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特開2024-3134荷電粒子遮断要素、このような要素を備えた露光装置、及びこのような露光装置を使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003134
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】荷電粒子遮断要素、このような要素を備えた露光装置、及びこのような露光装置を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231228BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231228BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20231228BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01L21/30 541B
G03F7/20 504
H01J37/305 B
H01J37/09 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023191742
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2021135898の分割
【原出願日】2018-06-21
(31)【優先権主張番号】62/542,310
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヴィーン,アレクサンダー ヘンドリク ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ウォルヴード,デルク フェルディナンド
(57)【要約】
【課題】露光装置内のコンポーネントの発熱を少なくとも部分的に抑制する荷電粒子露光装置、及びそのコンポーネントを提供する。
【解決手段】本発明は、露光装置と、荷電粒子ビームをターゲットに投影する方法とに関する。露光装置は、荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するための荷電粒子遮断要素及び/又は電流制限素子とを備えた荷電粒子光学装置を備える。荷電粒子遮断要素及び電流制限素子は、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む吸収層が設けられた実質的に平坦な基板を備える。基板はさらに、好ましくは荷電粒子を透過させる1つ以上のアパーチャを備える。吸収層は少なくとも1つのアパーチャから離間して配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を遮断するための荷電粒子遮断要素であって、前記荷電粒子遮断要素が基板を備え、前記基板が荷電粒子を通過させる少なくとも1つのアパーチャを備え、前記基板の表面の少なくとも一部分に、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層が設けられ、前記吸収層が前記少なくとも1つのアパーチャから離間して配置され、前記基板の前記吸収層が設けられる前記表面の少なくとも一部が導電材料を含む、荷電粒子遮断要素。
【請求項2】
前記吸収層が、前記吸収層の下方に位置する前記基板の一部分からの前記荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ前記導電材料が前記荷電粒子の電荷を受けるほど十分に薄い厚さを有する、請求項1に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項3】
前記吸収層が100nmから500nmの間の厚さを有する、請求項1又は2に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項4】
前記吸収層が150から250nmの間の厚さを有する、請求項3に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項5】
前記吸収層がホウ素層、窒化ホウ素層又は炭化ケイ素層である、請求項1から4のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項6】
前記基板の少なくとも一部が導電性がある、請求項1から5のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項7】
前記基板が、導電性がある前記基板の前記少なくとも一部を電圧源又は接地電位に接続するための接続部を備えた、請求項6に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項8】
前記基板に導電層が設けられ、前記導電層が前記基板と前記吸収層との間に少なくとも部分的に配置される、請求項1から7のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項9】
前記導電層がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む、請求項8に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項10】
前記導電層に接続される導電接続部を備えた、請求項8又は9に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項11】
前記基板がシリコン(Si)ウェーハを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項12】
前記基板に複数の前記アパーチャが設けられた、請求項1から11のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項13】
前記アパーチャが、それぞれが前記基板の対応するアレイ領域に配置された1つ以上のアパーチャアレイを形成するように構成された、請求項12に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項14】
前記吸収層が、少なくとも部分的に前記アレイ領域を取り囲む、請求項13に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項15】
各アレイ領域が、前記吸収層によって少なくとも部分的に取り囲まれた、請求項13又は14に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項16】
前記吸収層がさらに、各アレイ領域内に少なくとも部分的に配置された、請求項13から15のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項17】
前記荷電粒子遮断要素が、少なくとも前記基板を冷却するための冷却流路を備えた、請求項1から16のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項18】
前記冷却流路が前記吸収層及び/又は前記基板と熱接触して配置された、請求項17に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項19】
前記基板に別の電気及び/又は熱伝導層が設けられ、前記別の電気及び/又は熱伝導層が前記吸収層及び前記冷却流路と接触して配置された、請求項18に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項20】
荷電粒子露光装置で使用する電流制限素子であって、前記電流制限素子が荷電粒子を実質的に透過させない基板を備え、前記基板に、前記基板の第1の表面から第2の表面へと前記基板を貫通する、荷電粒子を通過させる1つ以上のアパーチャが設けられ、
前記第1の表面の少なくとも一部分に、ホウ素(B)、炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む吸収層が設けられ、
前記吸収層が前記1つ以上のアパーチャから離間して配置され、
前記吸収層が少なくとも部分的に導電材料上に設けられた、
電流制限素子。
【請求項21】
前記吸収層が、前記第1の表面の前記1つ以上のアパーチャが配置される領域を少なくとも部分的に取り囲む、請求項20に記載の電流制限素子。
【請求項22】
前記吸収層が、前記吸収層の下方に位置する前記基板の一部分からの前記荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ前記導電材料が前記荷電粒子の電荷を受けるほど十分に薄い厚さを有する、請求項20又は21に記載の電流制限素子。
【請求項23】
前記吸収層が100nmから500nmの厚さを有する、請求項20から22のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【請求項24】
前記吸収層が150nmから250nmの厚さを有する、請求項23に記載の電流制限素子。
【請求項25】
前記吸収層が、ホウ素層、窒化ホウ素層又は炭化ケイ素層である、請求項20から24のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【請求項26】
前記基板の少なくとも一部が導電性がある、請求項20から25のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【請求項27】
前記基板に導電層が設けられ、前記導電層が前記基板と前記吸収層との間に少なくとも部分的に配置された、請求項20から26のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【請求項28】
前記導電層がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む、請求項27に記載の電流制限素子。
【請求項29】
前記導電性基板又は前記導電層を電圧源又は接地電位に接続するための導電接続部を備えた、請求項26から28のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【請求項30】
前記基板がシリコン(Si)ウェーハを含む、請求項20から29のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【請求項31】
少なくとも前記基板を冷却するための冷却流路をさらに備え、好ましくは、前記冷却流路が前記吸収層及び/又は前記基板と熱接触して配置された、請求項20から30のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【請求項32】
