(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030541
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】フラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20240229BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B13/00 525D
H01B13/00 525Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133501
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中村 優斗
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 由香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良征
(72)【発明者】
【氏名】笠原 甫
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311CA01
5G311CB01
5G311CC01
5G311CD03
5G311CE04
(57)【要約】
【課題】厚さ寸法を小さくすることができるフラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法を提供する。
【解決手段】幅方向に配置された一対の通信用導体11,11と、一対の通信用導体11,11を覆う絶縁体(第1接着剤層12、第1絶縁体フィルム13、第2接着剤層14)と、絶縁体の厚さ方向の少なくとも一方の面側に配置されたシールド層15と、を備え、一対の通信用導体11,11は、それぞれ、0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法を有し、互いに0.5mm以上の間隔をおいて配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に配置された一対の通信用導体と、
一対の前記通信用導体を覆う絶縁体と、
前記絶縁体の厚さ方向の少なくとも一方の面側に配置されたシールド層と、を備え、
一対の前記通信用導体は、
それぞれ、0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法を有し、
互いに0.5mm以上の間隔をおいて配置されている
フラットケーブル。
【請求項2】
前記通信用導体は、矩形状の断面形状を有する単線、円形状の断面形状を有する単線、または、複数の素線を撚り合わせた撚り線である
請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
一対の前記通信用導体の幅方向外側のそれぞれには、グランド用導体が配置されている
請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
幅方向に配置された一対の前記通信用導体および一対の前記グランド用導体の幅方向外側には、他の導体が配置されている
請求項3に記載のフラットケーブル。
【請求項5】
シールド層は、幅方向全体のうち、少なくとも一対の通信用導体を覆う幅寸法を有している
請求項4に記載のフラットケーブル。
【請求項6】
幅方向に配置された一対の前記通信用導体および一対の前記グランド用導体の幅方向外側には、他の対をなす前記通信用導体が配置されている
請求項3に記載のフラットケーブル。
【請求項7】
前記シールド層と前記グランド用導体とを導通する導通部を備える
請求項3に記載のフラットケーブル。
【請求項8】
幅方向に複数対の前記通信用導体を備える
請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項9】
0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法を有する一対の通信用導体を、0.5mm以上の間隔をおいて配置する導体配置工程と、
前記導体配置工程において配置された一対の通信用導体を、絶縁体によって一体に覆う導体被覆工程と、
前記導体被覆工程において形成された絶縁体の少なくとも一方の面側にシールド層を形成するシールド形成工程と、を含む
フラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信信号を伝送するフラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフラットケーブルとしては、
図13に示すように、幅方向に間隔をおいて配置された複数の導体110と、複数の導体110を一体として覆う第1接着剤層120と、第1接着剤層120の厚さ方向の両側に配置された一対の第1絶縁体フィルム130と、一方の第1絶縁体フィルム130の外面側に配置された第2接着剤層140と、第2接着剤層140の外面側に配置されたシールド層150と、シールド層150の外面側に配置された第2絶縁体フィルム160と、を有しているフラットケーブル100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
高速通信に用いられるフラットケーブルは、伝送線路における特性インピーダンスが変化する部分において波形が乱れ、エラー信号の発生による通信性能の低下や、ノイズ源になる可能性があるため、このような通信性能の低下を抑制し、ノイズの発生を低減するために、複数の導体のそれぞれの全長にわたって特性インピーダンスを調整する必要がある。
【0004】
