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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030393
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】印刷方法、及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20240229BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240229BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 120
C09D11/30
B41J2/01 501
B41J2/01 403
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133254
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小林 広紀
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA13
2C056EC42
2C056EC53
2C056EC72
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056FC02
2C056HA20
2C056HA24
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA12
2H186DA17
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB54
2H186FB57
4J039AE04
4J039BD02
4J039BE01
4J039CA07
4J039EA41
4J039EA43
4J039EA46
4J039EA47
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】吐出安定性に優れ、かつ乾燥性及び耐擦過性に優れた画像を印刷することができる印刷方法を提供する。
【解決手段】
直径20μm未満のノズル孔を有する吐出ヘッドを用いて、インクを吐出する吐出工程と、前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与工程と、を含む印刷方法であって、前記インクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、前記樹脂粒子の含有量は、インク全量に対して5質量%以上12質量%未満であり、前記疎水性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して20質量%以上40質量%未満であり、前記インクの25℃における粘度が、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%であるとき、当該インクの粘度変化率が+20%以上+30%以下であることを特徴とする印刷方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径20μm未満のノズル孔を有する吐出ヘッドを用いて、インクを吐出する吐出工程と、
前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与工程と、を含む印刷方法であって、
前記インクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、
前記樹脂粒子の含有量は、インク全量に対して5質量%以上12質量%未満であり、
前記疎水性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して20質量%以上40質量%未満であり、
前記インクの25℃における粘度が、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、
前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%であるとき、当該インクの粘度変化率が+20%以上+30%以下であることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記疎水性有機溶剤の沸点が、150℃以上250℃未満である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記インクに含まれる親水性溶剤の含有量が、インク全量に対して12質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項4】
前記樹脂粒子の含有量が、インク全量に対して5質量%以上11質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記樹脂粒子の含有量が、インク全量に対して7質量%以上11質量%以下である、請求項4に記載の印刷方法。
【請求項6】
直径20μm未満のノズル孔を有する吐出ヘッドを用いて、インクを吐出する吐出手段と、
前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与手段と、を含む印刷装置であって、
前記インクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、
前記樹脂粒子の含有量は、インク全量に対して5質量%以上12質量%未満であり、
前記疎水性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して20質量%以上40質量%未満であり、
前記インクの25℃における粘度が、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、
前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%であるとき、当該インクの粘度変化率が+20%以上+30%以下であることを特徴とする印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、ランニングコストが低い等の理由から、急速に普及してきている。
【0003】
インクジェット印刷方法に用いられるインクとしては、例えば、溶媒として有機溶剤を用いた溶剤系インク、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インク、環境負荷が少なく、非浸透性記録媒体に直接記録できる水性インクなどが広く用いられている。
当該水性インクとしては、例えば、各種基材に対する密着性に優れ、耐擦過性、耐溶剤性、及び非転写性を向上させる目的で、特定の構造を有する化合物や樹脂粒子を高濃度配合するインクが提案されており、プラスチックフィルムや布、紙への印刷に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、吐出安定性に優れ、かつ乾燥性及び耐擦過性に優れた画像を印刷することができる印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の印刷方法は、
直径20μm未満のノズル孔を有する吐出ヘッドを用いて、インクを吐出する吐出工程と、
前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与工程と、を含む印刷方法であって、
前記インクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、
前記樹脂粒子の含有量は、インク全量に対して5質量%以上12質量%未満であり、
前記疎水性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して20質量%以上40質量%未満であり、
前記インクの25℃における粘度が、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、
前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%であるとき、当該インクの粘度変化率が+20%以上+30%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、吐出安定性に優れ、かつ乾燥性及び耐擦過性に優れた画像を印刷することができる印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の印刷装置の一例を模式的に示す概略図である。
図2図2は、本発明の印刷装置におけるインクタンクの一例を模式的に示す概略図である。
図3図3は、本発明に関する駆動パルス及び微駆動パルスを含む駆動波形の一例を説明するための図である(波形1)。
図4図4は、本発明に関する駆動パルス及び微駆動パルスを含む駆動波形の一例を説明するための図である(波形2)。
図5図5は、本発明に関する駆動パルス及び微駆動パルスを含む駆動波形の一例を説明するための図である(波形3)。
図6図6は、本発明に関する駆動パルス及び微駆動パルスを含む駆動波形の一例を説明するための図である(波形4)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記特許文献1に記載のインクは、樹脂粒子を高濃度で配合していることから粘度が高く、当該インクを適用できるインクジェットプリンターの種類が限定されるという懸念があった。また、当該インクの粘度を低くするために、インクジェットヘッドを加熱する方法が試みられたが、インクジェットノズル近傍のインクが増粘してしまい、吐出不良が発生するという問題もあった。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定量の樹脂を含むインクに対して疎水性有機溶剤を多く配合して、粘度及び粘度変化率を特定の数値範囲に調整することにより、吐出安定性、乾燥性、及び耐擦過性に優れることを見出した。また、インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与することで、デキャップ時におけるノズル近傍でのインクの固化を防ぎ、吐出不良を抑制することができることを見出した。
【0010】