前記基板に別の電気伝導及び/又は熱伝導層が設けられ、前記別の電気伝導及び/又は熱伝導層が前記吸収層及び前記冷却流路と接触して配置された、請求項31に記載の電流制限素子。
【請求項33】
荷電粒子ビームを一時的に遮断するためのシャッタ素子であって、前記シャッタ素子が、少なくともその一部分にホウ素(B)、炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む吸収層が設けられた基板を備え、前記吸収層が前記基板上の導電面に設けられたシャッタ素子。
【請求項34】
前記シャッタ素子が、前記荷電粒子ビームが前記シャッタ素子を通過することを一時的に許可するように構成された縁部又はアパーチャを備え、前記吸収層が前記縁部又は前記アパーチャから離間して配置された、請求項33に記載のシャッタ素子。
【請求項35】
前記吸収層が、前記吸収層の下方に位置する前記導電面からの前記荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ前記導電面が前記荷電粒子の電荷を受けるほど十分に薄い厚さを有する、請求項33又は34に記載のシャッタ素子。
【請求項36】
前記吸収層が100nmから500nmの間の厚さを有する、請求項33、34又は35に記載のシャッタ素子。
【請求項37】
前記吸収層が150から250nmの間の厚さを有する、請求項36に記載のシャッタ素子。
【請求項38】
前記吸収層がホウ素層、窒化ホウ素層又は炭化ケイ素層である、請求項33から37のいずれか1項に記載のシャッタ素子。
【請求項39】
前記基板の少なくとも一部が導電性がある、請求項33から38のいずれか1項に記載のシャッタ素子。
【請求項40】
前記基板に導電層が設けられ、前記導電層が前記基板と前記吸収層との間に少なくとも部分的に配置された、請求項33から39のいずれか1項に記載のシャッタ素子。
【請求項41】
前記導電層がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む、請求項40に記載のシャッタ素子。
【請求項42】
導電性がある前記基板の前記一部又は前記導電層に接続される導電接続部を備えた、請求項39から41のいずれか1項に記載のシャッタ素子。
【請求項43】
荷電粒子ビームをターゲットに投影するための露光装置であって、前記露光装置が、荷電粒子ビームを形成し、前記荷電粒子ビームの少なくとも一部を前記ターゲットに投影するための荷電粒子光学装置を備え、前記荷電粒子光学装置が、
前記荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、
前記荷電粒子源からの前記荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断することができる請求項1から19のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素、前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流を制限するように構成された請求項20から32のいずれか1項に記載の電流制限素子、及び/又は前記荷電粒子ビームの少なくとも一部を一時的に遮断するための、請求項33から42のいずれか1項に記載のシャッタ素子と、
を備えた露光装置。
【請求項44】
前記荷電粒子遮断要素、前記電流制限素子、及び/又は前記シャッタ素子の前記吸収層が、前記荷電粒子源を向いた、又は後方散乱荷電粒子及び/又は二次電子の源の方を向いた前記基板の表面に配置された、請求項43に記載の露光装置。
【請求項45】
前記シャッタ素子が前記荷電粒子源用のシャッタとして配置された、請求項43又は44に記載の露光装置。
【請求項46】
請求項20から32のいずれか1項に記載の前記電流制限素子を備え、前記電流制限素子が、前記荷電粒子ビームを複数の荷電粒子ビームに分割するように構成されたアパーチャのアレイを備えた、請求項43から45のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項47】
前記荷電粒子ビームを前記荷電粒子遮断要素に偏向させるための変調偏向器をさらに備え、前記変調偏向器及び前記荷電粒子遮断要素が、前記荷電粒子ビームが前記偏向器によって偏向されない場合に前記荷電粒子ビームが前記荷電粒子遮断要素の前記アパーチャを通過することを許可し、又はその逆に、前記荷電粒子ビームが前記偏向器によって偏向された場合に前記荷電粒子遮断要素によって前記荷電粒子ビームを少なくとも部分的に遮断するように構成された、請求項43から46のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項48】
請求項43から47のいずれか1項に記載の露光装置を備えた荷電粒子リソグラフィシステム。
【請求項49】
請求項43から47のいずれか1項に記載の露光装置を備えた荷電粒子検査システム又は荷電粒子顕微鏡。
【請求項50】
請求項43から49のいずれか1項に記載の露光装置を使用して荷電粒子ビームをターゲットに投影する方法であって、前記方法が、前記荷電粒子源からの前記荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するステップを含み、遮断される前記荷電粒子ビームの少なくとも一部が前記荷電粒子遮断要素又は前記電流制限素子の前記吸収層上に落ちる方法。
【請求項51】
請求項43から49のいずれか1項に記載の露光装置を用いて半導体デバイスを製造する方法であって、前記方法が、
前記荷電粒子光学装置の下流にウェーハを配置するステップと、
前記荷電粒子光学装置により生成、成形及び/又は変調された荷電粒子ビームを用いて像又はパターンを前記ウェーハに投影することを含む、前記ウェーハを処理するステップと、
前記処理されたウェーハを用いて半導体デバイスを生成するために後続ステップを実行するステップと、
を含む方法。
【請求項52】
請求項43から49のいずれか1項に記載の露光装置を用いてターゲットを検査する方法であって、前記方法が、
前記ターゲットを前記荷電粒子光学装置の下流に配置するステップと、
前記荷電粒子光学装置により生成及び成形された荷電粒子ビームを前記ターゲットに向けるステップと、
前記荷電粒子ビームが前記ターゲットに入射したときに、前記ターゲットにより透過、放出及び/又は反射された荷電粒子を検出するステップと、
前記荷電粒子を検出するステップ中に収集されたデータを用いて前記ターゲットを検査するために後続ステップを実行するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子ビームをターゲットに投影するための荷電粒子光学装置で使用する荷電粒子遮断要素に関する。本発明はさらに、荷電粒子遮断要素を備えた、荷電粒子ビームをターゲットに投影するための露光装置に関し、このような露光装置を使用して荷電粒子ビームをターゲットに投影する方法に関する。また、本発明はこのような露光装置を用いて半導体デバイスを製造する方法及び/又はターゲットを検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、より小さい構造体を高い精度及び信頼性で製造したいという常に増大する要望が存在する。荷電粒子ビーム露光装置では、ターゲット表面を高い精度でターゲット表面に向けられ集束させた1つ以上の荷電粒子ビームに露光させることができる。また、荷電粒子を使用することで、ターゲット表面を露光するための光を使用する露光装置と比べて、ターゲット表面のパターンを転写又は解析するためのはるかに高い解像度及び精度を得ることができる。
【0003】
しかしながら、商業的に実用可能であるためには、荷電粒子露光装置は、リソグラフィシステムと検査システムの両方について、かなりのウェーハスループット及び厳格な許容誤差に関する厳しい要求を満たすことができる必要がある。より高いスループットは、露光装置においてより多くの荷電粒子ビームを使用すること、したがって、より多くの電流を使用することによって実現することができる。
【0004】
しかしながら、電流の増加は、露光装置内のコンポーネントと相互作用する荷電粒子の数を増加させることになる。露光装置内部での荷電粒子とシステムコンポーネントとの衝突は、各コンポーネントに著しい発熱を引き起こす可能性がある。
【0005】
荷電粒子ビームシステム内のコンポーネントの発熱に関する問題は一般に、例えば付与された米国特許第8,558,196号及び米国特許第9,165,693号やWO2013/171216として公開された国際特許出願に記載されているように、このようなコンポーネントを能動的に冷却することによって解決される。
【0006】
「VAN TEKENTAFEL NAAR OVEN」、Link Magazine、XVIII:1(2016年2月)、28及び29頁に掲載のM.van Zaalenによる論文では、コリメータ内の高電場及びコリメータにより集束させた電子ビームの高電流により引き起こされる、マスクレスマルチ電子ビームリソグラフィシステム内のコリメータレンズの発熱の問題が特定されている。M.van Zaalenの論文でも指摘されているように、上記荷電粒子ビームの電子は全てがコリメータを通過するわけではなく、一部がコリメータ内で反射される。この現象もコリメータの発熱の一因となる。ビーム操作コンポーネントの発熱は、露光プロセスの精度を低下させる熱変形をもたらす可能性がある。M.van Zaalenの論文に記載されているように、これはリソグラフィ装置内におけるコリメータのサスペンションの再設計によって解決されている。そこではコリメータの冷却は、改良されたサスペンションを介した熱伝導によりコリメータから熱を除去できるようにすることによって改善されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、露光装置内のコンポーネントの発熱を少なくとも部分的に抑制する荷電粒子露光装置、及びそのコンポーネントを提供することである。荷電粒子は、電子とイオンの両方を含むものとして理解されるべきである。荷電粒子ビームについて言及する場合、これは電子又はイオンのどちらかから構成される可能性がある。本発明は特に、電子(マルチ)ビームリソグラフィシステム、各種の電子顕微鏡、及び検査システムを含む電子ビーム露光装置に関する。ただし、本発明は、正電荷又は負電荷を持つイオン、例えばヘリウムイオンを含む他の種類の荷電粒子を使用したシステムに適用することもできる。
