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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031342
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G05F1/56 310N
G05F1/56 310S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134842
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430BB12
5H430CC07
5H430EE04
5H430FF02
5H430FF13
5H430GG01
5H430HH01
5H430LA21
5H430LB06
(57)【要約】
【課題】低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させる。
【解決手段】電源装置は、負荷に安定化した直流の出力電圧を供給する。電源装置は、第1トランジスタと、リニア制御部と、電流消費回路と、温度検出素子と、温度制御部とを備える。第1トランジスタは、電源電圧が与えられる電源端子と出力電圧を出力する出力端子との間に、ドレインおよびソースが接続される。リニア制御部は、第1トランジスタをリニア増幅動作させることにより、出力電圧の電圧値を予め設定された第1目標値に近づける。電流消費回路は、出力端子とグランドとの間に接続される。温度検出素子は、負荷の温度を検出する。温度制御部は、負荷の温度が予め設定された第1値より低い場合、電流消費回路に電流を消費させ、負荷の温度が第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、電流消費回路による電流消費を停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に安定化した直流の出力電圧を供給する電源装置であって、
電源電圧が与えられる電源端子と前記出力電圧を出力する出力端子との間に、ドレインおよびソースが接続される第1トランジスタと、
前記第1トランジスタをリニア増幅動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を予め設定された第1目標値に近づけるリニア制御部と、
前記出力端子とグランドとの間に接続される電流消費回路と、
前記負荷の温度を検出する温度検出素子と、
前記負荷の温度が予め設定された第1値より低い場合、前記電流消費回路に電流を消費させ、前記負荷の温度が前記第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、前記電流消費回路による電流消費を停止させる温度制御部と、
を備える電源装置。
【請求項2】
前記電流消費回路は、前記出力端子と前記グランドとの間に直列に接続された電流消費抵抗および第2トランジスタを含み、
前記温度制御部は、前記負荷の温度が前記第1値より低い場合、前記第2トランジスタをオンとし、前記負荷の温度が前記第2値より高い場合、前記第2トランジスタをオフとする
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
同一の熱伝導係数の材料で形成された基板または半導体層である熱伝導体板をさらに備え、
前記第1トランジスタ、前記負荷および前記温度検出素子は、前記熱伝導体板に設けられる
請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、前記負荷の温度が前記第1値より低い場合、前記第2トランジスタに流れる電流を、前記負荷の温度が低い程大きくなるように制御する
請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
同一の熱伝導係数の材料で形成された基板または半導体層である熱伝導体板をさらに備え、
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、および、前記負荷および前記温度検出素子は、前記熱伝導体板に設けられる
請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電流消費回路に電流が消費されている場合、前記リニア制御部は、前記出力電圧の電圧値を、前記第1目標値より低い予め設定された第2目標値に近づける
請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
負荷に安定化した直流の出力電圧を供給する電源装置であって、
電源電圧が与えられる電源端子と前記出力電圧を出力する出力端子との間に、ドレインおよびコレクタが接続される第1トランジスタと、
