(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003064
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】アクリル樹脂粉体、樹脂組成物、アクリル樹脂粉体を含むホットメルト接着剤組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 265/06 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
C08F265/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186912
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2022512074の分割
【原出願日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2020061289
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】岡 和行
(57)【要約】
【課題】従来に比べて高い初期接着強度を示し、かつ長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤に好適なアクリル樹脂粉体を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)単量体単位を含む重合体(A)と、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の各単量体単位を含む重合体(B)との多段重合体(G)を含むアクリル樹脂粉体であって、前記多段重合体(G)のガラス転移温度が50℃以上であり、フローテスター昇温法により測定される軟化温度が150℃~200℃であるアクリル樹脂粉体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)単量体単位を含む重合体(A)と、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の各単量体単位を含む重合体(B)との多段重合体(G)を含むアクリル樹脂粉体であって、
前記多段重合体(G)のガラス転移温度が50℃以上であり、
フローテスター昇温法により測定される軟化温度が150℃~200℃であるアクリル樹脂粉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂粉体、樹脂組成物、アクリル樹脂粉体を含むホットメルト接着剤組成物、及びその製造方法に関する。
本願は、2020年3月30日に、日本に出願された特願2020-061289号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、室温では固体又は半固体であり、加熱により溶融して流動性を持つようになる接着剤である。特に、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを主成分とするものを反応性ホットメルト接着剤といい、その多くは湿気硬化性ウレタン接着剤であり、通常、ポリオール成分とイソシアネート成分を縮合重合させた、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー形態のものである。
【0003】
これらの反応性ホットメルト接着剤は、加熱溶融状態で基材へ塗布され、冷却固化した後に、イソシアネート基と水との化学的架橋反応による湿気硬化が起き、強靭な、耐熱性及び耐薬品性を持つ皮膜(接着層)を形成する。
【0004】
従来の反応性ホットメルト接着剤は、湿気硬化により化学的架橋が形成された際には優れた接着性を発現する。しかし、反応性ホットメルト接着剤は、塗布直後は化学的架橋が殆ど起こらない。また、加熱溶融直後では接着剤の温度も高いので、熱可塑性ポリマーの特性上流動性があるため、基材への初期接着強度が充分でない。なお、初期接着強度とは、基材へ塗布した後、湿気硬化する前の接着強度のことを意味する。初期接着強度を高くする手段として、熱可塑性樹脂をホットメルト接着剤に配合し、初期接着力を向上させる方法が知られている。また、初期強度を高めるために熱可塑性樹脂を配合すると、オープンタイムが短くなることが知られている。なお、オープンタイムとは、基材へ塗布した後、接着剤が冷却固化するまでの可使時間のことを意味する。
【0005】
特許文献1には、ポリアルキレングリコールへの高い溶解性を有するアクリル樹脂粉体を用いたウレタンホットメルト接着剤組成物が開示されている。さらに、特許文献2には、比較的ガラス転移温度の低いアクリル重合体を含むアクリル樹脂粉体を用いることで、比較的長いオープンタイムを有するウレタンホットメルト接着剤組成物が開示されている。しかし、市場では工程短縮化を目的に高い初期強度と長いオープンタイムを両立できるウレタンホットメルト接着剤用アクリル樹脂の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2018/012234号
【特許文献2】国際公開2019/188930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題を解決すべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、従来に比べて高い初期接着強度を示し、かつ長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤に好適なアクリル樹脂粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[33]のいずれかの態様を含む。
[1](メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)単量体単位を含む重合体(A)と、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の各単量体単位を含む重合体(B)との多段重合体(G)を含むアクリル樹脂粉体であって、
前記多段重合体(G)のガラス転移温度が50℃以上であり、
フローテスター昇温法により測定される軟化温度が150℃~200℃であるアクリル樹脂粉体。
[2]前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)におけるアルキル基の炭素数が4~8であり、前記メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)におけるアルキル基の炭素数が4~8である、[1]に記載のアクリル樹脂粉体。
[3](メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)を含む単量体混合物(a)を重合して得られる重合体(A)を含む分散液存在下で、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)を含む単量体混合物(b)を重合して得られる多段重合体(G)を含み、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)におけるアルキル基の炭素数が4~8であり、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)におけるアルキル基の炭素数が4~8であり、
前記多段重合体(G)のガラス転移温度が50℃以上であり、
前記多段重合体(G)の質量平均分子量が1万以上30万以下であり、
フローテスター昇温法により測定される軟化温度が150℃~200℃であり、
アセトンに可溶なアクリル樹脂粉体。
[4]一次粒子径の体積平均粒子径が0.1~10μmである、[1]~[3]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[5]二次粒子の体積平均粒子径が20~100μmである、[1]~[4]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[6]前記単量体混合物(a)がさらにその他共重合可能な単量体を含み、
前記単量体混合物(a)中、前記単量体混合物(a)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が0~60質量%であり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)の含有量が40~100質量%であり、前記その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%である、[3]に記載のアクリル樹脂粉体。
[7]前記重合体(A)の溶解性パラメータ(SPA)が19.50(J/cm3)1/2以上20.1(J/cm3)1/2以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[8]前記単量体混合物(b)がさらにその他共重合可能な単量体を含み、
前記単量体混合物(b)中、前記単量体混合物(b)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が50~90質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の含有量が10~50質量%であり、前記その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%である、[3]に記載のアクリル樹脂粉体。