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、荷電粒子を遮断するための荷電粒子遮断要素であって、荷電粒子遮断要素が基板を備え、基板が荷電粒子を通過させる少なくとも1つのアパーチャを備え、基板の表面の少なくとも一部分に、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層が設けられ、吸収層が少なくとも1つのアパーチャから離間して配置され、基板の吸収層が設けられた表面の少なくとも一部が導電材料を含む荷電粒子遮断要素を提供する。
【0009】
吸収層は、衝突する荷電粒子を少なくとも部分的に吸収する。つまり、吸収層は、衝突する荷電粒子を受ける機能を有し、その電荷は、荷電粒子遮断要素から離れて運ばれるように導電材料上に移動する。導電材料は、吸収層の下に位置する基板に導電層を設けることによって、又は、例えば吸収層が設けられた表面の少なくとも一部が導電性を有するように、基板を少なくとも部分的に導電性を有するものとして設けることによって実現することができる。
【0010】
荷電粒子遮断要素は、様々な用途において荷電粒子を遮断するのに適している。荷電粒子露光装置及び/又は検査装置内で荷電粒子のビームをその軌道に沿って少なくとも部分的に遮断するのに使用することができる。これは例えば電流制限アパーチャアレイ素子において1又は複数のビームを成形するためのものであってよい。それは、例えば米国特許第8,653,485B2号に記載のシステムにおけるアパーチャアレイの1つ以上、特に米国特許第8,653,485B2号の図12に示されているシステムのアパーチャアレイ4Aで使用することができる。それはまた、ビーム又はビーム源を完全に遮断することにより、ビーム源自体のスイッチをオフにすることを必要とせずに一時的にそのスイッチをオフにするシャッタ素子として使用することもできる。これは、ビーム源のスイッチをオンにすることに通常かなりの整定時間を伴う場合に特に有利な可能性がある。米国特許第8,653,485B2号の図12に示されているシステムでは、ビーム源1とコリメータ3の間の場所に配置することができる。
【0011】
特に、荷電粒子遮断要素が電流制限アパーチャとして使用される場合は、少なくとも1つのアパーチャから離間した吸収層を基板に配置することが有利である。これにより、上記少なくとも1つのアパーチャを横切る荷電粒子ビームを歪める及び/又は攪乱する可能性がある吸収層の材料が、少なくとも1つのアパーチャの縁部に又は縁部に張り出して配置される、又は少なくとも1つのアパーチャの内部に配置されることを少なくとも実質的に防ぐことができる。
【0012】
特に、吸収層は、使用時に荷電粒子源を向いて配置される基板の表面に配置される。これにより、荷電粒子遮断要素は、荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するのに使用されるとき、荷電粒子ビームの遮断された部分の少なくとも大部分が吸収層に衝突するように配置することができる。したがって、吸収層は少なくとも1つのアパーチャの近くに配置されることが好ましい。
【0013】
驚くべきことに本発明者らは、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層を使用して荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するとき、荷電粒子遮断要素と荷電粒子源との間に配置された荷電粒子光学コンポーネントにかかる熱負荷は、このような吸収層を使用しない荷電粒子遮断要素と比べて大きく低減されることを発見した。これは特に、荷電粒子遮断要素と直接隣接する及び/又は荷電粒子遮断要素への視界が遮られていない荷電粒子光学コンポーネントに当てはまる。これらの荷電粒子光学コンポーネントにかかる熱負荷を低減することによって、露光装置は、荷電粒子光学コンポーネントが過度に熱くなることなくより長い間動作可能となる、及び/又は荷電粒子光学コンポーネントの冷却が重要ではなくなる。
【0014】
以上で考察したように、本発明につながる主な目的は、例えば米国特許第8,653,485B2号、米国特許第8,558,196B2号、米国特許第9,165,693B2号及び国際公開第2013/171216号に記載の露光システムなどの荷電粒子露光システム内のコンポーネントにかかる熱負荷を低減することであった。これは、特に電流制限アパーチャアレイで使用される場合に、本明細書に記載の荷電粒子遮断要素によって達成された。また、本発明者らは、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層を使用して荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するとき、ターゲットの表面での荷電粒子ビームの収差が大幅に低減することを発見した。したがって、熱負荷を低減するという主な効果に加えて、露光システム内の荷電粒子ビームの収差を低減するという二次的効果が観察された。さらに、荷電粒子ビームを受ける面が部分的にしか吸収層でコーティングされていない場合であっても、熱負荷と収差の両方が低減されることが観察された。しかしながら、遮断された荷電粒子ビームの大部分が吸収層に衝突することが好ましい。
【0015】
本発明者らの発見は、荷電粒子のビームに関連する荷電粒子遮断要素の上流側のコンポーネントの発熱、及び荷電粒子の軌道を乱す可能性がある空間電荷の形成が、後方散乱荷電粒子、及び/又は荷電粒子遮断要素に衝突する荷電粒子により遮断される荷電粒子ビームの一部により生成された二次電子に起因する可能性があることを示唆しているものと思われる。二次電子は、システム内の別の要素の表面に衝突する後方散乱荷電粒子から生じる可能性がある。使用時に遮断すべき荷電粒子を受ける荷電粒子遮断要素の側に本発明に係る吸収層を設けることによって、少なくとも後方散乱の量を減らすことができる。
【0016】
本出願の関連におけるホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層は、ホウ素、炭素又はベリリウムと、窒化ホウ素又は炭化ケイ素などの1つ以上の他の要素との組み合わせを含む材料からなる吸収層をも包含することに留意されたい。
【0017】
好ましくは、吸収層はホウ素を含む。具体的には、吸収層はホウ素層又は窒化ホウ素層である。好ましくは、吸収層はホウ素コーティング又は窒化ホウ素コーティングである。コーティングは、物体の表面に塗布された、一般的に数十又は数百nmの厚さを有する薄層又は被膜である。ホウ素層又はホウ素コーティングは、好ましくは実質的に純粋なホウ素層である。ホウ素は、毒性がなく、室温で安定的であり、空気中で酸化せず、スパッタリングや蒸着などの既知の技術を用いて塗布できるという理由で有利である。
【0018】
荷電粒子を遮断するためにホウ素層又は窒化ホウ素層を使用することの欠点は、これらの材料の電気抵抗率が比較的高いことであり、これによって荷電粒子を遮断するための材料を探し求めているときにこれらの材料は当然には選択されない。吸収層は、使用時に吸収層に衝突する荷電粒子によって帯電し、電気抵抗率が高い材料からなる吸収層を使用する場合、この電荷は吸収層を通した電気伝導によって除去することが困難である。
【0019】
したがって、このような層を導電層又は導電性基板と組み合わせる方策とは別の、本発明の根底にある別の洞察によれば、吸収層の厚さを慎重に選択すべきである。
【0020】
有利には、吸収層は、吸収層の下方に位置する基板の一部分からの荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ導電面が荷電粒子の電荷を受けるのに十分な薄さの厚さを有する。これによって、荷電粒子の効率的な吸収、つまり荷電粒子の後方散乱の量を非常に少なくするとともに、導電面を介した吸収された電荷の除去によって吸収層における電荷蓄積を回避することが可能になる。少なくとも安定化閾値まで層の厚さが増すのに伴って、後方散乱の確率が低下するが、層の厚さが増すことで層の厚さによって導電率が低下する。吸収層は、厚くなりすぎると実質的に電気絶縁体の働きをすることになる。
【0021】
ある実施形態では、吸収層は100nmから500nmの間の厚さを有する。より好適な実施形態では、吸収層は150から250nmの間の厚さを有する。この範囲の吸収層の厚さは、荷電粒子遮断要素への電荷蓄積を回避しながら、荷電粒子遮断要素と荷電粒子源との間に配置された荷電粒子光学素子の発熱を抑制することが観察されている。
【0022】
ある実施形態では、基板の少なくとも一部は導電性がある。これは、導電性のある、例えば金属材料による基板を設けることによって、導電材料を含む基板によって、又は少なくとも吸収層が設けられる領域が高度にドープされた高ドープ半導体基板によって実現することができる。例えば高ドープシリコンを使用してよい。これにより、基板は吸収層から電荷を除去するのを助けることができる。好ましくは、基板は、基板を電圧源又は接地電位に接続するための接続部を備える。ある実施形態では、接続部は、接触領域とも称される、好ましくは基板の表面の一部を構成する又は基板の表面に配置される接続領域を備え、この接続領域は、基板を電圧源又は接地電位に接続するように構成される。特に、導電性基板を接地電位に接続することで、基板を通した電気伝導によって吸収層から電荷を除去することができる。
【0023】
ある実施形態では、基板に導電層が設けられ、導電層は基板と吸収層との間に少なくとも部分的に配置される。これにより、導電層は、吸収層から電荷を除去するのを助けることができる。好ましくは、導電層はモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む材料を含む。導電層は、実質的に純粋なモリブデン又はクロムによって形成されてよい、又は導電層は、これらの元素の少なくとも1つを含む材料で形成されてよい。特に、モリブデンは、モリブデンが少なくとも部分的に酸化された場合であっても、モリブデンの層が導電性があることを保証する酸化モリブデンも導電性があるという理由で好適である。この実施形態では、導電率に関連する基板特性はさほど重要ではない。この実施形態では、基板は、例えば比較的低ドープ又は実質的にノンドープの半導体基板であってよい。
【0024】
導電層は基板と吸収層との間に少なくとも部分的に配置されているため、吸収層は導電層の保護コーティングの機能を果たすことができる。これにより、吸収層は、少なくとも吸収層により覆われた部分について導電層を酸化から保護することができ、これによって導電層に銅(Cu)やアルミニウム(Al)などの他の導電材料を使用することも可能になる。
【0025】
好ましくは、荷電粒子遮断要素は、導電性があり、導電層に接続された接続部又は領域を備え、接続部又は領域は、導電層を接地電位又は制御電圧に接続して、導電層を通した電気伝導によって吸収層の電荷の除去を助けるように構成される。ある実施形態では、接続部は、接触領域とも称される、好ましくは基板の一部を構成する又は基板に配置される接続領域を備え、接続領域は、導電層を電圧源又は接地電位に接続するように構成される。
