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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031444
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】表面電位分布計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01R29/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134993
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】菊永 和也
(57)【要約】
【課題】計測対象の表面電位の分布を素早く計測することができ、目的に応じて容易に空間分解能を変更することが可能な表面電位分布計測装置を提供する。
【解決手段】表面電位分布計測装置は、複数のセンサ12を備えるセンサ基板10と、センサ基板10を着脱可能に保持する保持部20と、センサ基板10と保持部20とを振動させる振動部40と、各センサ12を用いて、電位を計測する電気特性計測部50と、を備え、センサ基板10は基板11と、基板11の一方の表面である第1面に設けられる複数のセンサ12と、第1面の反対の面である第2面に露出し、かつ、各センサ12からそれぞれ基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14と、を備え、各導電部14は互いに絶縁され、センサ基板は、前記第2面に、前記電気特性計測部と前記各導電部とをそれぞれ電気的に着脱可能に接続する接続部15を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサを備えるセンサ基板と、
前記センサ基板を着脱可能に保持する保持部と、
前記センサ基板と前記保持部とを振動させる振動部と、
前記各センサを用いて、電位を計測する電気特性計測部と、
を備え、
前記センサ基板は
基板と、
前記基板の一方の表面である第1面に設けられる前記複数のセンサと、
前記第1面の反対の面である第2面に露出し、かつ、前記各センサからそれぞれ前記基板の板厚方向に延在した複数の導電部と、
を備え、
前記各導電部は互いに絶縁され、
前記センサ基板は、前記第2面に、前記電気特性計測部と前記各導電部とをそれぞれ電気的に着脱可能に接続する接続部を備える、表面電位分布計測装置。
【請求項2】
前記センサ基板を交換することで空間分解能を変更できる、請求項1に記載の表面電位分布計測装置。
【請求項3】
前記センサ基板の振幅を計測する振動計測部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の表面電位分布計測装置。
【請求項4】
前記各センサが平面視において一直線上に配置されている、請求項1または請求項2に記載の表面電位分布計測装置。
【請求項5】
計測対象を配置可能な試料台と、
前記試料台を前記第1面に平行な方向に移動させる試料移動部と、
をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の表面電位分布計測装置。
【請求項6】
前記計測対象の表面と前記センサの表面との距離を計測する距離計測部をさらに備える、請求項5に記載の表面電位分布計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面電位分布計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン繊維などからなる不織布を用いたフィルターがマスクや空気清浄機などに用いられている。捕集効率を高めるため、不織布中の繊維は帯電している。
【0003】
不織布の帯電は、例えば、コロナ放電、水流帯電などによって行われている。不織布の帯電の状態は、捕集効率に影響する。そのため、製品の開発および製品の検査のために、帯電の状態を評価する方法が求められている。
【0004】
帯電状態を評価する方法として、特許文献1には、試料の熱刺激電流を計測して得られた計測データを用いて、活性化エネルギーと温度の相関を示す相関データを取得するデータ取得部と、その相関データを用いて、活性化エネルギーと温度の相関をグラフ化したときのプロットの平坦部を抽出する抽出部43と、抽出部43の抽出結果に基づいて試料の特性を評価する評価部44と、評価部44による評価結果を画面に表示する表示部6と、を備える熱刺激電流計測装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、可撓性を有する薄膜状のエレクトレットセンサと、エレクトレットセンサに働く静電力の変化を検出する静電力検出手段とを備えた表面電位センサが開示されている。
【0006】
特許文献3には、計測対象物に予め選定した振動数、振幅の振動を与える付与工程と、前記計測対象物の振動に伴って発生する電磁波の強度を計測する強度計測工程と、前記計測対象物の振幅を計測する振幅計測工程と、前記強度計測工程で計測された電磁波の強度および前記振幅計測工程で計測された振幅に基づいて、前記計測対象物の静電気帯電量を計測する帯電量計測工程と、を備え、前記振動の周波数は、数Hz~数kHzであり、前記計測対象物と、前記強度計測工程を実現して前記電磁波を受信する受信手段とは、空間的に離隔している、静電気帯電計測方法が開示されている。
【0007】