フラットケーブル100は、シールド層150として、第2絶縁体フィルム160に蒸着された金属、または、空気を含んだ状態に形成されたポリマ系シールド材を用いることによって、複数の導体110の特性インピーダンスを所定値に調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フラットケーブル100では、シールド層150としてポリマ系シールド材を用いた場合に、ポリマ系シールド材に空気を含まれているため、シールドとしての性能が低くなる可能性がある。また、従来のフラットケーブルでは、シールド層150として第2絶縁体フィルム160に蒸着された金属を用いた場合に、シールドとしての性能は高くなることが考えられるが、複数の導体110とシールド層との間における静電容量の影響を小さくするために、複数の導体110とシールド層150との間隔を大きくする必要があり、厚さ寸法を小さくすることが困難である。
【0007】
本発明の目的とするところは、厚さ寸法を小さくすることができるフラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラットケーブルは、幅方向に配置された一対の通信用導体と、一対の前記通信用導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体の厚さ方向の少なくとも一方の面側に配置されたシールド層と、を備え、一対の前記通信用導体は、それぞれ、0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法を有し、互いに0.5mm以上の間隔をおいて配置されている。
【0009】
また、本発明に係るフラットケーブルは、前記通信用導体が、矩形状の断面形状を有する単線、円形状の断面形状を有する単線、または、複数の素線を撚り合わせた撚り線である。
【0010】
また、本発明に係るフラットケーブルは、一対の前記通信用導体の幅方向外側のそれぞれに、グランド用導体が配置されている。
【0011】
また、本発明に係るフラットケーブルは、幅方向に配置された一対の前記通信用導体および一対の前記グランド用導体の幅方向外側に、他の導体が配置されている。
【0012】
また、本発明に係るフラットケーブルは、シールド層が、幅方向全体のうち、少なくとも一対の通信用導体を覆う幅寸法を有している。
【0013】
また、本発明に係るフラットケーブルは、幅方向に配置された一対の前記通信用導体および一対の前記グランド用導体の幅方向外側に、他の対をなす前記通信用導体が配置されている。
【0014】
また、本発明に係るフラットケーブルは、前記シールド層と前記グランド用導体とを導通する導通部を備えた。
【0015】
また、本発明に係るフラットケーブルは、幅方向に複数対の前記通信用導体を備えた。
【0016】
また、本発明に係るフラットケーブルの製造方法は、0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法を有する一対の通信用導体を、0.5mm以上の間隔をおいて配置する導体配置工程と、前記導体配置工程において配置された一対の通信用導体を、絶縁体によって一体に覆う導体被覆工程と、前記導体被覆工程において形成された絶縁体の少なくとも一方の面側にシールド層を形成するシールド形成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一対の通信用導体の間隔を0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体の影響を受けることがなく、通信用導体の幅寸法を0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体とシールド層との間隔を小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る通信用導体の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係るフラットケーブルの構成と特性インピーダンスとの関係を示すものであり、
図3(a)は、フラットケーブルの断面図であり、
図3(b)は、計算に用いるフラットケーブルの構造を示す表であり、
図3(c)は、通信用導体の幅寸法と、通信用導体とシールド層との距離と、の関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る導体間距離と特性インピーダンスとの関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明する断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第5実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第6実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第7実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第8実施形態に係るフラットケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1乃至
図4は、本発明の第1実施形態を示すものである。
図1はフラットケーブルの断面図であり、
図2は通信用導体の断面図であり、
図3はフラットケーブルの構成と特性インピーダンスとの関係を示すもので、
図3(a)はフラットケーブルの断面図、
図3(b)は計算に用いるフラットケーブルの構造を示す表、
図3(c)は通信用導体の幅寸法と、通信用導体とシールド層との距離と、の関係を示すグラフであり、
図4は導体間距離と特性インピーダンスとの関係を示すグラフである。
【0020】