[9]前記多段重合体(G)を構成する単量体単位の総質量に対し、前記重合体(A)に由来する単量体単位の含有量が10~80質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[10]前記多段重合体(G)のガラス転移温度は50~85℃が好ましく、58~80℃がより好ましく、65~75℃がさらに好ましい、[1]~[9]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[11]前記重合体(B)のガラス転移温度は55~100℃が好ましく、65~95℃がより好ましく、70~97℃がさらに好ましい、[1]~[10]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[12]前記重合体(A)の溶解性パラメータ(SPA)は19.50(J/cm3)1/2以上20.1(J/cm3)1/2以下が好ましく、19.50(J/cm3)1/2以上20.0(J/cm3)1/2以下がより好ましく、19.60(J/cm3)1/2以上20.0(J/cm3)1/2以下がさらに好ましい、[1]~[11]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[13]前記多段重合体(G)の軟化温度は、150℃~200℃が好ましく、155℃~190℃がより好ましく、155℃~185℃がさらに好ましい、[1]~[12]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[14]本願明細書に記載の方法でアセトン溶解性を評価した際の、アセトン不溶分が1質量%以下である、[1]~[13]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[15]前記単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)の含有量は、40~100質量%が好ましく、45~100質量%がより好ましく、50~100質量%がさらに好ましい、[1]~[14]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[16]前記単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が50~90質量%が好ましく、55~90質量%がより好ましく、65~90質量%がさらに好ましい、[3]~[15]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[17]前記単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の含有量が10~50質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましく、10~35質量%がさらに好ましい、[3]~[16]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[18]前記多段重合体(G)を構成する単量体単位を100質量%とした場合、前記重合体(A)に由来する単量体単位の含有量が10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい、[1]~[17]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[19]一次粒子の体積平均粒子径が、0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~2μmがさらに好ましい、[1]~[18]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[20]二次粒子の体積平均粒子径が20~100μmであることが好ましく、20~80μmであることがより好ましい、[1]~[19]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
[21]前記アクリル系樹脂粉体を、ポリアルキレングリコールに溶解させて樹脂組成物とし、前記樹脂組成物を含むホットメルト接着剤を調整したときに、下記条件で測定される初期接着強度x(kPa)、及びオープンタイムy(分)が以下の関係式(3)及び(4)を満たすことが好ましく、
y>-0.325x+124・・・(式(3))
y>10 ・・・・(式(4))
前記初期接着強度xは200kPa以上であることが好ましく、300kPa以上であることがより好ましく、400kPa以上であることが更に好ましく、
式(3)は、y>-0.325x+130が好ましく、y>-0.325x+140がより好ましく、y>-0.325x+150がさらに好ましく、
式(4)は60>y>10が好ましく、40>y>10がより好ましく、20>y>10がさらに好ましい、[1]~[21]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体。
【0009】
[22][1]~[21]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体を、ポリアルキレングリコールに溶解させて得られる樹脂組成物。
[23]前記ポリアルキレングリコールの数平均分子量が200~5000である、[22]に記載の樹脂組成物。
[24]更にポリエステルポリオールを含む、[22]または[23]に記載の樹脂組成物。
[25]更にイソシアネートを含む、[22]~[24]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0010】
[26][22]~[25]のいずれかに記載の樹脂組成物から形成されるホットメルト接着剤。
[27]アクリル樹脂粉体、ポリアルキレングリコール、ポリエステルポリオール及びイソシアネートを含む樹脂組成物から形成されるホットメルト接着剤であって、下記条件で測定される初期接着強度x(kPa)、及び下記条件で測定されるオープンタイムy(分)が以下の関係式(3)及び(4)を満たすホットメルト接着剤。
y>-0.325x+124 ・・・(式(3))
y>10 ・・・(式(4))
(初期接着強度x)
幅1.7cm、長さ7.5cm、厚さ1.5mmの木製の平棒を2本用意し、その一方に、120℃で加熱溶融したホットメルト接着剤を1.5cm×1.7cmの面積に塗布し、もう一本の木製平棒を重ね合わせダブルクリップで挟み、5分静置してホットメルト接着剤を冷却固化させる。静置後ダブルクリップを外し、下記の引張試験機及び測定条件で引張せん断試験を行い、初期接着強度xを測定する。
引張試験機:精密万能試験機(製品名:AGS-X、島津製作所製)
測定条件 :引張速度 5.0mm/min
チャック間距離 50mm
(オープンタイムy)
乾燥させた幅1.7cm、長さ7.5cm、厚さ1.5mmの木製の平棒に、加熱溶解させたホットメルト接着剤を塗布し、ギアオーブンにて120℃に加熱する。その後室温下にて1分間隔で、指加圧を用いてクラフト紙片を張り付けて、速やかにクラフト紙片を剥がすことを繰り返す。ホットメルト接着剤を平棒に塗布したときから、クラフト紙片を剥がしたときに接着剤面に紙の繊維が残らなくなるまでの時間をオープンタイムyとする。
【0011】
[28](メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)を含む単量体混合物(a)、及び前記単量体混合物(a)100質量部に対して0.1~3質量部の連鎖移動剤を重合して得られる重合体(A)を含む分散液(A1)に、
メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)を含む単量体混合物(b)、及び前記単量体混合物(b)100質量部に対して0.1~3質量部の連鎖移動剤を滴下し重合することで、多段重合体(G)を含む分散液(G1)を得る工程(I)、及び、
前記多段重合体(G)の分散液(G1)を噴霧乾燥することによってアクリル樹脂粉体を得る工程(II)とを含み、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)におけるアルキル基の炭素数が4~8であり、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)におけるアルキル基の炭素数が4~8であり、
フローテスター昇温法により測定される軟化温度が150℃~200℃であるアクリル樹脂粉体の製造方法。
[29]前記単量体混合物(a)がさらにその他共重合可能な単量体を含み、
前記単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が0~60質量%であり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)の含有量が40~100質量%であり、前記その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%である、[28]に記載のアクリル樹脂粉体の製造方法。
[30]前記単量体混合物(b)がさらにその他共重合可能な単量体を含み、
前記単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が50~90質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の含有量が10~50質量%であり、前記その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%である、[28]又は[29]に記載のアクリル樹脂粉体の製造方法。
[31]前記多段重合体(G)を構成する単量体単位の総質量に対し、前記重合体(A)に由来する単量体単位の含有量が10~80質量%である、[28]~[30]のいずれかに記載のアクリル樹脂粉体の製造方法。
[32][28]~[31]のいずれかに記載の製造方法で得られたアクリル樹脂粉体をポリアルキレングリコールに溶解させる工程(III)を含む、樹脂組成物の製造方法。
[33][28]~[31]のいずれかに記載の製造方法で得られたアクリル樹脂粉体を、ポリアルキレングリコール及びポリエステルポリオールに溶解させ樹脂組成物を得る工程(III)、および前記樹脂組成物にイソシアネートを混合し、ウレタンプレポリマーを得る工程(IV)を含むホットメルト接着剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアクリル樹脂粉体は、従来に比べて高い初期接着強度を示し、かつ長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤に好適なアクリル樹脂粉体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例及び比較例における初期接着強度とオープンタイムとの相関を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
≪アクリル樹脂粉体≫