特許文献4には、計測対象物の計測面における静電気分布を計測する静電気分布計測装置であって、振動によって前記計測面における複数領域のそれぞれで生じる電界を受信するアレイアンテナと、前記計測対象物もしくは前記アレイアンテナを振動させる振動手段と、前記アレイアンテナが受信した前記複数領域のそれぞれでの前記電界の強度、周波数および位相の少なくとも一つを計測する計測手段と、前記計測手段での計測結果に基づいて、前記複数領域のそれぞれでの静電気量を算出する算出手段と、前記複数領域のそれぞれでの静電気量に基づいて、前記計測面における静電気分布を描画する描画手段と、を備え、前記アレイアンテナは、前記複数領域のそれぞれに対応する複数のアンテナ素子を有する、静電気分布計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-28462号公報
【特許文献2】特開2007-212209号公報
【特許文献3】特許第5665151号公報
【特許文献4】国際公開第2015/011942号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フィルターの開発では、高い空間分解能での表面電位の分布を評価できることが求められている。一方、フィルターの品質管理では、計測時間を早くするため、空間分解能を低くすることが求められている。特許文献1の方法では、熱を印加することで、放出される電流を計測することで帯電の状態を計測することができるが、表面電位の分布を評価することができない。特許文献2の方法では、1つの装置で、空間分解能を容易に変更することができなかった。特許文献3の静電気帯電計測方法および特許文献4の静電気量計測装置では、高い精度で静電気の帯電量を計測することはできるが、1mm程度の高空間分解能で静電気の帯電量を計測するには、計測対象物を局所的に振動させる必要があることから、計測する全ての範囲を局所的に振動させる必要がある。その結果、静電気の帯電量分布を計測するには時間がかかるという問題点があった。また、特許文献3の静電気帯電計測方法および特許文献4の静電気量計測装置では、容易に空間分解能を変更することができなかった。
【0010】
本発明は、上記の事情を鑑みなされた発明であり、計測対象の表面電位の分布を素早く計測することができ、目的に応じて容易に空間分解能を変更することが可能な表面電位分布計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の表面電位分布計測装置は、
複数のセンサを備えるセンサ基板と、
前記センサ基板を着脱可能に保持する保持部と、
前記センサ基板と前記保持部とを振動させる振動部と、
前記各センサを用いて、電位を計測する電気特性計測部と、
を備え、
前記センサ基板は
基板と、
前記基板の一方の表面である第1面に設けられる前記複数のセンサと、
前記第1面の反対の面である第2面に露出し、かつ、前記各センサからそれぞれ前記基板の板厚方向に延在した複数の導電部と、
を備え、
前記各導電部は互いに絶縁され、
前記センサ基板は、前記第2面に、前記電気特性計測部と前記各導電部とをそれぞれ電気的に着脱可能に接続する接続部を備える。
(2)本発明の態様2は、態様1の表面電位分布計測装置において、
前記センサ基板を交換することで空間分解能を変更できてもよい。
(3)本発明の態様3は、態様1または態様2の表面電位分布計測装置において、前記センサ基板の振幅を計測する振動計測部をさらに備えてもよい。
(4)本発明の態様4は、態様1~3のいずれか1つの表面電位分布計測装置において、
前記各センサが平面視において一直線上に配置されていてもよい。
(5)本発明の態様5は、態様1~態様4のいずれか1つの表面電位分布計測装置において、
計測対象を配置可能な試料台と、
前記試料台を前記第1面に平行な方向に移動させる試料移動部と、
をさらに備えてもよい。
(6)本発明の態様6は、態様1~態様5のいずれか1つの表面電位分布計測装置において、
前記計測対象の表面と前記センサの表面との距離を計測する距離計測部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、計測対象の表面電位の分布を素早く計測することができ、目的に応じて容易に空間分解能を変更することが可能な表面電位分布計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る表面電位分布計測装置の概略図である。
図2】センサ基板のセンサ側表面の平面図である。
図3図2中に示されたセンサ基板のF2-F2線に沿う断面図である。
図4】第1実施形態に係る表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る表面電位分布計測装置の概略図である。
図6】第1実施形態に係る表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
図7】センサ基板の変形例のセンサ側表面の平面図である。
図8】センサ基板の変形例のセンサ側表面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
本実施形態に係る表面電位分布計測装置は、複数のセンサを備えるセンサ基板と、センサ基板を着脱可能に保持する保持部と、センサ基板と前記保持部とを振動させる振動部と、各センサを用いて、電位を計測する電気特性計測部と、を備え、センサ基板の一方の表面である第1面には、前記センサが設けられ、第1面の反対の面である第2面には、前記各センサからそれぞれ前記センサ基板の板厚方向に延在した複数の導電部が露出し、各導電部は互いに絶縁され、センサ基板は、前記第2面に、前記電気特性計測部と前記各導電部とをそれぞれ電気的に着脱可能に接続する接続部を備える。本実施形態に係る表面電位分布計測装置は、前記センサ基板を交換することで空間分解能を変更できる。
