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特開2024-30546組成物、及び硬化物で被覆された基板の製造方法
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  • 特開-組成物、及び硬化物で被覆された基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030546
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】組成物、及び硬化物で被覆された基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 85/00 20060101AFI20240229BHJP
   C08G 79/00 20060101ALI20240229BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20240229BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20240229BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240229BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240229BHJP
【FI】
C08L85/00
C08G79/00
C08K5/05
C09D1/00
C09D7/20
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133507
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢一
(72)【発明者】
【氏名】原口 咲栄子
(72)【発明者】
【氏名】伊熊 直彦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J030
4J038
【Fターム(参考)】
4J002CH022
4J002CQ031
4J002EC066
4J002EH116
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002HA05
4J002HA06
4J030CA02
4J030CB03
4J030CC02
4J030CC04
4J030CC05
4J030CC06
4J030CC10
4J030CC11
4J030CC15
4J030CC16
4J030CC17
4J030CC24
4J030CC27
4J030CD11
4J030CG01
4J030CG04
4J038HA161
4J038JA17
4J038JA20
4J038JA25
4J038JA27
4J038JC38
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA17
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】優れたギャップフィル性を有する組成物、及び該組成物の硬化物で被覆された基板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属アルコキシド化合物(A)、及び溶媒(S)を含む組成物において、金属アルコキシド化合物(A)としての下記式(a1)で表される金属アルコキシド等からなる群より選択される少なくとも1種の金属成分、及び主溶媒(S1)と、分子量が185以上である高分子量アルコール(S2)とを含む溶媒(S)を用いる。
MRa1 a2 m-n (a1)
(式(a1)中、Mは、m価の金属原子であり、Ra1は、アルコキシ基であり、Ra2は、加水分解により前記金属原子に結合する水酸基を生成させない1価の有機基であり、nは、3以上m以下の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルコキシド化合物(A)、及び溶媒(S)を含み、
前記金属アルコキシド化合物(A)が、下記式(a1)で表される金属アルコキシド、該金属アルコキシドの加水分解物、及び該加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を含み、
前記溶媒(S)が、主溶媒(S1)と、高分子量アルコール(S2)を含み、
前記高分子量アルコール(S2)の分子量が、185以上である、組成物。
MRa1 a2 m-n (a1)
(式(a1)中、Mは、m価の金属原子であり、Ra1は、アルコキシ基であり、Ra2は、加水分解により前記金属原子に結合する水酸基を生成させない1価の有機基であり、nは、3以上m以下の整数である。)
【請求項2】
前記Mが、Zr、Ti、Hf、又はNbである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコキシ基の炭素原子数が1以上5以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記高分子量アルコール(S2)の含有量が、前記金属アルコキシド化合物(A)100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
表面に、溝、又はホールを有する基材の表面を、前記溝、又は前記ホールを充填しつつ被覆する硬化物を形成するために用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記溝の開口部の最小幅、又は前記ホールの開口部のフェレ径の最小値をWとし、前記溝、又は前記ホールの深さをDとする場合に、前記Wが5nm以上100nm以下であり、且つアスペクト比D/Wが1以上40以下である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を基材上に塗布する、塗布工程と、
前記基材上に塗布された前記組成物を加熱する、加熱工程と、を含む、硬化物で被覆された基板の製造方法。
【請求項8】
前記基材が、前記硬化物で被覆される表面に溝、又はホールを有し、
前記塗布工程において、前記溝、又は前記ホールに前記組成物が充填され、
前記加熱工程において、前記組成物を加熱することにより、前記溝、又は前記ホールを充填しつつ前記基材の表面を被覆する硬化物が形成される、請求項7に記載の硬化物で被覆された基板の製造方法。
【請求項9】
