(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030985
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】含気泡チョコレート用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240229BHJP
A23G 1/38 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134253
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金丸 稚子
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 明
(72)【発明者】
【氏名】大西 清美
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG14
4B014GP04
4B026DG02
4B026DH03
4B026DH05
4B026DH10
4B026DX02
(57)【要約】
【課題】
良好な起泡性及び作業性を有する含気泡チョコレート用油脂組成物を提供することにある。
【解決手段】
下記の(a)から(f)の条件を満たす含気泡チョコレート用油脂組成物。
(a)X3を5~25質量%含有する。
(b)X2Oを10~45質量%含有する。
(c)POPを7.5質量%以下含有する。
(d)StOStを8~35質量%含有する。
(e)XOX/X2Oの質量比が0.85以上である。
(f)XU2+U3を38~75質量%含有する。
X:炭素数16~22の飽和脂肪酸、O:オレイン酸、P:パルミチン酸、St:ステアリン酸、U:炭素数18の不飽和脂肪酸
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)から(f)の条件を満たす含気泡チョコレート用油脂組成物。
(a)X3を5~25質量%含有する。
(b)X2Oを10~45質量%含有する。
(c)POPを7.5質量%以下含有する。
(d)StOStを8~35質量%含有する。
(e)XOX/X2Oの質量比が0.85以上である。
(f)XU2+U3を38~75質量%含有する。
上記の(a)から(f)の条件において、X、O、P、St、U、X3、X2O、POP、StOSt、XOX、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~22の飽和脂肪酸
O:オレイン酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2O:Xが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリド
POP:1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
【請求項2】
請求項1に記載の含気泡チョコレート用油脂組成物を含有する含気泡用チョコレート。
【請求項3】
請求項2に記載の含気泡用チョコレートを起泡させた含気泡チョコレート。
【請求項4】
前記含気泡チョコレートが、テンパリング型チョコレートである請求項3に記載の含気泡チョコレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含気泡チョコレート及び該含気泡チョコレートを得るための含気泡チョコレート用油脂組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
エアインチョコレート、ホイップチョコレート等と言われる含気泡チョコレートは、通常、融解状態のチョコレート自体に空気を抱き込ませて起泡させることにより製造される。含気泡チョコレートは、気泡を含んでいるため、軽い食感と口どけの良さが特徴であり、嗜好性の高いチョコレートとして消費者に好まれている。
【0003】
通常のチョコレートは、そのままでは起泡しにくい。そのため、含気泡チョコレートの製造には、チョコレートが起泡しやすくするために、起泡化剤が使用されることがある。チョコレートの起泡化剤としては、例えば、特許文献1、2の油脂組成物が提案されている。特許文献1、2の油脂組成物のようなチョコレートの起泡化剤は、融解状態のチョコレートに対して少量添加することで、チョコレートを起泡させる。そのため、チョコレートの起泡化剤には、採取しやすいという作業性の良さが求められる。
【0004】
また、チョコレートの起泡化剤を使用して含気泡チョコレートを製造する場合、含気泡チョコレートがテンパリング型チョコレートの時は、製造時にチョコレートが融解するため、テンパリング性が失われる。そのため、チョコレートの起泡化剤を使用してテンパリング型のチョコレートを起泡させる場合は、再度テンパリング処理を行う必要があった。従って、チョコレートの起泡化剤には、チョコレートを起泡させる時にテンパリング処理を行わなくても製造できるという作業性の良さも求められている。
【0005】
以上のような背景から、良好な起泡性及び作業性を有するチョコレートの起泡化剤の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/57715号
【特許文献2】特開2009-60829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、良好な起泡性及び作業性を有する含気泡チョコレート用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、特定の条件を満たす油脂組成物を含気泡チョコレートに使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記の(a)から(f)の条件を満たす含気泡チョコレート用油脂組成物である。
(a)X3を5~25質量%含有する。
(b)X2Oを10~45質量%含有する。
(c)POPを7.5質量%以下含有する。
(d)StOStを8~35質量%含有する。
(e)XOX/X2Oの質量比が0.85以上である。
(f)XU2+U3を38~75質量%含有する。
上記の(a)から(f)の条件において、X、O、P、St、U、X3、X2O、POP、StOSt、XOX、XU2、U3はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16~22の飽和脂肪酸
