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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031453
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】センサ基板および表面電位計測装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135005
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】菊永 和也
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H134QA02
2H270LA02
2H270LA39
2H270LA45
2H270LA98
2H270LD02
2H270LD03
2H270LD06
2H270LD08
2H270LD15
2H270LD16
2H270LD17
2H270RA03
2H270RA06
2H270RA11
2H270RA27
2H270RC07
2H270RC18
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】回転できない曲面を有する対象物に対し、高分解能で表面電位を測定可能なセンサ基板および表面電位計測装置を提供する。
【解決手段】センサ基板は、第1基板11と、第1基板11の一方の表面である第1面に設けられた複数のセンサ12と、第1面の反対の面である第2面に露出し、各センサから第1基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14と、を備え、各導電部14は互いに絶縁され、第1基板1が凹面および凸面の少なくとも一方を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板の一方の表面である第1面に設けられた複数のセンサと、
前記第1面の反対の面である第2面に露出し、前記各センサから前記第1基板の板厚方向に延在した複数の導電部と、
を備え、
前記各導電部は互いに絶縁され、
前記第1基板が凹面および凸面の少なくとも一方を有する、センサ基板。
【請求項2】
前記第1基板の厚さが0.05mm~3mmである、請求項1に記載のセンサ基板。
【請求項3】
前記各センサが平面視において、一直線上に配置されている、請求項1または請求項2に記載のセンサ基板。
【請求項4】
前記第1基板の前記第2面に接合される第2基板をさらに備え、
前記第1基板が可撓性を有する、請求項1または2に記載のセンサ基板。
【請求項5】
請求項1または2に記載のセンサ基板と、
前記センサ基板を振動させる振動部と、
前記各センサを用いて、電位を計測する電気特性計測部と、
を備える、表面電位計測装置。
【請求項6】
前記センサ基板の振幅を計測する振動計測部をさらに備える、請求項5に記載の表面電位計測装置。
【請求項7】
測定対象を配置可能な試料台と、
前記試料台を前記試料台の表面に平行な方向に移動させる試料移動部と、
をさらに備える、請求項5に記載の表面電位計測装置。
【請求項8】
前記測定対象の表面と前記センサの表面との距離を計測する距離計測部をさらに備える、請求項7に記載の表面電位計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ基板および表面電位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターの感光体ドラムなどの曲面を有する対象物の表面電位測定では、対象物を回転させながら、表面電位センサを距離が変化しない方向(例えば、感光体ドラムの幅方向)に動かすことで、対象物の表面電位を測定する。
【0003】
曲面を有する対象物の表面電位を測定するセンサとして、特許文献1には、半導体基板のダイアフラムの上面に、金属膜とエレクトレット膜からなるエレクトレット電極を設け、ダイアフラムには4つのピエゾ抵抗を形成し、これらのピエゾ抵抗でブリッジ回路を組んで歪み量検出部を構成した表面電位センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-104829号公報
【特許文献2】特許第5665151号公報
【特許文献3】国際公開第2015/011942号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転できない曲面を有する対象物(例えば、大型配線、自動車用ケーブルなど)を測定する場合、感光体ドラムのように回転させながら表面電位を測定することができない。そのため、特許文献1の表面電位センサを用いて自動車用ケーブルなどを測定する場合、例えば、対象物の曲面に沿って、表面電位センサを配置して測定することになる。この場合、空間分解能が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされた発明であり、回転できない曲面を有する対象物に対し、高分解能で表面電位を測定可能なセンサ基板および表面電位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1のセンサ基板は、
第1基板と、
前記第1基板の一方の表面である第1面に設けられた複数のセンサと、
前記第1面の反対の面である第2面に露出し、前記各センサから前記第1基板の板厚方向に延在した複数の導電部と、
を備え、
前記各導電部は互いに絶縁され、
前記第1基板が凹面および凸面の少なくとも一方を有する。
