IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の特許一覧 ▶ 株式会社IHIシバウラの特許一覧

特開2024-308車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム
<>
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図1
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図2
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図3
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図4
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図5
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図6
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図7
  • 特開-車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000308
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20240101AFI20231225BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G05D1/00 B
A01B69/00 303A
A01B69/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099029
(22)【出願日】2022-06-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、農業機械技術クラスター事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】青木 循
(72)【発明者】
【氏名】林 和信
(72)【発明者】
【氏名】木島 悦男
(72)【発明者】
【氏名】佐野 修一
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043DA01
2B043DA04
2B043DC03
2B043EA02
2B043EA08
2B043EA15
2B043EB05
2B043EB10
2B043EC14
2B043ED03
2B043ED14
2B043ED15
2B043EE01
2B043EE04
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB12
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301GG07
(57)【要約】
【課題】斜面上で作業車両を安定して走行させ、作業を円滑化することが可能となる転倒回避装置等を提供する。
【解決手段】
斜面S上で作業車両における位置情報および車両角度情報を記録し、これら情報を記録した特定の一つの横移動走行における走行経路Kを第一経路K1とし、第一経路K1に対して斜面Sの傾斜方向に隣接して作業車両が第一経路K1の次に横移動走行際に進入する可能性のある仮想的な走行経路Kを第二経路K2としたとき、計算機が、第一経路K1の角度減少位置Pxに対して斜面Sの傾斜方向に隣接する第二経路K2上の角度減少対応位置Pyを含む第二経路K2上の領域を、作業車両が転倒するリスクのあるリスク領域RAであると推定するリスク領域推定部と、作業車両が第二経路K2上のリスク領域RAに近接した際に、作業車両がリスク領域RAに近接したとのリスク情報を生成して発信するリスク情報発信部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機を有し、斜面の傾斜方向に交差する等高線に沿って該斜面を移動する横移動走行を、前記傾斜方向に順次繰り返す作業車両の転倒を回避する車両転倒回避装置であって、
前記計算機は、
前記作業車両の前記斜面上における位置の情報(以下、位置情報)を、該作業車両の前記横移動走行中に取得する位置情報取得部と、
前記横移動走行における前記斜面上の位置毎に、該作業車両の重心を通って車幅方向に延びる幅方向仮想線の水平面に対する車両傾斜角度の情報(以下、車両角度情報)を取得する角度情報取得部と、
前記位置情報および前記車両角度情報を記録する情報記録部と、
記録された前記位置情報および前記車両角度情報を参照し、前記横移動走行を行っている走行経路における前記斜面の基準となる傾斜角度(以下、斜面基準角度)に対して、前記車両傾斜角度が小さくなっている前記斜面上の前記位置を角度減少位置として判定する角度減少位置判定部と、
前記位置情報および前記車両角度情報を記録した特定の一つの前記横移動走行における前記走行経路を第一経路とし、該第一経路に対して前記傾斜方向に隣接して前記作業車両が該第一経路の次に前記横移動走行する際に進入する可能性のある仮想的な前記走行経路を第二経路としたとき、前記第一経路の前記角度減少位置に対して前記傾斜方向に隣接する前記第二経路上の位置(以下、角度減少対応位置)を含む前記第二経路上の領域を、前記作業車両が転倒するリスクのあるリスク領域であると推定するリスク領域推定部と、
前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際に、該作業車両がリスク領域に近接したとのリスク情報を生成して発信するリスク情報発信部と、
を備える車両転倒回避装置。
【請求項2】
リスク領域推定部は、
前記斜面基準角度と、該斜面基準角度よりも小さい前記車両傾斜角度との差分が所定の角度減少量閾値よりも大きくなっている場合の前記角度減少位置に対応する前記角度減少対応位置を含む前記第二経路上の領域を、前記リスク領域であると推定する請求項1に記載の車両転倒回避装置。
【請求項3】
前記角度減少量閾値に前記斜面基準角度を加えた値が、前記作業車両が転倒せずに前記横移動走行可能となる限界値である限界最大傾斜角度以下となるように、前記角度減少量閾値が設定されている請求項2に記載の車両転倒回避装置。
【請求項4】
前記リスク領域推定部は、
前記第一経路に沿って前記角度減少位置が連続しており、且つ、当該連続する距離が所定の距離閾値よりも大きい場合に、前記角度減少対応位置を含む前記第二経路上の領域を前記リスク領域であると推定する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両転倒回避装置。
【請求項5】
前記作業車両の走行を制御するための制御信号を生成して発信する制御信号発信部をさらに備え、
前記制御信号発信部は、前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際または侵入した後に、前記作業車両の走行速度を低下させるための信号を生成し発信する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両転倒回避装置。