【0026】
ある実施形態では、基板はシリコン(Si)ウェーハを含む。Siウェーハは、平坦で機械的に安定な基板を提供し、これに当技術分野で周知のエッチング技術を用いてアパーチャを容易に設けることができる。これは荷電粒子遮断要素に複数のアパーチャを設ける実施例において特に有利である。このような荷電粒子遮断要素は、以下で考察するように電流制限素子として使用することができる。Siは通常、少なくともSiがドープされていない場合に高い電気抵抗を有するため、Siウェーハ基板に上記のように吸収層が配置された導電層を設けることが好ましい。
【0027】
ある実施形態では、基板に荷電粒子を通過させる少なくとも1つのアパーチャが設けられる。荷電粒子遮断要素は、基板上の非アパーチャ領域によって荷電粒子ビームの少なくとも部分的及び/又は一時的な遮断を可能にしながら、少なくとも1つのアパーチャを通して荷電粒子ビームの少なくとも一部分を通過させるように荷電粒子ビーム経路内に配置されてよい。アパーチャは、荷電粒子ビームの他の部分を遮断しながら、その一部分、一般に中央部分のみを通過させる場合、しばしば電流制限アパーチャと称される。
【0028】
ある実施形態では、基板にそれぞれが基板の対応するアレイ領域、又はアパーチャアレイ領域に配置された1つ以上のアパーチャアレイを形成するように構成された複数のアパーチャが設けられる。このような要素は、荷電粒子ビームシステム内で電流制限アパーチャアレイとして使用されてよい。それは、例えば荷電粒子ビームを複数の荷電粒子ビームに分割するために使用されてよい。
【0029】
吸収層は、好ましくは少なくとも部分的に上記アレイ領域を取り囲む。一部の実施例では、荷電粒子ビームは、遮断要素により遮断された荷電粒子ビームの大部分が、たとえこれが個々のアパーチャ又はアレイ領域の間に位置する表面領域に延在していなくても吸収層上に落ちる程度に1つ以上のアパーチャアレイを取り囲む領域より大きい。このような実施形態は、吸収層の各部がアパーチャに及ぶのを回避しながらより製造し易い可能性がある。上述のように、このような吸収層による荷電粒子受け面の部分的被覆が、コンポーネントの発熱及び/又は荷電粒子ビームの収差を実質的に低減することが観察されている。
【0030】
別の実施形態では、各アレイ領域は上記吸収層によって少なくとも部分的に取り囲まれている。さらに別の実施形態では、吸収層はさらに、各アパーチャアレイ領域内に少なくとも部分的に配置される。これによって荷電粒子ビームの荷電粒子遮断要素により吸収される部分が増大する可能性がある。
【0031】
ある実施形態では、荷電粒子遮断要素は、少なくとも基板を冷却するための冷却流路を備える。好ましくは、冷却流路は吸収層及び/又は基板と熱接触して配置される。これにより、荷電粒子遮断要素に、荷電粒子遮断要素から熱を除去するために上記冷却流路を通じて冷却液(水など)を導くための冷却流路を設けることができる。ある実施形態では、冷却流路は、基板の吸収層に背を向けた表面に配置される。荷電粒子ビームシステムでの使用の実施形態では、冷却流路は、基板の荷電粒子源に背を向けた表面に配置される。
【0032】
ある実施形態では、基板に吸収層及び冷却流路と接触して配置される別の電気及び/又は熱伝導層が設けられる。熱伝導層は、吸収層から冷却流路への熱伝導経路を提供する。この実施形態は、熱伝導特性が良好でない材料からなる基板を使用することを可能にする。別の導電層は、吸収層から冷却流路への導電経路を提供する。これにより、別の導電層は、通常は露光装置での使用時に接地電位に接続される冷却流路を介して吸収層から電荷を除去するのを助けることができる。また、吸収層を冷却流路に電気的に接続することによって、荷電粒子遮断要素の冷却流路を含む側に背を向けた側に専用の接触領域又は接触構成は不要である。これにより、荷電粒子遮断要素の冷却流路を含む側に背を向けた側は、荷電粒子光学装置の隣接する要素又はコンポーネントのごく近くに配置することができる。
【0033】
第2の態様によれば、本発明は、荷電粒子露光装置で使用する電流制限素子であって、上記電流制限素子が荷電粒子を透過させない基板を備え、上記基板に上記基板の第1の表面から第2の表面へと上記基板を貫通する、荷電粒子を通過させる1つ以上のアパーチャを設け、上記第1の表面の少なくとも一部分にホウ素(B)、炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む吸収層を設け、吸収層が1つ以上のアパーチャから離間して配置され、上記吸収層が導電材料又は導電面上に設けられた電流制限素子を提供する。
【0034】
電流制限素子は通常、荷電粒子ビームの電流を制限するのに使用されることに留意されたい。したがって、1つ以上のアパーチャの直径は荷電粒子ビームの直径より小さい。電流制限素子が上記電流制限素子を横切った荷電粒子ビームの断面を少なくとも部分的に画定するため、アパーチャは通常精密に製造される。吸収層を1つ以上のアパーチャから離間して配置することによって、少なくとも吸収層による少なくとも1つ以上のアパーチャの縁部における擾乱を回避することができる。
【0035】
第2の態様に係る電流制限素子は、本明細書中の上記の第1の態様に係る荷電粒子遮断要素と同じ又は対応する技術的効果及び優位性をもたらす。基板に1つ以上のアパーチャを設けた実施形態に係る、第1の態様の荷電粒子遮断要素は、第2の態様に係る電流制限素子として使用されてよい。
【0036】
第2の態様に係る電流制限素子は、第1の態様に係る荷電粒子遮断要素の実施形態及び/又は代替実施形態の1つ以上と組み合わせてよい。
【0037】
第3の態様によれば、本発明は、少なくとも一時的に荷電粒子ビームを遮断するためのシャッタ素子であって、少なくともその一部分にホウ素(B)、炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む吸収層が設けられた基板を備え、上記吸収層が上記基板上の導電面に設けられたシャッタ素子を提供する。
【0038】
使用時のシャッタ素子は、荷電粒子ビームがシャッタ素子を通過することを一時的に許可し、荷電粒子ビームを一時的に遮断するように構成されることに留意されたい。
【0039】
荷電粒子ビームがシャッタ素子を通過することが許可されている状況では、荷電粒子ビームは、少なくとも上記シャッタ素子の縁部に沿って又はアパーチャを通って通過する。この状況にあるシャッタ素子が電流制限素子の機能も果たすように構成されている場合、吸収層は縁部又はアパーチャから離間して配置されることが好ましい。しかしながら、この状況にあるシャッタ素子が電流制限素子の機能を果たすように構成されていない場合、特に荷電粒子ビームがアパーチャの縁部又は周囲から離間している場合、吸収層はアパーチャの縁部まで又は周囲まで配置されてよい。
【0040】
シャッタ素子は第1の態様の荷電粒子遮断要素によって実現されてよい。
【0041】
第3の態様のシャッタ素子は、第1の態様に係る荷電粒子遮断要素の実施形態及び/又は代替実施形態の1つ以上と組み合わせてよい。
【0042】
第4の態様によれば、本発明は、荷電粒子ビームをターゲットに投影するための露光装置であって、上記露光装置が、荷電粒子ビームを形成するため及び荷電粒子ビームをターゲットに投影するための荷電粒子光学装置を備え、荷電粒子光学装置が、荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断することができる第1の態様に係る荷電粒子遮断要素、上記荷電粒子ビームの荷電粒子電流を制限するように構成された第2の態様に係る電流制限素子、及び/又は第3の態様に係るシャッタ素子を備えた露光装置を提供する。
【0043】
ある実施形態では、荷電粒子遮断要素、電流制限素子、及び/又はシャッタ素子の吸収層は、装置内の荷電粒子源及び/又は後方散乱及び/又は二次電子の源の方を向いた、基板の表面に配置される。
【0044】
ある実施形態では、荷電粒子遮断要素は、露光装置の電流制限アパーチャ又は電流制限アパーチャアレイとして構成された1つ以上のアパーチャを備える。
【0045】
ある実施形態では、荷電粒子遮断要素及び/又は電流制限素子は、荷電粒子ビームを複数の荷電粒子ビームに分割するためのアパーチャのアレイを備える。これにより、荷電粒子遮断要素及び/又は電流制限素子は、単一の大口径ビームから複数の荷電粒子ビームを生成するのに使用することができる。典型的な適用例は、荷電粒子マルチビームリソグラフィシステム、荷電粒子マルチビーム検査システム、及び荷電粒子マルチビーム顕微鏡である。
【0046】
ある実施形態では、荷電粒子光学装置は、荷電粒子ビームを荷電粒子遮断要素に偏向させるための変調偏向器を備え、変調偏向器及び荷電粒子遮断要素が、荷電粒子ビームが偏向器によって偏向されない場合に荷電粒子ビームが荷電粒子遮断要素のアパーチャを通過することを許可し、又はその逆に、荷電粒子ビームが偏向器によって偏向された場合に荷電粒子遮断要素によって荷電粒子ビームを少なくとも部分的に遮断するように構成される。これにより、この実施形態の荷電粒子遮断要素は、荷電粒子ビームを変調すること、特に荷電粒子ビームのオン又はオフ切り替えに使用される。典型的な適用例は荷電粒子(マルチ)ビームリソグラフィシステムである。
【0047】
第5の態様によれば、本発明は、上記の露光装置又はその実施形態を備えた荷電粒子リソグラフィシステムを提供する。
【0048】
第6の態様によれば、本発明は、上記の露光装置又はその実施形態を備えた荷電粒子検査システム又は荷電粒子顕微鏡を提供する。
【0049】
第7の態様によれば、本発明は、上記の露光装置を使用して荷電粒子ビームをターゲットに投影する方法であって、方法が、荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するステップを含み、遮断された荷電粒子ビームの少なくとも一部が荷電粒子遮断要素又は電流制限素子の吸収層上に落ちる方法を提供する。
【0050】
第8の態様によれば、本発明は、上記の露光装置を用いて半導体デバイスを製造する方法であって、方法が、
上記荷電粒子光学装置の下流にウェーハを配置するステップと、
上記荷電粒子光学装置により生成、成形及び/又は変調された荷電粒子ビームを用いて像又はパターンを上記ウェーハに投影することを含む、上記ウェーハを処理するステップと、
上記処理されたウェーハを用いて半導体デバイスを生成するために後続ステップを実行するステップと、
を含む方法を提供する。
【0051】
上記処理されたウェーハから半導体デバイスを製造する後続ステップは、半導体デバイスを製造する技術分野で周知である。上記後続ステップの多くは、例えば本出願人の米国特許出願第US2014/0176920A1号に記載されている。
【0052】