前記溝の開口部の最小幅、又は前記ホールの開口部のフェレ径の最小値をWとし、前記溝、又は前記ホールの深さをDとする場合に、前記Wが5nm以上100nm以下であり、且つアスペクト比D/Wが1以上40以下である、請求項8に記載の硬化物で被覆された基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、及び硬化物で被覆された基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物膜は様々な優れた物性を示すことが知られており、その特性を活かして、透明導電膜、光学薄膜等、幅広い分野において使用されている。このような金属酸化物膜の製造方法としては、金属アルコキシドを含む組成物を塗布した後に加熱して金属酸化物を生成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-500151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溝やホール等の凹部を有する基材上に金属酸化物膜を形成する場合、金属酸化物膜を形成するための組成物には、基材上の凹部を埋めるギャップフィル性に優れることが要求される。しかしながら、従来の組成物では、凹部内に金属酸化物を充填できたとしても、凹部内に充填された金属酸化物内にボイドが発生しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、優れたギャップフィル性を有する組成物、及び該組成物の硬化物で被覆された基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、所定の金属アルコキシド化合物及び溶媒を含む組成物において、所定の分子量を有する高分子量アルコールを含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
[1]金属アルコキシド化合物(A)、及び溶媒(S)を含み、
前記金属アルコキシド化合物(A)が、下記式(a1)で表される金属アルコキシド、該金属アルコキシドの加水分解物、及び該加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を含み、
前記溶媒(S)が、主溶媒(S1)と、高分子量アルコール(S2)を含み、
前記高分子量アルコール(S2)の分子量が、185以上である、組成物。
MRa1 a2 m-n (a1)
(式(a1)中、Mは、m価の金属原子であり、Ra1は、アルコキシ基であり、Ra2は、加水分解により前記金属原子に結合する水酸基を生成させない1価の有機基であり、nは、3以上m以下の整数である。)
【0008】
[2]前記Mが、Zr、Ti、Hf、又はNbである、[1]に記載の組成物。
【0009】
[3]前記アルコキシ基の炭素原子数が1以上5以下である、[1]又は[2]に記載の組成物。
【0010】
[4]前記高分子量アルコール(S2)の含有量が、前記金属アルコキシド化合物(A)100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の組成物。
【0011】
[5]表面に、溝、又はホールを有する基材の表面を、前記溝、又は前記ホールを充填しつつ被覆する硬化物を形成するために用いられる、[1]~[4]のいずれか1項に記載の組成物。
【0012】
[6]前記溝の開口部の最小幅、又は前記ホールの開口部のフェレ径の最小値をWとし、前記溝、又は前記ホールの深さをDとする場合に、前記Wが5nm以上100nm以下であり、且つアスペクト比D/Wが1以上40以下である、[5]に記載の組成物。
【0013】
[7][1]~[6]のいずれか1項に記載の組成物を基材上に塗布する、塗布工程と、
前記基材上に塗布された前記組成物を加熱する、加熱工程と、を含む、硬化物で被覆された基板の製造方法。
【0014】
[8]前記基材が、前記硬化物で被覆される表面に溝、又はホールを有し、
前記塗布工程において、前記溝、又は前記ホールに前記組成物が充填され、
前記加熱工程において、前記組成物を加熱することにより、前記溝、又は前記ホールを充填しつつ前記基材の表面を被覆する硬化物が形成される、[7]に記載の硬化物で被覆された基板の製造方法。
【0015】
[9]前記溝の開口部の最小幅、又は前記ホールの開口部のフェレ径の最小値をWとし、前記溝、又は前記ホールの深さをDとする場合に、前記Wが5nm以上100nm以下であり、且つアスペクト比D/Wが1以上40以下である、[8]に記載の硬化物で被覆された基板の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れたギャップフィル性を有する組成物、及び該組成物の硬化物で被覆された基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例3の金属酸化物膜のSEM断面観測結果を示す図である。
図2】比較例1の金属酸化物膜のSEM断面観測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<組成物>
組成物は、金属アルコキシド化合物(A)、及び溶媒(S)を含む。金属アルコキシド化合物(A)は、式(a1)で表される金属アルコキシド、該金属アルコキシドの加水分解物、及び該加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を含む。溶媒(S)は、主溶媒(S1)と、高分子量アルコール(S2)を含む。高分子量アルコール(S2)の分子量は、185以上である。かかる組成物は、優れたギャップフィル性を有する。
【0019】
このような効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではない。本発明者らは、次のようなメカニズムにより上記の効果が得られると推定している。
まず、本発明者らは、従来の金属酸化物膜形成用の組成物を用いる場合に、凹部に充填された金属酸化物内におけるボイドの発生は、凹部の開口部近傍において急速に金属酸化物が生成することに起因すると考えた。凹部の開口部近傍において、金属酸化物が急速に生成すると、凹部の開口部が金属酸化物により封鎖される。そうすると、金属酸化物を形成する際に凹部の内部で発生した揮発分が凹部内に滞留してボイドが発生する。