前記第1トランジスタをリニア増幅動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を予め設定された第1目標値に近づけるリニア制御部と、
前記電源端子とグランドとの間に接続される電流消費回路と、
前記負荷の温度を検出する温度検出素子と、
前記負荷の温度が予め設定された第1値より低い場合、前記電流消費回路に電流を消費させ、前記負荷の温度が前記第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、前記電流消費回路による電流消費を停止させる温度制御部と、
同一の熱伝導係数の材料で形成された基板または半導体層であり、前記第1トランジスタ、前記温度検出素子および前記負荷が設けられた熱伝導体板と、
を備える電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、様々な温度環境において使用される。このため電子機器に備えられる各種のデバイスは、様々な温度環境において安定した動作をしなければならない。
【0003】
しかしながら、一部のデバイスは、低温環境下において特性に変動が生じたり、個体差が大きくなったりする。例えば、水晶発振器は、-35°C以下において、発振周波数に変動が生じたり、温度特性のばらつきの個体差が大きくなったりする。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば、水晶発振器の近傍にヒータを設け、低温環境下においてヒータにより水晶発振器を加熱する技術が知られている(特許文献1)。また、例えば、水晶発振器の近傍のヒータに電流を流すことにより電源電圧を不安定化してデータ転送にエラーが発生することを回避するために、データ転送後においてヒータの動作を開始させる技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-62868号公報
【特許文献2】特開2021-48460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヒータを設け、低温時においてヒータを動作させる構成は部品数が多くなってしまう。また、ヒータの動作により周囲の回路の動作が不安定化してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、負荷に電力を供給するとともに、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させることができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源装置は、負荷に安定化した直流の出力電圧を供給する電源装置であって、電源電圧が与えられる電源端子と前記出力電圧を出力する出力端子との間に、ドレインおよびソースが接続される第1トランジスタと、前記第1トランジスタをリニア増幅動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を予め設定された第1目標値に近づけるリニア制御部と、前記出力端子とグランドとの間に接続される電流消費回路と、前記負荷の温度を検出する温度検出素子と、前記負荷の温度が予め設定された第1値より低い場合、前記電流消費回路に電流を消費させ、前記負荷の温度が前記第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、前記電流消費回路による電流消費を停止させる温度制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負荷に電力を供給するとともに、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
図2図2は、電子機器の実装例を示す図である。
図3図3は、温度制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、第1変形例に係る電子機器の構成を示す図である。
図5図5は、第2変形例に係る電子機器の構成を示す図である。
図6図6は、第3変形例に係る電子機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る電子機器10を詳細に説明する。実施形態に係る電子機器10は、負荷に電力を供給するとともに、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させる。
【0012】
図1は、実施形態に係る電子機器10の構成を示す図である。電子機器10は、電源装置20と、第1負荷22と、第2負荷24とを備える。
【0013】
電源装置20は、負荷に安定化した直流の出力電圧を出力する。第1負荷22および第2負荷24は、負荷の一例であって、電源装置20から出力された直流電圧を電力源として動作する回路またはデバイスである。
【0014】
