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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030649
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】移動装置および無線通信制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/30 20090101AFI20240229BHJP
   H04W 36/08 20090101ALI20240229BHJP
【FI】
H04W36/30
H04W36/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133668
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(71)【出願人】
【識別番号】522338056
【氏名又は名称】パラレルネットワークス合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】大島 浩太
(72)【発明者】
【氏名】柏木 岳彦
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA33
5K067BB28
5K067EE02
5K067EE24
5K067JJ37
(57)【要約】
【課題】移動装置と遠隔端末間の通信のロバスト性を向上させる。
【解決手段】実施形態の移動装置10は、遠隔端末20により制御または監視され、所定の動作範囲内で移動する移動装置であって、移動装置10が有する複数の無線通信インタフェース12A,12Bの各々について、移動装置10の通信環境で接続可能な無線通信を検出し、検出された無線通信の通信品質をそれぞれ計測する通信品質計測部111と、各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の通信品質に基づいて、複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部112とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔端末により制御または監視され、所定の動作範囲内で移動する移動装置であって、
前記移動装置が有する複数の無線通信インタフェースの各々について、前記移動装置の通信環境で接続可能な無線通信を検出し、前記検出された無線通信の通信品質をそれぞれ計測する通信品質計測部と、
前記各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の前記通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部と、
を備える移動装置。
【請求項2】
前記通信品質は、無線通信の受信信号強度、通信速度、パケットロス数、遅延、パケットの到達間隔の揺らぎ、通信成功率、およびネットワーク装置の仕様に関する情報のうち少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信が前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を担う現用回線であり、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信がバックアップ用の予備回線である場合、前記通信制御部は、前記通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、前記第1の無線通信を予備回線とし前記第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行う、請求項1に記載の移動装置。
【請求項4】
前記通信品質は無線通信の受信信号強度、通信速度または通信成功率であり、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースの通信品質を示す値が前記第1の無線通信インタフェースの通信品質を示す値よりも規定値以上大きいときに前記切替処理を行う、請求項3に記載の移動装置。
【請求項5】
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信が前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を担う現用回線であり、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信がバックアップ用の予備回線であり、前記予備回線よりも通信品質の高い無線通信が検出された場合、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースを制御して前記検出された無線通信に予備回線を切り替える、請求項1に記載の移動装置。
【請求項6】
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信量を減らし前記第2の無線通信によるデータ送信量を増やす割合変更処理を行う、請求項1に記載の移動装置。
【請求項7】
前記通信品質は無線通信の受信信号強度、通信速度または通信成功率であり、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースの通信品質を示す値が前記第1の無線通信インタフェースの通信品質を示す値よりも規定値以上大きいときに前記割合変更処理を行う、請求項6に記載の移動装置。
【請求項8】
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信の冗長度を上げ、前記第2の無線通信によるデータ送信の冗長度を下げる冗長度変更処理を行う、請求項1に記載の移動装置。
【請求項9】
前記通信品質は無線通信の受信信号強度、通信速度または通信成功率であり、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースの通信品質を示す値が前記第1の無線通信インタフェースの通信品質を示す値よりも規定値以上大きいときに前記冗長度変更処理を行う、請求項8に記載の移動装置。
【請求項10】
前記複数の無線通信インタフェースは、コネクションレス型プロトコルに従って前記遠隔端末と通信を行う、請求項1に記載の移動装置。
【請求項11】
遠隔端末により制御または監視され、所定の動作範囲内で移動する移動装置であって、
前記移動装置の通信環境に関する通信環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記通信環境情報を入力し無線通信の将来通信品質を出力する学習済みモデルを用いて、前記移動装置が有する複数の無線通信インタフェースについて検出された無線通信の将来通信品質をそれぞれ推論する通信品質推論部と、
前記各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の前記将来通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部と、
を備える移動装置。
【請求項12】
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信が前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を担う現用回線であり、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信がバックアップ用の予備回線である場合、前記通信制御部は、前記将来通信品質に基づいて、前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されると判断される場合、前記第1の無線通信を予備回線とし、前記第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行う、請求項11に記載の移動装置。