したがって、本発明においては、直径20μm未満のノズル孔を有する吐出ヘッドを用いて、インクを吐出する吐出工程と、前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与工程と、を含む印刷方法であって、前記インクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、前記樹脂粒子の含有量は、インク全量に対して5質量%以上12質量%未満であり、前記疎水性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して20質量%以上40質量%未満であり、前記インクの25℃における粘度が、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%であるとき、当該インクの粘度変化率が+20%以上+30%以下であることによって、吐出安定性に優れ、かつ乾燥性及び耐擦過性に優れた画像を印刷することができる印刷方法を提供することができる。
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
(印刷方法、及び印刷装置)
本発明の印刷方法は、吐出ヘッドを用いてインクを吐出する吐出工程と、前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与工程と、を含み、必要に応じて、その他の工程(A)を含んでいてもよい。
本発明の印刷装置は、吐出ヘッドを用いてインクを吐出する吐出手段と、前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与手段と、を含み、必要に応じて、その他の手段(A)を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、「吐出ヘッド」は「ヘッド」と称することがある。
なお、本明細書において、便宜上、インクに対して、当該インクを吐出するようにして刺激を付与する刺激付与手段を「刺激付与手段(1)」と称し、インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与手段を「刺激付与手段(2)」と称することがある。
当該印刷方法は、当該印刷装置によって好適に実施することができ、当該吐出工程は、当該吐出手段によって好適に実施することができ、当該その他の工程は、当該その他の手段によって好適に実施することができる。
【0013】
<吐出工程、及び吐出手段>
本発明における吐出工程は、吐出ヘッドを用いてインクを吐出する工程である。
本発明に関する吐出手段は、インクを吐出する手段、即ち吐出ヘッドである。
当該吐出工程は、当該吐出手段によって好適に実施することができる。
【0014】
<<吐出ヘッド>>
前記吐出ヘッドは、後述するインクを吐出する吐出手段であり、ノズル板と、液室と、刺激付与手段(1)とを有し、必要に応じて、その他の手段(B)を有していてもよい。
【0015】
-ノズル板-
前記ノズル板は、ノズル基板を有し、当該ノズル基板上に撥インク膜を有してもよい。
【0016】
--ノズル基板--
前記ノズル基板は、ノズル孔を有しており、その数、形状、大きさ、材質、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。当該ノズル基板は、当該ノズル孔からインクが吐出されるインク吐出側の面と、当該インク吐出側の面とは反対側に位置する液室接合面とを有する。
前記撥インク膜は、前記ノズル基板の前記インク吐出側の面であり、記録媒体に対向する面に形成されている。
【0017】
前記ノズル基板の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形、正方形、菱形、円形、楕円形などが挙げられる。また、当該ノズル基板の断面形状としては、例えば、平板状、プレート状などが挙げられる。
前記ノズル基板の大きさとしては、特に制限はなく、前記ノズル基板の大きさに応じて適宜選択することができる。
【0018】
前記ノズル基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb、NiCr、Si、SiO、Sn、Ta、Ti、W、ZAO(ZnO+Al)、Znなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ノズル基板の材質は、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。当該ステンレス鋼としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ノズル基板の少なくとも前記インク吐出側の面は、前記撥インク膜と前記ノズル基板との密着性を向上させる点から、酸素プラズマ処理を行って水酸基を導入してもよい。
【0020】
前記ノズル基板におけるノズル孔の直径は、20μm未満である。当該ノズル孔の直径の測定方法としては、特に制限はないが、例えば、光学顕微鏡によって測定することができる。
【0021】
前記ノズル基板におけるノズル孔の数、配列、間隔、開口形状、開口の断面形状などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル孔の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数の前記ノズル孔が、前記ノズル基板の長さ方向に沿って等間隔に並んで配列されている態様などが挙げられる。当該ノズル孔の配列は、吐出するインクの種類に応じて適宜選定することができるが、1列~複数列が好ましく、1列~4列がより好ましい。
前記1列当たりの前記ノズル孔の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10個以上10,000個以下が好ましく、50個以上500個以下がより好ましい。
隣接する前記ノズル孔の中心間の最短距離である間隔(ピッチ)Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、21μm以上169μm以下が好ましい。
前記ノズル孔の開口形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、楕円形、四角形などが挙げられる。これらの中でも、前記ノズル孔の開口形状は、インクの液滴を吐出する点から、円形が好ましい。
【0022】
--撥インク膜--
前記撥インク膜としては、撥インク性の点から、シリコーン樹脂、又はフッ素樹脂を含有することが好ましい。なお、当該撥インク膜は、撥インク材料含有膜、ポリマー含有膜、シリコーン樹脂含有膜、フッ素樹脂含有膜などと称することもある。
【0023】
前記シリコーン樹脂は、SiとOからできたシロキサン結合を基本骨格とした樹脂であり、オイル、レジン、エラストマー等の種々の形態で市販されており、撥インク性以外にも耐熱性、離型性、消泡性、粘着性等種々の特性を備えている。前記シリコーン樹脂は常温硬化、加熱硬化、紫外線硬化型等があり、作製方法や使用用途に応じて選択できる。
【0024】
前記シリコーン樹脂を含有する撥インク膜をノズル面(前記インク吐出側)上に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液状のシリコーン樹脂材料を真空蒸着する方法、シリコーンオイルをプラズマ重合することにより形成する方法、スピンコート、ディッピング、スプレーコート等の塗布により形成する方法、電着法などが挙げられる。当該撥インク層を形成する際には、電着法以外ではノズル孔及びノズル板のインク吐出側の面とは反対側の面をフォトレジスト、水溶性樹脂等でマスキングし、撥インク層形成後、レジストを剥離除去すればノズルプレートの吐出側の面のみに、シリコーン樹脂を含有する撥インク層を形成することができる。この場合、アルカリ性の強い剥離液を使用すると撥インク層へダメージを与えるので、注意が必要である。
【0025】
前記シリコーン樹脂を含む撥インク膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、0.1μm以上1.0μm以下がより好ましい。
【0026】
前記フッ素樹脂としては、特に制限はないが、含フッ素アクリレートエステル重合体、又は主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体が好ましい。前記撥インク膜が、当該含フッ素アクリレートエステル重合体、又は当該主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含むことにより、表面自由エネルギーが非常に小さくなり、表面張力の低いインクであっても濡れ難い状態を維持できるため好ましい。
【0027】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体におけるフッ素の含有率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、撥インク(接触角)の点から、10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0028】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記含フッ素アクリレートエステル重合体の市販品としては、例えば、krytox(登録商標)FSL、krytox(登録商標)FSH(以上、デュポン社製)、FomblinZ、FLUOROLINKS10(以上、ソルベイソレクシス社製)、オプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)、モレスコホスファロールA20H、モレスコホスファロールADOH、モレスコホスファロールDDOH(以上、株式会社MORESCO製)、フロロサーフFG5010、フロロサーフFG5020、フロロサーフFG5060、フロロサーフFG5070(以上、株式会社フロロテクノロジー製)、サイトップCTX-105、サイトップCTX-805(以上、AGC株式会社製)、テフロン(登録商標)AF1600、テフロン(登録商標)AF2400(デュポン社製)などが挙げられる。
【0029】
前記撥インク膜は、前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物膜で構成されていてもよい。前記ノズル板と前記撥インク膜との間には、含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物との結合点となる水酸基を多く存在させて密着性を向上させるために、無機酸化物層を設けることもできる。
前記無機酸化物層の材料としては、例えば、SiO、TiOなどが挙げられる。
前記無機酸化物層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001μm以上0.2μm以下が好ましく、0.01μm以上0.1μm以下がより好ましい。