第1負荷22は、低温時において、特性が変動したり、特性の個体差が大きくなったりする。第1負荷22は、例えば水晶発振器である。水晶発振器は、-35°C以下において、発振周波数に変動が生じたり、温度特性のばらつきの個体差が大きくなったりする。なお、第1負荷22は、水晶発振器以外の、例えば低温時において動作が安定化しないプロセッサ等のデバイスであってもよい。また、第1負荷22は、水晶発振器等以外の、低温時であっても動作が安定しているデバイスをさらに含む構成であってもよい。
【0015】
第2負荷24は、第1負荷22と協働して動作する。例えば第1負荷22が水晶発振器である場合、第2負荷24は、第1負荷22により発生されたクロックに基づき動作する回路である。
【0016】
電源装置20は、電源IC(Integrated Circuit)30と、キャパシタ32と、温度検出素子34とを有する。
【0017】
電源IC30は、電源端子42、グランド端子44、出力端子46および温度検出端子48を含む。本実施形態において、電源端子42、グランド端子44、出力端子46および温度検出端子48等の端子は、電気的な導通がされている部分であれば、ICの端子であってもよいし、基板上に形成された電極パットであってもよいし、単なる配線の一部分であってもよい。
【0018】
電源端子42は、バッテリまたは電力変換装置等の直流電力源等から電源電圧が与えられる。グランド端子44は、グランドに接続され、グランド電位が与えられる。出力端子46は、第1負荷22および第2負荷24に接続され、出力電圧を出力する。温度検出端子48は、温度検出素子34に接続される。
【0019】
キャパシタ32は、出力端子46とグランドとの間に接続される。キャパシタ32は、第1負荷22および第2負荷24の消費電流の急激な変動により電源IC30による電流供給の応答が遅れる場合、電源IC30に代わり一時的に電荷の供給および吸収をする。キャパシタ32は、電源IC30の内部に含まれる構成であってもよい。
【0020】
温度検出素子34は、第1負荷22の近傍に配置され、第1負荷22の温度を検出する。温度検出素子34は、電源IC30の温度検出端子48に接続され、第1負荷22の温度を表す温度信号を電源IC30に供給する。例えば、温度検出素子34は、温度に応じて順方向電流が変化するダイオードである。温度検出素子34は、このようなダイオードに限らず、他のデバイスまたは回路であってもよい。温度検出素子34は、電源IC30の内部に含まれる構成であってもよい。
【0021】
電源IC30は、第1トランジスタ52と、ハイサイド分圧抵抗54と、ローサイド分圧抵抗56と、リニアドライバ58と、リニア制御部60と、電流消費回路62と、温度制御ドライバ64と、温度制御部66とを含む。
【0022】
なお、電源IC30に含まれるこれらの各構成要素の全部または一部は、集積回路として一体化されていなくてもよい。例えば、電源IC30に含まれるこれらの各構成要素の一部は、集積回路とは別体の素子であり、基板上で集積回路と接続される構成であってもよい。
【0023】
第1トランジスタ52は、電源端子42と出力端子46との間に、ドレインおよびソースが接続される。第1トランジスタ52は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態においては、第1トランジスタ52は、エンハンスメント型のN-MOSFETであり、ドレインが電源端子42に接続され、ソースが出力端子46に接続される。
【0024】
第1トランジスタ52は、ゲートに印加される電圧に応じて、ドレイン-ソース間に流れる電流量がリニアに変化するリニア増幅動作をする。これにより、第1トランジスタ52は、安定した直流の出力電圧の電力を第1負荷22および第2負荷24に供給することができる。
【0025】
ハイサイド分圧抵抗54およびローサイド分圧抵抗56は、直列に接続される。直列に接続されたハイサイド分圧抵抗54およびローサイド分圧抵抗56は、出力端子46とグランド端子44との間に設けられる。ハイサイド分圧抵抗54は、出力端子46側に設けられる。ローサイド分圧抵抗56は、グランド端子44側に設けられる。ハイサイド分圧抵抗54およびローサイド分圧抵抗56は、出力電圧の電圧値を検知するために設けられる。
【0026】
リニアドライバ58は、第1トランジスタ52にゲート電圧を印加する。リニアドライバ58は、リニア制御部60による制御に応じて、ゲート電圧を増減させる。これにより、リニアドライバ58は、リニア制御部60による制御に応じた電流を、第1トランジスタ52のドレイン-ソース間に流すことができる。
【0027】
