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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030449
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】液面測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/56 20060101AFI20240229BHJP
   G01F 23/292 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01F23/56 A
G01F23/292 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133365
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 岳秀
【テーマコード(参考)】
2F013
2F014
【Fターム(参考)】
2F013AA01
2F013AB01
2F013BD00
2F013CA03
2F013CA17
2F013CB02
2F014AA17
2F014AC02
2F014FA01
(57)【要約】
【課題】比重の小さい極低温液体に対しても液面測定が可能な液面測定装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る液面測定装置1は、低温液化ガス2を貯液する貯槽3内の液面を測定するものであって、貯槽3内に設置され、筒状体からなり、貯槽3内の液流体と筒内の液流体が相互に移動できる底面穴17を有する消波管5と、消波管5内に配置されて、上部にレーザーを反射できるレーザー反射部25を有する中空の球体からなるフロート7と、貯槽3の上部に設けられてレーザー反射部25にレーザーを照射可能に配置されたレーザー式液面計9と、を有し、レーザー式液面計9が照射するレーザーをレーザー反射部25によって反射させることにより、貯槽3内の液面を測定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯液する貯槽内の液面を測定する液面測定装置であって、
前記貯槽内に設置され、筒状体からなり、前記貯槽内の液流体と筒内の液流体が相互に移動できる穴を有する消波管と、
該消波管内に配置されて、上部にレーザーを反射できるレーザー反射部を有する中空の球体からなるフロートと、
前記貯槽上部に設けられて前記レーザー反射部にレーザーを照射可能に配置されたレーザー式液面計と、を有し、
前記レーザー式液面計が照射するレーザーを前記レーザー反射部によって反射させることにより、前記貯槽内の液面を測定することを特徴とする液面測定装置。
【請求項2】
前記レーザー反射部が、常時上部になるようにフロートのバランスをとるバランス構造を有することを特徴とする請求項1記載の液面測定装置。
【請求項3】
前記消波管の上部が前記貯槽の上部に取外し可能に取り付けられ、前記貯槽の上部から取り出せるようになっていることを特徴とする請求項1記載の液面測定装置。
【請求項4】
前記消波管は、取出しの際に前記フロートを保持するフロート保持構造を有することを特徴とする請求項3記載の液面測定装置。
【請求項5】
前記消波管は貯槽下部に固定され、上部が前記貯槽と接触していないことを特徴とする請求項1記載の液面測定装置。
【請求項6】
前記消波管内にバッフルを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液面測定装置。
【請求項7】
前記消波管は、前記消波管内で気化したガスを抜くためのガス抜き穴を有し、該ガス抜き穴が前記バッフルの取り付け位置より上方に設けられていることを特徴とする請求項6記載の液面測定装置。
【請求項8】
貯槽内の低温液化ガスは、液体水素又は液体ヘリウムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液面測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガスを貯液する貯槽内の液面を測定する液面測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温液化ガスの液面を測定する方法としては、超伝導液面計や差圧式液面計を用いる方法がある。
超伝導液面計は超伝導線の電気抵抗の変化より液面の位置を算出するが、素子が長くなると液面の正確な特定が困難になる。
また、差圧式液面計をヘリウムに用いる場合、飽和液と飽和ガスの密度差が他の液体に比べて小さいため、貯槽内圧の変化による補正が必要となる。