【0030】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物による撥インク膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素系溶媒を用いたスピンコート、ロールコート、ディッピング等の塗布、印刷、真空蒸着等の方法などが挙げられる。
【0031】
前記フッ素系溶媒としては、例えば、ノベック(スリーエムジャパン株式会社製)、バートレル(デュポン社製)、ガルデン(ソルベイソレクシス社製)、アフルード(登録商標)(AGC株式会社製のフッ素系溶媒)、フロリナートFC-75(スリーエムジャパン株式会社製のパーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)を含んだ液体)などが挙げられる。
【0032】
-液室-
前記液室は、前記ノズル基板に設けられた複数のノズル孔に個別に対応して配置される。当該液室は、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、加圧室などと称することもある。
【0033】
―刺激付与手段(1)―
前記刺激付与手段(1)とは、後述するインクに対して、当該インクを吐出するようにして刺激を付与する手段である。当該刺激付与手段(1)における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、圧力が好ましい。
【0034】
前記刺激付与手段(1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0035】
前記刺激が「圧力」である場合、例えば、前記吐出ヘッドのインク流路内にある前記液室に接着された圧電素子に対して、パルスを印加することにより、当該圧電素子が撓み、当該圧力室の容積が収縮して、当該吐出ヘッドのノズル孔からインクを液滴として吐出させることができる。このとき、当該駆動パルスは、前記刺激付与手段に対して、1印字単位周期中に1又は2以上のパルスを印加して、ノズル孔から1又は2以上のインク滴を吐出させてもよい。なお、「1印字単位」とは、前記駆動波形における1周期のことを示す。
【0036】
前記刺激が「熱」である場合、例えば、前記吐出ヘッド内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、サーマルヘッド等を用いて付与し、当該熱エネルギーによりインクに気泡を発生させ、当該気泡により、前記ノズル基板のノズル孔からインクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
【0037】
前記吐出工程、及び前記吐出手段におけるインクの液滴の大きさ、吐出噴射の速さ、駆動周波数、解像度等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記インクの液滴の大きさとしては、3pL以上40pL以下とするのが好ましい。
前記インクの吐出噴射の速さとしては、5m/s以上20m/s以下とするのが好ましい。
前記駆動周波数としては、1kHz以上とするのが好ましい。
前記解像度としては、300dpi以上とするのが好ましい。
【0038】
前記吐出ヘッドとしては、特に制限はなく、例えば、連続噴射型、オンデマンド型などが挙げられる。当該オンデマンド型の吐出ヘッドとしては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等の吐出ヘッドなどが挙げられる。
また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから、記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
【0039】
<刺激付与工程、及び刺激付与手段(2)>
本発明における刺激付与工程は、後述するインクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する工程である。
本発明における刺激付与手段(2)は、後述するインクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する手段である。
前記刺激付与工程は、前記刺激付与手段(2)によって好適に実施することができる。
前記刺激付与手段(2)は、前記刺激付与手段(1)と同様のものを使用することができる。
【0040】
本明細書において「インクを吐出しないとき」とは、時系列において、前記刺激付与手段(1)が駆動する前乃至後のことを示す。即ち、インクが吐出されるときには刺激付与手段(1)が駆動し、インクが吐出されていないときには刺激付与手段(2)が駆動している。
本明細書において、当該刺激付与手段(2)における「刺激」は、インクに対して刺激を付与し、ノズル近傍におけるインクが固化することを防ぐために用いられる。即ち、インクを吐出しないときに、当該刺激付与手段(2)が駆動することにより、ノズル近傍に存在するインクが不均一となることを防ぐことができ、その結果、インクの増粘を抑制し、吐出不良を解消することができる。
【0041】
ここで、前記刺激付与手段(1)における刺激が、圧電素子に対してパルスが印加されることで生じる圧力である場合、インク吐出時において、当該インクに対して印加されるパルスを「駆動パルス」と称する。同様に、前記刺激付与手段(2)における刺激が、圧電素子に対してパルスが印加されることで生じる圧力である場合、インク非吐出時において、当該インクに対して印加されるパルスを「微駆動パルス」と称する。換言すると、当該駆動パルスは、当該インクが吐出するパルス強度を有するパルスであり、当該微駆動パルスは、当該インクが吐出しないパルス強度を有するパルスである。なお、本明細書において「駆動パルス」は、「吐出パルス」と称されることがある。
前記微駆動パルスの派高値としては、前記インクを吐出しない強度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、当該駆動パルスの派高値に対する当該微駆動パルスの派高値の比率(微駆動パルスの派高値/駆動パルスの派高値)が、20%以上50%以下であることが好ましい。当該駆動パルスの派高値に対する当該微駆動パルスの派高値の比率が20%以上であると、ノズル近傍に存在するインクが不均一となることを防ぐことができ、その結果、インクの増粘を抑制し、吐出不良を解消することができるため好適である。また当該駆動パルスの派高値に対する当該微駆動パルスの派高値の比率が50%以下であると、当該インクが意図しないタイミングで吐出されることを防ぐことができるため好適である。
【0042】
ここで、駆動パルス及び微駆動パルスを含む駆動波形の例を図3図6を用いて説明する。図3図6には、圧電素子に対して印加される駆動パルス及び微駆動パルスの電位(%)の例が示されている。
図3の波形1において、駆動パルスの派高値は-90(%)であり、微駆動パルスの派高値は-45(%)であり、駆動パルスの派高値に対する微駆動パルスの派高値の比率は50%となる。図4の波形2において、駆動パルスの派高値は-90(%)であり、微駆動パルスの派高値は-18(%)であり、駆動パルスの派高値に対する微駆動パルスの派高値の比率は20%となる。図5の波形3において、駆動パルスの派高値は-90(%)であり、微駆動パルスの派高値は-5(%)であり、駆動パルスの派高値に対する微駆動パルスの派高値の比率は約5.6%となる。図6の波形4において、駆動パルスの派高値は-90(%)であり、微駆動パルスの派高値は0(%)である。
【0043】
<その他の工程(A)及びその他の手段(A)>
前記その他の工程(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成工程、吐出ヘッド及び記録媒体を相対移動させる相対移動工程、加熱・乾燥工程などが挙げられる。
前記その他の手段(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成部、駆動波形から駆動パルスを選択し、アクチュエータに付与するヘッドドライバ、吐出ヘッド及び記録媒体を相対移動させる相対移動手段、加熱・乾燥手段などが挙げられる。
当該加熱・乾燥手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セラミックやニクロム線を用いた伝導加熱ヒーターや、温風ファンなどが挙げられる。なお、当該加熱・乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
【0044】
本発明における印刷方法としては、前記相対移動手段により吐出ヘッドと記録媒体とが相対移動されているときに、アクチュエータに対して前記1印字単位周期中に1又は2以上の駆動パルスを供給し、ノズルから1又は2以上のインク滴を吐出させる。このようにして吐出された複数のインク滴は、記録媒体上に1つのインクドットを形成する。このようなドットが記録媒体上に複数個整列することにより、前記記録媒体に所定の画像が形成される。そして、前記1印字単位周期中に吐出するインク滴の数を調整することにより、ドットの濃淡や大きさが調整され、いわゆる多階調印刷が可能となる。
【0045】
<インク>
本発明におけるインクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、必要に応じて、親水性有機溶剤、及びその他の成分を含んでいてもよい。
【0046】
<<疎水性有機溶剤>>
本明細書において「疎水性有機溶剤」とは、SP(Solubility Parameter:溶解パラメータ)値が12.0未満のものを疎水性有機溶剤とする。当該疎水性有機溶剤としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、沸点が150℃以上250℃未満であるものが好ましい。当該沸点が150℃以上250℃未満である疎水性有機溶剤としては、例えば、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタンジオールなどが挙げられる。
前記疎水性有機溶剤の含有量は、インクの低粘度化及び間欠吐出安定性の観点から、インク全量に対して20質量%以上40質量%以下であり、20質量%以上30質量%以下がより好ましい。当該疎水性有機溶剤の含有量が、インク全量に対して20質量%以上であると、インクを低粘度化することができ、その結果、吐出安定性が良好となるため好ましい。当該疎水性有機溶剤の含有量が、インク全量に対して40質量%以下であると、後述する粘度変化率の増大を抑えることができ、その結果、間欠吐出安定性が良好となるため好ましい。
【0047】
―親水性有機溶剤―
