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特開2024-30710化合物、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池
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  • 特開-化合物、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030710
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】化合物、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/22 20060101AFI20240229BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
C07D495/22 CSP
H10K30/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133774
(22)【出願日】2022-08-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/高効率シースルー有機薄膜太陽電池を用いた革新的発電窓の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 格
(72)【発明者】
【氏名】三木江 翼
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔平
【テーマコード(参考)】
4C071
5F151
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071AA08
4C071BB03
4C071BB05
4C071CC04
4C071CC24
4C071EE13
4C071FF03
4C071GG01
4C071GG03
4C071JJ01
4C071KK08
4C071LL10
5F151AA11
5F151CB13
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機薄膜太陽電池材料として利用可能な新たな化合物、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池を提供する。
【解決手段】化合物は、式1で表される。式1中、R及びRは水素、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基であり、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよく、R、R、R及びRはアルキル基を表し、R及びRは特定の環構造を有する基である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される、
【化1】

(式1中、R及びRは水素、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基であり、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよく、R、R、R及びRはアルキル基を表し、R及びRは式2乃至式5のいずれかを表す。式2及び式3中、Xはハロゲン又は水素を表す。式4中、Rはアルキル基を表し、Yは酸素又は硫黄を表す。式5中、R10はアルキル基を表す。)
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記式1中、R及びRの炭化水素基のBuried volumeが30%V以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式1中、R及びRが式11乃至式18のいずれかで表される、
【化2】

ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物を含む、
ことを特徴とする有機薄膜太陽電池材料。
【請求項5】
請求項4に記載の有機薄膜太陽電池材料を含む活性層を有する、
ことを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜太陽電池が注目されている。有機薄膜太陽電池は、無機半導体材料等で作製された太陽電池に比べ、薄く柔軟性に優れるといった利点がある。このため、種々の有機薄膜太陽電池の研究開発が行われている。
【0003】
有機薄膜太陽電池に用いられ得るn型低分子材料として、非フラーレンアクセプターの開発により、有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率の向上が図られている。例えば、非特許文献1、2では、ベンゾチアジアゾール部位を有する化合物を用いることによって、良好なエネルギー変換効率の向上が報じられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Liu Q et al., 18% Efficiency organic solar cells, Science Bulletin, 2020, vol. 65, issue 4, pp. 272-275.
【非特許文献2】Chao Li et al., Non-fullerene acceptors with branched side chains and improved molecular packing to exceed 18% efficiency in organic solar cells, Nat. Energy 2021, 6, 605-613.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種々の有機半導体材料が開示されているものの、材料開発は未だ発展途上にあり、更なる有機半導体材料が求められている。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有機薄膜太陽電池材料として利用可能な新たな化合物、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る化合物は、
式1で表される、
【化1】

(式1中、R及びRは水素、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基であり、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよく、R、R、R及びRはアルキル基を表し、R及びRは式2乃至式5のいずれかを表す。式2及び式3中、Xはハロゲン又は水素を表す。式4中、Rはアルキル基を表し、Yは酸素又は硫黄を表す。式5中、R10はアルキル基を表す。)
ことを特徴とする。
【0008】
前記式1中、R及びRの炭化水素基のBuried volumeが30%V以上であってもよい。
【0009】
また、前記式1中、R及びRが式11乃至式18のいずれかで表されてもよい。
【化2】
【0010】
本発明の第2の観点に係る有機薄膜太陽電池材料は、
本発明の第1の観点に係る化合物を含む、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点に係る有機薄膜太陽電池は、
本発明の第2の観点に係る有機薄膜太陽電池材料を含む活性層を有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機薄膜太陽電池材料として利用可能な新たな化合物、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】化合物4a~化合物4eを用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図2】化合物5cを用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図3】化合物9a、化合物9d、化合物13dを用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
図4】化合物4d及びY6の透過率のグラフである。
図5】PM6/化合物4d及びPM6/Y6の透過率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(化合物)
