで簡単なプラズマ処理なしのプロセスにより、残渣が低減した状態で孔の内表面に導体を形成したプリント配線板を製造できるプリント配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、金属層が形成される基板の主面の水接触角を調整し、金属層付き基板に孔を形成するドリル加工条件を調整した上で、形成された孔の内表面を洗浄すると、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
なお、金属層が形成される基板の主面の水接触角を調整し、金属層付き基板に孔を形成するドリル加工条件を調整した上で、形成された孔の内表面を洗浄すると、基板にダメージを与えることのない低コストで簡単なプラズマ処理なしのプロセスにより、残渣が低減した状態で孔の内表面に導体を形成したプリント配線板を製造できる理由としては、ドリル加工条件の最適化により残渣自体の発生が抑制されることと、発生したとしても基板の水接触角調整により洗浄液が孔内部へ容易に浸透し洗浄効果が高いためであると推認される。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕フッ素樹脂と無機フィラーとを含む基板と、前記基板の少なくとも一方の主面上に形成された金属層とを有しており、前記金属層が形成される前記基板の主面の水接触角が75°以下である金属層付き基板を準備し、ドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)が16000~57000(mm・rpm)であるドリル加工条件で、前記金属層付き基板に孔を形成し、前記形成された孔の内表面を洗浄し、前記洗浄された孔の内表面に導体を形成する、プリント配線板の製造方法。
〔2〕前記洗浄は前記孔の内表面をプラズマ処理することなく実施される、上記〔1〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔3〕前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレンに基づく単位及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を有する第1の含フッ素重合体、又は、テトラフルオロエチレンに基づく単位及びヘキサフルオロプロピレンに基づく単位を有する第1の含フッ素重合体を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔4〕前記第1の含フッ素重合体が、カルボニル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に基づく単位を有する、上記〔3〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔5〕前記フッ素樹脂は、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2の含フッ素重合体をさらに含む、上記〔3〕又は〔4〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔6〕前記フッ素樹脂の総体積量における前記第1の含フッ素重合体の体積量が50体積%以上である、上記〔3〕~〔5〕のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
〔7〕前記無機フィラーはシリカである、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
〔8〕前記ドリル加工条件におけるドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)が20000~50000(mm・rpm)である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
〔9〕前記ドリル加工条件におけるドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)が30000~40000(mm・rpm)である、上記〔8〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔10〕前記ドリル加工条件におけるドリル径が0.10~0.50mmである、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
〔11〕前記ドリル加工条件における送り速度が20~50(mm/s)である、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
〔12〕濃度が30~60質量%であり、温度が10~30℃である塩化第2鉄水溶液を用いて、前記金属層における金属をエッチングする、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板にダメージを与えることのない低コストで簡単なプラズマ処理なしのプロセスにより、残渣が低減した状態で孔の内表面に導体を形成したプリント配線板を製造できるプリント配線板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板の他の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板のさらに他の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板のさらに他の一例を示す概略断面図である。
図5図5は、本発明のプリント配線板の製造方法の一例を説明するための概略断面図である。
図6図6は、本発明のプリント配線板の製造方法の他の一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用でき、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。
本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせ得る。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「モノマーに基づく単位」は、モノマー1分子が重合して直接形成される原子団と、この原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。以下、モノマーAに基づく単位をモノマーA単位とも記す。
本明細書において、「接着性官能基を有するモノマーに基づく単位を含まない」とは、「接着性官能基を有するモノマー単位の含有量が、重合体に含まれる全単位に対して0.05モル%未満、好ましくは0.03モル%以下、より好ましくは0.01モル%以下である」ことを意味する。
本明細書において、基板(絶縁層)におけるフッ素樹脂の総体積量に対する、第1の含フッ素重合体の含有量(体積%)、第2の含フッ素重合体の含有量(体積%)、及び無機フィラーの含有量(体積%)は、それらを混合(調合)する前に、第1の含フッ素重合体、第2の含フッ素重合体、及び無機フィラーのそれぞれの質量を測定し、それぞれの比重から体積換算して求める。