第9の態様によれば、本発明は、上記の露光装置を用いてターゲットを検査する方法であって、方法が、
上記ターゲットを上記荷電粒子光学装置の下流に配置するステップと、
上記荷電粒子光学装置により生成及び成形された荷電粒子ビームを上記ターゲットに向けるステップと、
荷電粒子ビームがターゲットに入射したときに、上記ターゲットにより透過、放出及び/又は反射された荷電粒子を検出するステップと、
荷電粒子を検出するステップからのデータを用いて上記ターゲットを検査するために後続ステップを実行するステップと、
を含む方法を提供する。
【0053】
上記の異なる実施形態は組み合わせることができる。本明細書に記載及び示された様々な態様及び特徴は、可能な限り個別に適用することができる。これらの個別の態様、特に添付の従属請求項に記載の態様及び特徴は、分割特許出願の主題とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明は、添付の図面に示される例示的な実施形態に基づいて明らかにされるであろう。
【0055】
図1】本発明のある実施形態に係る露光装置の概略的外観図である。
図2】本発明のある実施形態に係る顕微鏡又は検査装置の概略的外観図である。
図3】本発明に係る荷電粒子遮断要素のある実施形態の概略的断面図である。
図4】荷電粒子遮断要素による荷電粒子の遮断を概略的に示す。
図5】本発明に係る荷電粒子遮断要素の一部のある実施形態の概略的断面図である。
図6】本発明に係る荷電粒子遮断要素の一部の別の実施形態の概略的断面図である。
図7図6の実施形態に係る荷電粒子遮断要素の第2の概略的断面図である。
図8】ある実施形態に係る冷却チャネルが設けられた荷電粒子遮断要素の概略的断面図である。
図9】本発明に係る荷電粒子遮断要素のある実施形態の概略的上面図である。
図10A】本発明に係る荷電粒子遮断要素の別の実施形態の概略的上面図である。
図10B図10Aの線VII-VIIに沿った概略的断面図である。
図11】半導体デバイスを製造する方法を概略的に示す。
図12】ターゲットを検査する方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、1つ以上の荷電粒子ビームをターゲット110に投影するための露光装置100の一例の概略的外観図である。このような露光装置は、荷電粒子マルチビームリソグラフィシステム、荷電粒子マルチビーム検査システム、又は荷電粒子マルチビーム顕微鏡の一部であってよい。本教示は他のタイプの荷電粒子にも適用されるが、特にそれは電子ビームシステムであってよい。
【0057】
図1に示す露光装置100は、荷電粒子マクロビーム111を生成するための荷電粒子源101を備えた荷電粒子光学装置を備える。この特定例の荷電粒子源101は、荷電粒子マクロビーム111を集束させる及び/又は平行にするためのコリメータレンズ102に向けられる発散荷電粒子マクロビームを生成するように構成される。一部の実施形態では、荷電粒子源101は電子源である。
【0058】
荷電粒子光学装置は、コリメータレンズ102の下流に、荷電粒子マクロビーム111を複数の荷電粒子ビーム112に分割するためのアパーチャ1041のアレイを備えたアパーチャアレイ要素104を備える。アパーチャアレイ104は、この実施形態では電流制限素子である、本発明に係る荷電粒子遮断要素を備える。荷電粒子遮断要素は、アパーチャ1041のアレイを備えた基板1042を備え、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む吸収層1043が設けられる。吸収層1043は、基板1042の荷電粒子源101を向いた表面に配置される。図1に概略的に示すように、平行になったマクロビーム111は、アパーチャアレイ要素104、具体的にはその吸収層1043に衝突し、アパーチャアレイ要素104は、アパーチャ1041を通過したマクロビームの一部によって複数の荷電粒子ビーム112を形成すると同時に平行になったマクロビーム111の一部を遮断する。図1の例では、明確にするために3つのビーム112しか示されていないが、ビームの数は一般に数百、数千あるいは数万の範囲内にある。
【0059】
本発明に係る荷電粒子遮断要素は、電流制限素子として、特に上記のアパーチャアレイ要素104とともに使用するときに特に有利であることが分かっている。代替的又は付加的に、荷電粒子遮断要素は、以下で説明されるように装置内の他の場所で使用されてもよい。
【0060】
荷電粒子光学装置は、さらにターゲット110寄りに、荷電粒子ビーム112のそれぞれから複数の荷電粒子サブビーム115を生成するための変調アパーチャアレイ105を備える。アパーチャアレイ104と変調アパーチャアレイ105との間には、変調アパーチャアレイ105の下流に位置するビームストップアレイ108の対応する開口に荷電粒子ビーム112を合焦させるための集光レンズアレイ103(又は集光レンズアレイのセット)が設けられる。
【0061】
この例では、アパーチャアレイ105は、各荷電粒子ビーム112から3つのサブビーム115、116を生成するものとして示されている。実際には、各荷電粒子ビーム112から生成されるサブビーム115の数は一般的に3よりもはるかに多い。ある実施形態では、約50個のサブビーム(例えば7×7アパーチャアレイにより生成される49個のサブビーム)が各荷電粒子ビーム112から生成される。他の実施形態では、200個以上のサブビームが生成されてよい。
【0062】
変調アパーチャアレイ105もまた、本発明に係る荷電粒子遮断要素又は電流制限素子を備えてよい。ただし、これは図1に詳細には示さない。
【0063】
変調アパーチャアレイ105は、荷電粒子光学装置の一部であり、荷電粒子サブビーム116をビームストップアレイ108で遮断されるように個々に偏向させる、又は荷電粒子サブビーム115が無偏向でビームストップアレイ108の対応するアパーチャを通過することを許可するように構成された偏向器のアレイを備える。
【0064】
ビームストップアレイ108は、荷電粒子サブビーム115が変調アパーチャアレイ105によって偏向されないときに通過を許可するように構成されたアパーチャ1081のアレイを備える。変調アパーチャアレイ105により偏向された荷電粒子サブビーム116は、ビームストップアレイ108によって遮断されるように、ビームストップアレイ108の荷電粒子源101を向いた表面に向けられる。この例では、ビームストップアレイ108は、アパーチャ1081を備えた基板1082を備え、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層1083が設けられた、本発明に係る荷電粒子遮断要素を備える。吸収層1083は、基板1082の荷電粒子源101を向いていて、遮断すべきサブビーム116を受ける表面に配置される。図1に概略的に示されているように、吸収層1083は、ビームストップアレイ108のアパーチャ1081から離間してその近くに配置される。
【0065】
続いて荷電粒子光学装置は、ビームストップアレイ108を通過した荷電粒子サブビーム115をターゲット110の表面に投影するための投影レンズ又は投影レンズアレイ109を備える。荷電粒子光学装置はさらに、上記ターゲット110を露光しながらターゲット110の表面にサブビーム115を走査するための1つ以上の走査偏向器アレイ(図示せず)を備えてよい。
【0066】
荷電粒子マルチビームリソグラフィシステム、荷電粒子マルチビーム検査システム、又は荷電粒子マルチビーム顕微鏡において、ターゲット110は通常、荷電粒子光学装置に対してターゲット110を正確に位置決めし移動させることができるステージ120の上部に配置される。
【0067】
図1に明確に示されているように、吸収層1043、1083を備えた基板1042、1082は、荷電粒子源101からの荷電粒子ビーム111、116の少なくとも一部を遮断するように構成され、遮断される荷電粒子ビーム111、116の少なくとも一部が、少なくとも部分的に荷電粒子遮断要素の吸収層1043、1083上に落ちる。これにより、荷電粒子遮断要素より上の荷電粒子ビームの全電流は、荷電粒子遮断要素より下の荷電粒子ビームの全電流より高い。荷電粒子遮断要素、具体的にはアパーチャアレイ104、変調アパーチャアレイ105、及びビームストップアレイ108は、露光装置1の電流制限素子である。
【0068】
一部の実施形態では、コリメータレンズ102、そのアパーチャアレイ104に近い少なくとも一部は、吸収層1022が設けられ、マクロビーム111が通過する少なくとも1つのアパーチャを備えた基板1021を備えた、本発明に係る荷電粒子遮断要素を備えてよい。図示された実施形態では、吸収層1022は、基板1021のアパーチャアレイ104を向いた表面に配置される。これは使用時に、荷電粒子ビームのアパーチャ1041を通過しない部分からの後方散乱荷電粒子の、及び/又は荷電粒子ビーム111がアパーチャアレイ要素104に入射することによって、例えばこれらの荷電粒子が後方散乱され、システム内の他のコンポーネントに衝突することによって荷電粒子光学装置内で生成される可能性がある二次電子の荷電粒子源として機能することができるためである。
【0069】
集光レンズアレイ103、その変調アパーチャアレイ105に最も近い少なくとも一部も、少なくとも1つのアパーチャと、ホウ素、炭素又はベリリウムからなる吸収層114とを備えた基板113を備えた、本発明に係る荷電粒子遮断要素を備えてよい。吸収層114は、基板113の変調アパーチャアレイ105を向いている表面に配置され、使用時に、荷電粒子ビーム112が変調アパーチャアレイ105に入射するときに荷電粒子光学装置内に生成される可能性がある後方散乱及び/又は二次電子の源として機能することができる。
【0070】
さらに、荷電粒子遮断要素は、荷電粒子源101とコリメータレンズ102との間に実質的に水平移動可能に配置されて源シャッタとして機能するシャッタ107として使用することができる。この場合、典型的には荷電粒子遮断要素にアパーチャが設けられない。これを荷電粒子ビーム経路内に移動させることによって、荷電粒子源101からの荷電粒子ビームは遮断され、例えば荷電粒子源の下流にある要素の位置調整及び/又は交換中に、荷電粒子ビーム源の電源を切ることなく荷電粒子ビームを一時的に遮断することが可能になる。
【0071】
荷電粒子遮断要素はまた、変調アパーチャアレイ105とビームストップアレイ108との間に位置する、ビームシャッタとして機能するシャッタ108として使用することができる。このようなシャッタは、例えば非最適に機能する変調アパーチャアレイ105の場合に、ビーム115、116の1つ以上のグループを遮断することに応用される。このシャッタは、アパーチャが設けられていない荷電粒子遮断要素によって実現されてよく、荷電粒子ビーム経路内に入れられて荷電粒子ビーム115、116の1つ以上のグループを遮断することができる。代替的に、荷電粒子遮断要素は、荷電粒子ビーム115、116の他のグループを通過させると同時に荷電粒子ビーム115、116の1つ以上のグループを選択的に遮断できる1つ以上のアパーチャが設けられてもよい。