本実施の形態に係る化合物は、式1で表される。式1で表される化合物は、n型有機半導体材料として利用可能であり、光電変換効果を発揮するので、特に有機薄膜太陽電池材料として利用可能である。
【0015】
【化3】
【0016】
式1中、R及びRは水素、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基である。また、R及びRは、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0017】
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状アルキル基、2-エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、シクロへキシル基等の環状アルキル基、アリール基としてフェニル基等、ヘテロアリール基としてチエニル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。R及びRの具体例として、例えば、式11~式18の構造が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0018】
【化4】
【0019】
また、式1中、R及びR4は、アルキル基を表す。アルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数に制限はなく、例えば、1~40であり、2~30であることが好ましく、6~11であることが好ましい。
【0020】
また、式1中、R及びRは、アルキル基を表す。アルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でもよいが、溶媒への溶解性の観点から分岐鎖状であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数に制限はなく、例えば、1~40であり、2~30であることが好ましく、8~12であることが好ましい。
【0021】
また、式1中、R及びRは式2乃至式5のいずれかを表す。式2及び式3中、Xは、水素又はハロゲンを表す。ハロゲンとして、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、式4中、Rはアルキル基を表し、Yは酸素又は硫黄を表す。また、式5中、R10はアルキル基を表す。
【0022】
【化5】
【0023】
及びRは、嵩高いアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であることが好ましい。R及びRが嵩高いことで、有機薄膜太陽電池に適用した場合に、開放電圧、フィルファクターが向上し、光電変換効率も向上する。例えば、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基は、嵩高さの指標であるBuried volume(https://www.molnac.unisa.it/OMtools/sambvca2.1/index.html)が30%V以上であり、40%V以上であることがより好ましい。
【0024】
また、R及びRが嵩高いことで、J会合的パッキング構造の比率が増加し、吸収波長の長波長化や電子移動度の向上がもたらされる。吸収波長の長波長化により、有機薄膜太陽電池に適用した場合、可視光透過率が高くなるので、有機薄膜太陽電池をガラス窓に配置して利用する等、シースルー型の有機薄膜太陽電池としての利用が期待できる。また、電子移動度の向上により、有機薄膜太陽電池に適用した場合、発電効率が向上することが期待できる。
【0025】
上述した式1で表される化合物は、例えば、以下のように段階的に合成することができる。なお、下記の式21~式28におけるR~R、R、R10及び、Xは、式1~式5とそれぞれ同義である。
【0026】
まず、式21で表される化合物と式22で表される化合物とを反応させる。式21で表される化合物は、Joule 2019, 3, 1140-1151、Nat. Energy 2021, 6, 605-613、Adv. Mater. 2019, 31, 1903441等を参考にして合成することができる。
【0027】
【化6】
【0028】
上記の反応により、ベンゾチアジアゾール部位の硫黄が炭素に置換され、式23で表される化合物が得られる。
【0029】
【化7】
【0030】
次いで、式23で表される化合物とN-ホルミルピペリジン等のホルミル化剤とを反応させ、末端のチオフェン環にホルミル化させ、式24で表される化合物を合成する。
【0031】
【化8】
【0032】
そして、式24で表される化合物と式25~式28で表される化合物のいずれかとを反応させることにより、式1で表される化合物を合成することができる。
【0033】
【化9】
【0034】
(有機薄膜太陽電池材料)
式1で表される化合物は、n型有機半導体(電子受容体/アクセプター)としての機能を発揮するため、有機半導体材料に用いることができる。この有機半導体材料は、湿式成膜法等の塗布法によって有機半導体デバイスの活性層を形成することができる。
【0035】
有機半導体材料は、式1で表される化合物のみを含んでいても、他の有機半導体材料や他の成分を含んでいてもよい。有機薄膜太陽電池材料として用いる場合、組み合わされる他の有機半導体材料は、ドナーとしての機能を発揮する電子供与性化合物を含むことが好ましい。電子供与性化合物は、所謂p型有機半導体材料として機能する化合物であればよく、ポリチオフェンおよびチオフェン系化合物のポリマー等、公知の化合物が用いられる。
【0036】
(有機薄膜太陽電池)
有機薄膜太陽電池は、光活性層に上述した有機薄膜太陽電池材料を含んでいる。有機薄膜太陽電池は、上述した有機薄膜太陽電池材料を用い、塗布法等の公知の手法で作製することができる。有機薄膜太陽電池の構造は、一対の電極の間に光活性層を備える構造であれば特に制限されない。有機薄膜太陽電池の構成は、例えば、以下の態様が挙げられる。なお、p層、p材料とは、上述した電子供与性化合物を含有する層、材料であり、n層、n材料とは、上述した有機薄膜太陽電池材料を含有する層、材料を表す。
(A)電極/p材料とn材料の混合層/電極
(B)電極/p層/p材料とn材料の混合層/n層/電極
(C)電極/p層/n層/電極
【実施例0037】
以下、実施例に基づき、各種化合物の合成、物性、化合物を用いた有機薄膜太陽電池の特性について説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(化合物4a~4e、5cの合成)
下記スキーム1に沿って、段階的に合成を行い、化合物4a~4eを合成した。なお、原料となる化合物1は、Joule 2019, 3, 1140-1151を参考に合成して用いた。
【0039】
【化10】
【0040】
(化合物2aの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(5mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物1(70.0mg,0.0720mmol)と亜鉛(94.1mg,1.44mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mL三口フラスコに移し、ジエチルエーテル(10mL)とアセトン(1mL,13.6mmol)を加えた。反応溶液を室温で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=3:1からヘキサン:ジクロロメタン1:2を展開溶媒としたグラジエントカラムにより精製することで、化合物2a(42.3mg,0.0432mmol,収率60.0%)を得た。
化合物2aの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.96 (s, 2H), 4.39 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 2.76 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.08-1.97 (m, 2H), 1.80 (p, J = 7.4 Hz, 4H), 1.70 (t, J = 5.7 Hz, 6H), 1.38-1.24 (m, 36H), 1.07-0.99 (m, 12H), 0.88 (t, J = 6.7 Hz, 6H), 0.74-0.69 (m, 6H), 0.67-0.63 (m, 6H).