【0011】
[プリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板の製造方法は、金属層付き基板準備工程と、孔形成工程と、洗浄工程と、導体形成工程とを含み、必要に応じて、エッチング工程、その他の工程をさらに含む。
以下、本発明のプリント配線板の製造方法の各工程について、具体的に説明する。
【0012】
[[金属層付き基板準備工程]]
本発明のプリント配線板の製造方法における金属層付き基板準備工程は、金属層付き基板を準備する工程である。
【0013】
(金属層付き基板)
本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板は、基板(絶縁層)と、基板の少なくとも一方の主面上に形成された金属層とを備え、必要に応じて、接着層、中間層をさらに備える。
【0014】
図1は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、金属層付き基板11は、基板(絶縁層)12と、基板(絶縁層)12の両主面に配置された金属層13とを有する。
なお、金属層付き基板11は、図1に示すように、基板(絶縁層)12の両主面に金属層13が配置された両面金属箔張りの積層板であってもよく、また、基板(絶縁層)12の片面に金属層13が配置された片面金属箔張りの積層板であってもよい(後述する図4参照)。さらに、金属層付き基板11は、金属層13及び基板(絶縁層)12で構成される積層構造を複数積層した構造を有していてもよい。なお、金属層13として銅箔を使用した片面金属箔張りの積層板を「樹脂付き銅箔(Resin Coated Copper Foil:RCC)」と呼び、金属層13として銅箔を使用した両面金属箔張りの積層板を「銅張積層板(Copper Clad Laminate:CCL)」と呼ぶことがある。
【0015】
図2は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板の他の一例を示す概略断面図である。
図2に示すように、金属層付き基板21は、基板(絶縁層)12と、基板(絶縁層)12の両表面外側に配置された金属層13と、基板(絶縁層)12及び金属層13の間に配置された接着層(プライマー層)14とを有する。すなわち、金属層付き基板21は、金属層13と、接着層14と、基板(絶縁層)12とをこの順に有し、接着層14は、金属層13の表面上に設けられ、基板(絶縁層)12は、接着層14の表面上に設けられる。
【0016】
図3は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板のさらに他の一例を示す概略断面図である。
図3に示すように、金属層付き基板31は、基板(絶縁層)12を2つに分割する中間層15をさらに備えること以外は、図2の金属層付き基板21と同様である。
【0017】
図4は、本発明のプリント配線板の製造方法に用いる金属層付き基板のさらに他の一例を示す概略断面図である。
図4に示すように、金属層付き基板41は、基板(絶縁層)12と、金属層13と、が積層されている構成を有する。
【0018】
((基板(絶縁層)))
基板(絶縁層)は、フッ素樹脂と無機フィラーとを含み、必要に応じて、界面活性剤等のその他の成分をさらに含む。
【0019】
基板の2つの主面のうちの金属層が形成される主面の水接触角としては、75°以下である限り、特に制限はないが、好ましくは50~70°、より好ましくは50~65°、特に好ましくは55~60°である。
前記水接触角を75°以下とすることにより、孔内部へ洗浄液を浸透させることができ、また、前記水接触角を好ましい範囲内とすることにより、孔内部へ洗浄液をより浸透させることができる。
なお、ここでの「水接触角」は、後述する実施例と同様の方法で測定される。
【0020】
基板の2つの主面のうちの一方の主面に金属層が形成される場合、その金属層が形成される一方の主面の水接触角が75°以下であり、また、両主面に金属層が形成される場合、両主面の水接触角が75°以下である。
【0021】
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂は、第1の含フッ素重合体を含むことが好ましく、第2の含フッ素重合体をさらに含むことがより好ましい。
【0022】
基板(絶縁層)におけるフッ素樹脂の総体積量に対する第1の含フッ素重合体の含有量としては、特に制限はないが、水接触角の制御性の観点から、好ましくは50体積%以上、より好ましくは70体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。
基板(絶縁層)におけるフッ素樹脂の総体積量に対する第1の含フッ素重合体の含有量が、上記好ましい範囲内であると、水接触角を好適に制御することができる。
なお、ここでの「フッ素樹脂の総体積量に対する第1の含フッ素重合体の含有量(体積%)」は、下記方法で測定される。
--フッ素樹脂の総体積量に対する第1の含フッ素重合体の含有量(体積%)の測定方法--DSCにて昇温過程における結晶融解温度と融解熱量データを取得する。300℃付近に現れるピークは第1の含フッ素重合体によるもので、それ以外のピークは第1の含フッ素重合体以外の含フッ素重合体によるものであるため、そのピーク高さ比較により第1の含フッ素重合体の含有量は特定できる。
【0023】
<<第1の含フッ素重合体>>
第1の含フッ素重合体としては、特に制限はなく、例えば、(i)フルオロオレフィンに基づく単位を有する含フッ素重合体、(ii)フルオロオレフィンに基づく単位及び接着性官能基を有するモノマーに基づく単位を有する含フッ素重合体、(iii)フルオロオレフィンに基づく単位、接着性官能基を有するモノマーに基づく単位、及びその他のモノマーに基づく単位を有する含フッ素重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、(iv)テトラフルオロエチレンに基づく単位及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を有する含フッ素重合体、(v)テトラフルオロエチレンに基づく単位及びヘキサフルオロプロピレンに基づく単位を有する含フッ素重合体、などが好適に挙げられる。
なお、第1の含フッ素重合体において、フルオロオレフィンに基づく単位及び接着性官能基を有するモノマーに基づく単位の結合形態、又は、フルオロオレフィンに基づく単位、接着性官能基を有するモノマーに基づく単位、及びその他のモノマーに基づく単位の結合形態は、特に制限はなく、ランダム、完全交互、グラジエント、ブロック、テーパー、およびこれらの組み合わせが挙げられ、ランダムまたはブロックが好ましく、製造容易性の観点から、ランダムであることがより好ましい
【0024】
-フルオロオレフィンに基づく単位-