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る表面電位分布計測装置100を説明する。図1は、表面電位分布計測装置100の概略図である。表面電位分布計測装置100は、センサ基板10、保持部20、シャフト30、振動部40、振動制御部45、電気特性計測部50、試料台60、試料移動部65、および、制御部80を備える。
【0016】
センサ基板10中のセンサに対向する計測対象Oの部分(計測領域)の電荷量(表面電位量)Qは、例えば、下記(1)式に基づいて算出される。ここで、式(1)中のΔVはセンサ基板10のセンサによって検出される最大電位と最小電位の差(電位差)を意味し、εとセンサ基板10のセンサと当該センサに対向する計測対象Oの部分との間の誘電率を意味し、Sは当該センサの面積を意味し、Dはセンサ基板10の板厚方向に沿った、当該センサの表面と計測対象Oの表面との距離を意味し、Rはセンサ基板10の振動の振幅を意味する。
【0017】
【数1】
【0018】
計測対象Oを所定の方向に移動させながら、上記(1)式を用いてセンサ基板10の各センサに対向する計測対象Oの各部分の表面電位量を算出することによって、最終的に計測対象Oの表面の表面電位分布を算出することができる。表面電位量の算出方法については、例えば、特許文献3および特許文献4に記載の方法を用いることができる。
【0019】
以下、各部を説明する。以下の説明では、X方向は、センサ基板10の第1面11aと平行な方向である。Y方向は、センサ基板10の第1面11aと平行な方向であって、X方向に交差する方向である。例えば、Y方向は、X方向に略直交する。Z方向は、センサ基板10の基板11の板厚方向であって、X方向およびY方向に交差する方向である。例えば、Z方向は、X方向およびY方向に略直交する。Z方向に下の方向とは、Z方向に沿ってセンサ基板10から試料台60に向かう方向をいう。Z方向に上の方向とはZ方向に沿って、センサ基板10から試料台60に向かう方向と反対の方向をいう。ただし本明細書でいう「上」および「下」とは、説明の便宜上の表現であり、重力方向を規定するものではない。
【0020】
(センサ基板10)
図2は、センサ基板10のセンサ側表面(第1面)の平面図である。図3は、図2中に示されたセンサ基板10のF2-F2線に沿う断面図である。センサ基板10は、基板11と、基板11の一方の表面である第1面11aに設けられる複数のセンサ12と、第1面11aの反対の面である第2面11bに露出し、かつ、各センサ12からそれぞれ基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14と、を備える。基板11の板厚方向は第1実施形態では、Z方向と同じである。
【0021】
基板11は、導電部14を互いに絶縁できれば特に限定されない。基板11の材質としては、通常プリント基板に用いられる樹脂を用いることができる。例えば、基材として紙、ガラス布、樹脂としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などを組み合わせても良い。基板11には、固定部22を通すための複数の貫通孔18が設けられている。貫通孔の数は2以上が好ましい。貫通孔の数が2以上であれば、測定の際に、センサ基板10を振動しても、電位の変化を精密に測定することができる。
【0022】
センサ12は、基板11の一方の表面である第1面11aに設けられる。センサ12は、計測対象Oの表面との距離を変化させることにより生じる電位の変化を検出するセンサである。センサ12を用いて、例えば、最大電位と最小電位の差(電位差)を計測する。また、センサ12を用いて、計測対象Oの帯電した部分とセンサ12との距離が周期的に変化することによる電位の周期的な変化(電位の周波数)を計測してもよい。そして、センサ12を用いて、計測対象Oの帯電した部分とセンサ12との相対的な距離の変化の周期と、センサ12によって検出される電位の周期との位相のズレ(電位の位相のズレ)を検出してもよい。
【0023】
センサ12は電位の変化を検出することができるものであれば特に限定されない。センサ12は、例えば、金、銅などの金属の薄膜である。センサ12の形状は特に限定されないが、例えば、平面視において、正方形状である。センサ12は、所定の間隔を空けて配置される。センサ12のX方向の長さlxは、特に限定されない。例えば、センサ12のX方向の長さlxは0.1mm~5mmである。同様に、センサ12のY方向の長さlyも特に限定されない。センサ12のY方向の長さlyは、例えば0.1mm~5mmである。センサ12のx方向の長さlx、センサ12の方向の長さly、センサ12の間隔は、求める求める分解能に応じて、適宜設定することができる。センサ12と計測対象Oの距離(空間分解能の1/4~3/4)および振動振幅(空間分解能の1/8~3/8)を適切に設定することで、センサ12の大きさと空間分解能はほぼ同じにすることができる。
【0024】
複数のセンサ12は、平面視において、基板11上に、一直線上に配置されている。ここでは、X方向と平行な仮想線L1に沿ってセンサ12は配置されている。第1実施形態では、センサ12の配列した長さlsは、電位の計測時に計測対象Oを移動させる方向(ここではY方向)に直交する方向(X方向)に沿った計測対象Oの長さより長くなるように配置することが好ましい。このように配置することで、X方向に計測対象Oを移動させずに、計測対象Oの移動方向を一方向(Y方向)のみにすることができる。なお、センサ12の配列の長さlsが、計測対象Oの移動方向に直交する方向に沿った計測対象Oの長さより短い場合は、X方向にも計測対象Oを移動させることで、計測対象Oのセンサ12と対向する側の面の全面積について表面電位分布を計測することができる。