【0041】
(化合物2bの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(5mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物1(60.7mg,0.0624mmol)と亜鉛(81.6g,1.25mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mLの三口フラスコに移し、ジエチルエーテル(10mL)と7-トリデカノン(150mg,0.756mmol)を加えた。反応溶液を室温で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=2:1を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製することで、化合物2b(35.8mg,0.0318mmol,収率51.1%)を得た。
化合物2bの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.95 (s, 2H), 4.44-4.32 (m, 4H), 2.76 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.29-2.18 (m, 4H), 2.04-1.97 (m, 2H), 1.81 (p, J = 7.5 Hz, 4H), 1.41-1.25 (m, 36H), 1.21-1.09 (m, 16H), 1.03-0.93 (m, 12H), 0.88 (t, J = 6.7 Hz, 6H), 0.78 (t, J = 7.0 Hz, 9H), 0.71 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 0.62 (t, J = 6.6 Hz, 3H), 0.56 (t, J = 6.2 Hz, 3H).
【0042】
(化合物2cの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(5mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物1(72.5mg,0.0746mmol)と亜鉛(97.4g,1.49mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mLの三口フラスコに移し、ジエチルエーテル(10mL)とシクロヘキサノン(0.2mL,1.94mmol)を加えた。反応溶液を室温で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=4:1からヘキサン:ジクロロメタン2:1を展開溶媒としたグラジエントカラムにより精製することで、化合物2c(59.9mg,0.0586mmol,収率78.6%)を得た。
化合物2cの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.94 (s, 2H), 4.39 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 2.76 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.06-1.97 (m, 6H), 1.84-1.76 (m, 10H), 1.44-1.26 (m, 36H), 1.07-0.98 (m, 12H), 0.90-0.86 (m, 6H), 0.71-0.65 (m, 12H).
【0043】
(化合物2dの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(15mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物1(156mg,0.160mmol)と亜鉛(209g,3.20mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mLの三口フラスコに移し、テトラヒドロフラン(10mL)と9―フルオレノン(360mL,2.00mmol)を加えた。反応溶液を40℃で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=1:2を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物2d(96.9mg,0.0877mmol,収率54.8%)を得た。
化合物2dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.77 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.37 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.13 (tt, J = 8.0, 4.4 Hz, 2H), 6.95 (s, 2H), 6.76-6.66 (m, 2H), 4.44 (d, J = 4.6 Hz, 4H), 2.69 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.11-2.04 (m, 2H), 1.74 (p, J = 7.5 Hz, 4H), 1.33-1.21 (m, 36H), 1.12-1.02 (m, 12H), 0.87-0.78 (m, 12H), 0.72-0.66 (m, 6H).
【0044】
(化合物2eの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(15mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物1(51.5mg,0.0530mmol)と亜鉛(69.3g,1.06mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mLの三口フラスコに移し、テトラヒドロフラン(10mL)とベンゾフェノン(180mg,0.988mmol)を加えた。反応溶液を60℃で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=2:1を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物2e(21.5mg,0.0194mmol,収率36.7%)を得た。
化合物2eの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.97-7.82 (m, 4H), 7.34-7.19 (m, 6H), 6.95 (s, 2H), 4.37 (d, J = 7.9 Hz, 4H), 2.78 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.03-1.97 (m, 2H), 1.85-1.79 (m, 4H), 1.44-1.26 (m, 36H), 1.08-0.98 (m, 12H), 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 6H), 0.70-0.63 (m, 12H).
【0045】
(化合物3aの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物2a(39.7mg,0.0404mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(4mL)を加えた。反応溶液を―78℃まで冷却した後、n―ブチルリチウム(0.808mmol)を滴下し、―78℃で15分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(1mL,9.01mmol)を加え、―78℃で30分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物3a(37.0mg,0.0357mmol,収率88.3%)を得た。
化合物3aの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.11 (s, 2H), 4.43 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 3.14 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.00-1.94 (m, 2H), 1.88 (p, J = 7.7 Hz, 4H), 1.71-1.68 (m, 6H), 1.44-1.40 (m, 4H), 1.34-1.25 (m, 32H), 1.08-1.00 (m, 12H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 0.77-0.71 (m, 6H), 0.67-0.62 (m, 6H).