「フルオロオレフィンに基づく単位」における「フルオロオレフィン」としては、例えば、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」という)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド(フッ化ビニリデン(以下、「VdF」という))、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという)、CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基)で表されるペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、CF=CFORf2SO(Rf2は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、Xはハロゲン原子又は水酸基)、CF=CFORf2CO(ここで、Rf2は上記と同様、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基)、CF=CF(CFOCF=CF(ここで、pは1又は2)、CH=CX(CF(ここで、X及びXは、互いに独立に水素原子又はフッ素原子、qは2~10の整数)、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、誘電正接が低い点で、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレンが好ましく、融点が高い点で、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)がより好ましい。
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の具体例としては、例えば、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、CF=CFOCFCFCFが好ましい。
CH=CX(CFの具体例としては、例えば、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、などが挙げられる。
【0025】
第1の含フッ素重合体におけるフルオロオレフィンに基づく単位の含有量としては、特に制限はないが、第1の含フッ素重合体における全単位の合計モル量に対して、好ましくは90.0~99.9モル%、より好ましくは95.0~99.8モル%、特に好ましくは97.0~99.7モル%である。フルオロオレフィンに基づく単位の含有量が上記好ましい範囲にあると、比誘電率及び誘電正接が低い基板(絶縁層)が得られる。
なお、ここでの「第1の含フッ素重合体におけるフルオロオレフィンに基づく単位の含有量(モル%)」は、下記方法で測定される。
--第1の含フッ素重合体におけるフルオロオレフィンに基づく単位の含有量(モル%)の測定方法--
第1の含フッ素重合体における各単位の割合は、赤外吸収スペクトル分析によって求めることができる。
【0026】
-接着性官能基を有するモノマーに基づく単位-
「接着性官能基を有するモノマー」における「接着性官能基」としては、例えば、カルボニル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、イソシアネート基、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、金属層に対する基板(絶縁層)の接着性が優れる観点で、カルボニル基が好ましい。
【0027】
「接着性官能基を有するモノマー」としては、例えば、ジカルボン酸無水物基を有し、且つ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマー(以下、単に、「環状炭化水素モノマー」と略称する)が好適に挙げられる。
上記「環状炭化水素モノマー」は、1つ以上の5員環又は6員環からなる環状炭化水素であって、しかも、ジカルボン酸無水物基と環内重合性不飽和基を有する重合性化合物をいう。環状炭化水素としては、1つ以上の有橋多環炭化水素を有する環状炭化水素が好ましい。すなわち、有橋多環炭化水素からなる環状炭化水素、有橋多環炭化水素の2以上が縮合した環状炭化水素、又は有橋多環炭化水素と他の環状炭化水素が縮合した環状炭化水素であることが好ましい。
【0028】
また、環状炭化水素モノマーは環内重合性不飽和基、すなわち炭化水素環を構成する炭素原子間に存在する重合性不飽和基を1つ以上有する。この環状炭化水素モノマーはさらにジカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有し、ジカルボン酸無水物基は炭化水素環を構成する2つの炭素原子に結合していてもよく、環外の2つの炭素原子に結合していてもよい。好ましくは、ジカルボン酸無水物基は上記環状炭化水素の環を構成する炭素原子であって、かつ隣接する2つの炭素原子に結合する。さらに、環状炭化水素の環を構成する炭素原子には、水素原子の代わりに、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、その他の置換基が結合していてもよい。
【0029】
その具体例としては、式(1)~(8)で表されるものである。ここで、式(2)、(5)~(8)におけるRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の低級アルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子;又は上記低級アルキル基中の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基;を示す。
【0030】
【化1】

・・・式(1)
【0031】
【化2】

・・・式(2)
【0032】
【化3】

・・・式(3)
【0033】
【化4】

・・・式(4)
【0034】
【化5】

・・・式(5)
【0035】
【化6】

・・・式(6)
【0036】
【化7】

・・・式(7)
【0037】
【化8】

・・・式(8)
【0038】
上記環状炭化水素モノマーとしては、好ましくは、式(1)で表される、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」という);式(3)、(4)で表される酸無水物である環状炭化水素モノマー;式(2)及び式(5)~(8)において、置換基Rがメチル基である環状炭化水素モノマー;であり、より好ましくはNAHである。
【0039】
第1の含フッ素重合体における接着性官能基を有するモノマーに基づく単位の含有量としては、特に制限はないが、第1の含フッ素重合体における全単位の合計モル量に対して、好ましくは0.01~5モル%、より好ましくは0.03~3モル%、特に好ましくは0.05~2モル%である。接着性官能基を有するモノマーに基づく単位の含有量が上記好ましい範囲にあると、金属層に対する接着性に優れる基板(絶縁層)が得られる。
なお、ここでの「第1の含フッ素重合体における接着性官能基を有するモノマーに基づく単位の含有量(モル%)」は、下記方法で測定される。
--第1の含フッ素重合体における接着性官能基を有するモノマーに基づく単位の含有量(モル%)の測定方法--