【請求項6】
前記作業車両の走行を制御するための制御信号を生成して発信する制御信号発信部をさらに備え、
前記制御信号発信部は、前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に侵入した後において、前記斜面基準角度と、該斜面基準角度よりも大きい前記車両傾斜角度との差分が所定の角度増加量閾値よりも大きくなった場合に、前記作業車両を停止させるための信号を生成し発信する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両転倒回避装置。
【請求項7】
前記角度増加量閾値に前記斜面基準角度を加えた値が、前記作業車両が転倒せずに走行可能となる限界値である限界最大傾斜角度以下となるように、前記角度増加量閾値が設定されている請求項6に記載の車両転倒回避装置。
【請求項8】
前記作業車両の走行を制御するための制御信号を生成し発信する制御信号発信部をさらに備え、
前記制御信号発信部は、前記作業車両を自動で、かつ、予め定められた前記横移動走行の前記走行経路に沿って走行させるための制御信号を生成し発信する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両転倒回避装置。
【請求項9】
前記第一経路を前記横移動走行する前記作業車両における車幅中心と、前記第二経路を前記横移動走行する前記作業車両における車幅中心との前記傾斜方向の間隔が、該作業車両の走行装置における前記車幅方向の幅寸法の1.5倍以下となるように、前記第二経路が設定される請求項1から3のいずれか一項に記載の車両転倒回避装置。
【請求項10】
前記作業車両が前記第一経路を前記横移動走行する際の前記走行装置における前記斜面への接触軌跡の高位縁に対して、前記作業車両が前記第二経路を前記横移動走行する際の前記接触軌跡の低位縁が前記斜面の下方に位置するように、前記第二経路が設定される請求項9に記載の車両転倒回避装置。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両転倒回避装置と、
前記斜面上の前記位置を検知し、検知した前記位置の前記位置情報を前記車両転倒回避装置へ発信する位置情報検知装置と、
前記車両傾斜角度を検知し、検知した該車両傾斜角度の前記車両角度情報を前記車両転倒回避装置へ発信する傾斜角検知装置と、
前記位置情報検知装置および前記傾斜角検知装置を搭載した作業車両と、
を備える作業車両システム。
【請求項12】
前記作業車両は、車幅方向に間隔をあけて配置された一対の履帯によって構成された走行装置を有している請求項11に記載の作業車両システム。
【請求項13】
斜面の傾斜方向に交差する等高線に沿って該斜面を移動する横移動走行を、前記傾斜方向に順次繰り返す作業車両の転倒を回避する車両転倒回避方法であって、
前記作業車両の前記斜面上における位置の情報(以下、位置情報)を、該作業車両の前記横移動走行中に取得する位置情報取得ステップと、
前記横移動走行における前記斜面上の位置毎に、該作業車両の重心を通って車幅方向に延びる幅方向仮想線の水平面に対する車両傾斜角度の情報(以下、車両角度情報)を取得する角度情報取得ステップと、
前記位置情報および前記車両角度情報を記録する情報記録ステップと、
記録された前記位置情報および前記車両角度情報を参照し、前記横移動走行を行っている走行経路における前記斜面の基準となる傾斜角度(以下、斜面基準角度)に対して、前記車両傾斜角度が小さくなっている前記斜面上の前記位置を角度減少位置として判定する角度減少位置判定ステップと、
前記位置情報および前記車両角度情報を記録した特定の一つの前記横移動走行における前記走行経路を第一経路とし、該第一経路に対して前記傾斜方向に隣接して前記作業車両が該第一経路の次に前記横移動走行する際に進入する可能性のある仮想的な前記走行経路を第二経路としたとき、前記第一経路の前記角度減少位置に対して前記傾斜方向に隣接する前記第二経路上の位置(以下、角度減少対応位置)を含む前記第二経路上の領域を、前記作業車両が転倒するリスクのあるリスク領域であると推定するリスク領域推定ステップと、
前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際に、該作業車両がリスク領域に近接したとのリスク情報を生成して発信するリスク情報発信ステップと、
を含む車両転倒回避方法。
【請求項14】
斜面の傾斜方向に交差する等高線に沿って該斜面を移動する横移動走行を、前記傾斜方向に順次繰り返す作業車両の転倒を回避するために、計算機を、
前記作業車両の前記斜面上における位置の情報(以下、位置情報)を、該作業車両の前記横移動走行中に取得する位置情報取得手段、
前記横移動走行における前記斜面上の位置毎に、該作業車両の重心を通って車幅方向に延びる幅方向仮想線の水平面に対する車両傾斜角度の情報(以下、車両角度情報)を取得する角度情報取得手段、
前記位置情報および前記車両角度情報を記録する情報記録手段、
記録された前記位置情報および前記車両角度情報を参照し、前記横移動走行を行っている走行経路における前記斜面の基準となる傾斜角度(以下、斜面基準角度)に対して、前記車両傾斜角度が小さくなっている前記斜面上の前記位置を角度減少位置として判定する角度減少位置判定手段、
前記位置情報および前記車両角度情報を記録した特定の一つの前記横移動走行における前記走行経路を第一経路とし、該第一経路に対して前記傾斜方向に隣接して前記作業車両が該第一経路の次に前記横移動走行する際に進入する可能性のある仮想的な前記走行経路を第二経路としたとき、前記第一経路の前記角度減少位置に対して前記傾斜方向に隣接する前記第二経路上の位置(以下、角度減少対応位置)を含む前記第二経路上の領域を、前記作業車両が転倒するリスクのあるリスク領域であると推定するリスク領域推定手段、および
前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際に、該作業車両がリスク領域に近接したとのリスク情報を生成して発信するリスク情報発信手段、
として機能させるための車両転倒回避プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両転倒回避装置、作業車両システム、車両転倒回避方法、および車両転倒回避プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面などの斜面において草刈り作業を行う際には、リモコン式の自走式草刈機が用いられることがある。この種の草刈機を用いることにより遠隔操作によって草刈作業を行うことができるため、不安定で危険な斜面において作業者が草刈作業を行う必要がなくなり、事故を防ぐことができるだけでなく作業の省力化が可能となり、人手不足の問題も解決し得る。
【0003】
ところで上述したリモコン式の自走式草刈機を使用する場合には、作業者(オペレータ)が斜面から離れた位置から、斜面における地表面の状況を確認しながら草刈作業を行うことになる。このため例えば斜面に雑草が繁殖していると、作業者が地表面の状況を把握することが難しく、仮に草刈機の谷側の走行部(履帯や車輪)が地表面の窪みに侵入してしまうようなことがあると草刈機全体が谷側へ大きく傾き、草刈機が転倒したり斜面から転落したりするおそれがある。