【0046】
(化合物3bの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物2b(35.8mg,0.0318mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(3mL)を加えた。反応溶液を-78℃まで冷却した後、n-ブチルリチウム(0.636mmol)を滴下し、-78℃で15分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(1mL,9.01mmol)を加え、-78℃で30分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物3b(29.1mg,0.0247mmol,収率77.7%)を得た。
化合物3bの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.10 (s, 2H), 4.50-4.37 (m, 4H), 3.13 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.28-2.19 (m, 4H), 2.00-1.93 (m, 2H), 1.88 (p, J = 7.7 Hz, 4H), 1.45-1.40 (m, 4H), 1.32-1.24 (m, 32H), 1.21-1.10 (m, 16H), 1.03-0.92 (m, 12H), 0.87 (t, J = 6.7 Hz, 6H), 0.78 (t, J = 7.3 Hz, 9H), 0.73 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 0.61 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 0.53 (t, J = 6.6 Hz, 3H).
【0047】
(化合物3cの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物2c(113mg,0.111mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(12mL)を加えた。反応溶液を-78℃まで冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(2.22mmol)を滴下し、-78℃で20分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(4mL,36.0mmol)を加え、-78℃で30分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物3c(108mg,0.101mmol,収率90.7%)を得た。
化合物3cの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.10 (s, 2H), 4.44 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 3.14 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.28-2.02 (m, 4H), 1.99-1.93 (m, 2H), 1.91-1.85 (m, 4H), 1.83-1.76 (m, 6H), 1.46-1.41 (m, 4H), 1.36-1.25 (m, 32H), 1.07-0.98 (m, 12H), 0.90-0.86 (m, 6H), 0.74-0.69 (m, 6H), 0.67-0.63 (m, 6H).
【0048】
(化合物3dの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物2d(66.5mg,0.0603mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(6.5mL)を加えた。反応溶液を-78℃まで冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(1.21mmol)を滴下し、-78℃で15分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(1mL,9.01mmol)を加え、-78℃で30分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物3d(57.9mg,0.0500mmol,収率82.9%)を得た。
化合物3dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.09 (s, 2H), 7.80 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.40 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.19-7.12 (m, 2H), 6.75-6.65 (m, 2H), 4.56-4.43 (m, 4H), 3.07 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.09-2.00 (m, 2H), 1.81 (p, J = 7.5 Hz, 4H), 1.39-1.33 (m, 4H), 1.28-1.20 (m, 32H), 1.14-1.01 (m, 12H), 0.88-0.78 (m, 12H), 0.73-0.69 (m, 3H), 0.66 (t, J = 6.8 Hz, 3H).
【0049】
(化合物3eの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物2e(21.5mg,0.0194mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(2.1mL)を加えた。反応溶液を-78℃まで冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(0.389mmol)を滴下し、-78℃で5分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(1mL,9.01mmol)を加え、-78℃で15分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物3e(22.2mg,0.0191mmol,収率98.3%)を得た。
化合物3eの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.11 (s, 2H), 7.96-7.82 (m, 4H), 7.36-7.29 (m, 4H), 7.28-7.22 (m, 2H), 4.42 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 3.16 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.99-1.86 (m, 6H), 1.44-1.27 (m, 36H), 1.07-0.99 (m, 12H), 0.89-0.86 (m, 6H), 0.71 (t, J = 7.4 Hz, 6H), 0.64 (t, J = 6.6 Hz, 6H).
【0050】
(化合物4aの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物3a(47.1mg,0.0454mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-イリデン)プロパンジニトリル(94.8mg,0.412mmol)を加え、クロロホルム(20mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.449mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物4a(49.8mg,0.0318mmol,収率75.0%)を得た。
化合物4aの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.12 (s, 2H), 8.56 (dd, J = 10.0, 6.5 Hz, 2H), 7.69 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 4.59 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 3.17 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.07-2.02 (m, 2H), 1.83 (p, J = 7.9 Hz, 4H), 1.71 (t, J = 4.6 Hz, 6H), 1.49-1.45 (m, 4H), 1.29-1.25 (m, 32H), 1.15-1.07 (m, 12H), 0.87 (t, J = 6.6 Hz, 6H), 0.81 (t, J = 7.1 Hz, 6H), 0.71 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0051】
(化合物4bの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物3b(29.1mg,0.0247mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-イリデン)プロパンジニトリル(45.8mg,0.199mmol)を加え、クロロホルム(10mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.217mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物4b(39.6mg,0.0222mmol,収率89.9%)を得た。
化合物4bの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.08 (s, 2H), 8.52 (dd, J = 10.0, 6.4 Hz, 2H), 7.68 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 4.65-4.56 (m, 4H), 3.14 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.28-2.21 (m, 4H), 2.09-2.05 (m, 2H), 1.83 (p, J = 7.9 Hz, 4H), 1.49-1.45 (m, 4H), 1.29-1.20 (m, 48H), 1.07-0.97 (m, 12H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 9H), 0.83-0.79 (m, 9H), 0.68 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.63 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
【0052】
(化合物4cの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物3c(108mg,0.101mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-リデン)プロパンジニトリル(151mg,0.656mmol)を加え、クロロホルム(32mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.717mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物4c(137mg,0.0915mmol,収率91.0%)を得た。
化合物4cの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.09 (s, 2H), 8.53 (dd, J = 9.9, 6.4 Hz, 2H), 7.68 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 4.60 (d, J = 7.9 Hz, 4H), 3.16 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.09-2.02 (m, 6H), 1.86-1.78 (m, 10H), 1.48 (p, J = 6.8 Hz, 4H), 1.32-1.24 (m, 36H), 1.14-1.06 (m, 12H), 0.89-0.85 (m, 6H), 0.83-0.78 (m, 6H), 0.75-0.71 (m, 6H).
