(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031065
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ガスセンサー用膜、ガスセンサー用膜の製造方法、ガスセンサー、ガスセンサーの製造方法及び触媒部の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N27/12 C
G01N27/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134367
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(72)【発明者】
【氏名】米谷 玲皇
(72)【発明者】
【氏名】割澤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】三田 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】李 昂
(72)【発明者】
【氏名】岡野 真樹子
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046BA01
2G046BA03
2G046BB02
2G046BC01
2G046EA08
2G046FE02
2G046FE11
2G046FE16
2G046FE22
2G046FE29
2G046FE31
2G046FE33
2G046FE34
2G046FE45
2G046FE46
(57)【要約】
【課題】分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うガスセンサー用膜を提供する。
【解決手段】本発明は、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11と、平面視において、前記膜11上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部12と、を有し、前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められているガスセンサー用膜である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜と、
平面視において、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とするガスセンサー用膜。
【請求項2】
前記複数の触媒部は、大きさ又は形状の異なる触媒部を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサー用膜。
【請求項3】
前記設計により予め定められた前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、前記複数の触媒部を前記膜上に形成するためのレジストマスクに表されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサー用膜。
【請求項4】
前記膜11は、分析対象ガスに晒されることにより抵抗値変化を示す半導体酸化膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサー用膜。
【請求項5】
前記半導体酸化膜は、二酸化スズ層であることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサー用膜。
【請求項6】
前記触媒部は、前記膜が分析対象ガスに晒される際に起こす抵抗値変化の感度を高める材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサー用膜。
【請求項7】
前記触媒部は、Pt、Ag、Pd、Au、Rh、Re、Mo、W、Cu、V、Ir、Rh、又はRh-Pt複合触媒のいずれかからなることを特徴とする請求項6に記載のガスセンサー用膜。
【請求項8】
分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜と、
前記膜の一方側に配置された第1電極と、
前記膜の他方側に配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜の抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、
前記抵抗値を測定する前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とするガスセンサー。
【請求項9】
部材上に、所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程(b1)と、
前記第2レジスト膜上及び前記第2開口部内の前記部材上に触媒層を形成する工程(c1)と、
前記第2レジスト膜を除去することにより、前記第2開口部内の前記部材上に一つ又は複数の触媒部が残される工程(d1)と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とする触媒部の製造方法。
【請求項10】
部材上に触媒層を形成する工程(b2)と、
前記触媒層上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する第2レジスト膜を形成する工程(c2)と、
前記第2レジスト膜をマスクとして前記触媒層をエッチングすることにより、前記部材上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部が残される工程(d2)と、
前記第2レジスト膜を除去する工程(e2)と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とする触媒部の製造方法。
【請求項11】
基板上に分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a)と、
前記膜及び前記基板の上に、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程(b1)と、
前記第2レジスト膜上及び前記第2開口部内の前記膜上に触媒層を形成する工程(c1)と、
前記第2レジスト膜を除去することにより、前記第2開口部内の前記膜上に一つ又は複数の触媒部が残される工程(d1)と、
を有することを特徴とするガスセンサー用膜の製造方法。
【請求項12】
基板上に分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a)と、
前記膜及び前記基板の上に触媒層を形成する工程(b2)と、
前記触媒層上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する第2レジスト膜を形成する工程(c2)と、
前記第2レジスト膜をマスクとして前記触媒層をエッチングすることにより、前記膜上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部が残される工程(d2)と、
前記第2レジスト膜を除去する工程(e2)と、
を有することを特徴とするガスセンサー用膜の製造方法。
【請求項13】