リニア制御部60は、ハイサイド分圧抵抗54とローサイド分圧抵抗56との接続点の電圧である参照電圧の電圧値を取得する。リニア制御部60は、参照電圧の電圧値が予め設定された値となるように、リニアドライバ58を介して第1トランジスタ52をリニア増幅動作させる。すなわち、リニア制御部60は、第1トランジスタ52をリニア増幅動作させることにより、出力電圧の電圧値を、予め設定された第1目標値に近づける。これにより、リニア制御部60は、第1負荷22および第2負荷24による消費電流が変化した場合も、第1負荷22および第2負荷24に対して第1目標値の出力電圧を安定して供給することができる。
【0028】
電流消費回路62は、出力端子46とグランド端子44との間に接続される。電流消費回路62は、第1トランジスタ52のドレイン-ソースに流れる電流の一部を消費する。電流消費回路62は、温度制御部66による制御に応じて、電流を消費するか否かが切り替えられる。
【0029】
例えば、電流消費回路62は、電流消費抵抗72と、第2トランジスタ74とを含む。電流消費抵抗72および第2トランジスタ74は、直列に接続される。
【0030】
電流消費抵抗72は、一方の端子が出力端子46に接続される。
【0031】
第2トランジスタ74は、MOSFETである。本実施形態においては、第2トランジスタ74は、エンハンスメント型のN-MOSFETであり、ドレインが電流消費抵抗72の出力端子46が接続されていない側の端子に接続され、ソースがグランド端子44に接続される。
【0032】
第2トランジスタ74は、ゲートに印加される電圧に応じて、ドレインとソースとの間を導通状態(オン)または非導通状態(オフ)とする。すなわち、第2トランジスタ74は、ゲートに印加される電圧に応じて、オンまたはオフするスイッチング動作をする。これにより、第2トランジスタ74は、電流消費抵抗72に電流を消費させるか否かを切り替えることができる。
【0033】
温度制御ドライバ64は、第2トランジスタ74にゲート電圧を印加して、第2トランジスタ74をスイッチング動作させる。例えば、温度制御ドライバ64は、温度制御部66による制御に応じて、ゲート電圧を、第2トランジスタ74の閾値電圧より高い第1電圧または閾値電圧より低い第2電圧に切り替える。これにより、温度制御ドライバ64は、温度制御部66による制御に応じて、電流消費回路62に電流を消費させるか否かを切り替えることができる。
【0034】
温度制御部66は、温度検出素子34から、第1負荷22の温度を表す温度信号を取得する。温度制御部66は、温度信号に基づき温度制御ドライバ64を制御する。より詳しくは、温度制御部66は、第1負荷22の温度が、予め設定された第1値より低い場合、電流消費回路62に電流を消費させる。また、温度制御部66は、第1負荷22の温度が、第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、電流消費回路62による電流消費を停止させる。例えば、温度制御部66は、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、第2トランジスタ74をオンとし、第1負荷22の温度が第2値より高い場合、第2トランジスタ74をオフとする。
【0035】
図2は、電子機器10の実装例を示す図である。電子機器10は、例えば、基板82と、熱伝導体板84とを備える。
【0036】
基板82および熱伝導体板84のそれぞれは、配線を含み、半導体装置および電子デバイスが実装される。熱伝導体板84は、同一の熱伝導係数の材料で形成される基板または半導体層である。熱伝導体板84は、基板82よりも熱伝導特性が良い材料により形成される。
【0037】
本実施形態において、第2負荷24は、基板82に設けられる。これに対して、電源IC30、第1負荷22および温度検出素子34は、熱伝導体板84上に設けられる。これにより、第1負荷22は、電源IC30内の第1トランジスタ52による電力変換により発生される熱が伝達され、伝達された熱により加熱される。従って、第1負荷22は、低温時において熱が伝達されることにより、安定して動作することができる。また、温度検出素子34は、第1負荷22と同一の温度となり、第1負荷22の温度を精度良く検出することができる。
【0038】
また、電源IC30は、放熱フィン等の放熱機構を有するパッケージによりモールドされていてもよい。この場合、電源IC30は、熱伝導体板84との接続面側に、放熱機構が設けられる。これにより、電源IC30は、第1トランジスタ52により発生された熱を効率良く第1負荷22へと伝達することができる。
【0039】
また、電源IC30に備えられる各部材は、1つのパッケージ内に収納されていなくてもよい。この場合、少なくとも、第1トランジスタ52は、熱伝導体板84に設けられる。これにより、第1トランジスタ52は、発生した熱を効率良く第1負荷22へと与えることができる。
【0040】
なお、第1負荷22が、第1トランジスタ52により発生される熱が伝達される状態で実装されていれば、電子機器10は、各部材が図2に示すように実装されていなくてもよい。例えば、第1負荷22は、電子機器10の筐体内または基板上における近傍に位置に配置された構成であってもよい。