【0053】
(化合物4dの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物3d(57.9mg,0.0499mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-イリデン)プロパンジニトリル(75.2mg,0.327mmol)を加え、クロロホルム(16mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.356mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物4d(70.0mg,0.0442mmol,収率88.6%)を得た。
化合物4dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.12 (s, 2H), 8.57 (dd, J = 9.9, 6.5 Hz, 2H), 7.82 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.71 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 7.43 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.19-7.15 (m, 2H), 6.74-6.65 (m, 2H), 4.63 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 3.11 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.15-2.08 (m, 2H), 1.80-1.74 (m, 4H), 1.43-1.37 (m, 4H), 1.25-1.09 (m, 44H), 0.92-0.84 (m, 12H), 0.77-0.71 (m, 6H)..
【0054】
(化合物4eの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物3e(22.2mg,0.0191mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-イリデン)プロパンジニトリル(28.9mg,0.125mmol)を加え、クロロホルム(6mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.136mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物4e(28.3mg,0.0178mmol,収率93.4%)を得た。
化合物4eの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.11 (s, 2H), 8.54 (dd, J = 9.9, 6.4 Hz, 2H), 7.98-7.85 (m, 4H), 7.68 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.38-7.31 (m, 4H), 7.31-7.26 (m, 2H), 4.59 (d, J = 7.3 Hz, 4H), 3.17 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.07-2.02 (m, 2H), 1.88-1.81 (m, 4H), 1.53-1.48 (m, 4H), 1.29-1.25 (m, 32H), 1.15-1.05 (m, 12H), 0.88-0.85 (m, 6H), 0.80-0.70 (m, 12H).
【0055】
(化合物5cの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物3c(53.4mg,0.0496mmol)と3-(ジシアノメチレン)-1-インダノン(62.4mg,0.271mmol)を加え、クロロホルム(16mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.354mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物5c(44.1mg,0.0309mmol,収率62.2%)を得た。
化合物5cの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.15 (s, 2H), 8.75-8.68 (m, 2H), 7.97-7.90 (m, 2H), 7.81-7.70 (m, 4H), 4.59 (d, J = 7.9 Hz, 4H), 3.19 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.08-2.01 (m, 6H), 1.88-1.78 (m, 10H), 1.52-1.46 (m, 4H), 1.28-1.46 (m, 36H), 1.14-1.05 (m, 12H), 0.88-0.85 (m, 6H), 0.81-0.76 (m, 6H), 0.74-0.69 (m, 6H).
【0056】
(化合物9a、9dの合成)
下記スキーム2に沿って、段階的に合成を行い、化合物9a、9dを合成した。なお、原料となる化合物6は、Nat. Energy 2021, 6, 605-613を参考に合成して用いた。
【0057】
【化11】
【0058】
(化合物7aの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(5mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物6(90.0mg,0.0900mmol)と亜鉛(118mg,1.80mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mL三口フラスコに移し、テトラヒドロフラン(10mL)とアセトン(2mL,27.2mmol)を加えた。反応溶液を40℃で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=1:1からヘキサン:ジクロロメタン4:1を展開溶媒としたグラジエントカラムにより精製することで、化合物7a(14.8mg,0.0146mmol,収率16.2%)を得た。
化合物7aの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.93 (s, 2H), 4.39 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 2.68 (d, J = 7.3 Hz, 4H), 2.03-1.91 (m, 4H), 1.69 (t, J = 5.4 Hz, 6H), 1.34-1.23 (m, 36H), 1.07-0.97 (m, 12H), 0.90-0.85 (m, 12H), 0.76-0.69 (m, 6H), 0.67-0.61 (m, J = 6.6 Hz, 6H).