【0004】
ここで例えば特許文献1には、田植機等の作業車両において、車体の傾きが所定の危険角度以上になった際に走行装置の駆動を停止するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-47731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載されたシステムのように車体の傾きを検知してから走行装置の駆動を停止させるようにすると、急な地表面の変化によって急激に車体が傾くような状況においては必ずしも車体の転倒や転落を回避することができない場合がある。特に急斜面に大きな窪みが存在し、この窪みに走行装置が進入してしまうような場合には、特許文献1に記載のシステムでは対応が難しいことが想定される。
【0007】
そこで本発明は、斜面上で作業車両を安定して走行させ、作業を円滑化することができる車両転倒回避装置、車両転倒回避方法、車両転倒回避プログラム、および車両転倒回避装置を備えた作業車両システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両転倒回避装置は、計算機を有し、斜面の傾斜方向に交差する等高線に沿って該斜面を移動する横移動走行を、前記傾斜方向に順次繰り返す作業車両の転倒を回避する車両転倒回避装置であって、前記計算機は、前記作業車両の前記斜面上における位置の情報(以下、位置情報)を、該作業車両の前記横移動走行中に取得する位置情報取得部と、前記横移動走行における前記斜面上の位置毎に、該作業車両の重心を通って車幅方向に延びる幅方向仮想線の水平面に対する車両傾斜角度の情報(以下、車両角度情報)を取得する角度情報取得部と、前記位置情報および前記車両角度情報を記録する情報記録部と、記録された前記位置情報および前記車両角度情報を参照し、前記横移動走行を行っている走行経路における前記斜面の基準となる傾斜角度(以下、斜面基準角度)に対して、前記車両傾斜角度が小さくなっている前記斜面上の前記位置を角度減少位置として判定する角度減少位置判定部と、前記位置情報および前記車両角度情報を記録した特定の一つの前記横移動走行における前記走行経路を第一経路とし、該第一経路に対して前記傾斜方向に隣接して前記作業車両が該第一経路の次に前記横移動走行する際に進入する可能性のある仮想的な前記走行経路を第二経路としたとき、前記第一経路の前記角度減少位置に対して前記傾斜方向に隣接する前記第二経路上の位置(以下、角度減少対応位置)を含む前記第二経路上の領域を、前記作業車両が転倒するリスクのあるリスク領域であると推定するリスク領域推定部と、前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際に、該作業車両がリスク領域に近接したとのリスク情報を生成して発信するリスク情報発信部と、を備えている。
【0009】
また上記の車両転倒回避装置では、リスク領域推定部は、前記斜面基準角度と、該斜面基準角度よりも小さい前記車両傾斜角度との差分が所定の角度減少量閾値よりも大きくなっている場合の前記角度減少位置に対応する前記角度減少対応位置を含む前記第二経路上の領域を、前記リスク領域であると推定してもよい。
【0010】
また上記の車両転倒回避装置では、前記角度減少量閾値に前記斜面基準角度を加えた値が、前記作業車両が転倒せずに前記横移動走行可能となる限界値である限界最大傾斜角度以下となるように、前記角度減少量閾値が設定されていてもよい。
【0011】
また上記の車両転倒回避装置では、前記リスク領域推定部は、前記第一経路に沿って前記角度減少位置が連続しており、且つ、当該連続する距離が所定の距離閾値よりも大きい場合に、前記角度減少対応位置を含む前記第二経路上の領域を前記リスク領域であると推定してもよい。
【0012】
また上記の車両転倒回避装置は、前記作業車両の走行を制御するための制御信号を生成して発信する制御信号発信部をさらに備え、前記制御信号発信部は、前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際または侵入した後に、前記作業車両の走行速度を低下させるための信号を生成し発信してもよい。
【0013】
また上記の車両転倒回避装置は、前記作業車両の走行を制御するための制御信号を生成して発信する制御信号発信部をさらに備え、前記制御信号発信部は、前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に侵入した後において、前記斜面基準角度と、該斜面基準角度よりも大きい前記車両傾斜角度との差分が所定の角度増加量閾値よりも大きくなった場合に、前記作業車両を停止させるための信号を生成し発信してもよい。
【0014】
また上記の車両転倒回避装置では、前記角度増加量閾値に前記斜面基準角度を加えた値が、前記作業車両が転倒せずに走行可能となる限界値である限界最大傾斜角度以下となるように、前記角度増加量閾値が設定されていてもよい。
【0015】
また上記の車両転倒回避装置は、前記作業車両の走行を制御するための制御信号を生成し発信する制御信号発信部をさらに備え、前記制御信号発信部は、前記作業車両を自動で、かつ、予め定められた前記横移動走行の前記走行経路に沿って走行させるための制御信号を生成し発信してもよい。
【0016】
また上記の車両転倒回避装置では、前記第一経路を前記横移動走行する前記作業車両における車幅中心と、前記第二経路を前記横移動走行する前記作業車両における車幅中心との前記傾斜方向の間隔が、該作業車両の走行装置における前記車幅方向の幅寸法の1.5倍以下となるように、前記第二経路が設定されてもよい。
【0017】
また上記の車両転倒回避装置では、前記作業車両が前記第一経路を前記横移動走行する際の前記走行装置における前記斜面への接触軌跡の高位縁に対して、前記作業車両が前記第二経路を前記横移動走行する際の前記接触軌跡の低位縁が前記斜面の下方に位置するように、前記第二経路が設定されてもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る作業車両システムは、上記の車両転倒回避装置と、前記斜面上の前記位置を検知し、検知した前記位置の前記位置情報を前記車両転倒回避装置へ発信する位置情報検知装置と、前記車両傾斜角度を検知し、検知した該車両傾斜角度の前記車両角度情報を前記車両転倒回避装置へ発信する傾斜角検知装置と、前記位置情報検知装置および前記傾斜角検知装置を搭載した作業車両と、を備える。
【0019】
また上記の作業車両システムでは、前記作業車両は、車幅方向に間隔をあけて配置された一対の履帯によって構成された走行装置を有していてもよい。
【0020】