前記工程(a)は、
前記基板上に第1開口部を有する第1レジスト膜を形成する工程(a1)と、
前記第1レジスト膜上及び前記第1開口部内の前記基板上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a2)と、
前記第1レジスト膜を除去することにより、前記第1開口部内の前記基板上に前記膜が残される工程(a3)と、
を有することを特徴とする請求項11又は12に記載のガスセンサー用膜の製造方法。
【請求項14】
前記工程(a)は、
前記基板上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a0)と、
前記膜上に、第1開口部を有する第1レジスト膜を形成する工程(a1')と、
前記第1レジスト膜をマスクとして前記膜をエッチングすることにより、前記基板上に前記膜が残される工程(a3')と、
前記第1レジスト膜を除去する工程(a4)と、
を有することを特徴とする請求項11又は12に記載のガスセンサー用膜の製造方法。
【請求項15】
請求項11又は12に記載のガスセンサー用膜の製造方法によりガスセンサー用膜が製造された後に、
前記一つ又は複数の触媒部、前記膜及び前記基板の上に、前記膜上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f)と、
前記第3レジスト膜上及び前記第3開口部内の前記膜上に電極層を形成する工程(g)と、
前記第3レジスト膜を除去することにより、前記第3開口部内の前記膜上に第1電極及び第2電極が残される工程(h)と、
を有し、
前記第1電極は、前記膜の一方側に位置し、
前記第2電極は、前記膜の他方側に位置し、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【請求項16】
請求項11又は12に記載のガスセンサー用膜の製造方法によりガスセンサー用膜が製造された後に、
前記一つ又は複数の触媒部、前記膜及び前記基板の上に、電極層を形成する工程(f0)と、
前記電極層上に、前記膜上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f1)と、
前記第3レジスト膜をマスクとして前記電極層をエッチングすることにより、前記膜上に第1電極及び第2電極が残される工程(h1)と、
前記第3レジスト膜を除去する工程(i)と、
を有し、
前記第1電極は、前記膜の一方側に位置し、
前記第2電極は、前記膜の他方側に位置し、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【請求項17】
請求項11に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f')と、
前記第3レジスト膜上及び前記第3開口部内の前記基板上に電極層を形成する工程(g')と、
前記第3レジスト膜を除去することにより、前記第3開口部内の前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h')と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b1)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程であり、
前記第1電極は、前記膜の一方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第1電極の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極は、前記膜の他方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第2電極の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【請求項18】
請求項11に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に電極層を形成する工程(f0')と、
前記電極層上に、第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f1')と、
前記第3レジスト膜をマスクとして前記電極層をエッチングすることにより、前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h1')と、
前記第3レジスト膜を除去する工程(i)と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b1)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程であり、
前記第1電極は、前記膜の一方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第1電極の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極は、前記膜の他方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第2電極の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【請求項19】
請求項12に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f')と、
前記第3レジスト膜上及び前記第3開口部内の前記基板上に電極層を形成する工程(g')と、
前記第3レジスト膜を除去することにより、前記第3開口部内の前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h')と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び前記第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b2)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び前記第2電極の上に触媒層を形成する工程であり、
前記第1電極は、前記膜の一方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第1電極の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極は、前記膜の他方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第2電極の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【請求項20】
請求項12に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に電極層を形成する工程(f0')と、
前記電極層上に、第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f1')と、
前記第3レジスト膜をマスクとして前記電極層をエッチングすることにより、前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h1')と、