【0059】
(化合物7dの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(6mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物6(105mg,0.105mmol)と亜鉛(137mg,2.10mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mL三口フラスコに移し、テトラヒドロフラン(10mL)と9―フルオレノン(380mg,2.11mmol)を加えた。反応溶液を40℃で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=2:1からヘキサン:ジクロロメタン1:2を展開溶媒としたグラジエントカラムにより精製することで、化合物7d(56.3mg,0.0497mmol,収率47.2%)を得た。
化合物7dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.77 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.40-7.34 (m, 2H), 7.17-7.10 (m, 2H), 6.92 (s, 2H), 6.77-6.66 (m, 2H), 4.52-4.35 (m, 4H), 2.62 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 2.12-2.04 (m, 2H), 1.86 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 1.26-1.03 (m, 48H), 0.86-0.79 (m, 18H), 0.72-0.65 (m, 6H).
【0060】
(化合物8aの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物7a(38.5mg,0.0381mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(4mL)を加えた。反応溶液を-78℃まで冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(0.762mmol)を滴下し、-78℃で15分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(1mL,9.01mmol)を加え、-78℃で30分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物8a(27.1mg,0.0254mmol,収率66.7%)を得た。
化合物8aの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.09 (s, 2H), 4.44 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 3.05 (d, J = 7.5 Hz, 4H), 2.06-1.94 (m, 4H), 1.70 (t, J = 5.1 Hz, 6H), 1.35-1.24 (m, 36H), 1.09-0.98 (m, 12H), 0.89-0.85 (m, 12H), 0.79-0.72 (m, 6H), 0.66-0.59 (m, 6H).
【0061】
(化合物8dの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物7d(56.3mg,0.0497mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(5.3mL)を加えた。反応溶液を-78℃まで冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(0.994mmol)を滴下し、-78℃で15分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(1mL,9.01mmol)を加え、-78℃で30分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物8d(58.2mg,0.0490mmol,収率89.8%)を得た。
化合物8dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.08 (s, 2H), 7.81 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.43-7.38 (m, 2H), 7.20-7.12 (m, 2H), 6.75-6.66 (m, 2H), 4.58-4.41 (m, 4H), 2.99 (d, J = 7.5 Hz, 4H), 2.09-1.99 (m, 2H), 1.98-1.90 (m, 2H), 1.28-1.08 (m, 48H), 0.90-0.81 (m, 18H), 0.70 (t, J = 6.7 Hz, 3H), 0.64 (t, J = 6.8 Hz, 3H).
【0062】
(化合物9aの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物8a(27.1mg,0.0254mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-イリデン)プロパンジニトリル(38.4mg,0.167mmol)を加え、クロロホルム(8.2mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.181mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物9a(21.7mg,0.0146mmol,収率80.1%)を得た。
化合物9aの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.12 (s, 2H), 8.57 (dd, J = 9.7, 6.7 Hz, 2H), 7.70 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 4.58 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 3.14 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 2.08-2.00 (m, 4H), 1.72 (t, J = 4.4 Hz, 6H), 1.41-1.05 (m, 48H), 0.87-0.79 (m, 18H), 0.71-0.65 (m, 6H).
【0063】
(化合物9dの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物8d(58.2mg,0.0490mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-イリデン)プロパンジニトリル(74.0mg,0.322mmol)を加え、クロロホルム(15.8mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.348mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物9d(70.9mg,0.0440mmol,収率89.8%)を得た。
化合物9dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.05 (s, 2H), 8.52 (dd, J = 9.9, 6.5 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.72-7.66 (m, 2H), 7.46-7.40 (m, 2H), 7.21-7.16 (m, 2H), 6.78-6.66 (m, 2H), 4.66 (d, J = 9.8 Hz, 4H), 3.04 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 2.19-2.10 (m, 2H), 1.99-1.90 (m, 2H), 1.28-1.13 (m, 48H), 0.95-0.88 (m, 6H), 0.84-0.68 (m, 18H).
【0064】
下記スキーム3に沿って、段階的に合成を行い、化合物13dを合成した。なお、原料となる化合物10は、Adv. Mater. 2019, 31, 1903441を参考に合成して用いた。
【0065】
【化12】
【0066】
(化合物11dの合成)
50mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、酢酸(5mL)を加え、アルゴンガスでバブリングを30分行った。次に、化合物10(71.6mg,0.0661mmol)と亜鉛(86.4mg,1.32mmol)を加え、140℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、亜鉛を取り除くために、シリンジを用いて反応溶液をアルゴン置換した200mL三口フラスコに移し、テトラヒドロフラン(10mL)と9-フルオレノン(380mg,2.11mmol)を加えた。反応溶液を40℃で12時間攪拌した後、空気でバブリングを4時間行った。酸化反応後、ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。その後、濾過、濃縮を行い、ヘキサン:ジクロロメタン=2:1からヘキサン:ジクロロメタン1:1を展開溶媒としたグラジエントカラムにより精製することで、化合物11d(35.3mg,0.0290mmol,収率43.9%)を得た。
化合物11dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.77 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.40-7.34 (m, 2H), 7.16-7.09 (m, 2H), 6.95 (s, 2H), 6.68 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 4.42 (d, J = 7.9 Hz, 4H), 2.69 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.18-2.08 (m, 2H), 1.78-1.69 (m, 4H), 1.32-1.21 (m, 36H), 1.16-0.99 (m, 28H), 0.88-0.84 (m, 6H), 0.78-0.70 (m, 12H).
