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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031344
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240229BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H02M3/155 H
G05F1/56 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134845
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【テーマコード(参考)】
5H430
5H730
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430BB12
5H430BB20
5H430CC07
5H430EE04
5H430FF02
5H430FF13
5H430GG01
5H430HH01
5H430KK00
5H430LA21
5H430LB06
5H730AA05
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD61
5H730FG01
5H730FG22
5H730XC00
5H730XX19
5H730XX38
5H730XX42
(57)【要約】
【課題】低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させる。
【解決手段】電源装置は、電源端子と中点端子との間にドレインおよびソースが接続されるハイサイドトランジスタと、中点端子とグランド端子との間にドレインおよびソースが接続されるローサイドトランジスタと、中点端子の電圧を平滑化して出力電圧を出力するローパスフィルタと、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを相補的にスイッチング動作させるスイッチング制御部と、ハイサイドトランジスタをリニア増幅動作させるリニア制御部と、負荷の温度を検出する温度検出素子と、負荷の温度が第1値より低い場合、リニア制御部により出力電圧の電圧値を目標値にするように制御させ、負荷の温度が第2値より高い場合、スイッチング制御部により出力電圧を目標値にするように制御させる温度制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に安定化した直流の出力電圧を供給する電源装置であって、
電源電圧が与えられる電源端子と中点端子との間に、ドレインおよびソースが接続されるハイサイドトランジスタと、
前記中点端子とグランド電位が与えられるグランド端子との間に接続される整流素子と、
前記中点端子の電圧を平滑化して前記出力電圧を出力する出力端子へと供給するローパスフィルタと、
前記ハイサイドトランジスタをスイッチング動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を、予め設定された目標値に近づけるスイッチング制御部と、
前記ハイサイドトランジスタをリニア増幅動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を前記目標値に近づけるリニア制御部と、
前記負荷の温度を検出する温度検出素子と、
前記負荷の温度が予め設定された第1値より低い場合、前記スイッチング制御部の機能を停止させ、前記リニア制御部により前記出力電圧の電圧値を前記目標値にするように制御させ、前記負荷の温度が前記第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、前記リニア制御部の機能を停止させ、前記スイッチング制御部により前記出力電圧を前記目標値にするように制御させる温度制御部と、
を備える電源装置。
【請求項2】
前記整流素子は、前記中点端子と前記グランド端子との間に、ドレインおよびソースが接続されるローサイドトランジスタであって、
前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタを相補的にスイッチング動作させる
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記リニア制御部は、前記ローサイドトランジスタを非導通状態とし、前記ハイサイドトランジスタをリニア増幅動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を前記目標値に近づける
請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
同一の熱伝導係数の材料で形成された基板または半導体層である熱伝導体板をさらに備え、
前記ハイサイドトランジスタ、前記負荷および前記温度検出素子は、前記熱伝導体板に設けられる
請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記リニア制御部は、前記ローサイドトランジスタに流れる電流を、前記負荷の温度が低い程大きくなるように制御する