本発明のアクリル樹脂粉体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)単量体単位を含む重合体(A)と、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の各単量体単位を含む重合体(B)との多段重合体(G)を含むアクリル樹脂粉体であって、前記多段重合体(G)のガラス転移温度が50℃以上であり、フローテスター昇温法により測定される軟化温度が150℃~200℃である。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)におけるアルキル基の炭素数は4~8であることが好ましく、前記メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)におけるアルキル基の炭素数は4~8であることが好ましい。
本発明のアクリル樹脂粉体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)を含む単量体混合物(a)を重合して得られる重合体(A)を含む分散液存在下で、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)を含む単量体混合物(b)を重合して得られる多段重合体(G)を含み、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)におけるアルキル基の炭素数が4~8であり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)におけるアルキル基の炭素数が4~8であり、前記多段重合体(G)のガラス転移温度が50℃以上であり、質量平均分子量が1万以上30万以下であり、フローテスター昇温法により測定される軟化温度が150℃~200℃であり、アクリル樹脂粉体がアセトンに可溶なものである。
本明細書において、「多段重合体」とは、重合体(A)存在下に重合体(B)を合成して得られた、重合体(A)と重合体(B)とを含む樹脂混合物を意味する。例えば、多段重合体は、重合体(A)がコア部、重合体(B)がシェル部を形成しているコアシェル構造を有していても良い。
ここで、ガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)は下記のようにFOXの式(式(1))から求める値である。本明細書において、Tgの単位は「℃」である。具体的には、単独の単量体のみからなる重合体(単独重合体)である場合は、高分子学会編「高分子データハンドブック」等に記載されている標準的な分析値を採用することができ、n種類の単量体を重合して得られる共重合体である場合は、各単量体の単独重合体のTgから算出したものとみなすことができる。
【0015】
1/(273+Tg)=Σ(Wn/(273+Tgn)) ・・・(式(1))
式中、Wnは単量体nの質量分率を表し、Tgnは単量体nのホモポリマーのガラス転移温度(℃)を表す。ここで、質量分率は、全単量体の仕込み量の合計に対する単量体nの仕込み量の割合である。
SPAすなわち前記重合体(A)の溶解度パラメータ(SP値)は重合体(A)を構成するn個の単量体単位i(i=1~n)のSp値(Sp(ui))を下記式(2)に代入して求められる値である。Sp(ui)は、Polymer Engineering and Science,Vol.14,147(1974)に記載されているFedorsの方法にて求めることができる。
【0016】
【0017】
(式(2)中、Miは単量体単位i成分のモル分率を示し、ΣMi=1である。)
下記表1に、代表的な単独重合体のTgの文献値およびSp値(Sp(ui))を示す。
【0018】
【0019】
表中の略称は以下の単量体を示す。
・「MMA」:メタクリル酸メチル
・「n-BMA」:メタクリル酸n-ブチル
・「i-BMA」:メタクリル酸i-ブチル
・「t-BMA」:メタクリル酸t-ブチル
・「n-BA」:アクリル酸n-ブチル
・「MAA」:メタクリル酸
・「2-HEMA」:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0020】
本発明の多段重合体(G)のガラス転移温度は50℃以上であり、58℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましい。多段重合体(G)のTgが50℃以上であれば、ホットメルト接着剤の初期強度が向上する。具体的には、多段重合体(G)のガラス転移温度は50~85℃が好ましく、58~80℃がより好ましく、65~75℃がさらに好ましい。また、アクリル系単量体混合物(b)を重合して得られる重合体(B)のTgは55℃以上であり、65℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。重合体(B)のTgが55℃以上であれば、ホットメルト接着剤の初期接着強度が向上し、更にアクリル樹脂粉体同士の熱融着などによるブロッキングを抑制することができる。具体的には、重合体(B)のTgは55~100℃が好ましく、65~95℃がより好ましく、70~97℃がさらに好ましい。
また、本発明のアクリル系単量体混合物(a)を重合して得られる重合体(A)の溶解性パラメータ(SPA)は19.50(J/cm3)1/2以上20.1(J/cm3)1/2以下が好ましく、19.50(J/cm3)1/2以上20.0(J/cm3)1/2以下がより好ましく、19.60(J/cm3)1/2以上20.0(J/cm3)1/2以下がさらに好ましい。SPAがこの範囲にある重合体を用いることで、ポリアルキレングリコールに対する溶解性が向上し、ホットメルト接着剤のオープンタイムが長く、作業性が向上する。
ここで、軟化温度は、フローテスター昇温法により測定することができる。フローテスターの設定条件としては、ノズルの形状、荷重、昇温速度等が挙げられる。本発明では、島津製作所(株)製フローテスターCFT-100を用いて測定する。1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を軟化温度とする。
多段重合体(G)の軟化温度は、150℃~200℃が好ましく、155℃~190℃がより好ましく、155℃~185℃がさらに好ましい。軟化温度が150℃以上であれば、ホットメルト接着剤の初期接着強度が高くなり、185℃以下であればホットメルト接着剤のオープンタイムが長くなり作業性に優れる。200℃以上の軟化温度を有するアクリル樹脂を用いると、オープンタイムが短くなり、取扱いが困難となる。この軟化温度は、多段重合体(G)のTgや質量平均分子量および重合体(A)に由来する単量体単位の含有量を適宜設定することによって、調整することができる。
【0021】
また、本発明に用いることができるアクリル樹脂粉体はアセトンに可溶であることが必要である。なお、「アクリル樹脂粉体はアセトンに可溶である」とは、下記の方法に従い判断することができる。
【0022】
50mlのサンプル瓶にアクリル樹脂粉体を1.0g精秤[W0]し、アセトン40mlを加えて1日以上かけて分散させる。その後、遠心分離機(高速冷却遠心機、製品名:CR22N/CR21N、日立工機(株)製)を用いて、温度:2℃、回転数:12,000rpmで60分間遠心分離を行い、可溶分と不溶分を分離し、不溶分に再びアセトンを加え分散させ、同様に遠心分離を行い、可溶分と不溶分に完全に分ける。不溶分は遠心分離後、窒素雰囲気下のオーブンで60℃に加熱してアセトンを除去し、60℃で真空乾燥し、不溶分の秤量[W1]を行い、その結果をアセトン不溶分の割合、すなわちゲル分率とする。ゲル分率は下記式によって計算する。
ゲル分率(質量%)=[W1]/[W0]×100
[W1];アセトン不溶分量(g)
[W0];50mlサンプル瓶に精秤したアクリル樹脂粉体量(g)
なお、ゲル分率が1質量%以下であれば、アセトンに可溶であるとする。
【0023】
(共重合体組成)
本発明のアクリル樹脂粉体を製造する際に含めることができる、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)において、アルキル基の炭素数が4~8である。これらの単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等を挙げることができる。なかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)において、アルキル基は第1級アルキル基が好ましく、直鎖の第1級アルキル基がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)において、アルキル基は第1級アルキル基が好ましく、分岐鎖を有する1級アルキル基がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸とメタクリル酸の総称である。なお、アルキル基は、置換基を有していてもよく有していなくてもよい。置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子等が挙げられ、アルキルアミノ基、カルボニル基は有さないことが好ましい。
【0024】
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb))以外の単量体としては、例えば、炭素数1~3のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等);炭素数9以上の長鎖アルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸ステアリル等);(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸-2-サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸-2-ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有単量体;更に(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;更に(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル等のカルボニル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N-ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
【0025】
単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が0~60質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)の含有量が40~100質量%であり、その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%であることが好ましい。