【0067】
(化合物12dの合成)
50mLの三口フラスコをフレームドライし、アルゴン置換した後、化合物11d(35.3mg,0.0290mmol)と超脱水テトラヒドロフラン(3.1mL)を加えた。反応溶液を-78℃まで冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(0.580mmol)を滴下し、-78℃で15分攪拌した。その後、N-ホルミルピペリジン(1mL,9.01mmol)を加え、-78℃で30分攪拌し、後に反応溶液を室温で30分攪拌した。反応溶液に水を加え、ヘキサンで抽出した。有機層を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物12d(34.4mg,0.0270mmol,収率93.1%)を得た。
化合物12dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.09 (s, 2H), 7.80 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.43-7.37 (m, 2H), 7.18-7.12 (m, 2H), 6.66 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 4.48 (d, J = 7.9 Hz, 4H), 3.08 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 2.14-2.05 (m, 2H), 1.85-1.77 (m, 4H), 1.39-1.34 (m, 4H), 1.27-1.20 (m, 32H), 1.16-1.00 (m, 28H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 0.77-0.70 (m, 12H).
【0068】
(化合物13dの合成)
200mLの三口フラスコをアルゴン雰囲気下にした後、化合物12d(34.4mg,0.0270mmol)と2-(5,6-ジフルオロ-3-オキソインデン-1-イリデン)プロパンジニトリル(40.7mg,0.177mmol)を加え、クロロホルム(8.7mL)に溶解させた。その後、反応溶液にピリジン(0.193mL)を加え、60℃で一晩攪拌した。反応溶液を希塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後濾過、濃縮を行い、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1の混合溶媒を用いて再結晶を行うことで化合物13d(34.3mg,0.0202mmol,収率74.9%)を得た。
化合物13dの物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.07 (s, 2H), 8.52 (dd, J = 10.0, 6.5 Hz, 2H), 7.82 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.67 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.46-7.39 (m, 2H), 7.20-7.14 (m, 2H), 6.68 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 4.65 (d, J = 7.4 Hz, 4H), 3.08 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.23-1.09 (m, 2H), 1.80-1.73 (m, 4H), 1.43-1.37 (m, 4H), 1.27-1.09 (m, 60H), 0.86-0.82 (m, 6H), 0.80-0.72 (m, 12H).
【0069】
(化合物4a,4b,4c,4d,4e,5c,9a,9d,13dのサイクリックボルタンメトリー測定)
まず、化合物4a,4b,4c,4d,4e,5c,9a,9d,13dの5mg/mLクロロホルム溶液をそれぞれ作製した。次に、作用電極をそれぞれの溶液へディップすることで、薄膜をそれぞれ作製した。その後、作製した薄膜を測定し、得られた電流―電位曲線を解析することで、酸化還元電位を決定した。
【0070】
最高被占有分子軌道(HOMO)準位、最低空分子軌道(LUMO)準位、およびバンドギャップをサイクリックボルタンメトリーにより評価した。表1にこれらの値をまとめた。HOMO準位は-5.70~-5.50eV、LUMO準位は-3.93~-3.80eV、HOMO-LUMOギャップは1.83~1.65eVの間で精密に制御された。
【0071】
【表1】
【0072】
(化合物4a,4b,4c,4d,4e,5c,9a,9d,13dを用いた溶液のUV-vis吸収スペクトル評価)
まず、化合物4a,4b,4c,4d,4e,5c,9a,9dまたは、13dの0.05mg/mLクロロホルム溶液を作製した。さらに、溶液をクロロホルムで5倍希釈することで、評価する溶液を作製した。
【0073】
(化合物4a,4b,4c,4d,4e,5c,9a,9d,13dを用いた薄膜のUV-vis吸収スペクトル評価)
ガラス基板を十分洗浄後、UVオゾン処理を行った。次に、化合物4a,4b,4c,4d,4e,5c,9a,9dまたは、13dの5mg/mLクロロホルム溶液を600rpmで20秒間スピンコートすることで、薄膜を作製した。
【0074】
溶液および薄膜の極大吸収波長、吸収端をUV-vis吸収スペクトルにより評価した。表2にこれらの値をまとめた。