本発明のフラットケーブル10は、例えば、車両本体側のステアリングコラムと、ステアリングホイール側のステアリングシャフトと、の連結部分に設けられる所謂ステアリングロールコネクタの構成部品として用いられるものである。フラットケーブル10は、車両本体側に設けられた機器と、ステアリングホイール側に設けられた機器と、の間で、電気信号を伝送するための通信回路の一部を構成している。通信回路は、例えば、CAN、LVDS、Ethernet等を構成するものであり、例えば、100Mbps以上の高速通信を行う。
【0021】
フラットケーブル10は、厚さ寸法が0.2mm以下の帯状に形成されている。フラットケーブル10は、
図1に示すように、幅方向に間隔をおいて配置された一対の通信用導体11,11と、一対の通信用導体11,11を一体として覆う絶縁体としての第1接着剤層12と、第1接着剤層12の厚さ方向の両側に配置された一対の絶縁体としての第1絶縁体フィルム13,13と、一方の第1絶縁体フィルム13の外面側に配置された絶縁体としての第2接着剤層14と、第2接着剤層14の外面側に配置されたシールド層15と、シールド層15の外面側に配置された第2絶縁体フィルム16と、を有している。一対の通信用導体11は、互いに例えば0.5mm以上の間隔をおいて配置され、差動伝送線路を構成している。
【0022】
通信用導体11は、幅寸法が0.1mm以上0.3mm以下であり、厚さ寸法が例えば35μmの断面矩形状の金属線である。通信用導体11は、例えば、銅、アルミニウム、銀、銅合金、アルミニウム合金、銀合金等の金属から形成されている。通信用導体11は、外面側にメッキ処理が施されていてもよい。通信用導体11は、例えば、導電率が10×10
6S/m以上であることが好ましい。また、通信用導体11は、幅寸法が0.1mm以上0.3mm以下であれば、
図2(a)に示す矩形状に限られず、
図2(b)に示す断面円形状であってもよいし、
図2(c)に示す複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
【0023】
第1接着剤層12および第2接着剤層14は、それぞれ、使用される環境に応じた耐熱性を有し、例えば、誘電率が3程度のポリエステル、ポリエチレン等の接着剤からなる。
【0024】
第1絶縁体フィルム13および第2絶縁体フィルム16は、それぞれ、使用される環境に応じた耐熱性を有し、例えば、誘電率が3程度のPET樹脂からなる。
【0025】
ここで、第1接着剤層12、第2接着剤層14および第1絶縁体フィルム13のそれぞれの厚さ寸法は、通信用導体11の特性インピーダンスを設定値に調整するために必要な通信用導体11とシールド層15と間隔に合うように決定される。
【0026】
シールド層15は、例えば、銅、アルミニウム、銀等の金属箔、または、第2絶縁体フィルム16に蒸着させた銅、アルミニウム、銀等の金属である。シールド層15は、例えば、導電率が10×106S/m以上であることが好ましい。また、シールド層15は、フラットケーブル10のノイズ耐性の観点および剛性の観点から、厚さ寸法が、0.1μm以上6μm以下であることが好ましい。
【0027】
以上のように構成されたフラットケーブル10において、一対の通信用導体11は、一対の通信用導体11,11の間隔および一対の通信用導体11,11とシールド層15との間隔を調整することによって、特性インピーダンスが例えば100Ωに調整される。
【0028】
ここで、
図3を用いて、計算によって取得される一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスZ0が約100Ωとなるフラットケーブル10の構造について説明する。
【0029】
図3(a)は、特性インピーダンスZ0を算出する際に用いたフラットケーブル10´の構造を示している。
図3(a)に示すフラットケーブル10´は、一対の通信用導体11´,11´と、一対の通信用導体11´,11´を一体に覆う接着剤層12´と、接着剤層12´の厚さ方向の一方の外面に配置された第1絶縁体フィルム13´と、接着剤層12´の厚さ方向の他方の外面に配置されたシールド層15´と、シールド層15´の外面に配置された第2絶縁体フィルム16´と、からなる。
図3(a)において、Wは一対の通信用導体11´,11´の幅寸法であり、Sは一対の通信用導体11´,11´の間隔であり、tは一対の通信用導体11´,11´の厚さ寸法であり、hは一対の通信用導体11´,11´とシールド層15´との間隔である。
【0030】
図3(b)は、一対の通信用導体11´の幅寸法Wが0.1mm、0.2mmおよび0.3mmのそれぞれの場合において、特性インピーダンスZ0が100Ωとなるフラットケーブル10´の構造を示している。ここで、εrは、接着剤層12´の誘電率であり、それぞれ3.4である。
図3(b)では、一対の通信用導体11´,11´の幅寸法Wが0.1mmの場合に、一対の通信用導体11´,11´とシールド層15´との間隔hを0.02mmとすることによって特性インピーダンスZ0が100Ωとなることを示している。また、
図3(b)では、一対の通信用導体11´,11´の幅寸法Wが0.2mmの場合に、一対の通信用導体11´,11´とシールド層15´との間隔hを0.055mmとすることによって特性インピーダンスZ0が100Ωとなることを示している。さらに、
図3(b)では、一対の通信用導体11´,11´の幅寸法Wが0.3mmの場合に、一対の通信用導体11´,11´とシールド層15´との間隔hが0.085mmとすることによって特性インピーダンスZ0が100Ωとなることを示している。
【0031】
図3(c)は、一対の通信用導体11´,11´の幅寸法Wと、一対の通信用導体11´,11´とシールド層15´との間隔hと、の関係を示すグラフである。
図3(c)によれば、一対の通信用導体11´,11´の幅寸法Wが小さくなるにしたがって、一対の通信用導体11´,11´の特性インピーダンスZ0を100Ωとするために必要となる、一対の通信用導体11´,11´とシールド層15´との間隔hが小さくなることがわかる。
【0032】
また、
図4を用いて、