【0025】
センサ基板10は、第1面11aの反対の面である第2面11bに露出し、かつ、各センサ12からそれぞれ基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14を備える。導電部14は、絶縁体である基板11によって、互いに絶縁されている。第1実施形態では、導電部14は、基板11を貫通している。第1実施形態において、センサ12と導電部14とは電気的に接続されている。導電部14は、センサ12で得られる電位を電気特性計測部50に伝達できる材料であれば、特に限定されない。導電部14は、例えば、Cuなどの金属である。導電部14は、配線16と電気的に接続されている。
【0026】
センサ基板10は、第2面11bに、電気特性計測部50と各導電部14とをそれぞれ電気的に着脱可能に接続する接続部15を備える。接続部15は配線16と電気的に接続されている。接続部15は例えば、コネクタ端子である。着脱可能に接続する接続部15を備えることで、目的に応じて適したセンサ基板10に変更することができる。
【0027】
(保持部20)
保持部20は、センサ基板10を着脱可能に保持する。保持部20は、保持板21と固定部22とを備える。保持板21は、センサ基板10を固定するための板である。第2面11bと保持板21の面21aとが対向するようにセンサ基板10が配置され、固定部22でセンサ基板10と保持板21とが固定される。図1では、保持板21とセンサ基板10とは離れているが、保持板21とセンサ基板10とは接していてもよい。保持板21とセンサ基板10との間にはスペーサーがあってもよい。固定部22は、センサ基板10に振動を伝達でき、かつ、保持板21と固定部22とが着脱可能に固定できれば、特に限定されない。例えば、固定部22は、ボルトおよびナットである。固定部22を基板11の貫通孔18に通し、固定することで、着脱可能に固定することができる。
【0028】
(シャフト30)
シャフト30は、保持部20の保持板21と振動部40とを接続している。シャフト30は、センサ基板10と保持部20とを保持することができるものであれば特に限定されない。
【0029】
(振動部40)
振動部40は、保持部20とセンサ基板10とを所定の方向(例えば、センサ基板10の板厚方向)に振動させる。第1実施形態では、振動部40は、シャフト30を振動させることにより、センサ基板10の板厚方向に保持板21とセンサ基板10とを振動させる。振動部40としては、所定の周期でセンサ基板10と保持部20とを振動させることができるものであれば特に限定されない。振動部40は、例えば、振動制御部45と電気的に接続される。振動部40は、振動制御部45によって制御される。第1実施形態では、振動部40には図示しない加速度センサが設けられる。図示しない加速度センサは、振動部40の振動の情報(振幅)を計測し、制御部80に送る。
【0030】
(振動制御部45)
振動制御部45は、センサ基板10が所定の条件で振動するように振動部40を制御する。振動部40がセンサ基板10と保持部20とを振動させる周期(振動数)は特に限定されない。振動部40の周期は、例えば、10Hz~5kHzである。より好ましい周期は、100Hz~1kHzの範囲である。振動部40がセンサ基板10と保持部20とを振動させる際の振幅は、特に限定されない。振動部40の振幅は、例えば0.01mm~1mmである。より好ましい振動部40の振幅は、0.05mm~0.5mmである。振動制御部45は、例えば、制御部80から送られた信号に基づいて、センサ基板10と保持部20とを振動させる。
【0031】
ここで、センサ基板10の振動の振幅について説明する。上記式(1)において、電荷量Q、誘電率ε、センサ基板10のセンサの面積S、距離Dが一定の場合、検出される電位差ΔVは下記(2)式により算出することができる。式(2)において、aとbとは所定の定数である。
【0032】
【数2】
【0033】
上記(2)式に示されるように、センサ12で検出される電位差ΔVは、センサ基板10の振幅Rのみの関数で表される。即ち、振幅Rが大きくなるにつれて、電位差ΔVも大きくなる。表面電位分布計測装置100では、振幅Rを調整(大きく)することによって、計測対象Oの表面電位量を高精度で検出することができる。
【0034】
(電気特性計測部50)
電気特性計測部50は、各センサ12を用いて電位を計測する。電気特性計測部50は、例えば、ロックインアンプ(図示しない)である。電気特性計測部50は、センサ12で検出された信号からノイズ等を取り除き、微小な信号を多チャンネルで同時に計測することができることが好ましい。ロックインアンプの時定数は特に限定されないが、0.1m s~1sの範囲が好ましい。より好ましいロックインアンプの時定数は、1ms~300msである。電気特性計測部50は、制御部80と電気的に接続され、各センサ12で得られた電位を制御部80に送る。
【0035】
(試料台60)
試料台60は、計測対象Oを配置可能な台である。試料台60は、計測対象を配置できれば特に限定されない。試料台60は、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する機能を備える。
【0036】
(試料移動部65)
