(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031292
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240229BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134758
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】豊田 美希
(72)【発明者】
【氏名】大田 政太郎
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA33
2H290BD01
2H290BF13
2H290BF24
2H290BF25
2H290BF54
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2H290DA03
4J043PA04
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA05
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4J043SA06
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4J043SB03
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4J043UA041
4J043UA062
4J043UA131
4J043UA151
4J043UA632
4J043UB021
4J043UB131
4J043UB211
4J043UB221
4J043UB401
4J043XA19
4J043YA06
4J043ZA21
4J043ZA41
4J043ZA60
4J043ZB21
4J043ZB23
4J043ZB60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低温保管時に固形分が析出しない液晶配向剤、及び、高い電圧保持率を有し、且つ、蓄積電荷の絶対値を低減し、発生した電荷を短時間で低減できる液晶配向膜が得られる液晶配向剤を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるジアミン及び式(2)で表されるジアミンを含むジアミン成分と、式(T
B)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分と、の重合反応により得られる、ポリアミック酸を含有する液晶配向剤であって、上記テトラカルボン酸成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体を含まないテトラカルボン酸成分であって、上記ジアミン成分は、カルボキシ基を有するジアミン、並びに、H
2N-Y
N-NH
2で表されるジアミンの各々の使用量が、ポリアミック酸の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、0~30モル%である、前記液晶配向剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジアミン(a1)及び下記式(2)で表されるジアミン(a2)を含むジアミン成分と、下記式(T
B)で表されるテトラカルボン酸二無水物(t
B)を含有するテトラカルボン酸成分と、の重合反応により得られる、ポリアミック酸(P)を含有することを特徴とする液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体を含まないテトラカルボン酸成分であって、
前記ジアミン成分は、カルボキシ基を有するジアミン、並びに、H
2N-Y
N-NH
2(Y
Nは、窒素含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有構造を有する2価の有機基である。)で表されるジアミンの各々の使用量が、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、0~30モル%である、前記液晶配向剤。
【化23】
(式中、R、R’は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~3の1価の有機基を表す。
Xは、*-Ar-*、又は、*-Ar-CR
2R
2’-Ar-*(Arはベンゼン環を表し、R
2、R
2’は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~3の1価の有機基を表す。*は結合手を表す。)で表される2価の有機基を表す。
式(1)又は(2)が有するベンゼン環の任意の水素原子は1価の基で置き換えられてもよい。
n1、n2は、それぞれ独立して、1~2の整数を表す。)
【請求項2】
前記テトラカルボン酸成分が、更に下記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化24】
(式(T)中、Xは、下記式(x-1)~(x-10)のいずれかから選ばれる構造を表す。)
【化25】
(式中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表し、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。nは0~6の整数であり、nが0の場合、単結合を表す。)
【請求項3】
前記ジアミン(a1)及びジアミン(a2)の使用量の合計が、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、60モル%以上である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
カルボキシ基を有するジアミン、及び、前記H2N-YN-NH2で表されるジアミンの使用量の合計が、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、30モル%以下である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記液晶配向剤が、さらに、ジアミン(a1)、ジアミン(a2)及びテトラカルボン酸二無水物(tB)の少なくとも一つを含有しないモノマー成分を用いて得られる、
ポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(Q)を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記重合体(Q)が、「A-X-J」で表される芳香族ジアミン、光重合性基を末端に有するジアミン、ラジカル開始機能を有するジアミン、及び光増感機能を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも一つのジアミンを含有するジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である、請求項5に記載の液晶配向剤。
(前記「A-X-J」において、Aは2つの第一級アミノ基が芳香族基に結合した1価の基を表す。
Xは、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-(A0)m0-((CH2)a1-A1)m1-(a1は1~15の整数であり、A0、A1は、それぞれ独立して酸素原子又は-COO-を表し、m0は0又は1の整数であり、m1は1~2の整数である。m1が2の場合、複数のa1及びA1は、それぞれ独立して上記定義を有する。)を表す。
Jは、炭素数4~40の脂環式炭化水素基及び炭素数6~40の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する1価の有機基を表す。但し、上記脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の少なくとも一つは、ハロゲン原子、ハロゲン原子含有アルキル基、ハロゲン原子含有アルコキシ基、炭素数3~10のアルキル基、炭素数3~10のアルコキシ基、および炭素数3~10のアルケニル基のいずれかである置換基(v)によって置換されている。更にこれらの置換基(v)(但し、ハロゲン原子を除く。)における任意の炭素-炭素単結合は-O-で中断されていても良い。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項9】
以下の工程(1)~(3)をこの順に行う、液晶表示素子の製造方法。
工程(1):請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の少なくとも一方の基板上に塗布して塗膜を形成する工程
工程(2):前記塗膜を焼成する工程
工程(3):前記一対の基板の間に液晶層を形成して液晶セルを作製する工程
【請求項10】
工程(1)~(3)の後に、以下の工程(4)をさらに行う、請求項9に記載の液晶表示素子の製造方法。
工程(4):前記液晶セルに光を照射する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、携帯電話、スマートフォンなどの小型用途から、テレビ用、モニター用などの比較的大型の用途まで幅広く使用されている。液晶表示素子は、一般的に、一対の電極基板を所定間隙(数μm)介し互いに対向するように配置するとともに電極基板の間に液晶を封入して構成されている。そして、電極基板の各電極を構成する透明導電膜間に電圧を印加することによって、液晶表示素子における表示を行うようにされている。これら液晶表示素子は、液晶分子の配列状態を制御するために不可欠な液晶配向膜を有する。
【0003】
一方、液晶表示素子としては、電極構造や、使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されている。例えば、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane Switching)方式、FFS(fringe field switching)方式等の各種のモードが知られている。
【0004】
なかでも、VA(垂直配向)方式の液晶表示素子は、視野角が広く、応答速度が速く、コントラストが大きく、また、生産プロセス上もラビング処理が不要にできることから、特に、大型化のニーズが高いテレビ用やモニター用を中心に広く使用されている。該VA方式の液晶表示素子では、予め液晶組成物中に光重合性化合物を添加し、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することで、液晶の応答速度を速くするPSA(Polymer Sustained Alignment)方式が主流となっている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
液晶配向膜には液晶配向性に加えて、様々な特性が要求される。例えば、上記PSA方式の液晶表示素子では、静電気が液晶セル内に蓄積されると、蓄積された電荷が液晶配向の乱れや残像として表示に影響を与え、液晶素子の表示品位を著しく低下させる場合がある。このことから、静電気の蓄積が抑制された液晶配向膜が求められる。
また、近年では、大画面で高精細の液晶表示素子が広く実用化されており、このような用途に使用される液晶配向膜は従来よりも信頼性の高いものが必要となっている。特に、液晶配向膜の基本特性である電気特性に関してより高い初期特性を示すことが求められている。これらの課題を解決する手段として、特定の重合体成分を含有する液晶配向剤から得られる液晶配向膜が特許文献3において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特開2003-149647号公報