O:オレイン酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2O:Xが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリド
POP:1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
本発明の第2の発明は、第1の発明に記載の含気泡チョコレート用油脂組成物を含有する含気泡用チョコレートである。
本発明の第3の発明は、第2の発明に記載の含気泡用チョコレートを起泡させた含気泡チョコレートである。
本発明の第4の発明は、前記含気泡チョコレートが、テンパリング型チョコレートである第3の発明に記載の含気泡チョコレートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、良好な起泡性及び作業性を有する含気泡チョコレート用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、下記の(a)から(f)の条件を満たす油脂組成物である。
(a)X3を5~25質量%含有する。
(b)X2Oを10~45質量%含有する。
(c)POPを7.5質量%以下含有する。
(d)StOStを8~35質量%含有する。
(e)XOX/X2Oの質量比が0.85以上である。
(f)XU2+U3を38~75質量%含有する。
【0012】
本発明でチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含まない(水分が好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。)食品のことである。また、本発明でチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートのいずれであってもよい。
また、本発明で含気泡チョコレートとは、気泡を含むチョコレートのことである。含気泡チョコレートは、エアインチョコレート、ホイップチョコレートと言うこともある。
【0013】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、X3を5~25質量%含有し、好ましくは8~22質量%含有し、より好ましくは10~18質量%含有する(条件(a))。なお、本発明でX3は、Xが3分子結合しているトリグリセリド(XXX)である。また、本発明でトリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである。また、本発明でXは、炭素数16~22の飽和脂肪酸である。
【0014】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、X2Oを10~45質量%含有し、好ましくは12~35質量%含有し、より好ましくは13~30質量%含有し、最も好ましくは15~28質量%含有する(条件(b))。なお、本発明でX2Oは、Xが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリド(XXO+XOX+OXX)である。また、本発明でOは、オレイン酸(炭素数18の1価の不飽和脂肪酸)である。
【0015】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、POPを7.5質量%以下含有し、好ましくは0~6.8質量%含有し、より好ましくは0~5.0質量%含有する(条件(c))。なお、本発明でPOPは、1位と3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリドである。また、本発明でPは、パルミチン酸(炭素数16の飽和脂肪酸)である。
【0016】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、StOStを8~35質量%含有し、好ましくは10~30質量%含有し、より好ましくは12~23質量%含有する(条件(d))。なお、本発明でStOStは、1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリドである。また、本発明でStは、ステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)である。
【0017】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、XOX/X2Oの質量比が0.85以上であり、好ましくは0.87以上であり、より好ましくは0.90以上である(条件(e))。なお、本発明でXOX/X2Oの質量比は、X2O含有量(質量%)に対するXOX含有量(質量%)の比のことである。また、本発明でXOXは、1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリドである。
【0018】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、XU2+U3を38~75質量%含有し、より好ましくは45~72質量%含有し、さらに好ましくは48~70質量%含有する(条件(f))。なお、本発明でXU2+U3は、XU2含有量とU3含有量の合計含有量のことである。また、本発明でXU2は、Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド(XUU+UXU+UUX)である。また、本発明でU3は、Uが3分子結合しているトリグリセリド(UUU)である。また、本発明でUは、炭素数18の不飽和脂肪酸である。
【0019】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物が、条件(a)~(f)の範囲を満たすと、良好な起泡性及び作業性を有する含気泡チョコレート用油脂組成物が得られる。なお、本発明で良好な起泡性とは、チョコレートの起泡のしやすさのことである。また、本発明で良好な作業性とは、油脂組成物の採取のしやすさと、含気泡チョコレートの製造時にテンパリング処理が不要であることである。
【0020】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、(P2St+PSt2)/X3の質量比が好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.60~0.90であり、さらに好ましくは0.70~0.85である。なお、本発明で(P2St+PSt2)/X3の質量比は、X3含有量(質量%)に対するP2St含有量とPSt2含有量の合計含有量(質量%)の比のことである。また、本発明でP2Stは、Pが2分子、Stが1分子結合しているトリグリセリド(PPSt+PStP+StPP)である。また、本発明でPSt2は、Pが1分子、Stが2分子結合しているトリグリセリド(PStSt+StPSt+StStP)である。