前記第3レジスト膜を除去する工程(i)と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b2)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に触媒層を形成する工程であり、
前記第1電極は、前記膜の一方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第1電極の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極は、前記膜の他方側の下に位置し、且つ前記膜に覆われてない部分もあり、
前記第2電極の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサー用膜、ガスセンサー用膜の製造方法、ガスセンサー、ガスセンサーの製造方法及び触媒部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国の糖尿病患者数は、生活習慣と社会環境の変化に伴って急速に増加している。
糖尿病は自覚症状がないため、無治療のまま放置されることが多く、糖尿病の早期発見は極めて重要となっている。
そこで、糖尿病を早期発見するために、健常者および糖尿病患者の呼気に含まれるアセトン濃度の違いに着目した呼気分析による診断が注目を浴びている。
【0003】
このような呼気分析は非侵襲的で簡易であることから日常的な分析が可能であるが、呼気中にはアセトン以外にも数百種類のガス成分が含まれているため、アセトン濃度を選択的に感度よく(ppmオーダー)検出する必要がある。
そこで、二酸化スズ(SnO2)薄膜をアセトンのような還元性ガスを感知する半導体ガスセンサーを備えたガス分析装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
上述したガス分析装置では、還元性ガスを感知する薄膜を備えているが、分析対象となる還元性ガスが低濃度の場合、その薄膜の還元性ガスに対する感度が十分ではないと、半導体ガスセンサーの測定した抵抗値の変化量が微小となってしまい、ガス濃度値を精度良く分析できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、前述したような技術的背景から見出されたものであって、本発明の目的は、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うガスセンサー用膜、ガスセンサー用膜の製造方法、ガスセンサー、ガスセンサーの製造方法及び触媒部の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
【0008】
[1]分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜と、
平面視において、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とするガスセンサー用膜。
【0009】
本発明の一態様に係る上記[1]のガスセンサー用膜によれば、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜上の所望の位置に、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部を形成する。このように一つ又は複数の触媒部を形成することにより、膜が分析対象ガスに晒された場合に、膜の抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができる。また、一つ又は複数の触媒部12が膜11上に形成される所望の位置、所望の形状及び大きさは、設計により予め定められていることで、高感度のガスセンサー用膜を再現性よく作製することが可能となる。
【0010】
[2]前記複数の触媒部は、大きさ又は形状の異なる触媒部を含むことを特徴とする上記[1]に記載のガスセンサー用膜。
【0011】
[3]前記設計により予め定められた前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、前記複数の触媒部を前記膜上に形成するためのレジストマスクに表されていることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のガスセンサー用膜。
【0012】
本発明の一態様に係る上記[3]のガスセンサー用膜によれば、開口部を有するレジスト膜であるレジストマスクに、設計により膜上の触媒部の予め定められた所望の位置、所望の形状及び大きさを表している。これにより、高感度のガスセンサー用膜を再現性よく作製することができる。
【0013】
[4]前記膜は、分析対象ガスに晒されることにより抵抗値変化を示す半導体酸化膜であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のガスセンサー用膜。
【0014】
[5]前記半導体酸化膜は、二酸化スズ層であることを特徴とする上記[4]に記載のガスセンサー用膜。
【0015】
[6]前記触媒部は、前記膜が分析対象ガスに晒される際に起こす抵抗値変化の感度を高める材料からなることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のガスセンサー用膜。
【0016】
[7]前記触媒部は、Pt、Ag、Pd、Au、Rh、Re、Mo、W、Cu、V、Ir、Rh、又はRh-Pt複合触媒のいずれかからなることを特徴とする上記[6]に記載のガスセンサー用膜。
【0017】
図1参照
[8]分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜と、
前記膜の一方側に配置された第1電極と、
前記膜の他方側に配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜の抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、
前記抵抗値を測定する前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とするガスセンサー。
【0018】
本発明の一態様に係る上記[8]のガスセンサーによれば、第1電極と第2電極との間の抵抗値を測定する膜上の所望の位置に、所望の形状及び所望の大きさを有する触媒部を形成する。このように触媒部12を形成することにより、膜が分析対象ガスに晒された場合に、膜の抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができる。また、触媒部が膜上に形成される所望の位置、所望の形状及び大きさは、設計により予め定められていることで、高感度のガスセンサー用膜を再現性よく作製することが可能となる。
【0019】
[9]部材上に、所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程(b1)と、
前記第2レジスト膜上及び前記第2開口部内の前記部材上に触媒層を形成する工程(c1)と、
前記第2レジスト膜を除去することにより、前記第2開口部内の前記部材上に一つ又は複数の触媒部が残される工程(d1)と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とする触媒部の製造方法。