【0041】
このような電子機器10は、電力変換中において第1トランジスタ52から発生する熱によって第1負荷22を加熱することができる。また、このような電子機器10は、第1負荷22の温度を温度検出素子34によって精度良く検出することができる。
【0042】
図3は、温度制御部66の処理の流れを示すフローチャートである。例えば、温度制御部66は、図3に示すような流れで処理を実行する。温度制御部66は、電子機器10の動作が開始すると、S11から処理を開始する。
【0043】
まず、S11において、温度制御部66は、第2トランジスタ74をオフとする。これにより、温度制御部66は、電流消費回路62による電流消費を停止した状態とすることができる。
【0044】
続いて、S12において、温度制御部66は、温度検出素子34から温度信号を取得して、第1負荷22の温度を検出する。続いて、S13において、温度制御部66は、第1負荷22の温度が第1値より低いか否かを判断する。第1値は、予め設定されており、例えば、第1負荷22の動作が不安定化する温度よりも、所定のマージン値分高い温度である。
【0045】
第1負荷22の温度が第1値より低くない場合(S13のNo)、温度制御部66は、処理をS12に戻し、第1負荷22の温度が第1値より低くなるまで、S12およびS13の処理を繰り返す。これにより、温度制御部66は、第1負荷22の温度が第1値以上の場合、電流消費回路62による電流消費を停止することができる。この結果、温度制御部66は、第1トランジスタ52のドレイン-ソース間に流れる電流を少なくして、第1トランジスタ52による電力変換効率を高くすることができる。
【0046】
第1負荷22の温度が第1値より低い場合(S13のYes)、温度制御部66は、処理をS14に進める。
【0047】
S14において、温度制御部66は、第2トランジスタ74をオンとする。これにより、温度制御部66は、電流消費回路62による電流を消費させることができる。
【0048】
続いて、S15において、温度制御部66は、温度検出素子34から温度信号を取得して、第1負荷22の温度を検出する。続いて、S16において、温度制御部66は、第1負荷22の温度が第2値より高いか否かを判断する。
【0049】
第2値は、予め設定されており、例えば、第1値と同一、または、第1値より高い温度である。第1値と第2値とが同一または非常に近い場合、誤差等の影響によって、温度制御部66は、第2トランジスタ74を頻繁にスイッチングしてしまう可能性がある。第2値を第1値と十分なマージンをもって相違させることにより、温度制御部66は、第2トランジスタ74を頻繁にスイッチングさせず、第1トランジスタ52に安定した電力変換をさせることができる。
【0050】
第1負荷22の温度が第2値より高くない場合(S16のNo)、温度制御部66は、処理をS15に戻し、第1負荷22の温度が第2値より高くなるまで、S15およびS16の処理を繰り返す。これにより、温度制御部66は、第1負荷22の温度が、第1値より低くなった後に、第2値より高くなるまでの間、電流消費回路62に電流を消費させ続けることができる。この結果、温度制御部66は、第1トランジスタ52のドレイン-ソース間に流れる電流を多くすることにより第1トランジスタ52に発生する熱を大きくして、第1負荷22をより加熱することができる。
【0051】
温度制御部66は、第1負荷22の温度が第2値より高くなった場合(S16のYes)、処理をS17に進める。S17において、温度制御部66は、第2トランジスタ74をオフとする。これにより、温度制御部66は、電流消費回路62による電流消費を停止した状態とすることができる。この結果、温度制御部66は、第1トランジスタ52のドレイン-ソース間に流れる電流を少なくして、第1トランジスタ52による電力変換効率を高くすることができる。
【0052】
そして、温度制御部66は、処理をS12に戻し、S12から処理を繰り返す。
【0053】
以上のような電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低くなった場合、電流消費回路62により電流が消費され、第1トランジスタ52に流れる電流が増加する。第1トランジスタ52は、流れる電流が増加すると、より大きな熱を発生する。従って、電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低くなった場合、第1トランジスタ52から第1負荷22へと伝達される熱エネルギーを増加させて、第1負荷22の温度上昇量を大きくする。これにより、電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、短時間で、第1負荷22をより安定して動作する温度に変化させることができる。
【0054】