【特許文献2】WO2011/132752号公報
【特許文献3】WO2016/125870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶配向剤は、製造してから出荷するまでの間、通常、重合体の劣化を防ぐために低温環境下で(例えば、5℃で)保管される。
一方、本発明者らの検討において、従来の液晶配向剤では低温保管時に液晶配向剤に含まれる固形分が析出してしまうことが分かった。
また、従来の液晶配向剤から得られる液晶配向膜では、蓄積された電荷が緩和される速度は高速化するものの、蓄積電荷の絶対値は大きくなることが分かった。特に最近の高輝度の液晶表示素子では、バックライトの輝度が高くなり蓄積電荷による残像の視認性も高くなっているため、蓄積電荷の絶対値を低減しつつ、発生した電荷を短時間で低減できる液晶配向膜が必要である。さらに、高いコントラストが要求されるため、以前にも増して高い電圧保持率を有する液晶配向膜が求められている。
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、低温保管時に固形分が析出しない液晶配向剤を提供することを目的とする。また、高い電圧保持率を有し、且つ、蓄積電荷の絶対値を低減しつつ、発生した電荷を短時間で低減できる液晶配向膜、及び該液晶配向膜が得られる液晶配向剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、特定の重合体成分を含有する液晶配向剤が、上記の目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記式(1)で表されるジアミン(a1)及び下記式(2)で表されるジアミン(a2)を含むジアミン成分と、下記式(TB)で表されるテトラカルボン酸二無水物(tB)を含有するテトラカルボン酸成分と、の重合反応により得られる、ポリアミック酸(P)を含有することを特徴とする液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体を含まないテトラカルボン酸成分であって、
前記ジアミン成分は、カルボキシ基を有するジアミン、並びに、H2N-YN-NH2(YNは、窒素含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有構造を有する2価の有機基である。)で表されるジアミンの各々の使用量が、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、0~30モル%である、上記液晶配向剤、該液晶配向剤から得られた液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子にある。
【0010】
【0011】
(式中、R、R’は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~3の1価の有機基を表す。
Xは、*-Ar-*、又は、*-Ar-CR2R2’-Ar-*(Arはベンゼン環を表し、R2、R2’は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~3の1価の有機基を表す。*は結合手を表す。)で表される2価の有機基を表す。
式(1)又は(2)が有するベンゼン環の任意の水素原子は1価の基で置き換えられてもよい。
n1、n2は、それぞれ独立して、1~2の整数を表す。)
なお、本明細書全体を通して、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、*は結合手を表す。
ジアミンの使用量がポリアミック酸の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して0モル%とは、上記ポリアミック酸の合成にジアミンを使用していないことを示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温保管時に固形分が析出しない液晶配向剤が得られる。また、高い電圧保持率を有し、且つ、蓄積電荷の絶対値を低減しつつ、発生した電荷を短時間で低減できる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を与える液晶配向剤が得ることができる。
【0013】
本発明の上記効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下の要因が考えられる。テトラカルボン酸二無水物(tB)は熱イミド化しにくく、焼成後にも極性基が多く含まれるため、蓄積電荷の絶対値が低減される。また、熱分解しにくいことや、ジアミン(a1)によるパッキングしやすい構造を含むことで安定化され高い電圧保持率を維持することができる。さらに、テトラカルボン酸二無水物(tB)やジアミン(a2)による屈曲性の高い構造を含むことで溶解性が高くなるため、上記効果が得られたと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の液晶配向剤は、下記式(1)で表されるジアミン(a1)及び下記式(2)で表されるジアミン(a2)を含むジアミン成分と、下記式(TB)で表されるテトラカルボン酸二無水物(tB)を含有するテトラカルボン酸成分と、の重合反応により得られる、ポリアミック酸(P)を含有することを特徴とする液晶配向剤であって、
上記テトラカルボン酸成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体を含まないテトラカルボン酸成分であって、
上記ジアミン成分は、カルボキシ基を有するジアミン、並びに、H2N-YN-NH2(YNは、窒素含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有構造を有する2価の有機基である。)で表されるジアミンの各々の使用量が、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、0~30モル%である。
上記ジアミン(a1)を使用することで、得られるポリアミック酸はパッキングしやすい構造を含むため安定化されることとなり、得られる液晶配向膜は高い電圧保持率を有する。
上記ジアミン(a2)を使用することで、得られるポリアミック酸は屈曲性の高い構造を含むため、その溶解性が高くなる。
【0015】
【0016】
(式中、R、R’は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~3の1価の有機基を表す。
Xは、*-Ar-*、又は、*-Ar-CR2R2’-Ar-*(Arはベンゼン環を表し、R2、R2’は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~3の1価の有機基を表す。*は結合手を表す。)で表される2価の有機基を表す。
式(1)又は(2)が有するベンゼン環の任意の水素原子は1価の基で置き換えられてもよい。
n1、n2は、それぞれ独立して、1~2の整数を表す。)
上記式(1)又は(2)が有するベンゼン環の任意の水素原子は1価の基で置き換えられてもよく、該1価の基として、ハロゲン原子、メトキシ基、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、メトキシメチル基、アセチル基、又はシアノ基が挙げられる。
上記式(1)のR、R’における炭素数1~3の1価の有機基として、炭素数1~3のアルキル基、該アルキル基が有する水素原子の一部がハロゲン原子で置換されてなる1価の有機基が挙げられる。炭素数1~3の1価の有機基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、又はトリフルオロメチル基が挙げられる。
電圧保持率を高める観点から、R、R’は、水素原子、又はメチル基が好ましい。
ジアミン(a1)の好ましい例として、下記式(a1-1)~(a1-4)が挙げられる。
【0017】
【0018】
上記式(2)のXにおいて、R2、R2’の炭素数1~3の1価の有機基として、炭素数1~3のアルキル基、該アルキル基が有する水素原子の一部がハロゲン原子で置換されてなる1価の有機基が挙げられる。炭素数1~3の1価の有機基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、又はトリフルオロメチル基が挙げられる。
電圧保持率を高める観点から、R2、R2’は、水素原子、又はメチル基が好ましい。
ジアミン(a2)の好ましい例として、下記式(a2-1)~(a2-5)が挙げられる。
【0019】
【0020】
上記ジアミン(a1)及びジアミン(a2)の使用量の合計は、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上が更に好ましく、60モル%以上が最も好ましい。
また、
(ポリアミック酸(P)の製造)
本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸(P)は、上記ジアミン(a1)及びジアミン(a2)を含有するジアミン成分を用いて得られる。
また、上記ジアミン成分は、カルボキシ基を有するジアミン、並びに、H2N-YN-NH2で表されるジアミンの各々の使用量が、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、0~30モル%である。更に、カルボキシ基を有するジアミン、及び、H2N-YN-NH2で表されるジアミンの使用量の合計は、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。
上記構成とすることで、液晶表示素子内に発生する蓄積電荷の絶対値を小さくすることができる。
上記カルボキシ基を有するジアミンの例として、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3-カルボン酸、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-2,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン-3,3’-ジカルボン酸、及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸などが挙げられる。
H2N-YN-NH2におけるYNの窒素含有複素環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、フタラジン環、トリアジン環、カルバゾール環、アクリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、ヘキサメチレンイミン環等が挙げられる。
上記YNにおける第二級アミノ基及び第三級アミノ基は、例えば、基「*1-NR-*1」(Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。*1は炭化水素基に結合する結合手を表し、少なくとも一つは芳香族炭化水素基に結合する。)で表される。上記基「*1-NR-*1」中のRの1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基等のアリール基等が挙げられる。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基である。