第1の含フッ素重合体における各単位の割合は、赤外吸収スペクトル分析によって求めることができる。例えば、特開2007-314720号公報に記載のように、赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、含フッ素重合体を構成する全単位中の接着性官能基含有単位の割合(モル%)を求めることができる。
【0040】
-その他のモノマーに基づく単位-
その他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2~4のオレフィン;酢酸ビニル等のビニルエステル;エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0041】
第1の含フッ素重合体におけるその他のモノマーに基づく単位の含有量としては、特に制限はないが、第1の含フッ素重合体における全単位の合計モル量に対して、好ましくは0.1~10モル%、より好ましくは0.5~5モル%、特に好ましくは1~3モル%である。
なお、ここでの「第1の含フッ素重合体におけるその他のモノマーに基づく単位の含有量(モル%)」は、下記方法で測定される。
--第1の含フッ素重合体におけるその他のモノマーに基づく単位の含有量(モル%)の測定方法--
第1の含フッ素重合体における各単位の割合は、赤外吸収スペクトル分析によって求めることができる。
【0042】
第1の含フッ素重合体がフルオロオレフィンに基づく単位及び接着性官能基を有するモノマーに基づく単位を含むことによって、金属層に対する基板(絶縁層)の接着性を向上させることができる。
【0043】
第1の含フッ素重合体の融点としては、特に制限はなく、好ましくは150℃以上320℃以下、より好ましくは200℃以上310℃以下である。融点は、フルオロオレフィンに基づく単位、接着性官能基を有するモノマーに基づく単位、及びその他のモノマーに基づく単位の含有割合を適宜選定して調整できる。
【0044】
第1の含フッ素重合体の容量流速(以下、Q値という)としては、特に制限はなく、好ましくは5~500mm/秒、より好ましくは10~200mm/秒である。Q値は、第1の含フッ素重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きい場合には、分子量が小さく、Q値が小さい場合には、分子量が大きいことを示す。
【0045】
Q値は、島津製作所製フローテスタを用い、第1の含フッ素重合体の融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押し出すときの第1の含フッ素重合体の押出速度である。このQ値が小さすぎると、成形が困難となり、逆に大きすぎると、第1の含フッ素重合体の機械的強度が低下する。
【0046】
第1の含フッ素重合体の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法で製造できる。
【0047】
公知の製造方法で得られた第1の含フッ素重合体は、定法に従い、ペレット、粉体、その他の形態として得ることができる。この第1の含フッ素重合体は、成形性に優れるため、射出成形、押出成形、プレス成形などが可能であり、所望の形状に成形できる。
【0048】
第1の含フッ素重合体は、上記のようにして製造することもできるが、市販品を用いることもできる。
【0049】
<<第2の含フッ素重合体>>
第2の含フッ素重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位を含み、且つ接着性官能基を有するモノマーに基づく単位を含まず、フルオロオレフィン及び接着性官能基を有するモノマー以外のその他のモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。第2の含フッ素重合体がフルオロオレフィンに基づく単位を含み、且つ接着性官能基を有するモノマーに基づく単位を含まないことによって、基板(絶縁層)の誘電正接を低くできる。
ここで、「フルオロオレフィンに基づく単位」、「接着性官能基を有するモノマーに基づく単位」、及び「その他のモノマーに基づく単位」は、「第1の含フッ素重合体」の欄で説明した通りである。
なお、第2の含フッ素重合体において、フルオロオレフィンに基づく単位及びその他のモノマーに基づく単位の結合形態は、特に制限はなく、ランダム、完全交互、グラジエント、ブロック、テーパー、およびこれらの組み合わせが挙げられ、ランダムまたはブロックが好ましく、製造容易性の観点から、ランダムであることがより好ましい。
【0050】
第2の含フッ素重合体におけるフルオロオレフィンに基づく単位の含有量としては、特に制限はないが、第2の含フッ素重合体における全単位の合計モル量に対して、好ましくは90~100モル%、より好ましくは95~100モル%、特に好ましくは97~100モル%である。フルオロオレフィンに基づく単位の含有量が上記好ましい範囲にあると、比誘電率及び誘電正接が低い基板(絶縁層)が得られる。
なお、ここでの「第2の含フッ素重合体におけるフルオロオレフィンに基づく単位の含有量(モル%)」は、下記方法で測定される。
--第2の含フッ素重合体におけるフルオロオレフィンに基づく単位の含有量(モル%)の測定方法--
第2の含フッ素重合体における各単位の割合は、赤外吸収スペクトル分析によって求めることができる。
【0051】
第2の含フッ素重合体におけるその他のモノマーに基づく単位の含有量としては、特に制限はないが、第2の含フッ素重合体における全単位の合計モル量に対して、好ましくは0~10モル%、より好ましくは0~5モル%、特に好ましくは0~3モル%である。
なお、ここでの「第2の含フッ素重合体におけるその他のモノマーに基づく単位の含有量(モル%)」は、下記方法で測定される。
--第2の含フッ素重合体におけるその他のモノマーに基づく単位の含有量(モル%)の測定方法--
第2の含フッ素重合体における各単位の割合は、赤外吸収スペクトル分析によって求めることができる。
【0052】
第2の含フッ素重合体は、市販品を用いることもできる。第2の含フッ素重合体の市販品としては、特に制限はない。
【0053】
第2の含フッ素重合体を含む場合、基板(絶縁層)におけるフッ素樹脂の総体積量に対する第2の含フッ素重合体の含有量としては、特に制限はないが、水接触角の観点から、好ましくは50体積%以下、より好ましくは30体積%以下、特に好ましく10体積%以下である。
基板(絶縁層)におけるフッ素樹脂の総体積量に対する第2の含フッ素重合体の含有量が、上記好ましい範囲内あると、水接触角を75°以下にすることができる。
なお、ここでの「フッ素樹脂の総体積量に対する第2の含フッ素重合体の含有量(体積%)」は、下記方法で測定される。
--フッ素樹脂の総体積量に対する第2の含フッ素重合体の含有量(体積%)の測定方法--
DSCにて昇温過程における結晶融解温度と融解熱量データを取得する。300℃付近に現れるピークは第1の含フッ素重合体によるもので、それ以外のピークは第2の含フッ素重合体によるものであるため、そのピーク高さ比較により第2の含フッ素重合体の含有量は特定できる。