上記範囲内であれば、重合体(A)のTgおよびSPAを調節しやすくなり、長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤を得ることができる。
【0026】
単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)の含有量は、40~100質量%が好ましく、45~100質量%がより好ましく、50~100質量%がさらに好ましい。
単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、その他共重合可能な単量体の含有量は、0~10質量%が好ましい。
なお、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)及びその他共重合可能な単量体の合計含有量は、単量体混合物(a)の総質量に対して100質量%を超えない。
【0027】
単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が50~90質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の含有量が10~50質量%であり、その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%であることが好ましい。
単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、その他共重合可能な単量体の含有量は、0~10質量%が好まししい。
なお、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)及びその他共重合可能な単量体の合計含有量は、単量体混合物(b)の総質量に対して100質量%を超えない。
【0028】
また、単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が55~90質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の含有量が10~45質量%であり、その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%であることがより好ましい。
さらに、単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量が65~90質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の含有量が10~35質量%であり、その他共重合可能な単量体の含有量が0~10質量%であることがより好ましい。
上記範囲内であれば、重合体(B)のガラス転移温度を55℃以上にしやすくなり、ホットメルト接着剤の初期接着強度が向上し、更にアクリル樹脂粉体同士の熱融着などによるブロッキングを抑制することができる。
【0029】
多段重合体(G)を構成する単量体単位を100質量%とした場合、重合体(A)に由来する単量体単位の含有量が10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。重合体(A)に由来する単量体単位の含有量が10質量%以上であればホットメルト接着剤のオープンタイムが長くなる。重合体(A)に由来する単量体単位の含有量が80質量%以下であれば初期接着強度が向上し、更にアクリル樹脂粉体同士の熱融着などによるブロッキングを抑制することができる。重合体(B)に由来する単量体単位の含有量は20~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましい。
【0030】
本発明のアクリル樹脂粉体は、単量体混合物(a)を重合して得られる重合体(A)分散液存在下で、単量体混合物(b)を重合して得られる多段重合体(G)を含む。このとき、多段重合体(G)は、上記重合体(A)と上記重合体(B)の機能を損なわない範囲において、単量体混合物(a)重合後に、または単量体混合物(b)の重合後に、他の単量体混合物を加えて重合して得られる多段重合体とすることも可能である。
【0031】
また、上記単量体混合物(a)の重合に先立って、上記重合体(A)及び重合体(B)の機能を損なわない範囲において、他の単量体混合物(s)の重合を行ってもよい。具体的には、重合体(A)は、単量体混合物(s)を重合して得られる重合体分散液(S)存在下で、単量体混合物(a)を重合して得られる。その他単量体混合物(s)としては、炭素数1~4のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化により得られる(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることが、疎水性・親水性のバランスが適切となるため、好ましい。また、他の単量体混合物(s)の使用量(仕込み量)は、多段重合体(G)の合成に使用する全単量体の使用量に対し、0~10質量%が好ましい。ただし、多段重合体(G)の合成に使用する単量体混合物(a)、単量体混合物(b)、及び単量体混合物(s)の合計使用量は、100質量%を超えない。
【0032】
(質量平均分子量)
本発明で用いることができる多段重合体(G)の質量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ)法により求めることができる標準ポリスチレン換算の値である。本発明のアクリル樹脂粉体に含まれる多段重合体(G)の質量平均分子量は1万以上30万以下である。
前記多段重合体(G)の質量平均分子量は2万以上20万以下であることが好ましい。多段重合体(G)の質量平均分子量が1万以上であれば、接着剤の初期接着強度が良好な傾向となる。多段重合体(G)の質量平均分子量が30万以下であれば、樹脂組成物及び接着剤の粘度が抑えられ、更にホットメルト接着剤のオープンタイムは長くなる。
【0033】
(一次粒子の体積平均粒子径(一次粒子径))
本発明に用いることができるアクリル樹脂粉体は、その一次粒子の体積平均粒子径(一次粒子径)が、0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~2μmがさらに好ましい。
ここで一次粒子とは、アクリル樹脂粉体を構成する最小単位の重合体粒子を指す。一次粒子の体積平均粒子径が10μm以下であると、粒子の表面積が大きくなり、ポリアルキレングリコール等の媒体に溶解性が良好となる。また、0.1μm以上であると粉体とした場合の二次粒子の体積平均粒子径の熱融着が抑えられポリアルキレングリコール等の媒体への分散性が良好となる。
本発明において、一次粒子の体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、製品名:LA-960)を用いて、多段重合体(G)分散液の粒子径を測定し、平均した値である。
【0034】
(二次粒子の体積平均粒子径)
本発明で用いることができるアクリル樹脂粉体は、その二次粒子の体積平均粒子径が20~100μmであることが好ましく、20~80μmであることがより好ましい。
二次粒子とは、一次粒子が多数集合した凝集粒子を指す。20μm以上であれば、粉立ちが抑えられるため取り扱いが容易となる。また、100μm以下であれば、ポリアルキレングリコールへの溶解性が良好となる。
本発明において、二次粒子の体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、製品名:LA-960)を用いて、アクリル樹脂粉体の粒子径を測定し、平均した値である。
【0035】
(アクリル系樹脂粉体に含まれるもの)
本発明で用いることができるアクリル樹脂粉体は、必要に応じて、消泡剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
本発明のアクリル系樹脂粉体は、本発明のアクリル系樹脂粉体を、ポリアルキレングリコールに溶解させて樹脂組成物とし、前記樹脂組成物を含むホットメルト接着剤を調整したときに、下記条件で測定される初期接着強度x(kPa)、及びオープンタイムy(分)が以下の関係式(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
y>-0.325x+124・・・(式(3))
y>10 ・・・・(式(4))
式(3)について、この範囲において高い初期接着強度を示し、かつ長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤に好適なアクリル樹脂粉体を提供することができる。また初期接着強度xは200kPa以上であることが好ましく、300kPa以上であることがより好ましく、400kPa以上であることが更に好ましい。
式(3)は、y>-0.325x+130が好ましく、y>-0.325x+140がより好ましく、y>-0.325x+150がさらに好ましい。
式(4)について、作業時間を確保することができるため、オープンタイムyを10分より長くすることが好ましく、また工程の時間を短縮化できるため、オープンタイムyを60分未満とすることが好ましい。
式(4)は60>y>10が好ましく、40>y>10がより好ましく、20>y>10がさらに好ましい。
【0037】
(初期接着強度x)
幅1.7cm、長さ7.5cm、厚さ1.5mmの木製の平棒を2本用意し、その一方に、120℃で加熱溶融したホットメルト接着剤を1.5cm×1.7cmの面積に塗布し、もう一本の木製平棒を重ね合わせダブルクリップで挟み、5分静置してホットメルト接着剤を冷却固化させる。静置後ダブルクリップを外し、下記の引張試験機及び測定条件で引張せん断試験を行い、初期接着強度xを測定する。
引張試験機:精密万能試験機(製品名:AGS-X、島津製作所製)
測定条件 :引張速度 5.0mm/min
チャック間距離 50mm
(オープンタイムy)
乾燥させた幅1.7cm、長さ7.5cm、厚さ1.5mmの木製の平棒に、加熱溶解させたホットメルト接着剤を塗布し、ギアオーブンにて120℃に加熱する。その後室温下にて1分間隔で、指加圧を用いてクラフト紙片を張り付けて、速やかにクラフト紙片を剥がすことを繰り返す。ホットメルト接着剤を平棒に塗布したときから、クラフト紙片を剥がしたときに接着剤面に紙の繊維が残らなくなるまでの時間をオープンタイムyとする。
【0038】
≪樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、本発明のアクリル樹脂粉体を、ポリアルキレングリコールに溶解させて得られる。本発明の樹脂組成物は、ホットメルト接着剤に含めることができる。