図3(a)に示すフラットケーブル10´について、一対の通信用導体11´の幅寸法Wが0.1mm、0.2mmおよび0.3mmのそれぞれの場合における、一対の通信用導体11´,11´の間隔Sと、特性インピーダンスZ0と、の関係について説明する。
【0033】
図4では、一対の通信用導体11´の幅寸法Wの大きさに関わらず、一対の通信用導体11´,11´の間隔Sが小さい状態で一対の通信用導体11´,11´の特性インピーダンスZ0が100Ωより小さく、間隔Sが大きくなるにしたがって特性インピーダンスZ0が100Ωの近傍の一定の値に収束することを示している。
【0034】
このように、本実施形態のフラットケーブル10によれば、幅方向に配置された一対の通信用導体11,11と、一対の通信用導体11,11を覆う絶縁体(第1接着剤層12、第1絶縁体フィルム13、第2接着剤層14)と、絶縁体の厚さ方向の少なくとも一方の面側に配置されたシールド層15と、を備え、一対の通信用導体11,11は、それぞれ、0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法を有し、互いに0.5mm以上の間隔をおいて配置されている。
【0035】
これにより、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスZ0を所定値に設定する際における通信用導体11とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0036】
また、通信用導体11は、矩形状の断面形状を有する単線、円形状の断面形状を有する単線、または、複数の素線を撚り合わせた撚り線である、ことが好ましい。
【0037】
これにより、隣り合う通信用導体11との間で影響を及ぼし合うことがないため、特性インピーダンスの安定化を図ることが可能となる。
【0038】
<第2実施形態>
図5および
図6は、本発明の第2実施形態を示すものである。
図5はフラットケーブルの断面図であり、
図6はフラットケーブルの製造方法を説明する図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0039】
本実施形態のフラットケーブル10は、一対の通信用導体11,11の幅方向両外側のそれぞれに、通信用導体11と0.5mm以上の間隔をおいて、グランド用導体11aが配置されている。一対のグランド用導体11a,11aは、それぞれ、0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法を有している。
【0040】
以上のように構成されたフラットケーブル10では、幅方向に配置された一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aによって、GSSG構造の差動伝送線路が構成される。フラットケーブル10のグランド用導体11aは、外来ノイズの影響を遮断するシールドとして機能するため、一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスの変動が抑制される。
【0041】
ここで、
図6を用いて、フラットケーブル10の製造方法について説明する。
【0042】
まず、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aを、それぞれ間隔をおいて配置する(導体配置工程)。
【0043】
次に、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aの厚さ方向両側から接着剤層を有する第1絶縁体フィルム13によって挟んだ状態として熱ラミネート加工を施し、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aを、絶縁体としての一対の第1絶縁体フィルム13および第1接着剤層12によって一体に覆う(導体被覆工程)。
【0044】
最後に、一方の第1絶縁体フィルム13の外面に、接着剤層およびシールド層15を有する第2絶縁体フィルム16を、熱ラミネート加工によって貼り付け、一方の第1絶縁体フィルム13の外面側にシールド層15を形成する(シールド形成工程)。
【0045】
このように、本実施形態のフラットケーブル10の製造方法によれば、0.1mm以上0.3mm以下の幅寸法Wを有する一対の通信用導体11,11を、0.5mm以上の間隔Sをおいて配置する導体配置工程と、導体配置工程において配置された一対の通信用導体11,11を、絶縁体(第1接着剤層12、第1絶縁体フィルム13、第2接着剤層14)によって一体に覆う導体被覆工程と、導体被覆工程において形成された絶縁体の少なくとも一方の面側にシールド層15を形成するシールド形成工程と、を含む。
【0046】
これにより、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体11とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0047】
また、一対の通信用導体11,11の幅方向外側のそれぞれには、グランド用導体11aが配置されている、ことが好ましい。
【0048】
これにより、幅方向の外側に配置されたグランド用導体11aが、外来ノイズの影響を遮断するシールドとして機能するため、一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。
【0049】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態を示すものであって、フラットケーブルの断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0050】