H2N-YN-NH2で表されるジアミンのより好ましい具体例として、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル-3,5-ジアミノベンズアミド、4-[4-[(4-アミノフェノキシ)メチル]-4,5-ジヒドロ-4-メチル-2-オキサゾリル]-ベンゼンアミン、1,4-ビス(p-アミノベンジル)ピペラジン、4,4’-[プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリン、4-(4-アミノフェノキシカルボニル)-1-(4-アミノフェニル)ピペリジン、下記式(z-1)~式(z-5)で表されるジアミン、2,5-ビス(4-アミノフェニル)ピロール、4,4’-(1-メチル-1H-ピロール-2,5-ジイル)ビス[ベンゼンアミン]、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、2-N-(4-アミノフェニル)ピリジン-2,5-ジアミン、2-N-(5-アミノピリジン-2-イル)ピリジン-2,5-ジアミン、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンズイミダゾール、5-(1H-ベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン-1,3-ジアミンなどの複素環含有ジアミン、又は、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニル-N-メチルアミン、下記式(z-6)で表されるジアミン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ベンゼンジアミン、N,N ’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、若しくは、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチル-1,4-ベンゼンジアミンなどのジフェニルアミン構造を有するジアミンが挙げられる。
【0021】
【0022】
式(z-2)において、mは同一であっても異なっていてもよい。)
上記ポリアミック酸(P)の製造に用いられるジアミン成分は、ジアミン(a1)及びジアミン(a2)以外のジアミン(以下、その他のジアミンともいう。)を含んでいてもよい。上記ジアミン(a1)及びジアミン(a2)に加えて、その他のジアミンを併用する場合は、ジアミン成分に対するジアミン(a1)及びジアミン(a2)の使用量の合計は、ポリアミック酸(P)の製造に用いられるジアミン成分100モル%に対して90モル%以下でもよく、80モル%以下でもよい。以下にその他のジアミンの例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。上記その他のジアミンは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他のジアミン(但し、カルボキシ基を有するジアミン、及びH2N-YN-NH2で表されるジアミンを除く。)の使用量の合計は、10~80モル%がより好ましく、20~50モル%が更に好ましく、20~40モル%が最も好ましい。
カルボキシ基を有するジアミン、H2N-YN-NH2(YNは、上記と同義である。但し、後述するラジカル開始機能を有するジアミンを除く。)で表されるジアミン、「A-X-J」で表される芳香族ジアミン(A、X、およびJの定義については後述する。);3-((メチルアミノ)メチル)アニリン、4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリンなどの炭素数1~5のアルキル基で置換された第二級アミノ基を末端に有するジアミン;p-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、4-(2-アミノエチル)アニリン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジアミノビフェニル、1,5-ジアミノナフタレン、1,6-ジアミノナフタレン、1,7-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、ビス(4-アミノフェノキシ)メタン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-アミノ-2-メチルフェニルオキシ)ブタン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)メタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,5-ビス(3-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)へキサン、1,6-ビス(3-アミノフェノキシ)へキサン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7-ビス(3-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタン、1,8-ビス(3-アミノフェノキシ)オクタン、1,9-ビス(4-アミノフェノキシ)ノナン、1,9-ビス(3-アミノフェノキシ)ノナン、1,10-ビス(4-アミノフェノキシ)デカン、1,10-ビス(3-アミノフェノキシ)デカン、1,11-ビス(4-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11-ビス(3-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12-ビス(4-アミノフェノキシ)ドデカン、1,12-ビス(3-アミノフェノキシ)ドデカン、3-[2-[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エトキシ]ベンゼンアミン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン、1,2-ビス(6-アミノ-2-ナフチルオキシ)エタン、1,2-ビス(6-アミノ-2-ナフチル)エタン、6-[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]-2-ナフチルアミン、4’-[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ブタンジオアート、1,6-ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサンジオアート、1,4-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,4-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3-アミノフェニル)イソフタレート;4,4’-ジアミノアゾベンゼン、ジアミノトラン、4,4’-ジアミノカルコン、又は[4-[(E)-3-[2-(2,4-ジアミノフェニル)エトキシ]-3-オキソ-プロパ-1-エニル]フェニル]4-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)ベンゾエート、若しくは[4-[(E)-3-[[5-アミノ-2-[4-アミノ-2-[[(E)-3-[4-[4-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)ベンゾイル]オキシフェニル]プロパ-2-エノイル]オキシメチル]フェニル]フェニル]メトキシ]-3-オキソ-プロパ-1-エニル]フェニル]4-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)ベンゾエートに代表されるシンナメート構造を側鎖に有する芳香族ジアミン、などの光配向性基を有するジアミン;下記式(4b-1)~(4b-7)などの光重合性基を末端に有するジアミン;ベンゾイン若しくはそのアルキルエーテル化した構造、ベンジルケタール構造、α-ヒドロキシケトン構造、α-アミノケトン構造、アセトフェノン構造、又はアシルホスフィンオキサイド構造などのラジカル重合開始剤機能を発現する構造を分子内に有するジアミン(以下、ラジカル開始機能を有するジアミンともいう。上記ラジカル重合開始剤機能を発現する構造は、より好ましくは「*-Ar-C(=O)-CR1R2U」で表される構造であり、更に好ましくは、下記式(Ra-1)~(Ra-6)で表される構造である。Arは、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル構造を表す。R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、ベンジル基、又はフェネチル基を表す。Uは、ヒドロキシ基、*-NR2(Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、又はチオモルホリン環を表す。上記ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル構造、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、又はチオモルホリン環上の水素原子は、上記式(1)又は(2)におけるベンゼン環上の水素原子と同様の置換基で置換されていてもよい。ラジカル開始機能を有するジアミンは、より好ましくは、下記式(R1)~(R4)で表されるジアミンである。);4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、下記式(R5)で表されるジアミン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどの光照射により増感作用を示す光増感機能を有するジアミン;4,4’-ジアミノベンズアニリドなどのアミド結合を有するジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ウレア、1,3-ビス(4-アミノベンジル)ウレア、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアなどのウレア結合を有するジアミン;4,4’-スルホニルジアニリン、3,3’-スルホニルジアニリン、ビス(4-アミノフェニル)シラン、ビス(3-アミノフェニル)シラン、ジメチル-ビス(4-アミノフェニル)シラン、ジメチル-ビス(3-アミノフェニル)シラン、4,4’-チオジアニリン、3,3’-チオジアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル;1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチル-1H-インダン-5-アミン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-6-アミン;1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、1-テトラデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、1-ペンタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、1-ヘキサデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、1-オクタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、1-ドデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、1-テトラデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、1-ペンタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、1-ヘキサデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、1-オクタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼンに代表される炭素数12~20の長鎖アルキル基を有する芳香族ジアミン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス[3-(p-アミノフェニルカルバモイル)プロピル]テトラメチルジシロキサン等のシロキサン結合を有するジアミン;下記式(5-1)~(5-9)などの基「-N(D)-」(Dは加熱によって脱離し水素原子に置き換わる保護基を表す。