【請求項13】
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記将来通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されると判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信量を減らし前記第2の無線通信によるデータ送信量を増やす割合変更処理を行う、請求項11に記載の移動装置。
【請求項14】
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記将来通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されると判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信における冗長度を上げ、前記第2の無線通信によるデータ送信における冗長度を下げる冗長度変更処理を行う、請求項11に記載の移動装置。
【請求項15】
前記通信環境情報は、時間情報、前記移動装置の位置情報、および天候・気象に関する情報のうち少なくともいずれか一つを含む、請求項11に記載の移動装置。
【請求項16】
前記複数の無線通信インタフェースは、コネクションレス型プロトコルに従って前記遠隔端末と通信を行う、請求項11に記載の移動装置。
【請求項17】
前記移動装置は、ロボット、建設機械、ドローン、船舶またはROVである、請求項1~16のいずれかに記載の移動装置。
【請求項18】
所定の動作範囲内で移動する移動装置と、
前記移動装置を制御または監視する遠隔端末と、を備え、
前記移動装置は、
複数の無線通信インタフェースと、
前記複数の無線通信インタフェースの各々について、前記移動装置の通信環境で接続可能な無線通信を検出し、前記検出された無線通信の通信品質をそれぞれ計測する通信品質計測部と、
前記各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の前記通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部と、
を備える、無線通信制御システム。
【請求項19】
所定の動作範囲内で移動する移動装置と、
前記移動装置を制御または監視する遠隔端末と、を備え、
前記移動装置は、
複数の無線通信インタフェースと、
前記移動装置の通信環境に関する通信環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記通信環境情報を入力し無線通信の将来通信品質を出力する学習済みモデルを用いて、前記複数の無線通信インタフェースについて検出された無線通信の将来通信品質をそれぞれ推論する通信品質推論部と、
前記各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の前記将来通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部と、
を備える、無線通信制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置および無線通信制御システムに関し、より詳しくは、遠隔端末により制御または監視され、所定の動作範囲内で移動する移動装置、および当該遠隔端末および移動装置を備える無線制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANやモバイルデータ通信等の無線データ通信を介してロボットを遠隔制御したり、ロボットの動作を監視することが行われている。しかし、無線リンクの品質劣化や切断により正常な通信が行えない状況において、ロボットは、所定のホームエリアに自動的に帰還したり、その場で停止するといった安全確保のための動作を取ることがある。このような状態になると、ロボットによっては人によるリセット動作を必要とするものもあり、安定的、継続的な運用が困難になるという課題がある。
【0003】
無線通信は、様々な要因により、有線通信と比べて通信品質の変動が激しい。周波数帯に起因する変動要因としては、周波数が高くなるにつれて直進性が増加し、障害物による遮断の影響を受けやすくなることが挙げられる。また、免許不要で利用可能な電波(2.4GHz帯など)の場合、利用機器の過多による電波やチャネルの干渉のほか、水分に吸収されやすい点等が通信品質の変動要因として挙げられる。
【0004】
また、人に起因する変動要因としては、人の行動パターンに起因して基地局やアクセスポイントの負荷が変動すること、一時的に大量の通信を行うユーザによる利用機会の公平性の欠如等が挙げられる。
【0005】
他にも、場所固有の変動要因として、最寄の基地局やアクセスポイントとの距離と遮蔽物の有無、基地局やアクセスポイントが対応している通信方式や対応周波数帯の違い、バックホール回線の通信速度や品質、提供事業者による通信混雑時の帯域制限制御等もある。
【0006】
無線通信の通信品質に影響を与える上記変動要因をすべて回避することは容易でなく、無線通信を利用した遠隔制御等において求められる通信品質を満たすには、従来のネットワーク技術だけでは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-136961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、移動装置と遠隔端末間の通信のロバスト性を向上させることができる移動装置および無線通信制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る移動装置は、
遠隔端末により制御または監視され、所定の動作範囲内で移動する移動装置であって、
前記移動装置が有する複数の無線通信インタフェースの各々について、前記移動装置の通信環境で接続可能な無線通信を検出し、前記検出された無線通信の通信品質をそれぞれ計測する通信品質計測部と、
前記各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の前記通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部とを備える。
【0010】
また、前記移動装置において、
前記通信品質は、無線通信の受信信号強度、通信速度、パケットロス数、遅延、パケットの到達間隔の揺らぎ、通信成功率、およびネットワーク装置の仕様に関する情報のうち少なくともいずれか一つを含むようにしてもよい。
【0011】
また、前記移動装置において、
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信が前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を担う現用回線であり、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信がバックアップ用の予備回線である場合、前記通信制御部は、前記通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、前記第1の無線通信を予備回線とし前記第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行うようにしてもよい。
【0012】
また、前記移動装置において、