本発明の一態様に係る車両転倒回避方法は、斜面の傾斜方向に交差する等高線に沿って該斜面を移動する横移動走行を、前記傾斜方向に順次繰り返す作業車両の転倒を回避する車両転倒回避方法であって、前記作業車両の前記斜面上における位置の情報(以下、位置情報)を、該作業車両の前記横移動走行中に取得する位置情報取得ステップと、前記横移動走行における前記斜面上の位置毎に、該作業車両の重心を通って車幅方向に延びる幅方向仮想線の水平面に対する車両傾斜角度の情報(以下、車両角度情報)を取得する角度情報取得ステップと、前記位置情報および前記車両角度情報を記録する情報記録ステップと、記録された前記位置情報および前記車両角度情報を参照し、前記横移動走行を行っている走行経路における前記斜面の基準となる傾斜角度(以下、斜面基準角度)に対して、前記車両傾斜角度が小さくなっている前記斜面上の前記位置を角度減少位置として判定する角度減少位置判定ステップと、前記位置情報および前記車両角度情報を記録した特定の一つの前記横移動走行における前記走行経路を第一経路とし、該第一経路に対して前記傾斜方向に隣接して前記作業車両が該第一経路の次に前記横移動走行する際に進入する可能性のある仮想的な前記走行経路を第二経路としたとき、前記第一経路の前記角度減少位置に対して前記傾斜方向に隣接する前記第二経路上の位置(以下、角度減少対応位置)を含む前記第二経路上の領域を、前記作業車両が転倒するリスクのあるリスク領域であると推定するリスク領域推定ステップと、前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際に、該作業車両がリスク領域に近接したとのリスク情報を生成して発信するリスク情報発信ステップと、を含む。
【0021】
本発明の一態様に係る車両転倒回避プログラムは、斜面の傾斜方向に交差する等高線に沿って該斜面を移動する横移動走行を、前記傾斜方向に順次繰り返す作業車両の転倒を回避するために、計算機を、前記作業車両の前記斜面上における位置の情報(以下、位置情報)を、該作業車両の前記横移動走行中に取得する位置情報取得手段、前記横移動走行における前記斜面上の位置毎に、該作業車両の重心を通って車幅方向に延びる幅方向仮想線の水平面に対する車両傾斜角度の情報(以下、車両角度情報)を取得する角度情報取得手段、前記位置情報および前記車両角度情報を記録する情報記録手段、記録された前記位置情報および前記車両角度情報を参照し、前記横移動走行を行っている走行経路における前記斜面の基準となる傾斜角度(以下、斜面基準角度)に対して、前記車両傾斜角度が小さくなっている前記斜面上の前記位置を角度減少位置として判定する角度減少位置判定手段、前記位置情報および前記車両角度情報を記録した特定の一つの前記横移動走行における前記走行経路を第一経路とし、該第一経路に対して前記傾斜方向に隣接して前記作業車両が該第一経路の次に前記横移動走行する際に進入する可能性のある仮想的な前記走行経路を第二経路としたとき、前記第一経路の前記角度減少位置に対して前記傾斜方向に隣接する前記第二経路上の位置(以下、角度減少対応位置)を含む前記第二経路上の領域を、前記作業車両が転倒するリスクのあるリスク領域であると推定するリスク領域推定手段、および前記作業車両が前記第二経路上の前記リスク領域に近接した際に、該作業車両がリスク領域に近接したとのリスク情報を生成して発信するリスク情報発信手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
上記の転倒回避装置等によれば、斜面上で作業車両を安定して走行させ、作業を円滑化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る作業車両システムの上面図である。
図2】上記作業車両システムにおける作業車両が斜面を走行する際の走行経路を示す図である。
図3】上記作業車両システムにおける作業車両の走行経路を拡大して示す図である。
図4】上記作業車両システムにおける車両転倒回避装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】上記作業車両システムにおける車両転倒回避装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】上記作業車両システムにおける作業車両が斜面上の窪みを走行している様子を走行方向から見た図である。
図7】上記作業車両システムにおける車両転倒回避装置で実行されるプログラムのフローチャートであって、リスク領域の推定方法を示す図である。
図8】上記作業車両システムにおける車両転倒回避装置で実行されるプログラムのフローチャートであって、転倒回避方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る作業車両システム100について説明する。
図1に示すように作業車両システム100は、作業車両1と、作業車両1に搭載された位置情報検知装置2、傾斜角検知装置3、および警告装置4と、作業車両1の転倒を回避する車両転倒回避装置5と、車両転倒回避装置5に電気的に接続された電子制御ユニット6(ECU:Electronic Control Unit)とを備えている。
【0025】
(作業車両)
作業車両1は、本実施形態においてはリモコン式の自走式草刈機となっている。作業車両1は、作業車両1から離れた位置に居る作業者(オペレータ)のリモコンによって遠隔操作され、自走しながら草刈り作業を行う。また作業車両1は、走行方向の前端に配置された草刈り装置8と、車幅方向に間隔をあけて配置された一対の履帯9aによって構成された走行装置9とを有している。
なお作業車両1は草刈機には限定されず、斜面Sにおいて集草作業や測量作業等を行う車両であってもよい。
【0026】
作業車両1は、図2に示すように例えば法面等の斜面Sの傾斜方向に交差する等高線に沿って斜面Sを移動する横移動走行を、斜面Sの下方から上方に向かって順次繰り返すように操作される。具体的には作業車両1は、オペレータによるリモコン操作によって斜面S上を特定の一つの横移動走行における走行経路K(第一経路K1)に沿って走行した後に、第一経路K1の終端(例えば斜面Sの端に近接する位置)においてUターンをし、第一経路K1に対して上方に隣接する横移動走行の走行経路K(第二経路K2)を走行する。そしてこのような走行を斜面Sの下方から上方に向かって繰り返し、徐々に斜面Sを登っていく。なお各横移動走行における走行経路Kの終端では、Uターンではなくスイッチバックによって走行方向を変更してもよい。
【0027】
図3に示すように本実施形態では、作業車両1が第一経路K1を走行する際の作業車両1の履帯9aのうち山側の履帯9aの斜面Sへの接触軌跡の高位縁Kxに対して、作業車両1が第二経路K2を走行する際の谷側の履帯9aの斜面Sへの接触軌跡の低位縁Kyが下方に位置するように第二経路K2が設定されている。
【0028】
そして第二経路K2の上方に隣接する次の横移動走行の走行経路Kについても同様に設定される。すなわち上下に隣接する二つの横移動走行の走行経路Kを見たとき、下側の走行経路Kを走行する際の走行装置9の接触軌跡の高位縁Kxに対して、作業車両1が上側の走行経路Kを走行する際の走行装置9の接触軌跡の低位縁Kyが下方に位置する。よって斜面Sの上方から走行装置9を見たとき、下側の走行経路Kを走行している場合の作業車両1と、上側の走行経路Kを走行している場合の作業車両1とを仮に斜面Sの傾斜方向に並べて配置したとすれば、これら作業車両1同士が、車幅方向にオーバーラップするように走行経路Kを設定し、このように設定された走行経路Kに沿ってオペレータが作業車両1を操作するようにしている。
【0029】