(2)本発明の態様2は、態様1のセンサ基板において、
前記第1基板の厚さが0.05mm~3mmであってもよい。
(3)本発明の態様3は、態様1または態様2のセンサ基板において、前記各センサが平面視において、一直線上に配置されていてもよい。
(4)本発明の態様4は、態様1~3のいずれか1つのセンサ基板において、前記第1基板の前記第2面に接合される第2基板をさらに備え、前記第1基板が可撓性を有していてもよい。
(5)本発明の態様5の表面電位計測装置は、
態様1~4のいずれか1つのセンサ基板と、
前記センサ基板を振動させる振動部と、
前記各センサを用いて、電位を計測する電気特性計測部と、
を備える。
(6)本発明の態様6は、態様5の表面電位計測装置において、
前記センサ基板の振幅を計測する振動計測部をさらに備えてもよい。
(7)本発明の態様7は、態様5または6の表面電位計測装置において、
測定対象を配置可能な試料台と、
前記試料台を前記試料台の表面に平行な方向に移動させる試料移動部と、
をさらに備えてもよい。
(8)本発明の態様8は、態様5~7のいずれか1つの表面電位計測装置において、
前記測定対象の表面と前記センサの表面との距離を計測する距離計測部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、回転できない曲面を有する対象物に対し、高分解能で表面電位を測定可能なセンサ基板および表面電位計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る表面電位計測装置の概略図である。
図2】センサ基板のセンサ側表面の平面図である。
図3図2中に示されたセンサ基板のF2-F2線に沿う断面図である。
図4】第1実施形態に係る表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る表面電位計測装置の概略図である。
図6】第2実施形態に係る表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
図7】センサ基板の変形例のセンサ側表面の平面図である。
図8】センサ基板の変形例のセンサ側表面の平面図である。
図9】センサ基板の変形例のセンサ側表面の平面図である。
図10図9中に示されたセンサ基板のF9-F9線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る表面電位計測装置は、複数のセンサを備えるセンサ基板と、当該センサ基板を振動させる振動部と、各センサを用いて、電位を計測する電気特性計測部と、を備える。
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る表面電位計測装置を説明する。図1は、第1実施形態に係る表面電位計測装置の概略図である。表面電位計測装置100は、センサ基板1、シャフト30、振動部40、振動制御部45、電気特性計測部50、試料台60、試料移動部65、および制御部80を備える。以下の説明では、X方向は、試料台60の表面60aと平行な方向である。Y方向は、試料台60の表面60aと平行な方向であって、X方向に交差する方向である。例えば、Y方向は、X方向に略直交する。Z方向は、試料台60の表面60aに垂直な方向であって、X方向およびY方向に交差する方向である。例えば、Z方向は、X方向およびY方向に略直交する。Z方向に下の方向とは、Z方向に沿ってセンサ基板1から試料台60に向かう方向をいう。Z方向に上の方向とはZ方向に沿って、センサ基板1から試料台60に向かう方向と反対の方向をいう。ただし本明細書でいう「上」および「下」とは、説明の便宜上の表現であり、重力方向を規定するものではない。
【0012】
センサ基板1中のセンサに対向する計測対象Oの部分(計測領域)の電荷量Qは、例えば、下記(1)式に基づいて算出される。ここで、式(1)中のΔVはセンサ基板1のセンサによって検出される最大電位と最小電位の差(電位差)を意味し、εとセンサ基板1のセンサと当該センサに対向する計測対象Oの部分との間の誘電率を意味し、Sは当該センサの面積を意味し、Dはセンサ基板1の板厚方向に沿った、当該センサの表面と計測対象Oの表面との距離を意味し、Rはセンサ基板1の振動の振幅を意味する。
【0013】
【数1】
【0014】
計測対象Oを所定の方向に移動させながら、上記(1)式を用いてセンサ基板1の各センサに対向する計測対象Oの各部分の表面電位を算出することによって、最終的に計測対象Oの表面の表面電位を算出することができる。表面電位の算出方法については、例えば、特許文献2および特許文献3に記載の方法を用いることができる。以下、表面電位計測装置100の各部について説明する。
【0015】
(センサ基板1)
図2は、センサ基板1のセンサ側表面(第1面)の平面図である。図3は、図2中に示されたセンサ基板1のF2-F2線に沿う断面図である。センサ基板1は、第1基板11と、第1基板11の一方の表面である第1面11aに設けられた複数のセンサ12と、第1面11aの反対の面である第2面11bに露出し、各センサ12から第1基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14とを備える。また、センサ基板1は、第1基板11と、第1基板11上に配置される接着層26と、接着層26上に設けられる第2基板21とを備える。
【0016】
第1基板11は、導電部14を互いに絶縁できれば特に限定されない。第1基板11は可撓性を有する。第1基板11の材質としては、通常フレキシブル基板に用いられる樹脂を用いることができる。第1基板11としては、例えばポリイミド、ポリエステル、プラスチック、液晶ポリマーなどのフィルム状の基材を用いることができる。