Dは好ましくはtert-ブトキシカルボニル基である。)又は基「*-L-O-D」(*は窒素原子との結合手を表す。Lは炭素数1~5のアルキレン基を表す。Dは加熱によって脱離し水素原子に置き換わる保護基を表す。Dは好ましくはtert-ブトキシカルボニル基である。)を有するジアミン;メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、国際公開第2018/117239号に記載の式(Y-1)~(Y-167)のいずれかで表される基に2つのアミノ基が結合したジアミン等
【0023】
【0024】
(上記式(4b-1)~式(4b-6)において、n1は2~12の整数である。)
【0025】
【0026】
【0027】
(上記式(R3)~式(R5)において、nは1~6の整数である。)
【0028】
【0029】
(上記式(5-1)~式(5-9)において、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を表す。)
上記芳香族ジアミン「A-X-J」において、Aは2つの第一級アミノ基が芳香族基に結合した1価の基を表す。芳香族基の具体例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル構造が挙げられる。Xは、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-(A0)m0-((CH2)a1-A1)m1-(a1は1~15の整数であり、A0、A1は、それぞれ独立して-O-又は-COO-を表し、m0は0又は1の整数であり、m1は1~2の整数である。m1が2の場合、複数のa1及びA1は、それぞれ独立して上記定義を有する。)を表す。
Jは、炭素数4~40の脂環式炭化水素基及び炭素数6~40の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する1価の有機基を表す。但し、上記脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の少なくとも一つは、ハロゲン原子、ハロゲン原子含有アルキル基、ハロゲン原子含有アルコキシ基、炭素数3~10のアルキル基、炭素数3~10のアルコキシ基、および炭素数3~10のアルケニル基のいずれかである置換基(v)によって置換されている。
更にこれらの置換基(v)(但し、ハロゲン原子を除く。)における任意の炭素-炭素単結合は-O-で中断されていても良い。尚、Jは、上記の脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基以外に、非置換又は上記した置換基(v)以外の置換基で置換されている脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基をさらに有してもよい。
上記ハロゲン原子含有アルキル基としては、例えば、炭素数1~10のハロゲン原子含有アルキル基が挙げられる。上記ハロゲン原子含有アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~10のハロゲン原子含有アルコキシ基が挙げられる。
【0030】
Jの脂環式炭化水素基としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロデカン環、ステロイド骨格(例として、コレスタニル基、コレステリル基、ラノスタニル基など)などを挙げることができ、芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環などを挙げることができる。Jがシクロヘキサン環及びベンゼン環の少なくともいずれかを有する場合、基「-X-J」として、例えば、下記の構造(S1)を挙げることができ、より好ましい構造として下記式(S1-1)~(S1-5)を挙げることができる。
【0031】
【0032】
X1は、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-CO-N(CH3)-、-NH-、-O-、-COO-、又は-(A0)m0-((CH2)a1-A1)m1-(a1は1~15の整数であり、A0、A1は、それぞれ独立して-O-又は-COO-を表し、m0は0又は1の整数であり、m1は1~2の整数である。m1が2の場合、複数のa1及びA1は、それぞれ独立して上記定義を有する。)を表す。
G1は、フェニレン基、及びシクロヘキシレン基から選ばれる2価の環状基を表す。前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、複数のX1、G1は、それぞれ独立して上記定義を有する。
R1はフッ素原子、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有アルコキシ基、炭素数3~10のアルキル基、炭素数3~10のアルコキシ基、又は炭素数3~10のアルコキシアルキル基を表す。
【0033】
【0034】
(X1、R1は、上記式(S1)のX1、R1と同義である。)
上記芳香族ジアミン「A-X-J」の具体例としては、下記式(d-1)~(d-2)で表されるジアミンが挙げられる。より好ましい具体例としては、基「-X-J」が、上記の構造(S1)又は上記式(S1-1)~(S1-5)のいずれかである、式(d-1)~(d-2)で表されるジアミン、並びにコレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル及び3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン等のステロイド骨格を有するジアミンが挙げられる。
【0035】
【0036】
X、Jは、上記芳香族ジアミン「A-X-J」のX、Jと好ましい態様を含めて同義である。前記式(d-2)において、2個のX、Jは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記その他のジアミンは、本発明の効果を好適に得る観点から、カルボキシ基を有するジアミン、H2N-YN-NH2で表されるジアミン、「A-X-J」で表される芳香族ジアミン、炭素数1~5のアルキル基で置換された第二級アミノ基を末端に有するジアミン、光配向性基を有するジアミン、光重合性基を末端に有するジアミン、ラジカル開始機能を有するジアミン、又は光増感機能を有するジアミンが好ましい。
ポリアミック酸(P)を得るためのジアミン成分は、より好ましくは以下の組合せからなる群から選択されるジアミン成分が好ましい。
ジアミン(a1)とジアミン(a2)との組合せ;
ジアミン(a1)、ジアミン(a2)及びH2N-YN-NH2で表されるジアミンとの組合せ;
ジアミン(a1)、ジアミン(a2)及び炭素数1~5のアルキル基で置換された第二級アミノ基を末端に有するジアミンとの組合せ;
ジアミン(a1)、ジアミン(a2)、及びカルボキシ基を有するジアミンとの組合せ;
ジアミン(a1)、ジアミン(a2)、カルボキシ基を有するジアミン、及びH2N-YN-NH2で表されるジアミンとの組合せ。
(テトラカルボン酸成分)
上記ポリアミック酸(P)を製造する場合、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドなどのテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることもできる。
上記ポリアミック酸(P)を製造するためのテトラカルボン酸成分は、上記式(TB)で表されるテトラカルボン酸二無水物(tB)を含有し、且つ、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体を含まないテトラカルボン酸成分である。
テトラカルボン酸二無水物(tB)は熱イミド化しにくく、該化合物を原料に用いて得られるポリアミック酸は、焼成後にも極性基が多く含まれるため、該ポリアミック酸から液晶配向膜は蓄積電荷の絶対値が低減される。
また、上記テトラカルボン酸二無水物(tB)を原料に用いて得られるポリアミック酸は、加熱分解しにくい構造となるため、該ポリアミック酸から得られる液晶配向膜は高い電圧保持率を有する。
上記テトラカルボン酸二無水物(tB)の使用量は、ポリアミック酸(P)の製造に使用されるテトラカルボン酸成分100モル%に対して、20モル%以上がより好ましく、40モル%以上が更に好ましく、50モル%以上がより一層好ましい。
また、上記テトラカルボン酸二無水物(tB)の使用量は、ポリアミック酸(P)の製造に使用されるテトラカルボン酸成分100モル%に対して、90モル%以下であってもよく、80モル%以下であってもよく、60モル%以下であってもよい。
「芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体を含まないテトラカルボン酸成分」とは、芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物を含むテトラカルボン酸成分で構成されることを意味する。
上記構成とすることで、液晶表示素子内に発生する蓄積電荷の絶対値を小さくすることができる。
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体の例として、テトラカルボン酸二無水物(tB)、テトラカルボン酸二無水物(tB)を除く脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体が挙げられる。
ここで、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシ基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。上記非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。
上記ポリアミック酸(P)を製造するためのテトラカルボン酸成分は、より好ましくは、上記式(TB)で表されるテトラカルボン酸二無水物(tB)を含有し、且つ、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体で構成されるテトラカルボン酸成分である。
【0037】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、中でも、シクロブタン環構造、シクロペンタン環構造及びシクロヘキサン環構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体を含むことがより好ましい。