なお、上下に隣接する二つの横移動走行の走行経路Kの定義として、上側の走行経路Kを走行する作業車両1における車幅中心と、下側の走行経路Kを走行する作業車両1における車幅中心との間の斜面Sの傾斜方向の間隔w1が、少なくとも走行装置9における車幅方向の幅寸法w9の1.5倍以下であるとよく、本実施形態の場合は、w1がw9の0倍よりも大きく1倍よりも小さい値となっている。なお、このように設定される走行経路Kは仮想的な経路であって、必ずしも設定された走行経路Kの通りに実際に作業車両1が走行するとは限らない。すなわち設定された第二経路K2は、第一経路K1を作業車両1が実際に走行した後に、次に作業車両1が進入する可能性のある仮想的な経路を示す。
【0030】
(位置情報検知装置)
図1に戻って位置情報検知装置2は、斜面Sを横移動走行中に作業車両1の位置を検知し、検知した位置の情報(以下、位置情報とする)の信号を発信するものであって、例えばGNSSセンサ(Global Navigation Satellite System Sensor)等によって構成されている。位置情報検知装置2で検知される位置情報には、例えば緯度および経度の情報が含まれるが、さらに高度の情報も含まれてもよい。なお位置情報検知装置2はGNSSセンサによって構成されたものに限定されない。
【0031】
(傾斜角検知装置)
傾斜角検知装置3は、作業車両1の車両傾斜角度を検知し、検知した車両傾斜角度の情報(以下、車両角度情報)の信号を発信するものであって、加速度センサや傾斜センサ等によって構成されている。ここで本実施形態において車両傾斜角度は、作業車両1の重心Gを通って車幅方向に延びる幅方向仮想線VLの水平面に対する角度を示す。
【0032】
(警告装置)
警告装置4は、例えば警報器や警告灯によって構成され、後述するリスク領域RAへの近接や侵入を音や光によってオペレータへ認識させるものである。
【0033】
(電子制御ユニット(ECU))
電子制御ユニット6は、警告装置4、詳しく後述する車両転倒回避装置5、および作業車両1に搭載されたその他の各種装置や機器に対して通信回線を介して電気的に接続されており、これらの装置や機器を電子制御するものである。より具体的に電子制御ユニット6は後述する車両転倒回避装置5からの信号を受信して警告装置4を動作させたり、作業車両1における走行装置9の動作を制御したりする。走行装置9の制御においては、電子制御ユニット6は例えば作業車両1の走行速度や走行方向を調整したり、作業車両1の走行/停止を切り替えたりする。電子制御ユニット6に接続される通信回線の規格は特に限定されるものではなく有線、無線を問わないが、例えばCAN(Controller Area Network)等が適用される。また電子制御ユニット6は作業車両1に搭載される場合に限定されず、不図示のサーバや上述したリモコン等、作業車両1と離れた位置に設けられていてもよい。
【0034】
なお電子制御ユニット6はオペレータの使用するリモコンにも電気的に接続され、リモコンからの指令によって電子制御ユニット6を介して走行装置9の動作を制御することも可能となっている。この場合電子制御ユニット6は、例えば無線通信によって詳しく後述する車両転倒回避装置5に対して電気的に接続される。
【0035】
(車両転倒回避装置)
次に車両転倒回避装置5について説明する。本実施形態では車両転倒回避装置5は作業車両1に搭載されているが、車両転倒回避装置5は作業車両1に搭載される場合に限定されず、不図示のサーバや上述したリモコン等、作業車両1と離れた位置に設けられていてもよい。この場合車両転倒回避装置5は、例えば無線通信によって電子制御ユニット6に対して電気的に接続される。
【0036】
図4に示すように車両転倒回避装置5は、電子制御ユニット6における不図示のマイクロコンピュータと通信を行う計算機500を有している。この計算機は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ510と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置520と、電源装置530と、入力インターフェース540と、出力インターフェース550と、これらを接続するバス配線560とを有している。CPU501は中央演算処理装置であって後述する車両転倒回避プログラムを実行する。メモリ510はCPU501の作業領域や記憶領域として使用され、記憶装置520はCPU501で実行されるオペレーティングシステムやプログラムや後述する作業車両1の転倒回避に用いられるデータ構造を記憶する。なお記憶装置520にはその他の各種データも蓄積されるようになっている。
【0037】
次に図5を参照し、車両転倒回避装置5において車両転倒回避プログラムによって実現される機能構成について説明する。車両転倒回避装置5は斜面S(図2参照)を走行しながら作業を行う作業車両1の転倒を回避するための装置である。すなわち車両転倒回避装置5は、位置情報取得部50と、角度情報取得部51と、情報記録部52と、角度減少位置判定部53と、リスク領域推定部54と、リスク情報発信部55と、制御信号発信部56とを備えている。
【0038】
(位置情報取得部)
位置情報取得部50は、作業車両1の斜面S上における位置情報を、作業車両1の横移動走行中に取得する。すなわち位置情報取得部50は、作業車両1が特定の一つの横移動走行を行っている際に、上述の位置情報検知装置2によって検知された作業車両1の位置に関する位置情報をリアルタイムで受信して取得する。本実施形態においては、横移動走行の走行経路Kにおいて所定距離(例えば作業車両1における履帯9aの接地長の1/2以下)を作業車両1が進む毎に作業車両1の位置情報が取得されるようになっている。
以下、位置情報取得部50において取得される特定の一つの横移動走行の走行経路Kの走行履歴(本実施形態ではこの走行履歴が第一経路K1と定義される)上の位置を、走行方向の前方側に向かって順にP(1)、P(2)、P(3)、・・・、P(n-1)、P(n)、P(n+1)、・・・と表記する(図2参照)。
【0039】
(角度情報取得部)
角度情報取得部51は、傾斜角検知装置3で検知された車両角度情報を、位置情報取得部50で位置情報を取得した斜面S上の位置毎に、リアルタイムで受信して取得する。
【0040】
(情報記録部)
情報記録部52は、位置情報取得部50で取得した位置情報、および角度情報取得部51で取得した車両角度情報を記録する。
【0041】
(角度減少位置判定部)
角度減少位置判定部53は、情報記録部52に記録された位置情報および車両角度情報を参照し、特定の一つの横移動走行を行っている走行経路K(本実施形態では例えば第一経路K1)における斜面Sの基準となる傾斜角度(以下、斜面基準角度)に対して、車両傾斜角度が部分的に小さくなっている斜面S上の位置を角度減少位置Pxとして判定して角度減少位置Pxを設定する。本実施形態において角度減少位置Pxは、第一経路K1に沿って例えば3カ所連続しており、すなわち位置P(n-1)、P(n)、P(n+1)の三点のそれぞれが角度減少位置Pxとなっている(図2参照)。
【0042】