前記通信品質は無線通信の受信信号強度、通信速度または通信成功率であり、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースの通信品質を示す値が前記第1の無線通信インタフェースの通信品質を示す値よりも規定値以上大きいときに前記切替処理を行うようにしてもよい。
【0013】
また、前記移動装置において、
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信が前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を担う現用回線であり、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信がバックアップ用の予備回線であり、前記予備回線よりも通信品質の高い無線通信が検出された場合、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースを制御して前記検出された無線通信に予備回線を切り替えるようにしてもよい。
【0014】
また、前記移動装置において、
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信量を減らし前記第2の無線通信によるデータ送信量を増やす割合変更処理を行うようにしてもよい。
【0015】
また、前記移動装置において、
前記通信品質は無線通信の受信信号強度、通信速度または通信成功率であり、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースの通信品質を示す値が前記第1の無線通信インタフェースの通信品質を示す値よりも規定値以上大きいときに前記割合変更処理を行うようにしてもよい。
【0016】
また、前記移動装置において、
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信の冗長度を上げ、前記第2の無線通信によるデータ送信の冗長度を下げる冗長度変更処理を行うようにしてもよい。
【0017】
また、前記移動装置において、
前記通信品質は無線通信の受信信号強度、通信速度または通信成功率であり、前記通信制御部は、前記第2の無線通信インタフェースの通信品質を示す値が前記第1の無線通信インタフェースの通信品質を示す値よりも規定値以上大きいときに前記冗長度変更処理を行うようにしてもよい。
【0018】
また、前記移動装置において、
前記複数の無線通信インタフェースは、コネクションレス型プロトコルに従って前記遠隔端末と通信を行うようにしてもよい。
【0019】
本発明の第2の態様に係る移動装置は、
遠隔端末により制御または監視され、所定の動作範囲内で移動する移動装置であって、
前記移動装置の通信環境に関する通信環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記通信環境情報を入力し無線通信の将来通信品質を出力する学習済みモデルを用いて、前記移動装置が有する複数の無線通信インタフェースについて検出された無線通信の将来通信品質をそれぞれ推論する通信品質推論部と、
前記各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の前記将来通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部とを備える。
【0020】
また、前記移動装置において、
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信が前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を担う現用回線であり、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信がバックアップ用の予備回線である場合、前記通信制御部は、前記将来通信品質に基づいて、前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されると判断される場合、前記第1の無線通信を予備回線とし、前記第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行うようにしてもよい。
【0021】
また、前記移動装置において、
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記将来通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されると判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信量を減らし前記第2の無線通信によるデータ送信量を増やす割合変更処理を行うようにしてもよい。
【0022】
また、前記移動装置において、
前記第1の無線通信インタフェースを介した第1の無線通信と、前記第2の無線通信インタフェースを介した第2の無線通信とを併用して前記移動装置と前記遠隔端末間のデータの送受信を行っている場合において、前記将来通信品質に基づいて前記第1の無線通信よりも前記第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されると判断されるとき、前記通信制御部は、前記第1の無線通信によるデータ送信における冗長度を上げ、前記第2の無線通信によるデータ送信における冗長度を下げる冗長度変更処理を行うようにしてもよい。
【0023】
また、前記移動装置において、
前記通信環境情報は、時間情報、前記移動装置の位置情報、および天候・気象に関する情報のうち少なくともいずれか一つを含むようにしてもよい。
【0024】
また、前記移動装置において、
前記複数の無線通信インタフェースは、コネクションレス型プロトコルに従って前記遠隔端末と通信を行うようにしてもよい。
【0025】
また、前記移動装置において、
前記移動装置は、ロボット、建設機械、ドローン、船舶またはROVであるようにしてもよい。
【0026】
本発明の第1の態様による無線通信制御システムは、
所定の動作範囲内で移動する移動装置と、
前記移動装置を制御または監視する遠隔端末と、を備え、
前記移動装置は、
複数の無線通信インタフェースと、
前記複数の無線通信インタフェースの各々について、前記移動装置の通信環境で接続可能な無線通信を検出し、前記検出された無線通信の通信品質をそれぞれ計測する通信品質計測部と、
前記各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の前記通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部とを備える。
【0027】
本発明の第2の態様による無線通信制御システムは、
所定の動作範囲内で移動する移動装置と、
前記移動装置を制御または監視する遠隔端末と、を備え、
前記移動装置は、
複数の無線通信インタフェースと、
前記移動装置の通信環境に関する通信環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記通信環境情報を入力し無線通信の将来通信品質を出力する学習済みモデルを用いて、前記複数の無線通信インタフェースについて検出された無線通信の将来通信品質をそれぞれ推論する通信品質推論部と、