【0017】
センサ基板1の第1基板11は、凹面および凸面の少なくとも一方を有する。第1実施形態では、第1基板11の板厚方向に沿った計測対象Oの表面と各センサ12の表面との距離が一定となるように第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有することが好ましい。第1基板11の板厚方向に沿った計測対象Oの表面と各センサ12の表面との距離が一定となるように第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有することで、より高分解能で計測対象Oの表面電位の分布を測定することができる。
【0018】
第1基板11の厚さは、第1基板11が可撓性を有することができれば、特に限定されない。第1基板11の厚さは例えば、0.05mm~3mmであることが好ましい。第1基板11の厚さが0.05mm~3mmであると、第1基板11を計測対象Oの表面に沿って湾曲しやすくなる。
【0019】
第1基板11のヤング率は、第1基板11が可撓性を有することができれば特に限定されない。例えば、第1基板11のヤング率は、0.7GPa~4.0GPaであることが好ましい。第1基板11のヤング率は、0.7GPa~4.0GPaであると、第1基板11を計測対象Oの表面に沿って湾曲しやすくなる。第1基板11が薄ければ、高いヤング率の樹脂材料を用いることもできる。
【0020】
センサ12は、第1基板11の一方の表面である第1面11aに設けられる。センサ12は、計測対象Oの表面との距離を変化させることにより生じる電位の変化を検出するセンサである。第1実施形態では、センサ12を用いて、例えば、最大電位と最小電位の差(電位差)を計測する。また、センサ12を用いて、計測対象Oの帯電した部分とセンサ12との距離が周期的に変化することによる電位の周期的な変化(電位の周波数)を計測してもよい。そして、センサ12を用いて、計測対象Oの帯電した部分とセンサ12との相対的な距離の変化の周期と、センサ12によって検出される電位の周期との位相のズレ(電位の位相のズレ)を検出してもよい。
【0021】
センサ12は電位の変化を検出することができるものであれば特に限定されない。センサ12は、例えば、金、銅などの金属の薄膜である。センサ12の形状は特に限定されないが、例えば、平面視において、正方形状である。センサ12は、所定の間隔を空けて配置される。
【0022】
平面視において、複数のセンサ12は、第1基板11上に、一直線上に配置されている。第1実施形態では、平面視において、仮想線L1に沿ってセンサ12が配置している。センサ12は、計測時に計測対象Oを移動させる方向(ここではY方向)に直交するように配列することが好ましい。第1実施形態では、第1基板11の表面に沿った、センサ12が配列した方向において、センサ12の配列長さlsは、測定対象Oの計測位置(配列したセンサ12と対向する位置)における全周長の半分以上とすることが好ましい。このようにすることで、計測回数を減らすことができる。
【0023】
第1基板11の表面に沿った、センサ12の配列方向におけるセンサ12の長さlxは、特に限定されない。例えば、センサ12の長さlxは0.1mm~5mmである。同様に、センサ12の配列方向に直交する方向の長さlyも特に限定されない。センサ12の長さlyは、例えば0.1mm~5mmである。センサ12の長さlx、センサ12の長さly、センサ12の間隔は、求める分解能に応じて、適宜設定することができる。
【0024】
センサ基板1は、第1面11aの反対の面である第2面11bに露出し、かつ、各センサ12からそれぞれ第1基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14を備える。導電部14は、絶縁体である第1基板11によって、互いに絶縁されている。第1実施形態では、導電部14は、第1基板11を貫通している。第1実施形態において、センサ12と導電部14とは電気的に接続されている。導電部14は、センサ12で得られる電位を電気特性計測部50に伝達できる材料であれば、特に限定されない。導電部14は、例えば、Cuなどの金属である。導電部14は、配線16と電気的に接続されている。
【0025】
センサ基板1は、第2面11bに、各導電部14と電気的に接続され、外部と接続可能な接続部15を備える。第1実施形態では、接続部15は、電気特性計測部50と電気的に接続される。接続部15は配線16と電気的に接続されている。接続部15は例えば、コネクタ端子である。
【0026】
接着層26は、第1基板11と第2基板21とを接着する。接着層26は、第1基板11と第2基板21とを接着し、電位計測時に第1基板11と第2基板21とを一体として振動させることができれば、特に限定されない。接着層26は、例えば、接着剤の硬化物である。用いられる接着剤は特に限定されず、エポキシ系接着剤などを用いることができる。
【0027】
本実施形態では、第2基板21は、第1基板11の第2面11b側に接着層26を介し接合される。第2基板21は、第1基板11の形状(凹面および凸面の少なくとも一方を有する形状)を維持し、かつ、電位計測時に第1基板11が振動で撓むのを抑制する。第2基板21を接合することで、第1基板11が可撓性を有する場合でも、計測時に安定して計測対象Oの表面電位を測定することができる。第2基板21の材質は、第1基板11の形状を維持し、かつ、電位計測時に第1基板11が撓むのを抑制することができれば特に限定されない。第2基板21は、例えば、樹脂、アクリル、プラスチック、金属、ガラスである。