以下、図6に示すように斜面基準角度をαとし、第一経路K1で実測された車両傾斜角度をβとし、第二経路K2において推定、または実測される車両傾斜角度をγとする。また、斜面基準角度αとしては、事前にドローン撮影やLiDAR(Light Detection And Ranging)を用いて事前に計測して初期値として角度減少位置判定部53に記憶したものを利用してもよい。また斜面基準角度αとして、角度減少位置判定部53によって判定を行っている特定の一つの横移動走行の走行経路Kの下側に隣接する走行経路Kにおいて取得した車両傾斜角度の平均値を利用してもよいし、走行経路Kでの現在の位置を起点とした所定の過去範囲における車両傾斜角度のデータ群の移動平均によってリアルタイムで算出したものを利用してもよく、斜面基準角度αの設定方法は特に限定されない。
【0043】
(リスク領域推定部)
図5に戻って、リスク領域推定部54は、実測値となる第一経路K1の角度減少位置Pxの斜面Sの上方に定義(想定)される第二経路K2上の位置(以下、角度減少対応位置Py)を含む第二経路K2上の領域を、作業車両1が転倒するリスクのあるリスク領域RAであると推定する。すなわち、角度減少位置Pxが判定された走行経路K(第一経路K1)に対して斜面Sの上方に隣接して作業車両1が次に横移動走行する際に進入する可能性のある仮想的な走行経路K(第二経路K2)上の少なくとも一部の領域がリスク領域RAとなる。なお角度減少位置Px以外の第一経路K1上の位置に対応する第二経路K2上の位置を非角度減少対応位置Pzと定義し、この非角度減少対応位置Pzと角度減少対応位置Pyとによって第二経路K2が定義(想定)される。
【0044】
ここで本実施形態では、斜面基準角度αと、斜面基準角度αよりも小さい車両傾斜角度βとの差分:α-βが所定の角度減少量閾値θ1よりも大きくなっている場合、すなわちα-β>θ1となっている場合、角度減少位置Pxに対応する角度減少対応位置Pyを設定する。
【0045】
また本実施形態では作業車両1が転倒せずに斜面S上を等高線に沿って横移動走行可能となる限界値である限界最大傾斜角度をθmaxとしたとき、角度減少量閾値θ1に斜面基準角度αを加えた値が、限界最大傾斜角度θmax以下となるように角度減少量閾値θ1が設定される。すなわちθ1+α≦θmaxを満足する。限界最大傾斜角度θmaxは作業車両1の仕様に依存するが、例えば45度に設定される。
【0046】
さらに本実施形態のリスク領域推定部54では、角度減少位置Pxが連続する距離dが所定の距離閾値dtよりも大きい場合に、すなわち、角度減少対応位置Pyが所定回数(本実施形態では例えば3回)以上連続する場合に、角度減少対応位置Pyを含む第二経路K2上の領域をリスク領域RAであると推定する。
【0047】
(リスク情報発信部)
リスク情報発信部55は、作業車両1が第一経路K1の上方を横移動走行している最中に、仮想的な第二経路K2のリスク領域RAに近接した際、作業車両1がリスク領域RAに近接したとのリスク情報の信号を生成して発信する。リスク情報発信部55が発信した信号は警告装置4によって受信されて警告装置4が動作するようになっている。リスク情報発信部55は例えばリスク領域RAよりも横移動走行における走行方向の手前側1〔m〕の位置に作業車両1が到達した際に、リスク情報を発信するとよい。
【0048】
(制御信号発信部)
制御信号発信部56は、作業車両1が第二経路K2のリスク領域RAに近接した際または侵入した後において、実際の作業車両1の車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きくなった場合に、作業車両1の走行速度を低下させて作業車両1を徐行、または一時停止させるための信号を生成し発信する。制御信号発信部56で生成された信号は、電子制御ユニット6によって受信されて走行装置9の動作が制御されるようになっている。なお制御信号発信部56は、作業車両1の車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きくなった場合に限らず、単に作業車両1が第二経路K2上を走行中にリスク領域RAに近接した際または侵入した後に、作業車両1の走行速度を低下させて作業車両1を徐行、または一時停止させるための信号を生成してもよい。
【0049】
さらに制御信号発信部56は、リスク領域RAに侵入した後に、斜面基準角度αと、斜面基準角度αよりも大きい車両傾斜角度γとの差分:γ-αが所定の角度増加量閾値θ2よりも大きくなった場合、すなわちγ-α>θ2となっている場合において、作業車両1を停止させるための信号を生成し発信する。
【0050】
本実施形態では、角度増加量閾値θ2に斜面基準角度αを加えた値が、上記の限界最大傾斜角度θmax以下となるように角度増加量閾値θ2が設定される。すなわちθ2+α≦θmaxを満足する。
【0051】
(車両転倒回避プログラム)
次に車両転倒回避プログラムのフロー、すなわち車両転倒回避方法について説明する。以下、角度減少位置Pxを判定する走行経路Kが第一経路K1であり、リスク領域RAが存在する走行経路Kが第二経路K2である場合を想定して説明するが、すべての走行経路Kにおいてフローは同様に実行される
まず図7に示すようにリスク領域RAを推定するフローについて説明する。本フローは第一経路K1上において位置P1から順に実行される。
【0052】
リスク領域RAを推定するフローにおいては最初に、データ(位置情報、車両角度情報)を前回取得した位置から作業車両1が所定距離(例えば作業車両1における履帯9aの接地長の1/2以下)移動したか否かを判定する移動距離判定ステップS0を実行する。このステップS0で「YES」と判定された場合には位置情報取得ステップS1に進み、一方、ステップS0で「NO」と判定された場合には、再び移動距離判定ステップS0に戻る。
【0053】
次に位置情報取得ステップS1では、作業車両1が第一経路K1を横移動走行中に第一経路K1上において作業車両1の斜面S上における位置の位置情報を取得する。そして位置情報が取得された位置に対応する作業車両1の車両角度情報を取得する角度情報取得ステップS2を実行する。その後、位置情報および車両角度情報を記録する情報記録ステップS3を実行する。
【0054】
次に角度減少位置判定ステップS4を実行する。このステップS4では、情報記録ステップS3で記録された情報を参照し、車両傾斜角度βが斜面基準角度αよりも小さくなっている場合に「YES」と判定する。一方で車両傾斜角度βが斜面基準角度α以上となっている場合には「NO」と判定し、この「NO」と判定された位置に対応する第二経路K2上の位置を非角度減少対応位置Pzに設定する非角度減少対応位置設定ステップS10を実行した後に、移動距離判定ステップS0に戻る。
【0055】
角度減少位置判定ステップS4で「YES」と判定された場合には、角度減少位置設定ステップS5に進み、角度減少位置判定ステップS4で「YES」と判定された位置を角度減少位置Pxに設定する。そして角度減少位置設定ステップS5の次に、角度減少量判定ステップS6を実行する。このステップS6では、斜面基準角度αと車両傾斜角度βとの差分:α-βが角度減少量閾値θ1よりも大きくなっている場合には「YES」と判定する。一方で、斜面基準角度αと車両傾斜角度βとの差分:α-βが角度減少量閾値θ1以下となっている場合には「NO」と判定し、この「NO」と判定された角度減少位置Pxに対応する第二経路K2上の位置を非角度減少対応位置Pzに設定する非角度減少対応位置設定ステップS10を実行した後に、移動距離判定ステップS0に戻る。