【0072】
図2は、本発明に係る荷電粒子遮断要素を備えた荷電粒子検査システム又は顕微鏡、例えば電子顕微鏡を概略的に示している。このような顕微鏡及び検査システムは、例えば半導体デバイス製造などの幅広い用途を有する。装置は、荷電粒子ビーム202を生成する荷電粒子源201と、荷電粒子ビーム202を検査又は分析対象である、サンプルとも称されるターゲット210に投影する荷電粒子光学系203とを備える。ターゲット210は、典型的には荷電粒子光学系203に対して移動可能なステージ(図示せず)上に配置される。荷電粒子光学系203は、当技術分野で周知の、荷電粒子ビームに影響を与えるための静電及び/又は電磁レンズ素子を含む様々な荷電粒子光学素子及びコンポーネントを備える。一部のシステムでは、荷電粒子ビーム202は、ターゲットに向けられる複数の個々のビーム(図示せず)に分割される。荷電粒子ビームのターゲット210との相互作用から生じる様々な信号206、207を検出するための1つ以上の異なる検出器204、205が設けられる。このような信号には、例えば二次電子、オージェ電子、後方散乱荷電粒子、X線、カソードルミネセンスなどが含まれる。
【0073】
検査システムはさらに、本発明に係る荷電粒子遮断要素により実現されるシャッタ素子10を備える。シャッタ素子10は、荷電粒子源を一時的に遮断するように構成される。代替的又は付加的に、本発明の荷電粒子遮断要素は、荷電粒子光学系203内に、例えば電流制限素子として設けることができる。代替的又は付加的に、シャッタ素子10は、荷電粒子光学系及び/又は検出器領域をターゲット空間から一時的に遮断するように構成されてよい。
【0074】
公知の検査システム及び/又は電子顕微鏡の例は、米国特許第7,732,762B2号、米国特許第6,844,550B1号、及びA.L.Eberle et al.,「High-resolution,high-throughput imaging with a multibeam scanning electron microscope」、Journal of Microscopy、Vol.259、Issue 2、2015、pp.114-120に見られる。上記によれば、これらのシステムでは、本発明に係る荷電粒子遮断要素は、例えば電子源又は電子銃の下流にあるシャッタとして、及び/又はアパーチャアレイ、ビームスプリッタ又はビーム制限アパーチャとして使用される可能性がある。
【0075】
本発明に係る荷電粒子遮断要素の様々な実施形態は、図3から図10に示され、以下で説明される。図1から図2を参照して説明された荷電粒子遮断要素は、これらの実施形態のいずれか1つ以上に係る荷電粒子遮断要素であってよい。
【0076】
図3は、ある実施形態に係る荷電粒子遮断要素10の概略的断面図である。荷電粒子遮断要素10は、吸収層13が設けられた導電面を有する基板11を備える。図示された実施形態では、導電面は、基板11の表面に塗布された導電層14によって与えられる。続いて吸収層13が導電層14上に塗布される。吸収層13は、有利にはホウ素層又は窒化ホウ素層であるが、例えば炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む他の材料を使用することもできる。基板11はシリコン基板であってよく、導電層14はモリブデン層であってよい。
【0077】
以上で考察したように、吸収層の厚さは重要である。図4は、吸収層13が設けられた導電性基板11を備えた荷電粒子遮断要素に衝突する電子の経路を概略的に示している。類似の状況が図3に示された要素に適用される。電子e-は荷電粒子遮断要素10’の表面に衝突する。電子e-は吸収層13に衝突すると、この層によって吸収される可能性がある。電子は吸収されると、吸収層に入る。電子が下面12により後方散乱されるよりも吸収層に吸収される可能性が高くなるように、吸収層は十分に厚くなければならない。電子吸収の結果、吸収層13に電荷が蓄積することを避けるために、吸収層から電荷を除去する必要がある。上記のように、例えばホウ素を含む層は一般的に伝導性が低い。層が十分に薄い場合、電荷は吸収層を通過し、この例では電気接地に接続された導電性基板11の面12に到達することになる。電荷が吸収層を通過して下方の導電面に搬送される可能性は、吸収層の厚さが増すにつれて低下する。本発明者らは、吸収層の厚さを数百ナノメートル、例えば約200nmとすべきことが分かった。
【0078】
図5は、荷電粒子遮断要素20の概略的断面図である。この荷電粒子遮断要素は、例えば荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するのに使用することができる。荷電粒子遮断要素20は、アパーチャ22が電流制限アパーチャとして機能する電流制限素子として使用することができる。荷電粒子遮断要素20は、少なくとも1つのアパーチャ22を備えた実質的に平坦な基板21を備える。基板21には、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層23が設けられる。好ましくは、吸収層23はホウ素、窒化ホウ素又は炭化ケイ素のコーティングである。吸収層23は、使用時に、荷電粒子源101を向いて、例えば図1のアパーチャアレイ104及び/又はビームストップアレイ108上に、又はアパーチャアレイ104又は変調アパーチャアレイ105を向いて、例えばそれぞれコリメータレンズ102の一部及び/又は集光レンズアレイ103の一部として配置される、少なくとも上記基板の一部を含む上記基板21上の領域を実質的に覆うように構成される。
【0079】
この実施形態に係る基板21は、吸収層23からの電荷の除去を可能にする導電材料を含む。このような基板21は、使用時に接続部25を介して制御電位又は接地電位26に適宜接続されて、上記基板21を通した電気伝導によって吸収層23の電荷を除去することが可能になる。この実施形態の意味における導電材料はまた、高ドープ半導体材料を含み得ることに留意されたい。したがって、基板21は、例えば高ドープシリコンウェーハを含んでよい。
【0080】
図6は、別の実施形態に係る荷電粒子遮断要素30の概略的断面図である。荷電粒子遮断要素30は、少なくとも1つのアパーチャ32を備えた実質的に平坦な基板31を備える。基板31には、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層33が設けられる。好ましくは、吸収層23はホウ素、窒化ホウ素又は炭化ケイ素のコーティングである。吸収層33は、少なくとも上記基板の一部を含む上記基板31上の領域を実質的に覆うように構成され、使用時に図5の荷電粒子遮断要素について説明したのと同じように構成されてよい。
【0081】
この実施形態に係る荷電粒子遮断要素30には、導電層34が設けられる。導電層34は、基板31と吸収層33との間に配置される。導電層34は、使用時に図7の複数のアパーチャ32を備えた荷電粒子遮断要素30に概略的に示されるように、接続部35を介して接地電位36、又は制御電位に接続される。導電層34を接地電位36に接続することで、導電層34を通した電気伝導により吸収層33から電荷を除去することが可能になる。導電層34は、例えばモリブデン又はクロムを含む。図6には1つのアパーチャ32しか示されていないが、荷電粒子遮断要素は、図7に示すように複数のアパーチャ32を備えてよい。
【0082】
特に、図7に概略的に示す複数のアパーチャ32を備えた荷電粒子遮断要素30は、基板31が、すぐに入手でき、明確に定義された厚さを有する非常に平坦且つ機械的にロバストな基板を提供するSiウェーハを備えることが望ましい。
【0083】
図8は、荷電粒子遮断要素40の別の実施形態を示している。荷電粒子遮断要素40は、少なくとも1つのアパーチャ42、好ましくは複数のアパーチャ42を備えた実質的に平坦な基板41を備える。基板41には、ホウ素、炭素又はベリリウムを含む材料からなる吸収層43、好ましくはホウ素、窒化ホウ素又は炭化ケイ素のコーティングが設けられる。吸収層43は、少なくとも上記基板の一部を含む上記基板41上の領域を実質的に覆うように構成され、使用時に典型的には図5の荷電粒子遮断要素について説明したのと同じように構成される。
【0084】
この実施形態に係る荷電粒子遮断要素40には、基板41を冷却するための1つ以上の冷却流路45が設けられる。冷却流路45は、基板41、及び/又は別の電気及び/又は熱伝導層46と熱接触して配置される。
【0085】
別の伝導層46は、吸収層43及び冷却流路45と接触して配置され、高い熱伝導率を有する材料を含み、吸収層43から冷却流路45への熱伝導経路を提供することができる。
【0086】
付加的又は代替的に、別の伝導層46は、高い導電率を有する材料を含み、吸収層43、及び/又は基板41と吸収層43との間に配置された導電層44から、使用時に接地電位47に接続される冷却流路45への導電経路を提供することができる。
【0087】
図8に概略的に示されるように、冷却流路45は、基板41の吸収層43に背を向けた側に配置される。しかしながら、冷却流路45は、基板41の吸収層43と同じ側、好ましくはアパーチャ42から離間した位置に配置することもできる。このような構成では、吸収層43は冷却流路45と直接接触して配置することができ、図8の実施例のような別の伝導層46は不要である。
【0088】
図9は、本発明に係る荷電粒子遮断要素50のある実施形態の概略的上面図である。荷電粒子遮断要素50は、アレイ領域52に配置されたアパーチャのアレイ56を備えた実質的に平坦な基板51を備える。基板51は、導電層としてモリブデンのコーティング53が設けられたシリコンウェーハである。モリブデンコーティング53の上部に、吸収層としてホウ素のコーティング54が配置される。図9に概略的に示すように、吸収層、具体的にはホウ素コーティング54は、アパーチャアレイ56のアパーチャから離間して配置される。特に、ホウ素コーティング54はアレイ領域52から離間して配置される。吸収層54は、1つの単一領域として配置されてよい、又は吸収層又はコーティングで覆われていない導電性コーティング53の部分55により分離された複数の領域によって提供されてよい。
【0089】
本発明のある実施形態では、荷電粒子遮断要素50は、マクロビームから複数の荷電粒子ビームを形成するアパーチャアレイ要素104として、特に荷電粒子露光システム100のアパーチャアレイ要素104として使用される。アパーチャアレイ要素104として使用される場合の荷電粒子遮断要素50上のマクロビーム111の断面の一例が円57で示されている。図から分かるように、ビームの大部分は、吸収層54で覆われた領域に落ちる。つまり、荷電粒子ビームの遮断された部分の大部分が、吸収層54に衝突してこれによって吸収される。