【0020】
[10]部材上に触媒層を形成する工程(b2)と、
前記触媒層上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する第2レジスト膜を形成する工程(c2)と、
前記第2レジスト膜をマスクとして前記触媒層をエッチングすることにより、前記部材上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部が残される工程(d2)と、
前記第2レジスト膜を除去する工程(e2)と、
を有し、
前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められていることを特徴とする触媒部の製造方法。
【0021】
[11]基板上に分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a)と、
前記膜及び前記基板の上に、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程(b1)と、
前記第2レジスト膜上及び前記第2開口部内の前記膜上に触媒層を形成する工程(c1)と、
前記第2レジスト膜を除去することにより、前記第2開口部30内の前記膜上に一つ又は複数の触媒部が残される工程(d1)と、
を有することを特徴とするガスセンサー用膜の製造方法。
【0022】
本発明の一態様に係る上記[11]のガスセンサー用膜の製造方法によれば、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜上の所望の位置に、所望の形状及び所望の大きさを有する触媒部を形成することができる。このように触媒部を形成することにより、膜が分析対象ガスに晒された場合に、膜の抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができる。
【0023】
[12]基板上に分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a)と、
前記膜及び前記基板の上に触媒層を形成する工程(b2)と、
前記触媒層上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する第2レジスト膜を形成する工程(c2)と、
前記第2レジスト膜をマスクとして前記触媒層をエッチングすることにより、前記膜上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部が残される工程(d2)と、
前記第2レジスト膜を除去する工程(e2)と、
を有することを特徴とするガスセンサー用膜の製造方法。
【0024】
本発明の一態様に係る上記[12]のガスセンサー用膜の製造方法によれば、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜上の所望の位置に、所望の形状及び所望の大きさを有する触媒部を形成することができる。このように触媒部を形成することにより、膜が分析対象ガスに晒された場合に、膜の抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができる。
【0025】
[13]前記工程(a)は、
前記基板上に第1開口部を有する第1レジスト膜を形成する工程(a1)と、
前記第1レジスト膜上及び前記第1開口部内の前記基板上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a2)と、
前記第1レジスト膜を除去することにより、前記第1開口部内の前記基板上に前記膜が残される工程(a3)と、
を有することを特徴とする上記[11]又は[12]に記載のガスセンサー用膜の製造方法。
【0026】
[14]前記工程(a)は、
前記基板上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程(a0)と、
前記膜上に、第1開口部を有する第1レジスト膜を形成する工程(a1')と、
前記第1レジスト膜をマスクとして前記膜をエッチングすることにより、前記基板上に前記膜が残される工程(a3')と、
前記第1レジスト膜を除去する工程(a4)と、
を有することを特徴とする上記[11]又は[12]に記載のガスセンサー用膜の製造方法。
【0027】
[15]上記[11]又は[12]に記載のガスセンサー用膜の製造方法によりガスセンサー用膜が製造された後に、
前記一つ又は複数の触媒部、前記膜及び前記基板の上に、前記膜上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f)と、
前記第3レジスト膜上及び前記第3開口部内の前記膜上に電極層を形成する工程(g)と、
前記第3レジスト膜を除去することにより、前記第3開口部内の前記膜上に第1電極及び第2電極が残される工程(h)と、
を有し、
前記第1電極は、前記膜の一方側に位置し、
前記第2電極は、前記膜の他方側に位置し、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【0028】
[16]上記[11]又は[12]に記載のガスセンサー用膜の製造方法によりガスセンサー用膜が製造された後に、
前記一つ又は複数の触媒部、前記膜及び前記基板の上に、電極層を形成する工程(f0)と、
前記電極層上に、前記膜上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f1)と、
前記第3レジスト膜をマスクとして前記電極層をエッチングすることにより、前記膜上に第1電極及び第2電極が残される工程(h1)と、
前記第3レジスト膜を除去する工程(i)と、
を有し、
前記第1電極は、前記膜の一方側に位置し、
前記第2電極は、前記膜の他方側に位置し、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【0029】
[17]上記[11]に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f')と、
前記第3レジスト膜上及び前記第3開口部内の前記基板上に電極層を形成する工程(g')と、
前記第3レジスト膜を除去することにより、前記第3開口部内の前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h')と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b1)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程であり、
前記第1電極13は、前記膜11の一方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第1電極13の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極14は、前記膜11の他方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第2電極14の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【0030】