【0056】
角度減少量判定ステップS6で「YES」と判定された場合、この「YES」と判定された角度減少位置Pxに対応する第二経路K2上の位置を角度減少対応位置Pyに設定する角度減少対応位置設定ステップS7を実行し、角度減少距離判定ステップS8に進む。このステップS8では、第一経路K1に沿って角度減少位置Pxが連続する距離dが所定の距離閾値dtよりも大きい場合、すなわち、角度減少位置Pyが所定回数以上連続する場合に「YES」と判定する。具体的には例えば、角度減少位置Pxとなる位置P(n)、位置P(n-1)、位置P(n+1)に対応する三カ所の角度減少対応位置Pyが第二経路K2上において連続する場合に、角度減少距離判定ステップS8で「YES」と判定することになる。一方で角度減少位置Pxが連続する距離dが距離閾値dt以下である場合には「NO」と判定して移動距離判定ステップS0に戻る。
【0057】
角度減少距離判定ステップS8で「YES」と判定された場合、すなわち距離閾値dtよりも長い距離、車両傾斜角度βが斜面基準角度αよりも減少した状態が継続した場合、次にリスク領域推定ステップS9を実行する。このステップS9では、角度減少対応位置Pyを含む第二経路K2上の領域をリスク領域RAであると推定し、この領域RAにおいて斜面S上に「窪みD」が形成されているものと判断する(図6参照)。
【0058】
以上のようなフローを実行することによって、リスク領域RA、およびリスク領域RA以外の安全領域SA(図2参照)を示すデータ構造が車両転倒回避装置5に作成され、記憶されるようになっている。
【0059】
次に図8を参照して、作業車両1の転倒を回避するフローについて説明する。本フローではまず、作業車両1が第二経路K2上のリスク領域RAに近接したか否かを判定するリスク領域近接判定ステップS11を実行する。このステップS11では作業車両1がリスク領域RAに近接した場合に「YES」と判定され、警告ステップS12に進む。このステップS12では、作業車両1がリスク領域RAに近接したとのリスク情報の信号をリスク情報発信部55で生成して発信し、リスク情報の信号を受信した電子制御ユニット6によって警告装置4を動作させてオペレータへ危険を認識させる。
【0060】
警告ステップS12の後、角度増加判定ステップS13を実行する。このステップS13では、作業車両1の車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きくなった場合に「YES」と判定され、速度低下ステップS14に進む。このステップS14では、作業車両1の走行速度を低下させて作業車両1を徐行または一時停止させるための信号を制御信号発信部56で生成し、この制御信号を受信した電子制御ユニット6によって走行装置9を制御して作業車両1の走行速度を低下させ、作業車両1を徐行または一時停止させる。一方で、角度増加判定ステップS13で作業車両1の車両傾斜角度γが斜面基準角度α以下となった場合は「NO」と判定され、リスク領域近接判定ステップS11に戻る。
【0061】
そして速度低下ステップS14の後に、角度増加量判定ステップS15を実行する。このステップS15では、作業車両1が第二経路上K2のリスク領域RAに近接または侵入した後において斜面基準角度αと車両傾斜角度γとの差分:γ-αが所定の角度増加量閾値θ2よりも大きくなった場合に「YES」と判定され、車両停止ステップS16に進む。このステップS16では、作業車両1を停止させるための信号を制御信号発信部56で生成し、この制御信号を受信した電子制御ユニット6によって走行装置9を制御して作業車両1を停止させる。一方で角度増加量判定ステップS15において、斜面基準角度αと車両傾斜角度γとの差分:γ-αが所定の角度増加量閾値θ2以下となった場合には「NO」と判定され、リスク領域近接判定ステップS11に戻る。
【0062】
ところで、リスク領域近接判定ステップS11に戻って、作業車両1がリスク領域RAに近接していない場合には当該ステップS11で「NO」と判定され、この場合においては、まずリスク領域外角度増加判定ステップS21が実行される。このステップS21では、作業車両1の車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きくなった場合に「YES」と判定され、警告・速度低下ステップS22に進む。このステップS22では、作業車両1の警告装置4に対してリスク情報発信部55から信号が発信され、および、電子制御ユニット6に対して制御信号発信部56から信号が発信され、警告装置4によって警告が行われ、かつ、電子制御ユニット6によって作業車両1の速度を低下させて作業車両1を徐行または一時停止させる。一方でリスク領域外角度増加判定ステップS21において「NO」と判定された場合には、リスク領域近接判定ステップS11に戻る。
【0063】
警告・速度低下ステップS22の後、リスク領域外増加継続判定ステップS23を実行する。このステップS23では、作業車両1の車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きくなった状態が所定距離(連続する所定回数分の位置)で継続しているか否かが判定される。具体的には例えば、リスク領域外角度増加判定ステップS21において「YES」と判定された第二経路K2上の位置を位置P(m)とし、その手前の位置P(m-1)においても作業車両1の車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きくなっているような場合に、車両傾斜角度γの増加が継続しているとして「YES」と判定され、車両停止ステップS24に進む。このステップS24では、電子制御ユニット6に対して制御信号発信部56から信号が発信され、電子制御ユニット6によって作業車両1が停止させられる。一方で、リスク領域外増加継続判定ステップS23で「NO」と判定された場合、リスク領域近接判定ステップS11に戻る。
【0064】
なおリスク領域外増加継続判定ステップS23では、角度増加量判定ステップS15と同様に、斜面基準角度αと車両傾斜角度γとの差分:γ-αが所定の角度増加量閾値θ2よりも大きくなった場合に「YES」と判定し、作業車両1を停止させてもよい。
【0065】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作業車両システム100によれば、車両転倒回避装置5によって特定の一つの横移動走行の走行経路K(第一経路K1)を走行しながら、作業車両1の位置および車両傾斜角度をリアルタイムで取得し、次に横移動走行する予定となっている走行経路K(第二経路K2)上におけるリスク領域RAを推定することができる。そして実際に作業車両1がリスク領域RAに近接した際には、警告によってオペレータが作業車両1の転倒の危険性を把握することができる。このため、オペレータは斜面Sの地面の状態を直接目視することができなくとも作業車両1の転倒の可能性を予測でき、作業車両1を徐行させたり停止させたりして、作業車両1の挙動を確認しつつ作業車両1による作業を行うことができる。すなわち斜面S上で作業車両1を安定して走行させ、作業を円滑化することが可能となる。
【0066】