前記将来通信品質に基づいて、前記複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように前記複数の無線通信インタフェースを制御する通信制御部とを備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、移動装置と遠隔端末間の通信のロバスト性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施形態に係る無線通信制御システムの概略的な構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る移動装置の機能ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る回線管理データベースの一例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る無線通信制御システムによる無線通信制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る無線通信制御システムの概略的な構成を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る移動装置の機能ブロック図である。
図7】第2の実施形態に係る学習サーバの機能ブロック図である。
図8】第2の実施形態に係る無線通信制御システムによる無線通信制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、第1の実施形態に係る無線通信制御システム1について説明する。
【0032】
無線通信制御システム1は、図1に示すように、所定の動作範囲内で移動する移動装置10と、移動装置10を制御または監視する遠隔端末20とを備えている。
【0033】
移動装置10と遠隔端末20は、Wi-Fi(Wireless Fidelity(登録商標))を介したモバイルデータ通信を介して通信接続される。無線通信の方式やプロトコル等の種類は特に限定されず、たとえば、LTE(Long Term Evolution(登録商標))、4G、5G、LPWA(Low Power Wide Area)、衛星通信等であってもよい。
【0034】
移動装置10は、本実施形態では、所定の作業範囲内で移動するロボットである。作業範囲は、たとえば、工事現場、港湾、トンネル内などである。
【0035】
なお、移動装置10は、遠隔端末20により遠隔制御または動作監視され、所定の動作範囲内で移動する装置であればよく、たとえば、工事現場を移動する建設機械、ドローン(UAV)、船舶、遠隔操作無人探査機(ROV)等であってもよい。
【0036】
移動装置10は、複数のアンテナA1,A2と、各アンテナに対応する複数の無線通信インタフェース(後述の無線通信インタフェース12A,12B)とを備えている。移動装置10は、アンテナA1,A2を介して複数のネットワーク装置(本実施形態では、アクセスポイント)に同時に無線接続する。なお、ネットワーク装置は、移動装置10と遠隔端末20間の信号を中継するものであればよく、通信キャリアの基地局等であってもよい。
【0037】
遠隔端末20は、無線通信機能を有し、移動装置10を制御または監視するように構成された情報処理装置であり、たとえば、タブレット端末、スマートフォン、ノート型パソコン等である。なお、遠隔端末20は、デスクトップ型パソコンのような固定型の情報処理装置であってもよい。
【0038】
図1に示すように、移動装置10は、遠隔端末20により制御され、図中左側から右側に移動経路P1に沿って移動する。この際、遠隔端末20からの制御信号は、アクセスポイントを介して移動装置10に送信される。移動装置10は、無線接続された複数のアクセスポイントの一方(または両方)から制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて動作する。
【0039】
詳しくは後述するが、移動装置10は複数の無線通信インタフェースを有しており、これらの無線通信インタフェースは、移動装置10の現在位置において検出された無線通信の通信品質に基づいて、互いに異なるネットワーク装置(アクセスポイント)に同時に無線接続するように制御される。
【0040】
<移動装置10>
次に、図2および図3を参照して、第1の実施形態に係る移動装置10の詳細について説明する。
【0041】
移動装置10は、図2に示すように、制御部11と、複数の無線通信インタフェース12A,12Bと、記憶部13と、撮像部14と、測位部15と、駆動部(推進部)16とを備えている。以下、各部について説明する。
【0042】
制御部11は、無線通信の品質を計測する通信品質計測部111と、複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御する通信制御部112とを有する。
【0043】
通信品質計測部111は、複数の無線通信インタフェース12A,12Bの各々について、移動装置10の現在位置における通信環境で接続可能な1つまたは複数の無線通信を検出し、検出された無線通信の通信品質をそれぞれ計測するように構成されている。計測される通信品質は、本実施形態では、アクセスポイントから受信した信号の強度(受信信号強度)である。
【0044】
なお、通信品質は、これに限られず、通信の品質を示すものであればよく、たとえば、通信速度、パケットロス数、遅延、パケットの到達間隔の揺らぎ、通信成功率(所定の時間内に通信相手に届いたデータの割合)等である。
【0045】
また、通信品質計測部111は、アクセスポイント等のネットワーク装置の仕様に関する情報(たとえば、利用する無線周波数帯、準拠規格等)を通信品質情報として取得してもよい。
【0046】
また、通信品質として、複数の指標(たとえば、受信信号強度と通信速度)が計測されてもよい。
【0047】
通信制御部112は、各無線通信インタフェース12A,12Bについて検出された無線通信の通信品質に基づいて、無線通信インタフェース12Aと無線通信インタフェース12Bが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御するように構成されている。
【0048】
なお、無線通信インタフェースが移動装置10に3つ以上設けられる場合、通信制御部112は、各無線通信インタフェースについて検出された無線通信の通信品質に基づいて、複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも2つの通信インタフェース(第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェース)が互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように複数の無線通信インタフェースを制御する。
【0049】
また、通信制御部112は、制御部11とは別に、制御部11と通信可能な通信制御装置として移動装置10内に設けられてもよい。
【0050】
本実施形態では、通信品質計測部111により計測された通信品質に加え、後述の事前設定ルール131を参照して、無線通信インタフェース12A,12Bの制御が行われる。すなわち、通信制御部112は、通信品質計測部111により計測された通信品質と、事前設定ルール131とに基づいて、複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。
【0051】
たとえば、無線通信インタフェース12Aを介した第1の無線通信が移動装置10と遠隔端末20間のデータの送受信を担う現用回線であり、無線通信インタフェース12Bを介した第2の無線通信が予備回線である場合、通信制御部112は、計測された通信品質から、第1の無線通信よりも第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、第1の無線通信を予備回線とし第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行う。たとえば、通信品質として無線通信の受信信号強度を用いる場合、通信制御部112は、無線通信インタフェース12Bの受信信号強度が無線通信インタフェース12Aの受信信号強度よりも規定値以上大きいときに、上記の切替処理を行う。なお、予備回線は、バックアップ用の回線であり、データの送受信には使用していないが無線接続された回線のことである。データの送受信は、パケットの送受信により行われる。