ここで、金属アルコキシド(A)による金属酸化物膜の形成は、金属アルコキシド(A)の加水分解により生成した水酸基間で脱水縮合反応が生じることで進行する。所定の分子量を有する高分子量アルコールを組成物に含有させると、上記水酸基及び高分子量アルコールの脱水縮合反応と、逆反応である、金属アルコキシドの加水分解物と高分子量アルコールとの縮合物の加水分解反応との平衡が生じる。そして、金属アルコキシドの加水分解物と高分子量アルコールとの縮合物の加水分解速度は、金属メトキシドのような金属アルコキシドの加水分解物と低分子量アルコールとの縮合物の加水分解速度よりも遅い。その結果、加熱による金属酸化物の生成反応に、金属アルコキシドの加水分解物がある程度の時間をかけて少量ずつ供給される。これにより、凹部の開口部近傍で金属酸化物が生成する前に凹部内の揮発分が抜ける。このため、ボイドの発生が抑制されると推察される。
【0020】
[金属アルコキシド化合物(A)]
金属アルコキシド化合物(A)は、下記式(a1)で表される金属アルコキシド、該金属アルコキシドの加水分解物、及び該加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を含む。上記金属成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
MRa1 a2 m-n (a1)
(式(a1)中、Mは、m価の金属原子であり、Ra1は、アルコキシ基であり、Ra2は、加水分解により前記金属原子に結合する水酸基を生成させない1価の有機基であり、nは、3以上m以下の整数である。)
【0021】
(式(a1)で表される金属アルコキシド)
Mとしては、例えば、亜鉛、イットリウム(Y)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ケイ素、アルミニウム(Al)、アンチモン、錫(Sn)、インジウム、タングステン、銅、バナジウム(V)、クロム、ニオブ(Nb)、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム(Ga)、タリウム、スカンジウム、マグネシウム、ビスマス(Bi)が挙げられる。なかでも、Zr、Ti、Hf、Nb、Al、Ga、Y、Bi、Sn、V、又はTaが好ましく、Zr、Ti、Hf、又はNbがより好ましい。なお、しばしば、半金属元素として、金属元素と区別されることがある、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、及びテルルについても、本出願では金属元素であるとする。
【0022】
a1としてのアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数が1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0023】
a2の1価の有機基としては、加水分解により金属原子に結合する水酸基を生成させない基であれば特に限定されない。具体的には、Ra2としては、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数2以上5以下のアルケニル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、及び炭素原子数7以上12以下のアラルキル基等が挙げられる。
【0024】
nは、好ましくはmである。
【0025】
式(a1)で表される金属アルコキシドの好適な具体例としては、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、及びジルコニウムテトラペントキシド等のジルコニウムテトラアルコキシド;チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、及びチタンテトラペントキシド等のチタンテトラアルコキシド;ハフニウムテトラメトキシド、ハフニウムテトラエトキシド、ハフニウムテトラプロポキシド、ハフニウムテトライソプロポキシド、ハフニウムテトラブトキシド、及びハフニウムテトラペントキシド等のハフニウムテトラアルコキシド;ニオブペンタメトキシド、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタプロポキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタブトキシド、及びニオブペンタペントキシド等のニオブペンタアルコキシドが挙げられる。
【0026】
(式(a1)で表される金属アルコキシドの加水分解物、該加水分解物の縮合物)
金属アルコキシド化合物(A)は、式(a1)で表される金属アルコキシドの加水分解物、又は該加水分解物の縮合物であってもよい。このような加水分解物や、縮合物が、アルコキシ基を有さない場合がある。本出願において、式(a1)で表される金属アルコキシドの加水分解物、又は該加水分解物の縮合物であって、アルコキシ基を有さない化合物を、便宜的に金属アルコキシド化合物(A)として扱う。これらは、式(a1)で表される金属アルコキシドを、無触媒、酸又はアルカリ触媒の存在下で、加水分解、又は加水分解縮合することにより、製造できる。
【0027】
上記金属アルコキシド化合物(A)の使用量は特に限定されない。上記金属アルコキシド化合物(A)の使用量は、組成物における溶媒(S)以外の成分の質量の合計に対して、例えば、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0028】
[溶媒(S)]
溶媒(S)は、主溶媒(S1)と、高分子量アルコール(S2)を含む。組成物が、溶媒(S)として高分子量アルコール(S2)を含むことにより、組成物のギャップフィル性が優れる。
【0029】
(高分子量アルコール(S2))
高分子量アルコール(S2)の分子量は、185以上である。高分子量アルコール(S2)は、少なくとも1つの水酸基を有する化合物である。高分子量アルコール(S2)の分子量の上限は、特に限定されないが、例えば、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1500以下である。
【0030】
高分子量アルコール(S2)が有する水酸基の数は、1、又は2以上であってよい。水酸基の数は、好ましくは1以上4以下、より好ましくは1、又は2、さらに好ましくは1である。
【0031】
高分子量アルコール(S2)としては、分子量が185以上であるアルコールであれば特に限定されない。高分子量アルコール(S2)としては、例えば、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールのモノエステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。ポリアルキレングリコールは、H-(-O-R-)-OHで表される化合物である。Rはアルキレン基である。nはアルキレンオキシ基(-O-R-)の繰り返し数である。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪族アルコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0032】