本実施形態のフラットケーブル10は、第2実施形態と同様に、一対のグランド用導体11a,11aを有している。また、本実施形態のフラットケーブル10は、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aの幅方向外側に、その他の導体として、電力および電気信号を伝送するためのその他の導電回路の一部を構成する導電回路用導体11bを有している。導電回路用導体11bは、一対のグランド用導体11a,11aに対して0.5mm以上の間隔をおいて配置される。導電回路用導体11bの幅寸法は、0.1mm以上0.3mm以下に限られるものではなく、0.3mmよりも大きくてもよい。
【0051】
以上のように構成されたフラットケーブル10において、グランド用導体11aの幅方向の外側に、0.5mm以上の間隔をおいて導電回路用導体11bが配置されているため、導電回路用導体11bが一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスに影響を及ぼすことはない。
【0052】
このように、本実施形態のフラットケーブル10によれば、第1実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体11とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0053】
また、幅方向に配置された一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aの幅方向外側には、他の導体としての導電回路用導体11bが配置されている、ことが好ましい。
【0054】
これにより、通信回路以外の他の用途の電気信号や電力の伝送を行うことができるので、一のフラットケーブル10によって複数の機器同士を接続することが可能となる。
【0055】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態を示すものであって、フラットケーブルの断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0056】
本実施形態のフラットケーブル10は、第2実施形態と同様に、一対のグランド用導体11a,11aを有している。また、本実施形態のフラットケーブル10は、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aの幅方向外側に、他の対をなす通信用導体11,11を有している。他の対をなす通信用導体11,11は、一対のグランド用導体11a,11aに対して0.5mm以上の間隔をおいて配置される。
【0057】
以上のように構成されたフラットケーブル10において、グランド用導体11aの幅方向の外側に、0.5mm以上の間隔をおいて対をなす通信用導体11,11が配置されているため、他の通信用導体11,11が一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスに影響を及ぼすことはない。
【0058】
このように、本実施形態のフラットケーブルによれば、第1実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体11とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0059】
また、幅方向に配置された一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aの幅方向外側には、他の対をなす通信用導体11,11が配置されている、ことが好ましい。
【0060】
これにより、一のフラットケーブル10によって複数の通信回路を構成することが可能となる。
【0061】
<第5実施形態>
図9は、本発明の第5実施形態を示すものであって、フラットケーブルの断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0062】
本実施形態のフラットケーブル10は、第2実施形態と同様に、一対のグランド用導体11a,11aを有している。また、本実施形態のフラットケーブル10は、第3実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aの幅方向外側に導電回路用導体11bを有している。また、本実施形態のフラットケーブル10は、厚さ方向の一方の面において、幅方向全体のうち、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aを覆う幅寸法を有するシールド層15aを有している。
【0063】
以上のように構成されたフラットケーブル10において、シールド層15aによって一対の通信用導体11,11が覆われることになるため、一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスの変動が抑制される。
【0064】
このように、本実施形態のフラットケーブルによれば、第1実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体11とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0065】
また、シールド層15aは、幅方向全体のうち、少なくとも一対の通信用導体11,11を覆う幅寸法を有している、ことが好ましい。
【0066】
これにより、一対の通信用導体11,11をシールド層15aによって確実に覆うことが可能となるので、特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。
【0067】
<第6実施形態>
図10は、本発明の第6実施形態を示すものであって、フラットケーブルの断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0068】