試料移動部65は、試料台60を第1面11aに平行な方向に移動させる。平面視において、仮想線L1上に複数のセンサ12が一直線上に配置されている場合は、試料移動部65は、仮想線L1に垂直な方向に試料台60を移動させることが好ましい。このように移動させることで、計測対象Oの表面電位分布を効率よく計測することができる。試料移動部65は、例えば、モータによって、X方向およびY方向に移動させることができる。試料移動部65は制御部80によって制御される。
【0037】
(制御部80)
制御部80は、振動制御部45、試料移動部65を制御することで、センサ基板10と保持部20とを振動させながら、計測対象Oを移動させる。また、制御部80は、同時に、電気特性計測部50を用い、各センサ12の電位の時間変化(電位の情報)を計測する。また、制御部80は、センサ基板10の振動の情報を振動部40に設けられた図示しない加速度センサを用いて得る。制御部80は、電位の情報、センサ基板10の振動の情報、計測対象Oの移動量についての情報から、計測対象Oの表面電位分布を算出する。得られた計測対象Oの表面電位分布は、図示しない記憶部または、図示しない表示部に出力される。
【0038】
制御部80は、例えば、図示しないCentral Processing Unit(CPU),Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)およびHard Disk Drive(HDD)/Solid State Drive(SSD)などから構成されていてもよい。この場合、図示しない記憶部は、HDDまたはSDDとなる。表示部は、例えば、液晶ディスプレイである。上記の制御部80の動作は、例えば、CPUにおいて、例えば、所定のプログラムを実行することで実現されてもよい。制御部80は、専用のハードウェア構成を用いてもよい。
【0039】
(計測対象O)
計測対象Oは特に限定されない。計測対象Oの形状としては、例えば矩形状、円柱状やフィルム状が挙げられる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る表面電位分布計測装置100を詳述した。本実施形態による表面電位分布計測装置100は、複数のセンサ12を備えているので、一度の計測で、計測対象の面内の表面電位の分布を素早く計測することができる。また、センサ基板10が保持部20に着脱可能に保持され、かつ、センサ基板10が電気特性計測部50と各導電部14とを着脱可能に接続する接続部15を備えるので、目的に応じて、容易にセンサ基板10を交換することができる。そのため、用途に応じて分解能を変更することができる。
【0041】
第1実施形態では、保持部20は、保持板21と固定部22とを備えていたが、センサ基板10を着脱可能に保持できれば、保持部20の構成は、この構成に限定されない。
【0042】
第1実施形態では、試料台60が計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する機能を備えていたが、別途図示しない計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する距離調整部を設けてもよい。
【0043】
第1実施形態では、基板11に貫通孔18を設けていたが、保持部20で着脱可能にセンサ基板10を保持できれば、基板11に貫通孔18が無くてもよい。
【0044】
<表面電位分布の計測方法>
次に、表面電位分布計測装置100を用いた計測対象Oの電位分布の計測方法について説明する。図4は、表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
【0045】
まず、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dが計測可能な距離である基準距離DSの許容範囲内に設定される(S1)。具体的には、距離Dが基準距離DSに対し、所定の値(許容値)αの範囲内(DS±α)であれば、センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を精度高く検出できる。基準距離DSに対し、許容値αは例えば0.005mm~0.1mmである。計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dは、第1実施形態では、試料台60を用いて調整される。
【0046】
次に、振動部40を駆動(ON)させる(S2)。振動部40内の加速度センサによって振動の振幅Rが計測され、得られた振幅Rは制御部80に送信される(S3)。その後、試料移動部65によって計測対象OがY方向に所定量移動すると共に、その移動した距離(移動距離)が制御部80に送信される(S4)。ここで、計測対象Oが移動する際の1回当たりの移動距離は、センサ12の大きさおよび必要とする表面電位分布の解像度に応じて自由に定めることができる。移動距離は、計測対象Oの移動方向Yと同じ方向に沿ったセンサ12の長さと同じ長さ(0.1mm~5mm程度)が好ましい。このような移動距離とすることにより、より正確にかつ素早く計測対象Oの表面電位分布を計測することができる。
【0047】
センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を所定時間計測する。各センサ12の電位の変化の情報は、電気特性計測部50において取得される。取得された各センサ12の電位の変化の情報は制御部80に送られる(S5)。計測対象Oのセンサ12と対向する側の面の全面積に対し、電位の変化の計測が完了していない場合(S6NO)は、再度所定量、測定対象OをY方向に移動させる(S4)。
【0048】