本発明の一態様に係る上記[17]のガスセンサーの製造方法によれば、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜上の所望の位置に、所望の形状及び所望の大きさを有する触媒部を形成することができる。このように触媒部を形成することにより、膜が分析対象ガスに晒された場合に、膜の抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができる。
【0031】
[18]上記[11]に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に電極層を形成する工程(f0')と、
前記電極層上に、第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f1')と、
前記第3レジスト膜をマスクとして前記電極層をエッチングすることにより、前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h1')と、
前記第3レジスト膜を除去する工程(i)と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b1)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、前記膜上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部を備えた第2レジスト膜を形成する工程であり、
前記第1電極13は、前記膜11の一方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第1電極13の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極14は、前記膜11の他方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第2電極14の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【0032】
[19]上記[12]に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f')と、
前記第3レジスト膜上及び前記第3開口部内の前記基板上に電極層を形成する工程(g')と、
前記第3レジスト膜を除去することにより、前記第3開口部内の前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h')と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び前記第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b2)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び前記第2電極の上に触媒層を形成する工程であり、
前記第1電極13は、前記膜11の一方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第1電極13の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極14は、前記膜11の他方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第2電極14の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【0033】
[20]上記[12]に記載のガスセンサー用膜の製造方法における前記工程(a)の前に、
前記基板上に電極層を形成する工程(f0')と、
前記電極層上に、第3開口部を備えた第3レジスト膜を形成する工程(f1')と、
前記第3レジスト膜をマスクとして前記電極層をエッチングすることにより、前記基板上に第1電極及び第2電極が残される工程(h1')と、
前記第3レジスト膜を除去する工程(i)と、
を有し、
前記工程(a)は、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜を形成する工程であり、
前記工程(b2)は、前記膜、前記基板、前記第1電極及び第2電極の上に触媒層を形成する工程であり、
前記第1電極13は、前記膜11の一方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第1電極13の一部が露出する部分もあり、
前記第2電極14は、前記膜11の他方側の下に位置し、且つ前記膜11に覆われてない部分もあり、
前記第2電極14の一部が露出する部分もあり、
前記一つ又は複数の触媒部は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記膜上に位置することを特徴とするガスセンサーの製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明の種々の態様によれば、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うガスセンサー用膜、ガスセンサー用膜の製造方法、ガスセンサー、ガスセンサーの製造方法及び触媒部の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】(A)は、本発明の一態様に係るガスセンサー用膜を備えたガスセンサーを示す断面図であり、(B)は、(A)に示すガスセンサーの平面図である。
【
図2】(i)~(xi)は、
図1(A)、(B)に示すガスセンサー用膜を備えたガスセンサーの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3】(A)は、本発明に係る実施例1のガスセンサー用膜を撮像したSEM画像であり、(B)は、本発明に係る実施例2のガスセンサー用膜を撮像したSEM画像であり、(C)は、本発明に係る実施例3のガスセンサー用膜を撮像したSEM画像である。
【
図4】本発明に係る実施例1~3のガスセンサーの各々を純空気に30ppmのアセトンを含む雰囲気中で感度を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0037】
(第1の実施形態)
図1(A)は、本発明の一態様に係るガスセンサー用膜を備えたガスセンサーを示す断面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示すガスセンサーの平面図である。なお、
図1(A)、(B)に記載された寸法は、後述する実施例1~3のサンプルの寸法であって、単なる一例であり、適宜変更して実施することも可能である。
【0038】
本発明の一態様に係る上記[1]のガスセンサー用膜は、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11と、平面視において、この膜11上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する複数の触媒部12と、を有している。前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められているとよい。なお、本実施形態では、複数の触媒部12を膜11上に形成しているが、これに限定されず、一つの触媒部12を膜11上に形成することも可能である。