また、電源装置20は、第1負荷22の温度が第2値より高い温度となった後には、電流消費回路62により電流消費を停止させて、第1トランジスタ52に流れる電流を少なくする。これにより、電源装置20は、第1負荷22が安定して動作する温度となった後には、電力変換効率を良くすることができる。
【0055】
なお、第1トランジスタ52は、ドレイン-ソースに流れる電流が大きい程、大きな熱を発生する。従って、電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、第1トランジスタ52のドレイン-ソースにより大きな電流を流すことが好ましい。しかし、第1トランジスタ52は、ドレイン-ソースに流すことができる最大電流が、定格最大電流として定められる。
【0056】
そこで、電流消費回路62により消費される消費電流は、最大定格電流から、第1負荷22および第2負荷24に供給される最大負荷電流を減じた値に定められることが好ましい。例えば、電流消費回路62に含まれる電流消費抵抗72の抵抗値は、出力電圧を、最大定格電流から最大負荷電流を減じた電流で除算した値に基づき設定されることが好ましい。これにより、電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、第1トランジスタ52に最大定格電流を流して、短時間で第1負荷22の温度を第2値より高くすることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る電源装置20によれば、負荷に電力を供給するとともに、低温時において、ヒータ等を備えず簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させることができる。
【0058】
(変形例)
以下、本実施形態の複数の変形例について説明する。なお、各変形例に係る電子機器10は、図1から図3を参照して説明した実施形態に係る電子機器10と略同一の機能および構成であるので、略同一の機能の構成要素に同一の符号を付けて相違点について説明する。
【0059】
図4は、第1変形例に係る電子機器10の構成を示す図である。
【0060】
第1変形例に係る電子機器10は、ハイサイド分圧抵抗54に代えて、第1抵抗86と、第2抵抗88と、スイッチ90とを備える。第1抵抗86は、出力端子46と、ローサイド分圧抵抗56のグランドが接続されていない側の端子との間に接続される。第2抵抗88およびスイッチ90は、直列に接続される。直列に接続された第2抵抗88およびスイッチ90の組は、第1抵抗86に対して並列に接続される。
【0061】
スイッチ90は、温度制御部66によって制御される。温度制御部66は、電流消費回路62による電流消費が停止されている場合、スイッチ90をオフとする。また、温度制御部66は、電流消費回路62により電流が消費されている場合、スイッチ90をオンとする。
【0062】
第1抵抗86の抵抗値は、ハイサイド分圧抵抗54の抵抗値と同一である。従って、スイッチ90がオフの場合、リニア制御部60は、ハイサイド分圧抵抗54が接続されていた場合と、同一の参照電圧を受け取る。従って、リニア制御部60は、電流消費回路62による電流消費が停止されている場合、出力電圧を第1目標値に近づけるように第1トランジスタ52をリニア増幅動作させる。
【0063】
これに対して、スイッチ90がオンの場合、リニア制御部60は、ハイサイド分圧抵抗54が接続されていた場合よりも高い参照電圧を受け取る。従って、リニア制御部60は、電流消費回路62により電流が消費されている場合、出力電圧を、第1目標値より低い第2目標値に近づけるように第1トランジスタ52をリニア増幅動作させる。
【0064】
このような第1変形例に係る電源装置20は、出力電圧を第1目標値より低い第2目標値に近づけるようにしたことにより、電源端子42と出力端子46の間の電圧差がより大きくなり、第1トランジスタ52で消費される電力をさらに大きくすることができる。よって第1トランジスタ52で発生する熱も大きくすることができる。
【0065】
一方、第1負荷22を加熱させるために第1トランジスタ52に流れる電流を大きくしている場合、出力電圧を下げることで、第1変形例に係る電源装置20は、負荷電流が何らかの原因で増加した場合であっても、第1トランジスタ52に最大定格電流より大きい電流が流れないようにすることもできる。
【0066】
なお、電流消費回路62により電流が消費されている場合に、出力電圧を第1目標値より低い第2目標値に近づけるように制御することができれば、リニア制御部60は、他の方法で、制御をしてもよい。例えば、リニア制御部60は、電流消費回路62による電流消費が停止されている場合に、内部に設定されている目標値を第1目標値とし、電流消費回路62により電流が消費されている場合に、内部に設定されている目標値を第2目標値としてもよい。
【0067】