本発明におけるインクは、有機溶剤として、前記疎水性有機溶剤の他に、親水性有機溶剤を含んでいてもよい。本明細書において「親水性有機溶剤」は、SP値が12.0以上のものを親水性有機溶剤とする。当該親水性有機溶剤としては、例えば、1,2-プロパンジオール、グリセリン、3-メチル-1,3-ブタンジオールなどが挙げられる。
前記親水性有機溶剤の含有量は、インクの低粘度化及び画質が向上する観点から、インク全量に対して0質量%以上12質量%以下であることが好ましい。
【0048】
本発明における有機溶剤のSP値の測定方法としては、諸説あるが、本発明においては一般的に用いられているFedors法において下記式(B)を用いることで算出することができる。
SP値(溶解パラメータ)=(CED値)1/2=(E/V)1/2 ・・・式(B)
前記式(B)において、Eは分子凝集エネルギー(cal/mol)、Vは分子容(cm/mol)であり、原子団の蒸発エネルギーをΔei、モル体積をΔviとした場合、下記式(C)、及び式(D)で示される。
E=ΣΔei ・・・・・式(C)
V=ΣΔvi ・・・・・式(D)
前記計算方法、各原子団の蒸発エネルギーΔei及びモル体積Δviの諸データとしては、「接着の基礎理論」(井本稔著、高分子刊行会発行、第5章)に記載のデータを用いることができる。
また、-CF基などが示されていないものに関しては、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.14,147(1974)を参照することができる。
なお、参考までに、式(B)で示されるSP値を(J/cm1/2に換算する場合には2.046を、SI単位(J/m1/2に換算する場合には、2,046を乗ずればよい。
【0049】
<<水>>
前記水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0050】
<<樹脂粒子>>
前記樹脂粒子における樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、エステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルジョンの状態で、後述する色材や前記有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0052】
前記樹脂粒子の含有量としては、定着性、インクの保存安定性、吐出安定性、及び画質の点から、インク全量に対して5質量%以上12質量%以下であり、5質量%以上11質量%以下がより好ましく、7質量%以上11質量%以下がさらに好ましい。
前記樹脂粒子の含有量が、インク全量に対して5質量%以上であると、前記インクを印刷して得られる画像の乾燥性が良好となるため好適である。前記樹脂粒子の含有量が、インク全量に対して12質量%以下であると、前記インクの吐出安定性が良好となるため好適である。
【0053】
前記樹脂粒子のガラス転移温度(Tg:Glass Transition Temperature)としては、-40℃以上0℃以下であることが好ましい。
当該樹脂粒子のTgが、-40℃以上であると、印刷した画像のタック性が軽減されるため好ましい。当該樹脂粒子のTgが、0℃以下であると、記録媒体上におけるインクの造膜性が向上し、耐擦過性に優れるため好ましい。
当該樹脂粒子のTgの測定方法は、特に制限はないが、例えば、以下の方法によって測定することができる。
<ガラス転移温度の測定>
樹脂粒子のガラス転移温度は、DSCシステムQ-2000(TAインスツルメント社製)を用いて測定する。具体的には、樹脂粒子分散液を70℃のオーブンで12時間以上加熱・乾燥させ、固形分5mgをアルミニウム製の試料容器に入れて装置にセットし、窒素気流下にて以下の測定条件(1)~(4)にて測定を行う。2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、中点法にてガラス転移温度を求める。
(1)-70℃まで冷却後5分保持
(2)10℃/minで120℃まで昇温
(3)-70℃まで冷却後5分保持
(4)10℃/minで120℃まで昇温
【0054】
前記インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましい。当該固形分には、樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。当該粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0055】
<<その他の成分>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、色材、添加剤などが挙げられる。
【0056】
<<<色材>>>
本発明におけるインクに含まれる色材としては、特に限定されず、顔料及び染料を使用することができる。
【0057】
前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
前記無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
前記有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0058】
黒色用顔料の具体例としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
カラー用顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー35、C.I.ピグメントイエロー37、C.I.ピグメントイエロー42(黄色酸化鉄)、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド101(べんがら)、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108(カドミウムレッド)、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ)、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド219、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット16、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー)、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4(フタロシアニンブルー)、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー56、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン17、C.I.ピグメントグリーン18、C.I.ピグメントグリーン36などがある。
【0059】
前記染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料の具体例として、例えば、C.I.アシッドイエロー17、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドイエロー44、C.I.アシッドイエロー79、C.I.アシッドイエロー142、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド80、C.I.アシッドレッド82、C.I.アシッドレッド249、C.I.アシッドレッド254、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー45、C.I.アシッドブルー249、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、C.I.アシッドブラック24、C.I.アシッドブラック94、C.I.フードブラック1、C.I.フードブラック2、C.I.ダイレクトイエロー1、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトイエロー24、C.I.ダイレクトイエロー33、C.I.ダイレクトイエロー50、C.I.ダイレクトイエロー55、C.I.ダイレクトイエロー58、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトイエロー132、C.I.ダイレクトイエロー142、C.I.ダイレクトイエロー144、C.I.ダイレクトイエロー173、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.ダイレクトレッド9、C.I.ダイレクトレッド80、C.I.ダイレクトレッド81、C.I.ダイレクトレッド225、C.I.ダイレクトレッド227、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.ダイレクトブルー15、C.I.ダイレクトブルー71、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトブルー98、C.I.ダイレクトブルー165、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.ダイレクトブルー202、C.I.ダイレクドブラック19、C.I.ダイレクドブラック38、C.I.ダイレクドブラック51、C.I.ダイレクドブラック71、C.I.ダイレクドブラック154、C.I.ダイレクドブラック168、C.I.ダイレクドブラック171、C.I.ダイレクドブラック195、C.I.リアクティブレッド14、C.I.リアクティブレッド32、C.I.リアクティブレッド55、C.I.リアクティブレッド79、C.I.リアクティブレッド249、C.I.リアクティブブラック3、C.I.リアクティブブラック4、C.I.リアクティブブラック35などが挙げられる。
【0060】
前記色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、インク全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0061】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。当該分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂株式会社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。当該分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0062】