【0039】
また、複数の触媒部12は、大きさ又は形状の異なる触媒部を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の一態様に係る上記[8]のガスセンサーは、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11と、この膜11の一方側に配置された第1電極13と、膜11の他方側に配置された第2電極14と、第1電極13と第2電極14との間の膜11aの抵抗値を測定する抵抗値測定手段(図示せず)と、前記抵抗値を測定する膜11a上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する一つ又は複数の触媒部12と、を有している。前記所望の位置、前記所望の形状及び前記所望の大きさは、設計により予め定められているとよい。
【0041】
以下に詳細に説明する。
図1(A)に示すように、基板10上には分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11が形成されている。なお、基板10は、例えばSi基板上にSiO
2膜を形成したものを用いるとよい。また、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11は、例えば、分析対象ガスに晒されることにより抵抗値変化を示す半導体酸化膜又は還元性ガスに応答し抵抗値変化を示す半導体酸化膜であるとよく、その半導体酸化膜は例えばn型金属半導体酸化膜であるとよく、具体的には半導体酸化膜は二酸化スズ層(SnO
2層)であるとよい。
【0042】
膜11の一方側11bの上には第1電極13が形成されており、膜11の他方側11cの上には第2電極14が形成されている。第1電極13及び第2電極14の各々は例えばPt電極を用いることができるが、Ptに限定されるものではなく、他の材料からなる電極を用いてもよい。
【0043】
図1(B)に示すように、膜11は、膜11の一方側11bと膜11の他方側11cとの間に抵抗値を測定する膜11aを有している。平面視において、抵抗値を測定する膜11aは第1電極13と第2電極14との間に位置している。第1電極13は膜11の一方側11bより平面形状の大きさが小さく、第2電極14は膜11の他方側11cより平面形状の大きさが小さい。
【0044】
また、上記の抵抗値を測定する膜11aは、分析対象ガスに晒されることにより抵抗値変化を示す半導体酸化膜又は還元性ガスに応答し抵抗値変化を示す層である。つまり、膜11aが晒される雰囲気により膜11aの抵抗値が変化することで雰囲気中の還元性ガスをセンシングすることができる。膜11aの純粋な空気雰囲気での抵抗値と還元性ガスを含む空気雰囲気での抵抗値の比を感度と呼ぶ。なお、本明細書において、感度Sとは、純粋な空気雰囲気での抵抗値をRairとし、還元性ガスを含む空気雰囲気での抵抗値をRgasとした場合に、以下の(式1)で示すものである。
S=Rair/Rgas-1 ・・・(式1)
【0045】
図1(A)では、膜11aが二酸化スズ層(SnO
2層)である場合を示している。この二酸化スズ層11aが空気雰囲気に晒されると酸素などのガスのイオンが二酸化スズ層11aに吸着し、その吸着ガスのイオンが二酸化スズ層11aに空乏層16を形成する。膜11aに還元性ガスを含む空気雰囲気に晒されると、上述した空乏層16の一部が一時的に消失して膜11aの抵抗値が下がる。この抵抗値の変化を測定することにより還元性ガスの濃度を測定することができる。
【0046】
図1(A)、(B)に示すように、抵抗値を測定する膜11a上には、設計により予め定められた所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する複数の触媒部12が形成されている。この触媒部12は、上記の膜11が分析対象ガスに晒される際に起こす抵抗値変化の感度を高める材料からなるとよく、例えば、Pt、Ag、Pd、Au、Rh、Re、Mo、W、Cu、V、Ir、Rh、又はRh-Pt複合触媒のいずれかからなるとよい。
【0047】
本実施形態によれば、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11において、第1電極13と第2電極14との間に位置する抵抗値を測定する膜11a上の所望の位置に、所望の形状及び所望の大きさを有する複数の触媒部12を形成する。このように複数の触媒部12を形成することにより、膜11aが分析対象ガスに晒された場合に、膜11aの抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができる。また、複数の触媒部12が膜11上に形成される所望の位置、所望の形状及び大きさは、設計により予め定められていることで、高感度のガスセンサー用膜を再現性よく作製することが可能となる。
【0048】
(第2の実施形態)
図2(i)~(xi)は、
図1(A)、(B)に示すガスセンサー用膜を備えたガスセンサーの製造方法を説明するための断面図であり、
図1(A)、(B)と同一部分には同一符号を付す。
【0049】
図2(iv)に示すように、基板10上に分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11を形成する(工程(a))。
この工程(a)を詳細に説明すると以下のとおりである。
図2(i)に示すように、基板10上に第1レジスト膜21を塗布する。
次いで、
図2(ii)に示すように、第1レジスト膜21を露光、現像することにより、基板10上に第1開口部21aを有する第1レジスト膜21を形成する(工程(a1))。なお、基板10は、例えばSi基板上にSiO
2膜を形成したものである。
次に、
図2(iii)に示すように、第1レジスト膜21上及び第1開口部21a内の基板10上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11を形成する(工程(a2))。この膜11は例えばスパッタリング法により成膜されたSnO
2膜が用いられる。
この後、第1レジスト膜21を除去することにより、第1開口部21a内の基板10上に膜11が残される(工程(a3))。即ち、基板10上に膜11を形成する(
図2(iv)参照)。これは、所謂リフトオフ法である。
【0050】
次に、
図2(iv)に示すように、膜11及び基板10の上に第2レジスト膜31を塗布する。次いで、
図2(v)に示すように、第1レジスト膜31を露光、現像することにより、膜11及び基板10の上に、膜11上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部30を備えた第2レジスト膜31を形成する(工程(b1))。
なお、本明細書において、膜11には、例えばワイヤーなどの形状を有する部材も含むものとする。ワイヤーを用いる場合は、基板10を有することなく、ワイヤー単体で実施することも可能である。
【0051】
この後、
図2(vi)に示すように、第2レジスト膜31上及び第2開口部30内の膜11上に触媒層12aを形成する(工程(c1))。
【0052】
次に、