【0021】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてWを好ましくは90質量%以上含有し、より好ましくは93質量%以上含有し、さらに好ましくは95質量%以上含有する。なお、本発明でWは、炭素数16~18の脂肪酸である。
【0022】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてXを好ましくは25~55質量%含有し、より好ましくは28~53質量%含有し、さらに好ましくは30~50質量%含有する。
【0023】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、P/Stの質量比が好ましくは0.20~1.50であり、より好ましくは0.25~1.30であり、さらに好ましくは0.30~1.20である。なお、本発明でP/Stの質量比は、構成脂肪酸中のSt含有量(質量%)に対するP含有量(質量%)の比のことである。
【0024】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてUを好ましくは45~75質量%含有し、より好ましくは48~72質量%含有し、さらに好ましくは50~70質量%含有する。
【0025】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸としてZを好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは3質量%未満含有し、さらに好ましくは2質量%未満含有する。なお、本発明でZは、炭素数20~22の飽和脂肪酸である。
【0026】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは3質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する。なお、本発明でトランス脂肪酸は、TFAと記載することもある。
【0027】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、油脂以外の成分を添加することもできる。油脂以外の成分の具体例としては、例えば、乳化剤、トコフェロール、茶抽出物(カテキン等)、ルチン等の酸化防止剤、香料等が挙げられる。本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、油脂以外の成分を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは1質量%以下含有する。
【0028】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、トリグリセリドの組成、構成脂肪酸の組成等が前記範囲であれば、特に制限されることなく、通常の食用油脂を使用して製造することができる。本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される食用油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ココアバター、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂等や、これらの加工油脂(水素添加油、分別油、エステル交換油)等が挙げられる。前記食用油脂は2種以上組み合せて使用することもできる。
【0029】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造には、好ましくは下記油脂A、下記油脂B、下記油脂Cを使用する。
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、好ましくは下記油脂Aを10~50質量%、下記油脂Bを5~25質量%、下記油脂Cを40~75質量%含有し、より好ましくは下記油脂Aを12~40質量%、下記油脂Bを7~23質量%、下記油脂Cを50~73質量%含有し、さらに好ましくは下記油脂Aを15~30質量%、下記油脂Bを8~20質量%、下記油脂Cを57~70質量%含有する。
【0030】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、テンパリング型ココアバター代用脂である。テンパリング型ココアバター代用脂は、テンパリング型ハードバターやCBEと言われることもあり、市販品のテンパリング型ココアバター代用脂を使用することができる。本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、下記の条件(A)から(D)を満たす油脂である。
(A)X3を5質量%以下含有する。
(B)X2Oを70~95質量%含有する。
(C)XOX/X2Oの質量比が0.90以上である。
(D)XU2+U3を15質量%以下含有する。
【0031】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、X3を5質量%以下含有し、好ましくは4質量%以下含有し、より好ましくは0.5~3質量%含有する(条件(A))。
【0032】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、X2Oを70~95質量%含有し、好ましくは75~93質量%含有し、より好ましくは80~90質量%含有する(条件(B))。
【0033】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、XOX/X2Oの質量比が0.90以上であり、好ましく0.92以上であり、より好ましくは0.95以上である(条件(C))。
【0034】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、XU2+U3を15質量%以下含有し、好ましくは3~12質量%含有し、より好ましくは5~10質量%含有する(条件(D))。
【0035】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、StOStを好ましくは65~85質量%含有し、より好ましくは67~82質量%含有し、さらに好ましくは70~80質量%含有する。