【0039】
(ポリアルキレングリコール)
ポリアルキレングリコール成分としては、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体等の2種以上のグリコール単位を有するポリアルキレングリコール、グリセリン等の多官能アルコールを用いた分岐状ポリアルキレングリコールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ポリアルキレングリコールの数平均分子量は200~5000が好ましく、400~3000がより好ましい。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が200以上であると、ホットメルト接着剤の硬化後の接着強度が良好となる。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が5000以下であると、樹脂組成物の粘度が低く、塗工性が良好となる。
本明細書において、数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ)法で測定できる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物を含むホットメルト接着剤を調整したときに、上記条件で測定される初期接着強度x(kPa)、及びオープンタイムy(分)が以下の関係式(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
y>-0.325x+124・・・(式(3))
y>10 ・・・・(式(4))
式(3)について、この範囲において高い初期接着強度を示し、かつ長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤に好適なアクリル樹脂粉体を提供することができる。また初期接着強度xは200kPa以上であることが好ましく、300kPa以上であることがより好ましく、400kPa以上であることが更に好ましい。
式(3)は、y>-0.325x+130が好ましく、y>-0.325x+140がより好ましく、y>-0.325x+150がさらに好ましい。
式(4)について、作業時間を確保することができるため、オープンタイムyを10分より長くすることが好ましく、また工程の時間を短縮化できるため、オープンタイムyを60分未満とすることが好ましい。
式(4)は60>y>10が好ましく、40>y>10がより好ましく、20>y>10がさらに好ましい。
【0042】
(ポリエステルポリオール)
本発明の樹脂組成物は更に、ポリエステルポリオールを含有してもよい。ポリエステルポリオールとして、結晶性ポリエステルポリオール及び非晶性ポリエステルポリオールが知られており、それらの具体例としては、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオールが挙げられる。結晶性ポリエステルポリオールと非晶性ポリエステルポリオールとは、DSCでも容易に区別される。結晶性ポリエステルポリオールの融点は、DSC測定によって、昇温時に吸熱ピークとして観察され、降温時には発熱ピークとして観察される。
非晶性ポリエステルポリオールの融点はDSCで測定すると、吸熱ピーク及び発熱ピークが明確に観察されないことから、結晶性ポリエステルポリオールと区別することは可能である。
【0043】
脂肪族ポリエステルポリオールは、脂肪族ジカルボン酸とジオールとの反応で得ることができる。脂肪族ジカルボン酸として、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸を例示できる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ジオールとしては、エチレングリコール、1-メチルエチレングリコール、1-エチルエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素原子数が、2~12の低分子量ジオールが含まれる。なかでも、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール及びデカンジオールから選択される少なくとも1種が好ましい。これらのジオールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリヘキサメチレンドデカネート、ポリブチレンアジペートが挙げられる。
【0046】
芳香族ポリエステルポリオールは、芳香族ポリ(又はジ)カルボン酸と上記のジオールとの反応で得られるものが好ましい。芳香族ポリ(又はジ)カルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリアルキレンフタレート、ポリアルキレンイソフタレート、ポリアルキレンテレフタレートが挙げられる。
【0047】
ポリエーテルポリオールは、粘度が低く、取り扱い性が良好であり、アクリル樹脂粉体の溶解に適している。また、ポリエステルポリオールは、耐熱性、耐溶剤性が高く、高強度であることから、ポリアルキレングリコールとポリエステルポリオールを併用することが好ましい。
【0048】
(イソシアネート)
本発明の樹脂組成物は、更に、イソシアネートを含有してもよい。イソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、シクロペンチレン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、アゾベンゼン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、ジクロロヘキサメチレンジイソシアネート、フルフリデンジイソシアネート、1-クロロベンゼン-2,4-ジイソシアネート、4,4’,4”-トリイソシアネート-トリフェニルメタン、1,3,5-トリイソシアネート-ベンゼン、2,4,6-トリイソシアネート-トルエン及び4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートが挙げられる。
【0049】
イソシアネートとして、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均1~3個のものが好ましく、特に、二官能性イソシアネート、いわゆるジイソシアネートが好ましい。イソシアネートは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。中でも、湿気硬化後の接着強度が高いという点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0050】
モノオールやモノイソシアネート、三官能性ポリオール及び三官能性イソシアネートを用いることもできるが、樹脂組成物の粘度の観点から、二官能性ポリオール(ジオール)及び二官能性イソシアネート(ジイソシアネート)が好ましい。
【0051】
なお、1モルの二官能性ポリオールに対して2モルの二官能性イソシアネートを用いると、比較的容易に目的とするウレタンプレポリマーを製造できるので好ましい。
【0052】
≪ホットメルト接着剤≫
本発明の樹脂組成物から形成される接着剤を、ホットメルト接着剤として使用してもよい。
【0053】
本発明のホットメルト接着剤は、本願発明の樹脂組成物から形成される。樹脂組成物中のポリオールとイソシアネートが反応してウレタンポリマーが形成される。つまり、本発明のホットメルト接着剤は、ウレタンポリマーを含む。
【0054】
アクリル樹脂粉体の含有量は、ホットメルト接着剤の総質量に対し、1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0055】
本発明のホットメルト接着剤が、アクリル樹脂粉体、ポリオール及びイソシアネートを含む場合、アクリル樹脂粉体、ポリオール及びイソシアネートの合計量100質量%に対して、アクリル樹脂粉体が1~50質量%、ポリオールとイソシアネートとの合計量が50~99質量%であることが好ましく、更に、アクリル樹脂粉体が5~30質量%、ポリオールとイソシアネートとの合計量が70~95質量%であることがより好ましい。ただし、アクリル樹脂粉体、ポリオール及びイソシアネートの合計量は、100質量%を超えない。
【0056】
アクリル樹脂粉体がアクリル樹脂粉体、ポリオール及びイソシアネートの合計量100質量%に対して1質量%以上である場合、初期接着強度が良好となる傾向にある。また、50質量%以下である場合、硬化後の接着強度が向上する傾向にある。
【0057】
その他添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
その添加量としては、0~5質量%であることが好ましい。本発明のホットメルト接着剤に対するその他添加剤として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート等の可塑剤;フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;酸化チタン、カーボンブラック等の顔料;ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、ベンゾエート、ベンゾトリアゾール等の光安定剤;ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等の難燃剤;金属系触媒、例えば錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、その他の金属系触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジモルホリノジエチルエーテル等の硬化触媒;パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等のワックスが挙げられる。また、必要に応じて湿潤剤、増粘剤、消泡剤、レオロジー調整剤等も添加することができる。
【0058】
本発明のホットメルト接着剤は、上記条件で測定される初期接着強度x(kPa)、及びオープンタイムy(分)が以下の関係式(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
y>-0.325x+124・・・(式(3))
y>10 ・・・・(式(4))
式(3)について、この範囲において高い初期接着強度を示し、かつ長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤に好適なアクリル樹脂粉体を提供することができる。また初期接着強度xは200kPa以上であることが好ましく、300kPa以上であることがより好ましく、400kPa以上であることが更に好ましい。