【0090】
図10Aは、本発明に係る荷電粒子遮断要素60の別の実施形態の概略的上面図である。図10Bは、図10Aの線VII-VIIに沿った概略的断面図である。
【0091】
荷電粒子遮断要素60は、異なるアレイ領域62に配置された複数のアパーチャのアレイを備えた実質的に平坦な基板61を備える。基板61は、導電層としてモリブデンのコーティング63が設けられたシリコンウェーハである。モリブデンコーティング63の上部に、吸収層としてホウ素のコーティング64が配置される。図10A及び図10Bに概略的に示すように、吸収層64は、アパーチャアレイのアパーチャから離間して配置される。特に、ホウ素コーティング64はアレイ領域62から離間して配置される。図10A及び図10Bに概略的に示すように、ホウ素コーティング64はまた、少なくとも部分的にアレイ領域62間の領域65に延在する。
【0092】
吸収層64は、1つの単一領域として配置されてよい、又は吸収層又はコーティングで覆われていない導電性コーティング63の部分66により分離された複数の領域によって提供されてよい。
【0093】
この荷電粒子遮断要素60は、例えば荷電粒子マクロビームを複数の荷電粒子ビームに分割するアパーチャアレイとして使用されてよい。本発明のある実施形態では、図1に示した荷電粒子露光システムのアパーチャアレイ要素104で使用される。アパーチャアレイ104として使用される場合の荷電粒子遮断要素60上のマクロビーム111の断面の一例が円67で示されている。図から分かるように、遮断されたビームの大部分が、吸収層64によって遮断される。
【0094】
図11は、上記の露光装置を用いて半導体デバイスを製造する方法80のステップを概略的に示している。第1のステップ81において、上記荷電粒子光学装置の下流にウェーハが配置される。第2のステップ82において、上記荷電粒子光学装置により生成、成形及び/又は変調された荷電粒子ビームを用いて像又はパターンを上記ウェーハに投影することを含むウェーハの処理が行われる。第3のステップ83において、処理されたウェーハから半導体デバイスを生成するために後続ステップが実行される。このような後続ステップは当技術分野で周知である。
【0095】
図12は、上記の露光装置又は検査システムを用いてターゲットを検査する方法90のステップを概略的に示している。第1のステップ91において、ターゲットは荷電粒子光学装置の下流に配置され、第2のステップ92において、上記荷電粒子光学装置により生成及び成形された荷電粒子ビームがターゲットに向けられる。第3のステップ93において、荷電粒子ビームがターゲットに入射したときに上記ターゲットにより透過、放出及び/又は反射された荷電粒子が検出される。第4のステップ94において、荷電粒子を検出するステップ中に収集されたデータを用いて上記ターゲットを検査するために後続ステップが実行される。
【0096】
上記の記載は好適な実施形態の動作を説明するために含まれているのであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。上記の考察から、やはり本発明の範囲に包含される多くの変形例が当業者に明らかであろう。
【0097】
条項
C1. 荷電粒子を遮断するための荷電粒子遮断要素であって、荷電粒子遮断要素が基板を備え、基板の表面の少なくとも一部分に、ホウ素(B)、炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む吸収層が設けられ、吸収層が導電面上に設けられる荷電粒子遮断要素。
【0098】
C2. 吸収層が、吸収層の下方に位置する基板の一部分からの荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ導電面が荷電粒子の電荷を受けるほど十分に薄い厚さを有する、条項C1に記載の荷電粒子遮断要素。
【0099】
C3. 吸収層が100nmから500nmの間の厚さを有する、条項C1又はC2に記載の荷電粒子遮断要素。
【0100】
C4. 吸収層が150から250nmの間の厚さを有する、条項C3に記載の荷電粒子遮断要素。
【0101】
C5. 吸収層がホウ素層、窒化ホウ素層又は炭化ケイ素層である、条項C1からC4のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0102】
C6. 基板の少なくとも一部が導電性がある、条項C1からC5のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0103】
C7. 基板が、基板の導電性がある少なくとも一部を電圧源又は接地電位に接続するための接続部を備えた、条項C6に記載の荷電粒子遮断要素。
【0104】
C8. 基板に導電層が設けられ、導電層が基板と吸収層との間に少なくとも部分的に配置される、条項C1からC7のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0105】
C9. 導電層がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む、条項C8に記載の荷電粒子遮断要素。
【0106】
C10. 導電層に接続される導電接続部を備えた、条項C8又はC9に記載の荷電粒子遮断要素。
【0107】
C11. 基板がシリコン(Si)ウェーハを含む、条項C1からC10のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0108】
C12. 基板に荷電粒子を通過させる少なくとも1つのアパーチャが設けられる、条項C1からC11のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0109】
C13. 基板に複数のアパーチャが設けられ、アパーチャが、それぞれが基板の対応するアレイ領域に配置された1つ以上のアパーチャアレイを形成するように構成された、条項C12に記載の荷電粒子遮断要素。
【0110】
C14. 吸収層が、少なくとも部分的にアレイ領域を取り囲む、条項C13に記載の荷電粒子遮断要素。
【0111】
C15. 各アレイ領域が、吸収層によって少なくとも部分的に取り囲まれる、条項C13又はC14に記載の荷電粒子遮断要素。
【0112】
C16. 吸収層がさらに、各アレイ領域内に少なくとも部分的に配置される、条項C13からC15のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0113】
C17. 吸収層が、少なくとも1つのアパーチャから離間して配置される、条項C12からC16のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0114】
C18. 荷電粒子遮断要素が、少なくとも基板を冷却するための冷却流路を備え、好ましくは、冷却流路が吸収層及び/又は基板と熱接触して配置される、条項C1からC17のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0115】
C19. 基板に別の電気及び/又は熱伝導層が設けられ、別の電気及び/又は熱伝導層が吸収層及び冷却流路と接触して配置される、条項C18に記載の荷電粒子遮断要素。
【0116】
C20. 荷電粒子露光装置で使用する電流制限素子であって、電流制限素子が荷電粒子を実質的に透過させない基板を備え、基板に、基板の第1の表面から第2の表面へと基板を貫通する、荷電粒子を通過させる1つ以上のアパーチャが設けられ、
第1の表面の少なくとも一部分に、ホウ素(B)、炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む吸収層が設けられ、
吸収層が導電面上に設けられる、電流制限素子。
【0117】
C21. 吸収層が、第1の表面の1つ以上のアパーチャが配置される領域を少なくとも部分的に取り囲む、条項C20に記載の電流制限素子。
【0118】
C22. 吸収層が1つ以上のアパーチャから離間して配置される、条項C20又はC21に記載の電流制限素子。
【0119】
C23. 吸収層が、吸収層の下方に位置する基板の一部分からの荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ導電面が荷電粒子の電荷を受けるほど十分に薄い厚さを有する、条項C20からC22のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0120】
C24. 吸収層が100nmから500nmの厚さを有する、条項C20からC23のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0121】
C25. 吸収層が150nmから250nmの厚さを有する、条項C24に記載の電流制限素子。
【0122】
C26. 吸収層がホウ素層、窒化ホウ素層又は炭化ケイ素層である、条項C20からC25のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0123】
C27. 基板の少なくとも一部が導電性がある、条項C20からC26のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0124】
C28. 基板に導電層が設けられ、導電層が基板と吸収層との間に少なくとも部分的に配置される、条項C20からC27のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0125】
C29. 導電層がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む、条項C28に記載の電流制限素子。
【0126】
C30. 導電性基板又は導電層を電圧源又は接地電位に接続するための導電接続部を備える、条項C27からC29のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0127】
C31. 基板がシリコン(Si)ウェーハを含む、条項C20からC30のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0128】
C32. 少なくとも基板を冷却するための冷却流路をさらに備え、好ましくは、冷却流路が吸収層及び/又は基板と熱接触して配置される、条項C20からC31のいずれか1項に記載の電流制限素子。
【0129】
C33. 基板に別の電気伝導及び/又は熱伝導層が設けられ、別の電気伝導及び/又は熱伝導層が吸収層及び冷却流路と接触して配置される、条項C32に記載の電流制限素子。
【0130】