【0036】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてWを好ましくは90質量%以上含有し、より好ましくは93質量%以上含有し、さらに好ましくは95質量%以上含有する。
【0037】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてXを好ましくは55~75質量%含有し、より好ましくは58~72質量%含有し、さらに好ましくは60~70質量%含有する。
【0038】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、P/Stの質量比が好ましくは1.50以下であり、より好ましくは0.50以下であり、さらに好ましくは0.20以下である。
【0039】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、Uを好ましくは25~45質量%含有し、より好ましくは28~43質量%含有し、さらに好ましくは30~40質量%含有する。
【0040】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは3質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する。
【0041】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、植物油の極度硬化油である。本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸としてXを90質量%以上含有する。
【0042】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸としてXを90質量%以上含有し、好ましくは93質量%以上含有し、さらに好ましくは95質量%以上含有する。
【0043】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、P2St+PSt2を好ましくは65~85質量%含有し、より好ましくは70~83質量%含有し、さらに好ましくは73~82質量%含有する。
【0044】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、好ましくはパーム系油脂の極度硬化油、菜種油の極度硬化油又は大豆油の極度硬化油であり、より好ましくはパーム系油脂の極度硬化油であり、さらに好ましくはパーム油の極度硬化油である。なお、本発明でパーム系油脂とは、パーム油及びパーム分別油(パームオレイン、パームステアリン等)等のパーム油の加工油脂のことである。
【0045】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、液状油(20℃で液状の油脂)又はパームオレインである。本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、XU2+U3を50質量%以上含有する。
【0046】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、XU2+U3を55質量%以上含有し、好ましくは60質量%以上含有し、より好ましくは90質量%以上含有する。
【0047】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、好ましくはヨウ素価60以上のパームオレイン、ひまわり油、大豆油又は菜種油であり、より好ましくはヨウ素価60~70のパームオレイン、ひまわり油、大豆油又は菜種油であり、さらに好ましくはひまわり油、大豆油又は菜種油である。
【0048】
油脂のトリグリセリド含有量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993)準拠)、銀イオンカラム-HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105-107(1995)準拠)及びガスクロマトグラフィー法(AOCS Ce5-86準拠)で測定することができる。
油脂の脂肪酸含有量は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)で測定することができる。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
【0049】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、好ましくはテンパリング型チョコレート用油脂組成物である。
【0050】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を、含気泡チョコレートの製造に用いると、チョコレートが起泡しやすくなる。従って、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、良好な起泡性を有する。
【0051】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、融解させることなく、常温で容易に採取することができる。従って、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、良好な作業性を有する。
【0052】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、シーディング機能を有する。なお、本発明でシーディング機能を有するとは、テンパリング型チョコレートの製造において、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の添加のみで、別途、テンパリング処理(テンパリング操作やシーディング剤の添加)を行うことなく製造することができることをいう。従って、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、良好な作業性を有する。
また、油脂組成物がシーディング機能を有していることの確認は、油脂組成物の結晶多形を製造から4日以内にX線回折装置を用いて測定し、4.6Åのβ回折ピークの有無により行うことができる。