図2(vii)に示すように、第2レジスト膜31を除去することにより、第2開口部30内の膜11上に複数の触媒部12が残される(工程(d1))。このようにして膜11上に複数の触媒部12が製造される。つまり、複数の触媒部12の所望の位置、所望の形状及び所望の大きさは、設計により予め定められており、複数の触媒部12を膜11上に形成するための第2レジスト膜(レジストマスク)31に表されている。これにより、高感度のガスセンサー用膜を再現性よく作製することができる。
【0053】
この後、
図2(viii)に示すように、基板10、膜11及び複数の触媒部12の上に第3レジスト膜41を塗布する。次いで、
図2(ix)に示すように、第3レジスト膜41を露光、現像することにより、膜11上に第3開口部40を備えた第3レジスト膜41を形成する。
【0054】
次に、
図2(x)に示すように、第3レジスト膜41上及び第3開口部40a内の膜11上に電極層51を形成する。この電極層51は例えばPt層が用いられる。
【0055】
次に、
図2(xi)に示すように、第3レジスト膜41を除去することにより、第3開口部40内の膜11上に電極層51が残される。これにより、膜11の一方側11bの上には第1電極13が形成され、膜11の他方側11cの上には第2電極14が形成される。第1電極13と第2電極14の間には平面視において抵抗値を測定する膜11aが形成される(
図1(B)参照)。このようにしてガスセンサー用膜を備えたガスセンサーが製造される。
【0056】
なお、第1レジスト膜21、第2レジスト膜31及び第3レジスト膜41はPMMA(Poly Methyl Methacrylate)が用いられる。
【0057】
本実施形態によれば、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11上の所望の位置に、所望の形状及び所望の大きさを有する複数の触媒部12を形成することができる。このように複数の触媒部12を形成することにより、膜11が分析対象ガスに晒された場合に、膜11の抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができる。
【0058】
なお、本実施形態では、
図2に示すようにリフトオフ法を用いているが、エッチング法に変更して実施してもよい。この変更例について以下に説明するが、本実施形態のリフトオフ法と異なる部分が明確になるように説明する。
【0059】
上記の工程(a)をエッチング法に変更した変更例1について以下に説明する。なお、
図2に示す膜等と対応する膜については同一符号を付しつつ説明する。
【0060】
基板10上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11を形成する(工程(a0)、図示せず)。次に、膜11上に第1レジスト膜21を塗布する。次いで、第1レジスト膜21を露光、現像することにより、膜11上に第1開口部21aを有する第1レジスト膜21を形成する(工程(a1'))。次に、第1レジスト膜21をマスクとして前記膜11をドライエッチング又はウェットエッチングすることにより、基板10上に膜11が残される(工程(a3'))。次いで、第1レジスト膜21を除去する(工程(a4))。
【0061】
また、
図2(iv)に示すように、基板10上に分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11を形成する(工程(a))。次いで、膜11及び基板10の上に触媒層を形成する(工程(b2)、図示せず)。
【0062】
次に、この触媒層上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する第2レジスト膜を形成する(工程(c2)、図示せず)。この第2レジスト膜は
図2(vi)に示す第2レジスト膜31と同様である。
【0063】
この後、第2レジスト膜をマスクとして触媒層をドライエッチング又はウェットエッチングすることにより、膜11上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する複数の触媒部12が残される(工程(d2))。
次に、第2レジスト膜を除去する(工程(e2))。このようにして膜11上に複数の触媒部12が製造される。
【0064】
また、
図2(vii)に示すように、膜11上に複数の触媒部12が製造された後に、複数の触媒部12、膜11及び基板10の上に、電極層51を形成する(工程(f0)、図示せず)。次に、電極層51上に、膜11上に第3開口部40を備えた第3レジスト膜41を形成する(工程(f1)、図示せず)。次いで、第3レジスト膜41をマスクとして電極層51をドライエッチング又はウェットエッチングすることにより、膜11上に第1電極13及び第2電極14が残される(工程(h1)、図示せず)。次いで、第3レジスト膜41を除去する(工程(i)、図示せず)。これにより、膜11の一方側11bの上には第1電極13が形成され、膜11の他方側11cの上には第2電極14が形成される。第1電極13と第2電極14の間には平面視において抵抗値を測定する膜11aが形成される(
図1(B)参照)。このようにしてガスセンサー用膜を備えたガスセンサーが製造される。
【0065】
上記の変更例1においても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように第1電極13及び第2電極14を膜11の上に形成しているが、第1電極13及び第2電極14を膜11の下に形成してもよい。この変更例2について以下に説明するが、本実施形態と異なる部分が明確になるように説明する。なお、
図1及び
図2に示す電極層や膜等と対応する層や膜については同一符号を付しつつ説明する。
【0067】
図2(i)に示す工程の前に、基板10上に第3開口部40を備えた第3レジスト膜41を形成する(工程(f')、図(ix)参考)。次いで、第3レジスト膜41上及び第3開口部40内の基板10上に電極層51を形成する(工程(g')、図(x)参考)。次いで、第3レジスト膜41を除去することにより、第3開口部40内の基板10上に第1電極13及び第2電極14が残される(工程(h')、図(xi)参考)。
【0068】
次に、基板10、第1電極13及び第2電極14の上に第1レジスト膜21を塗布する(
図2(i)参考)。
次いで、第1レジスト膜21を露光、現像することにより、基板10、第1電極13及び第2電極14の上に第1開口部21aを有する第1レジスト膜21を形成する(
図2(ii)参考)。
次に、第1レジスト膜21上及び第1開口部21a内の基板10、第1電極13及び第2電極14の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11を形成する(
図2(iii)参考)。
この後、第1レジスト膜21を除去することにより、第1開口部21a内の基板10、第1電極13及び第2電極14の上に膜11が残される(
図2(iv)参考)。これは、所謂リフトオフ法である。
【0069】
次に、膜11、基板10、第1電極13及び第2電極14の上に、膜11上の所望の位置に形成され、所望の形状及び所望の大きさを有する第2開口部30を備えた第2レジスト膜31を形成する(