式(3)は、y>-0.325x+130が好ましく、y>-0.325x+140がより好ましく、y>-0.325x+150がさらに好ましい。
式(4)について、作業時間を確保することができるため、オープンタイムyを10分より長くすることが好ましく、また工程の時間を短縮化できるため、オープンタイムyを60分未満とすることが好ましい。
式(4)は60>y>10が好ましく、40>y>10がより好ましく、20>y>10がさらに好ましい。
【0059】
≪アクリル樹脂粉体の製造方法≫
本発明のアクリル樹脂粉体の製造方法においては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)を含む単量体混合物(a)に対し、単量体混合物(a)100質量部に対して0.1~3質量部の連鎖移動剤を滴下し重合することで得られる重合体(A)を使用する。上記単量体混合物(a)の重合においては、例えば乳化重合法やシード重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、微細懸濁重合法等を使用することができる。得られた重合体(A)の分散液に、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)を含む単量体混合物(b)に対し、単量体混合物(b)100質量部に対して0.1~3質量部の連鎖移動剤を滴下し重合し、多段重合体(G)を含む分散液(G1)を形成する。その後、多段重合体(G)を含む分散液(G1)を噴霧乾燥法(スプレードライ法)、酸凝固や塩凝固とそれに続く乾燥プロセス、凍結乾燥法、遠心分離法等を用いて粉体化し、アクリル樹脂粉体を得ることができる。特に噴霧乾燥法においては、凝集粒子は、一次粒子同士が比較的強固に結合しないため、弱い剪断により高次粒子構造を破壊して、一次粒子として均一に分散させることが可能であるため、好ましい。
【0060】
本発明のアクリル樹脂粉体の製造方法においては、単量体混合物(a)を重合して得られる重合体(A)分散液存在下で、単量体混合物(b)を重合し、多段重合体(G)を含む分散液(G1)を形成する。このとき、上記重合体(A)と上記重合体(B)の機能を損なわない範囲において、単量体混合物(a)重合後に、または単量体混合物(b)の重合後に、他の単量体混合物を加えて重合を行い、多段重合体(G)を含む分散液(G1)を製造することも可能である。
【0061】
また、上記単量体混合物(a)の重合に先立って、上記重合体(A)及び重合体(B)の機能を損なわない範囲において、他の単量体混合物(s)の重合を行ってもよい。他の単量体混合物(s)は、炭素数1~4のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることが、疎水性・親水性のバランスが適切となるため、好ましい。また、他の単量体混合物(s)の使用量(仕込み量)は、多段重合体(G)の合成に使用する全単量体の使用量に対し、1~10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0062】
単量体混合物(a)は(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)を含み、単量体混合物(b)はメタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)を含む。その他共重合可能な単量体として、上述した単量体と同様のものを含んでいてもよい。
【0063】
単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量は、0~60質量%が好ましく、0~55質量%がより好ましく、0~50質量%がさらに好ましい。
単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)の含有量は、40~100質量%が好ましく、45~100質量%がより好ましく、50~100質量%がさらに好ましい。
単量体混合物(a)中、単量体混合物(a)の総質量に対し、その他共重合可能な単量体の含有量は、0~10質量%が好ましい。
なお、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ma)及びその他共重合可能な単量体の合計含有量は、単量体混合物(a)の総質量に対して100質量%を超えない。
【0064】
単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、メタクリル酸メチルの含有量は、50~90質量%が好ましく、55~90質量%がより好ましく、65~90質量%がさらに好ましい。
単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)の含有量は、10~50質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましく、10~35質量%がさらに好ましい。
単量体混合物(b)中、単量体混合物(b)の総質量に対し、その他共重合可能な単量体の含有量は、0~10質量%が好ましい。
なお、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(mb)及びその他共重合可能な単量体の合計含有量は、単量体混合物(b)の総質量に対して100質量%を超えない。
【0065】
多段重合体(G)を構成する単量体単位を100質量%とした場合、重合体(A)に由来する単量体単位の含有量が10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。
多段重合体(G)を構成する単量体単位を100質量%とした場合、単量体混合物(b)に由来する単量体単位の含有量が20~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましい。
ただし、重合体(A)に由来する単量体単位の含有量、及び単量体混合物(b)に由来する単量体単位の合計含有量は、100質量%を超えない。
【0066】
(連鎖移動剤)
得られるポリマーの分子量の調整のために、連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類;α-メチルスチレンダイマー、ターピノーレンが挙げられる。中でも、一級又は二級のメルカプト化合物であると、重合して得られるアクリル樹脂粉体を使用したホットメルト接着剤の物性が良好になるので好ましい。
【0067】
一級又は二級のメルカプト化合物としては、例えば、n-ブチルメルカプタン、sec-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)等のチオグリコール酸エステル類;β-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、β-メルカプトプロピオン酸3-メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)等のメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、連鎖移動定数の大きいn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0068】
連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物(a)または単量体混合物(b)100質量部に対して、0.1~3質量部の範囲内であることが好ましく、0.3~2質量部の範囲内であるとより好ましい。連鎖移動剤の使用量が0.1質量部以上であれば、ラジカルの連鎖移動により共重合体の分子量が低下し、ホットメルト接着剤の物性が良好となる。また、連鎖移動剤の使用量が3質量部以下であれば、未反応の単量体や連鎖移動剤の残存量が減少し、臭気が減少する。
【0069】
(乳化剤)
水中で重合する際は、乳化剤を使用することが望ましい。乳化剤としてアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤等を使用することができる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸金属塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルグリセリンホウ酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン等のポリオキシエチレン鎖を分子内に有し界面活性能を有する化合物や、これら化合物のポリオキシエチレン鎖がオキシエチレン及びオキシプロピレンの共重合体で代替されている化合物、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリンエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
(重合開始剤)
水中で重合する際は、水溶性ラジカル重合開始剤を使用することが望ましい。水溶性ラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)三塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系重合開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、tert-ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
≪樹脂組成物の製造方法≫
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記製造方法で得られたアクリル樹脂粉体をポリアルキレングリコールに溶解させる工程(III)を含む。溶解の方法としては、例えば、ポリアルキレングリコールにアクリル系樹脂粉体を添加し、分散させた後、加熱混合することで溶解させることができる。
【0073】
加熱温度としては、アクリル系樹脂粉体が溶解する温度であれば特に限定されないが、懸濁重合により得られたアクリル系樹脂粉体を用いる場合より、低温または短時間で溶解させることができる。アクリル系樹脂粉体とポリエステルポリオールと同時に添加して溶解させてもよい。その後、必要に応じて脱泡剤を添加し、真空ポンプ等を利用して、減圧下で加熱しながら撹拌し、樹脂組成物中の水分を充分に除去するのが好ましい。