ここで図6に示すように第一経路K1を横移動走行中の作業車両1(1A)における走行装置9の上側のみが窪みDへ侵入してしまう場合、第一経路K1の次の走行経路Kとなる第二経路K2を作業車両1(1B)が走行中には窪みDに走行装置9の下側のみが侵入することが有り得る。この際、第一経路K1を走行中の作業車両1(1A)の車両傾斜角度βと斜面基準角度αとがβ<αを満足し、作業車両1の車両傾斜角度βが斜面Sの傾斜角度にくらべて小さい状態となる。その一方で、第二経路K2を走行中の作業車両1(1B)の車両傾斜角度γと斜面基準角度αとがγ>αを満足し、作業車両1の車両傾斜角度γが斜面Sの傾斜角度にくらべて大きい状態となる。このように第一経路K1上での車両傾斜角度βが斜面基準角度αよりも小さい角度、すなわち作業車両1が転倒しにくい側の値となっていた場合には、逆に第二経路K2上での車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きい角度、すなわち作業車両1が転倒し易い側の値となってしまう。換言すると、第一経路K1上での車両傾斜角度βと斜面基準角度αとの差分:α-βに斜面基準角度αを加えた値:2α-βが第二経路K2上での車両傾斜角度γと略一致する場合があり、転倒の危険性が高くなり得る。
【0067】
この点、本実施形態では斜面基準角度αと車両傾斜角度βとの差分:α-βと、角度減少量閾値θ1との関係が、α-β>θ1を満足する場合の角度減少位置Pxに対応する角度減少対応位置Pyを含む第二経路K2上の領域をリスク領域RAとして推定する。特に本実施形態では、第二経路K2を横移動走行中に作業車両1の車両傾斜角度γが限界最大傾斜角度θmaxを超えてしまわないように角度減少量閾値θ1が設定されている。このため、より効果的に作業車両1の転倒を回避することができる。
【0068】
さらに本実施形態では、角度減少位置Pxが連続する距離dが所定の距離閾値dtよりも大きい場合に、角度減少対応位置Pyを含む第二経路K2上の領域をリスク領域RAと推定する。このため、作業車両1の横移動走行方向に所定の大きさの窪みDが存在する場合のみに危険性を推定し、一方で、作業車両1の走行に支障のない小さな窪みDは無視して作業を継続することができ、作業効率を向上できる。
【0069】
またリスク領域RAに作業車両1が近接した際には、作業車両1がリスク領域RAに近接したとのリスク情報を発信し、警告装置4によって警告を発することができる。したがってオペレータは斜面Sの窪みDに作業車両1が侵入する可能性があることを事前に把握することができ、例えば作業車両1を徐行させたり停止させたりすることが可能となる。
【0070】
さらには、作業車両1がリスク領域RAに近接した際または侵入した後において、車両傾斜角度γが斜面基準角度αよりも大きくなった場合には作業車両1の走行速度を低下させ、徐行または一時停止させることができる。このため速度を緩めることなく作業車両1が窪みDに侵入して走行を継続してしまうことを回避でき、この結果、さらに効果的に、作業車両1の転倒を回避できる。
【0071】
また、作業車両1がリスク領域RAに侵入した後においては、斜面基準角度αと車両傾斜角度γとの差分:γ-αが角度増加量閾値θ2よりも大きくなった場合に作業車両1を停止させることができ、かつ、作業車両1の限界最大傾斜角度θmaxを超えないように角度増加量閾値θ2が設定されている。よってさらに効果的に作業車両1の転倒を回避できる。
【0072】
ところで、第一経路K1と第二経路K2とが斜面Sの傾斜方向に離れた位置に設定されると、仮に第一経路K1の走行によって第二経路K2上にリスク領域RAを推定したとしても、実際に第二経路K2を走行する際にはリスク領域RAと推定された領域に作業車両1が到達した場合に、その領域には実際には窪みDが存在していない可能性がある。すなわち実際には、推定したリスク領域RAの下方に窪みDが存在してしまっている可能性があるため、リスク領域RAの推定が無駄なものになってしまう。
【0073】
この点、本実施形態では作業車両1が第一経路K1を走行する際の作業車両1の履帯9aのうち山側の履帯9aの斜面Sへの接触軌跡の高位縁Kxに対して、作業車両1が第二経路K2を走行する際の谷側の履帯9aの斜面Sへの接触軌跡の低位縁Kyが下方に位置するように第二経路K2が設定され、作業車両1同士が車幅方向にオーバーラップするように走行経路Kが設定されている。このため、リスク領域RAと推定した第二経路K2上の領域に、実際に窪みDが形成されている可能性が高くなり、リスク領域RAの推定によって、実際に作業車両1が窪みDに侵入して転倒してしまうリスクを回避できる。
【0074】
ここで本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、車両転倒回避装置5における制御信号発信部56は、作業車両1を自動で、かつ、予め定められた横移動走行の走行経路Kに沿って走行させるための制御信号を生成し発信してもよい。すなわち制御信号発信部56は、作業車両1の位置情報を取得し、予め記憶された走行経路Kに沿って実際の作業車両1の走行位置を調整するように電子制御ユニット6へ自動運転の指令を出すようにしてもよい。これにより第一経路K1を作業車両1が横移動走行中に等高線に交差する方向へ、すなわち斜面Sの傾斜方向の下方もしくは上方へ斜めに走行してしまうようなことがなくなり、第一経路K1の次に、リスク領域RAを設定した仮想的な第二経路K2からずれた経路を実際に作業車両1が走行してしまうことを回避でき、リスク領域RAの推定が意味のあるものとなり、作業車両1の転倒回避を確実に実行することができる。
【0075】
また上述の実施形態では、斜面Sの傾斜方向に、下方から上方に向かって横移動走行を繰り返す場合について説明したが、これとは逆に、斜面Sの上方から下方に向かって横移動走行を繰り返すように作業車両1を走行させてもよい。この場合、第一経路K1に対して第二経路K2が下方に位置し、角度減少位置Pxに対して斜面Sの下方に角度減少対応位置Pyが配置されていることになる。そしてこの場合、第一経路K1の横移動走行によって、第二経路K2上に「凸地」としてのリスク領域RAを推定することが可能である。
【0076】
また、作業車両1の走行装置9は上述に構造に限定されず、車幅方向に対をなす車輪によって構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の転倒回避装置等によれば、斜面上で作業車両を安定して走行させ、作業を円滑化することが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
1 作業車両
2 位置情報検知装置
3 傾斜角検知装置
4 警告装置
5 車両転倒回避装置
6 電子制御ユニット
9 走行装置
9a 履帯
50 位置情報取得部
51 角度情報取得部
52 情報記録部
53 角度減少位置判定部
54 リスク領域推定部
55 リスク情報発信部
56 制御信号発信部
100 作業車両システム
500 計算機
G 重心
K 走行経路
K1 第一経路
K2 第二経路
Kx 高位縁
Ky 低位縁
Px 角度減少位置
Py 角度減少対応位置
RA リスク領域
S 斜面
VL 幅方向仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8