ポリアミック酸(P)の合成に用いることのできるテトラカルボン酸成分としては、好ましくは、下記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体である。上記テトラカルボン酸二無水物の誘導体としては、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
【0039】
(上記式(T)中、Xは、下記式(x-1)~(x-10)のいずれかから選ばれる構造を表す。)
【0040】
【0041】
(式中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表し、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。nは0~6の整数であり、nが0の場合、単結合を表す。)
上記式(x-1)の好ましい具体例として、下記式(X1-1)~(X1-6)が挙げられる。
【0042】
【0043】
上記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい例としては、Xが上記式(x-1)~(x-6)である式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体、より好ましくは(X1-1)~(X1-6)である式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が挙げられる。
【0044】
上記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、使用される全テトラカルボン酸成分100モル%に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、上記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、80モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。ポリアミック酸(P)の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体は、上記式(T)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含有していてもよい。
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸(P)、及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物である。
【0045】
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸(P)以外のその他の重合体を含有してもよい。その他の重合体の具体例を挙げると、上記ポリアミック酸(P)以外のポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(イソブチレン-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(ビニルエーテル-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる重合体などが挙げられる。ポリ(スチレン-マレイン酸無水物)共重合体の具体例としては、SMA1000、SMA2000、SMA3000(Cray Valley社製)、GSM301(岐阜セラツク製造所社製)などが挙げられ、ポリ(イソブチレン-マレイン酸無水物)共重合体の具体例としては、イソバン-600(クラレ社製)が挙げられ、ポリ(ビニルエーテル-マレイン酸無水物)共重合体の具体例としては、Gantrez AN-139(メチルビニルエーテル無水マレイン酸樹脂、アシュランド社製)が挙げられる。
その他の重合体としては、中でも、上記ジアミン(a1)、上記ジアミン(a2)及びテトラカルボン酸二無水物(tB)の少なくとも一つを含有しないモノマー成分を用いて得られる、ポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(Q)が好ましい。
ここで、「ジアミン(a1)、ジアミン(a2)及びテトラカルボン酸二無水物(tB)の少なくとも一つを含有しないモノマー成分」とは、重合体(Q)を得るためのモノマー成分として、例えば、以下の態様が挙げられる。
ジアミン(a1)以外のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、を含むモノマー成分;
ジアミン(a2)以外のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、を含むモノマー成分;
ジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物(tB)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、を含むモノマー成分;
ジアミン(a1)及びジアミン(a2)以外のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、を含むモノマー成分;
ジアミン(a1)以外のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物(tB)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、を含むモノマー成分;
ジアミン(a2)以外のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物(tB)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、を含むモノマー成分;
ジアミン(a1)及びジアミン(a2)以外のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物(tB)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、を含むモノマー成分;
上記重合体(Q)を得るためのジアミン成分で用いることのできるジアミンの好ましい具体例として、上記ポリアミック酸(P)で例示したジアミンが挙げられる。
ポリアミック酸(P)で例示したジアミンの使用量は、重合体(Q)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上が好ましい。また、ポリアミック酸(P)で例示したジアミンの使用量は、重合体(Q)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、95モル%以下であってもよく、90モル%以下であってもよい。
また、上記重合体(Q)は、本発明の効果を好適に得る観点から、上記「A-X-J」で表される芳香族ジアミン、光重合性基を末端に有するジアミン、ラジカル開始機能を有するジアミン、及び光増感機能を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも一つのジアミン(以下、特定のジアミン(q)ともいう。)を含有するジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることがより好ましい。
上記特定のジアミン(q)の使用量は、重合体(Q)の合成に使用するジアミン成分100モル%に対して、10~90モル%がより好ましく、20~90モル%がより好ましい。
【0046】
その他の重合体は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用してもよい。その他の重合体の含有割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、10~90質量部がより好ましく、20~80質量部が更に好ましい。
上記重合体(Q)の製造に用いられるテトラカルボン酸成分は、例えば上記ポリアミック酸(P)で例示した、テトラカルボン酸二無水物(tB)、脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好ましい具体例として、下記式(TA)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0047】
【0048】
(上記式(T)中、X
Aは、下記式(x-11)~(x-12)のいずれかから選ばれる構造を表す。)
【0049】
(j及びkは、0又は1の整数であり、A1及びA2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン基、スルホニル基、又はアミド基を表し、*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手であり、前記式(x-12)において、2個のA2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
上記式(x-11)~(x-12)の好ましい具体例としては、下記式(x-14)~(x-29)が挙げられる。
【0050】
【0051】
【0052】
重合体(Q)の製造に用いられるテトラカルボン酸誘導体成分は、より好ましくは、上記テトラカルボン酸二無水物(tB)、脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体がさらに好ましい。
また、上記テトラカルボン酸二無水物(tB)、脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体を、重合体(Q)の製造に使用される全テトラカルボン酸誘導体成分100モル%に対して、10モル%以上含有することが好ましく、20モル%以上含有することがより好ましく、50モル%以上含有することがさらに好ましい。
【0053】
本発明の効果を好適に得る観点から、ポリアミック酸(P)と重合体(Q)の含有割合は、[ポリアミック酸(P)]/[重合体(Q)]の質量比で10/90~90/10が好ましく、20/80~90/10がより好ましく、20/80~80/20がさらに好ましい。
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸の合成は、上記ジアミンを含むジアミン成分と、上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含むテトラカルボン酸成分とを有機溶媒中で反応させることにより行われる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.5~2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.8~1.2当量となる割合である。通常の重縮合反応と同様に、このテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基の当量が1当量に近いほど、生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0054】
ポリアミック酸の合成反応における反応温度は-20~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1~24時間が好ましく、0.5~12時間がより好ましい。
【0055】