【0053】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を含有する。なお、本発明で含気泡用チョコレートは、気泡を含有させる前のチョコレートのことである。すなわち、含気泡用チョコレートは、起泡させる前のチョコレートのことである。
【0054】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を好ましくは1~20質量%含有し、より好ましくは2~15質量%含有し、さらに好ましくは3~10質量%含有する。
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートが、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を前記範囲で含有すると、良好な起泡性及び作業性を有する含気泡用チョコレートが得られる。
【0055】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、好ましくはテンパリング型チョコレートである。
【0056】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、油脂を好ましくは25~50質量%含有し、より好ましくは28~48質量%含有し、さらに好ましくは30~45質量%含有する。
なお、本発明で油脂とは、チョコレートに含まれる油脂の全てを合わせた全油脂分である。例えば、チョコレートがカカオマス、全脂粉乳、油脂aを含む場合、油脂は、カカオマスに含まれるココアバターと、全脂粉乳に含まれる乳脂と、油脂aとの混合油である。すなわち、本発明で油脂は、チョコレートに配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)を含む。
【0057】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、好ましくは糖質を含有する。なお、本発明で糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。糖質の具体例は、糖類、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。また、本発明で、糖類は、単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等)のことである。また、本発明で糖質は、糖質そのものであり、その他の原材料(例えば、粉乳等)に含まれる糖質は含めない。
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートの製造に使用される糖質は、好ましくは糖類であり、より好ましくは砂糖である。
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、糖質を好ましくは20~60質量%含有し、より好ましくは30~57質量%含有し、さらに好ましくは35~55質量%含有する。
【0058】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、好ましくはカカオ成分を含有する。なお、本発明でカカオ成分とは、カカオ豆から得られるカカオ原料のうち、油脂以外の固形分を含むカカオ原料のことである。カカオ成分の具体例は、カカオマス、ココアパウダー等である。
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートの製造に使用されるカカオ成分は、好ましくはカカオマスである。
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、カカオ成分を好ましくは0~50質量%含有し、より好ましくは20~48質量%含有し、さらに好ましくは25~45質量%含有する。
【0059】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、好ましくは粉乳を含有する。粉乳の具体例は、脱脂粉乳、全脂粉乳等である。本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートの製造に使用される粉乳は、好ましくは全脂粉乳である。
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、粉乳を好ましくは0~30質量%含有し、より好ましくは0~25質量%含有し、さらに好ましくは0~20質量%含有する。
【0060】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、その他にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等)、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0061】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を前記範囲で配合すること以外、特に制限されることなく、通常のチョコレートの製造方法等で製造することができる。通常のチョコレートの製造方法では、例えば、油脂、カカオ成分、糖質、乳製品、乳化剤等を原材料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て、チョコレートを製造する。
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートの製造において、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物は、好ましくは精練工程の後に添加する。本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートの製造において、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物が精練工程の後に添加される場合、チョコレート生地(精練工程の後の製造物)の温度は、好ましくは25~35℃、より好ましくは27~33℃であり、含気泡チョコレート用油脂組成物の温度は、好ましくは33℃以下、より好ましくは27~33℃である。