脂肪族アルコールは、脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールのいずれであってもよい。脂肪族飽和アルコールの炭素原子数は、12以上50以下が好ましく、12以上30以下がより好ましい。脂肪族飽和アルコールは、直鎖状又は分岐状の飽和アルコールであってよい。脂肪族飽和アルコールとしては、具体的には、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-イコサノール、2-n-オクチル-1-ドデカノール、2-メチル-1-ドデカノール、2-エチル-1-ドデカノール、2-n-プロピル-1-ドデカノール、2-n-ブチル-1-ドデカノール、2-n-ペンチル-1-ドデカノール、2-n-ヘキシル-1-ドデカノール、2-n-ヘプチル-1-ドデカノール等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、アルキレン基の炭素原子数が2以上4以下のポリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルが挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。オキシアルキレン基の繰り返し数は、例えば、好ましくは1以上50以下、より好ましくは5以上30以下、さらに好ましくは15以上30以下である。アルキル基の炭素原子数は、例えば、好ましくは1以上30以下であり、より好ましくは10以上20以下である。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステルが挙げられる。なかでも、ソルビタントリ脂肪酸エステルが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルにおける脂肪族アシル基を与える脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とのいずれであってもよい。脂肪酸の炭素原子数は1以上30以下が好ましく、10以上25以下がより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
高分子量アルコール(S2)の含有量は、金属アルコキシド化合物(A)100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下がより好ましく、4質量部以上6質量部がさらに好ましい。上記数値範囲内であると、優れたギャップフィル性が得られやすい。
【0036】
(主溶媒(S1))
組成物は、塗布性や粘度の調整の目的で、主溶媒(S1)を含有する。主溶媒(S1)としては、典型的には高分子量アルコール(S2)以外の有機溶媒が用いられる。主溶媒(S1)としての有機溶媒の種類は、組成物に含まれる成分を均一に溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。
【0037】
主溶媒(S1)として使用し得る有機溶媒の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、アセチルアセトン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。例えば、得られる組成物の分散安定性が向上しやすいことから、アセチルアセトンを他の溶媒と併用してもよい。
【0038】
主溶媒(S1)としては、加熱前の金属酸化物の析出が生じにくい点から、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、他のエーテル類、ケトン類、乳酸アルキルエステル類、他のエステル類、アミド類が好ましく、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ケトン類、乳酸アルキルエステル類、他のエステル類、アミド類がより好ましく、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ケトン類がさらに好ましい。
また、主溶媒(S1)としては、水酸基を有する溶媒が好ましい。水酸基を有する溶媒としては、上記の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、乳酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0039】
主溶媒(S1)の質量における、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、及び芳香族炭化水素類からなる群より選択される少なくとも1種の質量の比率は、加熱前の金属酸化物の析出が生じにくい点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0040】
組成物における溶媒(S)の使用量は特に限定されない。組成物の塗布性の点等から、溶媒(S)の使用量は、組成物の質量に対して、例えば、好ましくは30質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上98質量%以下である。
【0041】
[その他の成分]
組成物には、必要に応じて、界面活性剤(表面調整剤)、分散剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、無機フィラー、有機フィラー、架橋剤、酸発生剤等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知の化合物を用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0042】
[用途]
組成物は、ギャップフィル性に優れる。したがって、組成物は、例えば、表面に、溝、又はホールを有する基材の表面を、溝、又はホールを充填しつつ被覆する硬化物を形成するために好適に用いられる。具体的には、溝の開口部の最小幅、又はホールの開口部のフェレ径の最小値をWとし、溝、又はホールの深さをDとする時に、Wが5nm以上100nm以下であり、且つアスペクト比D/Wが1以上40以下である場合により好適に用いられる。
【0043】
<基板の製造方法>