請求項2に記載の電源装置。
【請求項6】
同一の熱伝導係数の材料で形成された基板または半導体層である熱伝導体板をさらに備え、
前記ハイサイドトランジスタ、前記ローサイドトランジスタ、前記負荷および前記温度検出素子は、前記熱伝導体板に設けられる
請求項5に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、様々な温度環境において使用される。このため電子機器に備えられる各種のデバイスは、様々な温度環境において安定した動作をしなければならない。
【0003】
しかしながら、一部のデバイスは、低温環境下において特性に変動が生じたり、個体差が大きくなったりする。例えば、水晶発振器は、-35°C以下において、発振周波数に変動が生じたり、温度特性のばらつきの個体差が大きくなったりする。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば、水晶発振器の近傍にヒータを設け、低温環境下においてヒータにより水晶発振器を加熱する技術が知られている(特許文献1)。また、例えば、水晶発振器の近傍のヒータに電流を流すことにより電源電圧を不安定化してデータ転送にエラーが発生することを回避するために、データ転送後においてヒータの動作を開始させる技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-62868号公報
【特許文献2】特開2021-48460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヒータを設け、低温時においてヒータを動作させる構成は部品数が多くなってしまう。また、ヒータの動作により周囲の回路の動作が不安定化してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、負荷に電力を供給するとともに、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させることができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源装置は、負荷に安定化した直流の出力電圧を供給する電源装置であって、電源電圧が与えられる電源端子と中点端子との間に、ドレインおよびソースが接続されるハイサイドトランジスタと、前記中点端子とグランド電位が与えられるグランド端子との間に接続される整流素子と、前記中点端子の電圧を平滑化して前記出力電圧を出力する出力端子へと供給するローパスフィルタと、前記ハイサイドトランジスタをスイッチング動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を、予め設定された目標値に近づけるスイッチング制御部と、前記ハイサイドトランジスタをリニア増幅動作させることにより、前記出力電圧の電圧値を前記目標値に近づけるリニア制御部と、前記負荷の温度を検出する温度検出素子と、前記負荷の温度が予め設定された第1値より低い場合、前記スイッチング制御部の機能を停止させ、前記リニア制御部により前記出力電圧の電圧値を前記目標値にするように制御させ、前記負荷の温度が前記第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、前記リニア制御部の機能を停止させ、前記スイッチング制御部により前記出力電圧を前記目標値にするように制御させる温度制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負荷に電力を供給するとともに、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る電子機器の実装例を示す図である。
図3図3は、温度制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、第1変形例に係る電子機器の構成を示す図である。
図5図5は、第1変形例に係る電子機器の実装例を示す図である。
図6図6は、第2変形例に係る電子機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る電子機器10を詳細に説明する。実施形態に係る電子機器10は、負荷に電力を供給するとともに、低温時において簡易な構成で負荷に熱を与えて負荷を安定して動作させる。
【0012】
図1は、実施形態に係る電子機器10の構成を示す図である。電子機器10は、電源装置20と、第1負荷22と、第2負荷24とを備える。
【0013】
電源装置20は、負荷に安定化した直流の出力電圧を出力する。第1負荷22および第2負荷24は、負荷の一例であって、電源装置20から出力された直流電圧を電力源として動作する回路またはデバイスである。
【0014】
第1負荷22は、低温時において、特性が変動したり、特性の個体差が大きくなったりする。第1負荷22は、例えば水晶発振器である。水晶発振器は、-35°C以下において、発振周波数に変動が生じたり、温度特性のばらつきの個体差が大きくなったりする。なお、第1負荷22は、水晶発振器以外の、例えば低温時において動作が安定化しないプロセッサ等のデバイスであってもよい。また、第1負荷22は、水晶発振器等以外の、低温時であっても動作が安定しているデバイスをさらに含む構成であってもよい。