【0052】
制御部11の通信品質計測部111および通信制御部112は、移動装置10内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現される。なお、制御部11の各部のうち少なくとも一つがハードウェアにより構成されてもよい。
【0053】
無線通信インタフェース12Aおよび12B(第1の無線通信インタフェースおよび第2の無線通信インタフェース)は、無線通信により移動装置10と遠隔端末20との間で情報を送受信するためのインタフェースである。本実施形態では、無線通信インタフェース12A,12Bは、アンテナA1,A2を有する無線LANのネットワークインタフェースカード(NIC)である。なお、無線通信インタフェース12A,12Bはこれに限られず、ネットワーク装置の種類に応じたインタフェースが使用されてもよい。また、無線通信インタフェースの数は3つ以上であってもよい。
【0054】
本実施形態では、無線通信インタフェース12A,12Bは、データ受信の確認応答を行わないコネクションレス型プロトコルに従って遠隔端末20と通信を行う。これにより、通信のリアルタイム性を確保し易くなるため、遠隔端末20による移動装置10の制御ないし監視に好適である。たとえば、TCPに比べてリアルタイム性の高いUDP(User Datagram Protocol)を用いる。
【0055】
記憶部13は、半導体メモリ、ハードディスクドライブ等から構成される。この記憶部13には、制御部11で実行されるプログラムやデータのほか、無線通信インタフェース12A,12Bを介した無線通信の通信品質に関する計測データなどが記憶される。また、記憶部13には、ネットワーク装置の配置に関する情報が記憶されてもよい。
【0056】
図2に示すように、記憶部13には、事前設定ルール131および回線管理データベース132などが記憶される。
【0057】
事前設定ルール131には、複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御するために事前に定められたルールが格納されている。たとえば、第1の無線通信インタフェースを介した無線通信の受信信号強度よりも第2の無線通信インタフェースを介した無線通信の受信信号強度の方が規定値以上大きい場合は、第2の無線通信インタフェースを介した無線通信により移動装置10と遠隔端末20間の通信を行うというルールである。
【0058】
回線管理データベース132は、無線通信インタフェース12A,12Bを介した無線通信を管理するためのデータベースであり、無線通信ごとに通信品質等の情報が格納されている。この回線管理データベース132は、無線通信(アクセスポイント等)が検出されたり、通信品質が計測されるたびに更新される。
【0059】
図3に回線管理データベース132の一例を示す。この例では、検出されたアクセスポイントの識別子(SSID)ごとに、受信信号強度(信号強度)、優先順、用途/役割、およびNIC割当が格納されている。受信信号強度は、通信品質計測部111により計測された信号強度を示す。優先順は、接続優先順位を示しており、受信信号強度が高いほど優先順位は高く設定される。
【0060】
用途/役割は、回線の用途ないし役割であり、ここでは、移動装置10と遠隔端末20間のデータの送受信を担う現用回線(現用)、またはバックアップ用の予備回線(予備)を示している。NIC割当は、アクセスポイントに接続している無線通信インタフェースを示している。NIC1は無線通信インタフェース12Aを示し、NIC2は無線通信インタフェース12Bを示している。
なお、図3に示すように、複数の予備回線が確保されてもよい。あるいは、現用以外で接続可能な複数の無線通信のうち最も品質の高い回線を予備回線として動的にアサインしてもよい。
【0061】
また、現用回線や予備回線のほかに、前方誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)のパケットを送信する回線(冗長回線)を設定してもよい。なお、FECのパケット(冗長パケット)は現用回線および/または予備回線に使用されてもよい。
【0062】
撮像部14は、移動装置10の外部を撮像するための手段であり、移動装置10の周囲の様子をモニタしたり、作業対象物を認識するためなどに用いられる。
【0063】
測位部15は、GPSやWi-Fi測位などにより、移動装置10の現在位置を測位するための手段である。
【0064】
駆動部16は、移動装置10が移動するための手段である。本実施形態では、駆動部16は、キャタピラーと、キャタピラーの車輪を回転させるモータまたはエンジンとを有する。なお、駆動部16はキャタピラーでなく通常の車輪を有してもよい。また、移動装置10がドローンや船舶の場合、駆動部16は車輪に代えてプロペラを有する。
【0065】
<無線通信制御方法>
次に、図4のフローチャートを参照して、無線通信制御システム1による無線通信制御方法の一例について説明する。
【0066】
ステップS11:移動装置が有する複数の無線通信インタフェースの各々について、移動装置の通信環境で接続可能な無線通信を検出し、検出された無線通信の通信品質をそれぞれ計測する。本実施形態では、移動装置10の通信品質計測部111が、無線通信インタフェース12A,12Bの各々について、接続可能な無線通信を検出し、検出された無線通信の通信品質(ここでは受信信号強度)をそれぞれ計測する。
【0067】
ステップS11で無線通信(アクセスポイント)が新たに検出された場合、制御部11は、そのアクセスポイントのレコードを回線管理データベース132に作成する。また、計測された受信信号強度は、該当するアクセスポイントに対応するレコードの「信号強度」のカラムに格納される。
【0068】
ステップS12:ステップS11で計測された通信品質に基づいて、複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように複数の無線通信インタフェースを制御する。本実施形態では、移動装置10の通信制御部112が、無線通信インタフェース12A,12Bの各々について検出された無線通信の通信品質に基づいて、無線通信インタフェース12Aおよび無線通信インタフェース12Bが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。
【0069】
たとえば、無線通信インタフェース12A,12BのいずれもがアクセスポイントAP1,AP2を検出し、アクセスポイントAP1の信号強度がアクセスポイントAP2の信号受信強度よりも高い場合、通信制御部112は、無線通信インタフェース12AがアクセスポイントAP1に接続し、無線通信インタフェース12BがアクセスポイントAP2に接続するように、無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。この場合、無線通信インタフェース12Aを介した無線通信を現用回線、無線通信インタフェース12Bを介した無線通信を予備回線とし、回線管理データベース132の「用途/役割」のカラムにその旨の情報を格納する。
【0070】
なお、無線通信インタフェース12Aを介した無線通信と、無線通信インタフェース12Bを介した無線通信とを併用して、移動装置10と遠隔端末20間の情報の送受信を行ってもよい。この場合、リンクアグリゲーション、ボンディング、冗長データ送信、二重化等の技術が用いられ、複数の経路に同時にパケットが流れる。したがって、両方の回線が現用となる。
【0071】
また、移動装置10が3つの無線通信インタフェースを備える場合は、3つの回線を併用してもよいし、あるいは、2つの回線を併用しつつ、予備回線を設けてもよい。
【0072】