ポリアミック酸の合成反応は任意の濃度で行うことができるが、反応液におけるポリアミック酸の濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することもできる。
【0056】
上記有機溶媒の具体例としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、重合体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又はH3C-CH(OH)-CH2-O-D1(D1は炭素数1~3のアルキル基を表す。)、HO-CH2-CH2-O-D2(D2は炭素数1~3のアルキル基を表す。)、HO-CH2-CH2-O-CH2-CH2-D3(D3は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で示される溶媒を用いることができる。
【0057】
上記H3C-CH(OH)-CH2-O-D1、HO-CH2-CH2-O-D2、HO-CH2-CH2-O-CH2-CH2-D3で示される溶媒の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
(ポリアミック酸エステルの合成)
ポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記の方法で得られたポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などの既知の方法によって得ることができる。
<末端封止剤>
本発明におけるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドを合成するに際して、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含むテトラカルボン酸成分、及び上記ジアミンを含むジアミン成分とともに、適当な末端封止剤を用いて末端封止型の重合体を合成することとしてもよい。末端封止型の重合体は、塗膜によって得られる液晶配向膜の膜硬度の向上や、シール剤と液晶配向膜の密着特性の向上という効果を有する。
【0058】
本発明におけるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの末端の例としては、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基又は後述する末端封止剤に由来する基が挙げられる。アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基は通常の縮合反応により得るか、又は以下の末端封止剤を用いて末端を封止することにより得ることができる。
【0059】
末端封止剤としては、例えば無水酢酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、3-(3-トリメトキシシリル)プロピル-3,4-ジヒドロフラン-2,5-ジオン、4,5,6,7-テトラフルオロイソベンゾフラン-1,3-ジオン、4-エチニルフタル酸無水物などの酸無水物;二炭酸ジ-tert-ブチル、二炭酸ジアリルなどの二炭酸ジエステル化合物;アクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、ニコチン酸クロリドなどのクロロカルボニル化合物;アニリン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンなどのモノアミン化合物;エチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、又は、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネ-ト及び2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネ-トなどの不飽和結合を有するイソシアネートなどを挙げることができる。
【0060】
末端封止剤の使用割合は、使用するジアミン成分の合計100モル部に対して、0.01~20モル部とすることが好ましく、0.01~10モル部とすることがより好ましい。
<ポリイミド前駆体及びポリイミドの分子量および分子量分布>
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。また、上記Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。かかる分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な液晶配向性を確保することができる。
(ポリイミドの合成)
また、上記ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルなどのポリイミド前駆体を閉環(イミド化)させることによりポリイミドを得ることができる。なお、本明細書でいうイミド化率とは、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体由来のイミド基とカルボキシ基(またはその誘導体)との合計量に占めるイミド基の割合のことである。イミド化率は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。
【0061】
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0062】
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、好ましくは100~400℃であり、より好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0063】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン又はトリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸又は無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0064】
ポリイミド前駆体又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させた重合体は濾過して回収した後、常圧又は減圧下で、常温又は加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類又は炭化水素などが挙げられ、これらのうちから選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0065】
本発明の液晶配向剤は、その他、必要に応じて上記以外の成分を含有していてもよい。当該成分としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタニル基、シクロカーボネート基、ブロックイソシアネート基、ヒドロキシ基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、並びに重合性不飽和基を有する架橋性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、官能性シラン化合物、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、防腐剤、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物などが挙げられる。
【0066】
架橋性化合物の好ましい具体例としては、下記式(CL-1)~(CL-11)で示される化合物が挙げられる。なお、下記式(CL-1)~(CL-11)で示される化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されない。また、本発明の液晶配向剤に用いる架橋性化合物は、1種類でも、2種類以上組み合わせても良い。
【0067】
本発明の液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましく、1~30質量部が更に好ましい。
【0068】
液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物としては、3-ピコリルアミンなどの窒素含有芳香族複素環を有するモノアミンが挙げられる。
【0069】
【0070】
本発明の液晶配向剤で使用する有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチル-2-ピロリドン、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(tert-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点からは、1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下が好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
液晶配向剤中の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができる。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から、液晶配向剤中の重合体の濃度(重合体成分の合計濃度)は、1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下が好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
液晶配向剤中のポリアミック酸(P)の含有割合は、本開示の効果を好適に得る観点から、液晶配向剤に含まれる重合体の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、更に好ましくは50質量部以上である。液晶配向剤がその他の重合体を含む場合のポリアミック酸(P)の含有割合は、上記したとおりである。
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤から得られる。本発明の液晶配向膜は、水平配向型若しくは垂直配向型の液晶配向膜に用いることができるが、中でもVA方式又はPSA方式等の垂直配向型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜である。
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により、重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。
【0072】
本発明の液晶表示素子は、例えば以下の工程(1)~(3)又は工程(1)~(4)をこの順に行う方法により製造することができる。
(1)液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の少なくとも一方の基板上に塗布して塗膜を形成する工程
パターニングされた透明導電膜が設けられている基板一対の基板の少なくとも一方の基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法により塗布して塗膜を作製する。ここで基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板とともに、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることもできる。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