【0075】
【表2】
【0076】
続いて合成した化合物4a,4b,4c,4d,4e,5c,9a,9d,13dを用いて太陽電池素子を作製し、光電変換効率を評価した。
【0077】
(化合物4a,4b,4c,4d,4eを用いた太陽電池素子の評価)
ITO(Indium Tin Oxide)膜がパターンニングされたガラス基板を十分洗浄後、UVオゾン処理を行った。次に、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホナート))を5000rpmで30秒間スピンコートした。150℃で15分間基板を加熱することで、電子取り出し層を形成した。電子取り出し層を成膜した基板をグローブボックス内に持ち込み、化合物4a,4b,4c,4d,4eそれぞれとPM6(下式31で表される化合物)を含むクロロホルム溶液(PM6/化合物4a,4b,4c,4d,4eの重量比=1/1.2)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した(膜厚100nm)。この薄膜を窒素雰囲気下にて、80℃で1分加熱した。さらに活性層上に、PDINO(N,N'-Bis(N,N-dimethylpropan-1-amine oxide)perylene-3,4,9,10-tetracarboxylic diimide)2mgをメタノール1mLに溶解した溶液を3000rpmで30秒間スピンコーすることで、正孔取り出し層を成膜した。次いで電極層として厚さ220nmの銀膜を、抵抗加熱型真空蒸着法により成膜し、4mm角の有機薄膜太陽電池素子を作製した。
【0078】
【化13】
【0079】
(化合物5cを用いた太陽電池素子の評価)
ITO膜がパターンニングされたガラス基板を十分洗浄後、UVオゾン処理を行った。次に、PEDOT:PSSを5000rpmで30秒間スピンコートした。150℃で15分間基板を加熱することで、電子取り出し層を形成した。電子取り出し層を成膜した基板をグローブボックス内に持ち込み、化合物5c及びPBDBTを含むクロロホルム溶液(PBDBT/化合物5cの重量比=1/1.2)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した(膜厚100nm)。この薄膜を窒素雰囲気下にて、80℃で1分加熱した。さらに活性層上に、PDINO2mgをメタノール1mLに溶解した溶液を3000rpmで30秒間スピンコーすることで、正孔取り出し層を成膜した。次いで電極層として厚さ220nmの銀膜を、抵抗加熱型真空蒸着法により成膜し、12.56mm角の有機薄膜太陽電池素子を作製した。
【0080】
(化合物9a,9d,13dを用いた太陽電池素子の評価)
ITO膜がパターンニングされたガラス基板を十分洗浄後、UVオゾン処理を行った。次に、PEDOT:PSSを4000rpmで30秒間スピンコートした。150℃で15分間基板を加熱することで、電子取り出し層を形成した。電子取り出し層を成膜した基板をグローブボックス内に持ち込み、化合物9a,9d,13dそれぞれとPM6を含むクロロホルム溶液(PM6/化合物9a,9d,13dの重量比=1/1.2)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した(膜厚100nm)。この薄膜を窒素雰囲気下にて、80℃で1分加熱した。さらに活性層上に、PDINO2mgをメタノール1mLに溶解した溶液を3000rpmで30秒間スピンコーすることで、正孔取り出し層を成膜した。次いで電極層として厚さ150nmの銀膜を、抵抗加熱型真空蒸着法により成膜し、4mm角の有機薄膜太陽電池素子を作製した。
【0081】
得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定した。図1図2図3に電流密度-電圧特性のグラフを示す。
【0082】
図1図2図3から、それぞれの有機薄膜太陽電池の短絡電流密度Jsc(mAcm-2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FFを求めた。そして、変換効率η(%)を、η=(Jsc×Voc×FF)/100より算出した。これらを表3にまとめた。
【0083】
【表3】
【0084】
比較として、Y6(下式32で表される化合物)と化合物4dの透過率をUV-vis吸収スペクトルにより評価した。図4に透過率のグラフを示す。
【0085】
【化14】
【0086】
得られた図4から370~740nmの波長領域で平均可視透過率AVT(%)を求めた。Y6について、AVT=44.1(%)であった。また、化合物4dについては、AVT=52.7(%)であった。
【0087】
比較として、PM6/Y6複合膜とPM6/化合物4d複合膜の透過率をUV-vis吸収スペクトルにより評価した。図5に透過率のグラフを示す。
【0088】
得られた図5から370~740nmの波長領域で平均可視透過率AVT(%)を求めた。PM6/Y6複合膜について、AVT=32.2(%)であった。また、PM6/化合物4d複合膜については、AVT=35.4(%)であった。
【0089】
化合物4dを用いた場合、Y6を用いた場合に比べて、平均可視光透過率が高いことから、シースルー型の有機薄膜太陽電池に適用できる可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る化合物は、有機薄膜太陽電池の活性層を形成する有機薄膜太陽材料として利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5