【0074】
用いるポリアルキレングリコールとしては、本発明の樹脂組成物に含まれていてもよいポリアルキレングリコールの項で例示したものと同様のものを用いることができる。ポリエステルポリオールを併用してもよい。ポリエステルポリオールとしては本発明の樹脂組成物に含まれていてもよいポリエステルポリオールの項で例示したものと同様のものを用いることができる。
【0075】
上記製造方法で得られたアクリル系樹脂粉体をポリアルキレングリコールに溶解させた後、イソシアネートを加えて加熱混合することで、ウレタンプレポリマーを得ることができる。ポリエステルポリオールは、アクリル系樹脂粉体をポリアルキレングリコールに加え、加熱混合して溶解させてもよいし、その後イソシアネートと同時に加え、加熱混合してもよい。
【0076】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールとイソシアネートとの反応に悪影響を与えない範囲で、その他の添加剤を含むことができる。添加する時期は、特に制限されるものではないが、例えば、ウレタンプレポリマーを合成する際に、ポリオール、イソシアネートと一緒に添加してもよいし、先に、ポリオールとイソシアネートとを反応させてウレタンプレポリマーを合成し、その後、添加してもよい。添加剤としては、ホットメルト接着剤に対するその他の添加剤として例示した添加剤と同様のものを用いることができる。
【0077】
加熱の温度としては、好ましくは80~140℃、より好ましくは90~110℃の範囲内である。この加熱温度範囲内であると、各成分の溶解が良好であり、粘度が減少し取り扱い性が良好となる。更に、イソシアネート及びポリアルキレングリコールの反応が充分に進行する。加熱の時間は特に限定されないが、好ましくは30分~300分、より好ましくは60分~180分の範囲内である。
【0078】
≪樹脂組成物の用途≫
得られた本発明の樹脂組成物は、ホットメルト接着剤として適応できる。本発明において、「ホットメルト接着剤」とは、80~150℃の熱をかけて融解させてから使用する接着剤を意味する。本発明のホットメルト接着剤は、建築内装分野(または建築分野)及び電子材料分野、自動車内装分野等、従来からホットメルト接着剤が使用されている分野で用いることができる。
【0079】
≪ホットメルト接着剤の製造方法≫
ホットメルト接着剤の製造方法は、上記製造方法で得られたアクリル樹脂粉体を、ポリアルキレングリコールに溶解させ樹脂組成物を得る工程(III)、および前記樹脂組成物にイソシアネートを混合し、ウレタンプレポリマーを得る工程(IV)を含む。
工程(III)は≪樹脂組成物の製造方法≫で説明したものと同様の条件を採用できる。
前記(IV)は硬化触媒をさらに混合してもよい。硬化触媒としては、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル等が挙げられる。
【0080】
上記ホットメルト接着剤の用途は、自動車内装部材の貼付や、化粧材料を建築内装部材に貼り付ける際に好適であるが、特に限定されるものではなく、木工用、紙加工用、繊維加工用、一般用等として用いることもできる。
【0081】
本発明のホットメルト接着剤は、従来のホットメルト接着剤と同様の方法を用いて使用することができ、その使用方法は特に制限されるものではない。また、例えば、基材に被着体を貼り付ける際、ホットメルト接着剤は、基材側及び/又は被着体側に塗布してよい。
【0082】
被着体及び基材は、通常使用されているものでよく、例えば、成形材料、フィルムシート、及び合成繊維や天然繊維を紡績機で編み、シート状にした繊維質材料等が例示できる。
【0083】
成形材料、フィルム及びシートは、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を例示できる。ポリオレフィン樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンを例示でき、ポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレートを例示できる。
【0084】
被着体と基材とを、本発明のホットメルト接着剤で貼り合わせることで得られた積層品は、具体的に、建築、電子材料及び自動車分野等、種々の用途に利用可能である。積層品を製造するために、特別な装置を使う必要はなく、搬送機、コーター、プレス機、ヒーター、裁断機を含む一般的に既知の製造装置を用いて製造することができる。例えば、積層品は以下のように製造することができる。基材及び被着体を搬送機で流しながら、本発明のホットメルト接着剤をコーターで基材若しくは被着体に塗布する。塗布する時の温度は、ヒーターで所定の温度に制御する。被着体をプレス機で基材に軽く押し付け、ホットメルト接着剤を介して、被着体と基材とを貼り合わせる。その後、貼り合わされた被着体と基材を放冷し、そのまま搬送機で流して、ホットメルト接着剤を固化させる。その後、被着体が貼られた基材を裁断機で適当な大きさに裁断加工する。
【0085】
これら積層品は、本発明のホットメルト接着剤の初期接着強度が高く、湿気硬化後の耐熱性に優れているので、夏場であっても、基材と被着体とが剥がれ難くなる。尚、コーターを使わずに、作業者が接着剤を塗工し、積層品を製造することも可能である。
【実施例0086】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
各種測定及び評価方法は以下の通りである。
【0087】
(質量平均分子量)
GPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ)法により、以下の条件で測定したポリスチレン換算値を、重合体の質量平均分子量とした。
・高速GPC装置(東ソー(株)製、製品名:HLC-8220GPC)
・・カラム(東ソー(株)製、製品名:TSKgel SuperHZM-M)を4本直列に連結して使用
・・オーブン温度:40℃
・・溶離液:テトラヒドロフラン
・・試料濃度:0.1質量%
・・流速:0.35mL/分
・・-注入量:1μL
・検出器:RI(示差屈折計)
【0088】
(体積平均粒子径)
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、製品名:LA-960)を用いて、得られた重合体分散液及びアクリル樹脂粉体の粒子径を測定した。本明細書中における粒子径は、メジアン径(体積平均粒子径)を用いた。樹脂粒子と分散媒の相対屈折率はすべて1.12とした。分散媒にはイオン交換水を用いた。
(軟化温度)
島津製作所(株)製フローテスターCFT-100を用いて測定した。1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を軟化温度とした。
【0089】
(アセトンへの溶解性)
アセトンに50mlのサンプル瓶にアクリル樹脂粉体を1.0g精秤[W0]し、アセトン40mlを加えて1日以上かけて分散させた。その後、遠心分離機(高速冷却遠心機、製品名:CR22N/CR21N、日立工機(株)製)を用いて、温度:2℃、回転数:12,000rpmで60分間遠心分離を行い、可溶分と不溶分を分離した。不溶分に再びアセトンを加え分散させ、遠心分離機(高速冷却遠心機、製品名:CR22N/CR21N、日立工機(株)製)を用いて、温度:2℃、回転数:12,000rpmで60分間遠心分離を行い、可溶分と不溶分に完全に分けた。不溶分は遠心分離後、窒素雰囲気下のオーブンで60℃に加熱してアセトンを除去し、60℃で真空乾燥し、不溶分の秤量[W1]を行った。その結果をアセトン不溶分の割合、すなわちゲル分率とした。ゲル分率は下記式によって計算した。
ゲル分率(質量%)={[W1]/[W0]}×100
[W1];アセトン不溶分量
[W0];50mlサンプル瓶に精秤したアクリル樹脂粉体量
ゲル分率が1質量%以下であれば、アセトンに可溶であると判断した。
【0090】
(初期接着強度)
平棒(木製、幅1.7cm、長さ7.5cm、厚さ1.5mm)を2本用意し、その一方に、120℃で加熱溶融したホットメルト接着剤を1.5cm×1.7cmの面積に塗布し、もう一本の木製平棒を重ね合わせダブルクリップで挟み、5分静置してホットメルト接着剤を冷却固化させた。静置後ダブルクリップを外し、下記の引張試験機及び測定条件で引張せん断試験を行い、初期接着強度を測定した。
引張試験機:精密万能試験機(製品名:AGS-X、島津製作所製)
測定条件 :引張速度 5.0mm/min
チャック間距離 50mm
得られた測定値から、下記基準にて初期接着強度を判定した。初期接着強度が340kPa以上であれば良好とした。
A:400kPa以上。
B:250kPa以上400kPa未満。
C:250kPa未満。
【0091】
(オープンタイム)
乾燥させた平棒(木製、幅1.7cm、長さ7.5cm、厚さ1.5mm)に、加熱溶解させたホットメルト接着剤を塗布し、ギアオーブンにて120℃に加熱した。その後室温下にて1分間隔で、指加圧を用いてクラフト紙片を張り付けて、速やかにクラフト紙片を剥がすことを繰り返した。ホットメルト接着剤を平棒に塗布したときから、クラフト紙片を剥がしたときに接着剤面に紙の繊維が残らなくなるまでの時間をオープンタイムとした。得られた測定値から、下記基準にてオープンタイムを判定した。オープンタイムは15分以上あれば良好とした。
A:15分以上。
B:10分以上15分未満。
C:10分未満。
【0092】
<実施例1> アクリル樹脂粉体(P-1)
[工程I(1)]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗及び冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに、イオン交換水583gを入れ、30分間窒素ガスを通気し、イオン交換水中の溶存酸素を置換した。次いで、窒素ガスの通気を停止し、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、メタクリル酸メチル14.72g及びメタクリル酸i-ブチル31.28gからなる単量体混合物(s-1)を一括投入し、過硫酸カリウム0.80gとイオン交換水20gを投入し、45分間保持し、重合体分散液(S-1)を得た。
【0093】
[工程I(2)]