ステップS13:現用の第1の無線通信よりも予備の第2の無線通信の方が通信品質が高いかどうかを判定する。すなわち、制御部11が、予備回線の通信品質が現用回線の通信品質よりも高いどうかを判定する。Yesの場合、ステップS14に進み、Noの場合、処理を終了する(あるいはステップS11に戻る)。この判定方法は事前設定ルール131に基づいて行われる。たとえば、予備回線の受信信号強度が現用回線の受信信号強度よりも規定値以上大きいかどうかを判定する。
【0073】
ステップS14:第1の無線通信を予備回線とし、第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行う。本実施形態では、通信制御部112が、無線通信インタフェース12Aを介した無線通信(現在現用回線)を予備回線とし、無線通信インタフェース12Bを介した無線通信(現在予備回線)を現用回線とする。本ステップ終了後、処理を終了するか、あるいはステップS11に戻る。
【0074】
上記の無線通信制御方法によれば、無線通信インタフェース12A,12Bが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続し、各無線通信について計測された通信品質に基づき動的に切替処理を行う。これにより、パケットロスの発生を低減することができ、移動装置10と遠隔端末20間の通信のロバスト性を向上させることができる。
【0075】
なお、上記の例では各無線通信について計測された受信信号強度に基づいて切替処理を行うかどうかを判定したが、受信信号強度以外の通信品質に基づいて判定してもよい。たとえば、予備回線の通信速度または通信成功率が現用回線よりも規定値以上大きい場合に切替処理を行うようにしてもよい。
【0076】
また、切替処理を行うかどうかは、他の方法により判定してもよい。たとえば、測位部15により取得された移動装置10の現在位置と、アクセスポイントの配置情報とに基づいて判定を行ってもよい。たとえば、移動装置10が第1のアクセスポイントと第2のアクセスポイント間を移動しており、第1のアクセスポイントまでの第1の距離が長くなり、第2のアクセスポイントまでの第2の距離が短くなる状況にある場合、第2の距離が第1の距離以下になる等の適用なタイミングで第1のアクセスポイントから第2のアクセスポイントに切り替えるようにする。受信信号強度とアクセスポイントまでの距離の両方に基づいて切替処理を行うかどうかを判定してもよい。
【0077】
また、変化する通信環境に応じて予備回線を別の回線に切り替えてもよい。たとえば、移動装置10の移動中に新たなアクセスポイントが検出され、当該アクセスポイントを介した無線通信の通信品質(たとえば、当該アクセスポイントの受信信号強度)が予備回線の通信品質よりも高いと判断される場合、当該アクセスポイントを介した無線通信に予備回線を切り替えてもよい。すなわち、無線通信インタフェース12Aを介した第1の無線通信が移動装置10と遠隔端末20間のデータの送受信を担う現用回線であり、無線通信インタフェース12Bを介した第2の無線通信が予備回線であり、予備回線よりも通信品質の高い無線通信が検出された場合、通信制御部112は、無線通信インタフェース12Bを制御して、検出された無線通信に予備回線を切り替える。これにより、通信環境が変化しても、比較的良好な回線を予備回線として常に確保することができる。
【0078】
なお、通信速度など、アクセスポイントに接続しないと通信品質が判明しない場合は、第3の無線通信インタフェース(図示せず)が予備回線よりも通信品質の高い無線通信を検出したときに、通信制御部112は、無線通信インタフェース12Bおよび第3の無線通信インタフェースを制御して、検出された無線通信に予備回線を切り替える。
【0079】
また、移動装置10が無線通信インタフェースを3つ以上備える場合、現用回線以外の回線のうち最も通信品質が高いものを予備回線としてもよい。この場合、予備回線を動的に切り替えてもよい。
【0080】
なお、上記の例では第1の無線通信よりも第2の無線通信の方が通信品質が高いと判定される場合に切替処理を行ったが、通信制御処理はこれに限られず、たとえば、複数の無線通信を併用している場合、データの送信割合を変更する処理(割合変更処理)を行ったり、冗長度を変更する処理(冗長度変更処理)を行ってもよい。
【0081】
割合変更処理では、無線通信インタフェース12Aを介した第1の無線通信と、無線通信インタフェース12Bを介した第2の無線通信とを併用して移動装置10と遠隔端末20間のデータの送受信を行っている場合において、通信品質に基づいて第1の無線通信よりも第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、通信制御部112は、第1の無線通信によるデータ送信量(配送レート)を減らし、第2の無線通信によるデータ送信量を増やす。
【0082】
冗長度変更処理では、無線通信インタフェース12Aを介した第1の無線通信と、無線通信インタフェース12Bを介した第2の無線通信とを併用して移動装置10と遠隔端末20間のデータの送受信を行っている場合において、通信品質に基づいて第1の無線通信よりも第2の無線通信の方が通信品質が高いと判断されるとき、通信制御部112は、第1の無線通信によるデータ送信の冗長度を上げ、第2の無線通信によるデータ送信の冗長度を下げる。冗長度を上げるとは、冗長パケットの割合を増やすことであり、冗長度を下げるとは、冗長パケットの割合を減らすことである。ここで、冗長パケットは、損失パケットを回復するための前方誤り訂正符号(FEC)のパケットのことである。
【0083】
なお、割合変更処理および冗長度変更処理のいずれの場合においても、通信品質の判断方法の一つとして、ステップS13で説明した方法、すなわち、無線通信インタフェース12Bの受信信号強度が無線通信インタフェース12Aの受信信号強度よりも規定値以上大きい場合に、第1の無線通信よりも第2の無線通信の方が通信品質が高いと判定する方法をとることが可能である。また、受信信号強度に代えて、通信速度、通信成功率など通信品質を示す値を用いて上記判定を行ってもよい。
【0084】
<作用効果>
以上説明したように、第1の実施形態では、移動装置10が有する複数の無線通信インタフェース12A,12Bが、検出された無線通信の通信品質に基づいて、互いに異なるネットワーク装置(アクセスポイント等)に同時に無線接続するように制御される。これにより、図1の例で言えば、移動装置10はスタート地点(図中左端)において、アクセスポイントAP1とAP2に同時に接続する。その後、移動装置10は移動経路P1に沿って進み、アクセスポイントAP4とAP5に同時に接続する。アクセスポイントAP5が障害や混雑等により通信品質が低い場合、移動装置10はアクセスポイントAP4を介した無線通信により正常な通信を維持することができる。さらに進んで移動装置10がアクセスポイントAP6およびAP8に同時に接続した場合も同様であり、アクセスポイントAP8を介した無線通信の通信品質が低い場合、移動装置10はアクセスポイントAP6を介した無線通信により正常な通信を維持する。移動装置10が移動経路P1に沿ってさらに進むと、アクセスポイントAP6の受信信号強度が低下するが、正常なアクセスポイントAP7に接続することで回線品質を確保することができる。
【0085】
このように、本実施形態によれば、通信品質の高い無線通信を常に確保するように複数の無線通信インタフェースを制御することで、パケットロスの発生を抑制し、移動装置10と遠隔端末20間の通信のロバスト性を向上させることができる。その結果、遠隔端末20により、ロボット等の移動装置10を正常に制御することができる。
【0086】