【0015】
第2負荷24は、第1負荷22と協働して動作する。例えば第1負荷22が水晶発振器である場合、第2負荷24は、第1負荷22により発生されたクロックに基づき動作する回路である。
【0016】
電源装置20は、出力端子26を有する。出力端子26は、第1負荷22および第2負荷24に接続され、出力電圧を出力する。
【0017】
なお、本実施形態において、出力端子26等の各端子は、電気的な導通がされている部分であれば、ICの端子であってもよいし、基板上に形成された電極パットであってもよいし、単なる配線の一部分であってもよい。
【0018】
また、電源装置20は、電源IC(Integrated Circuit)30と、ローパスフィルタ32と、ハイサイド分圧抵抗34と、ローサイド分圧抵抗36と、温度検出素子38とを有する。
【0019】
電源IC30は、電源端子52、グランド端子54、中間端子56、フィードバック端子58および温度検出端子60を含む。
【0020】
電源IC30は、スイッチング動作またはリニア増幅動作をする。電源IC30は、スイッチング動作をする場合、電源電圧とグランド電位とが交互に切り替わるパルス電圧を発生する。また、電源IC30は、リニア増幅動作をする場合、目標値に安定化された直流電圧を発生する。
【0021】
電源端子52は、バッテリまたは電力変換装置等の直流電力源等から電源電圧が与えられる。グランド端子54は、グランドに接続され、グランド電位が与えられる。
【0022】
中間端子56は、スイッチング動作をする場合、パルス電圧を出力する。また、中間端子56は、リニア増幅動作をする場合、直流電圧を出力する。
【0023】
フィードバック端子58は、直列に接続されたハイサイド分圧抵抗34とローサイド分圧抵抗36との接続点と接続される。温度検出端子60は、温度検出素子38に接続される。
【0024】
ローパスフィルタ32は、電源IC30の中間端子56と出力端子26との間に設けられる。ローパスフィルタ32は、電源IC30の中間端子56から出力された電圧を平滑化して、出力端子26から出力電圧として出力する。従って、電源IC30がスイッチング動作をしており、中間端子56からパルス電圧を出力している場合、ローパスフィルタ32は、パルス電圧を平滑化して直流の出力電圧として、出力端子26から出力することができる。
【0025】
本実施形態において、ローパスフィルタ32は、インダクタ40と、キャパシタ42とを含む。インダクタ40は、中間端子56と出力端子26との間に接続される。キャパシタ42は、出力端子26とグランドとの間に接続される。インダクタ40およびキャパシタ42は、中間端子56の電圧を平滑化して出力端子26から出力することができる。また、キャパシタ42は、第1負荷22および第2負荷24の消費電流の急激な変動により電源IC30から電流供給の応答が遅れる場合、電源IC30に代わり一時的に電荷の供給および吸収をする。
【0026】
なお、ローパスフィルタ32は、図1に示す構成に限らずどのような構成であってもよい。また、ローパスフィルタ32は、電源IC30の内部に含まれる構成であってもよい。
【0027】
ハイサイド分圧抵抗34およびローサイド分圧抵抗36は、直列に接続される。直列に接続されたハイサイド分圧抵抗34およびローサイド分圧抵抗36は、出力端子26とグランド端子54との間に設けられる。ハイサイド分圧抵抗34は、出力端子26側に設けられる。ローサイド分圧抵抗36は、グランド端子54側に設けられる。ハイサイド分圧抵抗34とローサイド分圧抵抗36との接続点は、電源IC30のフィードバック端子58に接続される。これにより、電源IC30は、出力電圧の電圧値を検知することができる。なお、ハイサイド分圧抵抗34およびローサイド分圧抵抗36は、電源IC30の内部に含まれる構成であってもよい。
【0028】
温度検出素子38は、第1負荷22の近傍に配置され、第1負荷22の温度を検出する。温度検出素子38は、電源IC30の温度検出端子60に接続され、第1負荷22の温度を表す温度信号を電源IC30に供給する。例えば、温度検出素子38は、温度に応じて順方向電流が変化するダイオードである。なお、温度検出素子38は、このようなダイオードに限らず、他のデバイスまたは回路であってもよい。また、温度検出素子38は、電源IC30の内部に含まれる構成であってもよい。
【0029】
電源IC30は、ハイサイドトランジスタ62と、ハイサイドドライバ64と、ローサイドトランジスタ(整流素子)66と、ローサイドドライバ68と、スイッチング制御部70と、リニア制御部72と、温度制御部74とを含む。
【0030】
なお、電源IC30に含まれるこれらの各構成要素の全部または一部は、集積回路として一体化されていなくてもよい。例えば、電源IC30に含まれるこれらの各構成要素の一部は、集積回路とは別体の素子であり、基板上で集積回路と接続される構成であってもよい。
【0031】