【0054】
<無機フィラー>
無機フィラーとしては、例えば、シリカ等の酸化ケイ素;酸化チタン、アルミナ、マイカ等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;タルク;ホウ酸アルミニウム;硫酸バリウム;炭酸カルシウム;などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、低熱膨張性の観点で、酸化ケイ素、酸化チタンが好ましく、シリカがより好ましい。
【0055】
無機フィラーの比表面積としては、5.5m/g未満である限り、特に制限はないが、好ましくは4.5m/g未満、より好ましくは3.5m/g未満、特に好ましくは3.0m/g未満である。
無機フィラーの比表面積が、上記好ましい範囲内であると、金属層に対する基板(絶縁層)の接着性が十分となる。
なお、ここでの「比表面積」は、下記方法で測定される。
--無機フィラーの比表面積の測定方法--
ガス吸着量測定装置(MICROTRAC MRB社製、BELSORP MAX)を用い、無機フィラーにNガスを吸着させ、その吸着挙動より比表面積を求める。
【0056】
無機フィラーのメディアン径(平均粒子径D50)としては、特に制限はないが、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、特に好ましくは10μm未満である。
無機フィラーのメディアン径(平均粒子径D50)が、上記好ましい範囲内であると、基板(絶縁層)の均質性やドリル加工性に優れる。
なお、ここでの「メディアン径(平均粒子径D50)」は、下記方法で測定される。
--無機フィラーのメディアン径(平均粒子径D50)の測定方法--
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、MICROTRAC HRA DHSX100)を用い、無機フィラーを水に分散させて体積基準の粒度分布を測定し、メディアン径(平均粒子径D50)を求める。
【0057】
無機フィラーの表面吸着水分量としては、特に制限はないが、好ましくは500質量ppm以下、より好ましくは400質量ppm以下、特に好ましくは300質量ppm以下である。
無機フィラーの表面吸着水分量が、上記好ましい範囲内であると、基板(絶縁層)の誘電正接を低くできる。
なお、ここでの「表面吸着水分量」は、下記方法で測定される。
--無機フィラーの表面吸着水分量の測定方法--
三菱ケミカルアナリテック社製の微量水分測定装置CA-200を用いて電量滴定法により、無機フィラーの表面吸着水分量を測定する。
【0058】
基板(絶縁層)の総体積量に対する無機フィラーの含有量としては、特に制限はないが、好ましくは50~80体積%、より好ましくは55~75体積%、特に好ましくは60~70%である。
基板(絶縁層)の総体積量に対する無機フィラーの含有量が、上記好ましい範囲内であると、基板(絶縁層)の線膨張係数を抑制できる。
なお、ここでの「基板(絶縁層)の総体積量に対する無機フィラーの含有量(体積%)」は、下記方法で測定される。
--基板(絶縁層)の総体積量に対する無機フィラーの含有量(体積%)の測定方法--
TGA(熱重量測定装置)によりフッ素樹脂基板を400℃まで加熱し、残った重量と加熱前重量との比から、無機フィラーの含有量(質量%)が算出される。フッ素樹脂と無機フィラーの比重を用いて、無機フィラーの含有量(体積%)が分かる。
【0059】
<溶媒>
基板(絶縁層)を形成する際に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、基板(絶縁層)における成分の溶解性及び取扱い性の観点で、トルエン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0060】
基板(絶縁層)を形成する際に用いられる基板組成物が溶媒を含有する場合は、基板組成物中における溶媒の含有量としては、特に制限はないが、100質量部の第1の含フッ素重合体に対して、好ましくは50~400質量部、より好ましくは100~300質量部、特に好ましくは150~250質量部である。
溶媒の含有量が、上記下限値以上であると、基板組成物の取扱い性が良好になり、また、上記上限値以下であると、所定の厚みの基板(絶縁層)が得られる。
【0061】
<その他の成分>
任意成分であるその他の成分としては、例えば、界面活性剤;シリコーン系消泡剤、アクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤;熱安定剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;染料;顔料;滑剤;湿潤分散剤等の分散剤;などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、機械特性の観点で、界面活性剤が好ましい。
【0062】
<<界面活性剤>>
界面活性剤としては、例えば、ノニオン性のフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、第1の含フッ素重合体の分散性の観点で、ネオス株式会社製のフタージェント710L等のフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0063】
基板(絶縁層)が界面活性剤を含有する場合は、界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、100質量部の第1の含フッ素重合体に対して、好ましくは3~30質量部、より好ましくは5~20質量部である。
【0064】
<基板(絶縁層)>
基板(絶縁層)は、例えば、基板組成物を330~380℃で5~60分間加熱することにより硬化して、基板(絶縁層)となる。
【0065】
基板(絶縁層)の厚みは、特に制限はないが、変形や折れ曲がりによる回路配線の断線を予防する観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上、特に好ましくは100μm以上である。
なお、ここでの「基板(絶縁層)の厚み」は、下記方法で測定される。
--基板(絶縁層)の厚みの測定方法--
CCLの状態でマイクロメーターにより厚みを測定し、既知である銅箔厚さ2層分を引き去る。
【0066】
また、周波数10GHzにおける基板(絶縁層)の誘電正接Dfとしては、伝送損失を抑制する観点から、好ましくは0.0020以下、より好ましくは0.0015以下、特に好ましくは0.0010以下である。
なお、ここでの「誘電正接Df」は、下記方法で測定される。
--誘電正接Dfの測定方法--
基板(絶縁層)(厚み127μm)について、25℃、10GHzにおいて、JIS R 1641:2007に規定されている方法に従い、空洞共振器及びベクトルネットワークアナライザを用いて誘電正接Dfを測定する。
なお、誘電正接Dfは、小さい方が好ましい。
【0067】
周波数10GHzにおける基板(絶縁層)の比誘電率Dkとしては、作製容易性及び選択肢を広げる観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上、特に好ましくは2.4以上である。