硬化物で被覆された基板の製造方法は、組成物を基材上に塗布する、塗布工程と、基材上に塗布された組成物を加熱する、加熱工程と、を含む。
【0044】
基材は、硬化物で被覆される表面に溝、又はホールを有し、塗布工程において、溝、又はホールに組成物が充填され、加熱工程において、組成物を加熱することにより、溝、又はホールを充填しつつ基材の表面を被覆する硬化物が形成されることが好ましい。
【0045】
基材が、金属膜、金属炭化物膜、金属酸化物膜、金属窒化物膜、又は金属酸窒化物膜を含むのが好ましい。基材を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金等が挙げられる。これらの金属の中では、ケイ素、ゲルマニウム、及びガリウムを含むことが好ましい。
【0046】
溝の開口部の最小幅、又はホールの開口部のフェレ径の最小値をWとし、溝、又はホールの深さをDとする場合、Wが5nm以上100nm以下であり、且つアスペクト比D/Wが1以上40以下であることが好ましい。つまり、D/Wが1以上40以下である場合に、Dは、5nm以上4000nm以下であることが好ましい。
Wは、10nm以上でも、20nm以上でも、30nm以上であってもよい。Wは、90nm以下でも、80nm以下でも、70nm以下であってもよい。
D/Wは、1.5以上であっても、2以上であっても、3以上であってもよい。D/Wは、35以下であっても、30以下であっても、20以下であっても、10以下であってもよい。
前述の組成物を用いると、D/Wが3以上、特に4以上である場合であっても、基材が有する溝、又はホールを、ボイドを発生させることなく良好に硬化物で充填しやすい。
【0047】
塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置、スピンコーター)、ディップコーター、スプレーコーター、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。また、組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって組成物の塗布を行って、所望の形状にパターニングしてもよい。
【0048】
次いで、必要に応じて、溶媒等の揮発成分を除去して塗膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、ホットプレートにて80℃以上140℃以下、好ましくは90℃以上130℃以下の温度にて60秒以上150秒以下の範囲内の時間乾燥する方法が挙げられる。ホットプレートによる加熱の前に、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥を行ってもよい。
【0049】
このようにして塗膜を形成した後、塗膜を加熱する。加熱を行う際の温度は特に限定されず、200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましい。上限は適宜設定すればよく、例えば、400℃以下でよく、好ましくは300℃以下である。加熱時間は、典型的には、30秒以上20分以下が好ましく、5分以上15分以下がより好ましい。加熱工程は、単一の加熱温度下で行われてもよいし、複数の加熱温度下で段階的に行われてもよい。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
[組成物の調製]
(金属アルコキシド化合物(A))
・Zr(OBu):ジルコニウムテトラブトキシド(80%ブタノール溶液)
・Ti(OiPr):チタンテトライソプロポキシド
・Hf(OiPr):ハフニウムテトライソプロポキシド
・Nb(OBu):ニオブペンタブトキシド
【0052】
(主溶媒(S1))
・PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・Acac:アセチルアセトン
・1-オクタノール(分子量130)
・ラウリン酸(分子量200)
【0053】
(高分子量アルコール(S2))
・1-ドデカノール(分子量186)
・nOD(分子量298):2-n-オクチル-1-ドデカノール
・SPAN85(分子量957):下記式で表されるソルビタントリオレエート
【化1】
・PEGMCE(分子量1255):下記式で表される化合物
【化2】
【0054】
それぞれ、表1に示す種類及び質量の、金属アルコキシド化合物(A)、主溶媒(S1)、及び高分子量アルコール(S2)を均一に混合し、Φ0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、実施例1~7の組成物を調製した。
それぞれ、表1に示す種類及び質量の、金属アルコキシド化合物(A)、及び主溶媒(S1)を均一に混合し、Φ0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、比較例1~3の組成物を調製した。
なお、表1において、括弧内の数字は、固形分の質量を表す。
【0055】
[ギャップフィル性]
平行に配置された多数の直線状のトレンチを主面に有する6インチのシリコンウエハ上に、得られた組成物を滴下し、750rpmで30秒間、スピンコートを行った。トレンチの開口部の最小幅が40nmであり、トレンチの深さが200nmであった。その後、ホットプレートを用い、100℃で120秒間ウエハを加熱し、プリベークを行った。次いで、250℃で10分間ウエハを加熱し、ポストベークを行って、金属酸化物膜を得た。金属酸化物膜を備えるウエハのトレンチの短手方向の断面をSEMで観測し、ギャップフィル性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。また、実施例3及び比較例1の金属酸化物膜のSEM断面観測結果をそれぞれ図1及び2に示す。
A:ボイドを発生することなく金属酸化物がトレンチの底部まで埋め込まれていた
B:トレンチの底部まで金属酸化物が充填されていないか、トレンチ内に、ボイドの発生が観察された
【0056】
【表1】
【0057】
表1から分かる通り、実施例では、ギャップフィル性に優れているのに対し、比較例では、ギャップフィル性に劣っていることが確認された。
比較例2からは、分子量が185未満のアルコールを用いてもギャップフィル性が改良されないことが分かる。
比較例3からは、分子量が185以上の脂肪族カルボン酸を用いてもギャップフィル性が改良されないことが分かる。
比較例1~3のいずれについてのギャップフィル性の評価においても、金属酸化物がトレンチの底部まで充填されていたが、トレンチ内でのボイドの発生が観察された。
図1
図2