さらに、上記のいずれの方法も、液面を間接的に測定するため、大型貯槽に用いた場合測定精度が低下するという問題があった。
【0003】
一方、液面を直接的に測定する方法としてレーザー距離計を用いるものもあり、例えば特許文献1、2に開示されている。
特許文献1に開示のものは、レーザー液面計、フロート、消波管を用いて液面を測定する方法である。
また、特許文献2に開示のものは、「低温液体の表面に浮く浮子と、浮子の鉛直上方に相対的に位置し、浮子までの距離を非接触で測定するセンサと、を備える」ものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5589248号公報
【特許文献2】特開2019-128200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示のものは、液面に浮かべたフロートにレーザーを投射することで、液面を測定するものである。
特許文献1に開示のものは、対象としている液体が水であり、フロートとして円板状のものが開示されている。
しかしながら、極低温液体であるヘリウムや水素は比重が小さいため、円板などの構造のフロートでは、十分な浮力を得るために必要な体積が大きくなる。これに伴い、それを囲っている消波管が大きくなることで、極低温貯槽に設置するのが困難になるという問題がある。さらに、消波管が大きくなれば侵入熱が大きくなり、極低温液体の蒸発量が増えるという問題も発生する。
【0006】
また、特許文献2に開示のものも、円板状の浮子であり、特許文献1と同様に、十分な浮力が得られないという問題がある。
また、特許文献2では、J字状のガイド部材を用いており、このガイド部材からの侵入熱により極低温液体の蒸発量が増えるという問題もある。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、比重の小さい極低温液体に対しても液面測定が可能な液面測定装置を提供することを目的としている。
また、侵入熱を抑制できる液面測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る液面測定装置は、低温液化ガスを貯液する貯槽内の液面を測定するものであって、前記貯槽内に設置され、筒状体からなり、前記貯槽内の液流体と筒内の液流体が相互に移動できる穴を有する消波管と、
該消波管内に配置されて、上部にレーザーを反射できるレーザー反射部を有する中空の球体からなるフロートと、
前記貯槽上部に設けられて前記レーザー反射部にレーザーを照射可能に配置されたレーザー式液面計と、を有し、
前記レーザー式液面計が照射するレーザーを前記レーザー反射部によって反射させることにより、前記貯槽内の液面を測定することを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記レーザー反射部が、常時上部になるようにフロートのバランスをとるバランス構造を有することを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記消波管の上部が前記貯槽の上部に取外し可能に取り付けられ、前記貯槽の上部から取り出せるようになっていることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記消波管は、取出しの際に前記フロートを保持するフロート保持構造を有することを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記消波管は貯槽下部に固定され、上部が前記貯槽と接触していないことを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記消波管内にバッフルを有することを特徴とするものである。
【0014】
(7)また、上記(6)に記載のものにおいて、前記消波管は、前記消波管内で気化したガスを抜くためのガス抜き穴を有し、該ガス抜き穴が前記バッフルの取り付け位置より上方に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
(8)また、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のものにおいて、貯槽内の低温液化ガスは、液体水素又は液体ヘリウムであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液面測定装置によれば、比重の小さい極低温液体に対しても液面測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る液面測定装置の説明図である。