[顔料分散体]
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合・分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については、特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましい。当該顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0063】
<<<添加剤>>>
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0064】
<<<<界面活性剤>>>>
前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0065】
-シリコーン系界面活性剤-
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高pH(pH11~14)でも分解しないものが好ましい。
高pH(pH11~14)でも分解しないシリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、親水性が向上し、水に対する溶解性が高くなる観点から、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが好ましい。
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもできる。当該ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
【0066】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)式で表わされるポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0067】
【化1】
・・・一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0068】
前記シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(いずれも、信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(いずれも、日本エマルジョン株式会社製)、DOWSIL(登録商標)FZ-2105、DOWSIL(登録商標)FZ-2118、DOWSIL(登録商標)FZ-2154、DOWSIL(登録商標)FZ-2161、DOWSIL(登録商標)FZ-2162、DOWSIL(登録商標)FZ-2163、DOWSIL(登録商標)FZ-2164(いずれも、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(いずれも、ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)などが挙げられる。
【0069】
-フッ素系界面活性剤-
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素置換した炭素の数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素の数が4~16である化合物がより好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
【0070】
これらの中でも、起泡性が少ない観点から、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が好ましく、一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤がより好ましい。
【0071】
【化2】
・・・一般式(F-1)
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与する観点から、mは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0072】
CnF2n+1-CHCH(OH)CH-O-(CHCHO)a-Y
・・・一般式(F-2)
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1(mは1~6の整数)、又はCHCH(OH)CH-C2m+1(mは4~6の整数)、又はC2p+1(pは1~19の整数)である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0073】
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0074】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
前記フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS-111、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-121、サーフロンS-131、サーフロンS-132、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも、AGC株式会社製);フルラードFC-93、フルラードFC-95、フルラードFC-98、フルラードFC-129、フルラードFC-135、フルラードFC-170C、フルラードFC-430、フルラードFC-431(いずれも、スリーエムジャパン株式会社製);メガファックF-470、メガファックF-1405、メガファックF-474(いずれも、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、キャプストーンFS-31、キャプストーンFS-3100、キャプストーンFS-34、キャプストーンFS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A、ポリフォックスPF-156A、ポリフォックスPF-151N、ポリフォックスPF-154、ポリフォックスPF-159(いずれも、オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、及び均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス社製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N、及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが好ましい。
【0075】
-両性界面活性剤-
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0076】
-ノニオン系界面活性剤-
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0077】
-アニオン系界面活性剤-
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記界面活性剤の含有量は、濡れ性、及び吐出安定性に優れ、かつ得られる画像品質が向上する観点から、前記インク全量に対して0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0079】
<<<消泡剤>>>
前記その他の成分として用いられる界面活性剤は、消泡剤として用いることもできる。
前記消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0080】
<<<防腐防黴剤>>>
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0081】
<<<防錆剤>>>
前記防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0082】
<<<pH調整剤>>>
前記pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0083】
[クリアインクの物性]
本発明におけるインクの25℃での粘度は、連続吐出安定性の観点から、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、5mPa・s以上7mPa・s以下がより好ましい。
ここで、粘度の測定方法としては、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
【0084】
前記インクの25℃における表面張力としては、記録媒体上で好適にクリアインクがレベリングされ、クリアインクの乾燥時間が短縮される点から、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
前記インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0085】
前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%のときの粘度変化率は、+20%以上+30%以下である。本明細書において、「インク全量に対して5質量%の水分蒸発時における粘度変化率」は、単に「5質量%水分蒸発時の粘度変化率」又は「粘度変化率」と称することがある。
ここで「粘度変化率」は、水分蒸発前のインク粘度をη1、インク全量に対して5質量%の水分蒸発時におけるインク粘度をη2としたとき、以下の式によって算出することができる。
粘度変化率(%)=(η2-η1)/η1×100
また、粘度変化率において、符号「+」は当該インクが増粘すること、及び符号「-」は当該インクの粘度が減少することをそれぞれ示す。
【0086】
前記粘度変化率が+20%以上であると、インクの低粘度が維持され、連続吐出安定性が良好となるため好適である。前記粘度変化率が+30%以下であると、ノズル孔におけるメニスカス近傍のインク粘度が急激に増粘してしまい、インクが吐出されなかったり、インクの吐出量が不十分だったり、吐出後のインク飛翔方向に曲がりが発生したりするといった不具合を解消することができ、好適である。
【0087】
また、粘度変化率の具体的な測定方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
<5質量%水分蒸発時の粘度変化率の測定>