また、本実施形態では、通信状況に応じて複数の回線の役割(現用、予備、冗長回線など)を適宜変更することで、全体として安定した無線通信を実現することができる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、図5を参照して、第2の実施形態に係る無線通信制御システム1Aについて説明する。第2の実施形態と第1の実施形態との相違点の一つは、移動装置の通信環境に関する情報(通信環境情報)を取得し、当該情報に基づく機械学習により得られた学習済みモデルを用いて将来の通信品質(将来通信品質)を推論し、その結果に基づいて複数の無線通信インタフェースを制御する点である。以下、相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0088】
無線通信制御システム1Aは、図5に示すように、所定の動作範囲内で移動する移動装置10Aと、移動装置10Aを制御または監視する遠隔端末20と、通信環境情報に基づく機械学習を行う学習サーバ30とを備えている。
【0089】
移動装置10Aは、第1の実施形態で説明した移動装置10と同様に、所定の作業範囲内で移動するロボットであるが、その他、工事現場を移動する建設機械、UAV、船舶、ROV等であってもよい。
【0090】
移動装置10Aは、遠隔端末20および学習サーバ30とモバイルデータ通信を介して通信接続される。移動装置10Aは、その通信環境に関する通信環境情報を取得し、学習サーバ30に送信する。
【0091】
通信環境情報は、たとえば、時間情報(現在時刻、一日における時間帯、曜日、月、季節等)と、移動装置10Aの位置情報と、天候・気象に関する情報(湿度、雨量、風向等)とのうち少なくともいずれか一つを含む。たとえば、通信環境情報が一日における時間帯(朝、昼、夕方、夜など)および/または曜日に関する情報を含むことで、アクセスポイント等のネットワーク装置の負荷を考慮した通信品質の予測が可能となる。また、通信環境情報が月または季節(春夏秋冬)に関する情報を含むことで、木々に茂る葉の多寡等による無線信号の減衰の程度を考慮した通信品質の予測が可能になる。また、天候・気象に関する情報(晴れ、曇り、雨など)を含むことで、空気中の水分による無線信号の減衰の程度を考慮した通信品質の予測が可能になる。
【0092】
遠隔端末20は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0093】
学習サーバ30は、移動装置10Aで取得された通信環境情報と、移動装置10Aで計測された通信品質情報とを含む学習データを用いて機械学習を行い、通信環境情報から将来の通信品質を推論する学習済みモデルを生成する。ここでいう「将来の通信品質」は、現在から数分くらいまでの比較的近い将来における通信品質も含む。将来の通信品質を推論することにより、回線品質の変動を予測することができる。生成された学習済みモデルは、移動装置10Aにダウンロードされ、通信制御に用いられる。
【0094】
詳しくは後述するが、移動装置10Aは、上記の学習済みモデルと、現在の通信環境情報とに基づいて、複数の無線通信インタフェース12A,12Bを介した無線通信の将来通信品質を推論し、推論された将来通信品質に基づいて複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。
【0095】
<移動装置10A>
次に、図6を参照して、第2の実施形態に係る移動装置10Aの詳細について説明する。
【0096】
移動装置10Aは、図6に示すように、制御部11Aと、複数の無線通信インタフェース12A,12Bと、記憶部13と、撮像部14と、測位部15と、駆動部16とを備えている。このうち、撮像部14、測位部15および駆動部16は第1の実施形態と同じなので説明を省略し、その他の部分について以下説明する。
【0097】
制御部11Aは、通信品質計測部111と、通信制御部112と、通信環境情報を取得する環境情報取得部113と、学習済みモデルを用いた推論を行う通信品質推論部114とを有する。このうち、通信品質計測部111は第1の実施形態と同じなので説明を省略する。
【0098】
通信制御部112は、通信品質推論部114により推論された無線通信の将来通信品質に基づいて、複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。制御の詳細は別途説明する。
【0099】
環境情報取得部113は、移動装置10Aの通信環境に関する情報(通信環境情報)を取得する。前述のように、通信環境情報は、現在時刻や季節等の時間情報、移動装置10Aの位置情報、天候・気象に関する情報などである。時間情報は、移動装置10Aのプロセッサが内蔵する時計、または外部のサーバ等から取得される。移動装置10Aの現在位置は測位部15により取得される。天候・気象情報は、外部のサーバから取得されてもよいし、撮像部14で撮像された外部の様子に基づいて把握されてもよい。
【0100】
通信品質推論部114は、記憶部13に記憶された学習済みモデル133と、環境情報取得部113により取得された通信環境情報とに基づいて、複数の無線通信インタフェース12A,12Bについて検出された無線通信の将来通信品質をそれぞれ推論するように構成されている。具体的には、通信品質推論部114は、学習済みモデル133の入力層に、環境情報取得部113により取得された通信環境情報を与え、出力層から出力された将来通信品質の推定値を取得する。
【0101】
記憶部13には、第1の実施形態で説明した回線管理データベース132のほか、学習済みモデル133が記憶されている。この学習済みモデル133は、学習サーバ30において、通信品質および通信環境情報に基づく機械学習によって得られたものである。学習済みモデル133は、ダウンロード、またはメモリカード等の記憶媒体を介して記憶部13に記憶されたものである。
【0102】
学習済みモデル133は、通信品質計測部111により計測された通信品質と、環境情報取得部113により取得された通信環境情報とに基づく機械学習により構築されたものである。学習済みモデル133は、通信環境情報が与えられる入力層と、将来通信品質の推定値を出力する出力層と、入力層と出力層との間の少なくとも1層の中間層とを有する。
【0103】
ここで、第2の実施形態に係る通信制御部112の詳細について説明する。通信制御部112は、通信品質推論部114により推論された将来通信品質に基づいて複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。
【0104】
たとえば、無線通信インタフェース12Aを介した第1の無線通信が現用回線であり、無線通信インタフェース12Bを介した第2の無線通信が予備回線である場合、通信制御部112は、将来通信品質に基づいて、第1の無線通信よりも第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されると判断される場合、第1の無線通信を予備回線とし、第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行う。たとえば、通信制御部112は、所定の期間にわたって通信品質が所定のレベル以上に維持されると予測される場合、あるいは、所定の期間にわたって通信品質の変動が所定の範囲内に収まると予測される場合に、高い通信品質が維持されると判断する。
【0105】
なお、上記の例では第1の無線通信よりも第2の無線通信の方が高い将来通信品質が維持されると判断される場合に切替処理を行ったが、通信制御処理はこれに限られず、たとえば、複数の無線通信を併用している場合、データの送信割合を変更したり(割合変更処理)、冗長度を変更する処理(冗長度変更処理)を行ってもよい。各処理の内容は、第1の実施形態と同様である。
【0106】
ここで、図7を参照して、学習サーバ30について説明する。
【0107】
学習サーバ30は、制御部31と、通信インタフェース32と、記憶部33とを有する。
【0108】
制御部31は、通信環境情報などの情報を入力する情報入力部311と、機械学習部312と、情報出力部313とを有する。