[工程I(1)]で得た重合体分散液(S-1)に、ペレックスOT-P(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、有効成分(乳化剤)70%、花王(株)製)0.32g、過硫酸カリウム0.4gとイオン交換水44gを投入し、その15分後にメタクリル酸メチル48.48g、メタクリル酸n-ブチル58.24g、アクリル酸n-ブチル87.28g、ペレックスOT-P2.24g、n-オクチルメルカプタン1.92g及びイオン交換水184gからなるアクリル単量体混合物(a-1)を1.5時間かけて滴下した。滴下完了後、1時間80℃に保持して重合を完了し、重合体分散液(A-1)を得た。重合は毎分25mlの窒素ガスを通気した環境下で行った。
【0094】
[工程I(3)]
[工程I(2)]で得た重合体分散液(A-1)に、メタクリル酸メチル448.96g、メタクリル酸i-ブチル103.92g、メタクリル酸3.6g、メタクリル酸ヒドロキシエチル3.6g、ペレックスOT-P4.16g、n-オクチルメルカプタン4.48g及びイオン交換水280gからなるアクリル単量体混合物(b-1)を3.5時間かけて滴下した。滴下完了後、1時間80℃に保持して重合を完了し、多段重合体分散液(G-1)を得た。重合は毎分25mlの窒素ガスを通気した環境下で行った。
【0095】
[工程(II)]
この多段重合体分散液(G-1)を、スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、製品名:L-8i型)を用いて入口温度/出口温度=120/60℃及びディスク回転数20,000rpmの条件で噴霧乾燥してアクリル樹脂粉体(P-1)を得た。
アクリル樹脂粉体(P-1)は、質量平均分子量42,000、一次粒子の体積平均粒子径0.53μm、二次粒子の体積平均粒子径69μmであった。結果を表3に示す。
【0096】
<実施例2> アクリル樹脂粉体(P-2)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表2に示す組成にした以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-2)を製造した。結果を表5に示す。
【0097】
<実施例3> アクリル樹脂粉体(P-3)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表2に示す組成にした以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-3)を製造した。結果を表5に示す。
【0098】
<実施例4> アクリル樹脂粉体(P-4)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表2に示す組成にした以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-4)を製造した。結果を表5に示す。
【0099】
<実施例5> アクリル樹脂粉体(P-5)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表2に示す組成にした以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-5)を製造した。結果を表5に示す。
【0100】
<実施例6> アクリル樹脂粉体(P-6)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表3に示す組成にし、[工程I(2)]における滴下時間を2.5時間、および[工程I(3)]における滴下時間を2.5時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-6)を製造した。結果を表6に示す。
【0101】
<実施例7> アクリル樹脂粉体(P-7)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表3に示す組成にし、[工程I(2)]における滴下時間を2.5時間、および[工程I(3)]における滴下時間を2.5時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-6)を製造した。結果を表6に示す。
【0102】
<実施例8> アクリル樹脂粉体(P-8)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表3に示す組成にし、[工程I(2)]における滴下時間を1時間、および[工程I(3)]における滴下時間を4時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-8)を製造した。結果を表6に示す。
【0103】
<実施例9> アクリル樹脂粉体(P-9)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表3に示す組成にし、[工程I(2)]における滴下時間を4時間、および[工程I(3)]における滴下時間を1時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-9)を製造した。結果を表6に示す。
【0104】
<実施例10> アクリル樹脂粉体(P-10)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表3に示す組成にし、[工程I(2)]における滴下時間を3時間、および[工程I(3)]における滴下時間を2時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-8)を製造した。結果を表6に示す。
【0105】
<比較例1> アクリル樹脂粉体(P-11)
単量体混合物(s)と、単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表4に示す組成にした以外は、実施例6と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-11)を製造した。結果を表7に示す。
【0106】
<比較例2> アクリル樹脂粉体(P-12)
アクリル単量体混合物(b)を表4に示す組成にし、[工程I(2)]を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-12)を製造した。結果を表7に示す。
【0107】
<比較例3> アクリル樹脂粉体(P-13)
単量体混合物(a)と単量体混合物(b)とを表4に示す組成にし、
[工程I(2)]における滴下時間を3.5時間、および[工程I(3)]における滴下時間を1.5時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリル樹脂粉体(P-13)を製造した。結果を表7に示す。
実施例1~10および比較例1~3で得られた樹脂粉体のアセトン溶解性を確認したところ、すべてゲル分率は1質量%以下となり、アセトンに可溶であった。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表中の化合物は以下の化合物を示す。
・「MMA」:メタクリル酸メチル(三菱ケミカル(株)製)
・「n-BMA」:メタクリル酸n-ブチル(三菱ケミカル(株)製)
・「i-BMA」:メタクリル酸i-ブチル(三菱ケミカル(株)製)
・「t-BMA」:メタクリル酸t-ブチル(三菱ケミカル(株)製)
・「n-BA」:アクリル酸n-ブチル(三菱ケミカル(株)製)
・「MAA」:メタクリル酸(三菱ケミカル(株)製)
・「2-HEMA」:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(三菱ケミカル(株)製)
・「n-OM」:n-オクチルメルカプタン(和光純薬工業(株)製)
・「KPS」:過硫酸カリウム(三菱ガス化学(株)製)
・「OT-P」:ペレックスOT-P、ジオクチルスルホコハク酸ジナトリウム、有効成分(乳化剤)70%(花王(株)製)
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
<実施例11>
[溶解工程]
温度計、攪拌棒、及び冷却管を装備した300ミリリットルの4つ口フラスコに、ポリオールとして質量平均分子量約2000のポリプロピレングリコール(商品名アデカポリエーテルP-2000、ADEKA製)41.1g、質量平均分子量約400のポリプロピレングリコール(商品名アデカポリエーテルP-400、ADEKA製)3.0g、脱泡剤として「モダフロー2100」(オルネクス製)0.3g、アクリル樹脂粉体(P-1)23.7gを入れ、内温を100℃まで加熱し、1時間撹拌することで均一な溶液状の樹脂組成物を得た。
【0116】
[減圧脱水工程]
この樹脂組成物を15kPa、100℃で1時間加熱撹拌し、減圧脱水した。
【0117】
ポリオールとしてポリエステルポリオール「HS 2H-351A」(豊国製油製、ヘキサンジオールとアジピン酸のポリエステルポリオール、分子量3500、融点55℃、OHV=32mgKOH/g)24.5g、イソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート14.0g及び硬化触媒として2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル(三井化学ファイン製)0.2gを加え、15kPa、100℃で3時間撹拌した。その後、冷却して、得られたホットメルト接着剤を回収し密封して保存した。
【0118】
<実施例12~20>
アクリル樹脂粉体の種類のみ表8~20の通りとした以外は全て実施例11と同様にしてホットメルト接着剤を得た。初期接着強度およびオープンタイムの結果を表8~20に示す。
【0119】
<比較例4~6>
アクリル樹脂粉体の種類のみ表8~20の通りとした以外は全て実施例11と同様にしてホットメルト接着剤を得た。初期接着強度およびオープンタイムの結果を表8~10に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
実施例11~20、及び比較例4~6の結果をグラフにプロットしたものを
図1に示す。実施例11~20は、y>-0.325x+124、且つ60>y>10の領域の範囲内である。
実施例11~20では、適度なオープンタイムを有すること、および初期接着強度が大きいことが判った。
比較例4では、オープンタイムが長すぎて作業性が悪いこと、および初期接着強度が小さいことが判った。
比較例5では、初期接着強度は大きいが、オープンタイムが短すぎて作業性が悪いことが判った。
比較例6では、適度なオープンタイムを有するが、初期接着強度が小さいことが判った。
本発明のアクリル樹脂粉体は、良好な初期接着強度を示し、かつ従来に比べて長いオープンタイムを有するホットメルト接着剤に好適なアクリル樹脂粉体を提供することができる。