図2】本実施の形態に係る液面測定装置における消波管及びその内部構造の説明図である。
図3】本実施の形態に係る液面測定装置の他の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る液面測定装置1は、低温液化ガス2を貯液する貯槽3内の液面を測定するものであって、図1に示すように、貯槽3内に設置された消波管5と、フロート7と、レーザー式液面計9と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0019】
<貯槽>
貯槽3は、低温液化ガス2を貯留するためのものであり、図1に示すように、図示しないヘリウム液化装置で液化された液体ヘリウム等の低温液化ガス2を貯槽3に供給するための供給配管11と、貯槽3に貯液されている低温液化ガス2を抜き出すための抜き出し配管13を備えている。
貯槽3の上部には、蓋体15が設けられており、蓋体15を開放することで消波管5を取り出すことができる。
【0020】
<消波管>
消波管5は、筒体からなり、貯槽3内の液流体と筒内の液流体が相互に移動できる底面穴17を有している。本実施の形態においては、底面穴17は、図2に示すように、消波管5の底部に設けられている。消波管5に底面穴17を設けることで、消波管5内外の液面を同じ高さに保つことができる。
【0021】
消波管5の上部が貯槽3の上部(例えば、貯槽3の蓋体15)に取外し可能に取り付けられ、貯槽3の上部から取り出せるようになっている。
【0022】
また、底面穴17の径は、フロート7の外径よりも小径に設定されている。これによって、貯槽3内の液面が所定の液面よりも低下した場合、フロート7が消波管5から脱落しない構造になっている。
また、この様な構造により、メンテナンス等により消波管5を貯槽3から抜き出す際、フロート7を貯槽3内に取り残すことなく、消波管5の底部に保持した状態で取り出すことができる。このように、フロート7の外径よりも小径の底面穴17を有する消波管5の底部は、消波管5の取出しの際にフロート7を保持するフロート保持構造として機能する。
なお、消波管5の底部は取外し可能にすることで、メンテナンス時にフロート7を取出し易くなる。
もっとも、消波管5の内外で液体流を相互に移動させるために設ける穴の位置は、消波管5の底部に限定されるものでない。
【0023】
消波管5には、図2に示すように、輻射低減用にバッフル板19を設けるのが好ましい。バッフル板19を設けることで、貯槽3上部からの輻射による極低温液体への侵入熱を低減することができる。
なお、消波管5にバッフル板19を低温液化ガス2の蒸発ガスの顕熱による冷却を行うことで、貯槽3上部からの輻射熱によって極低温液体が蒸発するのをより低減することができる。
また、消波管5には蒸発ガスを排気するための排気口21を設けるのが好ましいが、バッフル板19の冷却を効率よく行うため、排気口21の位置を、バッフル板19よりも上方に設けるのが好ましい。
さらに、輻射熱の侵入を防止するには、図2に示すように、バッフル板19を多層にするのがより好ましい。
なお、本発明のバッフル板19は、板形状のものに限定されず、輻射熱の侵入を効果的に防止できる形状であればよい。
【0024】
消波管5の一部または全部に、熱伝導度の低い樹脂などを用いることで、伝導による侵入熱を低減することもできる。
バッフル板19には、レーザー式液面計9(レーザー式距離計)の投光部、受光部に対応する大きさのレーザー通過穴23を設けることで、レーザーの通過の障害にならない。
【0025】
<フロート>
フロート7は、消波管5内に配置されて、上部にレーザー反射部25を有する中空の球体からなるものである。
フロート7は重量を小さくするためアルミニウムなど密度が小さく、極低温下でも靭性が大きい金属で製作されることが望ましい。
なお、フロート7の材質としては、アルミニウムの他には、マグネシウムが適用可能である。
【0026】
フロート7は中空の球体とする。製作時に中に封入された気体は、使用状態である極低温環境下において凝縮・凝固することにより、内部圧力が低くなり、大気圧によって押しつぶされる外圧がかかる。このため、フロート7は外圧に耐える強度を有する必要があるが、球構造であることにより、必要強度を維持する板厚を最小限にすることが可能になる。
また、フロート7が球形であることにより、消波管5にひっかかることなく、液面に合わせて円滑に上下することができる。
【0027】
フロート7の上部には、レーザー反射部25が設けられているが、レーザー反射部25はレーザーを反射できればよく、例えば反射板を設置しても良く、フロート7の上面を平面に加工しても良い。また、レーザーの発振部、受信部が機能するのであれば、レーザーを反射する構造は、平面でも、それ以外の構造、例えば、凹構造でも良い。