【0109】
機械学習部312は、学習用データベース331の学習用データを用いて 機械学習(たとえば、深層学習)を行い、将来通信品質の推定値を出力する学習済みモデルを構築する。構築にあたっては、通信環境情報を含む学習用データがニューラルネットワークの入力層に与えられ、当該通信環境において計測された通信品質が教師データとして用いられる。出力層から出力される推定値が教師データの値に等しくなるようにニューラルネットワークのパラメータ(重み、バイアス等)が学習される。機械学習に用いる学習用データは、学習用データベース331から取得される。
【0110】
たとえば、移動装置10Aが所定の移動経路(移動経路P1等)を移動する間に連続的に取得された通信環境情報と、移動の間に連続的に計測された通信品質とを関連付けた学習用データを用いて学習済みモデルを構築する。これにより、当該移動経路を移動する場合に将来通信品質を精度良く予測可能な学習済みモデルを構築することができる。
【0111】
また、機械学習にあたっては、数時間、数日単位といった比較的短期的な状況を反映した学習用データを用いてもよいし、数ヶ月、季節単位といった長期的な状況を反映した学習用データを用いてもよい。
【0112】
情報出力部313は、学習済みモデル332を構築するための情報(ニューラルネットワークのパラメータ)を通信インタフェース32を介して移動装置10Aに出力する。
【0113】
通信インタフェース32は、無線または有線通信により移動装置10Aと学習サーバ30との間で情報を送受信するためのインタフェースである。
【0114】
記憶部33は、半導体メモリ、ハードディスクドライブ等から構成される。この記憶部33には、制御部31で実行されるプログラムやデータのほか、学習用データベース331および学習済みモデル332などが記憶される。
【0115】
学習用データベース331は、移動装置10Aで取得された通信環境情報および通信品質を含む学習用データが格納されたデータベースである。たとえば、学習用データベース331は、時刻、位置、利用している通信規格、周囲のアクセスポイントのチャネルや電波状況、実際に通信した際の安定性(たとえばパケットロス、遅延)などの入力用データと、安定性、通信速度、途切れにくさなどの教師データ(目標値)とを関連付けて記憶したデータベースである。
【0116】
学習済みモデル332は、機械学習部312により生成された学習済みモデルであり、前述の学習済みモデル133に対応するものである。
【0117】
<無線通信制御方法>
次に、図8のフローチャートを参照して、第2の実施形態に係る無線通信制御方法について説明する。
【0118】
ステップS21:移動装置10Aの通信環境に関する通信環境情報を取得する。本実施形態では、移動装置10Aの環境情報取得部113が、通信環境情報を取得する。
【0119】
ステップS22:通信環境情報を入力し無線通信の将来通信品質を出力する学習済みモデル133を用いて、複数の無線通信インタフェース12A,12Bについて検出された無線通信の将来通信品質をそれぞれ推論する。本実施形態では、移動装置10Aの通信品質推論部114が、ステップS21で取得された通信環境情報を学習済みモデル133に入力することにより、複数の無線通信インタフェース12A,12Bについて検出された無線通信の将来通信品質をそれぞれ推論する。
【0120】
ステップS23:ステップS22で得られた将来通信品質に基づいて、複数の無線通信インタフェースのうち少なくとも第1の無線通信インタフェースと第2の無線通信インタフェースが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように複数の無線通信インタフェースを制御する。本実施形態では、移動装置10Aの通信制御部112が、無線通信インタフェース12A,12Bの各々について推論された無線通信の将来通信品質に基づいて、無線通信インタフェース12Aおよび無線通信インタフェース12Bが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続するように複数の無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。
【0121】
たとえば、無線通信インタフェース12A,12BのいずれもがアクセスポイントAP1,AP2を検出し、アクセスポイントAP1を介した無線通信の将来通信品質がアクセスポイントAP2を介した無線通信の将来通信品質よりも高い場合、通信制御部112は、無線通信インタフェース12AがアクセスポイントAP1に接続し、無線通信インタフェース12BがアクセスポイントAP2に接続するように、無線通信インタフェース12A,12Bを制御する。この場合、無線通信インタフェース12Aを介した無線通信を現用回線、無線通信インタフェース12Bを介した無線通信を予備回線とし、回線管理データベース132の「用途/役割」のカラムにその旨の情報を格納する。
【0122】
ステップS24:現用の第1の無線通信よりも予備の第2の無線通信の方が高い通信品質が維持されるどうかを判定する。すなわち、制御部11Aが、予備回線の将来通信品質が現用回線の将来通信品質よりも高いどうかを判定する。たとえば、通信制御部112は、所定の期間にわたって予備回線の通信品質が現用回線の通信品質よりも高く維持されると予測される場合、予備回線の将来通信品質が現用回線の将来通信品質よりも高いと判断し(S24:Yes)、ステップS25に進む。そうでない場合(S24:No)、処理を終了する(あるいはステップS21に戻る)。
【0123】
ステップS25:第1の無線通信を予備回線とし、第2の無線通信を現用回線とする切替処理を行う。本実施形態では、通信制御部112が、無線通信インタフェース12Aを介した無線通信(現在現用回線)を予備回線とし、無線通信インタフェース12Bを介した無線通信(現在予備回線)を現用回線とする。本ステップ終了後、処理を終了するか、あるいはステップS21に戻る。
【0124】
上記の無線通信制御方法によれば、無線通信インタフェース12A,12Bが互いに異なるネットワーク装置に同時に無線接続し、各無線通信について推論された将来通信品質に基づき動的に切替処理を行う。これにより、パケットロスの発生を低減することができ、移動装置10と遠隔端末20間の通信のロバスト性を向上させることができる。特に、第2の実施形態では、機械学習により構築された学習済みモデルを用いて将来通信品質を推論することで、人間では判断できない隠れた要因による通信品質の変動を予測することができることから、通信環境に応じたより適切な通信制御を行うことが可能となる。
【0125】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。たとえば、第1の実施形態の事前設定ルールと第2の実施形態の学習済みモデルを併用してもよい。
【0126】
特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1,1A 無線通信制御システム
10,10A 移動装置
11,11A 制御部
111 通信品質計測部
112 通信制御部
113 環境情報取得部
114 通信品質推論部
12A,12B 無線通信インタフェース
13 記憶部
14 撮像部
15 測位部
16 駆動部
131 事前設定ルール
132 回線管理データベース
133 学習済みモデル
20 遠隔端末
30 学習サーバ
31 制御部
311 情報入力部
312 機械学習部
313 情報出力部
32 通信インタフェース
33 記憶部
331 学習用データベース
332 学習済みモデル
A,A1,A2 アンテナ
AP1~AP9 アクセスポイント
B 建物
P1 移動経路
S スタート地点
図1
図2
図3
図4
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図8