【0028】
第2基板21の厚さは、第1基板11の形状を維持し、かつ、電位計測時に第1基板11が振動で撓むのを抑制することができれば、特に限定されない。第2基板21の厚さは、例えば、1mm~5mmである。
【0029】
第2基板21のヤング率は、第1基板11の形状を維持し、かつ、電位計測時に第1基板11が振動で撓むのを抑制することができれば、特に限定されない。第2基板21のヤング率は、例えば、1.2GPa以上である。
【0030】
第2基板21は、接続部15がある領域s1において、開口部23を備える。開口部23の大きさは、電気特性計測部50と接続部15とが電気的に接続可能であれば、特に限定されない。
【0031】
(シャフト30)
シャフト30は、センサ基板1と振動部40とを接続している。シャフト30は、センサ基板1を保持することができるものであれば特に限定されない。
【0032】
(振動部40)
振動部40は、センサ基板1を所定の方向(例えば、センサ基板1の板厚方向)に振動させる。振動部40としては、所定の周期でセンサ基板1を振動させることができるものであれば特に限定されない。振動部40は、例えば、振動制御部45と電気的に接続される。振動部40は、振動制御部45によって制御される。第1実施形態では、振動部40には図示しない加速度センサが設けられる。図示しない加速度センサは、振動部40の振動の情報(振幅)を計測し、制御部80に送る。
【0033】
(振動制御部45)
振動制御部45は、センサ基板1が所定の条件で振動するように振動部40を制御する。振動部40がセンサ基板1を振動させる周期(振動数)は特に限定されない。振動部40の周期は、例えば、10Hz~5kHzである。より好ましい周期は、100Hz~1kHzの範囲である。振動部40がセンサ基板1を振動させる際の振幅は、特に限定されない。振動部40の振幅は、例えば0.01mm~1mmである。より好ましい振動部40の振幅は、0.05mm~0.5mmである。振動制御部45は、例えば、制御部80から送られた信号に基づいて、センサ基板1を振動させる。
【0034】
ここで、センサ基板1の振動の振幅について説明する。上記式(1)において、電荷量Q、誘電率ε、センサ基板1のセンサの面積S、距離Dが一定の場合、検出される電位差ΔVは下記(2)式により算出することができる。式(2)において、aとbとは所定の定数である。
【0035】
【数2】
【0036】
上記(2)式に示されるように、センサ12で検出される電位差ΔVは、センサ基板1の振幅Rのみの関数で表される。即ち、振幅Rが大きくなるにつれて、電位差ΔVも大きくなる。表面電位計測装置100では、振幅Rを調整(大きく)することによって、計測対象Oの表面電位を高精度で検出することができる。
【0037】
(電気特性計測部50)
電気特性計測部50は、各センサ12を用いて電位を計測する。電気特性計測部50は、例えば、ロックインアンプ(図示しない)である。電気特性計測部50は、センサ12で検出された信号からノイズ等を取り除き、微小な信号を多チャンネルで同時に計測することができることが好ましい。ロックインアンプの時定数は特に限定されないが、0.1m s~1sの範囲が好ましい。より好ましいロックインアンプの時定数は、1ms~300msである。電気特性計測部50は、制御部80と電気的に接続され、各センサ12で得られた電位を制御部80に送る。
【0038】
(試料台60)
試料台60は、計測対象Oを配置可能な台である。試料台60は、計測対象を配置できれば特に限定されない。試料台60は、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する機能を備える。
【0039】
(試料移動部65)
試料移動部65は、試料台60を試料台60の表面60aに平行な方向に移動させる。平面視において、仮想線L1上に複数のセンサ12が一直線上に配置されている場合は、試料移動部65は、仮想線L1に垂直な方向に試料台60を移動させることが好ましい。このように移動させることで、計測対象Oの表面電位の分布を効率よく計測することができる。試料移動部65は、例えば、モータによって、X方向およびY方向に移動させることができる。試料移動部65は制御部80によって制御される。
【0040】
制御部80は、例えば、図示しないCentral Processing Unit(CPU),Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)およびHard Disk Drive(HDD)/Solid State Drive(SSD)などから構成されていてもよい。この場合、図示しない記憶部は、HDDまたはSDDとなる。表示部は、例えば、液晶ディスプレイである。上記の制御部80の動作は、例えば、CPUにおいて、例えば、所定のプログラムを実行することで実現されてもよい。制御部80は、専用のハードウェア構成を用いてもよい。
【0041】
(計測対象O)
計測対象Oは曲面を有していれば、特に限定されない。計測対象Oとしては、ケーブルなどが挙げられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る表面電位計測装置100を詳述した。本実施形態による表面電位計測装置100は、複数のセンサ12を備えているので、一度の計測で、計測対象の面内の表面電位の分布を素早く計測することができる。また、第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有するので、曲面を有する計測対象Oの表面電位を高分解能で計測することができる。