【0028】
レーザー反射部25が、常時上部になるようにフロート7のバランスをとるバランス構造を設けるのが望ましい。バランス構造としては、図2に示すように、フロート7下部に錘27を設置しても良いし、フロート7下部の少なくとも一部を厚肉としても良い。
また、フロート7は製造の過程で、内部に空気や多少の水蒸気(以後、残留ガス)が残留する場合がある。そのため、当該フロート7を液体水素や液体ヘリウムの液面測定に用いた場合、残留ガスがフロート7内の下部で液化、固化する場合があり、この液体や固体をフロート7の錘27として流用することもできる。
このように、フロート7の下部の錘27、フロート7の下部を厚肉にすること、残留ガスの液体や固体の存在等が、本発明のバランス構造となる。
【0029】
代表的な工業ガスの液密度と蒸発潜熱を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
フロート7が受ける浮力は液化ガスの密度に比例するので、液密度の小さい液体水素、液体ヘリウムを測定する際のフロート7が受ける浮力は小さい。この点、本発明のフロート7は、中空の球体であり小さい浮力でも浮くことができるため、液密度の小さい液化ガスに対しても適用可能である。
【0032】
なお、図2に示すように、フロート7の上部にレーザー反射部25(反射板)を設け、下部に錘27を設けた態様のもので、かつフロート7本体をアルミで製作した場合、液体ヘリウムに対しては直径100mm程度、肉厚0.5mmとすれば、十分な浮力を得ることを確認でき、また、実際に液面を測定することができた。
【0033】
<レーザー式液面計>
レーザー式液面計9は、貯槽3上部に設けられてフロート7のレーザー反射部25にレーザーを照射可能に配置されている。そして、レーザー式液面計9が照射するレーザーをレーザー反射部25によって反射させることにより、貯槽3内の液面を測定する。
レーザー式距離計は室温で機能するものを想定しているため、レーザー式距離計と貯槽3内部はレーザー光を通す透明板で隔てられている。
このようにすることで、レーザー式液面計9は、市販されている一般的な液面計を使用することができる。
【0034】
上記のように構成された本実施の形態に係る液面測定装置1においては、フロート7を中空の球体で形成しているので、比重の小さい極低温液体に対しても液面測定が可能となる。
また、消波管5の底面に底面穴17を設けることで、消波管5の内部と外部での液流体が相互に移動でき、消波管5内外の液面を同じ高さに保つことができるようにしているが、さらにこの底面穴17をフロート7の外径よりも小径に設定したことで、消波管5を貯槽3から抜き出す際に、底面がフロート保持手段として機能する。
【0035】
また、消波管5にバッフル板19を設けたことにより、貯槽3上部からの輻射による極低温液体への侵入熱を低減することができる。
さらに、消波管5にバッフル板19よりも上方に蒸発ガスの排気口21を設けたことで、バッフル板19の冷却を効率よく行うことができ、貯槽3上部からの輻射熱の侵入を効果的に防止できる。
このように、本実施の形態では、貯槽3上部からの侵入熱を可及的に小さくする工夫をしていることで、蒸発潜熱の小さい液体ヘリウム(表1参照)を貯液した貯槽3における液面測定にも好適である。
【0036】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る液面測定装置1を図3に示す。図3において、図1に示したものと同一及び対応する部分には同一の符号を付してある。
図3に示した液面測定装置1は、消波管5を貯槽3から抜き出す必要がない場合の態様であり、消波管5の下端部を貯槽3の底部に固定すると共に、消波管5の上端部は貯槽3上部に接触しないようにしている。
このようにすることで、消波管5の上部からの侵入熱をより低減することができる。
【0037】
なお、消波管5の上端面には、レーザーが通過すると共に蒸発ガスの排気口21として機能する上端面穴29が設けられている。そして、上端面穴29の径をフロート7の外径よりも小さくしている。これにより、貯槽3内の液面が想定以上に上昇した場合にも、フロート7が消波管5から抜け出すのを防止できる。
また、消波管5の下部側面には、消波管5の内外で液体流を相互に移動させるための穴31が設けられている。
【符号の説明】
【0038】
1 液面測定装置
2 低温液化ガス
3 貯槽
5 消波管
7 フロート
9 レーザー式液面計
11 供給配管
13 抜き出し配管
15 蓋体
17 底面穴
19 バッフル板
21 排気口
23 レーザー通過穴
25 レーザー反射部
27 錘
29 上端面穴
31 穴
図1
図2
図3