また、周波数10GHzにおける基板(絶縁層)の比誘電率Dkとしては、信号遅延を抑制する観点から、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.2以下である。
なお、ここでの「比誘電率Dk」は、下記方法で測定される。
--比誘電率Dkの測定方法--
基板(絶縁層)(厚み127μm)について、25℃、10GHzにおいて、JIS R 1641:2007に規定されている方法に従い、空洞共振器及びベクトルネットワークアナライザを用いて比誘電率Dkを測定する。
なお、比誘電率Dkは、小さい方が好ましい。
【0068】
<金属層>
基板の少なくとも一方の主面上に形成された金属層としては、例えば、電気抵抗が低い、銅箔、銀箔、金箔及びアルミニウム箔等の導電性金属箔を用いることができ、銅箔を用いることが好ましい。
金属層は、1種の金属を単独で使用し、1種の金属から構成されてもよいし、複数種の金属を併用し、複数種の金属から構成されてもよい。複数種の金属の併用方法としては、金属箔に金属メッキを施す方法を用いることができ、例えば、金属箔として、金メッキを施した銅箔を用いることができる。
また、金属層の厚みに応じて、ハンドリング性向上のために、剥離層及びキャリアを備えたキャリア付き金属箔を用いてもよい。さらに、金属層は、電解製箔又は圧延製箔されたままの金属箔(生箔)であってもよいし、一方の面又は両面に表面処理が施されていてもよい。前記表面処理としては、例えば、防錆処理、シラン処理、粗面化処理、バリア形成処理を挙げることができる。
【0069】
金属層として用いられる金属箔の市販品としては、例えば、TQ-M4-VSP(商品名、三井金属鉱業株式会社製、銅箔、Rzjis:0.6μm、厚み:18μm)を使用できる。
【0070】
金属層の厚みとしては、特に限定はないが、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.2~50μm、特に好ましくは1.0~30μmである。金属層の厚みが、上記好ましい範囲内であれば、配線基板の通常の配線パターン形成方法、例えば、MSAP(モディファイド・セミアディティブ)法及びサブトラクティブ法等を容易に採用できる。
【0071】
金属層の基板(絶縁層)側の面の十点平均粗さ(Rzjis)としては、特に制限はないが、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、特に好ましくは0.8μm以下である。これらの上限値は、高周波領域での使用時の金属箔の表皮効果によって増大し得る金属層に起因する導体損失を低減させて、伝送損失を低減させる観点から好ましい。なお、表皮効果とは、高周波電気信号が、金属層の表面近傍にしか流れない現象を意味する。表皮効果によって、金属層表面の凹凸に追従して電気信号が流れるため、粗度が粗い金属層ほど電気信号の伝達距離が増えて導体損失が悪化する場合がある。
金属箔の基板(絶縁層)側の面の十点平均粗さ(Rzjis)としては、特に制限はないが、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.20μm以上である。これらの下限値は、金属層と基板(絶縁層)又は後述する接着層との密着性を向上させる観点から好ましい。
なお、ここでの「十点平均粗さ(Rzjis)」は、下記方法で測定される。
--金属層の十点平均粗さ(Rzjis)の測定方法--
銅箔の粗化面を、JIS B 0601:2013の附属書JAに規定されている方法に従い、小坂研究所製のサーフコーダSE600を用いて測定する。
【0072】
金属層と、基板(絶縁層)又は接着層との界面における剥離強度(密着度)としては、好ましくは5N/cm以上、より好ましくは7N/cm以上、特に好ましくは8N/cm以上である。剥離強度は、通常、高ければ高いほど好ましいが、製品を量産する観点から、好ましくは30N/cm以下、より好ましくは20N/cm以下である。
なお、ここでの「剥離強度(密着度)」は、下記方法で測定される。
--剥離強度(密着度)の測定方法--
後述する金属張積層体から長さ100mm×幅10mmの矩形状の試験片を切り出す。試験片の長さ方向の一端から10mmの位置まで銅箔を基板(絶縁層)から剥離する。剥がした銅箔の一端を引張り試験機(島津製作所製オートグラフAGS-X)を用いて、引張り速度50mm/分で90°剥離を行い、変位に対して荷重が一定となる荷重値を剥離強度(N/cm)とする。
【0073】
<接着層>
接着層は、金属層と、基板(絶縁層)との間の密着性を向上させるためのプライマー層として機能する層であることが好ましい。
なお、接着層に含まれる第1の含フッ素重合体は、基板(絶縁層)を構成する基板組成物に含まれる第1の含フッ素重合体と同様である。また、接着層に含まれ得るその他の成分は、基板(絶縁層)を構成する基板組成物に含まれ得るその他の成分と同様である。
【0074】
接着層に含まれ得る無機フィラーの比表面積としては、好ましくは5.5m/g以上、より好ましくは5.5~30m/g、さらにより好ましくは5.5~25m/g、特に好ましくは5.5~20m/gである。
接着層における無機フィラーの比表面積が、上記好ましい範囲内であると、接着層厚を薄くでき、無機フィラー添加量を多くできる。
なお、ここでの「比表面積」は、上記方法で測定される。
【0075】
接着層に含まれ得る無機フィラーのメディアン径(平均粒子径D50)としては、特に制限はなく、ある態様では、好ましくは1μm未満、別の態様では、好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.1~2μmである。
接着層における無機フィラーのメディアン径(平均粒子径D50)が、上記好ましい範囲内あると、薄くて均質な接着層を得ることができる。
なお、ここでの「メディアン径(平均粒子径D50)」は、上記方法で測定される。
【0076】
なお、接着層に含まれ得る無機フィラーは、基板(絶縁層)を構成する基板組成物に含まれる無機フィラーと、比表面積及びメディアン径(平均粒子径D50)の点でのみ異なり、他の点では同様である。
【0077】
接着層における無機フィラーの含有量としては、特に制限はないが、接着層の全体積に対して、好ましくは85体積%未満、より好ましくは40~85体積%、さらにより好ましくは50~75体積%、特に好ましくは55~70体積%である。
接着層における無機フィラーの含有量が、上記好ましい範囲内であると、接着層の比誘電率Dkを基板(絶縁層)のDkに近づけることができる。
なお、ここでの「接着層における無機フィラーの含有量(体積%)」は、下記方法で測定される。
--接着層における無機フィラーの含有量(体積%)の測定方法--
TGA(熱重量測定装置)により接着層を400℃まで加熱し、残った重量と加熱前重量との比から、無機フィラーの含有量(質量%)が算出される。フッ素樹脂と無機フィラーの比重を用いて、無機フィラーの含有量(体積%)が分かる。
【0078】