図2(v)参考)。このようにして製造されるガスセンサーは、第1電極13が膜11の一方側の下に位置し、第2電極14が膜11の他方側の下に位置し、複数の触媒部12が、第1電極13と第2電極14との間の膜11a上に位置するものである(図示せず)。ただし、第1電極13及び第1電極14の各々の一部は、膜11に覆われてない部分もあり、膜11の下に位置しない部分もあってもよく、第1電極13及び第1電極14の各々の一部が露出する部分もある状態も含むものである。
【0070】
上記の変更例2においても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、以下のように変更して実施してもよい。これを変更例3とする。
図2(i)に示す工程の前に、基板10上に電極層51を形成する(工程(f0')、図示せず)。次いで、電極層51上に、第3開口部40を備えた第3レジスト膜41を形成する(工程(f1')、図示せず)。次に、第3レジスト膜41をマスクとして電極層51をエッチングすることにより、基板10上に第1電極13及び第2電極14が残される(工程(h1')、図示せず)。次いで、第3レジスト膜41を除去する(工程(i)、図示せず)。
【0072】
この後は、上記の変更例2の工程(h')の後の工程を同様に実施すればよいので、説明を省略する。
【0073】
上記の変更例3においても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、以下のように変更して実施してもよい。これを変更例4とする。
図2(i)に示す工程の前に、上記の変更例2と同様の工程(f')、工程(g')、工程(h')を実施する。
【0075】
次に、基板10、第1電極13及び第2電極14の上に、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11を形成する(工程(a)、
図2(iv)参考)。次いで、膜11、基板10、第1電極13及び第2電極14の上に触媒層を形成する(工程(b2)、図示せず)。
【0076】
次に、この触媒層上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する第2レジスト膜を形成する(工程(c2)、図示せず)。この第2レジスト膜は
図2(vi)に示す第2レジスト膜31と同様である。
【0077】
この後、第2レジスト膜をマスクとして触媒層をドライエッチング又はウェットエッチングすることにより、膜11上に、所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する複数の触媒部12が残される(工程(d2))。
次に、第2レジスト膜を除去する(工程(e2))。このようにして膜11上に複数の触媒部12が製造される(図(vii)参考)。このようにして製造されるガスセンサーは、第1電極13が膜11の一方側の下に位置し、第2電極14が膜11の他方側の下に位置し、複数の触媒部12が、第1電極13と第2電極14との間の膜11a上に位置するものである(図示せず)。ただし、第1電極13及び第1電極14の各々の一部は、膜11に覆われてない部分もあり、膜11の下に位置しない部分もあってもよく、第1電極13及び第1電極14の各々の一部が露出する部分もある状態も含むものである。
【0078】
上記の変更例4においても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、以下のように変更して実施してもよい。これを変更例5とする。
図2(i)に示す工程の前に、上記の変更例3と同様の工程(f0')、工程(f1')、工程(h1')、(工程(i)を実施する。
【0080】
この後は、上記の変更例4の工程(h')の後の工程を同様に実施すればよいので、説明を省略する。
【0081】
上記の変更例5においても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例0082】
図3(A)は、本発明に係る実施例1のガスセンサーの抵抗値を測定する膜の表面を撮像したSEM画像であり、
図3(B)は、本発明に係る実施例2のガスセンサーの抵抗値を測定する膜を撮像したSEM画像であり、
図3(C)は、本発明に係る実施例3のガスセンサーの抵抗値を測定する膜を撮像したSEM画像である。
【0083】
実施例1~3の各々のガスセンサーは、
図2(i)~(xi)に示す工程で作製され、前述したように
図1(A)、(B)に記載された寸法で作製されたものである。ガスセンサーの抵抗値を測定する膜11aは、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11の表面に複数の触媒部12が形成されたものである。
【0084】
図3(A)~(C)に示す実施例1~3の各々のSEM画像は、
図1(B)に示す第1電極13と第2電極14との間の抵抗値を測定する膜11aの表面をSEMで撮像した画像である。抵抗値を測定する膜11aの厚さは
図1(A)に示す100nmであり、膜11aの幅は
図1(B)に示す100μmであり、膜11aの長さは
図1(B)に示す500μmである。
【0085】
図3(A)の実施例1のガスセンサーの抵抗値を測定する膜11a上の触媒部12の径は150nmであり、
図3(B)の実施例2のガスセンサーの抵抗値を測定する膜11a上の触媒部12の径は100nmであり、
図3(C)の実施例3のガスセンサーの抵抗値を測定する膜11a上の触媒部12の径は50nmである。隣り合う触媒部の間隔(即ち触媒部の中心間距離)は200nmであって実施例1~3の各々で同様である。なお、触媒部12の中心とは、平面視において最も長い部分の線分の中心を意味する。
【0086】
上記以外の点は実施例1~3のガスセンサーは全く同様に作製されている。
詳細には以下のとおりである。
図2に示す基板10はSi基板上にSiO
2膜を形成したものを用い、第1レジスト膜21、第2レジスト膜31及び第3レジスト膜41はPMMAを用い、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11はスパッタリング法により成膜されたSnO
2層をリフトオフ法により形成したもの用い、触媒部12はスパッタリング法により成膜されたPt層をリフトオフ法により形成したものを用い、第1電極13及び第2電極14の各々はPt電極を用いた。寸法の詳細は、
図1(A)に示す第1電極13及び第2電極14の各々の厚さが300nmであり、
図1(B)に示す第1電極13及び第2電極14の各々の幅が300μm、分析対象ガスに晒されると抵抗値変化を起こす材料からなる膜11の一方側11b及び他方側11cの各々の長さが500μmである。
【0087】
図4は、実施例1~3のガスセンサーの各々を純空気に30ppmのアセトンを含む雰囲気中で感度を測定した結果を示す図であり、縦軸が感度で、横軸が触媒部径を示している。
【0088】
図4に示すように、触媒部であるPt粒子の粒径が小さくなるにつれて、感度が増加することが確認された。このことから、第1電極13と第2電極14との間に位置する抵抗値を測定する膜11a上に、設計により予め定められた所望の位置、所望の形状及び所望の大きさを有する複数の触媒部12を形成することにより、膜11aが分析対象ガスに晒された場合に、膜11aの抵抗値変化の感度を向上させることができ、その結果、分析対象ガスが低濃度であっても感度良くガス分析を行うことができるといえる。
なお、触媒部なしのガスセンサーの感度は0.99であった。