C34. 荷電粒子ビームを遮断するためのシャッタ素子であって、シャッタ素子が、少なくともその一部分にホウ素(B)、炭素(C)又はベリリウム(Be)を含む吸収層が設けられた基板を備え、吸収層が基板上の導電面に設けられる、シャッタ素子。
【0131】
C35. 吸収層が、吸収層の下方に位置する導電面からの荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ導電面が荷電粒子の電荷を受けるほど十分に薄い厚さを有する、条項C34に記載のシャッタ素子。
【0132】
C36. 吸収層が100nmから500nmの間の厚さを有する、条項C34又はC35に記載のシャッタ素子。
【0133】
C37. 吸収層が150から250nmの間の厚さを有する、条項C36に記載のシャッタ素子。
【0134】
C38. 吸収層がホウ素層、窒化ホウ素層又は炭化ケイ素層である、条項C34からC37のいずれか1項に記載のシャッタ素子。
【0135】
C39. 基板の少なくとも一部が導電性がある、条項C34からC38のいずれか1項に記載のシャッタ素子。
【0136】
C40. 基板に導電層が設けられ、導電層が基板と吸収層との間に少なくとも部分的に配置される、条項C34からC39のいずれか1項に記載のシャッタ素子。
【0137】
C41. 導電層がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む、条項C40に記載の荷電粒子遮断要素。
【0138】
C42. 基板の導電性がある一部又は導電層に接続される導電接続部を備える、条項C39からC41のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【0139】
C43. 荷電粒子ビームをターゲットに投影するための露光装置であって、露光装置が、荷電粒子ビームを形成し、荷電粒子ビームの少なくとも一部をターゲットに投影するための荷電粒子光学装置を備え、荷電粒子光学装置が、
荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子源と、
荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断することができる請求項1から19のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素、荷電粒子ビームの荷電粒子電流を制限するように構成された請求項20から33のいずれか1項に記載の電流制限素子、及び/又は荷電粒子ビームの少なくとも一部を一時的に遮断するための、請求項34から42のいずれか1項に記載のシャッタ素子と、
を備えた露光装置。
【0140】
C44. 荷電粒子遮断要素、電流制限素子、及び/又はシャッタ素子の吸収層が、荷電粒子源を向いた、又は後方散乱荷電粒子及び/又は二次電子の源の方を向いた基板の表面に配置される、条項C43に記載の露光装置。
【0141】
C45. シャッタ素子が荷電粒子源用のシャッタとして配置される、条項C44に記載の露光装置。
【0142】
C46. 条項C20からC33のいずれか1項に記載の電流制限素子を備え、電流制限素子が、荷電粒子ビームを複数の荷電粒子ビームに分割するように構成されたアパーチャのアレイを備える、条項C43からC45のいずれか1項に記載の露光装置。
【0143】
C47. 荷電粒子ビームを荷電粒子遮断要素に偏向させるための変調偏向器をさらに備え、変調偏向器及び荷電粒子遮断要素が、荷電粒子ビームが偏向器によって偏向されない場合に荷電粒子ビームが荷電粒子遮断要素のアパーチャを通過することを許可し、又はその逆に、荷電粒子ビームが偏向器によって偏向された場合に荷電粒子遮断要素によって荷電粒子ビームを少なくとも部分的に遮断するように構成される、条項C43からC46のいずれか1項に記載の露光装置。
【0144】
C48. 条項C43からC47のいずれか1項に記載の露光装置を備えた荷電粒子リソグラフィシステム。
【0145】
C49. 条項C43からC48のいずれか1項に記載の露光装置を備えた荷電粒子検査システム又は荷電粒子顕微鏡。
【0146】
C50. 条項C43からC49のいずれか1項に記載の露光装置を使用して荷電粒子ビームをターゲットに投影する方法であって、方法が、荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を遮断するステップを含み、遮断される荷電粒子ビームの少なくとも一部が荷電粒子遮断要素又は電流制限素子の吸収層上に落ちる方法。
【0147】
C51. 条項C43からC49のいずれか1項に記載の露光装置を用いて半導体デバイスを製造する方法であって、方法が、
荷電粒子光学装置の下流にウェーハを配置するステップと、
荷電粒子光学装置により生成、成形及び/又は変調された荷電粒子ビームを用いて像又はパターンをウェーハに投影することを含む、ウェーハを処理するステップと、
処理されたウェーハを用いて半導体デバイスを生成するために後続ステップを実行するステップと、
を含む方法。
【0148】
C52. 条項C43からC49のいずれか1項に記載の露光装置を用いてターゲットを検査する方法であって、方法が、
ターゲットを荷電粒子光学装置の下流に配置するステップと、
荷電粒子光学装置により生成及び成形された荷電粒子ビームをターゲットに向けるステップと、
荷電粒子ビームがターゲットに入射したときに、ターゲットにより透過、放出及び/又は反射された荷電粒子を検出するステップと、
荷電粒子を検出するステップ中に収集されたデータを用いてターゲットを検査するために後続ステップを実行するステップと、
を含む方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を通過させるアパーチャを有する基板と、
前記荷電粒子源からの前記荷電粒子ビームの少なくとも一部を吸収するように構成された吸収層と、を備え、
前記吸収層は、前記基板の表面上に設けられ、前記アパーチャを通過する前記荷電粒子ビームの一部が散乱するのを防止するために、前記アパーチャの端部から離間して配置されており、
前記吸収層の材料が、炭素、ホウ素(B)、またはベリリウム(Be)を含み、
前記基板の少なくとも一部は、前記吸収層から吸収された電荷を除去するように構成される導電層を含む、
荷電粒子遮断要素。
【請求項2】
前記基板が、前記基板の前記少なくとも一部を電圧源又は接地電位に接続するための接続部を備えた、請求項1に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項3】
前記導電層が、前記電圧源又は前記接地電位に接続された、請求項2に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項4】
前記吸収層がホウ素、窒化ホウ素又は炭化ケイ素の被膜である、請求項1-3のいずれかに記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項5】
前記吸収層が、前記吸収層の下方に位置する前記基板の一部分からの前記荷電粒子の後方散乱を防ぐのに十分な、かつ前記導電層が前記荷電粒子の電荷を受けるほど十分に薄い厚さを有する、請求項1-4のいずれかに記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項6】
前記導電層が前記基板と前記吸収層との間に少なくとも部分的に配置される、請求項1-5のいずれかに記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項7】
前記導電層がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)を含む、請求項1-6のいずれかに記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項8】
前記アパーチャが、それぞれが前記基板の対応するアレイ領域に配置された1つ以上のアパーチャアレイを形成するように構成された、請求項1-7のいずれかに記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項9】
前記吸収層は、少なくとも部分的に、基板のアレイ領域内に延在し、及び/又は、アレイ領域もしくは各アレイ領域を取り囲む、請求項8に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項10】
前記荷電粒子遮断要素が、前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流を制限するように配置された電流制限素子である、請求項1-9のいずれかに記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項11】
前記吸収層、前記基板又は前記導電層の少なくとも1つを冷却するための冷却流路をさらに有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項12】
前記吸収層から前記冷却流路への熱伝導経路を提供するように構成された熱伝導層をさらに有する、請求項11に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項13】
前記冷却流路が前記吸収層及び/又は前記基板と熱接触して配置された、及び/又は、
前記基板に別の電気及び/又は熱伝導層が設けられた、請求項11又は12に記載の荷電粒子遮断要素。
【請求項14】
荷電粒子ビーム露光装置であって、
荷電粒子ビームを形成し、前記荷電粒子ビームの少なくとも一部をターゲット上に投射するための荷電粒子光学装置を備え、
前記荷電粒子光学装置は、
前記荷電粒子ビームを生成する荷電粒子源と、
請求項1-13のいずれかに記載の荷電粒子遮断要素と、
を有する荷電粒子ビーム露光装置。
【請求項15】
荷電粒子ビーム露光装置であって、
荷電粒子ビームを形成し、前記荷電粒子ビームの少なくとも一部をターゲット上に投射するための荷電粒子光学装置を備え、
前記荷電粒子光学装置は、
前記荷電粒子ビームを生成する荷電粒子源と、
荷電粒子遮断要素と、を備え、
前記荷電粒子遮断要素は、
荷電粒子源からの荷電粒子ビームの少なくとも一部を通過させるアパーチャを有する基板と、
前記荷電粒子源からの前記荷電粒子ビームの少なくとも一部を吸収するように構成された吸収層と、を備え、
前記吸収層は、前記基板の表面上に設けられ、前記アパーチャを通過する前記荷電粒子ビームの一部が散乱するのを防止するために、前記アパーチャの端部から離間して配置されており、
前記吸収層の材料が、炭素、ホウ素(B)、またはベリリウム(Be)を含み、
前記基板の少なくとも一部は、前記吸収層から吸収された電荷を除去するように構成される導電層を含む、
荷電粒子ビーム露光装置。
【外国語明細書】