接着層の厚みとしては、高周波領域における伝送損失の低減及び反りや剥離を抑制する観点から、好ましくは12μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは4μm以下である。
また、接着層の厚みとしては、金属箔及び基板(絶縁層)との密着性向上の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、特に好ましくは1μm以上である。
なお、ここでの「接着層の厚み」は、下記方法で測定される。
--接着層の厚みの測定方法--
CCLの断面SEM観察より、接着層の厚さは測定される。
【0079】
周波数10GHzにおける接着層の誘電正接Dfとしては、伝送損失を抑制する観点から、好ましくは0.003以下、より好ましくは0.0025以下、特に好ましくは0.002以下である。
なお、ここでの「誘電正接Df」は、上記方法で測定される。
【0080】
周波数10GHzにおける接着層の比誘電率Dkとしては、作製容易性及び選択肢を広げる観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上、特に好ましくは2.4以上である。
また、周波数10GHzにおける接着層の比誘電率Dkとしては、信号遅延を抑制する観点から、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.2以下である。
なお、ここでの「比誘電率Dk」は、上記方法で測定される。
【0081】
<中間層>
さらに、上述の第2の含フッ素重合体を含み、上述の第1の含フッ素重合体を含まず、必要に応じて、その他の成分を含む中間層を設けてもよい。
中間層を設ける場合は、基板(絶縁層)と基板(絶縁層)との間に配設されることが好ましい。即ち、基板(絶縁層)を分割して接着性を向上させる層として機能する層であることが好ましい。
【0082】
(金属層付き基板の製造方法)
金属層付き基板を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜用いることができ、例えば、基板組成物を、金属層表面に塗布し、それらを加熱加圧し硬化して、金属層付き基板を得る方法を用いることもできる。この他にもラミネート成形法なども使用できる。
ここで、塗布に使用される塗布装置としては、形成する金属箔の膜厚に応じて適宜選択することができ、例えば、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0083】
金属層付き基板の製造方法に用いる基板組成物の温度23℃における粘度としては、特に制限はなく、好ましくは10~200mPa・s、より好ましくは20~160mPa・s、特に好ましくは30~120mPa・sである。
基板組成物の温度23℃における粘度が、上記好ましい範囲内であると、金属層と基板(絶縁層)との密着力を強くできる。
なお、ここでの「基板組成物の温度23℃における粘度」は、下記方法で測定される。
--基板組成物の温度23℃における粘度の測定方法--
E型粘度計で測定し、ずり速度が100(1/s)時の粘度を上記粘度としている。
【0084】
[[孔形成工程]]
本発明のプリント配線板の製造方法における孔形成工程は、所定のドリル加工条件で金属層付き基板に孔を形成する工程である。
【0085】
(ドリル加工条件)
ドリル加工条件としては、例えば、ドリル径(mm)、送り速度(mm/s)、ドリル回転数(rpm)、引き抜き速度(mm/s)、ドリルビットなどが挙げられる。
【0086】
((ドリル径(mm)))
ドリル径(mm)としては、特に制限はないが、好ましくは0.10~0.50mm、より好ましくは0.15~0.30mmである。
【0087】
((ドリル回転数(rpm)))
ドリル回転数(rpm)としては、特に制限はなく、ドリル径(mm)に応じて適宜設定される。
【0088】
((送り速度(mm/s)))
送り速度(mm/s)としては、特に制限はないが、好ましくは20~50(mm/s)、より好ましくは35~40(mm/s)である。
送り速度(mm/s)を好ましい範囲内とすることにより、残渣の発生を抑えることができる。
【0089】
((ドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)))
ドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)としては、16000~57000(mm・rpm)である限り、特に制限はないが、好ましくは20000~50000(mm・rpm)、より好ましくは30000~40000(mm・rpm)である。
ドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)を16000~57000(mm・rpm)とすることにより、後の洗浄工程において加工面の残渣を除去し易くすることができる。
【0090】
[[洗浄工程]]
本発明のプリント配線板の製造方法における洗浄工程は、孔形成工程で形成された孔の内表面を洗浄する工程である。洗浄工程は孔の内表面をプラズマ処理することなく実施されることが好ましい。
【0091】
(洗浄方法)
孔の内表面を洗浄する洗浄方法としては、特に制限はなく、例えば、過マンガン酸ナトリウム水溶液に浸漬する方法(ウェットデスミア)が好ましい。
【0092】
[[導体形成工程]]
本発明のプリント配線板の製造方法における導体形成工程は、洗浄工程で洗浄された孔の内表面に導体を形成する工程である。
【0093】
(導体)
孔の内表面に形成された導体の材質としては、導体を通じて導通を確保できるものである限り、特に制限はなく、例えば、銅、金、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、電気伝導率の点で、銅が好ましい。
【0094】
((導体形成方法))
孔の内表面に導体を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、無電解メッキが挙げられる。
【0095】
導体の厚みとしては、電気信号伝達の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上である。
なお、ここでの「導体の厚み」は、下記方法で測定される。
--導体の厚みの測定方法--
基板の断面SEM像より、孔内表面の導体層の厚みを測定する。
【0096】
以下、導体形成方法の一実施形態について説明する。
図5の5aに示すように、一方の金属層13、基板(絶縁層)12、及び、他方の金属層13がこの順に積層されている金属層付き基板11を用意する。図5の5bに示すように、金属層付き基板11に、一方の金属層13から他方の金属層13まで貫通する孔50を形成する。図5の5cに示すように、孔50の内壁面及び金属層13の表面に無電解メッキ等を行って導体52を形成し、プリント配線板60を得る。
【0097】
以下、導体形成方法の他の実施形態について説明する。