【0043】
第1実施形態では、試料台60が計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する機能を備えていたが、別途計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する距離調整部を設けてもよい。
【0044】
第1実施形態では、接着層26を備えていたが、第1基板11と第2基板21とを接合できれば、接着層26は無くてもよい。例えば、第1基板11と第2基板21とがともに熱可塑性樹脂基板であれば、第1基板11と第2基板21との界面付近において、第1基板11の熱可塑性樹脂と第2基板21の熱可塑性樹脂とを溶融させることで、接合させることができる。
【0045】
第1実施形態では、第2基板21は、開口部23を備えていたが、センサ基板1と電気特性計測部50とを電気的に接続できれば、第2基板21に開口部23は、無くてもよい。
【0046】
<表面電位分布の計測方法>
次に、表面電位計測装置100を用いた計測対象Oの電位分布の計測方法について説明する。図4は、表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
【0047】
まず、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dが計測可能な距離である基準距離DSの許容範囲内に設定される(S1)。具体的には、距離Dが基準距離DSに対し、所定の値(許容値)αの範囲内(即ちDS±α)であれば、センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を精度高く検出できる。基準距離DSに対し、許容値αは例えば0.005mm~0.1mmである。計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dは、第1実施形態では、試料台60を用いて調整される。
【0048】
次に、振動部40を駆動(ON)させる(S2)。振動部40内の加速度センサによって振動の振幅Rが計測され、得られた振幅Rは制御部80に送信される(S3)。その後、試料移動部65によって計測対象OがY方向に所定量移動すると共に、その移動した距離(移動距離)が制御部80に送信される(S4)。ここで、計測対象Oが移動する際の1回当たりの移動距離は、センサ12の大きさおよび必要とする表面電位の解像度に応じて自由に定めることができる。移動距離は、平面視において、計測対象Oの移動方向Yと同じ方向に沿ったセンサ12の長さと同じ長さが好ましい。このような移動距離とすることにより、より正確にかつ素早く計測対象Oの表面電位分布を計測することができる。
【0049】
センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を所定時間計測する。各センサ12の電位の変化の情報は、電気特性計測部50において取得される。取得された各センサ12の電位の変化の情報は制御部80に送られる(S5)。計測対象Oの測定予定領域の全面積の計測が完了していない場合(S6NO)は、再度所定量、測定対象OをY方向に移動させる(S4)。
【0050】
計測対象Oの測定予定領域の全面積に対し、電位の変化の計測が完了している場合(S6YES)、制御部80は、電気特性計測部50から送信された電位の変化の情報、計測対象Oの1回当たりの移動距離、計測対象Oの移動回数、振幅Rおよび基準距離から、計測対象Oの表面電位分布を算出する(S7)。そして、算出された計測対象Oの表面電位分布は記憶部に記憶、または、図示しない表示部に表示される。
【0051】
具体的には、電位の変化と基準距離と振幅とそれらに対応する表面電位に関する多数のデータからなるデータベースを予め校正・作成しておき、各センサ12から得られた電位の変化量と基準距離と振幅Rから表面電位を算出する。この表面電位は、電位の変化を検出した時に、そのセンサ12に対向する計測対象Oの部分の表面電位となる。
【0052】
したがって、計測対象Oに対する各センサ12の相対位置を予め計測しておけば、各センサ12から得られた電位の変化に関する情報(例えば、電位の変化量、電位の周波数、位相のズレ)、計測対象Oの1回当たりの移動距離、計測対象Oの移動回数、振幅Rおよび基準距離より、計測対象Oの表面電位を、高い精度でかつ素早く計測することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る表面電位分布の計測方法を詳述した。本実施形態による表面電位分布の計測方法は、複数のセンサを用いて計測するので、一度の計測で、計測対象の面内の表面電位の分布を素早く計測することができる。また、第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有するので、曲面を有する計測対象Oの表面電位を高分解能で計測することができる。
【0054】
本実施形態に係る表面電位分布の計測方法では、計測対象Oの移動・停止を繰り返しながら電位の変化を検出するようにしたが、本実施形態に係る表面電位分布の計測方法は、これに限定されない。たとえば、計測対象Oを一定の速度で移動させながら、所定の移動距離ごとに電位の変化を検出するようにしてもよい。このように動作させることにより、より早く計測対象Oの表面電位分布を計測することができる。
【0055】
本実施形態では、試料移動部65を試料台60の表面60aに平行な方向に移動させることで測定を行っていたが、図示しない振動部移動部によって、振動部40を試料台60の表面60aに平行な方向に移動させて測定してもよい。