内径50mmのガラスシャーレにインクを3g入れ、35℃環境にてインク中の水分蒸発量を、蒸発前後のインク質量の差分にて計測する。この場合、ガラスシャーレ内のインク質量が2.85gとなった時点を、「インク全量に対して5質量%の水分蒸発時」とする。水分蒸発前のインク粘度η1と、「インク全量に対して5質量%の水分蒸発時」のインク粘度η2とを、以下の[測定条件]下で粘度計(RE80L、東機産業株式会社製)を用いて測定し、上記式から粘度変化率を計算する。
[測定条件]
・コーンローター:標準コーンローター(1°34’×R24)
・サンプル液量:1.2mL
・回転数:50rpm
・測定時間:3min
・温度:25℃、36℃
【0088】
<記録媒体>
前記記録媒体としては、特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。当該非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
当該非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを好適に使用することができる。
【0089】
<印刷物>
本発明の印刷物は、前記記録媒体上に、本発明の印刷方法を用いて形成された画像を有してなる。
【0090】
本発明で用いられるインクは、インクジェット記録方式による各種吐出装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明の印刷装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。当該インクジェット印刷装置には、卓上型だけでなく、広幅の吐出装置や、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0091】
本発明の印刷装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、非浸透性基材又は記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。当該前処理装置、及び当該後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液、後処理液を有する液体収容部と吐出ヘッドを追加し、前処理液、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。当該前処理装置、及び当該後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0092】
また、印刷装置及び印刷方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
【0093】
以下、本発明の印刷方法、及び印刷装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0094】
本発明の印刷装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。図1は、印刷装置の斜視説明図である。図2は、図1の印刷装置におけるメインタンクの斜視説明図である。
印刷装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えば、アルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側には、カートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0095】
本発明の用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、インクは、2次元の文字、画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段、乾燥手段等を備えるものを使用することができる。当該立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。
また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。当該成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物及び構造体に対して、加熱延伸、打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーター、操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0096】
本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0097】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」は「質量部」であり、「%」は、評価基準中のものを除き、「質量%」である。
また、特に記載が無い場合、調製、評価は、室温25℃、湿度60%の条件下で行った。
【0098】
(製造例1)
<ブラック顔料分散体の製造例>
フラスコ内で、以下材料を混合し65℃に昇温した。
・スチレン11.2g
・アクリル酸2.8g
・ラウリルメタクリレート12g
・ポリエチレングリコールメタクリレート4g
・スチレンマクロマー4g
・メルカプトエタノール0.4g
次に、以下材料の混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
・スチレン100.8g
・アクリル酸25.2g
・ラウリルメタクリレート108g
・ポリエチレングリコールメタクリレート36g
・ヒドロキシルエチルメタクリレート60g
・スチレンマクロマー36g
・メルカプトエタノール3.6g
・アゾビスメチルバレロニトリル2.4g
・メチルエチルケトン18g
その後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、さらに1時間熟成して反応を行った。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、固形分濃度50%のポリマー溶液Aを800g得た。
次いで、得られたポリマー溶液Aを28g、カーボンブラック(Cabot Corporation社製、Black Pearls 1000)42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルで混練してペーストを得た。得られたペースト89.2gを純水200gに入れて充分に攪拌した後、エバポレータでメチルエチルケトンを除去し、平均孔径5μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルター(SVWG04700、Merck社製)で加圧濾過した後、固形分濃度が20%になるように水分量を調整し、固形分濃度20%のブラック顔料分散体を得た。
【0099】
(製造例2)
<シアン顔料分散体の製造>
調製例1において、カーボンブラックの代わりにピグメントブルー15:4(SENSIENT社製、SMART Cyan 3154BA)を使用した以外は、調製例1と同様にして、固形分濃度20質量%のシアン顔料分散体を得た。
【0100】
(製造例3)
<マゼンタ顔料分散体の製造>
調製例1において、カーボンブラックの代わりにピグメントレッド122(Sun Chemical社製、Pigment Red 122)を使用した以外は、調製例1と同様にして、固形分濃度20質量%のマゼンタ顔料分散体を得た。
【0101】
(製造例4)
<イエロー顔料分散体の製造>
調製例1において、カーボンブラックの代わりにピグメントイエロー74(SENSIENT社製、SMART Yellow 3074BA)を使用した以外は、調製例1と同様にして、固形分濃度20質量%のイエロー顔料分散体を得た。
【0102】
(製造例5)
<ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン1の製造>
温度計、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた窒素置換された容器中で、以下材料を反応させた。
・ポリエステルポリオール(商品名:ポリライトOD-X-2251、DIC株式会社製、平均分子量2,000)124.4g
・2,2-ジメチロールプロピオン酸(東京化成工業株式会社製)9.7g
・イソホロンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)29.8g
・有機溶剤としてメチルエチルケトン(三協化学株式会社製)77.1g
・触媒としてのDMTDL(ジブチルスズジラウレート)(東京化成工業株式会社製)0.06g
前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7gを供給し、更に反応を継続した。前記反応物の平均分子量が20,000から60,000の範囲に達した時点で、メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)1.4gを投入し前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を13.4g加えることで、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和し、次いで、水715.3gを加え十分に撹拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度が30質量%のポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン1を得た。
【0103】
得られたポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン1について、ガラス転移温度を以下の方法で測定したところ、74℃であった。
<ガラス転移温度の測定>
樹脂粒子のガラス転移温度は、DSCシステムQ-2000(TAインスツルメント社製)を用いて測定した。具体的には、樹脂粒子分散液を70℃のオーブンで12時間以上加熱・乾燥させ、固形分5mgをアルミニウム製の試料容器に入れて装置にセットし、窒素気流下にて以下の測定条件(1)~(4)にて測定を行った。2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、中点法にてガラス転移温度を求めた。
(1)-70℃まで冷却後5分保持
(2)10℃/minで120℃まで昇温
(3)-70℃まで冷却後5分保持
(4)10℃/minで120℃まで昇温
【0104】
得られたポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン1について、体積平均粒径を以下の方法で測定したところ、69nmであった。