図6の6aに示すように、金属層13及び基板(絶縁層)12がこの順に積層されている金属層付き基板41を用意する。図6の6bに示すように、金属層付き基板41に、電基板(絶縁層)12から金属層13まで貫通する孔50を形成する。図6の6cに示すように、孔50の内壁面、金属層13の表面、及び基板(絶縁層)12の金属層13が形成されていない主面に無電解メッキ等を行って導体52を形成し、プリント配線板60を得る。
【0098】
[[エッチング工程]]
本発明のプリント配線板の製造方法におけるエッチング工程は、金属層における金属をエッチングする工程である。
【0099】
(エッチング方法)
金属層における金属をエッチングするエッチング方法としては、特に制限はなく、例えば、(i)濃度が30~60質量%であり、温度が10~30℃である塩化第2鉄水溶液を用いたエッチング、(ii)塩化第2銅水溶液、(iii)硫酸過酸化水素、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、パターン再現性の点で、濃度が30~60質量%であり、温度が10~30℃である塩化第2鉄水溶液を用いたエッチングが好ましい。
【実施例0100】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0101】
以下、例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、例1~3、6、8、10、11、12及び14は実施例であり、例4、5、7、9、13及び15は比較例である。
【0102】
<使用した成分の詳細>
・第1の含フッ素重合体:テトラフルオロエチレンに基づく単位97.9モル%、ペルフルオロに基づく単位2.0モル%、及び接着性官能基としてのカルボニル基を有するモノマーに基づく単位0.1モル%を含む含フッ素重合体(DSC測定による融点300℃)
・第2の含フッ素重合体:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(フルオロオレフィンに基づく単位99.5モル%超を含み、接着性官能基を有するモノマーに基づく単位を含まない(接着性官能基を有するモノマー0.05モル%未満)含フッ素重合体)
・無機フィラー:球状シリカ粒子(デンカ株式会社製品、FB-8C、メディアン径(平均粒子径D50):8.3μm、比表面積1.6m/g、表面吸着水分量100質量ppm)
・溶媒:N-メチルピロリドン
・界面活性剤:フタージェント710L(株式会社ネオス製)
【0103】
(例1~15)
表1の成分欄に記載の体積比となるように調整したフッ素樹脂(第1の含フッ素重合体及び第2の含フッ素重合体)24.6質量%と、無機フィラーとしての球状シリカ粒子48.8質量%と、溶媒としてのN-メチルピロリドン24.1質量%と、界面活性剤としてのフタージェント710L(株式会社ネオス製)2.5質量%とをポットに投入し、レソダイン社製低周波共振音響ミキサー(LabMASII)で約80Gの加速度を与えながら20分間振動混合し、スラリー状の組成物を得た。
【0104】
厚み18μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、Rzjis:0.6μm、TQ-M4-VSP)の表面に、前記スラリーをダイコートして、150μmの厚みに塗布し、180℃大気環境下で5分間乾燥させた後、窒素雰囲気下で350℃で60分間加熱乾燥させて、基板(絶縁層)を形成した。これにより、基板(絶縁層)及び銅箔からなる金属層を有する片面金属張積層体を得た。
前記片面金属張積層体の、基板(絶縁層)側が向かいあうように2枚重ねたものを真空ホットプレス装置で、330℃の温度で8MPaの圧力をかけながら60分間プレスし、両面金属張積層体を得た。
得られた両面金属張積層体において、基板(絶縁層)の全体積に対するフッ素樹脂(第1の含フッ素重合体及び第2の含フッ素重合体)と無機フィラーとの合計体積の割合は100体積%であり、基板(絶縁層)の厚みは127μmであった。
各例について、後述の測定及び評価を行った。結果を表1~4に示す。
【0105】
<接触角測定法>
作製した両面金属張積層体の銅箔を塩化第2鉄(50質量%水溶液)でエッチングし接触角測定サンプルとした。
純水との接触角を接触角計(協和界面科学製、DMs-301)を用いて測定した。5回の測定値の平均を接触角とした。
なお、水滴量は1uLで、滴下後500ms後の数値を読み取った。
【0106】
<デスミア性評価>
作製した両面金属張積層体にドリルで直径0.3mmスルーホールを10か所形成後、プラズマ処理を施さず、過マンガン酸ナトリウム水溶液(15質量%)中に浸漬し、デスミア処理を実施した。10か所のスルーホール内スミア(樹脂残渣)を顕微鏡で観察し、スルーホール内スミア(樹脂残渣)の有無について、以下の評価基準で評価した。
A:観察した全ての孔内にスルーホール内スミア(樹脂残渣)無し。
B:観察した孔のうち、1~3箇所の孔にスルーホール内スミア(樹脂残渣)が存在するが、残りの孔にはスルーホール内スミア(樹脂残渣)無し。
C:観察した孔のうち、4~7箇所の孔にスルーホール内スミア(樹脂残渣)が存在するが、残りの孔にはスルーホール内スミア(樹脂残渣)無し。
D:観察した孔のうち、8箇所以上の孔にスルーホール内スミア(樹脂残渣)が存在。
なお、孔形成工程におけるドリル加工方法は、樹脂付きアルミ板をドリルに接する側に置き、その下に作製した両面金属張積層体を置き、更にその下に厚さ1.5mmのべークライト板からなるバックアップボードを配置して、両面金属張積層体のドリル加工を行った。
また、ドリル径(mm)、ドリル回転数(rpm)、及び送り速度(mm/s)については、表1に示す通りであり、引き抜き速度は25m/分である。
【0107】
<ソルダーレジスト密着性評価>
作製した両面金属張積層体に塩化第2鉄で銅箔をエッチングし、回路パターン形成後、プラズマ処理を施さずソルダーレジストをスクリーン印刷し、ソルダーレジスト剥離の有無を観察した。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
以上より、金属層が形成される基板の主面の水接触角を75°以下に調整し、金属層付き基板に孔を形成するドリル加工条件をドリル径(mm)×ドリル回転数(rpm)を16000~57000(mm・rpm)に調整した上で、形成された孔の内表面を洗浄すると、基板にダメージを与えることのない低コストで簡単なプラズマ処理なしのプロセスにより、残渣が低減した状態で孔の内表面に導体を形成したプリント配線板を製造できることが分かった。
さらに、濃度が30~60質量%であり、温度が10~30℃である塩化第2鉄水溶液を用いて、金属層における金属をエッチングすると、ソルダーレジスト剥離を防止できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、電子材料やそれを用いた各種デバイスに関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0114】
11,21,31,41:金属層付き基板
12:基板(絶縁層)
13:金属層
14:接着層(プライマー層)
15:中間層
50:孔
52:導体
60:プリント配線板
図1
図2
図3
図4
図5
図6