【0062】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物がシーディング機能を有することから、テンパリング処理(テンパリング操作、シーディング剤の添加)を行わずに(テンパリング工程を経ずに)、製造することができる。通常、テンパリング型チョコレートは、製造時にテンパリング処理を行わないと、モールド成形性が悪くなったり、経時的にブルームが発生して、生産及び品質上に問題が生じる。しかしながら、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を配合した本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、製造時にテンパリング処理を行わなくても、生産及び品質上に問題が生じることはない。
【0063】
本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物の含有量が前記範囲となるように、テンパリング型チョコレートに、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を添加することで、製造することもできる。テンパリング型チョコレートに、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を添加して本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートを製造する場合、融解させたテンパリング型チョコレートに、含気泡チョコレート用油脂組成物を添加し、混合することで製造することができる。融解させたテンパリング型チョコレートに、含気泡チョコレート用油脂組成物を添加する場合、融解させたテンパリング型チョコレートの温度は、好ましくは25~35℃であり、より好ましくは27~33℃であり、含気泡チョコレート用油脂組成物の温度は、含気泡チョコレート用油脂組成物の温度は、好ましくは33℃以下、より好ましくは27~33℃である。
テンパリング型チョコレートに、本発明の実施の形態の含気泡チョコレート用油脂組成物を添加することで本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートを製造する場合も、テンパリング処理は不要である。
また、本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートの製造に使用されるテンパリング型チョコレートは、テンパリング型チョコレートであれば、特に制限されることなく、使用することができ、例えば、市販品のテンパリング型チョコレート等を使用することができる。
【0064】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートを起泡させたチョコレートである。本発明でチョコレートを起泡させるとは、チョコレートに気泡を含有させることである。
【0065】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートを使用する以外、特に制限されることなく、従来公知の方法により製造することができる。本発明の実施の形態の含気泡チョコレートは、好ましくは25~35℃であり、より好ましくは27~33℃に調温された本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートを起泡させる。チョコレートを起泡させる方法としては、例えば、常圧又は減圧下でミキサーにて撹拌する等が挙げられる。ミキサーは、縦型ミキサー、横型ミキサー等を使用することができる。
本発明の実施の形態の含気泡チョコレートの製造時も、起泡前後でテンパリング処理は不要である。
【0066】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレートは、本発明の実施の形態の含気泡用チョコレートを起泡させた後に、好ましくはモールドで成形する。成形に使用されるモールドは、特に制限させることなく、通常、チョコレートの成形に使用されるモールドを使用することができる。
【0067】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレートは、比重が好ましくは1.00未満であり、より好ましくは0.80以上1.00未満であり、さらに好ましくは0.85~0.99であり最も好ましくは0.90~0.98である。
【0068】
本発明の実施の形態の含気泡チョコレートは、複合食品用に使用することができる。なお、本発明で複合食品とは、含気泡チョコレートと他の食品を組み合わせることで得られる複合食品のことである。
【0069】
前記複合食品の製造に使用される他の食品としては、例えば、ドーナツ、食パン、コッペパン、フルーツブレッド、バターロール、フランスパン、ロールパン、菓子パン、スイートドウ、乾パン、マフィン、ベーグル、クロワッサン、デニッシュペーストリー等のベーカリー製品、カステラ、ワッフル、ボーロ、八つ橋、あられ、揚げせんべい、かりんとう、スポンジケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ、バウムクーヘン、フルーツケーキ、マドレーヌ、シュー、エクレア、ミルフィーユ、パイ、タルト、マカロン、ビスケット、クッキー、クラッカー、サブレ、マシュマロ、蒸しパン、プレッツェル、ウエハース、スナック菓子、クレープ、スフレ、ポテトチップス等の菓子、バナナ、りんご、イチゴ等の果物等が挙げられる。
【0070】
前記複合食品は、従来公知の複合食品の製造方法を用いることによって、本発明の実施の形態の含気泡チョコレートと他の食品とを組み合わせることで製造することができる。本発明の実施の形態の含気泡チョコレートと他の食品とを組み合わせる方法としては、例えば、被覆、包餡、注入、巻く、挟む、付着等が挙げられる。
【実施例0071】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例になんら制限されるものではない。
【0072】
<測定方法>
油脂のトリグリセリド含有量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993)準拠)、銀イオンカラム-HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105-107(1995)準拠)及びガスクロマトグラフィー法(AOCS Ce5-86準拠)で測定した。
油脂の脂肪酸含有量は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)で測定した。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」で測定した。
【0073】
<原料油脂>