このような第1変形例に係る電源装置20は、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させるととともに、第1トランジスタ52に過剰な電流が流れないように動作させることができる。
【0068】
図5は、第2変形例に係る電子機器10の構成を示す図である。
【0069】
第2変形例に係る温度制御部66は、第2トランジスタ74をスイッチング動作させることに代えて、第2トランジスタ74をリニア増幅動作させる。なお、図5は、第2トランジスタ74を疑似的に可変抵抗として記述している。
【0070】
第2変形例に係る温度制御部66は、温度信号に基づき温度制御ドライバ64を制御する。より詳しくは、温度制御部66は、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、第2トランジスタ74に流れる電流を、第1負荷22の温度が低い程大きくなるように制御をする。そして、温度制御部66は、第1負荷22の温度が、第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、第2トランジスタ74をオフとして、電流消費回路62による電流消費を停止させる。
【0071】
このような第2変形例に係る電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値よりも非常に低い場合には、より大きな電流を第1トランジスタ52に流して大きな熱を発生させる。これにより、第2変形例に係る電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値よりも非常に低い場合には、より大きな熱を第1負荷22に与えることができる。また、第2変形例に係る電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値よりは低いが比較的に第1値に近い場合には、小さい電流を第1トランジスタ52に流して少ない熱を発生させる。これにより、第2変形例に係る電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値よりは低いが比較的に第1値に近い場合には、電力変換効率を高めつつ、第1負荷22に熱を与えることができる。
【0072】
このような第1変形例に係る電源装置20は、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させるととともに、低温時における電力変換効率を高くすることができる。
【0073】
図6は、第3変形例に係る電子機器10の構成を示す図である。
【0074】
第3変形例に係る電源装置20は、電流消費回路62が出力端子46とグランド端子44との間に設けられることに代えて、電流消費回路62が電源端子42とグランド端子44との間に設けられる。さらに、第3変形例に係る温度制御部66は、第2変形例と同様に、第2トランジスタ74をリニア増幅動作させせる。
【0075】
このような第3変形例に係る電源装置20は、第1トランジスタ52に追加の電流を流して追加のエネルギーを発生させることができないが、第2トランジスタ74が発熱する。従って、第3変形例に係る電源装置20は、第2トランジスタ74を熱伝導体板84上に設けたり、第1負荷22の近傍に設けたりすることにより、第2トランジスタ74から発生された熱を第1負荷22に与えることができる。
【0076】
このような第3変形例に係る電源装置20も、低温時において、ヒータ等を備えず簡易な構成で負荷に熱を与えて、負荷を安定して動作させることができる。
【0077】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、第1トランジスタ52を、エンハンスメント型のP-MOSFETとしてもよく、またMOSFETをエンハンスメント型ではなくデプレッション型にしてもよく、さらにMOSFETではなくバイポーラトランジスタにしてもよい。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上述の各実施形態および変形例は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 電子機器、20 電源装置、22 第1負荷、24 第2負荷、30 電源IC、32 キャパシタ、34 温度検出素子、42 電源端子、44 グランド端子、46 出力端子、48 温度検出端子、52 第1トランジスタ、54 ハイサイド分圧抵抗、56 ローサイド分圧抵抗、58 リニアドライバ、60 リニア制御部、62 電流消費回路、64 温度制御ドライバ、66 温度制御部、72 電流消費抵抗、74 第2トランジスタ、82 基板、84 熱伝導体板、86 第1抵抗、88 第2抵抗、90 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6