(2)塗膜を焼成する工程
液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止等の目的で、上記塗膜を焼成する。好ましくは先ず予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、より好ましくは40~150℃であり、特に好ましくは40~100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25~10分であり、より好ましくは0.5~5分である。そして、加熱(ポストベーク)工程が実施されることが好ましい。このポストベーク温度は好ましくは80~300℃であり、より好ましくは120~250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5~200分であり、より好ましくは10~100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0073】
上記工程(1)および(2)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。配向能付与処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。
【0074】
光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板表面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
(3)上記一対の基板の間に液晶層を形成して液晶セルを作製する工程
(3-1)VA方式の液晶表示素子を製造する場合
上記のようにして、2枚の基板のうちの少なくとも一方に本発明の液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置する。具体的には以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置する。次いで、2枚の基板の周辺部にシール剤を塗布して貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶組成物を注入充填して膜面に接触した後、注入孔を封止する。
【0075】
また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶組成物を滴下する。その後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて液晶組成物を基板の全面に押し広げて膜面に接触させる。次いで、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化する。
【0076】
いずれの方法による場合でも、更に、用いた液晶組成物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0077】
上記液晶組成物としては、特に制限はなく、少なくとも一種の液晶化合物(液晶分子)を含む組成物であって、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。なお、以下では、誘電率異方性が正の液晶組成物を、ポジ型液晶ともいい、誘電異方性が負の液晶組成物を、ネガ型液晶ともいう。
【0078】
上記液晶組成物は、フッ素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、フッ素原子含有基(例えば、トリフルオロメチル基)、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、イソチオシアネート基、複素環、シクロアルカン、シクロアルケン、ステロイド骨格、ベンゼン環、又はナフタレン環を有する液晶化合物を含んでもよく、分子内に液晶性を発現する剛直な部位(メソゲン骨格)を2つ以上有する化合物(例えば、剛直な二つのビフェニル構造、又はターフェニル構造がアルキル基で連結されたバイメソゲン化合物)を含んでもよい。液晶組成物は、ネマチック相を呈する液晶組成物、スメクチック相を呈する液晶組成物、又はコレステリック相を呈する液晶組成物であってもよい。
【0079】
また、上記液晶組成物は、液晶配向性を向上させる観点から、添加物をさらに添加してもよい。このような添加物は、下記する重合性基を有する化合物などの光重合性モノマー;光学活性な化合物(例:メルク(株)社製のS-811など);酸化防止剤;紫外線吸収剤;色素;消泡剤;重合開始剤;又は重合禁止剤などが挙げられる。
【0080】
ポジ型液晶としては、メルク社製のZLI-2293、ZLI-4792、MLC-2003、MLC-2041、又はMLC-7081などが挙げられる。
【0081】
ネガ型液晶としては、例えばメルク社製のMLC-6608、MLC-6609、MLC-6610、又はMLC-7026-100などが挙げられる。
【0082】
また、PSA方式では、重合性基を有する化合物を含有する液晶として、メルク社製のMLC-3023が挙げられる。
(3-2)PSA方式の液晶表示素子を製造する場合
重合性基を有する化合物を含有する液晶組成物を注入又は滴下する点以外は上記(3-1)と同様にする。重合性基を有する化合物としては、例えば、下記式(M-1)~(M-6)などの重合性基を有する化合物を挙げることができる。
【0083】
【0084】
(3-3)重合性基を有する化合物を含む液晶配向剤を用いて基板上に塗膜を形成した場合
上記(3-1)と同様にした後、後述する紫外線を照射する工程を経て液晶表示素子を製造する方法を採用してもよい。この方法によれば、上記PSA方式の液晶表示素子を製造する場合と同様に、少ない光照射量で応答速度に優れた液晶表示素子を得ることができる。重合性基を有する化合物は、上記式(M-1)~(M-6)で表されるようなアクリレート基やメタクリレート基などの重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物であってもよく、その含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。また、上記重合性基は液晶配向剤に用いる重合体が有していてもよく、このような重合体としては、例えば上記光重合性基を末端に有するジアミンを含むジアミン成分を反応に用いて得られる重合体が挙げられる。
(4)液晶セルに光を照射する工程
上記(3-2)又は(3-3)で得られた一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。光の照射量としては、好ましくは1,000~200,000J/m2であり、より好ましくは1,000~100,000J/m2である。上記光照射は、1回又は複数回行ってもよい。
【0085】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外側表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0086】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。また、上記液晶配向剤に含まれる重合体組成物は、位相差フィルム用の液晶配向膜、走査アンテナや液晶アレイアンテナ用の液晶配向膜又は透過散乱型の液晶調光素子用の液晶配向膜、或いはこれら以外の用途、例えばカラーフィルタの保護膜、フレキシブルディスプレイのゲート絶縁膜、基板材料にも用いることができる。
【実施例0087】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定して解釈されるものではない。使用した化合物の略号及び各物性の測定方法は、以下の通りである。
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
(テトラカルボン酸二無水物)
CA-1~CA-2:それぞれ、下記式(CA-1)~(CA-2)で表される化合物
【0088】
【0089】
(ジアミン)
DA-1~DA-6:それぞれ、下記式(DA-1)~(DA-6)で表される化合物
【0090】
【0091】
<粘度の測定>
E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)を用いて、温度25℃で測定した。
<分子量の測定>
下記の常温GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド換算値としてMn及びMwを算出した。
【0092】
GPC装置:GPC-101(昭和電工社製)、カラム:GPC KD-803、GPC KD-805(昭和電工社製)の直列、カラム温度:50℃、溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)、流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、約150,000、約100,000及び約30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、約4,000及び約1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
[重合体の合成]
<合成例1>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(2.38g、12.0mmol)、DA-2(3.28g、8.00mmol)及びNMP(22.7g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(4.85g、19.4mmol)及びNMP(19.4g)を加えて、60℃で6時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-1)(粘度:430mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは11,700、Mwは43,120であった。
<合成例2>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(2.38g、12.0mmol)、DA-2(3.28g、8.00mmol)及びNMP(22.7g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(2.50g、9.99mmol)及びNMP(10.0g)を加えて、60℃で3時間撹拌した。その後、CA-2(1.86g、9.48mmol)及びNMP(7.44g)を加えて、40℃で3時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-2)(粘度:520mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,380、Mwは32,510であった。
<合成例3>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(3.97g、20.0mmol)及びNMP(15.9g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(4.92g、19.7mmol)及びNMP(19.7g)を加えて、60℃で5時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-3)(粘度:420mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,290、Mwは38,700であった。