【0056】
本実施形態では、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1をした後、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3を行ったが、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3を行った後、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1を行ってもよい。
【0057】
本実施形態では、計測対象Oを所定量移動した後(S4)、電位変化の計測S5を行ったが、電位変化の計測S5を行った後、計測態様Oを所定量移動してもよい(S4)。
【0058】
なお、この場合の計測対象Oの移動速度は、特に限定されないが、例えば、0.1mm/s~200mm/sの範囲である。計測対象Oの移動速度は、1~20mm/sの範囲がより好ましい。また、計測対象Oの移動距離も特に限定されない。計測対象Oの移動距離は、例えば、0.01mm~5mmの範囲である。計測対象Oの移動距離は、0.1mm~1mmの範囲がより好ましい。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態の表面電位計測装置100Bを、図5を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。表面電位計測装置100は、センサ基板1、シャフト30、振動部40、振動制御部45、電気特性計測部50、試料台60、試料移動部65、制御部80、振動計測部110、および距離計測部120を備える。以下、各部について説明する。
【0060】
(振動計測部110)
振動計測部110は、センサ基板1の振幅を計測する。振動計測部110は、制御部80Bと電気的に接続される。振動計測部110は、センサ基板1の振幅を計測することができれば、特に限定されない。振動計測部110としては、例えば、レーザー変位センサである。振動計測部110は計測したセンサ基板1の振動の情報を制御部80Bに送る。
【0061】
(距離計測部120)
距離計測部120は、センサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを計測する。あらかじめ、距離計測部120の位置とセンサ12の表面の位置関係を計測することで、センサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを計測することができる。距離計測部120は、センサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを計測することができれば、特に限定されない。距離計測部120としては、例えば、レーザー変位センサである。距離計測部120は計測したセンサ12の表面と計測対象Oの表面との距離Dを制御部80Bに送る。
【0062】
(試料移動部65B)
試料移動部65Bは、試料台60を試料台60の表面60aに平行な方向に移動させる。また、試料移動部65Bは、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する。仮想線L1上に複数のセンサ12が平面視において、一直線上に配置されている場合は、試料移動部65Bは、仮想線L1に垂直な方向に試料台60を移動させることが好ましい。このように移動させることで、計測対象Oの表面電位分布を効率よく計測することができる。試料移動部65Bは、例えば、モータによって、X方向、Y方向、およびZ方向に移動させることができる。試料移動部65Bは制御部80Bによって制御される。
【0063】
(制御部80B)
制御部80Bは、振動制御部45、試料移動部65Bを制御することで、センサ基板1を振動させながら、計測対象Oを移動させる。また、制御部80Bは、同時に、電気特性計測部50を用い、各センサ12の電位の時間変化(電位の情報)を計測する。加えて、制御部80Bは、距離計測部120で得られた計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dに基づいて、試料移動部65Bを用いて計測対象OのZ方向の位置を調整する。具体的には、距離Dが基準距離DSの許容範囲内(DS±α)となるように、計測対象Oの位置を調整する。
【0064】
制御部80Bは、センサ基板1の振動の情報を振動計測部110を用いて得る。制御部80Bは、電位の情報、センサ基板1の振動の情報、計測対象Oの移動量の情報から、計測対象Oの表面電位分布を算出する。得られた計測対象Oの表面電位分布は、図示しない記憶部または、図示しない表示部に出力される。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る表面電位計測装置100Bを詳述した。本実施形態による表面電位計測装置100Bは、複数のセンサ12を備えているので、一度の計測で、計測対象Oの表面電位の分布を素早く計測することができる。また、第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有するので、曲面を有する計測対象Oの表面電位を高分解能で計測することができる。
【0066】
また、振動計測部110を用いて、センサ基板1の振幅を直接計測するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。また、距離計測部120を用いて、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。