計測対象Oのセンサ12と対向する側の面の全面積に対し、電位の変化の計測が完了している場合(S6YES)、制御部80は、電気特性計測部50から送信された電位の変化の情報、計測対象Oの1回当たりの移動距離、計測対象Oの移動回数、振幅Rおよび基準距離から、計測対象Oの表面電位分布を算出する(S7)。そして、算出された計測対象Oの表面電位分布は記憶部に記憶、または、図示しない表示部に表示される。
【0049】
具体的には、電位の変化と基準距離と振幅とそれらに対応する表面電位量に関する多数のデータからなるデータベースを予め校正・作成しておき、各センサ12から得られた電位の変化量と基準距離と振幅Rから、表面電位量を算出する。この表面電位量は、電位の変化を検出した時に、当該センサ12に対向する計測対象Oの部分の表面電位量となる。
【0050】
したがって、計測対象Oに対する各センサ12の相対位置を予め計測しておけば、各センサ12から得られた電位の変化に関する情報(例えば、電位の変化量、電位の周波数、位相のズレ)、計測対象Oの1回当たりの移動距離、計測対象Oの移動回数、振幅Rおよび基準距離より、計測対象Oの表面電位分布を、高い精度でかつ素早く計測することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る表面電位分布の計測方法を詳述した。本実施形態による表面電位分布の計測方法は、複数のセンサを用いて計測するので、一度の計測で、計測対象の面内の表面電位の分布を素早く計測することができる。また、センサ基板10が保持部20に着脱可能に保持され、かつ、センサ基板10が電気特性計測部50と各導電部14とを着脱可能に接続する接続部15を備えるので、目的に応じて、容易にセンサ基板10を交換することができる。そのため、用途に応じて分解能を変更することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る表面電位分布の計測方法では、計測対象Oの移動・停止を繰り返しながら電位の変化を検出するようにしたが、本実施形態に係る表面電位分布の計測方法は、これに限定されない。たとえば、計測対象Oを一定の速度で移動させながら、所定の移動距離ごとに電位の変化を検出するようにしてもよい。このように動作させることにより、より早く計測対象Oの表面電位分布を計測することができる。
【0053】
本実施形態では、試料移動部65が試料台60を第1面11aに平行な方向に移動させることで、測定を行っていたが、図示しない振動部移動部によって振動部40を第1面11aに平行な方向に移動させて測定してもよい。
【0054】
本実施形態では、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1をした後、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3を行ったが、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3を行った後、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1を行ってもよい。
【0055】
本実施形態では、計測対象Oを所定量移動した後(S4)、電位変化の計測S5を行ったが、電位変化の計測S5を行った後、計測態様Oを所定量移動してもよい(S4)。
【0056】
なお、この場合の計測対象Oの移動速度は、特に限定されないが、例えば、0.1mm/s~200mm/sの範囲である。計測対象Oの移動速度は、1~20mm/sの範囲がより好ましい。また、計測対象Oの移動距離も特に限定されない。計測対象Oの移動距離は、例えば、0.01mm~5mmの範囲である。計測対象Oの移動距離は、0.1mm~1mmの範囲がより好ましい。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の表面電位分布計測装置100Bを、図5を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。表面電位分布計測装置100Bは、センサ基板10、保持部20、シャフト30、振動部40、振動制御部45、電気特性計測部50、試料台60、試料移動部65B、制御部80B、振動計測部110、および距離計測部120を備える。第2実施形態に係る表面電位分布計測装置100Bは、センサ基板10を交換することで空間分解能を変更できる。以下、各部について説明する。
【0058】
(振動計測部110)
振動計測部110は、センサ基板10の振幅を計測する。振動計測部110は、制御部80Bと電気的に接続される。振動計測部110は、センサ基板10の振幅を計測することができれば、特に限定されない。振動計測部110としては、例えば、レーザー変位センサである。振動計測部110は計測したセンサ基板10の振動の情報を制御部80Bに送る。
【0059】
(距離計測部120)
距離計測部120は、センサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを計測する。あらかじめ、距離計測部120の位置とセンサ12の表面の位置関係を計測することで、センサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを計測することができる。距離計測部120は、センサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを計測することができれば、特に限定されない。距離計測部120としては、例えば、レーザー変位センサである。距離計測部120は計測したセンサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを制御部80Bに送る。
【0060】