ハイサイドトランジスタ62は、電源端子52と中間端子56との間に、ドレインおよびソースが接続される。ハイサイドトランジスタ62は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態においては、ハイサイドトランジスタ62は、エンハンスメント型のP-MOSFETであり、ソースが電源端子52に接続され、ドレインが中間端子56に接続される。
【0032】
ハイサイドトランジスタ62は、ゲートに印加される電圧に応じて、ドレインとソースとの間を導通状態または非導通状態に切り替えるスイッチング動作をする。また、ハイサイドトランジスタ62は、ゲートに印加される電圧に応じて、ドレイン-ソース間に流れる電流量がリニアに変化するリニア増幅動作もする。
【0033】
ハイサイドドライバ64は、ハイサイドトランジスタ62にゲート電圧を印加する。ハイサイドドライバ64は、スイッチング制御部70またはリニア制御部72から制御を受け付ける。ハイサイドドライバ64は、スイッチング制御部70から制御を受け付ける場合、ハイサイドトランジスタ62にスイッチング動作をさせる。また、ハイサイドドライバ64は、リニア制御部72から制御を受け付ける場合、ハイサイドトランジスタ62にリニア増幅動作をさせる。
【0034】
ローサイドトランジスタ66は、中間端子56とグランド端子54との間に、ドレインおよびソースが接続される。ローサイドトランジスタ66は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態においては、ローサイドトランジスタ66は、エンハンスメント型のN-MOSFETであり、ドレインが中間端子56に接続され、ソースがグランド端子54に接続される。
【0035】
ローサイドトランジスタ66は、ゲートに印加される電圧に応じて、ドレインとソースとの間を導通状態または非導通状態に切り替えるスイッチング動作をする。
【0036】
ローサイドドライバ68は、ローサイドトランジスタ66にゲート電圧を印加する。ローサイドドライバ68は、スイッチング制御部70またはリニア制御部72から制御を受け付ける。ローサイドドライバ68は、スイッチング制御部70から制御を受け付ける場合、ローサイドトランジスタ66にスイッチング動作をさせる。また、ローサイドドライバ68は、リニア制御部72から制御を受け付ける場合、ローサイドトランジスタ66を、非導通状態とさせる。
【0037】
スイッチング制御部70は、ハイサイド分圧抵抗34とローサイド分圧抵抗36との接続点の電圧である参照電圧の電圧値を取得する。スイッチング制御部70は、ハイサイドドライバ64およびローサイドドライバ68を介して、ハイサイドトランジスタ62およびローサイドトランジスタ66を相補的にスイッチング動作させる。すなわち、スイッチング制御部70は、ハイサイドトランジスタ62およびローサイドトランジスタ66の両方が同時に導通状態とならないように、ハイサイドトランジスタ62およびローサイドトランジスタ66のそれぞれを交互に導通状態とする。そして、スイッチング制御部70は、参照電圧の電圧値が予め設定された電圧値となるように、ハイサイドトランジスタ62が導通状態の時間と、ローサイドトランジスタ66が導通状態の時間の比率を制御する。これにより、スイッチング制御部70は、第1負荷22および第2負荷24による消費電流が変化した場合も、第1負荷22および第2負荷24に対して目標値の出力電圧を安定して供給することができる。
【0038】
リニア制御部72は、ハイサイド分圧抵抗34とローサイド分圧抵抗36との接続点の電圧である参照電圧の電圧値を取得する。リニア制御部72は、ローサイドトランジスタ66を、ローサイドドライバ68を介して非導通状態とする。そして、リニア制御部72は、参照電圧の電圧値が予め設定された電圧値となるように、ハイサイドドライバ64を介してハイサイドトランジスタ62のドレイン-ソース間電流を変化させるリニア増幅動作させる。すなわち、リニア制御部72は、ハイサイドトランジスタ62をリニア増幅動作させることにより、出力電圧の電圧値を、予め設定された第1目標値に近づける。これにより、リニア制御部72は、第1負荷22および第2負荷24による消費電流が変化した場合も、第1負荷22および第2負荷24に対して目標値の出力電圧を安定して供給することができる。
【0039】
温度制御部74は、温度検出素子38から、第1負荷22の温度を表す温度信号を取得する。温度制御部74は、温度信号に基づき、スイッチング制御部70およびリニア制御部72の何れか一方を機能させ、他方の機能を停止させる。すなわち、温度制御部74は、温度信号に基づき、スイッチング制御により出力電圧を安定化させるか、リニア増幅制御により出力電圧を安定させるかを切り替える。
【0040】
より詳しくは、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、スイッチング制御部70の機能を停止させ、リニア制御部72により出力電圧の電圧値を目標値にするように制御させる。また、温度制御部74は、第1負荷22の温度が第1値以上の予め設定された第2値より高い場合、リニア制御部72の機能を停止させ、スイッチング制御部70により出力電圧を目標値にするように制御させる。
【0041】