【0067】
<表面電位分布の計測方法>
次に、表面電位計測装置100Bを用いた計測対象Oの電位分布の計測方法について説明する。図6は、表面電位分布の計測方法のフローチャートである。
【0068】
まず、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dが計測可能な距離である基準距離DSの許容範囲内に設定される(S1)。具体的には、距離Dが基準距離DSに対し、所定の値(許容値)αの範囲内(即ちDS±α)であれば、センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を精度高く検出できる。基準距離DSに対し、許容値αは例えば0.005mm~0.1mmである。計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dは、第1実施形態では、試料台60を用いて調整される。
【0069】
次に、振動部40を駆動(ON)させる(S2)。振動計測部110によって振幅Rが計測され、得られた振幅Rは制御部80に送信される(S3B)。その後、試料移動部65Bによって計測対象OがY方向に所定量移動すると共に、その移動した距離(移動距離)が制御部80Bに送信される(S4)。ここで、計測対象Oが移動する際の1回当たりの移動距離は、センサ12の大きさおよび必要とする表面電位分布の解像度に応じて自由に定めることができる。移動距離は、計測対象Oの移動方向Yと同じ方向に沿ったセンサ12の長さと同じ長さが好ましい。このような移動距離とすることにより、より正確にかつ素早く計測対象Oの表面電位分布を計測することができる。
【0070】
距離計測部120を用い、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを計測する。距離Dが所定の範囲(DS±α)に無い場合、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dが所定の範囲に入るように試料移動部65Bを用いて計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整する(S8)。
【0071】
計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整後、センサ12と対向する計測対象Oの部分の電位の変化を所定時間計測する。各センサ12の電位の変化の情報は、電気特性計測部50において取得される。取得された各センサ12の電位の変化の情報は制御部80に送られる(S5)。計測対象Oのセンサ12と対向する側の面の全面積に対し、電位の変化の計測が完了していない場合(S6NO)は、計測対象OをY方向に再度所定量移動させる(S4)。
【0072】
計測対象Oの測定予定領域の全面積に対し、電位の変化の計測が完了している場合(S6YES)、制御部80は、電気特性計測部50から送信された電位の変化の情報、計測対象Oの1回当たりの移動距離、計測対象Oの移動回数、振幅Rおよび基準距離から、計測対象Oの表面電位分布を算出する(S7)。そして、算出された計測対象Oの表面電位分布は記憶部に記憶、または、図示しない表示部に表示される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る表面電位分布の計測方法を詳述した。本実施形態による表面電位分布の計測方法は、複数のセンサ12を備えているので、一度の計測で、計測対象Oの表面電位の分布を素早く計測することができる。また、第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有するので、曲面を有する計測対象Oの表面電位を高分解能で計測することができる。
【0074】
本実施形態では、試料移動部65Bが試料台60を第1面11aに平行な方向に移動させることで、測定を行っていたが、図示しない振動部移動部によって振動部40を第1面11aに平行な方向に移動させて測定してもよい。
【0075】
距離計測部120は、センサ基板1に取り付けられていてもよい。
【0076】
本実施形態では、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1をした後、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3Bを行ったが、振動部40の振動開始S2および振動部40の振動計測S3Bを行った後、計測態様Oとセンサ12の表面との距離Dの設定S1を行ってもよい。
【0077】
本実施形態では、計測対象Oを所定量移動した後(S4)、計測対象Oとセンサ12との距離の調整S8および電位変化の計測S5を行ったが、計測対象Oとセンサ12との距離の調整S8および電位変化の計測S5を行った後、計測態様Oを所定量移動してもよい(S4)。測定対象Oが平らな場合は距離の調整S8を省いてもよい。
【0078】
また、振動計測部110を用いて、センサ基板1の振幅を直接計測するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。また、距離計測部120を用いて、計測対象Oの表面とセンサ12の表面との距離Dを調整するので、より精度高く計測対象Oの表面電位分布を算出することができる。
【0079】
(変形例1)