<体積平均粒径の測定>
樹脂粒子の体積平均粒径については、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)を用いて、測定サンプル中の樹脂粒子濃度(質量濃度)が0.01質量%になるように純水で希釈したサンプルを用いて測定した。
【0105】
(製造例6)
<ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン2の製造>
撹拌機、温度計、窒素シール管及び冷却器の付いた容量2Lの反応容器で、60℃にて均一に混合した。
・メチルエチルケトン(MEK、三協化学株式会社製)100g
・ポリエステルポリオール(1)(iPA/AA=6/4(モル比)とEG/NPG=1/9(モル比)とから得られたポリエステルポリオール(DIC株式会社製、数平均分子量:2,000、平均官能基数:2、IPA:イソフタル酸、AA:アジピン酸、EG:エチレングリコール、及びNPG:ネオペンチルグリコール)345g
・2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)9.92g
その後、トリエチレングリコールジイソシアネート(TEGDI)45.1g、及びジオクチルチンジラウレート(DOTDL)0.08gを仕込み、72℃で3時間反応させて、ポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、IPA80g、MEK220g、トリエタノールアミン(TEA)3.74g、及び水596gを仕込んで転相させた後、ロータリーエバポレーターにてMEK及びIPAを除去して、樹脂エマルジョン2を得た。
得られた樹脂エマルジョン2を常温まで冷却した後、イオン交換水及び水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分濃度30質量%、pH8となるように調整した。
得られたポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン2について、調製例5と同様にガラス転移温度、及び体積平均粒径を測定したところ、それぞれ-5℃、88nmであった。
【0106】
(製造例7)
<ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンの製造>
温度計、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた窒素置換された容器中で、反応させた。
・ポリエーテルポリオール(商品名:PTMG1000、三菱化学株式会社製、平均分子量:1,000)100.2g
・2,2-ジメチロールプロピオン酸15.7g
・イソホロンジイソシアネート48.0g
・有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1g
・触媒としてDMTDL(ジブチルスズジラウレート)(東京化成工業株式会社製)0.06g
前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7gを供給し、更に反応を継続した。前記反応物の平均分子量が20,000から60,000の範囲に達した時点で、メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)1.4gを投入し前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を13.4g加えることで、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和し、次いで、水715.3gを加え十分に撹拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度が30質量%のポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンを得た。
得られたポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンについて、調製例5と同様にガラス転移温度、及び体積平均粒径を測定したところ、それぞれ43℃、121nmであった。
【0107】
(製造例8)
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1の製造>
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、以下材料を窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
・ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物、旭化成ケミカルズ株式会社製、数平均分子量(Mn);1,000)1,500g、
・2,2-ジメチロールプロピオン酸(東京化成工業株式会社製)(以下、「DMPA」とも称することがある)220g、
・N-メチルピロリドン(三菱ケミカル株式会社製)(以下、「NMP」とも称することがある)1,347g
次いで、イソホロンジイソシアネート1,223g(5.5モル)、ジブチルスズジラウリレート(触媒)(東京化成工業株式会社製)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加・混合したものの中から4,340gを抜き出して、強撹拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1,500gを投入し、35%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1を得た。得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1について、調製例5と同様にガラス転移温度、及び体積平均粒径を測定したところ、それぞれ83℃、71nmであった。
【0108】
(製造例9)
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン2の製造>
撹拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物、旭化成ケミカルズ株式会社製、数平均分子量(Mn):1,200))1,500g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(東京化成工業株式会社製)(以下、「DMPA」とも称することがある)220g、及びN-メチルピロリドン(三菱ケミカル株式会社製)(以下、「NMP」とも称することがある)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。次いで、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)1,445g(5.5モル)、ジブチルスズジラウリレート(触媒)(東京化成工業株式会社製)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。
この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)149gを添加・混合したものの中から4,340gを抜き出して、強撹拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1,500gを投入し、35%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン2を得た。
得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン2について、調製例5と同様にガラス転移温度、及び体積平均粒径を測定したところ、それぞれ55℃、55nmであった。
【0109】
(製造例10)
<アクリル樹脂エマルジョン1の製造>
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g、及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解した。予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3g、アクリルアミド20gにスチレン365g、ブチルアクリレート545g、及びメタクリル酸10gを撹拌下で加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。
得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分濃度30質量%、pH8に調整し、アクリル樹脂エマルジョン1を得た。
得られたアクリル樹脂エマルジョン1について、ガラス転移温度を測定したところ、調製例5と同様にガラス転移温度、及び体積平均粒径を測定したところ、それぞれ86℃、158nmであった。
【0110】
(製造例11)
<アクリル樹脂エマルジョン2の製造>
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g、及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解した。予め、イオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3g、アクリル酸-2-エチルヘキシル568g、及びメタクリル酸メチル447gを、撹拌下で加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。
得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して、固形分濃度30質量%、pH8に調整し、アクリル樹脂エマルジョン2を得た。得られたアクリル樹脂エマルジョン2について、調製例5と同様にガラス転移温度、及び体積平均粒径を測定したところ、それぞれ-21℃、152nmであった。
【0111】
(実施例1)
下記のインク処方に対して、全量が100質量部になるようにイオン交換水を加え、混合撹拌し、平均孔径5μmのフィルター(ミニザルト、ザルトリウス社製)で濾過して、実施例1のインクを作製した。
・ブラック顔料分散体:18質量部
・ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン1(体積平均粒径:69nm):6.7質量部
・ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョン(体積平均粒径:121nm):3.3質量部
・ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1(体積平均粒径:71nm):6.7質量部
・アクリル樹脂エマルジョン2(体積平均粒径:152nm):0.7質量部
・SAG503A(日信化学工業社製、シリコーン系界面活性剤、HLB値:11):1.6質量部
・3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJケミカル社製):9.8質量部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(KHネオケム社製):3.0質量部
・1,2-ヘキサンジオール(東京化成工業社製):14.0質量部
・3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(商品名:ソルフィット、株式会社クラレ製):3.4質量部
・プロキセルLV(アビシア社製、防腐防黴剤):0.1質量部
・イオン交換水:残量(合計:100質量部)
【0112】
(実施例2~8、及び比較例1~6)
実施例1において、表1~4に記載のインク処方に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8、及び比較例1~6のインクを調製した。表1~4における各成分の詳細な内容については、以下のとおりである。
・1,2-プロパンジオール(商品名:プロピレングリコール、株式会社ADEKA製)
・3-メチル-1,3-ブタンジオール(商品名:イソプレングリコール、株式会社クラレ製)
・グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)
・TEGO Twin4000(Evonic社製、シリコーン系界面活性剤)
【0113】
実施例1~8及び比較例1~6において、「粘度」、「5質量%水分蒸発時の粘度変化率」、「連続吐出安定性」、「間欠吐出安定性」、「画質(にじみ)」、及び「耐擦過性」を評価した。結果を表1~4に示した。
【0114】
<インクの粘度測定>
インクの粘度測定には、粘度計(RE80L、東機産業株式会社製)を使用し、以下の条件で粘度を測定した。各インクの粘度測定結果は表1~4に示す。
[測定条件]
・コーンローター:標準コーンローター(1°34’×R24)
・サンプル液量:1.2mL
・回転数:50rpm
・測定時間:3min
・温度:25℃、36℃
【0115】
<5質量%水分蒸発時の粘度変化率の測定>
内径50mmのガラスシャーレにインクを3g入れ、35℃環境にてインク中の水分蒸発量を質量にて計測した。ガラスシャーレ内のインク質量が2.85gとなった時点を水分5質量%蒸発時として定めた。水分5質量%蒸発時のインク粘度を、前記の粘度測定手順に従って測定した。水分蒸発前のインク粘度η1、及び水分5質量%蒸発時のインク粘度η2の測定値から、以下の計算式によって粘度変化率を計算した。結果を表1~4に示した。
粘度変化率(%)=(η2-η1)/η1×100
【0116】
<連続吐出安定性の評価>
吐出ヘッドとしてKJ4B(京セラ社製、ノズル孔の直径12μm)を備えた吐出テスト評価装置EV2500(株式会社リコー製)を、インクジェットプリンターとして用いてインク吐出を実施した。なお、当該インクジェットプリンターは、刺激付与手段として圧電素子を有し、当該圧電素子に対して駆動パルスを印加することで、インクの吐出を行うタイプのインクジェットプリンターである。環境温度25℃、吐出周波数30kHzにて1分間の連続吐出を行い、全2558ノズル中、吐出抜けが発生したノズル数を測定し、以下の評価基準に基づいて判断した。結果を表1~4に示した。なお、評価としては、「C」以上が実用可能である。
[評価基準]
A:吐出抜けが発生したノズル数が10個未満
B:吐出抜けが発生したノズル数が10個以上30個未満
C:吐出抜けが発生したノズル数が30個以上50個未満
D:吐出抜けが発生したノズル数が50個以上
【0117】
<間欠吐出安定性の評価>
前記インクジェットプリンターを用いて、付着量1.5g/mでベタ印字を行った。その後、所定の時間静止させた後に、ノズルチェックパターンを印字した。このとき、印字時における駆動パルス、及び非印字時における微駆動パルスとして、図3~6で示した駆動波形である波形1~4を用いた。それぞれの波形の駆動パルスの派高値に対する微駆動パルスの派高値の比率(微駆動パルスの派高値/駆動パルスの派高値)を、表1~4に示した。
吐出抜けノズル数を測定し、以下の評価基準に基づいて判断した。結果を表1~4に示した。なお、評価としては、下記評価基準で「C」以上が実用可能である。
[評価基準]
A:吐出抜けが発生したノズル数が、10個未満となる静止時間が6秒間以上
B:吐出抜けが発生したノズル数が、10個未満となる静止時間が4秒間以上6秒間未満
C:吐出抜けが発生したノズル数が、10個未満となる静止時間が2秒間以上4秒間未満
D:吐出抜けが発生したノズル数が、10個未満となる静止時間が2秒間未満
【0118】
<画質(にじみ)の評価>
印刷物の作製には、IPSiO GXe5500機(株式会社リコー製)を、布状の被印刷物を印刷できるように改造したインクジェットプリンターを用いた。当該インクジェットプリンターに搭載したインクタンクに実施例1~8、及び比較例1~6のインクを充填し、PRFL300(不織布基材、リンテックサインシステムズ社製)に対して、付着量1.5g/mでベタ画像の印字を行った。このとき、印字時における駆動パルス、及び非印字時における微駆動パルスとして、図3~6で示した駆動波形である波形1~4を用いた。それぞれの波形の駆動パルスの派高値に対する微駆動パルスの派高値の比率(微駆動パルスの派高値/駆動パルスの派高値)を、表1~4に示した。
印字後、80℃の乾燥機に3分間入れた後、取り出した印刷物の画像のムラの有無を観察した。結果を表1~4に示した。なお、評価としては、下記評価基準で「C」以上が実用可能である。
[評価基準]
A:画像から10cm未満離れた距離からの目視観察にて、画像ムラが観察できない
B:画像から10cm以上20cm未満離れた距離からの目視観察にて、画像ムラが観察できる
C:画像から20cm以上30cm未満離れた距離からの目視観察にて、画像ムラが観察できる
D:画像から30cm以上離れた距離からの目視観察にて、画像ムラが観察できる
【0119】
<耐擦過性の評価>
前記インクジェットプリンターを用いて、印刷メディア(リンテックサインシステム株式会社 PRFL300)上に付着量1.5g/mでインクを印刷し、印刷物を作製した。
印字後、80℃の乾燥機に3分間入れた後に取り出した前記印刷物を、学振試験機(型式AR-2、インテック株式会社製)を用いて金巾(綿3号、日本規格協会グループ製)を擦過させた。このとき、前記学振試験機の荷重は200gf、擦過回数は25回とした。擦過後に金巾へ転写した画像濃度を、測色計(X-Rite exact、エックスライト社製)を用いて以下の条件にて測定し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1~4に示した。なお、評価としては、下記評価基準で「C」以上が実用可能である。
―測定条件―
・照明条件:M0
・フィルター:UVカットなし
・濃度ステータス:ISO Status-T
・白色基準:絶対白色基準
・アパーチャ径:4mm
[評価基準]
A:転写ODが0.15未満
B:転写ODが0.15以上0.21未満
C:転写ODが0.21以上0.28未満
D:転写ODが0.28以上
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>直径20μm未満のノズル孔を有する吐出ヘッドを用いて、インクを吐出する吐出工程と、
前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与工程と、を含む印刷方法であって、
前記インクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、
前記樹脂粒子の含有量は、インク全量に対して5質量%以上12質量%未満であり、
前記疎水性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して20質量%以上40質量%未満であり、
前記インクの25℃における粘度が、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、
前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%であるとき、当該インクの粘度変化率が+20%以上+30%以下であることを特徴とする印刷方法である。
<2>前記疎水性有機溶剤の沸点が、150℃以上250℃未満である、前記<1>に記載の印刷方法である。
<3>前記インクに含まれる親水性溶剤の含有量は、インク全量に対して12質量%以下である、前記<1>から前記<2>のいずれかに記載の印刷方法である。
<4>前記樹脂粒子の含有量が、インク全量に対して5質量%以上11質量%以下である、前記<1>から前記<3>のいずれかに記載の印刷方法である。
<5>前記樹脂粒子の含有量が、インク全量に対して7質量%以上11質量%以下である、前記<4>に記載の印刷方法である。
<6>直径20μm未満のノズル孔を有する吐出ヘッドを用いて、インクを吐出する吐出手段と、
前記インクを吐出しないときに、当該インクに対して、当該インクを吐出しないようにして刺激を付与する刺激付与手段と、を含む印刷装置であって、
前記インクは、水、樹脂粒子、及び疎水性有機溶剤を含み、
前記樹脂粒子の含有量は、インク全量に対して5質量%以上12質量%未満であり、
前記疎水性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して20質量%以上40質量%未満であり、
前記インクの25℃における粘度が、4mPa・s以上8mPa・s以下であり、
前記インクの水分蒸発率がインク全量に対して5質量%であるとき、当該インクの粘度変化率が+20%以上+30%以下であることを特徴とする印刷装置である。
【0125】
前記<1>~<5>のいずれかに記載の印刷方法、及び前記<6>に記載の印刷装置によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0126】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ
(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【特許文献1】特開2016―169370号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6