図2は、電子機器10の実装例を示す図である。電子機器10は、例えば、基板82と、熱伝導体板84とを備える。
【0042】
基板82および熱伝導体板84のそれぞれは、配線を含み、半導体装置および電子デバイスが実装される。熱伝導体板84は、同一の熱伝導係数の材料で形成される基板または半導体層である。熱伝導体板84は、基板82よりも熱伝導特性が良い材料により形成される。
【0043】
本実施形態において、第2負荷24は、基板82に設けられる。また、ローパスフィルタ32、ハイサイド分圧抵抗34およびローサイド分圧抵抗36等を含む素子群86も、基板82に設けられる。
【0044】
これに対して、電源IC30、第1負荷22および温度検出素子38は、熱伝導体板84上に設けられる。これにより、第1負荷22は、リニア増幅制御時において、電源IC30内のハイサイドトランジスタ62による電力変換により発生される熱が伝達され、伝達された熱により加熱される。従って、第1負荷22は、低温時において熱が伝達されることにより、安定して動作することができる。また、温度検出素子38は、第1負荷22と同一の温度となり、第1負荷22の温度を精度良く検出することができる。
【0045】
また、電源IC30は、放熱フィン等の放熱機構を有するパッケージによりモールドされていてもよい。この場合、電源IC30は、熱伝導体板84との接続面側に、放熱機構が設けられる。これにより、電源IC30は、ハイサイドトランジスタ62により発生された熱を効率良く第1負荷22へと与えることができる。
【0046】
また、電源IC30に備えられる各部材は、1つのパッケージ内に収納されていなくてもよい。この場合、少なくとも、ハイサイドトランジスタ62は、熱伝導体板84に設けられる。これにより、ハイサイドトランジスタ62は、発生した熱を効率良く第1負荷22へと与えることができる。
【0047】
なお、第1負荷22が、ハイサイドトランジスタ62により発生される熱が伝達される状態で実装されていれば、電子機器10は、各部材が図2に示すように実装されていなくてもよい。例えば、第1負荷22は、電子機器10の筐体内または基板上における近傍に配置された構成であってもよい。
【0048】
このような電子機器10は、リニア増幅制御時においてハイサイドトランジスタ62から発生する熱によって第1負荷22を加熱することができる。また、このような電子機器10は、第1負荷22の温度を温度検出素子38によって精度良く検出することができる。
【0049】
図3は、温度制御部74の処理の流れを示すフローチャートである。例えば、温度制御部74は、図3に示すような流れで処理を実行する。温度制御部74は、電子機器10の動作が開始すると、S11から処理を開始する。
【0050】
まず、S11において、温度制御部74は、スイッチング制御部70を機能開始させて、リニア制御部72の機能を停止する。これにより、温度制御部74は、スイッチング制御により電力変換をさせることができる。
【0051】
続いて、S12において、温度制御部74は、温度検出素子38から温度信号を取得して、第1負荷22の温度を検出する。続いて、S13において、温度制御部74は、第1負荷22の温度が第1値より低いか否かを判断する。第1値は、予め設定されており、例えば、第1負荷22の動作が不安定化する温度よりも、所定のマージン値分高い温度である。
【0052】
第1負荷22の温度が第1値より低くない場合(S13のNo)、温度制御部74は、処理をS12に戻し、第1負荷22の温度が第1値より低くなるまで、S12およびS13の処理を繰り返す。これにより、温度制御部74は、第1負荷22の温度が第1値以上の場合、スイッチング制御部70を機能させ続け、リニア制御部72の機能を停止し続けることができる。この結果、温度制御部74は、スイッチング制御により高い効率で電力変換をさせることができる。
【0053】
第1負荷22の温度が第1値より低い場合(S13のYes)、温度制御部74は、処理をS14に進める。
【0054】
S14において、温度制御部74は、スイッチング制御部70を機能停止させて、リニア制御部72を機能開始する。これにより、温度制御部74は、リニア増幅制御により電力変換をさせることができる。
【0055】
続いて、S15において、温度制御部74は、温度検出素子38から温度信号を取得して、第1負荷22の温度を検出する。続いて、S16において、温度制御部74は、第1負荷22の温度が第2値より高いか否かを判断する。
【0056】
第2値は、予め設定されており、例えば、第1値と同一、または、第1値より高い温度である。第1値と第2値とが同一または非常に近い場合、誤差等の影響によって、温度制御部74は、スイッチング制御とリニア増幅制御とを頻繁に切り替えてしまう可能性がある。第2値を第1値と十分なマージンをもって相違させることにより、温度制御部74は、スイッチング制御とリニア増幅制御とを頻繁に切り替えさせずに、リニア増幅制御により安定した電力変換をさせることができる。
【0057】
第1負荷22の温度が第2値より高くない場合(S16のNo)、温度制御部74は、処理をS15に戻し、第1負荷22の温度が第2値より高くなるまで、S15およびS16の処理を繰り返す。これにより、温度制御部74は、第1負荷22の温度が、第1値より低くなった後に、第2値より高くなるまでの間、リニア増幅制御により電力変換をさせ続ける。