市販品のテンパリング型ココアバター代用脂(X3含有量:1.6質量%、X2O含有量:86.6質量%、XOX/X2O質量比:0.989、XU2とU3の合計含有量:7.4質量%、StOSt含有量:72.9質量%、W含有量:98.5質量%、X含有量:64.4質量%、P/St質量比:0.052、U含有量:35.3質量%、TFA含有量:0.1質量%)を油脂A1とした。
市販品のテンパリング型ココアバター代用脂(X3含有量:2.3質量%、X2O含有量:81.3質量%、XOX/X2O質量比:0.954、XU2とU3の合計含有量:8.4質量%、W含有量:98.4質量%、X含有量:62.5質量%、P/St質量比:1.117、U含有量:36.6質量%、TFA含有量:0.2質量%)を油脂A2とした。
パーム油の極度硬化油(X含有量:98.2質量%、P2StとPSt2の合計含有量:77.7質量%)を油脂B1とした。
ヨウ素価65のパームオレイン(XU2とU3の合計含有量:65.0質量%)を油脂C1とした。
ひまわり油(XU2とU3の合計含有量:98.2質量%)を油脂C2とした。
大豆油(XU2とU3の合計含有量:93.8質量%)を油脂C3とした。
【0074】
<含気泡チョコレート用油脂組成物の製造>
表1~3に示す配合で、融解させた油脂を、マーガリンプロセッサーを用いて急冷練り合わせを行ことで、含気泡チョコレート用油脂組成物を製造した。得られた含気泡チョコレート用油脂組成物の脂肪酸含有量、トリグリセリド含有量を前述の分析方法に従って測定した。測定結果を表1~3に示した。なお、配合の単位は質量部であり、含有量の単位は質量%である(質量比の単位はなし)。
【0075】
<含気泡チョコレート用油脂組成物の評価1:シーディング機能>
各油脂組成物の結晶多形を、X線回折装置を用いて下記条件で測定した。4.6Åのβ回折ピークがある場合、シーディング機能が有ると判断した。評価結果を表1~3に示した。
〔X線回折の測定〕
各油脂組成物のX線回折は、X線回折装置SmartLab(株式会社リガク社製)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力9kW、操作角1.0~30.0°、ステップ0.02°、測定速度50°/分の条件で測定した。
実施例の
【0076】
<含気泡チョコレート用油脂組成物の評価2:採取性>
20℃の環境下で、薬さじを用いて各油脂組成物を数g(3g程度)採取した。油脂組成物の採取のしやすさ下記評価基準に従って評価した。評価結果は、評価が○又は△の場合、採取性が良好であると判断した。評価結果を表1~3に示した。
○:特に強い力を加えなくても薬さじが油脂組成物の中に入り、油脂組成物を無理なく採取できる。
△:手に強い力を加えることで薬さじが油脂組成物の中に入り、油脂組成物を採取できる。
×:油脂組成物が固く、薬さじが油脂組成物の中に全く入っていかない。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表1~3から分かるように、実施例の油脂組成物は、シーディング機能を有しており、採取もしやすかった。一方、比較例1の油脂組成物は、シーディング機能がなく、採取もしにくかった。また、比較例2の油脂組成物は、採取はしやすいが、シーディング機能がなかった。
【0081】
<含気泡チョコレートの製造>
下記1)~4)の手順に従い、テンパリング処理を行わずに、含気泡チョコレートを製造した(比較例3、4の含気泡チョコレートは、油脂組成物の代わりに、市販のシーディング剤を0.6質量%添加した。)。含気泡チョコレートの起泡性、テンパーインデックス、モールド成形性及びブルーム耐性を、下記評価方法で評価した。評価結果を表5~7に示した。
1)表4に示した配合1又は配合2のテンパリング型チョコレートを完全に融解させた
後、30.0℃に調温する。
2)各油脂組成物を表5~7に示した温度に調温する。
3)縦型ミキサー(製品名:ホバートミキサー、型式:N-50)に、1)で調温した
テンパリング型チョコレートを入れ、さらに、表5~7に示した量の2)で調温した
各油脂組成物を加えることで、含気泡用チョレートを得る。
4)3)で得られる各含気泡用チョコレートを、ワイヤーホイッパーにて2速(125
rpm)で15分間撹拌することで、含気泡チョコレートを得る。
【0082】
<起泡性の評価方法>
撹拌後の含気泡チョコレートの比重を経時的に測定することで、起泡性を評価した。15分間撹拌した後の比重が1.00未満である場合、起泡性が良好であると判断した。
【0083】
<テンパーインデックス(T.I.)の評価方法>
テンパーメーターを用いて30秒間撹拌した後の含気泡チョコレートのテンパーインデックスを測定することで、テンパーインデックスを評価した。テンパーインデックスが3.0以上である場合、テンパーインデックスが良好であると判断した。
【0084】
<モールド成形性の評価方法>
15分間撹拌した後の含気泡チョコレート5gを、モールド(上面が縦16mm×横35mm、下面が縦20mm×横38mm、深さ6mmの立体形状)に流し込み、10℃で30分間冷却した後、デモールドすることで、モールド成形性を評価した。モールド成形性は、下記評価基準に従って評価した。評価結果は、評価が○又は△の場合、モールド成形性が良好であると判断した。
○:チョコレートが問題なく剥離する。
△:チョコレートは剥離するが、チョコレートの一部がモールドに付着している。
×:チョコレートがモールドにひどく付着している。
【0085】
<ブルーム耐性の評価方法>
モールド成形性の評価方法で成形した含気泡チョコレートを、20℃で1週間保存し、ブルーム発生の有無を目視で評価した。ブルーム耐性は、下記評価基準に従って評価した。評価結果は、評価が○の場合、ブルーム耐性が良好であると判断した。
○:特にブルームの発現が見られない。
×:チョコレートの表面に白い油脂結晶のブルームが見られる。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
実施例の含気泡チョコレート用油脂組成物を添加して製造した実施例の含気泡チョコレートは、起泡性、テンパーインデックス、モールド成形性、ブルーム耐性が良好だった。また、実施例の含気泡チョコレート用油脂組成物を使用して製造した含気泡チョコレートは、テンパリング処理を行わずに製造したが、テンパーインデックス、モールド成形性、ブルーム耐性が良好であることから、作業性が良好であることが分かった。
一方、実施例の含気泡チョコレート用油脂組成物を添加せずに製造した比較例の含気泡チョコレートは、起泡性が良好ではなかった。