<合成例4>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-2(6.16g、15.0mmol)及びNMP(24.6g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(3.68g、14.7mmol)及びNMP(14.7g)を加えて、60℃で5時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-4)(粘度:490mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは12,290、Mwは39,040であった。
<合成例5>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(1.59g、8.00mmol)、DA-2(2.46g、6.00mmol)、DA-3(1.45g、6.00mmol)及びNMP(22.0g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(2.50g、10.00mmol)及びNMP(10.0g)を加えて、60℃で3時間撹拌した。その後、CA-2(1.87g、9.54mmol)及びNMP(7.48g)を加えて、40℃で3時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-5)(粘度:670mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは12,500、Mwは33,800であった。
<合成例6>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(1.59g、8.00mmol)、DA-2(2.46g、6.00mmol)、DA-3(1.45g、6.00mmol)及びNMP(22.0g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-2(3.86g、19.7mmol)及びNMP(15.4g)を加えて、40℃で5時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-6)(粘度:730mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは11,680、Mwは31,500であった。
<合成例7>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(2.78g、14.0mmol)、DA-4(2.28g、6.00mmol)及びNMP(20.2g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(2.50g、10.00mmol)及びNMP(10.0g)を加えて、60℃で3時間撹拌した。その後、CA-2(1.91g、9.76mmol)及びNMP(7.66g)を加えて、40℃で3時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-7)(粘度:740mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは13,400、Mwは30,960であった。
<合成例8>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(1.39g、7.00mmol)、DA-5(0.991g、3.00mmol)、DA-3(0.969g、4.00mmol)、DA-6(2.61g、6.00mmol)及びNMP(23.8g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(2.50g、10.00mmol)及びNMP(10.0g)を加えて、60℃で3時間撹拌した。その後、CA-2(1.91g、9.74mmol)及びNMP(7.64g)を加えて、40℃で3時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-8)(粘度:710mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは12,500、Mwは32,600であった。
<合成例9>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-5(0.661g、2.00mmol)、DA-3(1.70g、7.00mmol)、DA-4(2.28g、6.00mmol)、DA-6(2.17g、5.00mmol)及びNMP(27.3g)を加えて、窒素を送りながら室温で0.5時間撹拌した。その後、CA-1(2.50g、10.00mmol)及びNMP(10.0g)を加えて、60℃で3時間撹拌した。その後、CA-2(1.93g、9.84mmol)及びNMP(7.72g)を加えて、40℃で3時間撹拌することで、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA-9)(粘度:540mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,690、Mwは28,690であった。
【0093】
上記合成例で得られた各重合体の仕様を下記表1に示す。
【0094】
【0095】
[液晶配向剤の調製]
<実施例1>
合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)(2.0g)にNMP(2.00g)及びBCS(6.00g)を加えて、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(A-1)を得た。
<実施例2、5、比較例1、3、4>
表2に示すように使用するポリアミック酸溶液の種類を変えた以外は実施例1と同様にして、実施例2、5、比較例1、3、4の液晶配向剤(A-2)、(A-5)、(B-1)、(B-3)および(B-4)を得た。
<実施例3>
合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)(0.60g)および合成例7で得られたポリアミック酸溶液(7)(1.4g)にNMP(2.00g)及びBCS(6.00g)を加えて、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(A-3)を得た。
<実施例4、6~11、比較例2、5~8>
表2に示すように使用するポリアミック酸溶液の種類を変えた以外は実施例3と同様にして、実施例4、6~11、比較例2、5~8の液晶配向剤(A-4)、(A-6)~(A-11)、(B-2)、(B-5)~(B-8)を得た。
【0096】
【0097】
表2中、重合体成分の括弧内の数値は、各重合体成分の含有量(質量%)を示す。
上記の通り得られた液晶配向剤(A-1)~(A-11)、及び(B-1)~(B-8)には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。得られた液晶配向剤を用いて電圧保持率、残留DC特性、溶解性の評価を行った。
[電圧保持率・残留DC特性評価用の液晶セルの作製]
上記で得られた液晶配向剤を用いて下記に示すような手順で液晶セルの作製を行った。液晶配向剤をそれぞれITO電極付きガラス基板(幅3cm×長さ4cm)にスピンコートし、70℃のホットプレート上で90秒間乾燥した後、230℃の赤外線加熱炉で20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜が形成されたガラス基板(液晶配向膜付き基板)を作製した。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の液晶配向膜付き基板の液晶配向膜が形成された面上に直径4μmのビーズスペーサー(日揮触媒化成社製、真絲球、SW-D1)を塗布し、液晶注入口を残して周囲に熱硬化性シール剤(三井化学社製、XN-1500T)を印刷した。次いで、もう一方の液晶配向膜付き基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、150℃で60分間の加熱処理を行い、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルにネガ型液晶MLC-3023(メルク社製)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。次に、この液晶セルに15Vの直流電圧を印加した状態で、液晶セルの外側から波長325nm以下のカットフィルターを通した紫外線を10J/cm2照射した。なお、紫外線の照度は、紫外線光量計付照度計(オーク製作所社(ORC社)製、UV-M03A)を用いて測定した。その後、液晶セル中に残存している未反応の重合性化合物を失活させる目的で、電圧を印加していない状態で照射ユニット(東芝ライテック社製、UV-FL照射装置)を用いてUV(UVランプ:FLR40SUV32/A-1)を30分間照射(以下、PSA処理ともいう)した。
[電圧保持率の評価]
PSA処理後の電圧保持率評価用の液晶セルを用いて電圧保持率を測定した。60℃の熱風循環オーブン中で1Vの電圧を60μsec間印加し、その後1667msec後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。電圧保持率の測定には、東陽テクニカ社製のVHR-1を使用した。値が高いほど良好である。評価基準として、上記PSA処理後の電圧保持率が80%以上の場合を「○」、80%未満の場合を「×」とした。結果を表3に示す。
【0098】
【0099】
表3に示されるように、実施例1~4の液晶配向剤(A-1)~(A-4)を用いて得られる液晶配向膜は、比較例1~2の液晶配向剤(B-1)~(B-2)を用いて得られる液晶配向膜に比べて、PSA処理後において高い電圧保持率を示した。
[残留DC電圧の評価]
上記で作製した液晶セルに対し、直流2Vを70℃で2時間印加し、直流電圧を切った直後と30分後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)を誘電吸収法により求めた。この値はDC蓄積により発生する残像の指標となり、この値が50mV以下であるとき、残像特性に優れている、即ち「良好」とし、50mVよりも大きい場合は「不良」と定義して評価を行った。結果を表4に示す。
【0100】
【0101】
表4に示されるように、実施例1~2の液晶配向剤(A-1)~(A-2)を用いて得られる液晶配向膜は、比較例2、4の液晶配向剤(B-2)、(B-4)を用いて得られる液晶配向膜に比べて、良好な残留DC特性を示した。
[溶解性の評価]
上記で得られた液晶配向剤を用いて、ガラス瓶(10mL容器)に液晶配向剤を入れ5℃の冷蔵庫に一日放置した。冷蔵庫から取り出し、濁りが見えなかったものを溶解性に優れている、即ち「○」とし、濁りが見えたものを「×」と定義して評価を行った。結果を表5に示す。
【0102】
【0103】
表5に示されるように、それぞれ実施例1~2、5~11の液晶配向剤(A-1)~(A-2)、(A-5)~(A-11)を用いて得られる液晶配向膜は、比較例3~8の液晶配向剤(B-3)~(B-8)を用いて得られる液晶配向膜に比べて、高い溶解性を示した。