【0058】
この結果、温度制御部74は、ハイサイドトランジスタ62をリニア増幅制御することによりハイサイドトランジスタ62に発生する熱を大きくして、第1負荷22をより加熱することができる。
【0059】
温度制御部74は、第1負荷22の温度が第2値より高くなった場合(S16のYes)、処理をS17に進める。S17において、温度制御部74は、スイッチング制御部70を機能開始させて、リニア制御部72の機能を停止する。この結果、温度制御部74は、スイッチング制御により電力変換をさせ、電力変換効率を高くすることができる。
【0060】
そして、温度制御部74は、処理をS12に戻し、S12から処理を繰り返す。
【0061】
以上のような電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低くなった場合、リニア増幅制御がされることによりハイサイドトランジスタ62が熱を発生する。従って、電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低くなった場合、ハイサイドトランジスタ62から第1負荷22へと伝達される熱エネルギーを増加させて、第1負荷22の温度上昇量を大きくする。これにより、電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、短時間で、第1負荷22をより安定して動作する温度に変化させることができる。
【0062】
また、電源装置20は、第1負荷22の温度が第2値より高い温度となった後には、リニア増幅制御を停止させて、スイッチング制御により電力変換をする。これにより、電源装置20は、第1負荷22が安定して動作する温度となった後には、電力変換効率を良くすることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る電源装置20によれば、ヒータ等を備えず簡易な構成で、低温時に負荷に熱を与えて、負荷に安定した電力を供給することができる。
【0064】
なお、本実施形態に係る電源IC30は、ローサイドトランジスタ66を含む同期整流方式として説明したが、ローサイドトランジスタ66をダイオード(整流素子)に置き換えたダイオード整流方式としてもよい。ダイオード整流方式とした場合は、ローサイドドライバ68は不要となる。この場合でも、ハイサイドトランジスタ62により発生された熱を第1負荷22へと与えることができる。
【0065】
(変形例)
以下、本実施形態の複数の変形例について説明する。なお、各変形例に係る電子機器10は、図1から図3を参照して説明した実施形態に係る電子機器10と略同一の機能および構成であるので、各構成要素に同一の符号を付けて相違点について説明する。
【0066】
図4は、第1変形例に係る電子機器10の構成を示す図である。
【0067】
第1変形例に係る電源装置20は、実施形態においてはハイサイドトランジスタ62およびローサイドトランジスタ66が電源IC30のパッケージの内部に設けられていたが、本変形例においては、ハイサイドトランジスタ62およびローサイドトランジスタ66が電源IC30の外部に設けられている。
【0068】
また、本変形例において、電源装置20は、チャージポンプキャパシタ88をさらに備える。電源IC30は、ハイサイド制御端子90、ローサイド制御端子92およびハイサイド駆動電位端子94をさらに含む。また、電源IC30は、ダイオード96をさらに含む。
【0069】
ハイサイド制御端子90は、ハイサイドトランジスタ62のゲートに接続される。ハイサイド制御端子90は、ハイサイドドライバ64から制御電圧が与えられる。従って、電源IC30は、ハイサイドドライバ64から出力された制御電圧を、ハイサイド制御端子90を介してハイサイドトランジスタ62のゲートに与えることができる。
【0070】
ローサイド制御端子92は、ローサイドトランジスタ66のゲートに接続される。ローサイド制御端子92は、ローサイドドライバ68から制御電圧が与えられる。従って、電源IC30は、ローサイドドライバ68から出力された制御電圧を、ローサイド制御端子92を介してローサイドトランジスタ66のゲートに与えることができる。
【0071】
チャージポンプキャパシタ88は、中間端子56とハイサイド駆動電位端子94との間に接続される。また、ダイオード96は、アノードが電源端子52に接続され、カソードがハイサイド駆動電位端子94に接続される。
【0072】
そして、本変形例において、ハイサイドドライバ64は、中間端子56の電位が基準電位として与えられ、駆動用の電源電位としてハイサイド駆動電位端子94の電位が与えられる。
【0073】
ここで、本変形例において、ハイサイドトランジスタ62およびローサイドトランジスタ66のそれぞれは、エンハンスメント型のN-MOSFETである。本変形例において、ハイサイドトランジスタ62は、ドレインが電源端子52に接続され、ソースが中間端子56に接続される。
【0074】