(試料移動部65B)
試料移動部65Bは、試料台60を第1面11aに平行な方向に移動させる。また、試料移動部65Bは、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する。仮想線L1上に複数のセンサ12が平面視において、一直線上に配置されている場合は、試料移動部65Bは、仮想線L1に垂直な方向に試料台60を移動させることが好ましい。このように移動させることで、計測対象Oの表面電位分布を効率よく計測することができる。試料移動部65Bは、例えば、モータによって、X方向、Y方向、およびZ方向に移動させることができる。試料移動部65Bは制御部80Bによって制御される。
【0061】
(制御部80B)
制御部80Bは、振動制御部45、試料移動部65Bを制御することで、センサ基板10と保持部20とを振動させながら、計測対象Oを移動させる。また、制御部80Bは、同時に、電気特性計測部50を用い、各センサ12の電位の時間変化(電位の情報)を計測する。加えて、制御部80Bは、距離計測部120で得られた計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dに基づいて、試料移動部65Bを用いて計測対象OのZ方向の位置を調整する。具体的には、距離Dが基準距離DSの許容範囲内(DS±α)となるように、計測対象Oの位置を調整する。
【0062】
制御部80Bは、センサ基板10の振動の情報を振動計測部110を用いて得る。制御部80Bは、電位の情報、センサ基板10の振動の情報、計測対象Oの移動量の情報から、計測対象Oの表面電位分布を算出する。得られた計測対象Oの表面電位分布は、図示しない記憶部または、図示しない表示部に出力される。表面電位分布は、例えば、表面電位量分布である。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る表面電位分布計測装置を詳述した。本実施形態による表面電位分布計測装置100Bは、複数のセンサ12を備えているので、一度の計測で、計測対象の面内の表面電位の分布を素早く計測することができる。また、センサ基板10が保持部20に着脱可能に保持され、かつ、センサ基板10が電気特性計測部50と各導電部14とを着脱可能に接続する接続部15を備えるので、目的に応じて、容易にセンサ基板10を交換することができる。そのため、用途に応じて分解能を変更することができる。
【0064】
また、振動計測部110を用いて、センサ基板10の振幅を直接計測するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。また、距離計測部120を用いて、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。
【0065】
<表面電位分布の計測方法>
次に、表面電位分布計測装置100Bを用いた計測対象Oの電位分布の計測方法について説明する。図6は、表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
【0066】
まず、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dが計測可能な距離である基準距離DSの許容範囲内に設定される(S1)。具体的には、距離Dが基準距離DSに対し、所定の値(許容値)αの範囲内(DS±α)であれば、センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を精度高く検出できる。基準距離DSに対し、許容値は例えば0.005mm~0.1mmである。計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dは、第2実施形態では、試料移動部65を用いて調整される。
【0067】
次に、振動部40を駆動(ON)させる(S2)。振動計測部110によって振幅Rが計測され、得られた振幅Rは制御部80に送信される(S3B)。その後、試料移動部65Bによって計測対象OがY方向に所定量移動すると共に、その移動した距離(移動距離)が制御部80Bに送信される(S4)。ここで、計測対象Oが移動する際の1回当たりの移動距離は、センサ12の大きさおよび必要とする表面電位分布の解像度に応じて自由に定めることができる。移動距離は、計測対象Oの移動方向Yと同じ方向に沿ったセンサ12の長さと同じ長さ(0.1mm~5mm程度)が好ましい。このような移動距離とすることにより、より正確にかつ素早く計測対象Oの表面電位分布を計測することができる。
【0068】
距離計測部120を用い、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを計測する。距離Dが所定の範囲(DS±α)に無い場合、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dが所定の範囲に入るように試料移動部65Bを用いて計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する(S8)。
【0069】
計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整後、センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を所定時間計測する。各センサ12の電位の変化の情報は、電気特性計測部50において取得される。取得された各センサ12の電位の変化の情報は制御部80に送られる(S5)。計測対象Oのセンサ12と対向する側の面の全面積に対し、電位の変化の計測が完了していない場合(S6NO)は、計測対象OをY方向に再度所定量移動させる(S4)。