本実施形態のフラットケーブル10は、第2実施形態と同様に、一対のグランド用導体11a,11aを有している。また、本実施形態のフラットケーブル10は、第3実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11および一対のグランド用導体11a,11aの幅方向外側に導電回路用導体11bを有している。また、本実施形態のフラットケーブル10は、厚さ方向の一方の面において、幅方向全体のうち、一対の通信用導体11,11のみを覆う幅寸法を有するシールド層15bを有している。
【0069】
以上のように構成されたフラットケーブル10において、シールド層15bによって一対の通信用導体11,11が覆われることになるため、一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスの変動が抑制される。
【0070】
このように、本実施形態のフラットケーブルによれば、第1実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体11とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0071】
また、シールド層15aは、幅方向全体のうち、少なくとも一対の通信用導体11,11を覆う幅寸法を有している、ことが好ましい。
【0072】
これにより、一対の通信用導体11,11をシールド層15aによって確実に覆うことが可能となるので、特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。
【0073】
<第7実施形態>
図11は、本発明の第7実施形態を示すものであって、フラットケーブルの断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0074】
本実施形態のフラットケーブル10は、第2実施形態と同様に、一対のグランド用導体11a,11aを有している。また、本実施形態のフラットケーブル10は、一対のグランド用導体11a,11aのそれぞれと、シールド層15と、を導通する導通部15cを有している。導通部15cは、例えば、一対のグランド用導体11a,11aとシールド層15との間を厚さ方向に延在する孔を形成し、形成した孔に導電性の接着剤を封入によって構成する。
【0075】
このように、本実施形態のフラットケーブルによれば、第1実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体11とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0076】
また、シールド層15とグランド用導体11aとを導通する導通部15cを備える、ことが好ましい。
【0077】
これにより、一対の通信用導体11,11が、一対のグランド用導体11a,11a、シールド層15および導通部15cによって囲まれることになるため、より確実に外来ノイズの影響を遮断することが可能となり、一対の通信用導体11,11の特性インピーダンスの変動を抑制する効果の向上を図ることが可能となる。導通部15cを備えるフラットケーブル10は、例えば、1Gbps以上の高速通信において特に有効である。
【0078】
<第8実施形態>
図12は、本発明の第8実施形態を示すものであって、フラットケーブルの断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0079】
本実施形態のフラットケーブル10は、複数対の通信用導体11,11が幅方向に0.5mm以上の間隔をおいて配置されている。複数対の通信用導体11,11は、それぞれ差動伝送線路を構成している。
【0080】
以上のように構成されたフラットケーブル10において、差動伝送線路を構成する一対の通信用導体11,11は、他の伝送線路と比べてノイズ耐性を有しているため、グランド用導体11aを用いることなく、対をなす通信用導体11,11を幅方向に複数対配置しても通信性能を維持することが可能である。
【0081】
このように、本実施形態のフラットケーブルによれば、第1実施形態と同様に、一対の通信用導体11,11の間隔Sを0.5mm以上とすることで、隣り合う通信用導体11の影響を受けることがなく、通信用導体11の幅寸法Wを0.1mm以上0.3mm以下とすることで、特性インピーダンスを所定値に設定する際における通信用導体とシールド層15との間隔hを小さくすることが可能となり、厚さ寸法を小さくすることが可能となる。また、通信用導体11の幅寸法を小さくすることによって、フラットケーブル10の柔軟性を向上させることが可能となり、スペースが狭い箇所における配線が可能となる。
【0082】
また、幅方向に複数対の通信用導体11,11を備える、ことが好ましい。
【0083】
これにより、グランド用導体11aを用いることなく、複数対の通信用導体11,11を配置することによって、幅方向の大型化を抑制することが可能となる。
【0084】
尚、前記実施形態では、フラットケーブル10の厚さ方向の一方の面側のみにシールド層を配置したものを示したが、これに限られるものではない。シールド層は、フラットケーブル10の厚さ方向の両方の面側に配置してもよい。
【0085】
また、前記実施形態では、対をなす通信用導体11,11の幅方向両側にグランド用導体11a,11aを配置したものを示したが、これに限られるものではない。グランド用導体11a,11aは、少なくとも、対をなす通信用導体11,11の幅方向一方に配置されていれば、配置された方向からの外来ノイズの影響を遮断することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 フラットケーブル
11 通信用導体
11a グランド用導体
11b 導電回路用導体
12 第1接着剤層
13 第1絶縁体フィルム
14 第2接着剤層
15,15a,15b シールド層
15c 導通部
16 第2絶縁体フィルム