このような構成の電源装置20は、ローサイドトランジスタ66がオン(導通状態)の場合、中間端子56がグランド電位となり、ダイオード96がオンしてチャージポンプキャパシタ88は、充電される。これにより、チャージポンプキャパシタ88の充電電圧は、電源電位から、ダイオード96の順方向電圧を減じた値となる。
【0075】
続いて、ハイサイドトランジスタ62がオン(導通状態)の場合、中間端子56が電源電位となり、ハイサイド駆動電位端子94は、電源電位と、チャージポンプキャパシタ88の充電電圧とを加算した値となる。従って、ハイサイドトランジスタ62がオン(導通状態)の場合であっても、ハイサイドドライバ64は、ハイサイドトランジスタ62のゲート-ソース間に閾値電圧以上のゲート電圧を与えることができ、ハイサイドトランジスタ62のオン(導通状態)を維持することができる。
【0076】
一般に、P-MOSFETは、N-MOSFETよりコストが高い。本変形例に係る電源装置20は、コストの高いP-MOSFETを用いずに構成される。これにより、本変形例に係る電源装置20は、ヒータ等を備えず簡易な構成で、低温時に負荷に熱を与えて、負荷に安定した電力を供給することができる。
【0077】
図5は、第1変形例に係る電子機器10の実装例を示す図である。
【0078】
本変形例において、電源IC30およびローサイドトランジスタ66は、基板82に設けられる。これに対して、ハイサイドトランジスタ62は、熱伝導体板84上に設けられる。これにより、本変形例において、第1負荷22は、リニア増幅制御時において、電源IC30の外部のハイサイドトランジスタ62による電力変換により発生される熱エネルギーが伝達され、ハイサイドトランジスタ62による電力変換により発生される熱により加熱される。
【0079】
このような電子機器10は、リニア増幅制御時において、電力変換によってハイサイドトランジスタ62から発生する熱によって第1負荷22を加熱することができる。また、このような電子機器10は、第1負荷22の温度を温度検出素子38によって精度良く検出することができる。
【0080】
図6は、第2変形例に係る電子機器10の構成を示す図である。
【0081】
第2変形例に係るリニア制御部72は、ローサイドトランジスタ66を非導通状態とすることに代えて、ローサイドトランジスタ66に所定の電流を流すようにリニア増幅動作させる。なお、図6は、ローサイドトランジスタ66を疑似的に可変抵抗として記述している。
【0082】
ハイサイドトランジスタ62は、ドレイン-ソースに流れる電流が大きい程、大きな熱を発生する。従って、電源装置20は、第1負荷22の温度が第1値より低い場合、ハイサイドトランジスタ62のドレイン-ソースにより大きな電流を流すことが好ましい。しかし、ハイサイドトランジスタ62は、ドレイン-ソースに流すことができる最大電流が、定格最大電流として定められる。
【0083】
そこで、リニア制御部72は、最大定格電流から、第1負荷22および第2負荷24に供給される最大負荷電流を減じた電流が、ローサイドトランジスタ66に流れるように制御してもよい。これにより、リニア制御部72は、ハイサイドトランジスタ62に定格最大電流を流して、大きな熱を発生させることができる。
【0084】
また、リニア制御部72は、温度信号に基づき、ローサイドトランジスタ66に流れる電流を制御してもよい。例えば、リニア制御部72は、ローサイドトランジスタ66に流れる電流を、第1負荷22の温度が低い程大きくなるように制御をする。これにより、リニア制御部72は、第1負荷22の温度が低い場合には、より大きな電流をハイサイドトランジスタ62に流して大きな熱を発生させることができる。リニア制御部72は、第1負荷22の温度が比較的に高い場合には、少ない電流をハイサイドトランジスタ62に流して、電力変換効率を高くすることができる。
【0085】
なお、第2変形例に係るローサイドトランジスタ66は、リニア増幅制御がされるので、熱を発生する。従って、第2変形例に係る電源装置20は、ハイサイドトランジスタ62とともにローサイドトランジスタ66も、第1負荷22の近傍に設けられたり、熱伝導体板84の上に設けられたりしてもよい。
【0086】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上述の各実施形態および変形例は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 電子機器、20 電源装置、22 第1負荷、24 第2負荷、26 出力端子、30 電源IC、32 ローパスフィルタ、34 ハイサイド分圧抵抗、36 ローサイド分圧抵抗、38 温度検出素子、40 インダクタ、42 キャパシタ、52 電源端子、54 グランド端子、56 中間端子、58 フィードバック端子、60 温度検出端子、62 ハイサイドトランジスタ、64 ハイサイドドライバ、66 ローサイドトランジスタ(整流素子)、68 ローサイドドライバ、70 スイッチング制御部、72 リニア制御部、74 温度制御部、82 基板、84 熱伝導体板、86 素子群、88 チャージポンプキャパシタ、90 ハイサイド制御端子、92 ローサイド制御端子、94 ハイサイド駆動電位端子、96 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6