【0070】
計測対象Oのセンサ12と対向する側の面の全面積に対し、電位の変化の計測が完了している場合(S6YES)、制御部80は、電気特性計測部50から送信された電位の変化の情報、計測対象Oの1回当たりの移動距離、計測対象Oの移動回数、振幅Rおよび基準距離から、計測対象Oの表面電位分布を算出する(S7)。そして、算出された計測対象Oの表面電位分布は記憶部に記憶、または、図示しない表示部に表示される。
【0071】
具体的には、電位の変化と基準距離と振幅とそれらに対応する表面電位量に関する多数のデータからなるデータベースを予め校正・作成しておき、各センサ12から得られた電位の変化量と基準距離と振幅Rから、表面電位量を算出する。この表面電位量は、電位の変化を検出した時に、当該センサ12に対向する計測対象Oの部分の表面電位量となる。
【0072】
したがって、計測対象Oに対する各センサ12の相対位置を予め計測しておけば、各センサ12から得られた電位の変化に関する情報(例えば、電位の変化量・周波数・位相のズレ)、計測対象Oの1回当たりの移動距離、計測対象Oの移動回数、振幅Rおよび基準距離より、計測対象Oの表面電位分布を、高い精度でかつ素早く計測することができる。
【0073】
以上説明したように、第2実施形態に係る表面電位分布の計測方法を詳述した。本実施形態による表面電位分布の計測方法は、複数のセンサを用いて計測するので、一度の計測で、計測対象の面内の表面電位の分布を素早く計測することができる。また、センサ基板10が保持部20に着脱可能に保持され、かつ、センサ基板10が電気特性計測部50と各導電部14とを着脱可能に接続する接続部15を備えるので、目的に応じて、容易にセンサ基板10を交換することができる。そのため、用途に応じて分解能を変更することができる。
【0074】
本実施形態では、試料移動部65Bが試料台60を第1面11aに平行な方向に移動させることで、測定を行っていたが、図示しない振動部移動部によって振動部40を第1面11aに平行な方向に移動させて測定してもよい。
【0075】
本実施形態では、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1をした後、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3Bを行ったが、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3Bを行った後、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1を行ってもよい。
【0076】
本実施形態では、計測対象Oを所定量移動した後(S4)、計測対象Oとセンサ12との距離の調整S8および電位変化の計測S5を行ったが、計測対象Oとセンサ12との距離の調整S8および電位変化の計測S5を行った後、計測態様Oを所定量移動してもよい(S4)。測定対象Oが平らな場合は距離の調整S8を省いてもよい。
【0077】
また、振動計測部110を用いて、センサ基板10の振幅を直接計測するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。また、距離計測部120を用いて、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。
【0078】
(変形例1)
図7は、変形例1のセンサ基板10Aのセンサ側表面(第1面)の平面図である。センサ12の周囲を囲むように、基板11上に吸収部17が設けられている。吸収部17は、電磁気的な影響を低減できるものであれば、特に限定されない。吸収部17は、例えば金、銅などの金属の薄膜や電磁波吸収シートである。吸収部17が設けられることで、計測対象Oの表面のうち、各センサ12に対向している部分以外の部分からの電磁気的影響を低減することができる。各センサ12は、計測対象Oの対向している部分からの電位の変化を主に検出することができる。そのため、より正確な表面電位量を計測することができる。その結果、表面電位分布計測装置100は、より高い空間分解能で電位分布を計測することができる。
【0079】
変形例1のセンサ基板10Aでは、センサ12の周囲を囲むように吸収部17が設けていたが、必ずしもセンサ12を完全に囲むように吸収部17を設ける必要はない。センサ12の周囲の一部だけに吸収部17を形成してもよい。
【0080】
(変形例2)
図8は、変形例2のセンサ基板10Bのセンサ側表面(第1面)の平面図である。平面視において、センサ12が仮想線L1および仮想線L2上に配列されている。仮想線L1は、仮想線L2と略平行である。センサ基板10Bの場合、複数のセンサ12が2列に配置されているため、例えば、計測対象Oの1回の移動距離を一列の場合の倍にすることができる。これによって、一列の場合の半分の時間で、計測対象Oの電位分布を計測することができる。
【0081】
以上、本発明の表面電位分布計測装置について説明した。なお、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 センサ基板、11 基板、12 センサ、14 導電部、15 接続部、20 保持部、21 保持板、22 固定部、30 シャフト、40 振動部、45 振動制御部、50 電気特性計測部、60 試料台、65 試料移動部、80 制御部、100 表面電位分布計測装置、110 振動計測部、120 距離計測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8