図7は、変形例1のセンサ基板1Aのセンサ側表面(第1面)11aの平面図である。センサ12の周囲を囲むように、第1基板11上に吸収部17が設けられている。吸収部17は、電磁気的な影響を低減できるものであれば、特に限定されない。吸収部17は、例えば金、銅などの金属の薄膜や電磁波吸収シートである。吸収部17が設けられることで、計測対象Oの表面のうち、各センサ12に対向している部分以外の部分からの電磁気的影響を低減することができる。各センサ12は、計測対象Oの対向している部分からの電位の変化を主に検出することができる。そのため、より正確な表面電位を計測することができる。その結果、表面電位計測装置100は、より高い空間分解能で電位分布を計測することができる。
【0080】
変形例1のセンサ基板1Aでは、センサ12の周囲を囲むように吸収部17が設けていたが、必ずしもセンサ12を完全に囲むように吸収部17を設ける必要はない。センサ12の周囲の一部だけに吸収部17を形成してもよい。
【0081】
(変形例2)
図8は、変形例2のセンサ基板1Bのセンサ側表面(第1面)11aの平面図である。平面視において、センサ12が仮想線L1および仮想線L2上に配列してる。仮想線L1は、仮想線L2と略平行である。センサ基板1Bの場合、複数のセンサ12が2列に配置されているため、例えば、計測対象Oの1回の移動距離を一列の場合の倍にすることができる。これによって、一列の場合の半分の時間で、計測対象Oの電位分布を計測することができる。
【0082】
(変形例3)
図9は、センサ基板1Cのセンサ側表面(第1面)11aの平面図である。図10は、図9中に示されたセンサ基板1CのF9-F9線に沿う断面図である。センサ基板1Cは、第1基板11と、第1基板11の一方の表面である第1面11aに設けられた複数のセンサ12と、第1面11aの反対の面である第2面11bに露出し、各センサ12から第1基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14とを備える。
【0083】
第1基板11は、導電部14を互いに絶縁できれば特に限定されない。第1基板11の材質としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂を第1基板11の材料として用いた場合、第1基板11を加熱することで、計測対象Oの表面形状に沿って、第1基板11を湾曲させることができる。
【0084】
センサ基板1Cの第1基板11は、凹面および凸面の少なくとも一方を有する。第1基板11の板厚方向に沿った計測対象Oの表面と各センサ12の表面との距離が一定となるように第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有することが好ましい。第1基板11の板厚方向に沿った計測対象Oの表面と各センサ12の表面との距離が一定となるように、第1基板11が凹面および凸面の少なくとも一方を有することで、より高分解能で計測対象Oの表面電位の分布を測定することができる。
【0085】
第1基板11の厚さは、電位計測時に振動で第1基板11が撓まなければ、特に限定されない。第1基板11の厚さは例えば、1.0mm~5mmであることが好ましい。
【0086】
第1基板11のヤング率は、電位計測時に振動で第1基板11が撓まなければ、特に限定されない。例えば、第1基板11のヤング率は、例えば、3.0GPa以上であることが好ましい。
【0087】
センサ12は電位の変化を検出することができるものであれば特に限定されない。センサ12は、例えば、金、銅などの金属の薄膜である。センサ12の形状は特に限定されないが、例えば、平面視において、正方形状である。センサ12は、所定の間隔を空けて配列される。
【0088】
平面視において、複数のセンサ12は、第1基板11上に、一直線上に配置されている。第1実施形態では、平面視において、仮想線L1に沿ってセンサ12が配置している。センサ12は、計測時に計測対象Oを移動させる方向(ここではY方向)に直交するように配列することが好ましい。第1実施形態では、第1基板11の表面に沿った、センサ12が配列した方向において、センサ12の配列長さlsは、測定対象Oの計測位置(配列したセンサ12と対向する位置)における全周長の半分以上とすることが好ましい。このようにすることで、計測回数を減らすことができる。
【0089】
センサ基板1Cは、第1面11aの反対の面である第2面11bに露出し、かつ、各センサ12からそれぞれ第1基板11の板厚方向に延在した複数の導電部14を備える。導電部14は、絶縁体である第1基板11によって、互いに絶縁されている。第1実施形態では、導電部14は、第1基板11を貫通している。センサ12と導電部14とは電気的に接続されている。導電部14は、センサ12で得られる電位を電気特性計測部50に伝達できる材料であれば、特に限定されない。導電部14は、例えば、Cuなどの金属である。導電部14は、配線16と電気的に接続されている。
【0090】
センサ基板1Cは、第2面11bに、各導電部14と電気的に接続され、外部と接続可能な接続部15を備える。第1実施形態では、接続部15は、電気特性計測部50と電気的に接続される。接続部15は配線16と電気的に接続されている。接続部15は例えば、コネクタ端子である。
【0091】
以上、本発明の表面電位計測装置について説明した。なお、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 センサ基板、11 第1基板、12 センサ、14 導電部、15 接続部、第2基板21、接着層26、30 シャフト、40 振動部、45 振動制御部、50 電気特性計測部、60 試料台、65 試料移動部、80 制御部、100 表面電位計測装置、110 振動計測部、120 距離計測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10